頭部および頸部の電気外科治療用のシステムおよび方法
【課題】本発明は、特に耳、鼻および喉の組織を含めて、患者の頭部および頸部内の標的部位に選択的に電気エネルギーを与えるためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】本発明は、組織構造を除去および修正するために導電性流体が存在する状態で1つまたはそれ以上の電極端子(104)に高周波(RF)電気エネルギーを与える。個々の処置に応じて、本発明は、組織を量的に除去するため、膠原結合組織を収縮するため、および切断された血管を凝結するために使用できる。例えば、本発明は、副鼻腔手術における組織の剥離および止血、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸を治療するための処置における膠原収縮、剥離および止血、扁桃切除、アデノイド切除、気管狭窄、声帯ポリープおよび傷などの粗大組織の除去、または舌切除、喉頭切除、聴神経腫処置および鼻剥離処置など顔面腫瘍または口、咽頭内の腫瘍の切除または剥離に有益であろう。
【解決手段】本発明は、組織構造を除去および修正するために導電性流体が存在する状態で1つまたはそれ以上の電極端子(104)に高周波(RF)電気エネルギーを与える。個々の処置に応じて、本発明は、組織を量的に除去するため、膠原結合組織を収縮するため、および切断された血管を凝結するために使用できる。例えば、本発明は、副鼻腔手術における組織の剥離および止血、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸を治療するための処置における膠原収縮、剥離および止血、扁桃切除、アデノイド切除、気管狭窄、声帯ポリープおよび傷などの粗大組織の除去、または舌切除、喉頭切除、聴神経腫処置および鼻剥離処置など顔面腫瘍または口、咽頭内の腫瘍の切除または剥離に有益であろう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ1998年4月2日、1998年5月22日および1998年8月18日に提出された米国特許出願第09/054323号、09/083526号および09/136079号(それぞれ弁理士整理番号第E−5号、E−3−1号およびE−7号)の一部係属出願であり、上記の出願は、各々1995年6月7日に提出された米国特許出願番号第08/485219号(弁理士整理番号第16238−0006000号)の一部継続出願である1997年12月15日に提出された出願番号第08/990374号(弁理士整理番号第E−3号)の一部継続出願である。上記の出願の完全な開示は、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、1998年4月10日に提出された一般譲渡された同時係属米国特許出願第09/058571号(弁理士整理番号第CB−2号)および1998年4月2日に提出された米国特許出願第09/054323号(弁理士整理番号第E−5号)、1998年1月21日に提出された米国特許出願第09/010382号(弁理士整理番号第A−6号)および1998年2月27日に提出された米国特許出願第09/032375号(弁理士整理番号第CB−3号)、1997年11月25日に提出された米国特許出願第08/977845号(弁理士整理番号第D−2号)、1997年10月2日に提出された第08/942580号(弁理士整理番号第16238−001300号)、1998年2月20日に提出された第09/026851号(弁理士整理番号第S−2号)、1996年11月22日に提出された米国出願第08/753227号(整理番号第16238−002200号)、1996年7月18日に提出された米国出願第08/687792号(整理番号第16238−001600号)、および1992年1月7日に提出された米国特許出願第07/817575号(弁理士整理番号第16238−00040号)の一部継続である1992年10月9日に提出された米国特許出願第07/958977号(弁理士整理番号第16238−000410号)の一部継続出願である1993年5月10日に提出された米国特許出願第08/059681号(弁理士整理番号第16238−000420号)の一部継続出願である1994年5月10日に提出されたPCT国際出願、米国国内出願番号第PCT/US94/05168号、現在の米国特許第5697909号(弁理士整理番号第16238−00440号)、に関係する。上記の出願の完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。本発明は、また1995年11月22日に提出された一般譲渡された米国特許第5683366号(弁理士整理番号第16238−000700号)にも関係し、その完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本文書に組み込まれる。
本発明は、一般的に言って電気外科の分野に関するものであり、もっと明確に言うと耳、鼻および喉など頭部および頸部の組織を治療するために高周波電気エネルギーを採用する外科装置および方法に関するものである。本発明は、特に、副鼻腔手術および閉塞性睡眠障害の治療に適している。
【背景技術】
【0003】
副鼻腔は、鼻腔に通じる顔面骨内部の空気の詰まった窩腔である。副鼻腔炎は、副鼻腔の1つまたはそれ以上の粘膜の炎症である。副鼻腔炎は、副鼻腔にまで広がる呼吸器系最上部のウィルスまたはバクテリア感染と関係する。副鼻腔開口部が遮断されると、窩腔が詰まって、激しい痛みおよび圧力を生じる。後鼻腔または鼻腔排液、圧力による鼻腔うっ血、頭痛、副鼻腔感染および鼻ポリープが、慢性副鼻腔炎に最も一般的に見られる症状である。
【0004】
軽い副鼻腔炎の治療には、通常、抗生物質、うっ血除去剤および鎮痛薬が使用され、それ以上の合併症を防ぐよう工夫される。もっと重いまたは慢性の副鼻腔炎の場合、特に何年もの間アレルギー治療を受けていてすでに副鼻腔遮断が生じている患者または生まれつき副鼻腔および鼻孔が小さい患者の場合、鼻および副鼻腔を通常の機能に戻すためには手術が必要な場合がしばしばある。内視鏡外科技術および医療装置の分野での最近の進歩は、複雑な副鼻腔外科処置を実施するための機器類および方法を熟練した医者に提供してきた。例えば、鼻腔および副鼻腔の映像化が改善されたことにより、現在では内視鏡外科医はこの解剖学的部位により近づきやすくなっている。その結果、機能的内視鏡副鼻腔手術(FFSS)が副鼻腔疾患の外科的治療における優先的技術となった。
【0005】
別の鼻の症状である鼻水(例えば、アレルギー性鼻炎または血管神経性鼻炎)は、一般に、鼻甲介と呼ばれる鼻の中の小さい棚状構造によって引き起こされる。鼻甲介は、鼻を抜けて肺に入る空気を暖め湿らせる役割を持つ。空気が刺激原を含む場合、鼻甲介は、体が呼吸の通路を遮断して浄化しようとするかのように、腫脹して粘液を注ぐことによって空気で運ばれる粒子に反応する。腫脹した鼻甲介を一時的に軽減するために、鼻用うっ血除去スプレーおよびピルが処方されることが多い。しかし、この措置の効果には限界があり、この種の鼻用スプレーを長期間使用すると、一般に問題を悪化させる。さらに、うっ血除去用錠剤は、高血圧を生じ、心拍を増やし、人によっては不眠を生じる。
【0006】
過去数年間、機能的内視鏡副鼻腔手術においてポリープまたはその他の腫脹した組織を取り除くために、マイクロデブライダ(顕微壊死組織切除装置)およびレーザーなど動力つきの機器が使用されてきた。マイクロデブライダは、組織を切断し切除するために鋸状の遠位先端付きの回転シャフトを持つ使い捨て動力つきカッターである。マイクロデブライダのハンドルは、一般に中空であり、小さい真空を作り、これが残骸を吸引するのに役立つ。この処置において、シャフトの遠位先端は鼻孔から患者の副鼻腔に通され、手術部位を見るために内視鏡が同様に同じまたは反対の鼻孔から通される。外部のモーターがシャフトおよび鋸状先端を回転させて、先端がポリープまたは副鼻腔の遮断の原因となるその他の組織を切断できるようにする。重大な遮断が取り除かれると、通気および排液が回復して、副鼻腔はその正常な機能に戻る。
【0007】
マイクロデブライダは有望になっているが、この装置は多くの短所を持っている。例えば、鼻腔および副鼻腔の組織は非常に血管が多く、マイクロデブライダは、この組織内の血管を切断し、通常外科医が標的の部位を見るのを妨げるほど大量の出血を生じる。真空作用は処置中破壊される血管からの出血を促進する傾向があるので、この出血を抑制するのは困難となる。さらに、マイクロデブライダは、切断された血管を焼灼するために周期的に鼻から外さなければならず、このことが処置を長引かせる。さらに、鋸状のエッジおよびマイクロデブライダのその他の微細な割れ目は、残骸が詰まりやすく、外科医は手術中マイクロデブライダを外してきれいにする必要があり、さらに処置の時間を長引かせる。しかし、もっと深刻なことは、マイクロデブライダが正確ではなく、処置中に標的の副鼻腔組織と軟骨、骨または脳神経など鼻内のその他の組織を区別することが難しいことが多いことである。従って、外科医は、鼻内の軟骨および骨の損傷を最小限に抑え、視神経などの神経を傷つけないようにするために非常に慎重でなければならない。
【0008】
レーザーは、当初、熱で組織を剥離または気化して、組織内の小さい血管を焼灼し封止する役割を果すので、副鼻腔の手術に理想的と考えられた。残念ながら、レーザーは、高価であると同時に、この種の処置に使用するのは多少時間がかかる。レーザーのもう1つの短所は、組織剥離の深さを判断することが難しい点である。外科医は一般的に言って組織に接触することなくレーザーを当てて、照射するので、レーザーがどの程度の深さまで切断しているか判断するための触覚的フィードバックを一切受け取らない。健康な組織、軟骨、骨および(または)脳神経は、副鼻腔組織のごく近くにあることが多いので、組織の損傷の深さを最小限に抑えることが不可欠であるが、レーザーを使用する場合必ずしもこれが保証されない。
【0009】
睡眠無呼吸症候群は、日中の傾眠過剰、知的劣化、不整脈、いびきおよび睡眠中の輾転反側などを特徴とする症状である。この症候群は、古典的に2つのタイプに分類される。1つは、「中枢神経系睡眠無呼吸症候群」と呼ばれるもので、呼吸作用を繰り返し失うことを特徴とする。閉塞性睡眠無呼吸症候群と呼ばれる第二のタイプは、患者の上部気道すなわち喉頭の頭側で喉頭を含まない気道部分の閉塞のために生じる睡眠中の反復的な無呼吸症状を特徴とする。
【0010】
睡眠無呼吸の治療には様々な内科的、外科的および理学的措置が含まれる。内科的措置には、医薬の使用、および鎮静薬またはアルコールなど中枢神経系抑制剤の回避が含まれる。この措置は時には役立つが、完全に効果を持つことは稀である。理学的措置は、減量、鼻咽頭気道、鼻CPAP(持続的陽圧呼吸)および夜間に使用される様々な舌保持装置が含まれる。これらの措置は面倒で、不快で、長期間使用するのは難しい。特に、CPAP装置は、閉塞を緩和するために気道に対して空気圧の「副子」として作用するが、患者の生涯にわたる場合があり、通常、睡眠中および仮眠中ほぼ100%装置を使用しなければならない。
【0011】
外科的関与には、口蓋垂咽頭形成(UPPP)、レーザー支援口蓋垂形成処置(LAUP)、扁桃切除、顎後退を補正するための手術および気管開口手術が含まれる。LAUPは、口蓋および口蓋垂部分の過剰な組織を切除し、気化するためにCO2レーザーを使用する。UPPPにおいては、口蓋垂、口蓋、咽頭および(または)扁桃の一部を除去するために一般にメスまたは従来の電気メス装置が使われる。これらの処置は効果的ではあるが、患者によっては外科的に危険があるので使えないことが多い。さらに、従来の電気メスまたはレーザー装置を使って行われるUPPPおよびLAUPは、一般に過剰な出血および手術後の激痛を生じるので、患者にとっては受け入れがたいかも知れない。
【0012】
最近、睡眠無呼吸などの気道障害を治療するために、選択的に舌の一部を破壊するためにRFエネルギーが使用されている。カリフォルニア州サニーヴェールのSomnus Medical Technologiesが開発したこの処置は、患者の口の粘膜下組織を乾燥または破壊するためにRF電流を標的組織に送る単極電極を使用する。当然、この単極装置は電流が患者の体の不確定の経路を流れて、患者の身体に望ましくない電気刺激を与える危険を増大するという短所がある。さらに、患者の体の確定経路は比較的高いインピーダンスを持つので(距離および患者の身体の抵抗が大きいため)、一般に、標的組織を剥離または切断するために適した電流を発生させるためには帰還電極と活性電極の間に大きな電位差を加えなければならない。しかし、この電流は確定電気経路より小さいインピーダンスを持つ身体経路を偶発的に流れる場合があり、この経路を流れる電流を大幅に増大して、周囲の組織または近隣の周辺神経を損傷または破壊する可能性がある。
【0013】
Somnus単極電極など従来のRF装置の別の短所は、この種の装置が、一般に、活性電極と標的組織の間に電位差を生じて、電極と組織の間の物理的間隙に電気アークを形成することによって機能する点にある。電気アークと組織の接点において、電極と組織の間の高い電流密度により急激な組織の加熱が生じる。この高電流密度は、細胞液を急激に蒸気にするので、局部的組織加熱の経路にそって「切断効果」が生じる。このようにして、組織は、気化細胞液の経路に沿って分離されて、標的組織の周りに望ましくない付帯的な組織損傷を誘発する。この付帯的な組織損傷は、組織の無差別的破壊を引き起こして、組織の適切な機能を損失することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、耳、鼻および喉内の組織など患者の頭部および頸部の構造に選択的に電気エネルギーを与えるためのシステム、装置および方法を提供する。本発明のシステムおよび方法は、特に、副鼻腔手術(例えば、慢性副鼻腔炎および/またはポリープ切除)における組織の剥離および止血、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸の治療のための処置における膠原収縮、剥離および(または)止血(たとえば、軟口蓋または舌/咽頭硬化および中線舌切除)に有益である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施方法は、1つまたはそれ以上の電極端子を標的部位と少なくとも部分接触またはごく近接するように電気外科用プローブを標的組織に隣接する位置に置く。等浸透圧食塩水など導電性流体を標的部位に向けて送って、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に電流の流路を作る。次に、導電性流体によって作られる電流経路を通じて電極端子と帰還電極の間に高周波電圧を加える。処置に応じて、標的部位の組織構造を切断、除去、剥離、収縮、凝結、気化、乾燥、またはその他の方法で修正するために、プローブを並進、往復またはその他の方式で操作することができる。この方法は、導電性流体が電極端子から帰還電極まで適切な電流の流路となるので、特に、鼻または口の手術など本来的に乾燥した環境(すなわち、組織が流体に浸されてない環境)において効果的である。
【0016】
本発明の1つの態様においては、腫脹した鼻組織、粘膜、鼻甲介、ポリープ、新生物、軟骨(例えば鼻中隔)などの遮断を除去するために患者の鼻腔または副鼻腔の組織を取り除くための方法が提供される。この方法においては、内視鏡を使って鼻孔の一方からまたは開放処置で直接1つまたはそれ以上の電極端子が鼻腔に入れられる。電極端子を実質的に流体によって囲むために、等浸透圧食塩水などの導電性流体が鼻腔内またはその周りの標的部位に送られる。その代わりに、処置中電極端子がゲル内に浸るように導電性ゲルなどもっと粘性の流体を標的部位に塗布することができる。どちらの実施態様においても、組織の少なくとも一部を除去するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。高周波電圧は、組織内の切断された血管の止血の深さを制御するよう選択されることが望ましく、これにより、外科医にとって手術部位の視界が大幅に改善される。
【0017】
特定の形態においては、鼻組織は、分子解離または崩壊プロセスにより除去される。この実施態様においては、電極端子に加えられる高周波電圧は、電極端子と組織の間の導電性流体(例えばゲルまたは食塩水)を気化させるのに充分である。気化した流体の中で、イオン化したプラズマが形成され、荷電粒子(例えば電子)が組織に向かって加速されて、組織のいくつかの細胞層の分子破壊または崩壊を生じる。この分子解離には、組織の量(体積)的な除去が伴う。プラズマ層内での加速した荷電粒子は射程は短いので、分子解離プロセスは表層に限定され、基礎組織の損傷および壊死を最小限に抑える。このプロセスは、10から150マイクロメートルという薄さの組織の量的な除去を行うために正確に制御することができ、周囲のまたは基礎の組織構造への加熱または損傷はわずかである。この現象についてのさらに詳しい説明は、一般譲渡された米国特許第5683366号に記載されており、その開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0018】
本発明は、内視鏡副鼻腔手術に関して、現在のマイクロデブライダおよびレーザー技術に比べて多くの利点を持っている。組織の量的な除去を正確に制御できることにより、組織の剥離または除去の領域が非常に限定され、一貫し、予測可能になる。組織加熱の深さが小さいことも、標的副鼻腔組織に隣接することが多い健康な組織構造、軟骨、骨および(または)脳神経への損傷を最小限に抑えるか完全に排除するのに役立つ。さらに、組織が除去されるとき鼻内の小さい血管が同時に焼灼され封止されて、処置中継続的に止血される。これによって外科医の視界が広がり、処置の時間が短縮される。さらに、本発明は導電性流体の使用を斟酌しているので(先行技術の双極および単極電気外科技術と異なり)、処置中に等浸透圧の食塩水を使用できる。食塩水は、体液と同じ濃度を持ち他の流体ほど体内に吸収されないので、灌注のために適した媒体である。
【0019】
1つの実施態様においては、傷が治癒するとき瘢痕組織形成されることにより鼻甲介を収縮させ、腫脹を防ぐために、鼻内の鼻甲介近くまたはその中の部位から小さい組織片または孔が除去される。本発明によれば、1つまたはそれ以上の電極端子は鼻甲介付近の標的組織に隣接する位置に置かれ、上に説明されるとおり流体が標的組織に送られる。高周波エネルギーが電極端子および帰還電極に与えられると、電極端子が除去された組織により空になった空間に前進して、鼻甲介組織に小さい孔または溝を形成する。一般に直径3mm未満(直径1mm未満が望ましい)のこの孔は、鼻甲介を収縮させ腫脹を防ぐのに役立つ。1つの実施態様例においては、基礎組織を剥離する前に粘膜を持ち上げられるように、切開が行われる(すなわち、別個の器具を使ってまたは本発明の電気外科用プローブを使って)。これは、粘膜および鼻にとって重要なその機能を守るのに役立つ。その代わりに、粘膜に直接孔を通すことができる。本発明によって形成される孔のサイズは小さいので、これによって粘膜輸送に悪影響を及ぼすことはないはずである。組織に孔または溝を形成するための電気外科的方法についてさらに詳しい説明は、参照により本出願にすでに組み込まれている米国特許第5683366号に示されている。
【0020】
本発明の別の態様における方法では、鼻腔または喉など患者の頭部または頸部内の標的部位のごく近くに1つまたはそれ以上の電極端子の位置が定められる。標的部位の組織内の膠原線維の温度を体温(約37℃)から約45℃から90℃の範囲、通常約60℃から70℃の組織温度に上げて、本質的に不可逆的に膠原線維を収縮させるために、電極端子に高周波電圧が加えられる。望ましい実施態様においては、導電性流体が、電極端子と電極端子に近接して配置される1つまたはそれ以上の帰還電極の間に送られて、組織から離れた電極端子から帰還電極への電流の流路を作る。電流の流路は、導電性流体を帰還電極を通り過ぎて標的部位まで流体経路に沿って送ることにより、またはゲルなど粘性の導電性流体を標的部位に配置して電極端子および帰還電極を導電性ゲル内に沈めることによって、作ることができる。膠原線維は、電流が帰還電極に戻る前に選択された深さまで組織に電流を通すことによって、あるいは導電性流体を加熱して標的部位に向かう加熱流体のジェットまたはプルームを発生させることによって、加熱することができる。後者の実施態様においては、電流が全く組織を通らない場合がある。どちらの実施態様も、加熱流体および(または)電流が、膠原線維の熱水収縮を生じるのに充分な高さまで膠原の温度を上げる。
【0021】
膠原組織の収縮は、特に、いびきまたは睡眠無呼吸など閉塞性睡眠障害を治療するための処置において有益である。この種の処置においては、1つまたはそれ以上の電極端子が患者の口に導入され、舌、扁桃、軟口蓋組織(例えば、口蓋垂)、硬組織および粘膜組織の選択された部分の標的組織に隣接する位置に置かれる。外科医が処置を見ることができるように、内視鏡またはその他のタイプの視覚検査装置も口に導入するまたは部分的に導入することができる(視覚検査装置は電気外科用プローブと一体型でもこれから分離したものでもよい)。選択された組織部分の下および周りの組織に望ましくない損傷を与えることなく、例えば口蓋垂の一部を剥離または収縮するために、導電性流体が上に説明されるとおりに使用され、電極端子および1つまたはそれ以上の帰還電極に高周波電圧が加えられる。
【0022】
本発明に基づく装置は、一般的に言って、近位端および遠位端を持つシャフト付き電気外科用プローブまたはハンドピース、遠位端の1つまたはそれ以上の電極端子および電極端子を高周波電気エネルギー源と結合する1つまたはそれ以上のコネクタを含む。内視鏡副鼻腔手術の場合、シャフトは少なくとも患者の鼻孔の一方を通せるサイズの遠位端を持つ。腫脹した鼻甲介を治療する場合、腫脹した鼻甲介組織内に小さい孔または溝を形成しやすくするために、シャフトの遠位端の直径は通常3mm未満とし、1mm未満が望ましい。シャフトは、さらに、標的組織を内視鏡で調べるために近位のアイピースに連結された遠位のレンズを含むことができる。その代わりに、内視鏡を別個の器具とし、これを電気外科用プローブと同じ開口または別の開口から導入することができる。
【0023】
装置は、さらに、導電性流体を電極端子および標的部位に送るための流体供給エレメントを含むことが望ましい。流体供給エレメントはプローブ上に配置するか(例えば、流体ルーメンまたはチューブ)、別個の器具の一部とすることができる。その代わりに、食塩水電解液またはその他の導電性ゲルなど導電性ゲルまたはスプレーを標的部位に塗布することができる。どちらの実施態様においても、導電性流体は、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に電流の流路を作ることが望ましい。1つの実施態様例においては、帰還電極は、プローブの上に配置され、帰還電極と電極端子の間の短絡を回避してまたはこれを最小限に抑えかつ帰還電極を標的部位の組織から遮蔽するために、電極端子から充分な間隔が置かれる。
【0024】
特定の形態においては、電気外科用プローブは、プローブの遠位端に組織治療面を持つ電気絶縁電極支持材を含む。電極端子が帰還電極と間隔を置いて配置されるように、1つまたはそれ以上の電極端子が、電極支持材に結合されるまたはこれと一体化される。1つの実施態様においては、プローブは、電極端子が電極支持材の組織治療面から遠位方向に約0.2mmから10mm伸びるように電極支持材に埋め込まれた電気的に隔離された複数の電極端子を持つ電極配列を含む。この実施態様においては、プローブは、さらに、導電性流体を電極支持材の組織治療面の周りの1つまたはそれ以上の開口に送るための1つまたはそれ以上のルーメンを含む。1つの実施態様例においては、ルーメンは、帰還電極の近くに端を持つプローブシャフト外側の流体チューブの中に伸びる。
【0025】
このシステムは、任意に、プローブの遠位端でまたはその付近で1つまたはそれ以上の温度センサに結合される温度コントローラを含むことができる。コントローラは設定温度と測定温度値に反応して、電源の出力電圧を調節する。温度センサは、例えば、プローブの遠位端の温度を測定する、絶縁支持材に配置される熱電対とすることができる。この実施態様においては、設定温度は、例えば膠原組織の収縮する組織温度すなわち約60℃から70℃に相当する温度であることが望ましい。その代わりに、温度センサは、直接、組織温度を測定することができる(例えば、赤外線センサ)。
【0026】
本発明の別の態様においては、腫脹した鼻組織、粘膜、ポリープ、新生物など遮断を除去するために患者の鼻腔または副鼻腔に連結する小さい通路の1つの閉塞媒体を除去するための方法が提供される。この方法においては、1つまたはそれ以上の電極端子が、内視鏡を使って鼻孔の1つを通してまたは開放処置により直接鼻腔に入れられる。流体で電極端子を実質的に取り囲むために、等浸透圧食塩水など導電性流体が鼻腔内またはその周りの標的部位に送られる。流体は、器具を通して特定の標的部位に送るか、処置中電極端子が浸っているように鼻腔全体を導電性流体で満たすことができる。どちらの実施態様においても、通路内の閉塞媒体の少なくとも一部を量的に除去または剥離するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。
【0027】
この実施態様において、装置は、一般的に言って、近位端および遠位端を持つシャフトを持つ電気外科用カテーテル、遠位端の1つまたはそれ以上の電極端子および電極端子を高周波電気エネルギー源に結合する1つまたはそれ以上のコネクタを含む。カテーテル・シャフトは、少なくとも、鼻腔および(または)副鼻腔に連結される小さい体管腔を通して送ることができるサイズの遠位端部を持つ。患者の体の構造に応じて、シャフトの遠位端部の直径は通常3mm未満であり、0.5mm未満が望ましい。シャフトは、さらに、標的組織を内視鏡で検査するために近位アイピースに連結された遠位端のレンズを含むことができる。その代わりに、内視鏡を別個の器具とし、これを電気外科用カテーテルと同じ開口または別の開口から導入することができる。
【0028】
本発明の別の態様においては、鼻甲介など鼻の腫脹したまたは膨大した組織構造の剥離および止血のためのシステムおよび方法が提供される。本発明のこの方法では、1つまたはそれ以上の電極端子が膨大した体構造に少なくとも一部接触するまたはごく近接するように、この体構造に隣接する位置に電気外科用器具が配置される。体組織の少なくとも一部を量的に除去するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。電極端子は、孔、溝、条、クレーターなど体構造に空隙を削るために電気エネルギーが加えられる間またはその後、体構造に対して相対的に並進させることができる。実施態様によっては、構造の一部に1つまたはそれ以上の溝または孔を開けるために、体構造に向かって軸方向に電極端子を並進させる。他の実施態様においては、1つまたはそれ以上の条または溝を形成するために体構造を横切るように電極端子を並進させる。ほとんどの実施態様において、等浸透圧食塩水などの導電性流体が電極端子と体構造の間に配置される。双極療法においては、導電流体は電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に電流の流路を作る。次に、導電性流体により作られた電流の流路を通じて電極端子と帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。
【0029】
本発明の1つの態様においては、腫脹した鼻組織、粘膜、鼻甲介、ポリープ、新生物など患者の鼻の膨大した腫脹組織の体積を減らすための方法が提供される。特に、鼻甲介に隣接する位置に1つまたはそれ以上の電極端子を配置し、電極端子を流体で実質的に取り囲むために等浸透圧食塩水などの導電性流体を鼻腔に送ることによって、鼻甲介が治療される。その代わりに、処置中電極端子がゲル内に浸るように、導電性ゲルなどもっと粘性の流体を標的部位に塗布することができる。どちらの実施態様においても、鼻甲介近くまたは鼻甲介内の部位から小さい組織片、溝または孔を除去して、傷が治癒するとき瘢痕組織を形成することにより鼻甲介を収縮し腫脹を防ぐために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰路単極の間に高周波電圧が加えられる。高周波電圧は、標的部位の隣接領域を越えて熱損傷が広がることなく瘢痕組織を形成しやすくするために、溝または孔の壁に少量の熱損傷を与えるように選択される。
【0030】
本発明により形成される、通常、直径3mm未満(1mm未満が望ましい)の孔または溝は、鼻甲介を収縮させ腫脹を防ぐのに役立つ。1つの実施態様例においては、基礎組織を剥離する前に粘膜を持ち上げられるように、切開が行われる(すなわち、別個の器具を使ってまたは本発明の電気外科用プローブを使って)。これは、粘膜および鼻にとって重要な粘膜の機能を保存するのに役立つ。その代わりに、粘膜に直接孔を開けるができる。本発明によって形成される孔のサイズは小さいので、粘膜輸送には悪影響を及ぼさないはずである。組織に孔または溝を形成するための電気外科的方法についてのさらに詳しい説明は、すでに参照により本出願に組み込まれている米国特許第5683366号に示されている。
【0031】
別の実施態様においては、プローブまたはカテーテルなど電気外科用器具は、近位端および遠位端を持つシャフト、遠位端の1つまたはそれ以上の電極端子および電極端子を高周波電気エネルギー源に結合する1つまたはそれ以上のコネクタから成る。この実施態様においては、電極端子は、組織を切断するために設計されることが望ましい。すなわち、通常、電極端子は、遠位エッジまたはポイントを持つ。従来の電気外科は、細胞液が破裂して局部加熱の経路に沿って切断効果を生じるまで組織を急速に加熱することによって組織を切り開く。本発明は、周りの組織に対する熱損傷を最小限に抑える低温剥離プロセスで、切断経路に沿って組織を量的に除去する。電極端子は組織を切断するように設計されることが望ましい。すなわち、電極端子は、通常遠位エッジまたはポイントを持つ。この実施態様例においては、組織に線形の切断経路を形成するために、電極端子は、相互に整合される。
【0032】
さらに、本発明の別の態様においては、口および喉の粗大な組織を除去するためおよびいびきまたは睡眠無呼吸など閉塞性睡眠障害を治療するために、組織の剥離、切断および止血のためのシステムおよび方法が提供される。本発明は、口および喉内の閉塞組織の除去に使用される従来のRF装置およびレーザーより低い温度を使用する新規の正確なプロセスで、この種の組織を取り除く。したがって、本発明の粗大組織の除去は、付帯的な組織損傷が大幅に少なくなるので、従来の処置より手術後の痛みが小さく、治癒が早い。
【0033】
本発明の実施方法では、1つまたはそれ以上の電極端子が患者の口に導入され、たとえば舌、扁桃、軟口蓋組織(例えば、口蓋垂および咽頭)、硬組織またはその他の粘膜組織の選ばれた部分など標的組織に隣接する位置に電極端子を配置する。電極端子を流体で実質的に取り囲むために、等浸透圧食塩水など導電性流体が口内の標的部位に送られる。流体は、器具を通して特定の標的部位に送るか、電極端子が処置中流体に浸されるように標的部位全体を導電性流体で満たすことができる。どちらの実施態様においても、閉塞組織の少なくとも一部をその場で量的に除去または剥離するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。組織内の切断された血管の止血の深さを制御するためにも高周波電圧を選択することができ、これにより、処置中外科医にとって手術部位の視野が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】電源、および本発明に基づく組織剥離、切除、切開、収縮および血管止血のための電気外科用プローブを組み込む電気外科用システムの斜視図である。
【図2】本発明に基づく電気外科用プローブの側面図である。
【図3】図2のプローブの端面図である。
【図4】図1の電気外科用プローブの横断面図である。
【図5】電気外科用プローブの近位部の分解図である。
【図6A】内側流体ルーメンを組み込む代替電気外科用プローブの斜視図である。
【図6B】内側流体ルーメンを組み込む代替電気外科用プローブの端面図である。
【図7A】本発明に基づく電気外科用プローブの3つの実施態様の遠位部の横断面図である。
【図7B】本発明に基づく電気外科用プローブの3つの実施態様の遠位部の横断面図である。
【図7C】本発明に基づく電気外科用プローブの3つの実施態様の遠位部の横断面図である。
【図8A】平らな電極端子を組み込むさらに別の電気外科用プローブの横断面図である。
【図8B】平らな電極端子を組み込むさらに別の電気外科用プローブの端面図である。
【図9】90°の遠位ベンドおよび側面流体ルーメンを持つ電気外科用プローブを示している。
【図10】本発明に基づく別個の流体供給器具を持つ電気外科用プローブを示している。
【図11】患者の鼻腔内の手術部位を見るために鼻孔から内視鏡が入れられる、内視鏡副鼻腔外科処置を示している。
【図12】本発明に基づく上に説明されるプローブの1つを使った内視鏡副鼻腔外科処置を示している。
【図13A】本発明に基づく組織の剥離を示す、副鼻腔外科処置の詳細図を示している。
【図13B】本発明に基づく組織の剥離を示す、副鼻腔外科処置の詳細図を示している。
【図14】本発明に基づく、睡眠無呼吸などの閉塞性睡眠障害を治療するための処置を示している。
【図15】本発明に基づく頭部および頸部内の体構造の電気外科的治療のためのカテーテル・システムを示している。
【図16】本発明の1つの実施態様に基づくカテーテルの作業端の横断面図を示している。
【図17A】本発明の第二の実施態様に基づくカテーテルの作業端の横断面図を示している。
【図17B】図17Aのカテーテルの端面図である。
【図18】本発明に基づき患者の鼻内の管腔から組織を除去する方法を示す、患者頭部の矢状面図である。
【図19】副鼻腔を示す、患者頭部の前頭面図である。
【図20】外科的切断に使用するのに適した電極端子の細長い線状配列を持つ電気外科用プローブの詳細端面図である。
【図21】遠位先端に平らな端を持つ単一電極端子の詳細図である。
【図22】遠位先端に尖った端を持つ単一電極端子の詳細図である。
【図23】皮膚科の処置に使用される電気外科用プローブの別の実施態様の斜視図である。
【図24】複数の電極端子を含む電極支持材を示す、プローブの遠位先端の端面図である。
【図25】ハンドピースの電気接続および電極支持を詳細に示している。
【図26】本発明に基づく別の電気外科用プローブの遠位部の斜視図である。
【図27】組織の切断および凝結のために設計された電気外科用プローブの遠位部の部分横断面図である。
【図28】組織の切断および凝結のために設計された電気外科用プローブの遠位部の部分横断面図である。
【図29】上記のプローブの1つを使って鼻甲介を治療するための処置を示している。
【図30A】本発明に基づく組織の剥離を示す、図29の鼻甲介処置の詳細図である。
【図30B】本発明に基づく組織の剥離を示す、図29の鼻甲介処置の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、特に耳、口、咽頭、喉頭、食道、鼻腔および副鼻腔など頭部および頸部の組織を含めて、頭部患者の体内または体上の標的部位に電気エネルギーを選択的に加えるためのシステムおよび方法を提供する。この処置は、検鏡または開口器を使って、または機能的内視鏡副鼻腔手術(FESS)など内視鏡技術を使って、実施することができる。上記の処置は、扁桃、アデノイド、喉頭蓋および声門部位における頭蓋、鼻甲介および鼻孔の各種の解剖学的腔および唾液腺からの腫脹した組織、慢性病の炎症を起こし肥大した内粘膜、ポリープおよび(または)新生物の除去、および鼻中隔の粘膜下切除、病変組織の切開などを含む。その他の処置においては、本発明は、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸を治療するための処置における膠原収縮、剥離および(または)止血(例えば、口蓋垂などの軟口蓋または舌/咽頭硬化および中線舌切除)、扁桃切除、アデノイド切除、気管狭窄および声帯ポリープおよび損傷など粗大組織の除去、または舌切除、喉頭切除、聴神経腫処置および鼻剥離処置など顔面腫瘍または口および咽頭内の腫瘍の切除または剥離に有益であろう。さらに、本発明は、あぶみ骨切除、鼓膜切開など耳内の処置にも有益である。
【0036】
本発明は、また、頭部および頸部の美容外科および形成外科にも有益であろう。例えば、本発明は、特に、造鼻処置中削られる鼻内の軟骨など軟骨組織の剥離および彫刻に有益である。本発明は、また、頭部および頸部の皮膚組織除去および(または)表皮または真皮組織における膠原収縮、例えば、色素沈着、血管損傷(例えば脚の静脈)、瘢痕、刺青などの除去に、また、組織若返り、美容眼瞼形成、しわ除去、皺皮切除または睫毛挙上のための筋肉引き締め、脱毛および(または)植毛処置などその他の皮膚の外科処置にも利用できる。
【0037】
本発明は、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸を治療するための処置(例えば、UPPPおよびLAUP)における組織の切断、切除、剥離および(または)止血、扁桃切除、アデノイド切除、気管狭窄および声帯ポリープおよび損傷などの粗大組織除去、または舌切除、喉頭切除、聴神経腫処置および鼻剥離処置など顔面腫瘍または口および咽頭内の腫瘍の切除または剥離に、有益である。便宜上、開示の残り部分では、特に、閉塞性睡眠障害の治療について述べるが、システムおよび方法は、体のその他の組織の処置ならびに開放処置、血管内処置、泌尿器科、腹腔鏡検査、関節鏡検査、胸腔鏡検査またはその他の心臓処置、美容外科、整形外科、婦人科、耳鼻咽喉科、脊椎神経科処置、腫瘍処置などを含めてその他の処置にも同等に応用できる。
【0038】
本発明の一部の実施態様においては、組織構造を除去し(または)修正するために、導電性流体が存在する状態で1つまたはそれ以上の電極端子に高周波(RF)電気エネルギーが与えられる。処置に応じて、本発明は、(1)組織、骨または軟骨を量的に除去するため(すなわち、組織構造を剥離するまたは分子解離させる)ため、(2)孔、溝、ディボットまたはその他のスペースを組織内に形成するため、(3)組織を切断または切除するため、(4)膠原結合組織を収縮させるため、および(または)(5)切断された血管を凝結させるために、使用できる。
