説明

顔料分散体およびインキ

【課題】特定の色素誘導体、分散剤、バインダー樹脂を使用することにより、低粘度で保存安定性に優れ、高コントラストを有し、加熱処理によるジケトピロロピロール系顔料の結晶析出を抑制した顔料分散体およびインキを提供する。
【解決手段】下式で例示される色素誘導体、分散剤、バインダー樹脂を含有する顔料分散体およびインキ。


(一般式「Q−X」中、Qは、キナクリドン残基、ジケトピロロピロール残基、ベンゾイソインドール残基、アントラキノン残基、ジアントラキノン残基、チアジンインジゴ残基、アゾ色素残基又はキノフタロン残基等を表し、Xは、それぞれ独立して、−OH、−SO3H、−COOH等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料粒子の微細な分散体を容易に得られ、かつ安定な状態に保つことを可能にする顔料分散体に関するものであり、さらに詳しくはカラーフィルター用インキに好適に用いられる顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、ガラス等の透明な基板の表面に2種以上の異なる色相の微細な帯(ストライプ)を平行又は交差して配置したもの、あるいは微細な画素を縦横一定の配列で配置したものからなっている。画素は、数10から数100ミクロンと微細であり、しかも色相毎に所定の配列で整然と配置されている。カラーフィルターは、カラー液晶表示装置に用いられており、カラーフィルターの上には、一般に液晶を駆動させるための透明電極が蒸着あるいはスパッタリングにより形成され、さらにその上に液晶を一定方向に配向させるための配向膜が形成されている。
これらの透明電極及び配向膜の性能を充分に得るには、その形成工程を一般に200℃以上好ましくは230℃以上の高温で行う必要がある。このため、現在、カラーフィルターの製造方法としては、耐光性、耐熱性に優れる顔料を着色剤として用いる顔料分散法と呼ばれる方法が主流となっており、主に下記の2通りの方法でカラーフィルターが製造されている。
【0003】
第1の方法では、感光性透明樹脂溶液中に顔料を分散したものをガラス等の透明基板に塗布し、乾燥により溶剤を除去した後、一つのフィルター色のパターン露光を行い、次いで未露光部を現像工程で除去して1色目のパターンを形成、必要により加熱等の処理を加えた後、同様の操作を全フィルター色について順次繰り返すことによりカラーフィルターを製造することができる。
【0004】
第2の方法では、透明樹脂溶液中に顔料を分散したものをガラス等の透明基板に塗布し、乾燥により溶剤を除去した後、その塗膜上にポジ型レジスト等のレジストを塗布し、一つのフィルター色のパターン露光を行い、現像してレジストパターンを形成し、これをエッチングレジストとして、レジストパターンの付いていない顔料分散塗膜をエッチング液で除去し、レジスト塗膜を剥離して1色目のパターンを形成、必要により加熱等の処理を加えた後、同様の操作を全フィルター色について順次繰り返すことによりカラーフィルターを製造することができる。なお、レジストの現像と顔料分散塗膜のエッチングを同時に行うこともできる。
【0005】
液晶ディスプレイは液晶セルが2枚の偏光板で挟まれた構成になっており、1枚目の偏光板で偏光された光が、画像信号に対応して液晶層で偏光面が回転され、2枚目の偏光板を通過する個々の画素の光量が調節されて画像表示を行っている。従って、1枚目の偏光板を透過した光は、液晶以外のもので偏光面が乱されると、ディスプレイの表示性能が低下する。具体的には、ブラックの表示モードで光が漏れたり、ホワイトのモードで透過光が減少したりしてディスプレイのコントラスト比が低下する。
【0006】
カラーフィルターは、2枚の偏光板で挟まれた液晶セルと偏光板の間に具備される。そのため、カラーフィルターの表示特性は非常に重要である。このようなカラーフィルターの表示特性は、コントラスト比という特性値で表され、液晶ディスプレイの明暗をどれだけはっきりさせることができるかの指標として非常に重要である。コントラスト比とは、カラーフィルターを2枚の偏光板で挟み、2枚の偏光板をパラレルにおいた明状態の輝度をクロスにおいた暗状態の輝度で除した値で表される。
