説明

頭飾品

【課題】 難燃性ポリエステル繊維、難燃性ポリプロピレン繊維、難燃性ポリアミド繊維等に滑り触感や風合いの改善等を目的として非架橋性シロキサン系繊維処理剤で処理した場合の様に、繊維処理剤の脱落による滑り触感、風合いの低下が起きず、優れた滑り触感、櫛通り性の耐久性、耐シャンプー性を有し、優れた難燃性を有する頭飾品を提供する。
【解決手段】 本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、難燃剤を溶融混練して得られる難燃化ポリエステル繊維、難燃化ポリプロピレン繊維、難燃化ポリアミド繊維等に、反応性有機ケイ素化合物を含むポリオルガノシロキサン系繊維処理剤を付着し、90〜180℃の温度にて120〜5分間スタイルセット処理を行うことにより、滑り触感、櫛通り性、帯電防止性、耐シャンプー性、難燃性の優れた頭飾品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り触感、くし通り性、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の優れた頭飾品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かつらやヘアーウィッグ、ヘアーピース等、頭飾品に用いる人工毛髪として種々の合成繊維のフィラメントが用いられている。そして、このような人工毛髪用の合成繊維フィラメントの材料としては、塩化ビニル、モダアクリル、ポリエステル、ナイロン等が広く用いられている。ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維等は、そのまま人工毛髪として使用すると難燃性が不十分である。
【0003】
これらの合成繊維の難燃性を向上させようとする試みは種々なされており、例えば、ポリエステル樹脂にリン原子を含有する難燃モノマーを共重合する方法や、ポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法などが知られている。前者の難燃モノマーを共重合する方法としては、例えば、リン原子が環員子となっていて熱安定性の良好なリン化合物を共重合する方法、また、カルボキシホスフィン酸を共重合する方法、ポリアリレートを含むポリエステルにリン化合物を配合又は共重合する方法が提案されている。一方、後者の難燃剤を含有させる方法としては、微粒子のハロゲン化シクロアルカン化合物をポリエステル繊維に含有させる方法、また、臭素原子含有アルキルシクロヘキサンを含有させる方法などが提案されている。
【0004】
これらの難燃化技術を人工毛髪に適用したものとしては、例えば、リン化合物を共重合したポリエステル繊維が提案されている。しかしながら、人工毛髪には高い耐燃性が要求されるため、これらの共重合ポリエステルを人工毛髪に使用するためにはその共重合量を多くしなければならず、その結果、ポリエステルの耐熱性が大幅に低下し、溶融紡糸が困難になったり、火炎が接近した場合、着火し燃焼はしないが、溶融しドリップしたりするという問題が発生する。
【0005】
ポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法では、十分な難燃性を得るために、含有処理温度を150℃以上の高温にすることが必要である、含有処理時間を長時間にする必要がある、大量の難燃剤を使用しなければならないといった課題があり、繊維物性の低下や生産性の低下、製造コストアップなどの問題が発生する。
【0006】
上記のような難燃性・非難燃性の合成繊維に対して柔軟性、滑り触感等を付与するために、種々のポリオルガノシロキサン系繊維処理剤が提供されてきた。例えば、ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリオルガノシロキサン、アルコキシ変性ポリオルガノシロキサン等が一般的に用いられるが、これらのシロキサン系繊維処理剤は繊維から脱落しやすく、(触感、風合い等の)耐久性、耐洗濯性において充分であるとはいえない。
【0007】
一方、柔軟性、平滑性、反発弾性、耐洗濯性等を付与するため、シロキサン系繊維処理剤を繊維に付着させ、架橋反応させる方法が報告されている。例えば、ポリエステル繊維製の詰め綿にアミノ基含有ポリオルガノシロキサンおよびビニル基含有シラン等を付着させて処理する方法(特許文献1)、アミノ基含有ポリオルガノシロキサン、アミノ基非含有ポリオルガノシロキサンおよびアミノメトキシシランを塗布して処理する方法(特許文献2)等である。
【0008】
しかし、これらのポリオルガノシロキサン系含有繊維処理剤を付着した繊維は、滑り触感、櫛通り等の改善はなされるものの、シロキサン系繊維処理剤自体が易燃性であるため、最終製品が強い易燃性を示し、着火した場合、火災、火傷などを生じる問題がある。
【特許文献1】特開平7−70938号公報
【特許文献2】特開2000−303364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