【0039】
本発明の1つの態様においては、閉塞性組織が量的に除去または剥離される。この処置においては、標的組織付近に高い電界強度を発現するために、1つまたはそれ以上の電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電位差が加えられる。電極端子に隣接する高い電界強度は、分子解離(熱蒸発または炭化ではなく)による標的組織の電界誘導分子破壊を引き起こす。出願者は、相対的に大きい有機分子が水素、酸素、炭素酸化物、炭化水素および窒素化合物などより小さい分子および(または)原子に分子崩壊することにより組織構造が量的に除去されると、信じている。この分子崩壊は、電気外科的乾燥および気化の場合に一般的に見られるように組織の細胞内の液体を除去することにより組織を脱水するのと違い、完全に組織構造を除去する。
【0040】
高電界強度は、電極端子の遠位先端と標的組織の間の領域において電極端子の少なくとも一部を覆う導電性流体を気化するのに充分な高周波電圧を加えることによって、発生することができる。導電性流体は、標的部位に送られる等浸透圧食塩水または血液などの液体か、または標的部位に塗布されるゲルなどの粘性流体とすることができる。蒸気層または気化領域の電気インピーダンスは比較的高いので、電極端子先端と組織の間の電位差を増大し、イオン化種(例えば、等浸透圧食塩水が導電性流体である場合のナトリウム)が存在するために蒸気層内でイオン化を生じる。このイオン化は、最適条件の下では、蒸気層から標的組織の表面に向けて高エネルギー電子および光子の放出を誘発する。このエネルギーは、高エネルギー光子(例えば紫外線)、高エネルギー粒子(例えば電子)またはその組み合わせの形をとることが考えられる。コブレーション(Coblation)(登録商標)と呼ばれるこの現象についてのさらに詳しい説明は、一般譲渡された米国特許第5683366号において示されており、その完全な開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0041】
一部の処置、例えば、軟口蓋または舌/咽頭硬化においては、標的部位の膠原結合組織を収縮させることが望ましい場合がある。このような処置においては、RFエネルギーは、電流の流れにより直接的に、また(または)RFエネルギーにより加熱された流体に組織をさらすことにより間接的に、組織を加熱して、組織温度を正常な体温(例えば、37℃)から45℃から90℃の範囲(できれば約60℃から70℃の範囲が望ましい)の温度に上げる。膠原線維の熱収縮は、哺乳類膠原の場合60℃から70℃と言う狭い温度範囲内で生じる(DeakG.その他、「位置光学的染色反応の偏光分析により明らかな膠原線維の熱収縮プロセス」、ハンガリー形態学会公報、第15(2)巻、p.195−208、1967年)。膠原線維は、一般に60℃から約70℃の範囲で熱収縮を生じる。以前に報告された研究では、膠原の熱収縮の原因を膠原基質内の内部安定化架橋結合の開裂に求めている(Deak、同書)。また、膠原温度が70℃以上に上げられると、膠原気質が再び弛緩し始め、収縮効果が逆転して、正味収縮がなくなることも、報告されている(AllainJ.C.その他、「ラットの皮膚の熱水腫脹中発現する等長張力」、結合組織研究、第7巻、p.127−133、1980)。したがって、正確な深さまで制御して組織を加熱することが、療法として膠原収縮を行う上で重要である。膠原収縮についてさらに詳しい説明は、1997年10月2日に提出された米国特許出願第08/942580号(弁理士整理番号第16238−001300号)に示されている。
【0042】
加熱部位に膠原収縮を生じるための望ましい加熱深さ(すなわち、組織を60℃から70℃の温度まで上げる深さ)は、一般的に言って、(1)組織の厚み、(2)有害な温度にさらしてはならない付近の構造(例えば、神経)の位置、および(または)(3)療法上の収縮が行われる膠原組織層の位置、によって決まる。加熱の深さは、通常0から3.5mmの範囲である。軟口蓋または口蓋垂内の膠原の場合、加熱深さは、約0.5から約3.5mmの範囲であることが望ましい。
【0043】
他の実施態様においては、本発明は、組織構造を除去(すなわち、切除、切断または剥離)し、標的組織部位内の切断された血管を封止するために、導電性流体環境で高周波(RF)電気エネルギーを使用する。本発明は、特に、例えば、1mmかそれ以上の大き目の動脈を封止するのに有益である。実施態様によっては、剥離モードおよび凝結モードを持つ高周波電源が提供され、剥離モードにおいては、組織の分子解離または崩壊を生じるのに充分な第一の電圧が電極端子に加えられ、凝結モードにおいては、組織内の切断された血管を止血するのに充分な第一の電圧より低い第二の電圧が電極端子(同じ電極または別の電極)に加えられる。他の実施態様においては、動脈など切断された血管を封止するために構成された1つまたはそれ以上の凝結電極、および組織内の膠原線維を縮小するか例えば組織が分子解離を起こすのに充分なエネルギーを与えることによって組織を除去(剥離)するために構成される1つまたはそれ以上の電極端子を持つ電気外科用器具が提供される。後者の実施態様においては、凝結のために凝結電極を使ってまた剥離のために電極端子を使って単一の電圧を加えることができるように、凝結電極を構成することができる。他の実施態様においては、電源が凝結モード(低電圧)のとき凝結電極が使用され、電源が剥離モード(高電圧)のとき電極端子が使用されるように、電源が凝結器具と結合される。
【0044】
本発明の1つの方法においては、1つまたはそれ以上の電極端子が標的部位の組織のごく近くに置かれ、下に説明されるとおり分子解離により組織を量的に除去するのに充分な電圧が電極端子と帰路端子の間に加えられるように剥離モードで起動される。このプロセス中、組織内の血管が切断される。小さい血管は本発明のシステムおよび方法を使って自動的に封止される。大きい血管および動脈など流量の大きい血管は、剥離モードでは自動的に封止されないかも知れない。このような場合、切断された血管は、電源の電圧を凝結モードに下げるように制御装置(例えば、フット・ペダル)を起動することによって、封止することができる。このモードにおいては、電極端子を切断された血管に押し当てて、血管を封止あるいは凝結させることができる。その代わりに、同じまたは異なる器具に配置される凝結電極を切断された血管に押し当てることができる。血管が適切に封止されたら、外科医は、電源の電圧を再び剥離モードに上げるために制御装置(例えば、別のフット・ペダル)を起動する。
【0045】
本発明は、また、脊髄神経またはたとえば舌下神経、視神経、顔面神経、内耳神経などの脳神経など神経の周りの組織を除去または剥離するためにも有益である。これは、神経近くにある組織を除去するときに特に有利である。先行技術のRF装置、メスおよびレーザーの大きな欠点の1つは、これらの装置が標的組織と周囲の神経または骨とを区別しないことである。したがって、外科医は、患者の口および喉の中およびその周りの神経を傷つけないように処置中非常に慎重にしなければならない。本発明において、組織を除去するためのコブレーション(登録商標)プロセスは、上に論じたとおり、付帯的な組織損傷の深さを非常に小さくする。これにより、外科医は、神経線維を付帯的に損傷することなく神経近くの組織を除去することができる。
【0046】
本発明の新規のメカニズムの全般的に正確な性質に加えて、出願者は、組織除去中隣接する神経を傷つけないようにする付加的方法を発見した。本発明に従えば、神経線維のすぐ周りの脂肪組織と処置中除去される予定の通常の組織の間を区別するためのシステムおよび方法が提供される。神経は、通常、神経線維の束を包む結合組織鞘つまり神経上膜を含み、各束は神経線維を保護するために独自の結合神経鞘(神経周膜)に囲まれている。外側の保護組織鞘すなわち神経上膜は、一般に、例えば鼻甲介、ポリープ、粘膜組織など副鼻腔処置中鼻から除去される通常の標的組織とかなり異なる電気特定を持つ脂肪組織を含む。本発明のシステムは、1つまたはそれ以上の電極端子を使ってプローブ先端の組織の電気特性を測定する。電気特性には、1つの、複数のまたはある範囲の周波数(たとえば1kHzから100MHzまでの範囲)の時の電気伝導率、誘電率、キャパシタンスまたはその組み合わせを含むことができる。この実施態様において、プローブ先端の検知電極が神経の周りの脂肪組織を検出したとき可聴信号を発するか、プローブの先端または作業端が触れる組織が測定される電気特性から判断して通常の組織の場合にのみ電極端子に個別にまたは電極配列全体に電力を送るように、直接フィードバック制御を備えることができる。
【0047】
1つの実施態様においては、電気インピーダンスが閾値に達すると電極端子が停止またはオフになるように電流制限素子(上で詳細に論じたとおり)が構成される。閾値が神経の周りの脂肪細胞のインピーダンスに設定される場合、電極端子は、神経と接触するかそのごく近くに来ると停止する。一方、鼻組織と接触するまたはそのごく近くにある他の電極端子は、帰還電極に電流を伝導しつづける。この低インピーダンス組織の選択的剥離または除去を本発明のコブレーション(登録商標)メカニズムと組み合わせると、外科医は、神経または骨の周りの組織を正確に除去することができる。出願者は、本発明が神経の機能を阻害することなくまた神経上膜の組織をひどく傷つけることなく、神経に近接する組織を量的に除去できることを知った。
【0048】
さらに、出願者は、本発明のコブレーション(登録商標)メカニズムは、他の組織構造にほとんど影響を与えずに特定の組織構造を剥離または除去するように操作できることを発見した。上で論じたとおり、本発明は、電極端子の周りにプラズマ層またはポケットを形成するために導電性流体を気化し、その後このプラズマ層または蒸気層からのエネルギーの放出を誘発して組織構造の分子結合を破壊する技術を使用する。初期の実験を基にして、出願者は、イオン化蒸気層内の自由電子は、電極先端付近の高電界において加速すると信じる。蒸気層(または導電性流体に形成される気泡内)の密度が充分低くなると(すなわち、水溶液の場合約1024Pa/cm3 (1020標準大気圧/cm3 )未満)、電子の平均自由行程が増大して、その後注入される電子が低密度の領域(すなわち蒸気層または気泡)内で衝突電離を生じられるようになる。高エネルギー電子(例えば、4から5eV)によって放出されるエネルギーは、その後、分子に衝撃を与えて、その結合を破壊し、分子を遊離基に解離し、この遊離基が化合して最終的な気体または液体種になる。
【0049】
高エネルギー電子が放出するエネルギーは、多様なファクター、例えば電極端子の数、電極サイズおよび間隔、電極表面積、電極表面の凹凸および鋭いエッジ、電極材質、加えられる電圧および電力、インダクタなど電流制限手段、電極と接触する流体の伝導率、流体の密度およびその他のファクターを調節することによって、変動できる。したがって、これらのファクターを操作して、励起される電子のエネルギー・レベルを制御することができる。組織構造はそれぞれ異なる分子結合を持つので、本発明は、特定の組織の分子結合を破壊しながら、他の組織の分子結合を破壊するにはエネルギーが小さすぎるように、構成できる。例えば、脂肪組織は、破壊するためには4から5Evよりかなり大きいエネルギーを必要とする二重結合をもっている。したがって、一般的に言って、本発明の電流構成においては、この種の脂肪組織を剥離または除去しない。もちろん、この二重結合も単一結合と同じように破壊できるよう、ファクターを変更することができる(例えば、電圧を増大してまたは電極構成を変更して、電極先端の電流密度を増大する)。この現象に関するさらに詳しい説明は、1998年2月27日に提出された同時係属米国特許出願第09/032375号(弁理士整理番号第CB−3号)に示されており、その完全な開示が参照により本出願に組み込まれる。
【0050】
本発明は、また、腫瘍からの生存可能な細胞の広がりを最小限に抑えつつ、腫瘍またはその他の望ましくない体構造を選択的に除去するためのシステム、装置および方法を提供する。この種の腫瘍を除去するための従来の技術は、一般的に言って、電気外科プルームまたはレーザー・プルームと呼ばれるスモークを手術セッティングに生じ、これが、腫瘍または傷からの無傷の生存可能なバクテリアまたはウィルス粒子を手術チームまたは患者の体の他の部分に拡散する可能性がある。この生存可能な細胞または粒子の拡散の可能性は、肝炎、ヘルペス、HIVおよび乳頭腫ウィルスなど人を衰弱させるまたは致命的な特定の病気の増殖の懸念を増すことになる。本発明においては、有機分子を非生存可能な原子および分子に解離または崩壊することによって腫瘍の組織細胞の少なくとも一部を量的に除去するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。特に、本発明は、固体の組織細胞をもはや無傷の生存可能な細胞ではない凝縮不能の気体に変えるので、患者の脳の他の部分または手術スタッフに生存可能な腫瘍粒子を拡散する可能性はない。周囲のまたは基礎の組織への実質的組織壊死を最小限に抑えながら組織細胞の制御された除去を行うために高周波電圧が選択されることが望ましい。この現象についてさらに詳しい説明は、1998年6月30日に提出された同時係属米国特許出願第09/109219号(弁理士整理番号第CB−1号)に示されており、その完全な開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0051】
電気外科用器具は、近位端および1つまたはそれ以上の電極端子を支える遠位端を持つシャフトまたはハンドピースを含む。シャフトまたはハンドピースの主要な目的は活性電極を機械的に支持し、治療中の医者がシャフトの近位端から電極を操作できるようにすることであり、多様な形態をとることができる。シャフトは、剛性でもたわみ性でもよく、たわみ性のシャフトを任意に機械的支持のために一般的に剛性の外部チューブと組み合わせることができる。たわみ性シャフトは、電極配列の位置決めを容易にするために、シャフトの遠位端を選択的に湾曲させるためにプルワイヤ、形状記憶アクチュエータおよびその他の既知のメカニズムと組み合わせることができる。シャフトは、通常、電極配列をシャフトの近位端のコネクタと接続できるように、軸方向に走る複数のワイヤまたはその他の導電素子を含む。
【0052】
鼻内の処置の場合、シャフトは、鼻孔またはその他の開口(例えば、眼の開口または処置中外科的に作る開口)の1つからプローブシャフトを通すことにより外科医が標的部位(例えば鼻腔または副鼻腔の遮断)に達することができるようにするのに適した直径および長さを持つ。したがって、シャフトは、通常、約5から25cmの範囲の長さおよび約0.5から5mmの範囲の直径を持つ。小さい鼻孔の処置の場合、シャフトの直径は、通常3mm未満であり、約0.5mm未満が望ましい。腫脹した鼻甲介の治療など小さい孔または溝を組織に形成する必要のある処置の場合、シャフトの直径は、通常、3mm未満であり、約1mm未満が望ましい。同様に、耳の処置の場合、シャフトは約3から20cmの範囲の長さおよび0.3から5mmの範囲の直径を持たなければならない。口および喉上部の処置の場合、シャフトは、外科医が扱いやすい適切な長さおよび直径を持つ。喉頭切除など喉下部の処置の場合、シャフトは、喉頭に届くよう適切に設計される。例えば、シャフトは、たわみ性とするか、あるいは患者の喉に曲がりに合うように遠位ベンドを持つことができる。この点に関して、シャフトは口および喉の形状に合うよう特に設計されたベンドを持つ剛性シャフトとするか、あるいはたわみ性遠位端を持つか、あるいはカテーテルの一部とすることができる。前記の実施態様のいずれにおいても、シャフトは剛性またはたわみ性の内視鏡を通して導入することもできる。個々のシャフトの設計については、図面と関連させて下に詳しく説明する。
【0053】
電極端子は、器具シャフトの遠位端付近に配置される無機絶縁支持材内でまたはこれにより支持されることが望ましい。帰還電極は、器具のシャフト上に、他の器具にまたは患者の外面に(すなわち、分散パッド)に配置することができる。しかし、双極設計は、非標的組織を流れる電流および神経の周りを流れる電流を最小限に抑えるので、口および喉の神経およびその他の敏感な組織の付近では、双極設計がより望ましくなる。したがって、帰還電極は、器具本体と合体するか、そのごく付近に配置される別の器具とすることが望ましい。器具の近位端は、帰還電極および電極端子を電気外科用発電機など高周波電源に結合するために適した電気接続を含む。
【0054】
電極端子と帰還電極の間の電流の流路は、組織部位を導電性流体(例えば、導電性ゲルなど粘性の流体)に浸すことによってまたは流体経路に沿って標的部位まで導電性流体(例えば等浸透圧食塩水などの液体またはアルゴンなどの気体)を送ることによって、作ることができる。導電性流体の供給速度をもっと緩慢でもっと制御されたものにするために、標的部位に導電性ゲルを送ることもできる。さらに、ゲルの粘性の性質により、外科医にとってゲルを標的部位の周りに収めるのは(等浸透圧食塩水を収めるより)容易であろう。導電性流体を活性電極と帰還電極の間に送る方法例についてさらに詳しい説明は、すでに参照により本出願に組み込まれている米国特許第5697281号において示されている。その代わりに、血液など体内の自然の導電性流体は、帰還電極と電極端子の間の導電経路を確立し、上に説明した蒸気層を確立するための条件を整えるのに充分かも知れない。ただし、血液はある温度で凝結する傾向があるので、患者体内に導入される導電性流体のほうが一般的に言って血液より望ましい。導電性液体(例えば、等浸透圧食塩水)は、標的組織表面の「浴」を行って組織を除去するための付加的手段を提供するのと同時に、以前に剥離された標的組織部分を冷却するために使うことができ、有利である。
【0055】
電源は、電極端子の周りにある導電性流体が不充分な場合に電極端子への電力を中断するための流体インターロックを含むことができる。これにより、器具は、導電性流体がない時には起動されず、これがなければ生じる可能性のある組織の損傷を最小限に抑える。この流体インターロックについてさらに詳しい説明は、1998年4月10日に提出された、一般譲渡された同時継続米国特許出願第09/058336号(弁理士整理番号第CB−4号)において示されており、その完全な開示が参照により本出願に組み込まれる。
【0056】
処置によっては、導電性流体および(または)剥離の凝結不能の気体産物を回収または吸引する必要もあるかも知れない。さらに、高周波エネルギーによって完全に崩壊しない小さい組織片またはその他の体構造または血液、粘液など標的部位のその他の流体、剥離による気体産物などを吸引することが望ましい場合がある。したがって、本発明のシステムは、この器具にまたは別の器具に、標的部位から流体を吸い込むために適した真空源に連結される1つまたはそれ以上の吸込みルーメンを含めることができる。さらに、本発明は、剥離のためにまたは少なくともルーメンに吸引される剥離されない組織片の量を減らすために、吸込みルーメンの遠位端に連結される1つまたはそれ以上の吸引電極を含めることができる。吸引電極の役割は、主に、大き目の組織片が引き込まれたときに生じる可能性のあるルーメンの詰まりを防止することである。吸引電極は剥離電極端子と別のものにするか、同じ電極で両方の機能を果すことができる。吸引電極を組み込む器具のさらに詳しい説明は、1998年1月21日に提出された、一般譲渡された同時係属特許出願「組織切除、剥離および吸引のためにシステムおよび方法」に示されており、その完全な開示が参照により本出願に組み込まれる。
【0057】
吸込みの代わりにまたはこれに加えて、バスケット、引き込み式鞘などの収納装置を使って標的部位のまたはその付近の過剰な導電性流体、組織片および(または)剥離の気体産物を収めることが望ましい場合がある。この実施態様は、導電性流体、組織片または剥離産物が患者の血管系または体の他の部分に流れないようにするという利点を持つ。さらに、切断された血管に止血に対して吸込みが持つ望ましくない影響を制限するために吸込み量を制限することが望ましいかも知れない。
【0058】
本発明は、単一の活性電極端子、あるいはカテーテルまたはプローブの遠位面の周りに一定間隔で配置される電極端子の配列を使用することができる。後者の実施態様においては、電極配列は、通常、血液、正食塩水など周囲の導電性流体に電力が分散することから生じる周囲の組織および環境への望ましくない電気エネルギーの流れを制限しながら、標的組織に選択的に電気エネルギーを与えるために、独立して電流制限され(または)電力制御される複数の電極端子を含む。電極端子は、端子を相互に隔離し、各端子を他の電極端子から隔離された別個の電源に接続することによって独立して電流制限することができる。その代わりに、電極端子をカテーテルの近位端あるいは遠位端で相互に接続して、電源に結合する単一のワイヤを形成することができる。
【0059】
1つの形態においては、電極配列の個々の電極端子は、器具内の配列の他の全ての電極端子から電気絶縁され、配列の他の各電極端子から隔離される電源にまたは低抵抗物質(例えば、血液、導電性食塩水灌注剤または導電性ゲル)が帰還電極と個々の電極端子の間に低インピーダンス経路を生じるとき電極端子への電流の流れを制限または中断する回路に接続される。個々の電極端子用の隔離される電源は、低インピーダンス岐路にぶつかると関係する電極端子への電力供給を制限する内部インピーダンス特性を持つ別個の電源回路とすることができる。例として、隔離電源は、ユーザー選択可能な定電流電源とすることができる。この実施態様においては、加熱はインピーダンスの動作電流倍の平方に比例するので、低インピーダンス経路は、自動的に、低抵抗加熱レベルとなる。その代わりに、個別に作動できるスウィッチを使ってまたはインダクタ、コンデンサなど、抵抗器およびまたはその組み合わせなど独立した電流制限素子により、単一の電源を電極端子の各々に接続することができる。電流制限素子は、器具、コネクタ、ケーブル、コントローラの中にまたはコントローラから器具の遠位先端までの導電経路に沿って配置することができる。その代わりに、選択される電極端子を形成する酸化物層(例えば、チタン、またはプラチナなどの金属面上の抵抗コーティング)により活性電極端子の表面に抵抗および(または)キャパシタンスを生じることができる。
【0060】
器具の先端部は、先端付近に電気エネルギーを送るために設計された多くの独立電極端子を含むことができる。個々の電極端子および帰還電極を、別個に制御されるまたは電流制限されるチャネルを持つ電源に接続することによって、導電性流体に選択的に電気エネルギーを与えることができる。帰還電極は、活性電極と帰還電極の間に導電性流体を供給するための導管としての役割も果す、先端の電極配列に隣接する導電体の単一の管状部材を含むことができる。その代わりに、器具は、先端の電流を維持するために器具の遠位先端に(活性電極といっしょに)帰還電極の配列を含むことができる。帰還電極と電極配列の間に高周波電圧を加えると、電極端子の遠位先端に高電界強度が発生して、個々の電極端子から帰還電極に高周波電流が伝導される。個々の電極端子から帰還電極への電流の流れは、能動的手段あるいは受動的手段により、またはその組み合わせにより制御されて、周囲(非標的)組織へのエネルギー供給を最小限に抑えながら周囲の導電性流体に電気エネルギーを送る。
【0061】
帰還電極と電極端子の間に適切な時間間隔で高周波電圧を加えることにより、標的組織の切断、除去、剥離、形成、縮小またはその他の修正が行われる。エネルギーが分散する(すなわち高電流密度が存在する)組織体積は、例えば、有効直径または主寸法が約10mmから0.01mmの(約2mmから0.05mmが望ましく、約1mmから0.1mmであればもっと望ましい)多数の小さい電極端子を使用することによって、正確に制御することができる。円形端子も非円形端子もその電極面の接触面積(電極端子ごとの)は、電極配列の場合で50mm2 未満、単一電極の態様の場合で75mm2 であり、0.0001mm2 から1mm2 の範囲が望ましく、0.005mm2 から0.5mm2 であればもっと望ましい。電極配列の外接面積は0.25mm2 から75mm2 の範囲で、0.5mm2 から40mm2 が望ましく、通常、少なくとも1つの電極端子を含み、実施態様によっては、少なくとも2つの隔離された電極端子を含み、少なくとも5つの電極端子を含むことがしばしばあり、シャフトの遠位接触面全体に配置される電極端子が10を超えるあるいはさらに50を超えることがしばしばある。小さい直径の電極端子を使用すると、各電極端子の露出面から放射する電流力線の拡散の結果、電界強度が高くなり、組織加熱の範囲または深さが小さくなる。
【0062】
組織治療面の面積は、幅広く変動可能であり、組織治療面は多様な形状を取ることができ、特定の用途のために特定の面積および形状を選択できる。活性電極面の面積は、0.25mm2 から75mm2 までの範囲とすることができ、通常約0.5mm2 から40mm2 である。形状は、平面、凹面、凸面、半球形、円錐、線形「直列」配列または他のほぼどのような規則的または不規則的形状でも可能である。活性電極または電極端子は、電気外科用器具シャフトの遠位端に形成されるのが最も一般的であり、再形成処置に使用される場合には平面、円盤状または半球形が多く、切断に使用される場合には線形配列が多い。その代わりにまたはこれに加えて、活性電極を電気外科用器具のシャフトの側面に形成して(例えば、スパチュラのように)、内視鏡処置において特定の体構造に近づきやすくすることができる。
【0063】
一部の実施態様においては、導電性流体を電極支持のすぐ周りの領域に閉じ込めるために、電極支持および流体出口を器具またはハンドピースの外面から引っ込めてことができる。さらに、電極支持および流体出口の周りにキャビティを形成するようにシャフトを成形することができる。こうすることにより、導電性流体が電極端子および帰還電極との接触を維持するようにし、その間の導電経路を維持することができる。さらに、これにより、処置中、電極端子と治療部位の組織の間に蒸気層およびその後のプラズマ層を維持することができ、導電性流体の不足のために蒸気層が消えてしまったら生じるであろう熱損傷を減少する。標的部位の周りの導電性流体を配置することは、組織温度を希望のレベルに維持するためにも役立つ。
【0064】
導電性流体は、帰還電極と電極端子の間に適切な導電経路を作るための閾値伝導率を持つはずである。流体の伝導率(センチメートル当たりのミリジーメンスの単位、すなわちmS/cm)は、通常、0.2mS/cmより大きく、2mS/cmより大きいことが望ましく、10mS/cmより大きいことがさらに望ましい。1つの実施態様例においては、導電性流体は等浸透圧食塩水であり、伝導率は約17mS/cmである。
【0065】
帰還電極と電極端子の間に加えられる電位差は、一般に約5kHzから20MHzの間の高周波または無線周波数であり、通常は約30kHzから2.5MHzの間であり、約50kHzから500kHzの間が望ましく、350kHz未満の場合がおおく、約100kHzから200kHzの間である場合が多い。RMS(平方自乗平均)電圧は、通常、約5ボルトから1000ボルトまでの範囲であり、電極端子のサイズ、動作周波数および特定の処置の操作モードまたは組織への望ましい効果(すなわち、収縮、凝結、切断または剥離)に応じて、約10ボルトから500ボルトまでの範囲が望ましい。一般に、剥離または切断のためのピーク・ピーク電圧は、10から2000ボルトまでの範囲であり、200から1800ボルトの範囲が望ましく、約300から1500ボルトの範囲がさらに望ましく、約500から900ボルトの範囲のピーク・ピーク電圧が多い(この場合にも、電極サイズ、動作周波数および操作モードによって決まる)。組織凝結または膠原収縮にはこれより低いピーク・ピーク電圧が使用され、通常50から1500ボルトまでの範囲であり、100から1000ボルトまでの範囲が望ましく、120から600ボルトまでがさらに望ましい。
【0066】
上で論じたとおり、電圧は、通常、電圧が効果的に連続的に加えられるように充分に高い周波数で(例えば、5kHzから20MHz)(例えば、壊死の深さの小さいレーザーが一般的に言って約10から20Hzのパルスであることと比べて)、一連の電圧パルスでまたは時間変化電圧幅の交流で送られる。さらに、デューティ・サイクル(すなわち、任意の1秒の間隔においてエネルギーが与えられる累積時間)は、一般に約0.0001%のディーティ・サイクルを持つパルス・レーザーに比べて、本発明の場合約50%である。
【0067】
本発明の望ましい電源は、加熱される標的組織の体積および(または)器具先端に選ばれる最高許容温度に応じて、電極当たり数ミリワットから数十ワットまでの範囲の平均電力レベルを発生するために選択可能な高周波電流を供給する。この電源を使って、使用者は特定の神経外科処置、心臓外科、関節鏡手術、皮膚科処置、眼科処置、開放手術またはその他の内視鏡外科処置など特定の要件に応じて電圧レベルを選択できる。心臓処置およびおそらく神経外科処置の場合、電源は、周波数が100kHz未満のとき漏れ電圧を特に約60kHzのとき電圧をフィルタリングするために、追加のフィルタを持つことができる。その代わりに、漂遊低周波電流が問題となるような処置には、もっと高い動作周波数、例えば300から500kHzを持つ電源を使用することができる。適切な電源についての説明は、1998年4月10日に提出された同時係属特許出願第09/058571号および09/058336号(弁理士整理番号第CB−2およびCB−4号)において示されており、両方の出願の完全な開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0068】
電源は、標的組織または周囲(非標的)組織の望ましくない加熱が生じないように、電流制限またはその他の方法で制御できる。本発明の現在望ましい実施態様においては、電流制限インダクタが、個々の電極端子と直列に配置される。インダクタのインダクタンスは、標的組織の電気特性、望ましい組織加熱速度および動作周波数に応じて、10マイクロヘンリーから50000マイクロヘンリーまでの範囲である。その代わりに、米国特許第5697909号においてすでに説明されたように、コンデンサ−インダクタ(LC)回路構造を採用することができる。前記の特許の開示は、参照により本出願に組み込まれる。さらに、電流制限抵抗器を選択できる。低抵抗媒体(例えば食塩水または血液)と接触するある電極端子について電流レベルが上昇し始めるとき、電流制限抵抗器の抵抗が大幅に増大して、その電極端子から低抵抗媒体(例えば、食塩水または血液)への電力供給を最小限に抑えるように、抵抗器は大きい正の抵抗温度係数を持つことが望ましい。
【0069】
発明は、電気的に隔離される電極端子または複数の電極端子に限定されないことを明確に理解しなければならない。例えば、活性電極の配列を、カテーテルのシャフトを通って高周波電流の電源まで伸びる単一のリード線に接続することができる。その代わりに、器具は、直接、カテーテル・シャフトを通る単一の電極、または電源まで伸びる単一リード線に接続される単一の電極を組み込むことができる。活性電極は、ボール状(例えば、組織の気化および乾燥の場合)、螺旋形(気化および針状切断の場合)、ばね状(急速な組織縮小および乾燥の場合)、ねじり金属形、環状またはソリッド管状などにすることができる。その代わりに、電極は、複数のフィラメント、剛性またはたわみ性のブラシ電極(類線維腫、膀胱腫瘍または前立腺線腫などの腫瘍の縮小のため)、シャフト側面の側面効果ブラシ電極、コイル電極などを含むことができる。
【0070】
1つの実施態様においては、電気外科用カテーテルまたはプローブは、シャフトの遠位端の絶縁材例えばセラミックから伸びる単一の活性電極を含む。絶縁材は、活性電極端子を絶縁材および活性電極に近接して配置される管状または環状の帰還電極から分離する、管状構造が望ましい。別の実施態様においては、カテーテルまたはプローブは、カテーテルの他の部分に対して相対的に回転できる単一の活性電極を含むか、カテーテル全体がリード線に対して相対的に回転できる。単一の活性電極は、異常組織に隣接する位置に配置され、この組織を除去するのに適するようにエネルギーを与えられ、回転することができる。
【0071】
電極端子と帰還電極の間の電流の流路は、組織部位を導電性流体に(例えば導電性ゲルなど粘性流体の中に)浸すことにより、または流体経路に沿って標的部位まで導電性流体(すなわち等浸透圧食塩水などの液体またはアルゴンなどの気体)を送ることによって、作ることができる。後者の方法は、導電性流体が電極端子から帰還電極までの適切な電流の流路となるので、特に、乾燥環境(すなわち組織を流体に浸さない)において有益である。
【0072】
次に、図1を参照しながら、頭部および頸部の組織を治療するための電気外科用システム例11について詳細に説明する。電気外科用システム11は、一般的に言って、高周波電圧を標的部位に供給するための電源28および導電性流体50をプローブ10に供給するための流体供給源21に接続された電気外科用ハンドピースまたはプローブ10から成る。さらに、電気外科用システム11は、特に副鼻腔処置または耳内または口の裏の処置において手術部位を見るための光ファイバー・ヘッドライトつきの内視鏡(図には示されていない)を含むことができる。内視鏡は、プローブ10と一体とするか、あるいは、別個の器具の一部とすることができる。システム11は、また、標的部位を吸引するためのプローブ10の吸込みルーメンまたはチューブ205(図2)に連結するために真空源(図には示されていない)を含むことができる。
【0073】
図に示されるとおり、プローブ10は、一般的に言って、近位ハンドル19、およびその遠位端に電極端子58の配列12を持つ細長いシャフト18を含む。接続ケーブル34は、電極端子58を電源28に電気結合するためのコネクタ26を持つ。電極端子58は、相互に電気的に隔離され、端子58各々が、複数の個別に絶縁された導線(図には示されていない)により電源28内の能動的または受動的制御ネットワークに接続される。流体供給チューブ15は、導電性流体50を標的部位に供給するためのプローブ10の流体チューブ14に接続される。流体供給チューブ15は、希望する場合には適切なポンプ(図には示されていない)に接続することができる。
【0074】
電源28は、印加電圧を変化させるためにオペレータが制御できる電圧調整器30を備える。電圧レベルは電圧ディスプレイ32で観察することができる。電源28は、また、第一、第二および第三フット・ペダル37、38、39および電源28に取り外し可能に結合されるケーブル36も含む。フット・ペダル37、38、39により、外科医は、電極端子58に与えられるエネルギーのレベルを遠隔的に調節できる。1つの実施態様例においては、第一のフット・ペダル37は、電源を「剥離」モードにするために使われ、第二フット・ペダル38は電源28を「非剥離」モード(例えば、組織の凝結または収縮)にするために使われる。第三のフット・ペダル39は、「剥離」モード内で電圧レベルを調節できるようにする。剥離モードのとき、組織の分子解離(すなわち導電性流体の一部を気化し、蒸気層内の荷電粒子をイオン化し、組織に向かって荷電粒子を加速させる)のための要件を満たすのに充分な電圧が電極端子に加えられる。上で説明したとおり、剥離のために必要な電圧レベルは、電極の数、サイズ、形状および間隔、支持材から伸びる電極の長さなどに応じて変化する。外科医は電源を「剥離」モードにした後、電圧レベル調整器30または第三のフット・ペダル39を使って電圧レベルを調整して、剥離の程度または攻撃性を調整することができる。
【0075】
当然、電圧および電源のモードを他の入力装置で制御できることが分かるだろう。しかし、出願者は、フット・ペダルが、外科処置中プローブを操作しながら電源を制御する便利な方法であることを発見した。
非剥離モードのとき、電源28は、導電性流体の気化およびその後の組織の分子解離を避けるのに充分に低い電圧を電極端子に加える。外科医は、フット・ペダル37、38を交互に踏むことによって、剥離と非剥離モードの間を自動的に切り替えることができる。一部の実施態様においては、これにより外科医は、手術部位から集中力をそらすことなくまたは助手に電源を切り替えるよう要請することなく、その場で凝結と剥離の間を迅速に移行できる。例として、外科医が剥離モードで軟組織を削っているとき、プローブは、一般に、組織内の小さい切断された血管を同時に封止し(または)凝結する。しかし、大き目の血管または流体圧力の高い血管(例えば、動脈)は、剥離モードでは封止できない場合がある。したがって、外科医は、単にフット・ペダル38を踏むだけで、自動的に剥離の閾値より下に電圧レベルを下げて、血管を封止および(または)凝結するために充分な長さの時間切断された血管に充分な圧力を加えることができる。これが完了した後、外科医は、フット・ペダル37を踏んで、素早く剥離モードに戻ることができる。本発明に使用するのに適した電源の固有の設計については、以前に参照により本出願に組み込まれた1997年10月23日に提出された仮特許出願第60/062997号(弁理士整理番号第16238−007400号)に示されている。
【0076】
図2から5は、本発明の原理に従って構成される外科用プローブ例90を示している。図2に示されるとおり、プローブ90は、一般的に言って、たわみ性または剛性の細長いシャフト100、シャフト100の近位端に連結されるハンドル204およびシャフト100の遠位端に連結される電極支持材102を含む。シャフト100は、シャフト100の遠位部を近位部およびハンドル204の軸からずらせるようにするベンド101を含むことが望ましい。このオフセットにより、例えばハンドル204と内視鏡のアイピースの間の干渉なしにシャフト100と同じ鼻孔から内視鏡を導入することができるので(図11を参照のこと)、FESSなど内視鏡を必要とする処置が容易になる。シャフト10は、図1に示される形状に簡単に成形できるプラスティック材から成ることが望ましい。
【0077】
代替実施態様においては(図6Aを参照のこと)、シャフト100は、導電性の材料、通常は、タングステン、ステンレス鋼合金、プラチナまたはその合金、チタンまたはその合金、モリブデンまたはその合金およびニッケルまたはその合金から成るグループから選ばれる金属から成る。この実施態様において、シャフト100は、一般にポリ四フッ化エチレン、ポリイミドなどの1つまたはそれ以上の電気絶縁鞘またはコーティングとして形成される電気絶縁ジャケット108を含む。電気絶縁ジャケットをシャフトにかぶせることにより、この金属素子と隣接体構造または外科医との間の直接電気接触が避けられる。体構造(例えば、腱)と露出した電極の間の直接電気接触は、接触点の構造の望ましくない加熱および壊死を生じる可能性がある。