【0007】
顔料は通常粉体として市販されているが、これは一次粒子と呼ばれる粒子の最小単位が多数凝集して形成する粉体粒子(二次粒子)の集まりである。通常、分散と呼ばれる工程で、顔料をビヒクル中にできるだけ一次粒子にまで微細に分散した後、インキや塗料の形で着色剤として用いられる。
【0008】
カラーフィルター用着色組成物(粉体顔料を分散した分散体組成物)として、カラーフィルターのコントラスト比に与える影響を顔料の一次粒子と二次粒子の点で考察すると、着色組成物における平均粒子径を小さくするために分散度を高めていく(分散体の平均粒子径を小さくする)とコントラスト比は徐々に上昇するが、通常の分散方法により平均分散粒子径を一次粒子径より小さくすることは困難であるため、分散度を高めても到達するコントラスト比には限界がある。従って、より高いコントラスト比を得るには、顔料の一次粒子径を小さくすることが必要である。
また、コントラスト比を低下させる原因のひとつは、1枚目の偏光板で偏光された光が、カラーフィルター層を通過する際に、大きな粒径の顔料表面で反射するときに偏光面が回転し偏光が崩される(消偏性)ためと考えられている。従って、コントラスト比を高くするには、カラーフィルター中の顔料の大粒径粒子の存在をなくすという観点に関しての、製造方法からのアプローチが必要である。
また、一次粒子の粒度分布幅を小さくすること、一次粒子の形状を球状に近づけることは、凝集の強さを緩和させることができるので、分散性を良好にして二次粒子を一次粒子にまで微分散させやすくすることができ、カラーフィルター用顔料の設計にとって重要である。
上記方法において、赤色フィルターの製造には、従来、ジアントラキノン顔料、ペリレン系顔料又はジケトピロロピロール系顔料等の耐光性及び耐熱性に優れる顔料が用いられていた。なかでも、ジケトピロロピロール系顔料は、赤〜橙色の顔料で、優れた耐光性及び耐熱性を有し、赤色カラーフィルター用として適する分光スペクトルを有し、かつ、透明性も高いことから、カラーフィルター用顔料として好ましい顔料である。
【0009】
ジケトピロロピロール系顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで示すと、C.I.PigmentRed 254、255、264及びC.I.Pigment Orange 71が挙げられる。このなかで、特に、C.I.Pigment Red 254(ピロロピロール環のパラ位に塩素基を有するジケトピロロピロール顔料)は、赤色カラーフィルター用として特に適する分光スペクトルを有し、分散性も優れ、非常に高い明度(=Y値)が得られるため、赤色カラーフィルター用顔料として非常に多く用いられている。高い明度は、液晶ディスプレイにおいて、色の鮮やかさと消費電力の低さを実現するために、非常に重要な品質項目である。
【0010】
カラーフィルター用途に市販されているC.I.Pigment Red 254顔料として、イルガフォアレッドBCF、イルガフォアレッドBT−CF(共に、チバスペシャルティケミカルズ社製)がある。この顔料は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によれば1次粒子径の大きさ40〜80nmの比較的球状の粒子である。
【0011】
カラーフィルター用ジケトピロロピロール顔料を製造する方法として、特開2001−220520号公報(特許文献1)には、ジケトピロロピロール系顔料(A)、色素誘導体(B)、水溶性無機塩(C)、及び水溶性無機塩(C)を実質的に溶解しない水溶性有機溶剤(D)を含む混合物をニーダー等で混練した後(以下、顔料、水溶性の無機塩及び水溶性の有機溶剤を含む混合物を混練することをソルトミリングと呼ぶ)、水溶性無機塩(C)及び水溶性有機溶剤(D)を除去することで得られる、カラーフィルター用ジケトピロロピロール顔料が開示されている。
【0012】