難燃性ポリエステル繊維、難燃性ポリプロピレン繊維、難燃性ポリアミド繊維等を非架橋性シロキサン系繊維処理剤で処理した場合のように、該繊維処理剤の脱落による滑り触感、風合いの低下が起きないで、優れた滑り触感、櫛通り性の耐久性、耐シャンプー性を有し、優れた難燃性を有する頭飾品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、臭素含有および/またはリン含有難燃剤を溶融混練して得られる難燃化ポリエステル繊維、難燃化ポリプロピレン繊維、難燃化ポリアミド繊維等に対して、特定の反応性有機ケイ素化合物を含むポリオルガノシロキサン系繊維処理剤を付着させ、90℃〜180℃の温度にて120〜5分間スタイルセット処理を行うことにより、滑り触感、櫛通り性、帯電防止性、難燃性の優れた頭飾品を得ることができることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、難燃性熱可塑性繊維からなる頭飾品をスタイルセット処理する際に、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)を付着させ、90℃〜180℃の温度にて120〜5分間スタイルセット処理を行うことにより得られる頭飾品に関するものである。好ましい態様としては、難燃性人工毛髪用繊維に対して、反応性有機ケイ素化合物を含有する繊維処理剤(C)を0.01〜1.00%omf付着させてなる、頭飾品である。より好ましい態様としては、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、臭素含有および/またはリン含有難燃剤(B)を5〜30重量部を溶融混練して得られる難燃性人工毛髪繊維からなる頭飾品であり、熱可塑性樹脂(A)は、ポリアルキレンテレフタレート、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種であり、臭素含有および/またはリン含有難燃剤(B)は、脂環式臭素化合物、芳香族臭素化合物、臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化フェノール類またはその誘導体、臭素化エポキシ類、臭素化イミド化合物、含臭素化合物のオリゴマー、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、ホスフェート系化合物、ホスフォネート系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィン系化合物および縮合リン酸エステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0012】
好ましい態様としては、反応性有機ケイ素化合物を含有する繊維処理剤(C)中の反応性有機ケイ素化合物は、反応性有機ケイ素化合物が、アミノ変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンおよびエーテル変性ポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種である、頭飾品である。より好ましい態様としては、反応性有機ケイ素化合物を含有する繊維処理剤(C)が、反応性有機ケイ素化合物100重量部に対して、硬化剤を1〜30重量部含有し、硬化剤がアミノアルコキシシランである、頭飾品である。さらに好ましい態様としては、反応性有機ケイ素化合物を含有する繊維処理剤(C)中の反応性有機ケイ素化合物が、アミノ基、エポキシ基またはエーテル基の他に、分子中の少なくとも1つ以上のケイ素原子にアルコキシル基および/または水酸基が結合している、頭飾品である。
【0013】
本発明の頭飾品は、ウィービング、ウィッグ、かつら、およびヘアーアクセサリーよりなる群から選ばれた1種である頭飾品に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤の硬化条件を十分に確保することができ、ポリオルガノシロキサン系繊維処理剤特有の滑り触感、櫛通り性、帯電防止性、難燃性、(触感、風合い等の)耐久性、耐シャンプー性の優れた頭飾品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、難燃性人工毛髪用繊維からなる頭飾品をスタイルセット処理する直前に、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)を付着させ、90〜180℃の温度にて120分〜5分間の条件にてスタイルセット処理を行うことにより得られる頭飾品に関するものである。
【0016】
本発明における難燃性人工毛髪用繊維は、熱可塑性樹脂(A)に対し、臭素含有難燃剤および/またはリン含有難燃剤(B)を溶融混練して得られる組成物から形成される難燃性人工毛髪用繊維である。
【0017】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)としては特に限定はなく、10〜100dtexの人工毛髪繊維を紡糸するのに適する樹脂であればよい。熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリエチレンテレフテレート、ポリトリメチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフテレートなどのポリアルキレンテレフタレート;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;6−ナイロン、6,6−ナイロンなどのポリアミドなどがあげられ、それらは単独構成のポリマーである必要はなく、ブレンドポリマーや共重合ポリマーであってもよい。
【0018】
本発明に用いられる臭素含有および/またはリン含有難燃剤(B)には特に限定はなく、一般的に用いられている臭素含有難燃剤またはリン含有難燃剤であれば使用することができる。
【0019】
本発明において使用されるリン含有難燃剤の具体例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリネフチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどの他、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(4−ヒドロキシブチル)ホスフィン、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、トリス(3−ヒドロキシブチル)ホスフィンオキシド、3−(ヒドロキシフェニルホスフィノイル)プロピオン酸などがあげられる。