【0078】
ハンドル204は、一般に、外科医が取り扱うために適した形状に簡単に成形できるプラスティック材から成る。ハンドル204は、電気接続250(図5)を収納する内部キャビティ(図には示されていない)を形成し、電気接続ケーブル22(図1)への接続のために適したインターフェイスとなる。電極支持材102は、シャフト100の遠位端から伸び(通常約1から20mm)、電気的に隔離された多数の電極端子104(図3および4)の支えとなる。図2に示されるとおり、流体チューブ233は、ハンドル204の開口から伸び、導電性流体を標的部位に供給するために流体供給源に接続するコネクタ235を含む。シャフト100の遠位面の形態に応じて、流体チューブは、シャフト100の単一のルーメン(図には示されていない)の中を伸びるか、シャフト100を通ってその遠位端の複数の開口まで伸びる複数のルーメン(これも図には示されていない)に連結できる。代表的な実施態様においては、流体チューブ233は、シャフト100の外部に沿って帰還電極112のすぐ近くの点まで伸びる(図4を参照のこと)。この実施態様においては、流体は、開口237を通って帰還電極112を越えて電極端子104まで送られる。プローブ90は、標的部位への導電性流体の流量を制御するためにバルブ17(図1)または同等の構造を含むこともできる。
【0079】
図2に示されるとおり、シャフト100の遠位部は、治療対象の組織の処置部位に接近しやすくするために曲げられれることが望ましい。電極支持材102は、実質的に平面の組織治療面212(図5Aおよび5B)を持ち、この面は、シャフト100の縦軸に対して通常約10から90°の角度を持ち、約30°から60°が望ましく、約45°がさらに望ましい。代替実施態様においては、シャフト100の遠位部はシャフトの縦軸から反らすことができるたわみ材から成る。この反りは、例えばプル・ワイヤの機械的張力によりまたは外部から加えられる温度変化により伸縮する形状記憶ワイヤにより選択的に誘発できる。この実施態様についてのさらに詳しい説明は、1994年5月10日に提出されたPCT国際特許出願、米国国内段階出願番号第PCT/US94/05168号(弁理士整理番号第16238−000440号)に示されており、その完全な開示が参照によりすでに本出願に組み込まれている。
【0080】
シャフト100の遠位端のベンドにより、外科医はシャフト100を鼻孔に通して鼻内の標的部位に達することができるので、このベンドは、特に副鼻腔組織の治療に有利である。当然、処置に応じてシャフトが様々な角度を持つことができることが分かるだろう。例えば、90°の曲げ角度を持つシャフトは、特に、口の裏の組織に接近するために有益であり、10°から30°の曲げ角度のシャフトは口または鼻の前面部またはその付近の組織に接近するのに有益かも知れない。
【0081】
図2から5に示される実施態様において、プローブ90は、電極端子104と高周波電源28(図1を参照のこと)の間の電流経路を完成するために帰還電極112を含む。図に示されるとおり、帰還電極112は、電極支持材102の組織治療面212近くのシャフト100の遠位端、一般に約0.5mmから10mm、さらに望ましいのは約1mmから10mmの点で結合される環状導電帯から成ることが望ましい。帰還電極112は、プローブ10の近位端まで伸びるコネクタ258に結合され、ここで、電源10(図1)に適切に接続される。
【0082】
図2に示されるとおり、帰還電極112は、電極端子104に直接接続されない。電極端子104が帰還電極112に電気接続されるようにこの電流経路を完成するために、導電性流体(例えば、等浸透圧食塩水)がその間に流し込まれる。代表的な実施態様においては、導電性流体は、上で説明したとおり、流体チューブ233を通って開口237まで送られる。その代わりに、プローブ90とは別個の流体供給エレメント(図には示されていない)により流体を送ることができる。例えば、関節鏡手術においては、体腔に等浸透圧食塩水を灌注して、プローブ90をこの灌注された体腔に導入する。導電性流体は、帰還電極112と電極端子104の間の導電経路を維持するために連続的に補給される。
【0083】
代替実施態様においては、流体経路は、例えば内側ルーメンすなわちシャフト100内の帰還電極と管状支持材の間の環状ギャップにより、プローブ90の中に形成できる。この環状ギャップは、導電性流体が標的部位に向かって半径方向内向きに流れるようにシャフト10の周囲付近に形成するか、流体が半径方向外向きに流れるようにシャフト100の中心に向かって形成することができる。どちらの実施態様においても、流体供給源(例えば、手術部位より高い位置にあるまたはポンプ装置を持つ流体の袋)は、制御弁を持つか否かを問わず流体供給チューブ(図には示されていない)を通じてプローブ90に連結される。1つまたはそれ以上の流体ルーメンを組み込む電気外科用プローブのさらに詳しい説明は、1995年6月7日に提出された原出願第08/485219号(弁理士整理番号第16238−006000号)に示されており、その完全な開示が参照によりすでに本出願に組み込まれている。
【0084】
図3を参照すると、電気的に隔離された電極端子104が電極支持材102の組織治療面212に間隔を置いて配置される。組織治療面および個々の電極端子104は、通常、上に示される範囲の寸法を持つ。代表的実施態様においては、組織治療面は、長さ1mmから20mmの範囲、幅0.3mmから7mmの範囲の長円形断面を持つ。長円形断面は、シャフト100の遠位部にベンドに適応する。個々の電極端子104は、組織治療面212から約0.1から4mm、通常約0.2から2mm外向きに伸びることが望ましい。出願者は、この形態が、上で詳細に説明したとおり高電界強度を増大し、電極端子104の周りの電流密度を増して、組織の剥離を容易にすることを発見した。
【0085】
図2から5の実施態様において、プローブは、組織治療面の中心に単一の大き目の開口209、および治療面212の周辺の周りに複数の電極端子(例えば、約3から15)を含む(図3を参照のこと)。その代わりに、プローブは、組織治療面の周辺に単一の環状のまたは部分的に環状の電極端子を含むことができる。中央の開口209は、標的部位から組織、流体およびまたは気体を吸引するために、シャフト100内の吸込みルーメン(図には示されていない)および吸込みチューブ211(図2)に連結される。この実施態様においては、導電性流体は、一般的に言って、半径方向内向きに流れて電極端子104を越えて、開口209から戻る。手術中の導電性流体の吸引により、外科医は標的部位を見ることができ、また、流体が患者の体に、例えば副鼻腔から、喉からまたは耳管に流れ込むのを防ぐ。
【0086】
当然、プローブの遠位先端は多様な形態を持つことができるのが分かるだろう。例えば、プローブは、組織治療面212の外周の周りに複数の開口209を含むことができる(図6Bを参照のこと)。この実施態様においては、電極端子104は、組織治療面212の中央から、開口209から半径方向に内向きに伸びる。開口は、導電性流体を標的部位に送るために流体チューブ233に、また帰還電極112と電極端子104の間の導電経路が完成した後流体を吸引するために吸込みチューブ211に適切に連結される。
【0087】
図5は、電極端子104および帰還電極112を電源28に結合するための、ハンドル204内の電気接続を示している。図に示されるとおり、複数のワイヤ252がシャフト100の中を伸びて、端子104を複数のピン254に結合する。ピンは接続ケーブル22(図1)に結合するためにコネクタ・ブロック256に差し込まれる。同様に帰還電極112がワイヤ258およびプラグ260を通じてコネクタ・ブロック256に結合される。
【0088】
本発明によれば、プローブ90は、さらに、異なる電気外科手術に同じ電源28を使用できるように、特定の電極アセンブリに特有の識別素子を含む。例えば、1つの実施態様においては、プローブ90は、電極端子104と帰還電極112の間に加えられる電圧を下げるために電圧降下素子または電圧降下回路を含む。電圧降下素子は、電極端子と帰還電極の間の電圧が、導電性媒体への過剰な電力分散およびまたは標的部位の軟組織の剥離を回避するのに充分な低さになるように、電源によって加えられる電圧を下げる役割を果す。電圧降下素子を使えば、主に、電気外科用プローブ90が、組織の剥離または気化用の高い電圧を加えるために適する他のArthroCare発電機と両立できる。例えば、組織の収縮の場合、電圧降下素子は、約100から135ボルトrmsの電圧(これはArthroCare970型および980型(すなわち2000)発電機で1の設定)を約45から60ボルトrmsに下げる役割を果す。これは、組織を剥離(例えば分子解離)せずに組織を収縮するのに適する電圧である。
【0089】
当然、内視鏡副鼻腔手術など、処置によっては、プローブは、一般に電圧降下素子を必要としない。その代わりに、プローブは、希望する場合には電圧上昇素子を含むことができる。
代表的な実施態様においては、電圧降下素子は、帰還電極ワイヤ258に結合される第一の脚264およびコネクタ・ブロック256に結合される第二の脚266を持つ電圧降下キャパシタ262である。当然、キャパシタは、システム内の他の位置、例えば、ケーブル、発電機、コネクタなどの中に配置するかまたはその長さに沿って配分することができる。さらに、ダイオード、トランジスタ、インダクタ、抵抗器、キャパシタまたはその組み合わせなど、他の電圧降下素子を本発明にと共に使用できることが分かるだろう。例えば、プローブ90は、帰還電極112と電極端子104の間の電圧を組織の収縮に適したレベルに下げるように構成されるコード化抵抗器(図には示されていない)を含むことができる。さらに、この目的のために電気回路を採用することができる。
【0090】
その代わりにまたはこれに加えて、電源10をプローブに結合するケーブル22を、電圧降下素子として使用することができる。ケーブルは、ケーブルが電源、電極端子および帰還電極の間の電気回路に配置される場合電源電圧を下げるために使用できる固有のキャパシタンスを持つ。この実施態様においては、ケーブル22を単独で使用するか、上で論じた電圧降下素子の1つ例えばキャパシタと組み合わせて使用することができる。
【0091】
さらに、本発明は、組織の治療のために選ばれる範囲内の電圧を加えるのに適した電源に使用することができることに留意しなければならない。この実施態様においては、電圧降下素子または回路は、望ましくないかも知れない。
図7Aから7Cは、本発明に基づくプローブ90の3つの異なる実施態様の遠位部を略図的に示している。図7Aに示されるとおり、電極端子104は、特定の処置の要件に応じて製造時に平面、半球形またはその他の形状で形成できる適切な絶縁材(例えば、セラミックまたはアルミナ、ジルコニアなどのガラス材)の支持基質102に固定される。望ましい支持基質の材料は、その高い熱伝導率、優れた絶縁特性、高い曲げ係数、カーボン・トラッキング抵抗、生体適合性および高い融点を持つことから、イリノイ州エルクグルーブのKyocera Industrial Ceramics Corporationから入手できるアルミナである。支持基質102は、基質102とプローブ90の近位端の間の距離のほとんどまたは全てに伸びる管状支持材78に接着接合される。管状支持材78は、エポキシまたはシリコンを主原料とする材料など電気絶縁材から成ることが望ましい。
【0092】
望ましい構成技術においては、電極端子104は、望ましい距離だけ組織治療面212から突き出すように、支持基質102の事前に形成された開口を通って伸びる。電極は、次に、一般に無機シーリング材80によって支持基質102の組織治療面212に接合される。シーリング材80は、効果的に電気絶縁し、アルミナ基質102およびプラチナまたはチタンの電極端子の両方によく接着するように選ばれる。シーリング材80は、さらに、プラチナまたはチタンおよびアルミナまたはジルコニアの融点よりずっと低い融点を持ち両立する熱膨張率を持たなければならず、一般に、ガラスまたはガラス・セラミックである。
【0093】
図7Aに示される実施態様において、帰還電極112は、プローブ90のシャフト100の外側の周りに配置される環状材から成る。帰還電極90は、管状支持材78を部分的または完全に囲み、下に論じるとおりその間に導電性流体50が流れるための環状ギャップ54を形成する。ギャップ54は、0.25mmから4mmまでの範囲の幅を持つことが望ましい。その代わりに、プローブは、シャフト100の周辺に沿って伸びる複数の流体ルーメンを形成するために支持材78と帰還電極112の間に複数の縦リブを含むことができる。この実施態様においては、複数のルーメンは、複数の開口まで伸びる。
【0094】
帰還電極112は、ポリ四フッ化エチレン、ポリアミドなど、一般に1つまたはそれ以上の電気絶縁鞘またはコーティングとして形成される電気絶縁ジャケット18内に配置される。電気絶縁ジャケット18を帰還電極112にかぶせることにより、帰還電極56と隣接体構造の間の直接電気接触が防止される。体構造(例えば、腱)と露出した電極112の間の直接電気接触は、接触点の構造の望ましくない加熱および壊死を生じる可能性がある。
【0095】
図7Aに示されるとおり、帰還電極112は、電極端子104に直接接続されない。電極端子104が帰還電極112に電気接続されるようにこの電流経路を完成するために、導電性流体50(例えば、等浸透圧食塩水)が流体経路83に沿って流される。流体経路83は、外側帰還電極と管状支持材の間の環状ギャップ54によって形成される。流体経路83を流れる導電性流体50は、図6Aにおいて電流力線60により示されるとおり、電極端子104と帰還電極112の間の電流の流路となる。電極端子104と帰還電極112の間に電位差が加えられると、端子104から標的組織を通って帰還電極まで電流が流れて、高電界強度が端子104の遠位端に発生して、高電界強度がゾーン88の組織52の剥離を生じる。
【0096】
図7Bは、帰還電極112が管状材78内に配置される、電気外科用プローブ90の別の代替実施態様を示している。帰還電極112は、導電性流体50(例えば、等浸透圧食塩水)が帰還電極と電気接触しながら流れられるようにするために、内側ルーメン57を形成する管状材であることが望ましい。この実施態様においては、電極端子104と帰還電極112の間に電位差が加えられて、電流力線60で示されるとおり(図3)導電性流体に電流が流れる。加えられる電位差およびこれに付随する電極端子104の先端の高電界強度の結果、組織52がゾーン88において剥離または離断される。
【0097】
図7Cは、図7Aおよび7Bの実施態様の組み合わせである、プローブ90の別の実施態様を示している。図に示されるとおり、このプローブは、導電性流体を流すために内側ルーメン57および外側ギャップまたは複数の外側ルーメン54を含む。この実施態様においては、帰還電極112は、図7Bに示されるように管状材78内に配置するか、図7Aに示されるように管状材78の外に配置するか、両方の位置に配置することができる。
【0098】
図9は、電極端子がシャフトを横切って伸びるようにシャフト100の遠位部が曲げられる、プローブ90の別の実施態様を示している。組織治療面212が全体的にシャフトの軸に平行になるようにシャフト100の遠位部はシャフトの他の部分に対して直角であることが望ましい。この実施態様においては、帰還電極112はシャフト100の外面に取り付けられ、電気絶縁ジャケット18で被覆される。導電性流体は、経路83に沿って帰還電極112を通り、組織治療面212の近い点の電極112の遠位端に出る。流体は、シャフトの外に組織治療面212に向けて送られて、電流力線60により示されるとおり電極端子104から流体50を通って帰還電極112に至る帰路電流経路を構成する。
【0099】
図10は、電気外科用システム11が、さらに、電極端子104と帰還電極112の間に導電性流体50を供給するための流体供給器具64を含む、本発明の別の実施態様を示している。流体供給器具64は、電気絶縁ジャケットによって囲まれる内側管状材または帰還電極112から成る。帰還電極112は、流体50が流れるための内側通路を形成する。図8に示されるとおり、流体50が器具64に対して角度を成して放出されるように、器具64の遠位部は曲げられることが望ましい。これにより、手術チームは、流体供給器具64の近位部をプローブ90に対して同様の角度で向けて、組織治療面212に隣接する位置に流体供給器具を配置することができる。
【0100】
本発明は、上に説明したとおりプローブ90の遠位先端の比較的平らな面に配置される電極配列に限定されない。図8Aおよび8Bを参照すると、代替プローブ90は、シャフト100の遠位端に取り付けられる1対の電極105a、105bを含む。電極105a、105bは、上に説明したとおり電源に電気接続され、スクリュードライバー状の先端107a、107bを持つことが望ましい。スクリュードライブ状にすることにより、電極105a、105bの「エッジ」の量が大きくなり、エッジでの電界強度および電流密度が増大するので、切断能力ならびに、切開された組織からの出血を制限する能力(すなわち、止血能力)が向上する。
【0101】
図11から13は、本発明に基づく、鼻または副鼻腔の遮断例えば慢性副鼻腔炎を治療するための方法を示している。この処置においては、遮断を取り除き(または)副鼻腔を拡大して正常な副鼻腔の機能を取り戻すために、ポリープ、鼻甲介またはその他の副鼻腔組織が剥離または縮小される(例えば、組織収縮により)。例えば、鼻粘膜肥大を伴う鼻粘膜の慢性的過敏または炎症の総称である慢性鼻炎においては、下鼻甲介を剥離または収縮により小さくすることができる。その代わりに、鼻甲介の体積を減らすために下鼻甲介の下縁から細長い組織片を除去することにより、鼻甲介切除または粘膜切除を行なうことができる。炎症によって生じる鼻粘膜または副鼻腔粘膜の良性の有茎または無茎の塊から成る鼻ポリープを治療するために、本発明の方法により鼻ポリープを収縮または剥離することができる。重い副鼻腔炎を治療するためには、遮断部位に電気外科用プローブを導入するために前頭洞手術を行なうことができる。本発明は、また、鼻中隔の病気を治療するため、例えば、鼻中隔を除去、矯正または再移植のために中隔の一部を剥離または切除するためにも、使用できる。
【0102】
本発明は、特に、副鼻腔の病気の治療における機能的内視鏡副鼻腔手術(FESS)において有益である。先行技術のマイクロデブライダと異なり、本発明の電気外科用プローブは、切断された血管の止血を行い、外科医が周囲の組織、骨、軟骨または神経をほとんどまたは全く傷つけることなく正確に組織を除去できるようにする。例として、限定的意味でなく、本発明を、以下の処置に使用できる、(1)鉤の除去(uncinectomy)または中鼻甲介の一部の医学的変位または除去、(2)上顎、蝶形骨または篩骨洞切除または上顎、蝶形骨または篩骨洞の自然の口の拡大、(3)ポリープ状または肉芽組織が除去される前頭陥凹切開、(4)重い鼻ポリープ症の場合にポリープ状組織が除去されるポリープ切除、(5)鼻甲介水泡切除またはポリープ状中鼻甲介の削り取り、(6)鼻中隔形成など。
【0103】
図11から13は、本発明に基づく内視鏡副鼻腔外科(FESS)処置を示している。図11に示されるとおり、内視鏡300は、外科医が標的部位例えば副鼻腔を見られるようにまず鼻孔301の1つから導入される。図に示されるとおり、内視鏡300は、通常、遠位端30にレンズ(図には示されていない)を持つ薄い金属チューブ302、および近位端308のアイピース306から成る。図2に示されるとおり、プローブシャフト100(図11には示されていない)は、同じ鼻孔で内視鏡およびプローブの両方を使用しやすくするためにベンドを持つ(すなわち、この実施態様において、2つの器具のハンドルが相互に妨害し合わない)。その代わりに、鼻咽頭を見るために、内視鏡を口から下軟口蓋に通すことができる。本発明に使用するのに適する鼻内視鏡については、米国特許第4517962号、4844052号、4881523号および5167220号において説明されており、その完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0104】
その代わりに、内視鏡300は、電気外科用プローブのシャフト100を受けるための内側ルーメンを持つ鞘(図には示されていない)を含むことができる。この実施態様においては、シャフト100は、内側ルーメンを通って内視鏡の遠位開口まで伸びる。シャフトは、外科処置中遠位端を操作するために適切な近位制御装置を含む。
【0105】
図12に示されるとおり、プローブ90の遠位端は、鼻孔301から鼻腔303に差し込まれる(内視鏡300は図12には示されていない)。遮断の位置に応じて、電極端子104は鼻腔303の遮断に隣接する位置に、あるいは副鼻腔305、307の1つに配置される。前頭洞305および蝶形骨洞307だけしか図12に示されていないが、処置は篩骨洞および上顎洞にも応用可能であることに留意すること。外科医が主要な遮断点に達したら、導電性流体がチューブ233および開口237を通じて組織に送られる(図2を参照のこと)。流体は、帰還電極112を通り過ぎてシャフト遠位端の電極端子104まで流れる。組織と電極支持102の間のゾーンが流体に終始浸るように、流体の流量は、バルブ17によって制御される(図1)。電源28がオンにされて、電極端子104と帰還電極112の間に高周波電位差が加えられるように調整される。導電性流体は電極端子104と帰還電極112の間の導電経路(電流力線を参照のこと)を提供する。
【0106】
図13Aおよび13Bは、副鼻腔組織の除去についてさらに詳しく示している。図に示されるとおり、高周波電圧は、標的組織302と電極端子104の間の導電性流体(図には示されていない)をイオン化蒸気層312すなわちプラズマに変換するのに充分である。電極端子104と標的組織302の間に電位差が加えられる(すなわち、プラズマ層を横切る電圧勾配)結果、プラズマ内の荷電粒子(すなわち、電子)315が組織に向かって加速する。充分に大きい電位差のとき、この荷電粒子315は、組織構造内で分子結合の解離を生じるのに充分なエネルギーを得る。この分子解離には、組織の量的な除去(すなわち剥離昇華)および酸素、窒素、二酸化炭素、水素およびメタンなど低分子量ガス314の生産を伴う。組織内での加速荷電粒子315の射程は短いので分子解離プロセスを表層に制限し、基礎組織への損傷および壊死を最小限に抑える。
【0107】
プロセス中、ガス314は、開口209および吸込みチューブ211を通じて真空源に吸引される。さらに、外科医が視界をよくするためにに、過剰な導電性流体およびその他の流体(例えば、血液)が標的部位から吸引される。組織の剥離中、電流力線により発生する残留熱(一般に150℃未満)は、通常、標的部位の切断された血管を凝結するのに充分である。これが充分でない場合、上に論じたとおり、電圧を流体気化の閾値より下のレベルに下げることにより、外科医は電源28を凝結モードに切り替えることができる。このように同時に止血することにより、出血が少なくなり、外科医は処置を行いやすくなる。遮断が除去されたら、通気および排液が回復されて、副鼻腔が治癒して正常な機能に戻れるようになる。
【0108】
本発明のもう1つの利点は、基礎および周囲の組織、神経(例えば、視神経)または骨に壊死または熱損傷を生じることなく、洞組織の層を正確に剥離できることである。さらに、標的部位に送られるエネルギーが骨または脂肪組織(一般的に言って標的組織より高いインピーダンスを持つ)を剥離するには不充分であるように、制御できる。このようにして、外科医は、骨を剥離したりその他の重大な損傷を与えることなく、文字どおり骨から組織を取り除ける。
【0109】
図15から17を参照すると、本発明に基づく電気外科用装置は、カテーテル・システム400として構成することもできる。図15に示されるとおり、カテーテル・システム400は、一般的に言って、標的組織に高周波電圧を与えるために相互接続ケーブル486により電源28に接続される電気外科用カテーテル、および標的部位に導電性流体を供給するための灌注剤容器または供給源600から成る。カテーテル460は、一般的に言って、本体462の遠位端に組織除去または組織剥離部分464を含む細長いたわみ性のシャフト本体462から成る。カテーテル460の近位端は、カテーテル460内のルーメンおよびリード線とフィットメント614の近位の導管およびケーブルの間の相互接続のための多管フィットメント614を含む。例として、カテーテル電気コネクタ496は、遠位ケーブル・コネクタ494に取り外し可能に接続され、遠位ケーブル・コネクタは、さらにコネクタ492を通じて発電機28に取り外し可能に接続される。カテーテル460内の1本またはそれ以上の導電リード線(図には示されていない)が、活性電極ケーブル分岐487を通じて、組織剥離部464の1つまたはそれ以上の活性電極463とカテーテル・コネクタ内の対応する1つまたはそれ以上の電極端子(これも図には示されていない)の間に伸びる。同様に、組織剥離部464の1つまたはそれ以上の帰還電極466は、リード線(図には示されていない)によってカテーテル・コネクタ496の帰還電極ケーブル分岐498に結合される。当然、活性電極および帰還電極の両方に単一のケーブル分岐(図には示されていない)を使用することができる。
【0110】
カテーテル本体462は、組織嵌入中、電極端子の回転を反応トルク制御するために、少なくとも本体462の遠位剥離部464の壁に補強ファイバーまたはブレード(図には示されていない)を含むことができる。カテーテル本多462のこの剛性部分の長さは、わずか約7から10mmであり、電極を前進させ標的組織に隣接する位置に配置する間経路をたどりやすいように、カテーテル本体462の残りの部分はたわみ性であることが望ましい。
【0111】
導電性流体30は、カテーテル460内のルーメン(図15には示されていない)を通じて、カテーテル460の組織剥離部464に送られる。流体は、供給源から導電性流体供給ライン602および導管603に沿ってルーメンに供給される。導管は多管フィットメント114でカテーテル内ルーメンに連結される。導電性流体(例えば、等浸透圧食塩水)供給源は、灌注剤ポンプ・システム(図には示されていない)または患者および組織剥離部8の高さより数フィート上に配置される灌注剤容器600など重力供給とすることができる。導電性流体30の流量を手動で制御できるようにするために、制御弁604を、流体供給ライン602と導管603の境界に配置することができる。その代わりに、導電性流体の流量を正確に制御するために計器付きポンプまたは流量調節器を使用することができる。
【0112】
システム400は、さらに、標的部位から液体および気体を吸引するために吸引または真空システム(図には示されていない)を含む。吸引システムは、通常、吸引コネクタ605によりフィットメント614に連結される真空源から成る。
図16および17は、本発明の原理に従って構成される電気外科用カテーテルの作業端464を示している。図16に示されるとおり、カテーテル460は、一般的に言って、たわみ性または剛性の細長いシャフト462、およびシャフト462の遠位端に連結される電極支持材620を含んでいる。電極支持材620は、シャフト462の遠位端から(通常1から20mm)伸びて、電気的に隔離された複数の電極端子463を支える。電極支持材620および電極端子462は、接着剤630によりシャフト460内の管状支持材626に固定されることが望ましい。
【0113】
電極端子463は、円形、正方形、長方形またはその他の形状の導電性金属を使って構成することができる。例として、電極端子の材料は、ステンレス鋼、タングステンおよびその合金、モリブデンおよびその合金、チタンおよびその合金、ニッケル合金ならびにプラチナおよびその合金を含むグループの中から選択することができる。電極支持材620は、セラミック、ガラスまたはガラス/セラミック組成物(例えば、酸化アルミニウム、チッ化チタン)が望ましい。その代わりに、電極支持材620は、Vitrex International ProductsInc.が製造するポリエーテル−エーテル−キートーン(PEEK)またはGE Plasticsが製造するポリスルフォンなど高温生体適合性プラスティックを使用することができる。接着剤630は、例として、エポキシ(例えばMaster Bond EP42HT)またはシリコンを主原料とする接着剤とすることができる。
【0114】
図17Bに示されるとおり、0.05mmから1.5mmの範囲の活性電極直径(0.1mmから0.75mmまでの範囲の直径がさらに望ましい)D1 を持つ合計7つの円形活性電極または電極端子463が対称的に示されている。電極間間隔W1 およびW2 は、0.1mmから1.5mmの範囲が望ましく、0.2mmから0.75mmの範囲がさらに望ましい。電極端子463の外周辺と電極支持材周辺の間の距離W3 は、0.1mmから1.5mmの範囲が望ましく、0.2mmから0.75mmの範囲がさらに望ましい。カテーテル本体462の作業端464の全直径D2 は、0.5mmから10mmの範囲が望ましく、0.5mmから5mmの範囲がさらに望ましい。上に論じたとおり、活性電極の形状は円形、正方形、三角形、六角形、長方形、管状、平らなストリップなどが可能であり、円対称に配置するかまたは例として長方形に、正方形にまたはストリップ状に配置することができる。
【0115】
カテーテル本体462は、本体462に沿って支持材620および電極端子463から半径方向外向きに伸びる管状カニューレ626を含む。カニューレ626が電極端子463配列の構造的支持材として、ならびに帰還電極624としての機能を果すように、カニューレ626の材料は、導電性金属のグループから選択すると有利である。支持材626は、コネクタ・ハウジング(図には示されていない)内のその近位端でリード線(図には示されていない)に接続され、適切なコネクタを通じて電源28まで導通して、高周波発電機28の出力ポールと帰還電極624の間を導通させる。カニューレ626は、ステンレス鋼、銅合金、チタンまたはその合金およびニッケル合金を含むグループの中から選択できる。カニューレ626の厚みは0.08mmから1.0mmの範囲が望ましく、0.1mmから0.4mmの範囲がさらに望ましい。
【0116】
図16に示されるとおり、カニューレ626は、患者の体を電流から保護するために、電気絶縁スリーブ608で被覆される。電気絶縁スリーブ608としては、コーティング(例えば、ナイロン)または熱収縮プラスティック(例えば、フルオロポリマーまたはポリエステル)が可能である。カニューレ626の近位部は、帰還電極624として機能するために露出したままにする。帰還電極624の長さL5 は、1mmから30mmの範囲が望ましく、2mmから20mmの範囲がさらに望ましい。帰還電極624の最遠位部と電極支持材620の組織治療面622の間の距離L1 は、0.5mmから30mmの範囲が望ましく、1mmから20mmの範囲がさらに望ましい。電気絶縁スリーブ608の厚みは0.01mmから0.5mmの範囲が望ましく、0.02mmから0.2mmの範囲がさらに望ましい。
【0117】
代表的な実施態様においては、流体経路は、内側ルーメン627すなわち帰還電極624とシャフト460内の第二の管状支持材の間の環状ギャップによって、カテーテルに形成される。この環状ギャップは、導電性流体が標的部位に向かって半径方向内向きに流れるように、図16に示されるとおりシャフト460の周辺近くに形成するか、流体が半径方向外向きに流れるように、シャフト中心に向かって形成することができる(図には示されていない)。どちらの実施態様においても、流体供給源(例えば、手術部位より上に配置されるまたはポンプ装置を持つ流体の袋)は、制御弁を持つか否かを問わず流体供給チューブ(図には示されていない)を通じてカテーテル460に連結される。
【0118】
図17Aに示される代替実施態様においては、導電性流体は、カテーテル460とは別個の流体供給エレメント(図には示されていない)から供給される。例えば、関節鏡手術においては、体腔に等浸透圧食塩水が灌注され、カテーテル460は、この灌注された体腔に導入される。帰還電極624と電極端子463の間の導電経路を維持するために、導電性流体は絶えず補給される。
【0119】
図18は、患者の鼻の管腔から組織を除去する方法を示している。図に示されるとおり、患者の鼻は、下鼻甲介および中鼻甲介702、704によって分割される鼻腔700および篩骨706によって鼻腔から分離される多数の副鼻腔を含む。図に示されるとおり、前頭洞708および蝶形骨洞710は、各々、それぞれ篩骨706を通って鼻腔700に伸びる通路または管腔712、714を含む。さらに、副鼻腔は相互を接続する通路(図には示されていない)を持つ。この通路は、腫脹した組織または瘢痕組織により遮断されて、副鼻腔が詰まって、激しい痛み及び圧力を生じることがしばしばある。後鼻腔または鼻排液、圧力による鼻うっ血、頭痛、副鼻腔感染、および鼻ポリープは、慢性副鼻腔炎と最も一般的に結びつくものである。図18には前頭洞305および蝶形骨洞307だけしか示されていないが、この処置は篩骨洞および上顎洞にも応用できることに留意すること。上顎洞の口720が図18に示されている。
【0120】
図18に示されるとおり、カテーテル460の剥離部464は、外鼻孔722を通って鼻腔700に、さらに前頭洞708に通じる通路712に進む。カテーテル460は、ガイドワイヤ、操縦可能なカテーテルなど多様な技術を使って前進させることができる。通路712の主要な遮断点に到達したら、導電性流体がカテーテル内の1つまたはそれ以上の内部ルーメン(図には示されていない)を通って組織に送られる。その代わりに、鼻腔700を導電性流体で満たすことができる(関節鏡処置と同様)。一部の実施態様においては、カテーテルは、自然発生の体液、例えば血液を導電媒体として使って作動するように構成することができる。流体は、帰還電極624を通り過ぎてカテーテル・シャフトの遠位端の電極端子463まで流れる。閉塞と電気端子463の間のゾーンが常に流体に浸っているように、流体の流量は、バルブ(図には示されていない)によって制御される。次に電源28をオンにして、電極端子462と帰還電極624の間に高周波電位差が加えられるように、調整する。導電性流体は、電極端子463と帰還電極624の間の導電経路(電流力線を参照のこと)を提供する。
【0121】
望ましい実施態様においては、高周波電圧は、閉塞媒体と電極端子463の間の導電性流体(図には示されていない)をイオン化蒸気層すなわちプラズマに変換するのに充分である。電極端子463と閉塞媒体の間に電位差が加えられる結果、上に論じたとおり、プラズマ内の荷電粒子が閉塞に向かって加速して、組織構造内の分子結合を解離させる。このプロセス中、外科医の視界をよくするために、剥離産物および過剰な導電性流体およびその他の流体(例えば、血液)を標的部位から吸引することができる。組織の剥離中、電流力線により発生する残留熱(一般に150℃未満)は、通常、標的部位の切断された血管を凝結するのに充分である。これが充分でない場合、上に論じたとおり、電圧を流体気化の閾値より下のレベルに下げることにより、外科医は電源28を凝結モードに切り替えることができる。このように同時に止血することにより、出血が少なくなり、外科医は処置を行いやすくなる。遮断が除去されたら、通気および排液が回復されて、副鼻腔が治癒して正常な機能に戻れるようになる。
【0122】
図19は、副鼻腔をさらに詳しく示す患者頭部の前頭断面図である。図に示されるとおり、鼻中隔750は、鼻腔700の中心を通って左右の上顎洞752、754の間に広がる。一連の曲がりくねった通路765は、鼻腔を左右の上顎洞752、754と接続する。この通路765は、部分的にまたは完全に遮断される可能性がある。本発明のシステムおよび方法は、外科医が小型のカテーテルをこの通路の中に前進させて、最小限に侵略的な方法で、すなわち周囲の軟骨、鼻中隔または副鼻腔に大きな損傷を与えずに遮断を量的に除去できるようにする。
【0123】
図20は、体構造を切断するために設計された本発明の実施態様を示している。この実施態様においては、電極端子804が長いほうの軸(図20において矢印806によって示されている)に沿って動くとき、電流力線810が電極端子804の先端の狭い範囲に制限されて、治療対象の体構造に切断効果を生じるように、電極端子は、狭い間隔の1つまたはそれ以上の円柱の線形または柱状配列として配置される。前と同様、電極端子804から放射される電流力線810は、導電性液体を通ってプローブ先端近くに配置される帰還電極構造812に至る。
【0124】
次に、図21および22を参照すると、電極端子804の代替形状が示されている。エッジが鋭いと(すなわち曲線半径がより小さい)電流密度が高くなるので、この代替電極形状を使えば、電極端子804から放射される電流密度を濃縮して、剥離速度を高めかつ(または)さらに隔離効果を集中することができる。図21は、エッジ820により高い電流密度を生じる、丸線電極端子804の平らな延長部を示している。電極端子804が円錐形先端822に形成されて円錐先端により高い電流密度を生じる、別の例が、図22に示されている。
【0125】
図23から25は、外傷、瘢痕など皮膚の外面から構造を切断し除去するためまたは患者の鼻、口および喉内の組織を切断し除去するための電気外科用プローブ830すなわち「プラズマ・メス」例を示している。プローブ830は、近位ハンドル834に取り外し可能に連結されたシャフトまたは使い捨て先端832、および複数の電極端子840を支えるために先端832から伸びる電気絶縁電極支持材836から成る(図23および25を参照のこと)。先端832およびハンドル834は、一般に、外科医が取り扱うのに適した形状に簡単に成形できるプラスティック材から成る。図26に示されるとおり、ハンドル834は、電気接続844を収納する内部キャビティ842を形成し、電気接続ケーブル34への接続に適したインターフェイスと成る(図1を参照のこと)。この実施態様例においては、ハンドル834は、外科処置と処置の間にハンドル834を滅菌することにより再利用できるように、蒸気滅菌可能なプラスティックまたは金属(例えば、ポリエチルエーテル・キートーン、またはアルミニウムおよび(または)亜鉛を含有する安定金属合金)から作られる。高温への反復的露出に耐えることのできるシリコン・ケーブル・ジャケットおよびポリエーテル・イミド・ハンドピースまたはULTEM(登録商標)など、使用温度が高い材料が望ましい。
【0126】
図23において、先端834は、互いにはまり合ってその間に先端832内に電極支持材を保持するためのくぼみを形成する、第一および第二のハウジング半身体から成ることが望ましい。電極支持材386は、先端832の遠位端から(通常約0.5から20mm)伸びて、電気的に隔離された複数の電極端子840および1つまたはそれ以上の帰還電極852の支えとなる(図25を参照のこと)。その代わりに、上に論じたとおり、外科処置中導電性流体を電極端子840の周りに閉じ込めるために、電極支持材836を先端832の遠位端から後退させることができる。電気支持材836は、外科医が扱いやすいように、通常、ハンドル834の縦軸に対して約10度から90度の角度で配置される実質的に平面の組織治療面860を持つ。この実施態様例においては、この機能は、先端832をハンドル834の縦軸に対して鋭角に向けることによって得られる。
【0127】
図23から25に示される実施態様において、プローブ830は、電極端子840と電源28(図1を参照のこと)の間の電流経路を完成するために、単一の環状帰還電極852を含む。図に示されるとおり、帰還電極852は、組織治療面860に近接して(一般には約0.1mmから2mmで、0.2mmから1mmがさらに望ましい)、流体接触面を持つことが望ましい。帰還電極852は、ハンドル834の近位端まで伸びるコネクタ(図には示されていない)に結合され、ここで電源28に適切に接続される(図1)。
【0128】
図26を参照すると、先端832は、さらに、各々、電極端子840の1つおよび支持材836の上の帰還電極852に結合される複数のワイヤ872を保持する雄電気コネクタ870を含む。ハンドル834内に収められる雌コネクタ874は、雄コネクタ870に取り外し可能に結合され、複数のワイヤ876が雌コネクタ874からケーブル(図1)に伸びる。プローブ830は、また、電源のために特定の電圧出力範囲および操作モードをプログラムするためにコード化抵抗器(図には示されていない)など識別素子も含むことが望ましい。これによって、電源を、多様な用途のための多様なプローブに使用できる。
【0129】
代表的な実施態様においては、プローブ830は、導電性流体を標的部位に送るために流体チューブ880(図23)を含む。流体チューブ880は、ハンドル834内のグルーブを通って先端832の内部キャビティを通って電極支持材386に隣接する遠位開口882(図24)まで伸びるサイズを持つ。流体チューブ880は、導電性流体供給源21(図1)に連結するための近位コネクタ884を含む。
【0130】
プローブ830は、また、導電性流体の標的部位への流量を制御するためのバルブまたはこれと同等の構造を含む。代表的な実施態様においては、ハンドル312は、流体チューブ880のためのバルブ構造となる回転式スリーブ890から成る。スリーブ890の回転は、チューブ880を通る流体の流れを妨げ、最終的に遮断する。当然、この流体制御は、スウィッチ、ボタンなど他の多様な入力およびバルブ装置によって行なうことができる。
【0131】
図24および25を参照すると、電気的に隔離された電極端子840が電極支持材836の組織治療面860全体に間隔を置いて配置される(線形配列が望ましい)。代表的実施態様においては、実質的に円錐形の3つの電極端子840が、表面860から遠位方向に伸びる線形配列で配置される。電極端子840は、通常、組織治療面860から約0.5から20mm伸び、約1から5mm伸びることが望ましい。出願者は、この形態は、電極端子840の遠位エッジでの電界強度およびこれに伴う電流密度を高め、それにより組織切断速度を速めることを発見した。代表的な実施態様においては、組織治療面380は、直径が約0.5mmから20mmの範囲(約2から10mmが望ましい)の円形断面を持つ。個々の電極端子840は、図に示されるとおり、外向きに先細が望ましく、図8Aおよび11に示される電極のような遠位エッジを形成することもできる。
【0132】
電極支持材836は、セラミックなど適切な高温電気絶縁材から成る多層基板によって構成されることが望ましい。多層基板は、セラミック・ウェーハ−層に接着される導電ストリップを持つ薄膜または厚膜ハイブリッドである(例えば、セラミック・ウェーハ−に印刷され、焼成またはプレーティングされる厚膜)。導電ストリップは、一般にタングステン、金、ニッケル、銀、プラチナ、またはこれと同等の材料から成る。この実施態様例においては、導電ストリップは、タングステンから成り、ウェーハ−層と同時焼成されて、一体のパッケージを形成する。導電ストリップは、セラミック層に開けられるホールまたはバイヤホールにより外部ワイヤ・コネクタに結合され、導電材でプレーティングまたはその他の方法で被覆される。この支持材370のさらに詳しい説明は、すでに参照により本出願に組み込まれている、1997年11月25日に提出された米国特許出願第08/977845号(弁理士整理番号第D−2号)に示されている。
【0133】
次に図26を参照すると、電気外科用プローブ900の別の実施態様は、シャフト908およびシャフトの遠位端の支持基質902から伸びる少なくとも2つの電極端子904から成る。電極端子904は、組織の切開のために遠位エッジ910を形成することが望ましい。電極端子904のエッジ910は、相互に実質的に平行であり、通常、約4から15mmの間隔を置き、約8から10mmn間隔を置くことが望ましい。エッジ910は、支持基質902の遠位端から約0.5から10mm伸び、約2から5mm伸びることが望ましい。この実施態様例においては、プローブ900は、電極端子904から近位方向に間隔を置いて配置される帰還電極912を含む。その代わりに、帰還電極912を電極端子904の1つとするか、または患者の体の外面に置かれる分散パッドとすることができる。
【0134】
図27を参照すると、電気外科用メス930は、遠位端に電極アセンブリ934、および電極アセンブリ934から絶縁材938を挟んで近位方向に間隔をおいて配置される帰還電極936を含むシャフト932から成る(上に説明した装置と同様)。この実施態様においては、電極アセンブリ934は、組織を切断するために実質的に線形の切断経路を形成する、相互に整合する対の外側電極端子940および内側ループ電極942から成る。この実施態様の電極は、一般的に言って、上に説明したものと同じ延長長さおよびサイズを持つ。この実施態様は、組織を切断し、同時に切断された組織の止血を行うために有益である。外側電極端子940は、組織を正確に切断するために遠位方向に明瞭な小さい面積すなわち点まで伸び、一方、ループ電極942は、組織を効果的に凝結させるために充分な露出面積を持つ。大量出血する組織においては、電源28は、プラズマ層を除去し、凝結効果を高めるために、非剥離モードに切り替えられる。その代わりに、外科医は、標的部位への導電性流体の供給を減少または停止して、高い電力レベルに維持することができる。出願者は、こうすることにより血液が帰還電極36と電極端子940の間の導電経路にされて、標的部位での凝結速度を高めることを、発見した。
【0135】
図28は、本発明に基づくさらに別の電気外科用メス950を示している。メス950は、組織を切断し凝結するために器具のシャフト954の遠位端に単一のループ電極952を含む。上の実施態様と同様、ループ電極952によって形成される鋭い遠位エッジは、組織を効率よく正確に切断する一方、ループ電極の表面面積が大きくなるので、止血を容易にする。他の実施態様においては、メス950は、線形、平行または配列状に配置されるこの種のループを複数含むことができる。
【0136】
次に、本発明に従って気道障害を治療するための方法について説明する。これらの実施態様においては、上に説明した電気外科用プローブの1つなど電気外科用プローブを、舌、扁桃、鼻甲介、アデノイド、軟口蓋組織(例えば口蓋垂および軟口蓋)、硬組織およびその他の粘膜または粘膜下組織を含めて(ただし、これに限定されない)標的組織塊を剥離、切断または切除するために使用することができる。1つの実施態様においては、睡眠無呼吸の治療のために、口蓋垂320、軟口蓋および扁桃の選択された部分が除去される。この方法においては、上に論じたプローブまたはカテーテルの1つなど電気外科用器具90が、図14に示されるとおり患者の口310に導入される。局部麻酔、例えば腫脹またはその他の局部麻酔で診療所でこの処置を行うことは可能であるが、一般に、この処置は、全身麻酔の下で病院で行われる。外科医が処置を見ることができるようにするために、内視鏡(図には示されていない)またはその他のタイプの検視装置も口10に導入、または一部導入することができる(検視装置は電気外科用プローブと一体とするか、別個の装置とすることができる)。電極端子104は、標的組織(例えば、扁桃、口蓋垂320、軟口蓋など)に隣接してこれに当てて配置され、上に説明したとおり導電性流体が標的部位に送られる。次に、電源28(図1)が起動され、電極端子104と帰還電極112の間に高周波電位差が加えられる。処置およびプローブ90の遠位端の形態に応じて、外科医は、口内の神経など敏感な構造および非標的組織を傷つけることなく、閉塞組織を切断、剥離またはその他の方法で除去するためにプローブ90を操作する。視界をよくし、過剰な流体および(または)剥離産物が患者の喉に流れ落ちないようにするために、標的部位を吸引することもできる。
【0137】
上に論じたとおり、本発明は、閉塞性睡眠障害の治療に使用される従来のRFおよびレーザー装置より低い温度で組織を除去するための新規のコブレーションプロセスを使用する。従って、組織は、わずかな炭化および非常に浅い組織壊死を伴うだけで除去される。このように付帯的損傷がわずかで、低温であるため、手術中および手術後の患者の痛みが大幅に減少し、従来の装置に比べて治癒時間が増す。さらに、プローブ90の端の低温プラズマは、標的組織の切断された血管を同時に止血する。これにより、手術中の出血が最小限に抑えられ、視界がよくなり、手術時間が短縮され、おそらくより早い治癒および手術後の痛みの減少に寄与する。さらに、コブレーションメカニズムの正確性により、隣接する神経およびその他の敏感な構造への損傷が最小限に抑えられるか完全に排除されるというある種の気楽さを外科医に感じさせる。
【0138】
患者の出血が他の場合よりひどい場合がある。特に、感染症の扁桃の除去は、外科医にとって止血が大きな問題となる。出願者は、図27および28において説明した電気外科用プローブが、特に、剥離処置中扁桃の切断された血管を凝結し封止するために適していることを発見した。深刻なケースにおいては、出願者は、標的部位の導電性流体(例えば、食塩水)を排除する(ポンプをオフにして、凝結モードにすることにより)ことが凝結および止血を容易にすることを発見した。
【0139】
別の実施態様においては、いびき障害の治療のために軟口蓋組織を剥離および(または)収縮するために本発明の電気外科用プローブを使うことができる。特に、選択される組織部位の下または周りの望ましくない組織損傷を生じずに、口蓋垂320の一部を剥離または収縮するために、このプローブが使用される。組織の収縮のためには、口蓋垂組織の温度を通常の体温(例えば37℃)から45℃から90℃の範囲の温度に(60℃から70℃の範囲が望ましい)上げるために充分な電位差が、電極端子104と帰還電極112の間に加えられる。この温度上昇により、口蓋垂組織内の膠原結合線維が収縮する。
【0140】
本発明に基づく組織収縮の1つの方法においては、上に説明したとおり導電性流体が標的部位に送られて、標的組織の膠原線維の収縮を誘発するのに充分な温度まで加熱される。導電性流体は、膠原線維を実質的に不可逆的に収縮するのに充分な温度まで加熱される。このためには、一般的に言って、組織温度を約45℃から90℃の範囲にする必要があり、通常は約60℃から70℃の範囲にする。流体は、導電性流体と接触している電極端子に高周波電気エネルギーを与えることによって加熱される。電極端子104から放射される電流は、流体を加熱して、加熱流体のジェットまたはプルームを発生し、これが標的組織に向けられる。加熱流体は、膠原組織の熱水収縮を生じるのに充分な温度まで膠原温度を上げる。帰還電極112は、組織部位から電流を引き離して、組織への電流の貫入の深さを制限することにより、膠原組織の分子解離および破壊を防ぎ、標的組織部位の周囲および基礎組織への損傷を最小限に抑えるかまたはこれを完全に回避する。1つの実施態様例においては、電極端子104は、RF電流が組織に中に入り込まず、導電性流体を通って帰還電極に流れるように、組織から充分な距離が保たれる。この実施態様においては、組織にエネルギーを与えるための主要なメカニズムは、電流ではなく加熱された流体である。
【0141】
代替実施態様においては、電流が選択された深さまで直接組織の中に通るように、電極端子104は、標的組織と接触させられるかまたはそのごく近くに置かれる。この実施態様においては、帰還電極は組織から電流を引き離して、組織への電流の貫入深さを制限する。出願者は、電極端子および帰還電極に加えられる電圧の周波数を変化させることによって、本発明の電気外科用システムを使って電流の貫入深さを変動できることを発見した。これは、導電性細胞液を取り囲む細胞膜の電気特性のために周波数が増大すると組織の電気インピーダンスが減少することが知られているためである。周波数が低いと(例えば、350kHz未満)、組織のインピーダンスは高くなり、本発明の帰還電極および電極端子構成が存在することにより(下で詳しく論じる)電流力線の貫入深さが小さくなるため、組織の加熱深さが小さくなる。1つの実施態様例においては、膠原収縮深さを浅くするために(例えば、通常1.5mm未満であり、0.5mm未満が望ましい)、約100から200kHzの動作周波数が電極端子に与えられる。
【0142】
本発明の別の態様においては、組織の治療のために使われる電極端子のサイズ(例えば、直径または主寸法)が、意図される組織治療の深さに応じて選択される。同時係属特許出願PCT国際特許出願、米国国内段階出願番号第PCT/US94/05168号において前に説明したとおり、組織への電流貫入深さは、個々の活性電極の寸法が大きくなるに連れて増す(電流の周波数、帰還電極の形態など他のファクターは一定として)。電流貫入深さ(つまり、膠原収縮、不可逆的壊死など組織に変化を生じるのに充分な電流密度が達する深さ)は、本発明の双極形態の場合約100kHzから200kHzの周波数で動作するとき、ほぼ活性電極の直径程度である。従って、電流貫入深さを小さくする必要がある用途の場合、小さい寸法の1つまたはそれ以上の電極端子を選択することになる。逆に、電流貫入深さを大きくする必要のある用途の場合には、大きい寸法の1つまたはそれ以上の電極端子を選択することになる。
【0143】
前記の措置の他に、本発明のシステムおよび方法は、口310、咽頭330、喉頭335、下咽頭、気管340、食道350および頸部360の多様な障害の治療に使用できる。例えば、扁桃肥大またはその他の扁桃障害は、リンパ上皮組織を部分的に剥離することによる扁桃切除によって治療することができる。この処置は、通常、頭を伸ばして挿管麻酔をかけて行われる。口蓋舌弓が切開され、扁桃実質と咽頭収縮筋の間の結合組織層が現れる。切開は、従来のメスを使うか、本発明の電気外科用プローブを使って行なうことができる。次に、口蓋弓を保存して上極を通って舌の基底まで剥離することにより、扁桃が解放される。プローブは、組織を剥離すると同時に、その部位の切断された血管を止血する。同様に、鼻咽頭の基底からアデノイドを分離(例えば、切除または剥離)することにより、口呼吸を困難にするアデノイド肥大または鼻閉塞をアデノイド切除で治療することができる。
【0144】
その他の咽頭障害を本発明に従って治療することができる。例えば、下咽頭憩室症は食道内の食道口のすぐ上に形成される小さい嚢を伴う。嚢包は、剛性の食道鏡を導入して嚢包を分離することにより、本発明に従って内視鏡を使って除去することができる。次に下咽頭収縮筋を分離し、本発明に従って嚢を剥離する。血管腫、リンパ腫、乳頭腫、舌甲状腺腫、悪性腫瘍など口および咽頭内の腫瘍も、本発明に従って除去できる。
【0145】
本発明のその他の処置は、声帯ポリープおよび外傷の除去および部分的および全面的喉頭切除を含む。後者の処置においては、喉頭全体が舌の基底から気管まで除去され、必要な場合には、舌、咽頭、気管および甲状腺の一部が除去される。
気管狭窄も本発明に従って治療できる。気管の壁の急性および慢性の狭窄は、咳、チアノーゼおよび窒息を引き起こす場合がある。
【0146】
図29および30は、ポリープまたは鼻甲介など膨大した体組織を本発明に従って治療するための方法を示している。この処置においては、遮断を取り除いて(または)鼻甲介のそれ以上の腫脹を防止して、正常な副鼻腔の機能を取り戻すために、ポリープ、鼻甲介またはその他の副鼻腔組織を剥離または縮小(例えば、組織の収縮により)することができる。例えば、鼻粘膜の肥大を伴う鼻粘膜の慢性的過敏または炎症の総称である慢性鼻炎においては、下鼻甲介を剥離または収縮により縮小することができる。その代わりに、下鼻甲介の下縁から細長い組織片を除去することにより鼻甲介切除または粘膜切除を行って、鼻甲介の体積を減らすことができる。炎症によって生じる鼻または副鼻腔粘膜の良性の有茎または無茎の塊から成る鼻ポリープを治療するためには、本発明の方法により、鼻ポリープを収縮させるか、剥離することができる。重い副鼻腔炎を治療するためには、遮断部位に電気外科用プローブを導入するために前頭洞手術を行う。本発明は、また、鼻中隔の病気を治療するため、たとえば、鼻中隔を除去、矯正または再移植するために鼻中隔を剥離または切除するために使用することができる。
【0147】
本発明は、特に、鼻甲介の一部を量的に除去することにより膨大した鼻甲介を縮小する際に有益である。図29に示されるとおり、患者の鼻1000は、中鼻甲介1004および下鼻甲介1006を含めて1組の鼻甲介1002を持つ鼻腔1001から成る。下鼻甲介1006は、一般に、前部および後部を持つ。下鼻甲介1006、一般的には前部の剥離は、実質的にその機能を低下させないことが分かっている。本発明に従って、プローブ1003(図30A)の遠位端が鼻孔から鼻腔1001に導入される。電極端子1058は、選択される鼻甲介1006に隣接する位置に置かれ、導電性流体が流体供給エレメント(図には示されていない)から組織に送られる。流体は、帰還電極1072を通り過ぎてシャフト遠位端の電極端子1058まで流れる。組織と電極支持1070の間のゾーンが流体で絶えず浸されるように、流体の流量はバルブ(図には示されていない)により制御できる。その代わりに、または流体供給と共に、処置前に導電性ゲルを標的部位に塗布することができる。次に、電源28をオンにして、電極端子1058と帰還電極1072の間に高周波電位差が加えられるように調整する。導電性流体は、電極端子1058と帰還電極1072の間に導電経路を提供する。プローブ1003が起動されたら、外科医は、鼻甲介組織を量的に除去するために鼻甲介1006に電極端子を接触させるか、そのごく近くに配置する。
【0148】
図30Aおよび30Bは、副鼻腔組織の除去をさらに詳細に示している(図30Bは、単一の活性電極の実施態様を示している)。図に示されるとおり、導電性流体を通って帰還電極に電流1010が流れるように電極端子1058と帰還電極1072の間に高周波電位差が加えられる。高周波電圧は、標的組織1020と電極端子1058の間の導電性流体(図には示されていない)をイオン化蒸気層1022すなわちプラズマに変換するのに充分である。電極端子1058と標的組織1020の間に電位差が加えられる(すなわち、プラズマ層を横切る電圧勾配)結果、プラズマ内の荷電粒子(すなわち、電子)1024が組織に向かって加速する。充分に大きい電位差のとき、この荷電粒子1024は、プラズマ層1022に接触する組織構造内で分子結合の解離を生じるのに充分なエネルギーを得る。この分子解離には、組織の量的な除去(すなわち剥離昇華)および酸素、窒素、二酸化炭素、水素およびメタンなど低分子量ガス1026の生産を伴う。組織内での加速荷電粒子1024の射程は短いので分子解離プロセスを表層に制限し、基礎組織への損傷および壊死を最小限に抑える。
【0149】
プロセス中、ガス1026は、真空源に適切に連結された吸込みチューブ、器具またはプローブ1003内のルーメン(図には示されていない)から吸引される。さらに、外科医の視界をよくするために、過剰な導電性流体およびその他の流体(例えば、血液)を標的部位から吸引することができる。組織の剥離中、電流力線により発生する残留熱(一般に150℃未満)は、通常、標的部位の切断された血管を凝結するのに充分である。これが充分でない場合、上に論じたとおり、電圧を流体気化の閾値より下のレベルに下げることにより、外科医は電源28を凝結モードに切り替えることができる。このように同時に止血することにより、出血が少なくなり、外科医は処置を行いやすくなる。鼻甲介が縮小されたら、通気および排液が回復されて、副鼻腔が治癒して正常な機能に戻れるようになる。
【0150】
処置に応じて、外科医は、電極端子1058を鼻甲介組織に対して相対的に並進させて、鼻構内内に孔、溝、条、ディボット、クレーターなどを形成することができる。さらに、外科医は、これらの孔または溝内に意図的に熱損傷を生じて、鼻甲介が処置後に腫脹するのを防ぐ瘢痕組織を形成することができる。1つの実施態様においては、医者は、組織を除去して、通常2mm未満の直径を持つ(1mm未満が望ましい)1つまたはそれ以上の孔を鼻甲介に形成するとき、電極端子1058を鼻甲介組織の中に並進させる。別の実施態様においては、医者は、鼻甲介の外面を横切って電極端子1058を並進させて、1つまたはそれ以上の溝またはトラフを形成する。出願者は、本発明は、本出願において説明される低温剥離技術を使って組織にこの種の孔、ディボットまたは溝を迅速にかつきれいに形成できることを発見した。組織にこの種の孔または溝を形成するための方法についてさらに詳しい説明は、米国特許第5683366号に示されており、その完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0151】
本発明の別の利点は、基礎および周囲の組織、神経(例えば視神経)または骨に壊死または熱損傷を生じることなく、鼻甲介内に正確に溝または孔を剥離形成することができる点である。さらに、組織部位に与えられるエネルギーが骨または脂肪組織(標的副鼻腔組織より一般的にいってインピーダンスが高い)を剥離するには不充分であるように、電圧を制御することができる。このように、外科医は、骨を剥離したりその他の重大な損傷を与えることなく、文字どおり骨から組織を取り除ける。
【符号の説明】
【0152】
90 プローブ
100 シャフト
102 電極支持材
104 電極端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ1998年4月2日、1998年5月22日および1998年8月18日に提出された米国特許出願第09/054323号、09/083526号および09/136079号(それぞれ弁理士整理番号第E−5号、E−3−1号およびE−7号)の一部係属出願であり、上記の出願は、各々1995年6月7日に提出された米国特許出願番号第08/485219号(弁理士整理番号第16238−0006000号)の一部継続出願である1997年12月15日に提出された出願番号第08/990374号(弁理士整理番号第E−3号)の一部継続出願である。上記の出願の完全な開示は、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、1998年4月10日に提出された一般譲渡された同時係属米国特許出願第09/058571号(弁理士整理番号第CB−2号)および1998年4月2日に提出された米国特許出願第09/054323号(弁理士整理番号第E−5号)、1998年1月21日に提出された米国特許出願第09/010382号(弁理士整理番号第A−6号)および1998年2月27日に提出された米国特許出願第09/032375号(弁理士整理番号第CB−3号)、1997年11月25日に提出された米国特許出願第08/977845号(弁理士整理番号第D−2号)、1997年10月2日に提出された第08/942580号(弁理士整理番号第16238−001300号)、1998年2月20日に提出された第09/026851号(弁理士整理番号第S−2号)、1996年11月22日に提出された米国出願第08/753227号(整理番号第16238−002200号)、1996年7月18日に提出された米国出願第08/687792号(整理番号第16238−001600号)、および1992年1月7日に提出された米国特許出願第07/817575号(弁理士整理番号第16238−00040号)の一部継続である1992年10月9日に提出された米国特許出願第07/958977号(弁理士整理番号第16238−000410号)の一部継続出願である1993年5月10日に提出された米国特許出願第08/059681号(弁理士整理番号第16238−000420号)の一部継続出願である1994年5月10日に提出されたPCT国際出願、米国国内出願番号第PCT/US94/05168号、現在の米国特許第5697909号(弁理士整理番号第16238−00440号)、に関係する。上記の出願の完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。本発明は、また1995年11月22日に提出された一般譲渡された米国特許第5683366号(弁理士整理番号第16238−000700号)にも関係し、その完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本文書に組み込まれる。
本発明は、一般的に言って電気外科の分野に関するものであり、もっと明確に言うと耳、鼻および喉など頭部および頸部の組織を治療するために高周波電気エネルギーを採用する外科装置および方法に関するものである。本発明は、特に、副鼻腔手術および閉塞性睡眠障害の治療に適している。
【背景技術】
【0003】
副鼻腔は、鼻腔に通じる顔面骨内部の空気の詰まった窩腔である。副鼻腔炎は、副鼻腔の1つまたはそれ以上の粘膜の炎症である。副鼻腔炎は、副鼻腔にまで広がる呼吸器系最上部のウィルスまたはバクテリア感染と関係する。副鼻腔開口部が遮断されると、窩腔が詰まって、激しい痛みおよび圧力を生じる。後鼻腔または鼻腔排液、圧力による鼻腔うっ血、頭痛、副鼻腔感染および鼻ポリープが、慢性副鼻腔炎に最も一般的に見られる症状である。
【0004】
軽い副鼻腔炎の治療には、通常、抗生物質、うっ血除去剤および鎮痛薬が使用され、それ以上の合併症を防ぐよう工夫される。もっと重いまたは慢性の副鼻腔炎の場合、特に何年もの間アレルギー治療を受けていてすでに副鼻腔遮断が生じている患者または生まれつき副鼻腔および鼻孔が小さい患者の場合、鼻および副鼻腔を通常の機能に戻すためには手術が必要な場合がしばしばある。内視鏡外科技術および医療装置の分野での最近の進歩は、複雑な副鼻腔外科処置を実施するための機器類および方法を熟練した医者に提供してきた。例えば、鼻腔および副鼻腔の映像化が改善されたことにより、現在では内視鏡外科医はこの解剖学的部位により近づきやすくなっている。その結果、機能的内視鏡副鼻腔手術(FFSS)が副鼻腔疾患の外科的治療における優先的技術となった。
【0005】
別の鼻の症状である鼻水(例えば、アレルギー性鼻炎または血管神経性鼻炎)は、一般に、鼻甲介と呼ばれる鼻の中の小さい棚状構造によって引き起こされる。鼻甲介は、鼻を抜けて肺に入る空気を暖め湿らせる役割を持つ。空気が刺激原を含む場合、鼻甲介は、体が呼吸の通路を遮断して浄化しようとするかのように、腫脹して粘液を注ぐことによって空気で運ばれる粒子に反応する。腫脹した鼻甲介を一時的に軽減するために、鼻用うっ血除去スプレーおよびピルが処方されることが多い。しかし、この措置の効果には限界があり、この種の鼻用スプレーを長期間使用すると、一般に問題を悪化させる。さらに、うっ血除去用錠剤は、高血圧を生じ、心拍を増やし、人によっては不眠を生じる。
【0006】
過去数年間、機能的内視鏡副鼻腔手術においてポリープまたはその他の腫脹した組織を取り除くために、マイクロデブライダ(顕微壊死組織切除装置)およびレーザーなど動力つきの機器が使用されてきた。マイクロデブライダは、組織を切断し切除するために鋸状の遠位先端付きの回転シャフトを持つ使い捨て動力つきカッターである。マイクロデブライダのハンドルは、一般に中空であり、小さい真空を作り、これが残骸を吸引するのに役立つ。この処置において、シャフトの遠位先端は鼻孔から患者の副鼻腔に通され、手術部位を見るために内視鏡が同様に同じまたは反対の鼻孔から通される。外部のモーターがシャフトおよび鋸状先端を回転させて、先端がポリープまたは副鼻腔の遮断の原因となるその他の組織を切断できるようにする。重大な遮断が取り除かれると、通気および排液が回復して、副鼻腔はその正常な機能に戻る。
【0007】
マイクロデブライダは有望になっているが、この装置は多くの短所を持っている。例えば、鼻腔および副鼻腔の組織は非常に血管が多く、マイクロデブライダは、この組織内の血管を切断し、通常外科医が標的の部位を見るのを妨げるほど大量の出血を生じる。真空作用は処置中破壊される血管からの出血を促進する傾向があるので、この出血を抑制するのは困難となる。さらに、マイクロデブライダは、切断された血管を焼灼するために周期的に鼻から外さなければならず、このことが処置を長引かせる。さらに、鋸状のエッジおよびマイクロデブライダのその他の微細な割れ目は、残骸が詰まりやすく、外科医は手術中マイクロデブライダを外してきれいにする必要があり、さらに処置の時間を長引かせる。しかし、もっと深刻なことは、マイクロデブライダが正確ではなく、処置中に標的の副鼻腔組織と軟骨、骨または脳神経など鼻内のその他の組織を区別することが難しいことが多いことである。従って、外科医は、鼻内の軟骨および骨の損傷を最小限に抑え、視神経などの神経を傷つけないようにするために非常に慎重でなければならない。
【0008】
レーザーは、当初、熱で組織を剥離または気化して、組織内の小さい血管を焼灼し封止する役割を果すので、副鼻腔の手術に理想的と考えられた。残念ながら、レーザーは、高価であると同時に、この種の処置に使用するのは多少時間がかかる。レーザーのもう1つの短所は、組織剥離の深さを判断することが難しい点である。外科医は一般的に言って組織に接触することなくレーザーを当てて、照射するので、レーザーがどの程度の深さまで切断しているか判断するための触覚的フィードバックを一切受け取らない。健康な組織、軟骨、骨および(または)脳神経は、副鼻腔組織のごく近くにあることが多いので、組織の損傷の深さを最小限に抑えることが不可欠であるが、レーザーを使用する場合必ずしもこれが保証されない。
【0009】
睡眠無呼吸症候群は、日中の傾眠過剰、知的劣化、不整脈、いびきおよび睡眠中の輾転反側などを特徴とする症状である。この症候群は、古典的に2つのタイプに分類される。1つは、「中枢神経系睡眠無呼吸症候群」と呼ばれるもので、呼吸作用を繰り返し失うことを特徴とする。閉塞性睡眠無呼吸症候群と呼ばれる第二のタイプは、患者の上部気道すなわち喉頭の頭側で喉頭を含まない気道部分の閉塞のために生じる睡眠中の反復的な無呼吸症状を特徴とする。
【0010】
睡眠無呼吸の治療には様々な内科的、外科的および理学的措置が含まれる。内科的措置には、医薬の使用、および鎮静薬またはアルコールなど中枢神経系抑制剤の回避が含まれる。この措置は時には役立つが、完全に効果を持つことは稀である。理学的措置は、減量、鼻咽頭気道、鼻CPAP(持続的陽圧呼吸)および夜間に使用される様々な舌保持装置が含まれる。これらの措置は面倒で、不快で、長期間使用するのは難しい。特に、CPAP装置は、閉塞を緩和するために気道に対して空気圧の「副子」として作用するが、患者の生涯にわたる場合があり、通常、睡眠中および仮眠中ほぼ100%装置を使用しなければならない。
【0011】
外科的関与には、口蓋垂咽頭形成(UPPP)、レーザー支援口蓋垂形成処置(LAUP)、扁桃切除、顎後退を補正するための手術および気管開口手術が含まれる。LAUPは、口蓋および口蓋垂部分の過剰な組織を切除し、気化するためにCO2レーザーを使用する。UPPPにおいては、口蓋垂、口蓋、咽頭および(または)扁桃の一部を除去するために一般にメスまたは従来の電気メス装置が使われる。これらの処置は効果的ではあるが、患者によっては外科的に危険があるので使えないことが多い。さらに、従来の電気メスまたはレーザー装置を使って行われるUPPPおよびLAUPは、一般に過剰な出血および手術後の激痛を生じるので、患者にとっては受け入れがたいかも知れない。
【0012】
最近、睡眠無呼吸などの気道障害を治療するために、選択的に舌の一部を破壊するためにRFエネルギーが使用されている。カリフォルニア州サニーヴェールのSomnus Medical Technologiesが開発したこの処置は、患者の口の粘膜下組織を乾燥または破壊するためにRF電流を標的組織に送る単極電極を使用する。当然、この単極装置は電流が患者の体の不確定の経路を流れて、患者の身体に望ましくない電気刺激を与える危険を増大するという短所がある。さらに、患者の体の確定経路は比較的高いインピーダンスを持つので(距離および患者の身体の抵抗が大きいため)、一般に、標的組織を剥離または切断するために適した電流を発生させるためには帰還電極と活性電極の間に大きな電位差を加えなければならない。しかし、この電流は確定電気経路より小さいインピーダンスを持つ身体経路を偶発的に流れる場合があり、この経路を流れる電流を大幅に増大して、周囲の組織または近隣の周辺神経を損傷または破壊する可能性がある。
【0013】
Somnus単極電極など従来のRF装置の別の短所は、この種の装置が、一般に、活性電極と標的組織の間に電位差を生じて、電極と組織の間の物理的間隙に電気アークを形成することによって機能する点にある。電気アークと組織の接点において、電極と組織の間の高い電流密度により急激な組織の加熱が生じる。この高電流密度は、細胞液を急激に蒸気にするので、局部的組織加熱の経路にそって「切断効果」が生じる。このようにして、組織は、気化細胞液の経路に沿って分離されて、標的組織の周りに望ましくない付帯的な組織損傷を誘発する。この付帯的な組織損傷は、組織の無差別的破壊を引き起こして、組織の適切な機能を損失することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、耳、鼻および喉内の組織など患者の頭部および頸部の構造に選択的に電気エネルギーを与えるためのシステム、装置および方法を提供する。本発明のシステムおよび方法は、特に、副鼻腔手術(例えば、慢性副鼻腔炎および/またはポリープ切除)における組織の剥離および止血、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸の治療のための処置における膠原収縮、剥離および(または)止血(たとえば、軟口蓋または舌/咽頭硬化および中線舌切除)に有益である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施方法は、1つまたはそれ以上の電極端子を標的部位と少なくとも部分接触またはごく近接するように電気外科用プローブを標的組織に隣接する位置に置く。等浸透圧食塩水など導電性流体を標的部位に向けて送って、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に電流の流路を作る。次に、導電性流体によって作られる電流経路を通じて電極端子と帰還電極の間に高周波電圧を加える。処置に応じて、標的部位の組織構造を切断、除去、剥離、収縮、凝結、気化、乾燥、またはその他の方法で修正するために、プローブを並進、往復またはその他の方式で操作することができる。この方法は、導電性流体が電極端子から帰還電極まで適切な電流の流路となるので、特に、鼻または口の手術など本来的に乾燥した環境(すなわち、組織が流体に浸されてない環境)において効果的である。
【0016】
本発明の1つの態様においては、腫脹した鼻組織、粘膜、鼻甲介、ポリープ、新生物、軟骨(例えば鼻中隔)などの遮断を除去するために患者の鼻腔または副鼻腔の組織を取り除くための方法が提供される。この方法においては、内視鏡を使って鼻孔の一方からまたは開放処置で直接1つまたはそれ以上の電極端子が鼻腔に入れられる。電極端子を実質的に流体によって囲むために、等浸透圧食塩水などの導電性流体が鼻腔内またはその周りの標的部位に送られる。その代わりに、処置中電極端子がゲル内に浸るように導電性ゲルなどもっと粘性の流体を標的部位に塗布することができる。どちらの実施態様においても、組織の少なくとも一部を除去するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。高周波電圧は、組織内の切断された血管の止血の深さを制御するよう選択されることが望ましく、これにより、外科医にとって手術部位の視界が大幅に改善される。
【0017】
特定の形態においては、鼻組織は、分子解離または崩壊プロセスにより除去される。この実施態様においては、電極端子に加えられる高周波電圧は、電極端子と組織の間の導電性流体(例えばゲルまたは食塩水)を気化させるのに充分である。気化した流体の中で、イオン化したプラズマが形成され、荷電粒子(例えば電子)が組織に向かって加速されて、組織のいくつかの細胞層の分子破壊または崩壊を生じる。この分子解離には、組織の量(体積)的な除去が伴う。プラズマ層内での加速した荷電粒子は射程は短いので、分子解離プロセスは表層に限定され、基礎組織の損傷および壊死を最小限に抑える。このプロセスは、10から150マイクロメートルという薄さの組織の量的な除去を行うために正確に制御することができ、周囲のまたは基礎の組織構造への加熱または損傷はわずかである。この現象についてのさらに詳しい説明は、一般譲渡された米国特許第5683366号に記載されており、その開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0018】
本発明は、内視鏡副鼻腔手術に関して、現在のマイクロデブライダおよびレーザー技術に比べて多くの利点を持っている。組織の量的な除去を正確に制御できることにより、組織の剥離または除去の領域が非常に限定され、一貫し、予測可能になる。組織加熱の深さが小さいことも、標的副鼻腔組織に隣接することが多い健康な組織構造、軟骨、骨および(または)脳神経への損傷を最小限に抑えるか完全に排除するのに役立つ。さらに、組織が除去されるとき鼻内の小さい血管が同時に焼灼され封止されて、処置中継続的に止血される。これによって外科医の視界が広がり、処置の時間が短縮される。さらに、本発明は導電性流体の使用を斟酌しているので(先行技術の双極および単極電気外科技術と異なり)、処置中に等浸透圧の食塩水を使用できる。食塩水は、体液と同じ濃度を持ち他の流体ほど体内に吸収されないので、灌注のために適した媒体である。
【0019】