【0020】
本発明において使用される臭素含有難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの臭素含有リン酸エステル類、臭素化ポリスチレン類、臭素化ポリベンジルアクリレート類、臭素化エポキシオリゴマー類、臭素化ポリカーボネートオリゴマー類、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA誘導体、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンなどの臭素含有トリアジン系化合物、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素含有イソシアヌル酸系化合物などが挙げられる。
【0021】
これらのうちでも、脂環式臭素化合物、芳香族臭素化合物、臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化フェノール類またはその誘導体、臭素化エポキシ類、臭素化イミド化合物、含臭素化合物のオリゴマー、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレートおよび縮合リン酸エステル系化合物が、付与できる難燃性のレベル、紡糸性、得られる繊維の発色等の点から好ましい。
【0022】
本発明における臭素含有難燃剤および/またはリン含有難燃剤(B)の下限使用量は、難燃性を確保するために、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以上がより好ましく、充分な難燃性を得るためには10重量部以上がさらに好ましく、ケイ素含有繊維処理剤を用いる場合、難燃性が著しく低下することから、難燃剤は15重量部以上が特に好ましい。難燃剤(B)の上限使用量としては、紡糸性、得られる繊維の触感の悪化を防ぐために、30重量部が好ましく、28重量部がより好ましく、25重量部がさらに好ましい。臭素含有難燃剤を用いる場合は、さらに、アンチモン化合物などの難燃助剤を0.5〜10重量部配合することが好ましい。
【0023】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、難燃剤相と熱可塑性樹脂相との間の不透明化を防ぐために、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体−g−ポリメチルメタクリレート、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体−g−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体−g−ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体−g−アクリロニトリル−スチレン共重合体、モンタン酸系ワックス、モンタン酸エステル系ワックス、部分ケン化モンタン酸系ワックス、モンタン酸金属塩、ポリエチレン系ワックス、酸化ポリエチレン系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素変性ワックス、ポリジメチルシリコーン、変性シリコーンレジンの1種以上からなる添加剤を添加してもよい。
【0024】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、繊維表面に微細な突起を形成させて繊維表面の光沢を調整するために、さらに、有機微粒子(D)および/または無機微粒子(E)を混合させてもよい。有機微粒子の具体例としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、フッ素樹脂、シロキサン樹脂、架橋メラミン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン等があげられ、無機微粒子の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカ等があげられる。これらは、1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明における有機微粒子(D)および/または無機微粒子(E)の平均粒子径は、0.1〜15umが好ましく、0.2〜10μmがより好ましく、0.5〜8umがさらに好ましい。粒子径が0.1μmより小さい場合には、光沢調整効果が小さい傾向があり、粒子径が15μmより大きい場合には、光沢調整効果が小さくなったり、糸切れが発生したりする傾向がある。
【0026】
有機微粒子(D)および/または無機微粒子(E)の使用量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜5重量部であるのが好ましく、0.2〜3重量部がより好ましく、0.3〜2重量部がさらに好ましい。有機微粒子(C)および/または無機微粒子(D)の使用量が5重量部より多いと、外観性、色相、発色性が損なわれる傾向があり、0.1重量部より少ないと、繊維表面に形成される微細な突起が少なくなるため、繊維表面の光沢調整が不十分になる傾向がある。
【0027】
本発明の難燃性人工毛髪用繊維は、例えば、熱可塑性樹脂(A)、臭素含有および/またはリン含有難燃剤(B)、等をドライブレンドした後、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの一般的な混練機を用いて溶融混練して得られる組成物を、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより、製造することができる。