1つの実施態様においては、傷が治癒するとき瘢痕組織形成されることにより鼻甲介を収縮させ、腫脹を防ぐために、鼻内の鼻甲介近くまたはその中の部位から小さい組織片または孔が除去される。本発明によれば、1つまたはそれ以上の電極端子は鼻甲介付近の標的組織に隣接する位置に置かれ、上に説明されるとおり流体が標的組織に送られる。高周波エネルギーが電極端子および帰還電極に与えられると、電極端子が除去された組織により空になった空間に前進して、鼻甲介組織に小さい孔または溝を形成する。一般に直径3mm未満(直径1mm未満が望ましい)のこの孔は、鼻甲介を収縮させ腫脹を防ぐのに役立つ。1つの実施態様例においては、基礎組織を剥離する前に粘膜を持ち上げられるように、切開が行われる(すなわち、別個の器具を使ってまたは本発明の電気外科用プローブを使って)。これは、粘膜および鼻にとって重要なその機能を守るのに役立つ。その代わりに、粘膜に直接孔を通すことができる。本発明によって形成される孔のサイズは小さいので、これによって粘膜輸送に悪影響を及ぼすことはないはずである。組織に孔または溝を形成するための電気外科的方法についてさらに詳しい説明は、参照により本出願にすでに組み込まれている米国特許第5683366号に示されている。
【0020】
本発明の別の態様における方法では、鼻腔または喉など患者の頭部または頸部内の標的部位のごく近くに1つまたはそれ以上の電極端子の位置が定められる。標的部位の組織内の膠原線維の温度を体温(約37℃)から約45℃から90℃の範囲、通常約60℃から70℃の組織温度に上げて、本質的に不可逆的に膠原線維を収縮させるために、電極端子に高周波電圧が加えられる。望ましい実施態様においては、導電性流体が、電極端子と電極端子に近接して配置される1つまたはそれ以上の帰還電極の間に送られて、組織から離れた電極端子から帰還電極への電流の流路を作る。電流の流路は、導電性流体を帰還電極を通り過ぎて標的部位まで流体経路に沿って送ることにより、またはゲルなど粘性の導電性流体を標的部位に配置して電極端子および帰還電極を導電性ゲル内に沈めることによって、作ることができる。膠原線維は、電流が帰還電極に戻る前に選択された深さまで組織に電流を通すことによって、あるいは導電性流体を加熱して標的部位に向かう加熱流体のジェットまたはプルームを発生させることによって、加熱することができる。後者の実施態様においては、電流が全く組織を通らない場合がある。どちらの実施態様も、加熱流体および(または)電流が、膠原線維の熱水収縮を生じるのに充分な高さまで膠原の温度を上げる。
【0021】
膠原組織の収縮は、特に、いびきまたは睡眠無呼吸など閉塞性睡眠障害を治療するための処置において有益である。この種の処置においては、1つまたはそれ以上の電極端子が患者の口に導入され、舌、扁桃、軟口蓋組織(例えば、口蓋垂)、硬組織および粘膜組織の選択された部分の標的組織に隣接する位置に置かれる。外科医が処置を見ることができるように、内視鏡またはその他のタイプの視覚検査装置も口に導入するまたは部分的に導入することができる(視覚検査装置は電気外科用プローブと一体型でもこれから分離したものでもよい)。選択された組織部分の下および周りの組織に望ましくない損傷を与えることなく、例えば口蓋垂の一部を剥離または収縮するために、導電性流体が上に説明されるとおりに使用され、電極端子および1つまたはそれ以上の帰還電極に高周波電圧が加えられる。
【0022】
本発明に基づく装置は、一般的に言って、近位端および遠位端を持つシャフト付き電気外科用プローブまたはハンドピース、遠位端の1つまたはそれ以上の電極端子および電極端子を高周波電気エネルギー源と結合する1つまたはそれ以上のコネクタを含む。内視鏡副鼻腔手術の場合、シャフトは少なくとも患者の鼻孔の一方を通せるサイズの遠位端を持つ。腫脹した鼻甲介を治療する場合、腫脹した鼻甲介組織内に小さい孔または溝を形成しやすくするために、シャフトの遠位端の直径は通常3mm未満とし、1mm未満が望ましい。シャフトは、さらに、標的組織を内視鏡で調べるために近位のアイピースに連結された遠位のレンズを含むことができる。その代わりに、内視鏡を別個の器具とし、これを電気外科用プローブと同じ開口または別の開口から導入することができる。
【0023】
装置は、さらに、導電性流体を電極端子および標的部位に送るための流体供給エレメントを含むことが望ましい。流体供給エレメントはプローブ上に配置するか(例えば、流体ルーメンまたはチューブ)、別個の器具の一部とすることができる。その代わりに、食塩水電解液またはその他の導電性ゲルなど導電性ゲルまたはスプレーを標的部位に塗布することができる。どちらの実施態様においても、導電性流体は、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に電流の流路を作ることが望ましい。1つの実施態様例においては、帰還電極は、プローブの上に配置され、帰還電極と電極端子の間の短絡を回避してまたはこれを最小限に抑えかつ帰還電極を標的部位の組織から遮蔽するために、電極端子から充分な間隔が置かれる。
【0024】
特定の形態においては、電気外科用プローブは、プローブの遠位端に組織治療面を持つ電気絶縁電極支持材を含む。電極端子が帰還電極と間隔を置いて配置されるように、1つまたはそれ以上の電極端子が、電極支持材に結合されるまたはこれと一体化される。1つの実施態様においては、プローブは、電極端子が電極支持材の組織治療面から遠位方向に約0.2mmから10mm伸びるように電極支持材に埋め込まれた電気的に隔離された複数の電極端子を持つ電極配列を含む。この実施態様においては、プローブは、さらに、導電性流体を電極支持材の組織治療面の周りの1つまたはそれ以上の開口に送るための1つまたはそれ以上のルーメンを含む。1つの実施態様例においては、ルーメンは、帰還電極の近くに端を持つプローブシャフト外側の流体チューブの中に伸びる。
【0025】
このシステムは、任意に、プローブの遠位端でまたはその付近で1つまたはそれ以上の温度センサに結合される温度コントローラを含むことができる。コントローラは設定温度と測定温度値に反応して、電源の出力電圧を調節する。温度センサは、例えば、プローブの遠位端の温度を測定する、絶縁支持材に配置される熱電対とすることができる。この実施態様においては、設定温度は、例えば膠原組織の収縮する組織温度すなわち約60℃から70℃に相当する温度であることが望ましい。その代わりに、温度センサは、直接、組織温度を測定することができる(例えば、赤外線センサ)。
【0026】
本発明の別の態様においては、腫脹した鼻組織、粘膜、ポリープ、新生物など遮断を除去するために患者の鼻腔または副鼻腔に連結する小さい通路の1つの閉塞媒体を除去するための方法が提供される。この方法においては、1つまたはそれ以上の電極端子が、内視鏡を使って鼻孔の1つを通してまたは開放処置により直接鼻腔に入れられる。流体で電極端子を実質的に取り囲むために、等浸透圧食塩水など導電性流体が鼻腔内またはその周りの標的部位に送られる。流体は、器具を通して特定の標的部位に送るか、処置中電極端子が浸っているように鼻腔全体を導電性流体で満たすことができる。どちらの実施態様においても、通路内の閉塞媒体の少なくとも一部を量的に除去または剥離するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。
【0027】
この実施態様において、装置は、一般的に言って、近位端および遠位端を持つシャフトを持つ電気外科用カテーテル、遠位端の1つまたはそれ以上の電極端子および電極端子を高周波電気エネルギー源に結合する1つまたはそれ以上のコネクタを含む。カテーテル・シャフトは、少なくとも、鼻腔および(または)副鼻腔に連結される小さい体管腔を通して送ることができるサイズの遠位端部を持つ。患者の体の構造に応じて、シャフトの遠位端部の直径は通常3mm未満であり、0.5mm未満が望ましい。シャフトは、さらに、標的組織を内視鏡で検査するために近位アイピースに連結された遠位端のレンズを含むことができる。その代わりに、内視鏡を別個の器具とし、これを電気外科用カテーテルと同じ開口または別の開口から導入することができる。
【0028】
本発明の別の態様においては、鼻甲介など鼻の腫脹したまたは膨大した組織構造の剥離および止血のためのシステムおよび方法が提供される。本発明のこの方法では、1つまたはそれ以上の電極端子が膨大した体構造に少なくとも一部接触するまたはごく近接するように、この体構造に隣接する位置に電気外科用器具が配置される。体組織の少なくとも一部を量的に除去するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。電極端子は、孔、溝、条、クレーターなど体構造に空隙を削るために電気エネルギーが加えられる間またはその後、体構造に対して相対的に並進させることができる。実施態様によっては、構造の一部に1つまたはそれ以上の溝または孔を開けるために、体構造に向かって軸方向に電極端子を並進させる。他の実施態様においては、1つまたはそれ以上の条または溝を形成するために体構造を横切るように電極端子を並進させる。ほとんどの実施態様において、等浸透圧食塩水などの導電性流体が電極端子と体構造の間に配置される。双極療法においては、導電流体は電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に電流の流路を作る。次に、導電性流体により作られた電流の流路を通じて電極端子と帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。
【0029】
本発明の1つの態様においては、腫脹した鼻組織、粘膜、鼻甲介、ポリープ、新生物など患者の鼻の膨大した腫脹組織の体積を減らすための方法が提供される。特に、鼻甲介に隣接する位置に1つまたはそれ以上の電極端子を配置し、電極端子を流体で実質的に取り囲むために等浸透圧食塩水などの導電性流体を鼻腔に送ることによって、鼻甲介が治療される。その代わりに、処置中電極端子がゲル内に浸るように、導電性ゲルなどもっと粘性の流体を標的部位に塗布することができる。どちらの実施態様においても、鼻甲介近くまたは鼻甲介内の部位から小さい組織片、溝または孔を除去して、傷が治癒するとき瘢痕組織を形成することにより鼻甲介を収縮し腫脹を防ぐために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰路単極の間に高周波電圧が加えられる。高周波電圧は、標的部位の隣接領域を越えて熱損傷が広がることなく瘢痕組織を形成しやすくするために、溝または孔の壁に少量の熱損傷を与えるように選択される。
【0030】
本発明により形成される、通常、直径3mm未満(1mm未満が望ましい)の孔または溝は、鼻甲介を収縮させ腫脹を防ぐのに役立つ。1つの実施態様例においては、基礎組織を剥離する前に粘膜を持ち上げられるように、切開が行われる(すなわち、別個の器具を使ってまたは本発明の電気外科用プローブを使って)。これは、粘膜および鼻にとって重要な粘膜の機能を保存するのに役立つ。その代わりに、粘膜に直接孔を開けるができる。本発明によって形成される孔のサイズは小さいので、粘膜輸送には悪影響を及ぼさないはずである。組織に孔または溝を形成するための電気外科的方法についてのさらに詳しい説明は、すでに参照により本出願に組み込まれている米国特許第5683366号に示されている。
【0031】
別の実施態様においては、プローブまたはカテーテルなど電気外科用器具は、近位端および遠位端を持つシャフト、遠位端の1つまたはそれ以上の電極端子および電極端子を高周波電気エネルギー源に結合する1つまたはそれ以上のコネクタから成る。この実施態様においては、電極端子は、組織を切断するために設計されることが望ましい。すなわち、通常、電極端子は、遠位エッジまたはポイントを持つ。従来の電気外科は、細胞液が破裂して局部加熱の経路に沿って切断効果を生じるまで組織を急速に加熱することによって組織を切り開く。本発明は、周りの組織に対する熱損傷を最小限に抑える低温剥離プロセスで、切断経路に沿って組織を量的に除去する。電極端子は組織を切断するように設計されることが望ましい。すなわち、電極端子は、通常遠位エッジまたはポイントを持つ。この実施態様例においては、組織に線形の切断経路を形成するために、電極端子は、相互に整合される。
【0032】
さらに、本発明の別の態様においては、口および喉の粗大な組織を除去するためおよびいびきまたは睡眠無呼吸など閉塞性睡眠障害を治療するために、組織の剥離、切断および止血のためのシステムおよび方法が提供される。本発明は、口および喉内の閉塞組織の除去に使用される従来のRF装置およびレーザーより低い温度を使用する新規の正確なプロセスで、この種の組織を取り除く。したがって、本発明の粗大組織の除去は、付帯的な組織損傷が大幅に少なくなるので、従来の処置より手術後の痛みが小さく、治癒が早い。
【0033】
本発明の実施方法では、1つまたはそれ以上の電極端子が患者の口に導入され、たとえば舌、扁桃、軟口蓋組織(例えば、口蓋垂および咽頭)、硬組織またはその他の粘膜組織の選ばれた部分など標的組織に隣接する位置に電極端子を配置する。電極端子を流体で実質的に取り囲むために、等浸透圧食塩水など導電性流体が口内の標的部位に送られる。流体は、器具を通して特定の標的部位に送るか、電極端子が処置中流体に浸されるように標的部位全体を導電性流体で満たすことができる。どちらの実施態様においても、閉塞組織の少なくとも一部をその場で量的に除去または剥離するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。組織内の切断された血管の止血の深さを制御するためにも高周波電圧を選択することができ、これにより、処置中外科医にとって手術部位の視野が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】電源、および本発明に基づく組織剥離、切除、切開、収縮および血管止血のための電気外科用プローブを組み込む電気外科用システムの斜視図である。
【図2】本発明に基づく電気外科用プローブの側面図である。
【図3】図2のプローブの端面図である。
【図4】図1の電気外科用プローブの横断面図である。
【図5】電気外科用プローブの近位部の分解図である。
【図6A】内側流体ルーメンを組み込む代替電気外科用プローブの斜視図である。
【図6B】内側流体ルーメンを組み込む代替電気外科用プローブの端面図である。
【図7A】本発明に基づく電気外科用プローブの3つの実施態様の遠位部の横断面図である。
【図7B】本発明に基づく電気外科用プローブの3つの実施態様の遠位部の横断面図である。
【図7C】本発明に基づく電気外科用プローブの3つの実施態様の遠位部の横断面図である。
【図8A】平らな電極端子を組み込むさらに別の電気外科用プローブの横断面図である。
【図8B】平らな電極端子を組み込むさらに別の電気外科用プローブの端面図である。
【図9】90°の遠位ベンドおよび側面流体ルーメンを持つ電気外科用プローブを示している。
【図10】本発明に基づく別個の流体供給器具を持つ電気外科用プローブを示している。
【図11】患者の鼻腔内の手術部位を見るために鼻孔から内視鏡が入れられる、内視鏡副鼻腔外科処置を示している。
【図12】本発明に基づく上に説明されるプローブの1つを使った内視鏡副鼻腔外科処置を示している。
【図13A】本発明に基づく組織の剥離を示す、副鼻腔外科処置の詳細図を示している。
【図13B】本発明に基づく組織の剥離を示す、副鼻腔外科処置の詳細図を示している。
【図14】本発明に基づく、睡眠無呼吸などの閉塞性睡眠障害を治療するための処置を示している。
【図15】本発明に基づく頭部および頸部内の体構造の電気外科的治療のためのカテーテル・システムを示している。
【図16】本発明の1つの実施態様に基づくカテーテルの作業端の横断面図を示している。
【図17A】本発明の第二の実施態様に基づくカテーテルの作業端の横断面図を示している。
【図17B】図17Aのカテーテルの端面図である。
【図18】本発明に基づき患者の鼻内の管腔から組織を除去する方法を示す、患者頭部の矢状面図である。
【図19】副鼻腔を示す、患者頭部の前頭面図である。
【図20】外科的切断に使用するのに適した電極端子の細長い線状配列を持つ電気外科用プローブの詳細端面図である。
【図21】遠位先端に平らな端を持つ単一電極端子の詳細図である。
【図22】遠位先端に尖った端を持つ単一電極端子の詳細図である。
【図23】皮膚科の処置に使用される電気外科用プローブの別の実施態様の斜視図である。
【図24】複数の電極端子を含む電極支持材を示す、プローブの遠位先端の端面図である。
【図25】ハンドピースの電気接続および電極支持を詳細に示している。
【図26】本発明に基づく別の電気外科用プローブの遠位部の斜視図である。
【図27】組織の切断および凝結のために設計された電気外科用プローブの遠位部の部分横断面図である。
【図28】組織の切断および凝結のために設計された電気外科用プローブの遠位部の部分横断面図である。
【図29】上記のプローブの1つを使って鼻甲介を治療するための処置を示している。
【図30A】本発明に基づく組織の剥離を示す、図29の鼻甲介処置の詳細図である。
【図30B】本発明に基づく組織の剥離を示す、図29の鼻甲介処置の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、特に耳、口、咽頭、喉頭、食道、鼻腔および副鼻腔など頭部および頸部の組織を含めて、頭部患者の体内または体上の標的部位に電気エネルギーを選択的に加えるためのシステムおよび方法を提供する。この処置は、検鏡または開口器を使って、または機能的内視鏡副鼻腔手術(FESS)など内視鏡技術を使って、実施することができる。上記の処置は、扁桃、アデノイド、喉頭蓋および声門部位における頭蓋、鼻甲介および鼻孔の各種の解剖学的腔および唾液腺からの腫脹した組織、慢性病の炎症を起こし肥大した内粘膜、ポリープおよび(または)新生物の除去、および鼻中隔の粘膜下切除、病変組織の切開などを含む。その他の処置においては、本発明は、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸を治療するための処置における膠原収縮、剥離および(または)止血(例えば、口蓋垂などの軟口蓋または舌/咽頭硬化および中線舌切除)、扁桃切除、アデノイド切除、気管狭窄および声帯ポリープおよび損傷など粗大組織の除去、または舌切除、喉頭切除、聴神経腫処置および鼻剥離処置など顔面腫瘍または口および咽頭内の腫瘍の切除または剥離に有益であろう。さらに、本発明は、あぶみ骨切除、鼓膜切開など耳内の処置にも有益である。
【0036】
本発明は、また、頭部および頸部の美容外科および形成外科にも有益であろう。例えば、本発明は、特に、造鼻処置中削られる鼻内の軟骨など軟骨組織の剥離および彫刻に有益である。本発明は、また、頭部および頸部の皮膚組織除去および(または)表皮または真皮組織における膠原収縮、例えば、色素沈着、血管損傷(例えば脚の静脈)、瘢痕、刺青などの除去に、また、組織若返り、美容眼瞼形成、しわ除去、皺皮切除または睫毛挙上のための筋肉引き締め、脱毛および(または)植毛処置などその他の皮膚の外科処置にも利用できる。
【0037】
本発明は、いびきおよび閉塞性睡眠無呼吸を治療するための処置(例えば、UPPPおよびLAUP)における組織の切断、切除、剥離および(または)止血、扁桃切除、アデノイド切除、気管狭窄および声帯ポリープおよび損傷などの粗大組織除去、または舌切除、喉頭切除、聴神経腫処置および鼻剥離処置など顔面腫瘍または口および咽頭内の腫瘍の切除または剥離に、有益である。便宜上、開示の残り部分では、特に、閉塞性睡眠障害の治療について述べるが、システムおよび方法は、体のその他の組織の処置ならびに開放処置、血管内処置、泌尿器科、腹腔鏡検査、関節鏡検査、胸腔鏡検査またはその他の心臓処置、美容外科、整形外科、婦人科、耳鼻咽喉科、脊椎神経科処置、腫瘍処置などを含めてその他の処置にも同等に応用できる。
【0038】
本発明の一部の実施態様においては、組織構造を除去し(または)修正するために、導電性流体が存在する状態で1つまたはそれ以上の電極端子に高周波(RF)電気エネルギーが与えられる。処置に応じて、本発明は、(1)組織、骨または軟骨を量的に除去するため(すなわち、組織構造を剥離するまたは分子解離させる)ため、(2)孔、溝、ディボットまたはその他のスペースを組織内に形成するため、(3)組織を切断または切除するため、(4)膠原結合組織を収縮させるため、および(または)(5)切断された血管を凝結させるために、使用できる。
【0039】
本発明の1つの態様においては、閉塞性組織が量的に除去または剥離される。この処置においては、標的組織付近に高い電界強度を発現するために、1つまたはそれ以上の電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電位差が加えられる。電極端子に隣接する高い電界強度は、分子解離(熱蒸発または炭化ではなく)による標的組織の電界誘導分子破壊を引き起こす。出願者は、相対的に大きい有機分子が水素、酸素、炭素酸化物、炭化水素および窒素化合物などより小さい分子および(または)原子に分子崩壊することにより組織構造が量的に除去されると、信じている。この分子崩壊は、電気外科的乾燥および気化の場合に一般的に見られるように組織の細胞内の液体を除去することにより組織を脱水するのと違い、完全に組織構造を除去する。
【0040】
高電界強度は、電極端子の遠位先端と標的組織の間の領域において電極端子の少なくとも一部を覆う導電性流体を気化するのに充分な高周波電圧を加えることによって、発生することができる。導電性流体は、標的部位に送られる等浸透圧食塩水または血液などの液体か、または標的部位に塗布されるゲルなどの粘性流体とすることができる。蒸気層または気化領域の電気インピーダンスは比較的高いので、電極端子先端と組織の間の電位差を増大し、イオン化種(例えば、等浸透圧食塩水が導電性流体である場合のナトリウム)が存在するために蒸気層内でイオン化を生じる。このイオン化は、最適条件の下では、蒸気層から標的組織の表面に向けて高エネルギー電子および光子の放出を誘発する。このエネルギーは、高エネルギー光子(例えば紫外線)、高エネルギー粒子(例えば電子)またはその組み合わせの形をとることが考えられる。コブレーション(Coblation)(登録商標)と呼ばれるこの現象についてのさらに詳しい説明は、一般譲渡された米国特許第5683366号において示されており、その完全な開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0041】
一部の処置、例えば、軟口蓋または舌/咽頭硬化においては、標的部位の膠原結合組織を収縮させることが望ましい場合がある。このような処置においては、RFエネルギーは、電流の流れにより直接的に、また(または)RFエネルギーにより加熱された流体に組織をさらすことにより間接的に、組織を加熱して、組織温度を正常な体温(例えば、37℃)から45℃から90℃の範囲(できれば約60℃から70℃の範囲が望ましい)の温度に上げる。膠原線維の熱収縮は、哺乳類膠原の場合60℃から70℃と言う狭い温度範囲内で生じる(DeakG.その他、「位置光学的染色反応の偏光分析により明らかな膠原線維の熱収縮プロセス」、ハンガリー形態学会公報、第15(2)巻、p.195−208、1967年)。膠原線維は、一般に60℃から約70℃の範囲で熱収縮を生じる。以前に報告された研究では、膠原の熱収縮の原因を膠原基質内の内部安定化架橋結合の開裂に求めている(Deak、同書)。また、膠原温度が70℃以上に上げられると、膠原気質が再び弛緩し始め、収縮効果が逆転して、正味収縮がなくなることも、報告されている(AllainJ.C.その他、「ラットの皮膚の熱水腫脹中発現する等長張力」、結合組織研究、第7巻、p.127−133、1980)。したがって、正確な深さまで制御して組織を加熱することが、療法として膠原収縮を行う上で重要である。膠原収縮についてさらに詳しい説明は、1997年10月2日に提出された米国特許出願第08/942580号(弁理士整理番号第16238−001300号)に示されている。
【0042】
加熱部位に膠原収縮を生じるための望ましい加熱深さ(すなわち、組織を60℃から70℃の温度まで上げる深さ)は、一般的に言って、(1)組織の厚み、(2)有害な温度にさらしてはならない付近の構造(例えば、神経)の位置、および(または)(3)療法上の収縮が行われる膠原組織層の位置、によって決まる。加熱の深さは、通常0から3.5mmの範囲である。軟口蓋または口蓋垂内の膠原の場合、加熱深さは、約0.5から約3.5mmの範囲であることが望ましい。
【0043】
他の実施態様においては、本発明は、組織構造を除去(すなわち、切除、切断または剥離)し、標的組織部位内の切断された血管を封止するために、導電性流体環境で高周波(RF)電気エネルギーを使用する。本発明は、特に、例えば、1mmかそれ以上の大き目の動脈を封止するのに有益である。実施態様によっては、剥離モードおよび凝結モードを持つ高周波電源が提供され、剥離モードにおいては、組織の分子解離または崩壊を生じるのに充分な第一の電圧が電極端子に加えられ、凝結モードにおいては、組織内の切断された血管を止血するのに充分な第一の電圧より低い第二の電圧が電極端子(同じ電極または別の電極)に加えられる。他の実施態様においては、動脈など切断された血管を封止するために構成された1つまたはそれ以上の凝結電極、および組織内の膠原線維を縮小するか例えば組織が分子解離を起こすのに充分なエネルギーを与えることによって組織を除去(剥離)するために構成される1つまたはそれ以上の電極端子を持つ電気外科用器具が提供される。後者の実施態様においては、凝結のために凝結電極を使ってまた剥離のために電極端子を使って単一の電圧を加えることができるように、凝結電極を構成することができる。他の実施態様においては、電源が凝結モード(低電圧)のとき凝結電極が使用され、電源が剥離モード(高電圧)のとき電極端子が使用されるように、電源が凝結器具と結合される。
【0044】
本発明の1つの方法においては、1つまたはそれ以上の電極端子が標的部位の組織のごく近くに置かれ、下に説明されるとおり分子解離により組織を量的に除去するのに充分な電圧が電極端子と帰路端子の間に加えられるように剥離モードで起動される。このプロセス中、組織内の血管が切断される。小さい血管は本発明のシステムおよび方法を使って自動的に封止される。大きい血管および動脈など流量の大きい血管は、剥離モードでは自動的に封止されないかも知れない。このような場合、切断された血管は、電源の電圧を凝結モードに下げるように制御装置(例えば、フット・ペダル)を起動することによって、封止することができる。このモードにおいては、電極端子を切断された血管に押し当てて、血管を封止あるいは凝結させることができる。その代わりに、同じまたは異なる器具に配置される凝結電極を切断された血管に押し当てることができる。血管が適切に封止されたら、外科医は、電源の電圧を再び剥離モードに上げるために制御装置(例えば、別のフット・ペダル)を起動する。
【0045】
本発明は、また、脊髄神経またはたとえば舌下神経、視神経、顔面神経、内耳神経などの脳神経など神経の周りの組織を除去または剥離するためにも有益である。これは、神経近くにある組織を除去するときに特に有利である。先行技術のRF装置、メスおよびレーザーの大きな欠点の1つは、これらの装置が標的組織と周囲の神経または骨とを区別しないことである。したがって、外科医は、患者の口および喉の中およびその周りの神経を傷つけないように処置中非常に慎重にしなければならない。本発明において、組織を除去するためのコブレーション(登録商標)プロセスは、上に論じたとおり、付帯的な組織損傷の深さを非常に小さくする。これにより、外科医は、神経線維を付帯的に損傷することなく神経近くの組織を除去することができる。
【0046】
本発明の新規のメカニズムの全般的に正確な性質に加えて、出願者は、組織除去中隣接する神経を傷つけないようにする付加的方法を発見した。本発明に従えば、神経線維のすぐ周りの脂肪組織と処置中除去される予定の通常の組織の間を区別するためのシステムおよび方法が提供される。神経は、通常、神経線維の束を包む結合組織鞘つまり神経上膜を含み、各束は神経線維を保護するために独自の結合神経鞘(神経周膜)に囲まれている。外側の保護組織鞘すなわち神経上膜は、一般に、例えば鼻甲介、ポリープ、粘膜組織など副鼻腔処置中鼻から除去される通常の標的組織とかなり異なる電気特定を持つ脂肪組織を含む。本発明のシステムは、1つまたはそれ以上の電極端子を使ってプローブ先端の組織の電気特性を測定する。電気特性には、1つの、複数のまたはある範囲の周波数(たとえば1kHzから100MHzまでの範囲)の時の電気伝導率、誘電率、キャパシタンスまたはその組み合わせを含むことができる。この実施態様において、プローブ先端の検知電極が神経の周りの脂肪組織を検出したとき可聴信号を発するか、プローブの先端または作業端が触れる組織が測定される電気特性から判断して通常の組織の場合にのみ電極端子に個別にまたは電極配列全体に電力を送るように、直接フィードバック制御を備えることができる。
【0047】
1つの実施態様においては、電気インピーダンスが閾値に達すると電極端子が停止またはオフになるように電流制限素子(上で詳細に論じたとおり)が構成される。閾値が神経の周りの脂肪細胞のインピーダンスに設定される場合、電極端子は、神経と接触するかそのごく近くに来ると停止する。一方、鼻組織と接触するまたはそのごく近くにある他の電極端子は、帰還電極に電流を伝導しつづける。この低インピーダンス組織の選択的剥離または除去を本発明のコブレーション(登録商標)メカニズムと組み合わせると、外科医は、神経または骨の周りの組織を正確に除去することができる。出願者は、本発明が神経の機能を阻害することなくまた神経上膜の組織をひどく傷つけることなく、神経に近接する組織を量的に除去できることを知った。
【0048】
さらに、出願者は、本発明のコブレーション(登録商標)メカニズムは、他の組織構造にほとんど影響を与えずに特定の組織構造を剥離または除去するように操作できることを発見した。上で論じたとおり、本発明は、電極端子の周りにプラズマ層またはポケットを形成するために導電性流体を気化し、その後このプラズマ層または蒸気層からのエネルギーの放出を誘発して組織構造の分子結合を破壊する技術を使用する。初期の実験を基にして、出願者は、イオン化蒸気層内の自由電子は、電極先端付近の高電界において加速すると信じる。蒸気層(または導電性流体に形成される気泡内)の密度が充分低くなると(すなわち、水溶液の場合約1024Pa/cm3 (1020標準大気圧/cm3 )未満)、電子の平均自由行程が増大して、その後注入される電子が低密度の領域(すなわち蒸気層または気泡)内で衝突電離を生じられるようになる。高エネルギー電子(例えば、4から5eV)によって放出されるエネルギーは、その後、分子に衝撃を与えて、その結合を破壊し、分子を遊離基に解離し、この遊離基が化合して最終的な気体または液体種になる。
【0049】
高エネルギー電子が放出するエネルギーは、多様なファクター、例えば電極端子の数、電極サイズおよび間隔、電極表面積、電極表面の凹凸および鋭いエッジ、電極材質、加えられる電圧および電力、インダクタなど電流制限手段、電極と接触する流体の伝導率、流体の密度およびその他のファクターを調節することによって、変動できる。したがって、これらのファクターを操作して、励起される電子のエネルギー・レベルを制御することができる。組織構造はそれぞれ異なる分子結合を持つので、本発明は、特定の組織の分子結合を破壊しながら、他の組織の分子結合を破壊するにはエネルギーが小さすぎるように、構成できる。例えば、脂肪組織は、破壊するためには4から5Evよりかなり大きいエネルギーを必要とする二重結合をもっている。したがって、一般的に言って、本発明の電流構成においては、この種の脂肪組織を剥離または除去しない。もちろん、この二重結合も単一結合と同じように破壊できるよう、ファクターを変更することができる(例えば、電圧を増大してまたは電極構成を変更して、電極先端の電流密度を増大する)。この現象に関するさらに詳しい説明は、1998年2月27日に提出された同時係属米国特許出願第09/032375号(弁理士整理番号第CB−3号)に示されており、その完全な開示が参照により本出願に組み込まれる。
【0050】
本発明は、また、腫瘍からの生存可能な細胞の広がりを最小限に抑えつつ、腫瘍またはその他の望ましくない体構造を選択的に除去するためのシステム、装置および方法を提供する。この種の腫瘍を除去するための従来の技術は、一般的に言って、電気外科プルームまたはレーザー・プルームと呼ばれるスモークを手術セッティングに生じ、これが、腫瘍または傷からの無傷の生存可能なバクテリアまたはウィルス粒子を手術チームまたは患者の体の他の部分に拡散する可能性がある。この生存可能な細胞または粒子の拡散の可能性は、肝炎、ヘルペス、HIVおよび乳頭腫ウィルスなど人を衰弱させるまたは致命的な特定の病気の増殖の懸念を増すことになる。本発明においては、有機分子を非生存可能な原子および分子に解離または崩壊することによって腫瘍の組織細胞の少なくとも一部を量的に除去するために、電極端子と1つまたはそれ以上の帰還電極の間に高周波電圧が加えられる。特に、本発明は、固体の組織細胞をもはや無傷の生存可能な細胞ではない凝縮不能の気体に変えるので、患者の脳の他の部分または手術スタッフに生存可能な腫瘍粒子を拡散する可能性はない。周囲のまたは基礎の組織への実質的組織壊死を最小限に抑えながら組織細胞の制御された除去を行うために高周波電圧が選択されることが望ましい。この現象についてさらに詳しい説明は、1998年6月30日に提出された同時係属米国特許出願第09/109219号(弁理士整理番号第CB−1号)に示されており、その完全な開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0051】
電気外科用器具は、近位端および1つまたはそれ以上の電極端子を支える遠位端を持つシャフトまたはハンドピースを含む。シャフトまたはハンドピースの主要な目的は活性電極を機械的に支持し、治療中の医者がシャフトの近位端から電極を操作できるようにすることであり、多様な形態をとることができる。シャフトは、剛性でもたわみ性でもよく、たわみ性のシャフトを任意に機械的支持のために一般的に剛性の外部チューブと組み合わせることができる。たわみ性シャフトは、電極配列の位置決めを容易にするために、シャフトの遠位端を選択的に湾曲させるためにプルワイヤ、形状記憶アクチュエータおよびその他の既知のメカニズムと組み合わせることができる。シャフトは、通常、電極配列をシャフトの近位端のコネクタと接続できるように、軸方向に走る複数のワイヤまたはその他の導電素子を含む。
【0052】
鼻内の処置の場合、シャフトは、鼻孔またはその他の開口(例えば、眼の開口または処置中外科的に作る開口)の1つからプローブシャフトを通すことにより外科医が標的部位(例えば鼻腔または副鼻腔の遮断)に達することができるようにするのに適した直径および長さを持つ。したがって、シャフトは、通常、約5から25cmの範囲の長さおよび約0.5から5mmの範囲の直径を持つ。小さい鼻孔の処置の場合、シャフトの直径は、通常3mm未満であり、約0.5mm未満が望ましい。腫脹した鼻甲介の治療など小さい孔または溝を組織に形成する必要のある処置の場合、シャフトの直径は、通常、3mm未満であり、約1mm未満が望ましい。同様に、耳の処置の場合、シャフトは約3から20cmの範囲の長さおよび0.3から5mmの範囲の直径を持たなければならない。口および喉上部の処置の場合、シャフトは、外科医が扱いやすい適切な長さおよび直径を持つ。喉頭切除など喉下部の処置の場合、シャフトは、喉頭に届くよう適切に設計される。例えば、シャフトは、たわみ性とするか、あるいは患者の喉に曲がりに合うように遠位ベンドを持つことができる。この点に関して、シャフトは口および喉の形状に合うよう特に設計されたベンドを持つ剛性シャフトとするか、あるいはたわみ性遠位端を持つか、あるいはカテーテルの一部とすることができる。前記の実施態様のいずれにおいても、シャフトは剛性またはたわみ性の内視鏡を通して導入することもできる。個々のシャフトの設計については、図面と関連させて下に詳しく説明する。
【0053】
電極端子は、器具シャフトの遠位端付近に配置される無機絶縁支持材内でまたはこれにより支持されることが望ましい。帰還電極は、器具のシャフト上に、他の器具にまたは患者の外面に(すなわち、分散パッド)に配置することができる。しかし、双極設計は、非標的組織を流れる電流および神経の周りを流れる電流を最小限に抑えるので、口および喉の神経およびその他の敏感な組織の付近では、双極設計がより望ましくなる。したがって、帰還電極は、器具本体と合体するか、そのごく付近に配置される別の器具とすることが望ましい。器具の近位端は、帰還電極および電極端子を電気外科用発電機など高周波電源に結合するために適した電気接続を含む。
【0054】
電極端子と帰還電極の間の電流の流路は、組織部位を導電性流体(例えば、導電性ゲルなど粘性の流体)に浸すことによってまたは流体経路に沿って標的部位まで導電性流体(例えば等浸透圧食塩水などの液体またはアルゴンなどの気体)を送ることによって、作ることができる。導電性流体の供給速度をもっと緩慢でもっと制御されたものにするために、標的部位に導電性ゲルを送ることもできる。さらに、ゲルの粘性の性質により、外科医にとってゲルを標的部位の周りに収めるのは(等浸透圧食塩水を収めるより)容易であろう。導電性流体を活性電極と帰還電極の間に送る方法例についてさらに詳しい説明は、すでに参照により本出願に組み込まれている米国特許第5697281号において示されている。その代わりに、血液など体内の自然の導電性流体は、帰還電極と電極端子の間の導電経路を確立し、上に説明した蒸気層を確立するための条件を整えるのに充分かも知れない。ただし、血液はある温度で凝結する傾向があるので、患者体内に導入される導電性流体のほうが一般的に言って血液より望ましい。導電性液体(例えば、等浸透圧食塩水)は、標的組織表面の「浴」を行って組織を除去するための付加的手段を提供するのと同時に、以前に剥離された標的組織部分を冷却するために使うことができ、有利である。
【0055】
電源は、電極端子の周りにある導電性流体が不充分な場合に電極端子への電力を中断するための流体インターロックを含むことができる。これにより、器具は、導電性流体がない時には起動されず、これがなければ生じる可能性のある組織の損傷を最小限に抑える。この流体インターロックについてさらに詳しい説明は、1998年4月10日に提出された、一般譲渡された同時継続米国特許出願第09/058336号(弁理士整理番号第CB−4号)において示されており、その完全な開示が参照により本出願に組み込まれる。
【0056】
処置によっては、導電性流体および(または)剥離の凝結不能の気体産物を回収または吸引する必要もあるかも知れない。さらに、高周波エネルギーによって完全に崩壊しない小さい組織片またはその他の体構造または血液、粘液など標的部位のその他の流体、剥離による気体産物などを吸引することが望ましい場合がある。したがって、本発明のシステムは、この器具にまたは別の器具に、標的部位から流体を吸い込むために適した真空源に連結される1つまたはそれ以上の吸込みルーメンを含めることができる。さらに、本発明は、剥離のためにまたは少なくともルーメンに吸引される剥離されない組織片の量を減らすために、吸込みルーメンの遠位端に連結される1つまたはそれ以上の吸引電極を含めることができる。吸引電極の役割は、主に、大き目の組織片が引き込まれたときに生じる可能性のあるルーメンの詰まりを防止することである。吸引電極は剥離電極端子と別のものにするか、同じ電極で両方の機能を果すことができる。吸引電極を組み込む器具のさらに詳しい説明は、1998年1月21日に提出された、一般譲渡された同時係属特許出願「組織切除、剥離および吸引のためにシステムおよび方法」に示されており、その完全な開示が参照により本出願に組み込まれる。
【0057】
吸込みの代わりにまたはこれに加えて、バスケット、引き込み式鞘などの収納装置を使って標的部位のまたはその付近の過剰な導電性流体、組織片および(または)剥離の気体産物を収めることが望ましい場合がある。この実施態様は、導電性流体、組織片または剥離産物が患者の血管系または体の他の部分に流れないようにするという利点を持つ。さらに、切断された血管に止血に対して吸込みが持つ望ましくない影響を制限するために吸込み量を制限することが望ましいかも知れない。
【0058】
本発明は、単一の活性電極端子、あるいはカテーテルまたはプローブの遠位面の周りに一定間隔で配置される電極端子の配列を使用することができる。後者の実施態様においては、電極配列は、通常、血液、正食塩水など周囲の導電性流体に電力が分散することから生じる周囲の組織および環境への望ましくない電気エネルギーの流れを制限しながら、標的組織に選択的に電気エネルギーを与えるために、独立して電流制限され(または)電力制御される複数の電極端子を含む。電極端子は、端子を相互に隔離し、各端子を他の電極端子から隔離された別個の電源に接続することによって独立して電流制限することができる。その代わりに、電極端子をカテーテルの近位端あるいは遠位端で相互に接続して、電源に結合する単一のワイヤを形成することができる。
【0059】
1つの形態においては、電極配列の個々の電極端子は、器具内の配列の他の全ての電極端子から電気絶縁され、配列の他の各電極端子から隔離される電源にまたは低抵抗物質(例えば、血液、導電性食塩水灌注剤または導電性ゲル)が帰還電極と個々の電極端子の間に低インピーダンス経路を生じるとき電極端子への電流の流れを制限または中断する回路に接続される。個々の電極端子用の隔離される電源は、低インピーダンス岐路にぶつかると関係する電極端子への電力供給を制限する内部インピーダンス特性を持つ別個の電源回路とすることができる。例として、隔離電源は、ユーザー選択可能な定電流電源とすることができる。この実施態様においては、加熱はインピーダンスの動作電流倍の平方に比例するので、低インピーダンス経路は、自動的に、低抵抗加熱レベルとなる。その代わりに、個別に作動できるスウィッチを使ってまたはインダクタ、コンデンサなど、抵抗器およびまたはその組み合わせなど独立した電流制限素子により、単一の電源を電極端子の各々に接続することができる。電流制限素子は、器具、コネクタ、ケーブル、コントローラの中にまたはコントローラから器具の遠位先端までの導電経路に沿って配置することができる。その代わりに、選択される電極端子を形成する酸化物層(例えば、チタン、またはプラチナなどの金属面上の抵抗コーティング)により活性電極端子の表面に抵抗および(または)キャパシタンスを生じることができる。
【0060】
器具の先端部は、先端付近に電気エネルギーを送るために設計された多くの独立電極端子を含むことができる。個々の電極端子および帰還電極を、別個に制御されるまたは電流制限されるチャネルを持つ電源に接続することによって、導電性流体に選択的に電気エネルギーを与えることができる。帰還電極は、活性電極と帰還電極の間に導電性流体を供給するための導管としての役割も果す、先端の電極配列に隣接する導電体の単一の管状部材を含むことができる。その代わりに、器具は、先端の電流を維持するために器具の遠位先端に(活性電極といっしょに)帰還電極の配列を含むことができる。帰還電極と電極配列の間に高周波電圧を加えると、電極端子の遠位先端に高電界強度が発生して、個々の電極端子から帰還電極に高周波電流が伝導される。個々の電極端子から帰還電極への電流の流れは、能動的手段あるいは受動的手段により、またはその組み合わせにより制御されて、周囲(非標的)組織へのエネルギー供給を最小限に抑えながら周囲の導電性流体に電気エネルギーを送る。
【0061】
帰還電極と電極端子の間に適切な時間間隔で高周波電圧を加えることにより、標的組織の切断、除去、剥離、形成、縮小またはその他の修正が行われる。エネルギーが分散する(すなわち高電流密度が存在する)組織体積は、例えば、有効直径または主寸法が約10mmから0.01mmの(約2mmから0.05mmが望ましく、約1mmから0.1mmであればもっと望ましい)多数の小さい電極端子を使用することによって、正確に制御することができる。円形端子も非円形端子もその電極面の接触面積(電極端子ごとの)は、電極配列の場合で50mm2 未満、単一電極の態様の場合で75mm2 であり、0.0001mm2 から1mm2 の範囲が望ましく、0.005mm2 から0.5mm2 であればもっと望ましい。電極配列の外接面積は0.25mm2 から75mm2 の範囲で、0.5mm2 から40mm2 が望ましく、通常、少なくとも1つの電極端子を含み、実施態様によっては、少なくとも2つの隔離された電極端子を含み、少なくとも5つの電極端子を含むことがしばしばあり、シャフトの遠位接触面全体に配置される電極端子が10を超えるあるいはさらに50を超えることがしばしばある。小さい直径の電極端子を使用すると、各電極端子の露出面から放射する電流力線の拡散の結果、電界強度が高くなり、組織加熱の範囲または深さが小さくなる。
【0062】
組織治療面の面積は、幅広く変動可能であり、組織治療面は多様な形状を取ることができ、特定の用途のために特定の面積および形状を選択できる。活性電極面の面積は、0.25mm2 から75mm2 までの範囲とすることができ、通常約0.5mm2 から40mm2 である。形状は、平面、凹面、凸面、半球形、円錐、線形「直列」配列または他のほぼどのような規則的または不規則的形状でも可能である。活性電極または電極端子は、電気外科用器具シャフトの遠位端に形成されるのが最も一般的であり、再形成処置に使用される場合には平面、円盤状または半球形が多く、切断に使用される場合には線形配列が多い。その代わりにまたはこれに加えて、活性電極を電気外科用器具のシャフトの側面に形成して(例えば、スパチュラのように)、内視鏡処置において特定の体構造に近づきやすくすることができる。
【0063】
一部の実施態様においては、導電性流体を電極支持のすぐ周りの領域に閉じ込めるために、電極支持および流体出口を器具またはハンドピースの外面から引っ込めてことができる。さらに、電極支持および流体出口の周りにキャビティを形成するようにシャフトを成形することができる。こうすることにより、導電性流体が電極端子および帰還電極との接触を維持するようにし、その間の導電経路を維持することができる。さらに、これにより、処置中、電極端子と治療部位の組織の間に蒸気層およびその後のプラズマ層を維持することができ、導電性流体の不足のために蒸気層が消えてしまったら生じるであろう熱損傷を減少する。標的部位の周りの導電性流体を配置することは、組織温度を希望のレベルに維持するためにも役立つ。
【0064】
導電性流体は、帰還電極と電極端子の間に適切な導電経路を作るための閾値伝導率を持つはずである。流体の伝導率(センチメートル当たりのミリジーメンスの単位、すなわちmS/cm)は、通常、0.2mS/cmより大きく、2mS/cmより大きいことが望ましく、10mS/cmより大きいことがさらに望ましい。1つの実施態様例においては、導電性流体は等浸透圧食塩水であり、伝導率は約17mS/cmである。
【0065】
帰還電極と電極端子の間に加えられる電位差は、一般に約5kHzから20MHzの間の高周波または無線周波数であり、通常は約30kHzから2.5MHzの間であり、約50kHzから500kHzの間が望ましく、350kHz未満の場合がおおく、約100kHzから200kHzの間である場合が多い。RMS(平方自乗平均)電圧は、通常、約5ボルトから1000ボルトまでの範囲であり、電極端子のサイズ、動作周波数および特定の処置の操作モードまたは組織への望ましい効果(すなわち、収縮、凝結、切断または剥離)に応じて、約10ボルトから500ボルトまでの範囲が望ましい。一般に、剥離または切断のためのピーク・ピーク電圧は、10から2000ボルトまでの範囲であり、200から1800ボルトの範囲が望ましく、約300から1500ボルトの範囲がさらに望ましく、約500から900ボルトの範囲のピーク・ピーク電圧が多い(この場合にも、電極サイズ、動作周波数および操作モードによって決まる)。組織凝結または膠原収縮にはこれより低いピーク・ピーク電圧が使用され、通常50から1500ボルトまでの範囲であり、100から1000ボルトまでの範囲が望ましく、120から600ボルトまでがさらに望ましい。
【0066】
上で論じたとおり、電圧は、通常、電圧が効果的に連続的に加えられるように充分に高い周波数で(例えば、5kHzから20MHz)(例えば、壊死の深さの小さいレーザーが一般的に言って約10から20Hzのパルスであることと比べて)、一連の電圧パルスでまたは時間変化電圧幅の交流で送られる。さらに、デューティ・サイクル(すなわち、任意の1秒の間隔においてエネルギーが与えられる累積時間)は、一般に約0.0001%のディーティ・サイクルを持つパルス・レーザーに比べて、本発明の場合約50%である。
【0067】
本発明の望ましい電源は、加熱される標的組織の体積および(または)器具先端に選ばれる最高許容温度に応じて、電極当たり数ミリワットから数十ワットまでの範囲の平均電力レベルを発生するために選択可能な高周波電流を供給する。この電源を使って、使用者は特定の神経外科処置、心臓外科、関節鏡手術、皮膚科処置、眼科処置、開放手術またはその他の内視鏡外科処置など特定の要件に応じて電圧レベルを選択できる。心臓処置およびおそらく神経外科処置の場合、電源は、周波数が100kHz未満のとき漏れ電圧を特に約60kHzのとき電圧をフィルタリングするために、追加のフィルタを持つことができる。その代わりに、漂遊低周波電流が問題となるような処置には、もっと高い動作周波数、例えば300から500kHzを持つ電源を使用することができる。適切な電源についての説明は、1998年4月10日に提出された同時係属特許出願第09/058571号および09/058336号(弁理士整理番号第CB−2およびCB−4号)において示されており、両方の出願の完全な開示が、参照により本出願に組み込まれる。
【0068】
電源は、標的組織または周囲(非標的)組織の望ましくない加熱が生じないように、電流制限またはその他の方法で制御できる。本発明の現在望ましい実施態様においては、電流制限インダクタが、個々の電極端子と直列に配置される。インダクタのインダクタンスは、標的組織の電気特性、望ましい組織加熱速度および動作周波数に応じて、10マイクロヘンリーから50000マイクロヘンリーまでの範囲である。その代わりに、米国特許第5697909号においてすでに説明されたように、コンデンサ−インダクタ(LC)回路構造を採用することができる。前記の特許の開示は、参照により本出願に組み込まれる。さらに、電流制限抵抗器を選択できる。低抵抗媒体(例えば食塩水または血液)と接触するある電極端子について電流レベルが上昇し始めるとき、電流制限抵抗器の抵抗が大幅に増大して、その電極端子から低抵抗媒体(例えば、食塩水または血液)への電力供給を最小限に抑えるように、抵抗器は大きい正の抵抗温度係数を持つことが望ましい。
【0069】
発明は、電気的に隔離される電極端子または複数の電極端子に限定されないことを明確に理解しなければならない。例えば、活性電極の配列を、カテーテルのシャフトを通って高周波電流の電源まで伸びる単一のリード線に接続することができる。その代わりに、器具は、直接、カテーテル・シャフトを通る単一の電極、または電源まで伸びる単一リード線に接続される単一の電極を組み込むことができる。活性電極は、ボール状(例えば、組織の気化および乾燥の場合)、螺旋形(気化および針状切断の場合)、ばね状(急速な組織縮小および乾燥の場合)、ねじり金属形、環状またはソリッド管状などにすることができる。その代わりに、電極は、複数のフィラメント、剛性またはたわみ性のブラシ電極(類線維腫、膀胱腫瘍または前立腺線腫などの腫瘍の縮小のため)、シャフト側面の側面効果ブラシ電極、コイル電極などを含むことができる。
【0070】
1つの実施態様においては、電気外科用カテーテルまたはプローブは、シャフトの遠位端の絶縁材例えばセラミックから伸びる単一の活性電極を含む。絶縁材は、活性電極端子を絶縁材および活性電極に近接して配置される管状または環状の帰還電極から分離する、管状構造が望ましい。別の実施態様においては、カテーテルまたはプローブは、カテーテルの他の部分に対して相対的に回転できる単一の活性電極を含むか、カテーテル全体がリード線に対して相対的に回転できる。単一の活性電極は、異常組織に隣接する位置に配置され、この組織を除去するのに適するようにエネルギーを与えられ、回転することができる。
【0071】
電極端子と帰還電極の間の電流の流路は、組織部位を導電性流体に(例えば導電性ゲルなど粘性流体の中に)浸すことにより、または流体経路に沿って標的部位まで導電性流体(すなわち等浸透圧食塩水などの液体またはアルゴンなどの気体)を送ることによって、作ることができる。後者の方法は、導電性流体が電極端子から帰還電極までの適切な電流の流路となるので、特に、乾燥環境(すなわち組織を流体に浸さない)において有益である。
【0072】
次に、図1を参照しながら、頭部および頸部の組織を治療するための電気外科用システム例11について詳細に説明する。電気外科用システム11は、一般的に言って、高周波電圧を標的部位に供給するための電源28および導電性流体50をプローブ10に供給するための流体供給源21に接続された電気外科用ハンドピースまたはプローブ10から成る。さらに、電気外科用システム11は、特に副鼻腔処置または耳内または口の裏の処置において手術部位を見るための光ファイバー・ヘッドライトつきの内視鏡(図には示されていない)を含むことができる。内視鏡は、プローブ10と一体とするか、あるいは、別個の器具の一部とすることができる。システム11は、また、標的部位を吸引するためのプローブ10の吸込みルーメンまたはチューブ205(図2)に連結するために真空源(図には示されていない)を含むことができる。
【0073】
図に示されるとおり、プローブ10は、一般的に言って、近位ハンドル19、およびその遠位端に電極端子58の配列12を持つ細長いシャフト18を含む。接続ケーブル34は、電極端子58を電源28に電気結合するためのコネクタ26を持つ。電極端子58は、相互に電気的に隔離され、端子58各々が、複数の個別に絶縁された導線(図には示されていない)により電源28内の能動的または受動的制御ネットワークに接続される。流体供給チューブ15は、導電性流体50を標的部位に供給するためのプローブ10の流体チューブ14に接続される。流体供給チューブ15は、希望する場合には適切なポンプ(図には示されていない)に接続することができる。
【0074】
電源28は、印加電圧を変化させるためにオペレータが制御できる電圧調整器30を備える。電圧レベルは電圧ディスプレイ32で観察することができる。電源28は、また、第一、第二および第三フット・ペダル37、38、39および電源28に取り外し可能に結合されるケーブル36も含む。フット・ペダル37、38、39により、外科医は、電極端子58に与えられるエネルギーのレベルを遠隔的に調節できる。1つの実施態様例においては、第一のフット・ペダル37は、電源を「剥離」モードにするために使われ、第二フット・ペダル38は電源28を「非剥離」モード(例えば、組織の凝結または収縮)にするために使われる。第三のフット・ペダル39は、「剥離」モード内で電圧レベルを調節できるようにする。剥離モードのとき、組織の分子解離(すなわち導電性流体の一部を気化し、蒸気層内の荷電粒子をイオン化し、組織に向かって荷電粒子を加速させる)のための要件を満たすのに充分な電圧が電極端子に加えられる。上で説明したとおり、剥離のために必要な電圧レベルは、電極の数、サイズ、形状および間隔、支持材から伸びる電極の長さなどに応じて変化する。外科医は電源を「剥離」モードにした後、電圧レベル調整器30または第三のフット・ペダル39を使って電圧レベルを調整して、剥離の程度または攻撃性を調整することができる。
【0075】
当然、電圧および電源のモードを他の入力装置で制御できることが分かるだろう。しかし、出願者は、フット・ペダルが、外科処置中プローブを操作しながら電源を制御する便利な方法であることを発見した。
非剥離モードのとき、電源28は、導電性流体の気化およびその後の組織の分子解離を避けるのに充分に低い電圧を電極端子に加える。外科医は、フット・ペダル37、38を交互に踏むことによって、剥離と非剥離モードの間を自動的に切り替えることができる。一部の実施態様においては、これにより外科医は、手術部位から集中力をそらすことなくまたは助手に電源を切り替えるよう要請することなく、その場で凝結と剥離の間を迅速に移行できる。例として、外科医が剥離モードで軟組織を削っているとき、プローブは、一般に、組織内の小さい切断された血管を同時に封止し(または)凝結する。しかし、大き目の血管または流体圧力の高い血管(例えば、動脈)は、剥離モードでは封止できない場合がある。したがって、外科医は、単にフット・ペダル38を踏むだけで、自動的に剥離の閾値より下に電圧レベルを下げて、血管を封止および(または)凝結するために充分な長さの時間切断された血管に充分な圧力を加えることができる。これが完了した後、外科医は、フット・ペダル37を踏んで、素早く剥離モードに戻ることができる。本発明に使用するのに適した電源の固有の設計については、以前に参照により本出願に組み込まれた1997年10月23日に提出された仮特許出願第60/062997号(弁理士整理番号第16238−007400号)に示されている。
【0076】
図2から5は、本発明の原理に従って構成される外科用プローブ例90を示している。図2に示されるとおり、プローブ90は、一般的に言って、たわみ性または剛性の細長いシャフト100、シャフト100の近位端に連結されるハンドル204およびシャフト100の遠位端に連結される電極支持材102を含む。シャフト100は、シャフト100の遠位部を近位部およびハンドル204の軸からずらせるようにするベンド101を含むことが望ましい。このオフセットにより、例えばハンドル204と内視鏡のアイピースの間の干渉なしにシャフト100と同じ鼻孔から内視鏡を導入することができるので(図11を参照のこと)、FESSなど内視鏡を必要とする処置が容易になる。シャフト10は、図1に示される形状に簡単に成形できるプラスティック材から成ることが望ましい。
【0077】
代替実施態様においては(図6Aを参照のこと)、シャフト100は、導電性の材料、通常は、タングステン、ステンレス鋼合金、プラチナまたはその合金、チタンまたはその合金、モリブデンまたはその合金およびニッケルまたはその合金から成るグループから選ばれる金属から成る。この実施態様において、シャフト100は、一般にポリ四フッ化エチレン、ポリイミドなどの1つまたはそれ以上の電気絶縁鞘またはコーティングとして形成される電気絶縁ジャケット108を含む。電気絶縁ジャケットをシャフトにかぶせることにより、この金属素子と隣接体構造または外科医との間の直接電気接触が避けられる。体構造(例えば、腱)と露出した電極の間の直接電気接触は、接触点の構造の望ましくない加熱および壊死を生じる可能性がある。
【0078】
ハンドル204は、一般に、外科医が取り扱うために適した形状に簡単に成形できるプラスティック材から成る。ハンドル204は、電気接続250(図5)を収納する内部キャビティ(図には示されていない)を形成し、電気接続ケーブル22(図1)への接続のために適したインターフェイスとなる。電極支持材102は、シャフト100の遠位端から伸び(通常約1から20mm)、電気的に隔離された多数の電極端子104(図3および4)の支えとなる。図2に示されるとおり、流体チューブ233は、ハンドル204の開口から伸び、導電性流体を標的部位に供給するために流体供給源に接続するコネクタ235を含む。シャフト100の遠位面の形態に応じて、流体チューブは、シャフト100の単一のルーメン(図には示されていない)の中を伸びるか、シャフト100を通ってその遠位端の複数の開口まで伸びる複数のルーメン(これも図には示されていない)に連結できる。代表的な実施態様においては、流体チューブ233は、シャフト100の外部に沿って帰還電極112のすぐ近くの点まで伸びる(図4を参照のこと)。この実施態様においては、流体は、開口237を通って帰還電極112を越えて電極端子104まで送られる。プローブ90は、標的部位への導電性流体の流量を制御するためにバルブ17(図1)または同等の構造を含むこともできる。
【0079】
図2に示されるとおり、シャフト100の遠位部は、治療対象の組織の処置部位に接近しやすくするために曲げられれることが望ましい。電極支持材102は、実質的に平面の組織治療面212(図5Aおよび5B)を持ち、この面は、シャフト100の縦軸に対して通常約10から90°の角度を持ち、約30°から60°が望ましく、約45°がさらに望ましい。代替実施態様においては、シャフト100の遠位部はシャフトの縦軸から反らすことができるたわみ材から成る。この反りは、例えばプル・ワイヤの機械的張力によりまたは外部から加えられる温度変化により伸縮する形状記憶ワイヤにより選択的に誘発できる。この実施態様についてのさらに詳しい説明は、1994年5月10日に提出されたPCT国際特許出願、米国国内段階出願番号第PCT/US94/05168号(弁理士整理番号第16238−000440号)に示されており、その完全な開示が参照によりすでに本出願に組み込まれている。
【0080】
シャフト100の遠位端のベンドにより、外科医はシャフト100を鼻孔に通して鼻内の標的部位に達することができるので、このベンドは、特に副鼻腔組織の治療に有利である。当然、処置に応じてシャフトが様々な角度を持つことができることが分かるだろう。例えば、90°の曲げ角度を持つシャフトは、特に、口の裏の組織に接近するために有益であり、10°から30°の曲げ角度のシャフトは口または鼻の前面部またはその付近の組織に接近するのに有益かも知れない。
【0081】
図2から5に示される実施態様において、プローブ90は、電極端子104と高周波電源28(図1を参照のこと)の間の電流経路を完成するために帰還電極112を含む。図に示されるとおり、帰還電極112は、電極支持材102の組織治療面212近くのシャフト100の遠位端、一般に約0.5mmから10mm、さらに望ましいのは約1mmから10mmの点で結合される環状導電帯から成ることが望ましい。帰還電極112は、プローブ10の近位端まで伸びるコネクタ258に結合され、ここで、電源10(図1)に適切に接続される。
【0082】
図2に示されるとおり、帰還電極112は、電極端子104に直接接続されない。電極端子104が帰還電極112に電気接続されるようにこの電流経路を完成するために、導電性流体(例えば、等浸透圧食塩水)がその間に流し込まれる。代表的な実施態様においては、導電性流体は、上で説明したとおり、流体チューブ233を通って開口237まで送られる。その代わりに、プローブ90とは別個の流体供給エレメント(図には示されていない)により流体を送ることができる。例えば、関節鏡手術においては、体腔に等浸透圧食塩水を灌注して、プローブ90をこの灌注された体腔に導入する。導電性流体は、帰還電極112と電極端子104の間の導電経路を維持するために連続的に補給される。
【0083】
代替実施態様においては、流体経路は、例えば内側ルーメンすなわちシャフト100内の帰還電極と管状支持材の間の環状ギャップにより、プローブ90の中に形成できる。この環状ギャップは、導電性流体が標的部位に向かって半径方向内向きに流れるようにシャフト10の周囲付近に形成するか、流体が半径方向外向きに流れるようにシャフト100の中心に向かって形成することができる。どちらの実施態様においても、流体供給源(例えば、手術部位より高い位置にあるまたはポンプ装置を持つ流体の袋)は、制御弁を持つか否かを問わず流体供給チューブ(図には示されていない)を通じてプローブ90に連結される。1つまたはそれ以上の流体ルーメンを組み込む電気外科用プローブのさらに詳しい説明は、1995年6月7日に提出された原出願第08/485219号(弁理士整理番号第16238−006000号)に示されており、その完全な開示が参照によりすでに本出願に組み込まれている。
【0084】
図3を参照すると、電気的に隔離された電極端子104が電極支持材102の組織治療面212に間隔を置いて配置される。組織治療面および個々の電極端子104は、通常、上に示される範囲の寸法を持つ。代表的実施態様においては、組織治療面は、長さ1mmから20mmの範囲、幅0.3mmから7mmの範囲の長円形断面を持つ。長円形断面は、シャフト100の遠位部にベンドに適応する。個々の電極端子104は、組織治療面212から約0.1から4mm、通常約0.2から2mm外向きに伸びることが望ましい。出願者は、この形態が、上で詳細に説明したとおり高電界強度を増大し、電極端子104の周りの電流密度を増して、組織の剥離を容易にすることを発見した。
【0085】
図2から5の実施態様において、プローブは、組織治療面の中心に単一の大き目の開口209、および治療面212の周辺の周りに複数の電極端子(例えば、約3から15)を含む(図3を参照のこと)。その代わりに、プローブは、組織治療面の周辺に単一の環状のまたは部分的に環状の電極端子を含むことができる。中央の開口209は、標的部位から組織、流体およびまたは気体を吸引するために、シャフト100内の吸込みルーメン(図には示されていない)および吸込みチューブ211(図2)に連結される。この実施態様においては、導電性流体は、一般的に言って、半径方向内向きに流れて電極端子104を越えて、開口209から戻る。手術中の導電性流体の吸引により、外科医は標的部位を見ることができ、また、流体が患者の体に、例えば副鼻腔から、喉からまたは耳管に流れ込むのを防ぐ。
【0086】
当然、プローブの遠位先端は多様な形態を持つことができるのが分かるだろう。例えば、プローブは、組織治療面212の外周の周りに複数の開口209を含むことができる(図6Bを参照のこと)。この実施態様においては、電極端子104は、組織治療面212の中央から、開口209から半径方向に内向きに伸びる。開口は、導電性流体を標的部位に送るために流体チューブ233に、また帰還電極112と電極端子104の間の導電経路が完成した後流体を吸引するために吸込みチューブ211に適切に連結される。
【0087】
図5は、電極端子104および帰還電極112を電源28に結合するための、ハンドル204内の電気接続を示している。図に示されるとおり、複数のワイヤ252がシャフト100の中を伸びて、端子104を複数のピン254に結合する。ピンは接続ケーブル22(図1)に結合するためにコネクタ・ブロック256に差し込まれる。同様に帰還電極112がワイヤ258およびプラグ260を通じてコネクタ・ブロック256に結合される。
【0088】
本発明によれば、プローブ90は、さらに、異なる電気外科手術に同じ電源28を使用できるように、特定の電極アセンブリに特有の識別素子を含む。例えば、1つの実施態様においては、プローブ90は、電極端子104と帰還電極112の間に加えられる電圧を下げるために電圧降下素子または電圧降下回路を含む。電圧降下素子は、電極端子と帰還電極の間の電圧が、導電性媒体への過剰な電力分散およびまたは標的部位の軟組織の剥離を回避するのに充分な低さになるように、電源によって加えられる電圧を下げる役割を果す。電圧降下素子を使えば、主に、電気外科用プローブ90が、組織の剥離または気化用の高い電圧を加えるために適する他のArthroCare発電機と両立できる。例えば、組織の収縮の場合、電圧降下素子は、約100から135ボルトrmsの電圧(これはArthroCare970型および980型(すなわち2000)発電機で1の設定)を約45から60ボルトrmsに下げる役割を果す。これは、組織を剥離(例えば分子解離)せずに組織を収縮するのに適する電圧である。
【0089】
当然、内視鏡副鼻腔手術など、処置によっては、プローブは、一般に電圧降下素子を必要としない。その代わりに、プローブは、希望する場合には電圧上昇素子を含むことができる。
代表的な実施態様においては、電圧降下素子は、帰還電極ワイヤ258に結合される第一の脚264およびコネクタ・ブロック256に結合される第二の脚266を持つ電圧降下キャパシタ262である。当然、キャパシタは、システム内の他の位置、例えば、ケーブル、発電機、コネクタなどの中に配置するかまたはその長さに沿って配分することができる。さらに、ダイオード、トランジスタ、インダクタ、抵抗器、キャパシタまたはその組み合わせなど、他の電圧降下素子を本発明にと共に使用できることが分かるだろう。例えば、プローブ90は、帰還電極112と電極端子104の間の電圧を組織の収縮に適したレベルに下げるように構成されるコード化抵抗器(図には示されていない)を含むことができる。さらに、この目的のために電気回路を採用することができる。
【0090】
その代わりにまたはこれに加えて、電源10をプローブに結合するケーブル22を、電圧降下素子として使用することができる。ケーブルは、ケーブルが電源、電極端子および帰還電極の間の電気回路に配置される場合電源電圧を下げるために使用できる固有のキャパシタンスを持つ。この実施態様においては、ケーブル22を単独で使用するか、上で論じた電圧降下素子の1つ例えばキャパシタと組み合わせて使用することができる。
【0091】
さらに、本発明は、組織の治療のために選ばれる範囲内の電圧を加えるのに適した電源に使用することができることに留意しなければならない。この実施態様においては、電圧降下素子または回路は、望ましくないかも知れない。
図7Aから7Cは、本発明に基づくプローブ90の3つの異なる実施態様の遠位部を略図的に示している。図7Aに示されるとおり、電極端子104は、特定の処置の要件に応じて製造時に平面、半球形またはその他の形状で形成できる適切な絶縁材(例えば、セラミックまたはアルミナ、ジルコニアなどのガラス材)の支持基質102に固定される。望ましい支持基質の材料は、その高い熱伝導率、優れた絶縁特性、高い曲げ係数、カーボン・トラッキング抵抗、生体適合性および高い融点を持つことから、イリノイ州エルクグルーブのKyocera Industrial Ceramics Corporationから入手できるアルミナである。支持基質102は、基質102とプローブ90の近位端の間の距離のほとんどまたは全てに伸びる管状支持材78に接着接合される。管状支持材78は、エポキシまたはシリコンを主原料とする材料など電気絶縁材から成ることが望ましい。
【0092】
望ましい構成技術においては、電極端子104は、望ましい距離だけ組織治療面212から突き出すように、支持基質102の事前に形成された開口を通って伸びる。電極は、次に、一般に無機シーリング材80によって支持基質102の組織治療面212に接合される。シーリング材80は、効果的に電気絶縁し、アルミナ基質102およびプラチナまたはチタンの電極端子の両方によく接着するように選ばれる。シーリング材80は、さらに、プラチナまたはチタンおよびアルミナまたはジルコニアの融点よりずっと低い融点を持ち両立する熱膨張率を持たなければならず、一般に、ガラスまたはガラス・セラミックである。
【0093】
図7Aに示される実施態様において、帰還電極112は、プローブ90のシャフト100の外側の周りに配置される環状材から成る。帰還電極90は、管状支持材78を部分的または完全に囲み、下に論じるとおりその間に導電性流体50が流れるための環状ギャップ54を形成する。ギャップ54は、0.25mmから4mmまでの範囲の幅を持つことが望ましい。その代わりに、プローブは、シャフト100の周辺に沿って伸びる複数の流体ルーメンを形成するために支持材78と帰還電極112の間に複数の縦リブを含むことができる。この実施態様においては、複数のルーメンは、複数の開口まで伸びる。
【0094】
帰還電極112は、ポリ四フッ化エチレン、ポリアミドなど、一般に1つまたはそれ以上の電気絶縁鞘またはコーティングとして形成される電気絶縁ジャケット18内に配置される。電気絶縁ジャケット18を帰還電極112にかぶせることにより、帰還電極56と隣接体構造の間の直接電気接触が防止される。体構造(例えば、腱)と露出した電極112の間の直接電気接触は、接触点の構造の望ましくない加熱および壊死を生じる可能性がある。
【0095】
図7Aに示されるとおり、帰還電極112は、電極端子104に直接接続されない。電極端子104が帰還電極112に電気接続されるようにこの電流経路を完成するために、導電性流体50(例えば、等浸透圧食塩水)が流体経路83に沿って流される。流体経路83は、外側帰還電極と管状支持材の間の環状ギャップ54によって形成される。流体経路83を流れる導電性流体50は、図6Aにおいて電流力線60により示されるとおり、電極端子104と帰還電極112の間の電流の流路となる。電極端子104と帰還電極112の間に電位差が加えられると、端子104から標的組織を通って帰還電極まで電流が流れて、高電界強度が端子104の遠位端に発生して、高電界強度がゾーン88の組織52の剥離を生じる。
【0096】
図7Bは、帰還電極112が管状材78内に配置される、電気外科用プローブ90の別の代替実施態様を示している。帰還電極112は、導電性流体50(例えば、等浸透圧食塩水)が帰還電極と電気接触しながら流れられるようにするために、内側ルーメン57を形成する管状材であることが望ましい。この実施態様においては、電極端子104と帰還電極112の間に電位差が加えられて、電流力線60で示されるとおり(図3)導電性流体に電流が流れる。加えられる電位差およびこれに付随する電極端子104の先端の高電界強度の結果、組織52がゾーン88において剥離または離断される。
【0097】
図7Cは、図7Aおよび7Bの実施態様の組み合わせである、プローブ90の別の実施態様を示している。図に示されるとおり、このプローブは、導電性流体を流すために内側ルーメン57および外側ギャップまたは複数の外側ルーメン54を含む。この実施態様においては、帰還電極112は、図7Bに示されるように管状材78内に配置するか、図7Aに示されるように管状材78の外に配置するか、両方の位置に配置することができる。
【0098】
図9は、電極端子がシャフトを横切って伸びるようにシャフト100の遠位部が曲げられる、プローブ90の別の実施態様を示している。組織治療面212が全体的にシャフトの軸に平行になるようにシャフト100の遠位部はシャフトの他の部分に対して直角であることが望ましい。この実施態様においては、帰還電極112はシャフト100の外面に取り付けられ、電気絶縁ジャケット18で被覆される。導電性流体は、経路83に沿って帰還電極112を通り、組織治療面212の近い点の電極112の遠位端に出る。流体は、シャフトの外に組織治療面212に向けて送られて、電流力線60により示されるとおり電極端子104から流体50を通って帰還電極112に至る帰路電流経路を構成する。
【0099】
図10は、電気外科用システム11が、さらに、電極端子104と帰還電極112の間に導電性流体50を供給するための流体供給器具64を含む、本発明の別の実施態様を示している。流体供給器具64は、電気絶縁ジャケットによって囲まれる内側管状材または帰還電極112から成る。帰還電極112は、流体50が流れるための内側通路を形成する。図8に示されるとおり、流体50が器具64に対して角度を成して放出されるように、器具64の遠位部は曲げられることが望ましい。これにより、手術チームは、流体供給器具64の近位部をプローブ90に対して同様の角度で向けて、組織治療面212に隣接する位置に流体供給器具を配置することができる。
【0100】
本発明は、上に説明したとおりプローブ90の遠位先端の比較的平らな面に配置される電極配列に限定されない。図8Aおよび8Bを参照すると、代替プローブ90は、シャフト100の遠位端に取り付けられる1対の電極105a、105bを含む。電極105a、105bは、上に説明したとおり電源に電気接続され、スクリュードライバー状の先端107a、107bを持つことが望ましい。スクリュードライブ状にすることにより、電極105a、105bの「エッジ」の量が大きくなり、エッジでの電界強度および電流密度が増大するので、切断能力ならびに、切開された組織からの出血を制限する能力(すなわち、止血能力)が向上する。
【0101】
図11から13は、本発明に基づく、鼻または副鼻腔の遮断例えば慢性副鼻腔炎を治療するための方法を示している。この処置においては、遮断を取り除き(または)副鼻腔を拡大して正常な副鼻腔の機能を取り戻すために、ポリープ、鼻甲介またはその他の副鼻腔組織が剥離または縮小される(例えば、組織収縮により)。例えば、鼻粘膜肥大を伴う鼻粘膜の慢性的過敏または炎症の総称である慢性鼻炎においては、下鼻甲介を剥離または収縮により小さくすることができる。その代わりに、鼻甲介の体積を減らすために下鼻甲介の下縁から細長い組織片を除去することにより、鼻甲介切除または粘膜切除を行なうことができる。炎症によって生じる鼻粘膜または副鼻腔粘膜の良性の有茎または無茎の塊から成る鼻ポリープを治療するために、本発明の方法により鼻ポリープを収縮または剥離することができる。重い副鼻腔炎を治療するためには、遮断部位に電気外科用プローブを導入するために前頭洞手術を行なうことができる。本発明は、また、鼻中隔の病気を治療するため、例えば、鼻中隔を除去、矯正または再移植のために中隔の一部を剥離または切除するためにも、使用できる。
【0102】