【0028】
すなわち、例えば、溶融紡糸機を用いて、押出機、ギアポンプ、口金などの設定温度を270〜310℃として溶融紡糸を行い、得られた紡出糸条を加熱筒中を通過させた後、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸条が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間、引取速度は、吐出量および口金の孔数によって適宜調整することができる。また、必要に応じて、紡出糸条に触感や風合いを付与するための繊維処理剤、柔軟剤等を所望の付着量となるように水で希釈したものを付着させ、乾燥させた後、加熱処理することもできる。
【0029】
得られた未延伸糸は熱延伸されるが、延伸は未延伸糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法および巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。熱延伸は、1段延伸法または2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
【0030】
本発明の難燃性人工毛髪用繊維には、必要に応じて、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤などの各種添加剤を含有させることができる。顔料を含有させることにより、原着繊維を得ることができる。
【0031】
本発明の難燃性人工毛髪用繊維が原着されている場合、そのまま使用することができるが、原着されていない場合、通常の難燃性熱可塑性繊維と同様の条件で染色することができる。
染色に使用される顔料、染料、助剤などとしては、耐候性および難燃性のよいものが好ましい。
【0032】
本発明の難燃性人工毛髪用繊維の繊維断面の形状としては、少ない繊維処理剤添付量で良好な滑り触感、櫛通り性等が付与できると言う点で、2つ以上の円に近い突起を持つような断面形状(例えば、メガネ断面、クローバー断面、四つ葉のクローバー断面、等)であることが好ましい。
【0033】
本発明の人工毛髪用繊維は、美容熱器具(ヘアーアイロン)を用いたカールセット性に優れ、カールの保持性にも優れる。また、繊維表面の凹凸により、適度に艶消されており、人工毛髪として使用することができる。さらに、繊維表面処理剤、柔軟剤などの油剤を使用することにより、触感、風合を付与して、より人毛に近づけることができる。
【0034】
本発明の人工毛髪用繊維を加工した頭飾品としては、具体的には、例えば、ウィッグ、ツーぺ、ウィービング、ヘアーエクステンション、ヘアーアクセサリー等の頭飾品が例示できる。
【0035】
ウィッグとは、婦人用、紳士用を問わず、頭部に面で取り付けられる、主におしゃれを楽しむための装飾品であり、その装着面積によって部分ウィッグ、ハーフウィッグ、七分ウィッグ、フルウィッグに分けられる。
【0036】
一方、ヘアーアクセサリーとは、自毛や頭皮に取り付けるウィッグを除く装飾品の総称であり、例えば、ヘアーピンやヘアークリップなどを介して自毛に取り付け、自毛を長く見せるヘアーエクステンションや、頭皮に沿って網状に編んで自毛に縫い合わせたり、頭皮や自毛に接着剤等で主に帯状に取り付けたりするウィービング(単に繊維を束ねたものや、当業者では、一般にウェフトと呼ばれる繊維を腰蓑状に加工した繊維束、さらにそれらにカール形状を付与した装飾品)などが挙げられる。
【0037】
本発明の人工毛髪用繊維を用いて、これらの頭飾製品を加工する方法としては、公知の製法で行える。
【0038】
例えば、人工毛髪用繊維をウィッグに加工する場合、(1)上記人工毛髪用繊維を、ローラーカッター等を用いて所定の長さに切断し、重量を量る工程、(2)得られた繊維を解きほぐしながら色を混ぜ、長さを揃えて、繊維束を得る工程(ハックリング工程)、(3)得られた繊維束を、三連結ミシンを用いて、箕毛(ウェフト)に仕上げる工程(蓑毛縫製工程)、(4)得られた蓑毛を所定の長さに切断した後、必要に応じて、蓑毛の根元にボリュームを出したり、カールを立たせたりするために、蓑毛の根元に熱加工を施す工程(蓑毛切断工程)、(5)蓑毛にカールや件縮を付与して、目的のヘアースタイルにセットする工程(スタイルセット処理工程)、さらに、カールを付与された蓑毛をヘアーキャップに縫い付ける工程(ポスティング工程)、最終調整としてスタイルを整える工程を経ることにより、ウィッグに加工することができる。
【0039】
なお、スタイルセット処理工程としては、カールの強さに応じて選択された直径を有する金属パイプ等に蓑毛を巻き付けた状態で、熱風乾燥機中やスチーム中で加熱処理することにより、蓑毛にカールを付与したり、目的とする件縮ピッチに適した波形板やネット等に挟んだ状態で、熱風乾燥機中やスチーム中で加熱処理することにより、蓑毛に件縮を付与したりすることできるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明においては、前記難燃性人工毛髪用繊維に、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)を付着させ、乾燥させた後、加熱処理することにより、繊維表面に架橋被膜が形成されて、触感、くし通りの向上に加えて、触感、くし通りの持続性や耐シャンプー性を向上させることができる。
【0041】