本発明は、特に、副鼻腔の病気の治療における機能的内視鏡副鼻腔手術(FESS)において有益である。先行技術のマイクロデブライダと異なり、本発明の電気外科用プローブは、切断された血管の止血を行い、外科医が周囲の組織、骨、軟骨または神経をほとんどまたは全く傷つけることなく正確に組織を除去できるようにする。例として、限定的意味でなく、本発明を、以下の処置に使用できる、(1)鉤の除去(uncinectomy)または中鼻甲介の一部の医学的変位または除去、(2)上顎、蝶形骨または篩骨洞切除または上顎、蝶形骨または篩骨洞の自然の口の拡大、(3)ポリープ状または肉芽組織が除去される前頭陥凹切開、(4)重い鼻ポリープ症の場合にポリープ状組織が除去されるポリープ切除、(5)鼻甲介水泡切除またはポリープ状中鼻甲介の削り取り、(6)鼻中隔形成など。
【0103】
図11から13は、本発明に基づく内視鏡副鼻腔外科(FESS)処置を示している。図11に示されるとおり、内視鏡300は、外科医が標的部位例えば副鼻腔を見られるようにまず鼻孔301の1つから導入される。図に示されるとおり、内視鏡300は、通常、遠位端30にレンズ(図には示されていない)を持つ薄い金属チューブ302、および近位端308のアイピース306から成る。図2に示されるとおり、プローブシャフト100(図11には示されていない)は、同じ鼻孔で内視鏡およびプローブの両方を使用しやすくするためにベンドを持つ(すなわち、この実施態様において、2つの器具のハンドルが相互に妨害し合わない)。その代わりに、鼻咽頭を見るために、内視鏡を口から下軟口蓋に通すことができる。本発明に使用するのに適する鼻内視鏡については、米国特許第4517962号、4844052号、4881523号および5167220号において説明されており、その完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0104】
その代わりに、内視鏡300は、電気外科用プローブのシャフト100を受けるための内側ルーメンを持つ鞘(図には示されていない)を含むことができる。この実施態様においては、シャフト100は、内側ルーメンを通って内視鏡の遠位開口まで伸びる。シャフトは、外科処置中遠位端を操作するために適切な近位制御装置を含む。
【0105】
図12に示されるとおり、プローブ90の遠位端は、鼻孔301から鼻腔303に差し込まれる(内視鏡300は図12には示されていない)。遮断の位置に応じて、電極端子104は鼻腔303の遮断に隣接する位置に、あるいは副鼻腔305、307の1つに配置される。前頭洞305および蝶形骨洞307だけしか図12に示されていないが、処置は篩骨洞および上顎洞にも応用可能であることに留意すること。外科医が主要な遮断点に達したら、導電性流体がチューブ233および開口237を通じて組織に送られる(図2を参照のこと)。流体は、帰還電極112を通り過ぎてシャフト遠位端の電極端子104まで流れる。組織と電極支持102の間のゾーンが流体に終始浸るように、流体の流量は、バルブ17によって制御される(図1)。電源28がオンにされて、電極端子104と帰還電極112の間に高周波電位差が加えられるように調整される。導電性流体は電極端子104と帰還電極112の間の導電経路(電流力線を参照のこと)を提供する。
【0106】
図13Aおよび13Bは、副鼻腔組織の除去についてさらに詳しく示している。図に示されるとおり、高周波電圧は、標的組織302と電極端子104の間の導電性流体(図には示されていない)をイオン化蒸気層312すなわちプラズマに変換するのに充分である。電極端子104と標的組織302の間に電位差が加えられる(すなわち、プラズマ層を横切る電圧勾配)結果、プラズマ内の荷電粒子(すなわち、電子)315が組織に向かって加速する。充分に大きい電位差のとき、この荷電粒子315は、組織構造内で分子結合の解離を生じるのに充分なエネルギーを得る。この分子解離には、組織の量的な除去(すなわち剥離昇華)および酸素、窒素、二酸化炭素、水素およびメタンなど低分子量ガス314の生産を伴う。組織内での加速荷電粒子315の射程は短いので分子解離プロセスを表層に制限し、基礎組織への損傷および壊死を最小限に抑える。
【0107】
プロセス中、ガス314は、開口209および吸込みチューブ211を通じて真空源に吸引される。さらに、外科医が視界をよくするためにに、過剰な導電性流体およびその他の流体(例えば、血液)が標的部位から吸引される。組織の剥離中、電流力線により発生する残留熱(一般に150℃未満)は、通常、標的部位の切断された血管を凝結するのに充分である。これが充分でない場合、上に論じたとおり、電圧を流体気化の閾値より下のレベルに下げることにより、外科医は電源28を凝結モードに切り替えることができる。このように同時に止血することにより、出血が少なくなり、外科医は処置を行いやすくなる。遮断が除去されたら、通気および排液が回復されて、副鼻腔が治癒して正常な機能に戻れるようになる。
【0108】
本発明のもう1つの利点は、基礎および周囲の組織、神経(例えば、視神経)または骨に壊死または熱損傷を生じることなく、洞組織の層を正確に剥離できることである。さらに、標的部位に送られるエネルギーが骨または脂肪組織(一般的に言って標的組織より高いインピーダンスを持つ)を剥離するには不充分であるように、制御できる。このようにして、外科医は、骨を剥離したりその他の重大な損傷を与えることなく、文字どおり骨から組織を取り除ける。
【0109】
図15から17を参照すると、本発明に基づく電気外科用装置は、カテーテル・システム400として構成することもできる。図15に示されるとおり、カテーテル・システム400は、一般的に言って、標的組織に高周波電圧を与えるために相互接続ケーブル486により電源28に接続される電気外科用カテーテル、および標的部位に導電性流体を供給するための灌注剤容器または供給源600から成る。カテーテル460は、一般的に言って、本体462の遠位端に組織除去または組織剥離部分464を含む細長いたわみ性のシャフト本体462から成る。カテーテル460の近位端は、カテーテル460内のルーメンおよびリード線とフィットメント614の近位の導管およびケーブルの間の相互接続のための多管フィットメント614を含む。例として、カテーテル電気コネクタ496は、遠位ケーブル・コネクタ494に取り外し可能に接続され、遠位ケーブル・コネクタは、さらにコネクタ492を通じて発電機28に取り外し可能に接続される。カテーテル460内の1本またはそれ以上の導電リード線(図には示されていない)が、活性電極ケーブル分岐487を通じて、組織剥離部464の1つまたはそれ以上の活性電極463とカテーテル・コネクタ内の対応する1つまたはそれ以上の電極端子(これも図には示されていない)の間に伸びる。同様に、組織剥離部464の1つまたはそれ以上の帰還電極466は、リード線(図には示されていない)によってカテーテル・コネクタ496の帰還電極ケーブル分岐498に結合される。当然、活性電極および帰還電極の両方に単一のケーブル分岐(図には示されていない)を使用することができる。
【0110】
カテーテル本体462は、組織嵌入中、電極端子の回転を反応トルク制御するために、少なくとも本体462の遠位剥離部464の壁に補強ファイバーまたはブレード(図には示されていない)を含むことができる。カテーテル本多462のこの剛性部分の長さは、わずか約7から10mmであり、電極を前進させ標的組織に隣接する位置に配置する間経路をたどりやすいように、カテーテル本体462の残りの部分はたわみ性であることが望ましい。
【0111】
導電性流体30は、カテーテル460内のルーメン(図15には示されていない)を通じて、カテーテル460の組織剥離部464に送られる。流体は、供給源から導電性流体供給ライン602および導管603に沿ってルーメンに供給される。導管は多管フィットメント114でカテーテル内ルーメンに連結される。導電性流体(例えば、等浸透圧食塩水)供給源は、灌注剤ポンプ・システム(図には示されていない)または患者および組織剥離部8の高さより数フィート上に配置される灌注剤容器600など重力供給とすることができる。導電性流体30の流量を手動で制御できるようにするために、制御弁604を、流体供給ライン602と導管603の境界に配置することができる。その代わりに、導電性流体の流量を正確に制御するために計器付きポンプまたは流量調節器を使用することができる。
【0112】
システム400は、さらに、標的部位から液体および気体を吸引するために吸引または真空システム(図には示されていない)を含む。吸引システムは、通常、吸引コネクタ605によりフィットメント614に連結される真空源から成る。
図16および17は、本発明の原理に従って構成される電気外科用カテーテルの作業端464を示している。図16に示されるとおり、カテーテル460は、一般的に言って、たわみ性または剛性の細長いシャフト462、およびシャフト462の遠位端に連結される電極支持材620を含んでいる。電極支持材620は、シャフト462の遠位端から(通常1から20mm)伸びて、電気的に隔離された複数の電極端子463を支える。電極支持材620および電極端子462は、接着剤630によりシャフト460内の管状支持材626に固定されることが望ましい。
【0113】
電極端子463は、円形、正方形、長方形またはその他の形状の導電性金属を使って構成することができる。例として、電極端子の材料は、ステンレス鋼、タングステンおよびその合金、モリブデンおよびその合金、チタンおよびその合金、ニッケル合金ならびにプラチナおよびその合金を含むグループの中から選択することができる。電極支持材620は、セラミック、ガラスまたはガラス/セラミック組成物(例えば、酸化アルミニウム、チッ化チタン)が望ましい。その代わりに、電極支持材620は、Vitrex International ProductsInc.が製造するポリエーテル−エーテル−キートーン(PEEK)またはGE Plasticsが製造するポリスルフォンなど高温生体適合性プラスティックを使用することができる。接着剤630は、例として、エポキシ(例えばMaster Bond EP42HT)またはシリコンを主原料とする接着剤とすることができる。
【0114】
図17Bに示されるとおり、0.05mmから1.5mmの範囲の活性電極直径(0.1mmから0.75mmまでの範囲の直径がさらに望ましい)D1 を持つ合計7つの円形活性電極または電極端子463が対称的に示されている。電極間間隔W1 およびW2 は、0.1mmから1.5mmの範囲が望ましく、0.2mmから0.75mmの範囲がさらに望ましい。電極端子463の外周辺と電極支持材周辺の間の距離W3 は、0.1mmから1.5mmの範囲が望ましく、0.2mmから0.75mmの範囲がさらに望ましい。カテーテル本体462の作業端464の全直径D2 は、0.5mmから10mmの範囲が望ましく、0.5mmから5mmの範囲がさらに望ましい。上に論じたとおり、活性電極の形状は円形、正方形、三角形、六角形、長方形、管状、平らなストリップなどが可能であり、円対称に配置するかまたは例として長方形に、正方形にまたはストリップ状に配置することができる。
【0115】
カテーテル本体462は、本体462に沿って支持材620および電極端子463から半径方向外向きに伸びる管状カニューレ626を含む。カニューレ626が電極端子463配列の構造的支持材として、ならびに帰還電極624としての機能を果すように、カニューレ626の材料は、導電性金属のグループから選択すると有利である。支持材626は、コネクタ・ハウジング(図には示されていない)内のその近位端でリード線(図には示されていない)に接続され、適切なコネクタを通じて電源28まで導通して、高周波発電機28の出力ポールと帰還電極624の間を導通させる。カニューレ626は、ステンレス鋼、銅合金、チタンまたはその合金およびニッケル合金を含むグループの中から選択できる。カニューレ626の厚みは0.08mmから1.0mmの範囲が望ましく、0.1mmから0.4mmの範囲がさらに望ましい。
【0116】
図16に示されるとおり、カニューレ626は、患者の体を電流から保護するために、電気絶縁スリーブ608で被覆される。電気絶縁スリーブ608としては、コーティング(例えば、ナイロン)または熱収縮プラスティック(例えば、フルオロポリマーまたはポリエステル)が可能である。カニューレ626の近位部は、帰還電極624として機能するために露出したままにする。帰還電極624の長さL5 は、1mmから30mmの範囲が望ましく、2mmから20mmの範囲がさらに望ましい。帰還電極624の最遠位部と電極支持材620の組織治療面622の間の距離L1 は、0.5mmから30mmの範囲が望ましく、1mmから20mmの範囲がさらに望ましい。電気絶縁スリーブ608の厚みは0.01mmから0.5mmの範囲が望ましく、0.02mmから0.2mmの範囲がさらに望ましい。
【0117】
代表的な実施態様においては、流体経路は、内側ルーメン627すなわち帰還電極624とシャフト460内の第二の管状支持材の間の環状ギャップによって、カテーテルに形成される。この環状ギャップは、導電性流体が標的部位に向かって半径方向内向きに流れるように、図16に示されるとおりシャフト460の周辺近くに形成するか、流体が半径方向外向きに流れるように、シャフト中心に向かって形成することができる(図には示されていない)。どちらの実施態様においても、流体供給源(例えば、手術部位より上に配置されるまたはポンプ装置を持つ流体の袋)は、制御弁を持つか否かを問わず流体供給チューブ(図には示されていない)を通じてカテーテル460に連結される。
【0118】
図17Aに示される代替実施態様においては、導電性流体は、カテーテル460とは別個の流体供給エレメント(図には示されていない)から供給される。例えば、関節鏡手術においては、体腔に等浸透圧食塩水が灌注され、カテーテル460は、この灌注された体腔に導入される。帰還電極624と電極端子463の間の導電経路を維持するために、導電性流体は絶えず補給される。
【0119】
図18は、患者の鼻の管腔から組織を除去する方法を示している。図に示されるとおり、患者の鼻は、下鼻甲介および中鼻甲介702、704によって分割される鼻腔700および篩骨706によって鼻腔から分離される多数の副鼻腔を含む。図に示されるとおり、前頭洞708および蝶形骨洞710は、各々、それぞれ篩骨706を通って鼻腔700に伸びる通路または管腔712、714を含む。さらに、副鼻腔は相互を接続する通路(図には示されていない)を持つ。この通路は、腫脹した組織または瘢痕組織により遮断されて、副鼻腔が詰まって、激しい痛み及び圧力を生じることがしばしばある。後鼻腔または鼻排液、圧力による鼻うっ血、頭痛、副鼻腔感染、および鼻ポリープは、慢性副鼻腔炎と最も一般的に結びつくものである。図18には前頭洞305および蝶形骨洞307だけしか示されていないが、この処置は篩骨洞および上顎洞にも応用できることに留意すること。上顎洞の口720が図18に示されている。
【0120】
図18に示されるとおり、カテーテル460の剥離部464は、外鼻孔722を通って鼻腔700に、さらに前頭洞708に通じる通路712に進む。カテーテル460は、ガイドワイヤ、操縦可能なカテーテルなど多様な技術を使って前進させることができる。通路712の主要な遮断点に到達したら、導電性流体がカテーテル内の1つまたはそれ以上の内部ルーメン(図には示されていない)を通って組織に送られる。その代わりに、鼻腔700を導電性流体で満たすことができる(関節鏡処置と同様)。一部の実施態様においては、カテーテルは、自然発生の体液、例えば血液を導電媒体として使って作動するように構成することができる。流体は、帰還電極624を通り過ぎてカテーテル・シャフトの遠位端の電極端子463まで流れる。閉塞と電気端子463の間のゾーンが常に流体に浸っているように、流体の流量は、バルブ(図には示されていない)によって制御される。次に電源28をオンにして、電極端子462と帰還電極624の間に高周波電位差が加えられるように、調整する。導電性流体は、電極端子463と帰還電極624の間の導電経路(電流力線を参照のこと)を提供する。
【0121】
望ましい実施態様においては、高周波電圧は、閉塞媒体と電極端子463の間の導電性流体(図には示されていない)をイオン化蒸気層すなわちプラズマに変換するのに充分である。電極端子463と閉塞媒体の間に電位差が加えられる結果、上に論じたとおり、プラズマ内の荷電粒子が閉塞に向かって加速して、組織構造内の分子結合を解離させる。このプロセス中、外科医の視界をよくするために、剥離産物および過剰な導電性流体およびその他の流体(例えば、血液)を標的部位から吸引することができる。組織の剥離中、電流力線により発生する残留熱(一般に150℃未満)は、通常、標的部位の切断された血管を凝結するのに充分である。これが充分でない場合、上に論じたとおり、電圧を流体気化の閾値より下のレベルに下げることにより、外科医は電源28を凝結モードに切り替えることができる。このように同時に止血することにより、出血が少なくなり、外科医は処置を行いやすくなる。遮断が除去されたら、通気および排液が回復されて、副鼻腔が治癒して正常な機能に戻れるようになる。
【0122】
図19は、副鼻腔をさらに詳しく示す患者頭部の前頭断面図である。図に示されるとおり、鼻中隔750は、鼻腔700の中心を通って左右の上顎洞752、754の間に広がる。一連の曲がりくねった通路765は、鼻腔を左右の上顎洞752、754と接続する。この通路765は、部分的にまたは完全に遮断される可能性がある。本発明のシステムおよび方法は、外科医が小型のカテーテルをこの通路の中に前進させて、最小限に侵略的な方法で、すなわち周囲の軟骨、鼻中隔または副鼻腔に大きな損傷を与えずに遮断を量的に除去できるようにする。
【0123】
図20は、体構造を切断するために設計された本発明の実施態様を示している。この実施態様においては、電極端子804が長いほうの軸(図20において矢印806によって示されている)に沿って動くとき、電流力線810が電極端子804の先端の狭い範囲に制限されて、治療対象の体構造に切断効果を生じるように、電極端子は、狭い間隔の1つまたはそれ以上の円柱の線形または柱状配列として配置される。前と同様、電極端子804から放射される電流力線810は、導電性液体を通ってプローブ先端近くに配置される帰還電極構造812に至る。
【0124】
次に、図21および22を参照すると、電極端子804の代替形状が示されている。エッジが鋭いと(すなわち曲線半径がより小さい)電流密度が高くなるので、この代替電極形状を使えば、電極端子804から放射される電流密度を濃縮して、剥離速度を高めかつ(または)さらに隔離効果を集中することができる。図21は、エッジ820により高い電流密度を生じる、丸線電極端子804の平らな延長部を示している。電極端子804が円錐形先端822に形成されて円錐先端により高い電流密度を生じる、別の例が、図22に示されている。
【0125】
図23から25は、外傷、瘢痕など皮膚の外面から構造を切断し除去するためまたは患者の鼻、口および喉内の組織を切断し除去するための電気外科用プローブ830すなわち「プラズマ・メス」例を示している。プローブ830は、近位ハンドル834に取り外し可能に連結されたシャフトまたは使い捨て先端832、および複数の電極端子840を支えるために先端832から伸びる電気絶縁電極支持材836から成る(図23および25を参照のこと)。先端832およびハンドル834は、一般に、外科医が取り扱うのに適した形状に簡単に成形できるプラスティック材から成る。図26に示されるとおり、ハンドル834は、電気接続844を収納する内部キャビティ842を形成し、電気接続ケーブル34への接続に適したインターフェイスと成る(図1を参照のこと)。この実施態様例においては、ハンドル834は、外科処置と処置の間にハンドル834を滅菌することにより再利用できるように、蒸気滅菌可能なプラスティックまたは金属(例えば、ポリエチルエーテル・キートーン、またはアルミニウムおよび(または)亜鉛を含有する安定金属合金)から作られる。高温への反復的露出に耐えることのできるシリコン・ケーブル・ジャケットおよびポリエーテル・イミド・ハンドピースまたはULTEM(登録商標)など、使用温度が高い材料が望ましい。
【0126】
図23において、先端834は、互いにはまり合ってその間に先端832内に電極支持材を保持するためのくぼみを形成する、第一および第二のハウジング半身体から成ることが望ましい。電極支持材386は、先端832の遠位端から(通常約0.5から20mm)伸びて、電気的に隔離された複数の電極端子840および1つまたはそれ以上の帰還電極852の支えとなる(図25を参照のこと)。その代わりに、上に論じたとおり、外科処置中導電性流体を電極端子840の周りに閉じ込めるために、電極支持材836を先端832の遠位端から後退させることができる。電気支持材836は、外科医が扱いやすいように、通常、ハンドル834の縦軸に対して約10度から90度の角度で配置される実質的に平面の組織治療面860を持つ。この実施態様例においては、この機能は、先端832をハンドル834の縦軸に対して鋭角に向けることによって得られる。
【0127】
図23から25に示される実施態様において、プローブ830は、電極端子840と電源28(図1を参照のこと)の間の電流経路を完成するために、単一の環状帰還電極852を含む。図に示されるとおり、帰還電極852は、組織治療面860に近接して(一般には約0.1mmから2mmで、0.2mmから1mmがさらに望ましい)、流体接触面を持つことが望ましい。帰還電極852は、ハンドル834の近位端まで伸びるコネクタ(図には示されていない)に結合され、ここで電源28に適切に接続される(図1)。
【0128】
図26を参照すると、先端832は、さらに、各々、電極端子840の1つおよび支持材836の上の帰還電極852に結合される複数のワイヤ872を保持する雄電気コネクタ870を含む。ハンドル834内に収められる雌コネクタ874は、雄コネクタ870に取り外し可能に結合され、複数のワイヤ876が雌コネクタ874からケーブル(図1)に伸びる。プローブ830は、また、電源のために特定の電圧出力範囲および操作モードをプログラムするためにコード化抵抗器(図には示されていない)など識別素子も含むことが望ましい。これによって、電源を、多様な用途のための多様なプローブに使用できる。
【0129】
代表的な実施態様においては、プローブ830は、導電性流体を標的部位に送るために流体チューブ880(図23)を含む。流体チューブ880は、ハンドル834内のグルーブを通って先端832の内部キャビティを通って電極支持材386に隣接する遠位開口882(図24)まで伸びるサイズを持つ。流体チューブ880は、導電性流体供給源21(図1)に連結するための近位コネクタ884を含む。
【0130】
プローブ830は、また、導電性流体の標的部位への流量を制御するためのバルブまたはこれと同等の構造を含む。代表的な実施態様においては、ハンドル312は、流体チューブ880のためのバルブ構造となる回転式スリーブ890から成る。スリーブ890の回転は、チューブ880を通る流体の流れを妨げ、最終的に遮断する。当然、この流体制御は、スウィッチ、ボタンなど他の多様な入力およびバルブ装置によって行なうことができる。
【0131】
図24および25を参照すると、電気的に隔離された電極端子840が電極支持材836の組織治療面860全体に間隔を置いて配置される(線形配列が望ましい)。代表的実施態様においては、実質的に円錐形の3つの電極端子840が、表面860から遠位方向に伸びる線形配列で配置される。電極端子840は、通常、組織治療面860から約0.5から20mm伸び、約1から5mm伸びることが望ましい。出願者は、この形態は、電極端子840の遠位エッジでの電界強度およびこれに伴う電流密度を高め、それにより組織切断速度を速めることを発見した。代表的な実施態様においては、組織治療面380は、直径が約0.5mmから20mmの範囲(約2から10mmが望ましい)の円形断面を持つ。個々の電極端子840は、図に示されるとおり、外向きに先細が望ましく、図8Aおよび11に示される電極のような遠位エッジを形成することもできる。
【0132】
電極支持材836は、セラミックなど適切な高温電気絶縁材から成る多層基板によって構成されることが望ましい。多層基板は、セラミック・ウェーハ−層に接着される導電ストリップを持つ薄膜または厚膜ハイブリッドである(例えば、セラミック・ウェーハ−に印刷され、焼成またはプレーティングされる厚膜)。導電ストリップは、一般にタングステン、金、ニッケル、銀、プラチナ、またはこれと同等の材料から成る。この実施態様例においては、導電ストリップは、タングステンから成り、ウェーハ−層と同時焼成されて、一体のパッケージを形成する。導電ストリップは、セラミック層に開けられるホールまたはバイヤホールにより外部ワイヤ・コネクタに結合され、導電材でプレーティングまたはその他の方法で被覆される。この支持材370のさらに詳しい説明は、すでに参照により本出願に組み込まれている、1997年11月25日に提出された米国特許出願第08/977845号(弁理士整理番号第D−2号)に示されている。
【0133】
次に図26を参照すると、電気外科用プローブ900の別の実施態様は、シャフト908およびシャフトの遠位端の支持基質902から伸びる少なくとも2つの電極端子904から成る。電極端子904は、組織の切開のために遠位エッジ910を形成することが望ましい。電極端子904のエッジ910は、相互に実質的に平行であり、通常、約4から15mmの間隔を置き、約8から10mmn間隔を置くことが望ましい。エッジ910は、支持基質902の遠位端から約0.5から10mm伸び、約2から5mm伸びることが望ましい。この実施態様例においては、プローブ900は、電極端子904から近位方向に間隔を置いて配置される帰還電極912を含む。その代わりに、帰還電極912を電極端子904の1つとするか、または患者の体の外面に置かれる分散パッドとすることができる。
【0134】
図27を参照すると、電気外科用メス930は、遠位端に電極アセンブリ934、および電極アセンブリ934から絶縁材938を挟んで近位方向に間隔をおいて配置される帰還電極936を含むシャフト932から成る(上に説明した装置と同様)。この実施態様においては、電極アセンブリ934は、組織を切断するために実質的に線形の切断経路を形成する、相互に整合する対の外側電極端子940および内側ループ電極942から成る。この実施態様の電極は、一般的に言って、上に説明したものと同じ延長長さおよびサイズを持つ。この実施態様は、組織を切断し、同時に切断された組織の止血を行うために有益である。外側電極端子940は、組織を正確に切断するために遠位方向に明瞭な小さい面積すなわち点まで伸び、一方、ループ電極942は、組織を効果的に凝結させるために充分な露出面積を持つ。大量出血する組織においては、電源28は、プラズマ層を除去し、凝結効果を高めるために、非剥離モードに切り替えられる。その代わりに、外科医は、標的部位への導電性流体の供給を減少または停止して、高い電力レベルに維持することができる。出願者は、こうすることにより血液が帰還電極36と電極端子940の間の導電経路にされて、標的部位での凝結速度を高めることを、発見した。
【0135】
図28は、本発明に基づくさらに別の電気外科用メス950を示している。メス950は、組織を切断し凝結するために器具のシャフト954の遠位端に単一のループ電極952を含む。上の実施態様と同様、ループ電極952によって形成される鋭い遠位エッジは、組織を効率よく正確に切断する一方、ループ電極の表面面積が大きくなるので、止血を容易にする。他の実施態様においては、メス950は、線形、平行または配列状に配置されるこの種のループを複数含むことができる。
【0136】
次に、本発明に従って気道障害を治療するための方法について説明する。これらの実施態様においては、上に説明した電気外科用プローブの1つなど電気外科用プローブを、舌、扁桃、鼻甲介、アデノイド、軟口蓋組織(例えば口蓋垂および軟口蓋)、硬組織およびその他の粘膜または粘膜下組織を含めて(ただし、これに限定されない)標的組織塊を剥離、切断または切除するために使用することができる。1つの実施態様においては、睡眠無呼吸の治療のために、口蓋垂320、軟口蓋および扁桃の選択された部分が除去される。この方法においては、上に論じたプローブまたはカテーテルの1つなど電気外科用器具90が、図14に示されるとおり患者の口310に導入される。局部麻酔、例えば腫脹またはその他の局部麻酔で診療所でこの処置を行うことは可能であるが、一般に、この処置は、全身麻酔の下で病院で行われる。外科医が処置を見ることができるようにするために、内視鏡(図には示されていない)またはその他のタイプの検視装置も口10に導入、または一部導入することができる(検視装置は電気外科用プローブと一体とするか、別個の装置とすることができる)。電極端子104は、標的組織(例えば、扁桃、口蓋垂320、軟口蓋など)に隣接してこれに当てて配置され、上に説明したとおり導電性流体が標的部位に送られる。次に、電源28(図1)が起動され、電極端子104と帰還電極112の間に高周波電位差が加えられる。処置およびプローブ90の遠位端の形態に応じて、外科医は、口内の神経など敏感な構造および非標的組織を傷つけることなく、閉塞組織を切断、剥離またはその他の方法で除去するためにプローブ90を操作する。視界をよくし、過剰な流体および(または)剥離産物が患者の喉に流れ落ちないようにするために、標的部位を吸引することもできる。
【0137】
上に論じたとおり、本発明は、閉塞性睡眠障害の治療に使用される従来のRFおよびレーザー装置より低い温度で組織を除去するための新規のコブレーションプロセスを使用する。従って、組織は、わずかな炭化および非常に浅い組織壊死を伴うだけで除去される。このように付帯的損傷がわずかで、低温であるため、手術中および手術後の患者の痛みが大幅に減少し、従来の装置に比べて治癒時間が増す。さらに、プローブ90の端の低温プラズマは、標的組織の切断された血管を同時に止血する。これにより、手術中の出血が最小限に抑えられ、視界がよくなり、手術時間が短縮され、おそらくより早い治癒および手術後の痛みの減少に寄与する。さらに、コブレーションメカニズムの正確性により、隣接する神経およびその他の敏感な構造への損傷が最小限に抑えられるか完全に排除されるというある種の気楽さを外科医に感じさせる。
【0138】
患者の出血が他の場合よりひどい場合がある。特に、感染症の扁桃の除去は、外科医にとって止血が大きな問題となる。出願者は、図27および28において説明した電気外科用プローブが、特に、剥離処置中扁桃の切断された血管を凝結し封止するために適していることを発見した。深刻なケースにおいては、出願者は、標的部位の導電性流体(例えば、食塩水)を排除する(ポンプをオフにして、凝結モードにすることにより)ことが凝結および止血を容易にすることを発見した。
【0139】
別の実施態様においては、いびき障害の治療のために軟口蓋組織を剥離および(または)収縮するために本発明の電気外科用プローブを使うことができる。特に、選択される組織部位の下または周りの望ましくない組織損傷を生じずに、口蓋垂320の一部を剥離または収縮するために、このプローブが使用される。組織の収縮のためには、口蓋垂組織の温度を通常の体温(例えば37℃)から45℃から90℃の範囲の温度に(60℃から70℃の範囲が望ましい)上げるために充分な電位差が、電極端子104と帰還電極112の間に加えられる。この温度上昇により、口蓋垂組織内の膠原結合線維が収縮する。
【0140】
本発明に基づく組織収縮の1つの方法においては、上に説明したとおり導電性流体が標的部位に送られて、標的組織の膠原線維の収縮を誘発するのに充分な温度まで加熱される。導電性流体は、膠原線維を実質的に不可逆的に収縮するのに充分な温度まで加熱される。このためには、一般的に言って、組織温度を約45℃から90℃の範囲にする必要があり、通常は約60℃から70℃の範囲にする。流体は、導電性流体と接触している電極端子に高周波電気エネルギーを与えることによって加熱される。電極端子104から放射される電流は、流体を加熱して、加熱流体のジェットまたはプルームを発生し、これが標的組織に向けられる。加熱流体は、膠原組織の熱水収縮を生じるのに充分な温度まで膠原温度を上げる。帰還電極112は、組織部位から電流を引き離して、組織への電流の貫入の深さを制限することにより、膠原組織の分子解離および破壊を防ぎ、標的組織部位の周囲および基礎組織への損傷を最小限に抑えるかまたはこれを完全に回避する。1つの実施態様例においては、電極端子104は、RF電流が組織に中に入り込まず、導電性流体を通って帰還電極に流れるように、組織から充分な距離が保たれる。この実施態様においては、組織にエネルギーを与えるための主要なメカニズムは、電流ではなく加熱された流体である。
【0141】
代替実施態様においては、電流が選択された深さまで直接組織の中に通るように、電極端子104は、標的組織と接触させられるかまたはそのごく近くに置かれる。この実施態様においては、帰還電極は組織から電流を引き離して、組織への電流の貫入深さを制限する。出願者は、電極端子および帰還電極に加えられる電圧の周波数を変化させることによって、本発明の電気外科用システムを使って電流の貫入深さを変動できることを発見した。これは、導電性細胞液を取り囲む細胞膜の電気特性のために周波数が増大すると組織の電気インピーダンスが減少することが知られているためである。周波数が低いと(例えば、350kHz未満)、組織のインピーダンスは高くなり、本発明の帰還電極および電極端子構成が存在することにより(下で詳しく論じる)電流力線の貫入深さが小さくなるため、組織の加熱深さが小さくなる。1つの実施態様例においては、膠原収縮深さを浅くするために(例えば、通常1.5mm未満であり、0.5mm未満が望ましい)、約100から200kHzの動作周波数が電極端子に与えられる。
【0142】
本発明の別の態様においては、組織の治療のために使われる電極端子のサイズ(例えば、直径または主寸法)が、意図される組織治療の深さに応じて選択される。同時係属特許出願PCT国際特許出願、米国国内段階出願番号第PCT/US94/05168号において前に説明したとおり、組織への電流貫入深さは、個々の活性電極の寸法が大きくなるに連れて増す(電流の周波数、帰還電極の形態など他のファクターは一定として)。電流貫入深さ(つまり、膠原収縮、不可逆的壊死など組織に変化を生じるのに充分な電流密度が達する深さ)は、本発明の双極形態の場合約100kHzから200kHzの周波数で動作するとき、ほぼ活性電極の直径程度である。従って、電流貫入深さを小さくする必要がある用途の場合、小さい寸法の1つまたはそれ以上の電極端子を選択することになる。逆に、電流貫入深さを大きくする必要のある用途の場合には、大きい寸法の1つまたはそれ以上の電極端子を選択することになる。
【0143】
前記の措置の他に、本発明のシステムおよび方法は、口310、咽頭330、喉頭335、下咽頭、気管340、食道350および頸部360の多様な障害の治療に使用できる。例えば、扁桃肥大またはその他の扁桃障害は、リンパ上皮組織を部分的に剥離することによる扁桃切除によって治療することができる。この処置は、通常、頭を伸ばして挿管麻酔をかけて行われる。口蓋舌弓が切開され、扁桃実質と咽頭収縮筋の間の結合組織層が現れる。切開は、従来のメスを使うか、本発明の電気外科用プローブを使って行なうことができる。次に、口蓋弓を保存して上極を通って舌の基底まで剥離することにより、扁桃が解放される。プローブは、組織を剥離すると同時に、その部位の切断された血管を止血する。同様に、鼻咽頭の基底からアデノイドを分離(例えば、切除または剥離)することにより、口呼吸を困難にするアデノイド肥大または鼻閉塞をアデノイド切除で治療することができる。
【0144】
その他の咽頭障害を本発明に従って治療することができる。例えば、下咽頭憩室症は食道内の食道口のすぐ上に形成される小さい嚢を伴う。嚢包は、剛性の食道鏡を導入して嚢包を分離することにより、本発明に従って内視鏡を使って除去することができる。次に下咽頭収縮筋を分離し、本発明に従って嚢を剥離する。血管腫、リンパ腫、乳頭腫、舌甲状腺腫、悪性腫瘍など口および咽頭内の腫瘍も、本発明に従って除去できる。
【0145】
本発明のその他の処置は、声帯ポリープおよび外傷の除去および部分的および全面的喉頭切除を含む。後者の処置においては、喉頭全体が舌の基底から気管まで除去され、必要な場合には、舌、咽頭、気管および甲状腺の一部が除去される。
気管狭窄も本発明に従って治療できる。気管の壁の急性および慢性の狭窄は、咳、チアノーゼおよび窒息を引き起こす場合がある。
【0146】
図29および30は、ポリープまたは鼻甲介など膨大した体組織を本発明に従って治療するための方法を示している。この処置においては、遮断を取り除いて(または)鼻甲介のそれ以上の腫脹を防止して、正常な副鼻腔の機能を取り戻すために、ポリープ、鼻甲介またはその他の副鼻腔組織を剥離または縮小(例えば、組織の収縮により)することができる。例えば、鼻粘膜の肥大を伴う鼻粘膜の慢性的過敏または炎症の総称である慢性鼻炎においては、下鼻甲介を剥離または収縮により縮小することができる。その代わりに、下鼻甲介の下縁から細長い組織片を除去することにより鼻甲介切除または粘膜切除を行って、鼻甲介の体積を減らすことができる。炎症によって生じる鼻または副鼻腔粘膜の良性の有茎または無茎の塊から成る鼻ポリープを治療するためには、本発明の方法により、鼻ポリープを収縮させるか、剥離することができる。重い副鼻腔炎を治療するためには、遮断部位に電気外科用プローブを導入するために前頭洞手術を行う。本発明は、また、鼻中隔の病気を治療するため、たとえば、鼻中隔を除去、矯正または再移植するために鼻中隔を剥離または切除するために使用することができる。
【0147】
本発明は、特に、鼻甲介の一部を量的に除去することにより膨大した鼻甲介を縮小する際に有益である。図29に示されるとおり、患者の鼻1000は、中鼻甲介1004および下鼻甲介1006を含めて1組の鼻甲介1002を持つ鼻腔1001から成る。下鼻甲介1006は、一般に、前部および後部を持つ。下鼻甲介1006、一般的には前部の剥離は、実質的にその機能を低下させないことが分かっている。本発明に従って、プローブ1003(図30A)の遠位端が鼻孔から鼻腔1001に導入される。電極端子1058は、選択される鼻甲介1006に隣接する位置に置かれ、導電性流体が流体供給エレメント(図には示されていない)から組織に送られる。流体は、帰還電極1072を通り過ぎてシャフト遠位端の電極端子1058まで流れる。組織と電極支持1070の間のゾーンが流体で絶えず浸されるように、流体の流量はバルブ(図には示されていない)により制御できる。その代わりに、または流体供給と共に、処置前に導電性ゲルを標的部位に塗布することができる。次に、電源28をオンにして、電極端子1058と帰還電極1072の間に高周波電位差が加えられるように調整する。導電性流体は、電極端子1058と帰還電極1072の間に導電経路を提供する。プローブ1003が起動されたら、外科医は、鼻甲介組織を量的に除去するために鼻甲介1006に電極端子を接触させるか、そのごく近くに配置する。
【0148】
図30Aおよび30Bは、副鼻腔組織の除去をさらに詳細に示している(図30Bは、単一の活性電極の実施態様を示している)。図に示されるとおり、導電性流体を通って帰還電極に電流1010が流れるように電極端子1058と帰還電極1072の間に高周波電位差が加えられる。高周波電圧は、標的組織1020と電極端子1058の間の導電性流体(図には示されていない)をイオン化蒸気層1022すなわちプラズマに変換するのに充分である。電極端子1058と標的組織1020の間に電位差が加えられる(すなわち、プラズマ層を横切る電圧勾配)結果、プラズマ内の荷電粒子(すなわち、電子)1024が組織に向かって加速する。充分に大きい電位差のとき、この荷電粒子1024は、プラズマ層1022に接触する組織構造内で分子結合の解離を生じるのに充分なエネルギーを得る。この分子解離には、組織の量的な除去(すなわち剥離昇華)および酸素、窒素、二酸化炭素、水素およびメタンなど低分子量ガス1026の生産を伴う。組織内での加速荷電粒子1024の射程は短いので分子解離プロセスを表層に制限し、基礎組織への損傷および壊死を最小限に抑える。
【0149】
プロセス中、ガス1026は、真空源に適切に連結された吸込みチューブ、器具またはプローブ1003内のルーメン(図には示されていない)から吸引される。さらに、外科医の視界をよくするために、過剰な導電性流体およびその他の流体(例えば、血液)を標的部位から吸引することができる。組織の剥離中、電流力線により発生する残留熱(一般に150℃未満)は、通常、標的部位の切断された血管を凝結するのに充分である。これが充分でない場合、上に論じたとおり、電圧を流体気化の閾値より下のレベルに下げることにより、外科医は電源28を凝結モードに切り替えることができる。このように同時に止血することにより、出血が少なくなり、外科医は処置を行いやすくなる。鼻甲介が縮小されたら、通気および排液が回復されて、副鼻腔が治癒して正常な機能に戻れるようになる。
【0150】
処置に応じて、外科医は、電極端子1058を鼻甲介組織に対して相対的に並進させて、鼻構内内に孔、溝、条、ディボット、クレーターなどを形成することができる。さらに、外科医は、これらの孔または溝内に意図的に熱損傷を生じて、鼻甲介が処置後に腫脹するのを防ぐ瘢痕組織を形成することができる。1つの実施態様においては、医者は、組織を除去して、通常2mm未満の直径を持つ(1mm未満が望ましい)1つまたはそれ以上の孔を鼻甲介に形成するとき、電極端子1058を鼻甲介組織の中に並進させる。別の実施態様においては、医者は、鼻甲介の外面を横切って電極端子1058を並進させて、1つまたはそれ以上の溝またはトラフを形成する。出願者は、本発明は、本出願において説明される低温剥離技術を使って組織にこの種の孔、ディボットまたは溝を迅速にかつきれいに形成できることを発見した。組織にこの種の孔または溝を形成するための方法についてさらに詳しい説明は、米国特許第5683366号に示されており、その完全な開示が、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0151】
本発明の別の利点は、基礎および周囲の組織、神経(例えば視神経)または骨に壊死または熱損傷を生じることなく、鼻甲介内に正確に溝または孔を剥離形成することができる点である。さらに、組織部位に与えられるエネルギーが骨または脂肪組織(標的副鼻腔組織より一般的にいってインピーダンスが高い)を剥離するには不充分であるように、電圧を制御することができる。このように、外科医は、骨を剥離したりその他の重大な損傷を与えることなく、文字どおり骨から組織を取り除ける。
【符号の説明】
【0152】
90 プローブ
100 シャフト
102 電極支持材
104 電極端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子が窩腔内で標的組織に隣接する位置に置かれるように患者頭部の開口から電極端子を導入する工程と、
電極端子を導電性流体で実質的に取り囲むために窩腔に導電性流体を送る工程と、
組織の少なくとも一部を除去するのに充分な高周波電圧を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、患者の鼻の窩腔内の標的部位の組織を治療するための方法。
【請求項2】
組織が患者の鼻腔または副鼻腔内の遮断から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遮断が、腫脹した組織、鼻甲介、ポリープ、新生物および鼻腔の内面の腫脹した粘膜から成るグループに属する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、帰還電極と電極端子の間に電流の流路を作るために帰還電極を通るように導電性流体を送る工程を含み、高周波電圧が、除去工程中組織内で切断された血管の止血を行うのに充分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
電極端子が、シャフトの遠位端の単一の活性電極から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電極端子が、シャフトの遠位端の電気的に隔離された複数の電極端子から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、除去工程中標的部位から流体を吸引する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、電極端子と帰還電極の間のインピーダンスに基づき電極端子の少なくとも2つからの電流の流れを別個に制御する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
さらに、電極端子と標的部位の組織の間の流体の少なくとも一部を気化するために導電性流体が存在する状態で電極端子に充分な電圧を加え、気化した流体から組織へ荷電粒子を加速させて、組織構造内の分子結合を解離させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、副鼻腔を拡大して副鼻腔の通気を増大するために副鼻腔の自然の口の周りの組織を除去する工程を含む、窩腔が副鼻腔である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組織構造を見るために患者の鼻腔に内視鏡を導入する工程と、
組織構造に隣接して鼻腔に電極端子を導入する工程と、
組織構造と電極端子の間に導電性流体を塗布する工程と、
電極端子と帰還電極の間に組織構造を修正するのに充分な高周波電位差を加える工程と、
から成る、内視鏡副鼻腔手術の方法。
【請求項12】
電位差が、組織構造内の膠原線維を収縮するのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電位差が、組織構造の一部を除去または剥離するのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
電位差が、組織構造の分子解離を生じるのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
電位差が、組織構造の一部が除去されるとき切断された血管を焼灼し封止するのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
導電性流体がゲルである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
近位端部および遠位端部を持ち、遠位端部が鼻孔から鼻腔に通せるサイズであるシャフトを持つ電気外科用プローブと、
シャフトの遠位端部近くに配置される電極端子と、
電気端子を高周波電源に電気結合するためにシャフトの近位端近くにあるコネクタと、
高周波電源に電気結合されるのに適する帰還電極と、
帰還電極と電極端子の間の電流の流路を作るために帰還電極および電極端子と電気接触する流体経路を形成する流体供給エレメントと、
から成る、患者の鼻の窩腔内の標的部位の組織に電気エネルギーを与えるための装置。
【請求項18】
シャフトの遠位端部が患者の副鼻腔に通せるサイズである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
シャフトの遠位端部の直径が2mm未満である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
シャフトの遠位端部の直径が1mm未満である、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
帰還電極がシャフトの一部を形成する、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
さらに、帰還電極と電極端子の間に配置される絶縁材を含み、電極端子が体構造のごく近くにまたはこれに一部接触して置かれるとき帰還電極と標的部位の体構造の直接接触を最小限に抑えるために、帰還電極が電極端子から充分に間隔を置いて配置される、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
帰還電極が管状材であり、流体供給エレメントが帰還電極に連結される軸方向のルーメンから成り、軸方向のルーメンが流体経路の少なくとも一部を形成して、電極端子と流体連絡する出口を持つ、請求項17に記載の装置。
【請求項24】
流体供給エレメントが、シャフトの外面に沿って伸びる流体チューブから成り、チューブが帰還電極の近くに配置される入口を持ち、帰還電極が電極端子から近位方向に間隔を置いて配置される、請求項17に記載の装置。
【請求項25】
流体供給エレメントが、電気外科用プローブとは別個の流体供給器具から成る、請求項17に記載の装置。
【請求項26】
電極端子が、シャフトの遠位端近くに配置される電極配列から成り、配列が接触面全体に配置される電気的に隔離された複数の電極端子を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項27】
電極端子が、シャフトの遠位端近くに配置される単一の活性電極から成る、請求項17に記載の装置。
【請求項28】
さらに、標的部位から流体を吸引するための流体吸引エレメントを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項29】
流体吸引装置が、シャフトの中を伸びる吸込みルーメンから成り、吸込みルーメンが、電極端子に隣接するシャフトの遠位先端に入口を持つ、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
シャフトが、近位ハンドルおよび患者の鼻孔から鼻腔に通せるサイズの細長い遠位部を含み、細長い遠位部が近位ハンドルの軸からずれる、請求項17に記載の装置。
【請求項31】
高周波電源と、
近位端部および遠位端部を持つシャフト、遠位端部に配置される電極端子、および電極端子を電気外科用電源に電気結合するシャフト近位端部近くのコネクタから成り、シャフトの遠位端部が患者の頭部の開口に通せるサイズである電気外科用プローブと、
電気外科用電源に電気結合される帰還電極と、
導電性流体が帰路電源と電極端子の間に電流の流路を作るように導電性流体を標的部位に送るための導電性流体供給と、
患者の頭部の開口から導入するために構成されるシャフトおよび標的部位を見るためのレンズを持つ内視鏡と、
から成る、内視鏡副鼻腔手術用のシステム。
【請求項32】
帰還電極が、電気外科用プローブ上に、電極端子から近位方向に間隔を置いて配置される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
内視鏡が電気外科用消息使途別個の器具であり、プローブの遠位端部と内視鏡のシャフトが患者の同じ鼻孔から鼻腔に導入できるサイズである、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
電極端子を患者の頭部の開口から鼻腔に導入する工程と、 電極端子を副鼻腔に連結される管腔に前進させる工程と、
管腔内の閉塞媒体の少なくとも一部を除去するために電極端子に充分な高周波電圧を加える工程と、
から成る、患者の鼻内の管腔の組織を治療するための方法。
【請求項35】
さらに、閉塞媒体の少なくとも一部の分子解離を生じるために充分な高周波電圧を電極に加える工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
さらに、固体閉塞媒体分子を凝結不能の気体に変換するために充分な高周波電圧を電極端子に加える工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
近位端部および遠位端部を持つシャフトを持ち、遠位端部が患者の鼻内の副鼻腔に連結される通路を通せるサイズである、電気外科用カテーテルと、
カテーテル本体の遠位部に配置される電極端子と、
カテーテル本体上に配置される帰還電極と、
電極端子および帰還電極を高周波電気エネルギー源に結合するためにカテーテル本体全体に伸びる1つまたはそれ以上のコネクタと、
から成り、
電極端子が通路内の閉塞媒体に隣接する位置に置かれ、電極端子および帰還電極に充分な高周波電圧が加えられるとき、電流が電極端子から閉塞媒体領域を通って帰還電極にまで流れるように、帰還電極が電極端子から間隔を置いて配置される、
患者の鼻内の標的部位の組織に電気エネルギーを与えるための装置。
【請求項38】
シャフトの遠位端部が、患者の鼻腔を副鼻腔と接続する管腔を通せるサイズであり、副鼻腔が、前頭洞、蝶形骨洞、上顎洞および篩骨洞から成るグループに属する、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
シャフトの遠位端部の直径が0.5mm未満である、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
遠位部および近位部を持ち、遠位端部が患者の鼻内の副鼻腔に連結される通路に導入できるサイズであるカテーテル本体と、
カテーテル本体の遠位部に配置される電極端子と、
通路内の閉塞媒体を量的に除去するために充分な高周波電圧を電極端子に加えるために電極端子に結合される高周波電源と、
から成る、患者の鼻内の通路の開通性を維持するためのカテーテル・システム。
【請求項41】
電源が、閉塞媒体の少なくとも一部の分子解離を生じるのに充分な電圧を電極端子に加える、請求項40に記載のカテーテル・システム。
【請求項42】
電極端子を膨大した体構造に隣接する位置に置く工程と、 体構造の少なくとも一部を量的に除去するために充分な高周波電圧を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、膨大した体構造のサイズを縮小するための方法。
【請求項43】
膨大した体構造が、患者の鼻内の鼻甲介である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
さらに、鼻甲介の除去された部分によって開けられたスペースまで少なくとも電極端子の遠位端を前進させる工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
さらに、スペースの周りに瘢痕を形成するために体構造に熱エネルギーを与える工程を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
さらに、体構造の少なくとも一部に孔を形成するために電極端子を軸方向に並進させる工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
さらに、体構造の外面に沿って溝を形成するために体構造に対して横に電極端子を並進させる工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
鼻甲介に接触させてまたはそのごく近くに電極端子を配置する工程と、
鼻甲介内に空隙を形成するために充分な高周波電位差を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、鼻甲介を治療するための方法。
【請求項49】
近位端部および遠位端部を持つシャフトおよびシャフトの遠位端部付近に配置される電極端子を持つ、器具と、
帰還電極と、
膨大した体構造の少なくとも一部を量的に除去して膨大した体構造のサイズを縮小するために充分な電位差を電極端子と帰還電極の間に加えるために電極端子および帰還電極に結合される高周波電源と、
から成る、患者の体内または体上の標的部位の膨大した体構造に電気エネルギーを与えるための装置。
【請求項50】
さらに、帰還電極と電極端子の間に電流の流路を作るために帰還電極および電極端子と電気接触する流体経路を形成する流体供給エレメントを含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
シャフトの遠位端部が、患者の副鼻腔に通せるサイズである、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
シャフトの遠位端部の直径が1mm未満である、請求項49に記載の装置。
【請求項53】
帰還電極が、シャフトの一部を構成する、請求項49に記載の装置。
【請求項54】
さらに、帰還電極と電極端子の間に配置される絶縁材を含み、電極端子が体構造に隣接してまたはこれと一部接触して配置されるとき帰還電極と標的部位の体構造の直接接触を最小限に抑えるために、帰還電極が電極端子から充分な間隔を置いて配置される、請求項49に記載の装置。
【請求項55】
帰還電極が管状材であり、流体供給エレメントが帰還電極に連結される軸方向ルーメンから成り、軸方向ルーメンが流体経路の少なくとも一部を形成し、電極端子と流体連絡する出口を持つ、請求項49に記載の装置。
【請求項56】
患者の頭部の開口から患者の口内の標的部位まで電極端子および帰還電極を導入する工程と、
標的部位の閉塞組織をその場で除去するために充分な高周波電位差を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、閉塞性睡眠障害を治療するための方法。
【請求項57】
さらに、閉塞組織の少なくとも一部の分子解離を生じるために充分な高周波電位差を電極端子と帰還電極の間に加える工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
さらに、固体組織細胞分子を凝結不能な気体に変換するために充分な高周波電位差を加える工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
患者頭部の開口から患者の口内の標的部位に電極端子を導入する工程と、
電極端子が導電性流体に実質的に取り囲まれ、導電性流体が電極端子と標的部位の閉塞組織の間に存在するように、標的部位に導電性流体を送る工程と、
標的部位の閉塞組織をその場で除去するために充分な高周波電圧を電極端子に加える工程と、
から成る、閉塞性睡眠障害を治療するための方法。
【請求項60】
閉塞組織が、口蓋垂、扁桃、軟口蓋、舌およびアデノイドのうち1つまたはそれ以上に属するものである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
近位端部および遠位端部を持つシャフトを持ち、遠位端部が患者頭部の開口から口に通せるサイズである、電気外科用器具と、
シャフトの遠位端部に配置される少なくとも1つの電極端子から成り、組織を切断するために実質的に線形の形態を持ち、かつ患者の口内の切断された組織を凝結するのに充分な露出面積を持つ、電極アセンブリと、
シャフト上に、電極端子から間隔を置いて配置される帰還電極と、
電極端子および帰還電極を高周波電気エネルギー源に結合するためにカテーテル本体に伸びる1つまたはそれ以上のコネクタと、
から成る、閉塞性睡眠障害を治療するための装置。
【請求項62】
電極アセンブリが、線形の切断経路を形成するように、シャフトの遠位端から伸びるループ状の単一の電極端子から成る、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
電極アセンブリが、少なくとも2つの電極端子から成り、各電極端子がシャフトの遠位端から伸びるループ状であり、線形の切断経路を形成するためにループが相互に整合している、請求項61に記載の装置。
【請求項64】
組織が扁桃である、請求項61に記載の装置。
【請求項1】
電極端子が窩腔内で標的組織に隣接する位置に置かれるように患者頭部の開口から電極端子を導入する工程と、
電極端子を導電性流体で実質的に取り囲むために窩腔に導電性流体を送る工程と、
組織の少なくとも一部を除去するのに充分な高周波電圧を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、患者の鼻の窩腔内の標的部位の組織を治療するための方法。
【請求項2】
組織が患者の鼻腔または副鼻腔内の遮断から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遮断が、腫脹した組織、鼻甲介、ポリープ、新生物および鼻腔の内面の腫脹した粘膜から成るグループに属する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、帰還電極と電極端子の間に電流の流路を作るために帰還電極を通るように導電性流体を送る工程を含み、高周波電圧が、除去工程中組織内で切断された血管の止血を行うのに充分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
電極端子が、シャフトの遠位端の単一の活性電極から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電極端子が、シャフトの遠位端の電気的に隔離された複数の電極端子から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、除去工程中標的部位から流体を吸引する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、電極端子と帰還電極の間のインピーダンスに基づき電極端子の少なくとも2つからの電流の流れを別個に制御する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
さらに、電極端子と標的部位の組織の間の流体の少なくとも一部を気化するために導電性流体が存在する状態で電極端子に充分な電圧を加え、気化した流体から組織へ荷電粒子を加速させて、組織構造内の分子結合を解離させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、副鼻腔を拡大して副鼻腔の通気を増大するために副鼻腔の自然の口の周りの組織を除去する工程を含む、窩腔が副鼻腔である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組織構造を見るために患者の鼻腔に内視鏡を導入する工程と、
組織構造に隣接して鼻腔に電極端子を導入する工程と、
組織構造と電極端子の間に導電性流体を塗布する工程と、
電極端子と帰還電極の間に組織構造を修正するのに充分な高周波電位差を加える工程と、
から成る、内視鏡副鼻腔手術の方法。
【請求項12】
電位差が、組織構造内の膠原線維を収縮するのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電位差が、組織構造の一部を除去または剥離するのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
電位差が、組織構造の分子解離を生じるのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
電位差が、組織構造の一部が除去されるとき切断された血管を焼灼し封止するのに充分である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
導電性流体がゲルである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
近位端部および遠位端部を持ち、遠位端部が鼻孔から鼻腔に通せるサイズであるシャフトを持つ電気外科用プローブと、
シャフトの遠位端部近くに配置される電極端子と、
電気端子を高周波電源に電気結合するためにシャフトの近位端近くにあるコネクタと、
高周波電源に電気結合されるのに適する帰還電極と、
帰還電極と電極端子の間の電流の流路を作るために帰還電極および電極端子と電気接触する流体経路を形成する流体供給エレメントと、
から成る、患者の鼻の窩腔内の標的部位の組織に電気エネルギーを与えるための装置。
【請求項18】
シャフトの遠位端部が患者の副鼻腔に通せるサイズである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
シャフトの遠位端部の直径が2mm未満である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
シャフトの遠位端部の直径が1mm未満である、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
帰還電極がシャフトの一部を形成する、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
さらに、帰還電極と電極端子の間に配置される絶縁材を含み、電極端子が体構造のごく近くにまたはこれに一部接触して置かれるとき帰還電極と標的部位の体構造の直接接触を最小限に抑えるために、帰還電極が電極端子から充分に間隔を置いて配置される、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
帰還電極が管状材であり、流体供給エレメントが帰還電極に連結される軸方向のルーメンから成り、軸方向のルーメンが流体経路の少なくとも一部を形成して、電極端子と流体連絡する出口を持つ、請求項17に記載の装置。
【請求項24】
流体供給エレメントが、シャフトの外面に沿って伸びる流体チューブから成り、チューブが帰還電極の近くに配置される入口を持ち、帰還電極が電極端子から近位方向に間隔を置いて配置される、請求項17に記載の装置。
【請求項25】
流体供給エレメントが、電気外科用プローブとは別個の流体供給器具から成る、請求項17に記載の装置。
【請求項26】
電極端子が、シャフトの遠位端近くに配置される電極配列から成り、配列が接触面全体に配置される電気的に隔離された複数の電極端子を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項27】
電極端子が、シャフトの遠位端近くに配置される単一の活性電極から成る、請求項17に記載の装置。
【請求項28】
さらに、標的部位から流体を吸引するための流体吸引エレメントを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項29】
流体吸引装置が、シャフトの中を伸びる吸込みルーメンから成り、吸込みルーメンが、電極端子に隣接するシャフトの遠位先端に入口を持つ、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
シャフトが、近位ハンドルおよび患者の鼻孔から鼻腔に通せるサイズの細長い遠位部を含み、細長い遠位部が近位ハンドルの軸からずれる、請求項17に記載の装置。
【請求項31】
高周波電源と、
近位端部および遠位端部を持つシャフト、遠位端部に配置される電極端子、および電極端子を電気外科用電源に電気結合するシャフト近位端部近くのコネクタから成り、シャフトの遠位端部が患者の頭部の開口に通せるサイズである電気外科用プローブと、
電気外科用電源に電気結合される帰還電極と、
導電性流体が帰路電源と電極端子の間に電流の流路を作るように導電性流体を標的部位に送るための導電性流体供給と、
患者の頭部の開口から導入するために構成されるシャフトおよび標的部位を見るためのレンズを持つ内視鏡と、
から成る、内視鏡副鼻腔手術用のシステム。
【請求項32】
帰還電極が、電気外科用プローブ上に、電極端子から近位方向に間隔を置いて配置される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
内視鏡が電気外科用消息使途別個の器具であり、プローブの遠位端部と内視鏡のシャフトが患者の同じ鼻孔から鼻腔に導入できるサイズである、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
電極端子を患者の頭部の開口から鼻腔に導入する工程と、 電極端子を副鼻腔に連結される管腔に前進させる工程と、
管腔内の閉塞媒体の少なくとも一部を除去するために電極端子に充分な高周波電圧を加える工程と、
から成る、患者の鼻内の管腔の組織を治療するための方法。
【請求項35】
さらに、閉塞媒体の少なくとも一部の分子解離を生じるために充分な高周波電圧を電極に加える工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
さらに、固体閉塞媒体分子を凝結不能の気体に変換するために充分な高周波電圧を電極端子に加える工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
近位端部および遠位端部を持つシャフトを持ち、遠位端部が患者の鼻内の副鼻腔に連結される通路を通せるサイズである、電気外科用カテーテルと、
カテーテル本体の遠位部に配置される電極端子と、
カテーテル本体上に配置される帰還電極と、
電極端子および帰還電極を高周波電気エネルギー源に結合するためにカテーテル本体全体に伸びる1つまたはそれ以上のコネクタと、
から成り、
電極端子が通路内の閉塞媒体に隣接する位置に置かれ、電極端子および帰還電極に充分な高周波電圧が加えられるとき、電流が電極端子から閉塞媒体領域を通って帰還電極にまで流れるように、帰還電極が電極端子から間隔を置いて配置される、
患者の鼻内の標的部位の組織に電気エネルギーを与えるための装置。
【請求項38】
シャフトの遠位端部が、患者の鼻腔を副鼻腔と接続する管腔を通せるサイズであり、副鼻腔が、前頭洞、蝶形骨洞、上顎洞および篩骨洞から成るグループに属する、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
シャフトの遠位端部の直径が0.5mm未満である、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
遠位部および近位部を持ち、遠位端部が患者の鼻内の副鼻腔に連結される通路に導入できるサイズであるカテーテル本体と、
カテーテル本体の遠位部に配置される電極端子と、
通路内の閉塞媒体を量的に除去するために充分な高周波電圧を電極端子に加えるために電極端子に結合される高周波電源と、
から成る、患者の鼻内の通路の開通性を維持するためのカテーテル・システム。
【請求項41】
電源が、閉塞媒体の少なくとも一部の分子解離を生じるのに充分な電圧を電極端子に加える、請求項40に記載のカテーテル・システム。
【請求項42】
電極端子を膨大した体構造に隣接する位置に置く工程と、 体構造の少なくとも一部を量的に除去するために充分な高周波電圧を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、膨大した体構造のサイズを縮小するための方法。
【請求項43】
膨大した体構造が、患者の鼻内の鼻甲介である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
さらに、鼻甲介の除去された部分によって開けられたスペースまで少なくとも電極端子の遠位端を前進させる工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
さらに、スペースの周りに瘢痕を形成するために体構造に熱エネルギーを与える工程を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
さらに、体構造の少なくとも一部に孔を形成するために電極端子を軸方向に並進させる工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
さらに、体構造の外面に沿って溝を形成するために体構造に対して横に電極端子を並進させる工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
鼻甲介に接触させてまたはそのごく近くに電極端子を配置する工程と、
鼻甲介内に空隙を形成するために充分な高周波電位差を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、鼻甲介を治療するための方法。
【請求項49】
近位端部および遠位端部を持つシャフトおよびシャフトの遠位端部付近に配置される電極端子を持つ、器具と、
帰還電極と、
膨大した体構造の少なくとも一部を量的に除去して膨大した体構造のサイズを縮小するために充分な電位差を電極端子と帰還電極の間に加えるために電極端子および帰還電極に結合される高周波電源と、
から成る、患者の体内または体上の標的部位の膨大した体構造に電気エネルギーを与えるための装置。
【請求項50】
さらに、帰還電極と電極端子の間に電流の流路を作るために帰還電極および電極端子と電気接触する流体経路を形成する流体供給エレメントを含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
シャフトの遠位端部が、患者の副鼻腔に通せるサイズである、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
シャフトの遠位端部の直径が1mm未満である、請求項49に記載の装置。
【請求項53】
帰還電極が、シャフトの一部を構成する、請求項49に記載の装置。
【請求項54】
さらに、帰還電極と電極端子の間に配置される絶縁材を含み、電極端子が体構造に隣接してまたはこれと一部接触して配置されるとき帰還電極と標的部位の体構造の直接接触を最小限に抑えるために、帰還電極が電極端子から充分な間隔を置いて配置される、請求項49に記載の装置。
【請求項55】
帰還電極が管状材であり、流体供給エレメントが帰還電極に連結される軸方向ルーメンから成り、軸方向ルーメンが流体経路の少なくとも一部を形成し、電極端子と流体連絡する出口を持つ、請求項49に記載の装置。
【請求項56】
患者の頭部の開口から患者の口内の標的部位まで電極端子および帰還電極を導入する工程と、
標的部位の閉塞組織をその場で除去するために充分な高周波電位差を電極端子と帰還電極の間に加える工程と、
から成る、閉塞性睡眠障害を治療するための方法。
【請求項57】
さらに、閉塞組織の少なくとも一部の分子解離を生じるために充分な高周波電位差を電極端子と帰還電極の間に加える工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
さらに、固体組織細胞分子を凝結不能な気体に変換するために充分な高周波電位差を加える工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
患者頭部の開口から患者の口内の標的部位に電極端子を導入する工程と、
電極端子が導電性流体に実質的に取り囲まれ、導電性流体が電極端子と標的部位の閉塞組織の間に存在するように、標的部位に導電性流体を送る工程と、
標的部位の閉塞組織をその場で除去するために充分な高周波電圧を電極端子に加える工程と、
から成る、閉塞性睡眠障害を治療するための方法。
【請求項60】
閉塞組織が、口蓋垂、扁桃、軟口蓋、舌およびアデノイドのうち1つまたはそれ以上に属するものである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
近位端部および遠位端部を持つシャフトを持ち、遠位端部が患者頭部の開口から口に通せるサイズである、電気外科用器具と、
シャフトの遠位端部に配置される少なくとも1つの電極端子から成り、組織を切断するために実質的に線形の形態を持ち、かつ患者の口内の切断された組織を凝結するのに充分な露出面積を持つ、電極アセンブリと、
シャフト上に、電極端子から間隔を置いて配置される帰還電極と、
電極端子および帰還電極を高周波電気エネルギー源に結合するためにカテーテル本体に伸びる1つまたはそれ以上のコネクタと、
から成る、閉塞性睡眠障害を治療するための装置。
【請求項62】
電極アセンブリが、線形の切断経路を形成するように、シャフトの遠位端から伸びるループ状の単一の電極端子から成る、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
電極アセンブリが、少なくとも2つの電極端子から成り、各電極端子がシャフトの遠位端から伸びるループ状であり、線形の切断経路を形成するためにループが相互に整合している、請求項61に記載の装置。
【請求項64】
組織が扁桃である、請求項61に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【公開番号】特開2011−45756(P2011−45756A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−258819(P2010−258819)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2000−538642(P2000−538642)の分割
【原出願日】平成10年12月14日(1998.12.14)
【出願人】(599126763)アースロケア コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258819(P2010−258819)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2000−538642(P2000−538642)の分割
【原出願日】平成10年12月14日(1998.12.14)
【出願人】(599126763)アースロケア コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
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