従来、人工毛髪用繊維に対する反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系処理剤(C)の付着は、人工毛髪用繊維の製造工程(紡糸工程)において実施される場合が多かった。ところで、上記架橋皮膜を形成させるには、架橋反応を進行させ得るだけの熱量を供給することが必要であるため、人工毛髪用繊維の製造工程(紡糸工程)におけるポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)の付着処理には、設備的に、繊維処理剤の乾燥温度を高くし、かつ、分オーダーで加熱時間を確保するための非常に長い乾燥工程や、架橋反応の進行に十分な熱量を瞬時に与えることが可能な特殊な乾燥工程が必要であったり、紡糸工程のラインスピードを下げること等が必要であるため、コストアップや生産性の面で不利となるという問題点を有していた。
【0042】
これに対して、本発明では、難燃性人工毛髪用繊維へのポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)の付着を、頭飾品の製造工程におけるスタイルセット処理工程の直前に実施することにより、スタイルセット処理時の加熱を利用して、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)の架橋反応を進行させることができるため、生産性等を損なうことなく、頭飾品に対して、触感、くし通りの向上に加えて、触感、くし通りの持続性や耐シャンプー性を向上させることができる。
【0043】
本発明におけるスタイルセット処理時の加熱条件としては、処理温度が90〜180℃であり、処理時間が120〜5分間であることが好ましく、処理温度が100〜150℃であり、処理時間が80〜45分間であることがより好ましく、処理温度が110〜140℃であり、処理時間が70〜50分間であることがさらに好ましい。処理温度を高温とする場合には、処理時間は短くて良いが、逆に、処理温度を低温とする場合には理時間を長くして、スタイルセットと繊維処理剤の乾燥および架橋反応に充分な熱量を供給する必要がある。
【0044】
本発明のスタイルセット処理の処理温度が90℃より低い場合、または、処理時間が5分間より短い場合には、充分な架橋が得られない傾向がある。処理温度が180℃より高い場合には、ポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)が分解し、触感不良、静電気等の問題が生じる可能性がある。
【0045】
本発明のスタイルセット処理時の加熱方法としては、スタイルセット処理とポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)の乾燥および架橋反応を兼ねていれば、特に限定はなく、乾燥熱風、水蒸気加熱などがあげられる。
【0046】
本発明におけるポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)付着方法としては、オルガノシロキサン系繊維処理剤(E)を所望の付着量となるように水で希釈したものを、ディップ・ニップ法、スプレー塗布法、ピックアップローラー塗布法などにより、均一に付着できるならば、特に限定されない。
【0047】
本発明におけるポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)としては、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤である。反応性有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、アミノ変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン等があげられる。
【0048】
本発明におけるアミノ変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンの変性当量は、300〜10000g/eqが好ましく、付与できる触感や風合い、エマルジョン安定性のバランスの点から、1000〜8000g/eqがより好ましい。変性当量が300g/eqより小さくなると、触感が不充分となる傾向があり、10000g/eqより大きくなると、安定したエマルジョンを得られにくいなどの不具合が生じる可能性がある。
【0049】
本発明のポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)中の反応性有機ケイ素化合物の含有量は、ポリオルガノシロキサン系繊維処理剤全体を100重量%とした場合、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。反応性有機ケイ素化合物の含有量が70重量%未満では、形成される皮膜が不充分となり、滑り触感や櫛通りが不充分となる傾向がある。
【0050】
本発明のポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)として、変性ポリオルガノシロキサンを用いる場合、変性ポリオルガノシロキサンの反応を促進させるために、硬化剤として、1分子中にエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基よりなる群から選ばれる少なくとも2個の反応性基を有する化合物、シランカップリング剤、アルコキシシランなどを含有させることができる。それらの具体例としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどのエポキシ基を有する化合物;エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、パラキシリレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどのアミノ基を有する化合物;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート基を有する化合物;アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤などのシランカップリング剤;アミノメトキシシラン、アミノエトキシシランなどのアミノ変性アルコキシシランなどがあげられる。
【0051】
これらのうちでも、アミノメトキシシラン、アミノエトキシシラン等のアミノ変性アルコキシシランが、低温かつ短時間で架橋反応が進行しやすい点から、好ましい。
【0052】
本発明における硬化剤の含有量は、反応性有機ケイ素化合物100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましく、5〜15重量部がさらに好ましい。硬化剤の含有量が1重量部より少ないと反応促進の効果が得られない傾向があり、30重量部より多くなると触感に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0053】
本発明のポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)中の反応性有機ケイ素化合物としては、アミノ基、エポキシ基またはエーテル基の他に、少なくとも1つ以上のケイ素原子にアルコキシル基および/または水酸基が結合している化合物であることが、前述の硬化剤を用いなくとも、架橋反応が進行しうるために、好ましい。
【0054】
本発明における反応性有機ケイ素化合物中の、アミノ基、エポキシ基、エーテル基、アルコキシル基、水酸基等の反応性基以外の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基等があげられる。これらの有機基のうちでは、付与できる触感や風合いの点から、メチル基が好ましく、少なくとも50%以上がメチル基であることがより好ましい。
【0055】
本発明の反応性有機ケイ素化合物を含むポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)には、触感改良、帯電防止性を付与するために、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサンジオール、フロロシロキサン、アルキル変性シロキサン、高級脂肪酸変性シロキサン、等を含むことができるが、これに限定されるものではない。また、適度な湿潤性を付与するためにポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、これらのランダム共重合ポリエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエステルよりなる群から選択される少なくとも一種と、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン、アルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルアラルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルピコリニウム塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテルスルホコハク酸モノエステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩などを添加することもできる。
【0056】
本発明における反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)の付着量は、0.01〜1%omfが好ましく、0.03〜0.9%omfがより好ましく、0.05〜0.8%omfがさらに好ましい。ポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)の付着量が0.01%omf未満では、触感、くし通りが低下する傾向があり、1%omfを超えると、触感がべたついたり、繊維が滑りすぎたりする傾向がある。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
なお、特性値の測定法は、以下のとおりである。
【0059】
(滑り触感)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを手で触り、フィラメント表面のベタツキ感、滑り触感を評価した。
◎:非常に優れた滑り触感である
○:ベタツキ感がなく、程良い滑り触感である
△:若干ベタツキ感があり、滑り触感はやや不足である
×:ベタツキ感、キシミ感があり、滑り触感が不足である
【0060】
(くし通り)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントの最上部を片手に持って垂直に垂らし、くし(NEW DELRIN COMB No.826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを評価した。
◎:非常に優れた櫛通りである
○:ほとんど抵抗ない(軽い)
△:若干抵抗がある(重い)
×:かなり抵抗がある、または、完全に通過させることができず途中で引っかかる
【0061】
(帯電防止性)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを、室温25℃、湿度40%の恒温恒湿室に24時間放置した後に、同室にて、トウフィラメントの最上部を片手に持って垂直に垂らし、くし(NEW DELRIN COMB No.826)を0.3m/秒の速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させたときのトウフィラメントの状態を観察した。
○:変化なし(静電気で広がらない)
△:静電気で1〜50本が外側にはねる
×:静電気で全体的に広がる
【0062】
(限界酸素指数)
16cm/0.25gのフィラメントを秤量し、端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかける。十分に撚りがかかったら、試料の真中を二つに折り2本を撚り合わせる。端を粘着テープで止め、全長7cmになるようにする。105℃で60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥する。乾燥したサンプルを所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で上部より着火し、着火後点火器を離す。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を8回繰り返し、限界酸素指数とした。
【0063】
(耐シャンプー性)
長さ30cm、総繊度100万dtexのトウフィラメントの一方の端を、インシュロック(登録商標)を用いて固定する。得られたトウフィラメントを、エマール20C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製)10mlを2Lの湯(40℃)に添加して、30秒間もみ洗いを行なった。その後、40℃の湯で充分に濯ぎ、乾燥させた(シャンプー操作)。該シャンプー操作を5回繰り返した後のフィラメント束の触感を評価した。
○:滑り触感が頭飾品に要求されるレベルを維持している
×:(繊維処理剤が脱落し)触感が悪化している
【0064】
(難燃性)
長さ15cm、総繊度4.7万dtexのトウフィラメントの一方の端を、クランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らす。有効長12cm(クリップより下)に固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎させ、燃焼させ評価した。
◎:残炎時間が0秒(着火しない)
○:3秒未満
△:3〜10
×:10秒以上
【0065】
(耐ドリップ性)
繊度約50dtexのフィラメントを150mmの長さに切り、0.7gを束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らした。有効長120mmの固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎し、燃焼させ、消火するまでのドリップ数をカウントし、評価した。
◎:ドリップ数が0
○:ドリップ数5以下
△:ドリップ数6〜10
×:ドリップ数11以上
【0066】
(製造例1〜4)
表1に示す比率の組成物を、水分量100ppm以下に乾燥してドライブレンドした後、二軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX44)に供給し、シリンダ設定温度280℃にて溶融混練し、ペレット化した後に、水分量100ppm以下に乾燥させた。次いで、溶融紡糸機(シンコーマシナリー(株)製、SV30)を用いてシリンダ設定温度280℃にて、直径1mmφのノズル孔を40孔有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で延伸を行ない、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行ない、単繊維繊度が50dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
【0067】
【表1】

【0068】
*1:ポリエチレンテレフタレート、ユニチカ(株)製
*2:マラニールナイロン66 A226、ユニチカ(株)製
*3:ポリカーボネート A2500、出光石油化学(株)製
*4:縮合リン酸エステル系難燃剤、大八化学工業(株)製
*5:臭素化フェノキシ系難燃剤、阪本薬品工業(株)製
*6:臭素化エポキシ系難燃剤、阪本薬品工業(株)製
*7:アンチモン酸ソーダ、日本精鉱(株)製
*8:メラミン−シリカ複合粒子、日産化学(株)製
【0069】
(実施例1〜5)
表2に示した比率になるように繊維処理液を調製し、(製造例1)〜(製造例4)で得られた繊維を用いた総繊度100万dtexのトウフィラメントに、トウ重量に対して含液率25%になるように、ディップ・ニップ法にて前記繊維処理液を付着させた繊維束を、直径40mmφのアルミ製パイプに巻き付け、熱風乾燥機で140℃にて30分間スタイルセット処理を行った。
それぞれについて、櫛通り性、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
*9:エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、松本油脂製薬(株)製
*10:アミノ変性ポリオルガノシロキサン、松本油脂製薬(株)製
*11:アミノメトキシシラン、松本油脂製薬(株)製
*12:エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合ランダムポリエーテル、丸菱油化工業(株)製
*13:カチオン性界面活性剤、丸菱油化工業(株)製
*14:アミノ変性シリコーン、丸菱油化工業(株)製
【0072】
(実施例6)
表2に示したように、スタイルセット処理条件を120℃×60分間に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、櫛通り性、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【0073】
(実施例7)
表2に示したように、スタイルセット処理条件を100℃×120分間に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、櫛通り性、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【0074】
(比較例1)
表3に示した比率になるように繊維処理液を調製した(エポキシ変性ポリオルガノシロキサンRE−05およびアミノメトキシシランKRE−08の組合せの代わりに、アミノ変性シリコーンKWC−Bに変更した)以外は、実施例3と同様の操作を行い、櫛通り性、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【0075】
(比較例2)
表3に示したように、スタイルセット処理条件を40℃×30分間に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、櫛通り性、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
(比較例3)
表4に示したように、スタイルセット処理条件を120℃×25秒間に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、櫛通り性、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性および難燃性の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
表4に示したように、非架橋性シロキサン系繊維処理剤を付着した繊維に比べ、実施例では櫛通り、滑り触感、帯電防止性、耐シャンプー性、難燃性の全てが優れていることが確認された。一方、比較例1,2では、非架橋性シロキサン系繊維処理剤を用いると、櫛通り、滑り触感、帯電防止性、難燃性は満足できるものの、耐シャンプー性が不充分となった。また、比較例3のように架橋性シロキサン系繊維処理剤を用いても、架橋反応が起こる条件を満たさないと耐シャンプー性が不充分となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性人工毛髪用繊維から形成される頭飾品をスタイルセット処理する直前に、反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)を付着させ、90〜180℃にて120〜5分間スタイルセット処理を行うことにより得られる、頭飾品。
【請求項2】
反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)が、難燃性人工毛髪用繊維に対して0.01〜1.00%omf付着されてなる、請求項1に記載の頭飾品。
【請求項3】
難燃性人工毛髪用繊維が、ポリアルキレンテレフタレート、ポリオレフィンおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、臭素含有難燃剤および/またはリン含有難燃剤(B)5〜30重量部を溶融混練して得られる組成物より得られる難燃性人工毛髪用繊維である、請求項1または2に記載の頭飾品。
【請求項4】
臭素含有難燃剤および/またはリン含有難燃剤(B)が、脂環式臭素化合物、芳香族臭素化合物、臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化フェノール類またはその誘導体、臭素化エポキシ類、臭素化イミド化合物、含臭素化合物のオリゴマー、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレートおよび縮合リン酸エステル系化合物よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3記載の頭飾品。
【請求項5】
ポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)中の反応性有機ケイ素化合物が、アミノ変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性ポリオルガノシロキサンおよびエーテル変性ポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれかに記載の頭飾品。
【請求項6】
反応性有機ケイ素化合物を含有するポリオルガノシロキサン系繊維処理剤(C)が、反応性有機ケイ素化合物100重量部に対して、硬化剤を1〜30重量部含有する、請求項5に記載の頭飾品。
【請求項7】
硬化剤が、アミノアルコキシシランである、請求項6に記載の頭飾品。
【請求項8】
反応性有機ケイ素化合物を含有する繊維処理剤(C)中の反応性有機ケイ素化合物が、アミノ基、エポキシ基またはエーテル基の他に、分子中の少なくとも1つ以上のケイ素原子にアルコキシル基および/または水酸基が結合している、請求項5記載の頭飾品。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の頭飾品が、ウィービング、ウィッグ、かつら、およびヘアーアクセサリーよりなる群から選ばれた1種である、頭飾品。

【公開番号】特開2007−77532(P2007−77532A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265843(P2005−265843)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】