このソルトミリングと呼ばれる処理方法は、顔料の一次粒子の粉砕及び結晶成長が並行して起こるため、一次粒子径を小さく制御できるばかりでなく、粗大粒子の存在をなくすとともに、一次粒子径の粒度分布幅が狭い顔料を得ることができ、カラーフィルター用途には非常に適した微細化方法である。
一次粒子の小さなジケトピロロピロール顔料を、顔料の合成時に直接的に得ようとする方法は、特開昭58−210084号公報(特許文献2)、及び特開平07−90189号公報(特許文献3)に開示される製法(以下、コハク酸エステル合成法と呼ぶ)において、プロトン化の条件を限定することによりなされる。
この合成法は、コハク酸ジエステルの1モルに対して芳香族ニトリル化合物の2モルを、tert−アミルアルコール等の不活性有機溶剤中で、強塩基化合物としてのアルカリ金属又はアルカリ金属アルコキシドの存在下において、80〜110℃の高温で縮合反応させ、ジケトピロロピロール化合物のアルカリ金属塩を生成させ、続いて、このジケトピロロピロール化合物のアルカリ金属塩に対して、水、アルコール、酸等を用いてプロトン化を行うことにより、ジケトピロロピロール化合物の結晶を析出させる方法である。プロトン化における温度、水、アルコール又は酸の種類、比率や量により、得られる一次粒子径の大きさを制御することができる。
【0013】
コ ハク酸エステル合成法において、複数のニトリル化合物を用いて複数のジケトピロロピロール化合物の混合物を得る方法は、特開昭61−120861号公報(特許文献4)に開示されている。しかし、当該文献にはカラーフィルター用途への適性については一切記載されておらず、粒子の大きさに関する情報も記載されていない。
液晶ディスプレイが家庭用テレビとして普及するにつれ、液晶ディスプレイの品質が高度化し、ひいては、カラーフィルターを構成する主な素材である顔料への要求品質においても、非常に高度化、多様化している。例えば、広範囲の色再現を実現するための高いコントラスト比、いかなる角度から見ても色相が変わらない視認性、大型化に伴い消費電力を下げるための高い明度、及び非常に狭い範囲で安定した色相等が要求されており、品質面での改善要求は非常に厳しくなっている。
【0014】
近年、カラーフィルターの品位における優劣は、コントラスト比を中心に議論され、製造メーカーは、高コントラスト化を目標に開発競争してきた。また、高コントラスト化への要求に応えるため、顔料メーカーとしては、1次粒子を非常に小さく、かつ1次粒子の粒度分布幅を小さくするための製造技術の開発に注力してきた。
しかし、今まで以上に一次粒子径を小さくしたときに、高いコントラスト比が得られる一方で、カラーフィルター製造工程に対する加工耐性が劣ることが多く、具体的には、赤色カラーフィルターに加工する際に、微細なC.I.PigmentRed 254を含む感放射線顔料組成物を使用すると、画素上に異物が発生して製造歩留まりが低下するという問題があった。つまり、微細な一次粒子による高コントラスト化と異物発生抑制はトレードオフの関係であった。
【0015】
このような状況下で、高いコントラスト比を満たし、かつ画素上の異物発生が十分少ない赤色画素を形成できるカラーフィルター用顔料組成物の開発が強く求められている。
【0016】
このような問題点を解決するために、感光性樹脂成分として、特定構造のエポキシ(メタ)アクリレートを使用することにより、塗膜の高温暴露時の耐熱結晶析出性が優れる赤色カラーレジストインキが得られることが提案されている。(特許文献4)しかし、エポキシ(メタ)アクリレートを感光性樹脂成分として使用した場合、耐熱結晶析出性は改善されるものの、耐熱処理後に色変化を生じることがあり、適用するには制限がある。
【0017】
また、顔料分散液中の塩基性分散剤に含まれる第1級および/または第2級アミンを酸無水物および/または酸ハロゲン化物でアミド化することにより、高温熱履歴における白化および結晶性異物の生成を抑えることができると提案されている。(特許文献5)1次粒子径の大きさが40〜80nmの顔料では一定の効果が認められるものの、40nmより小さい粒子径では効果がない。
【0018】
さらに、特許文献6では、特定構造の顔料分散剤を使用することにより、顔料の微粒化速度の向上と、顔料組成物の粘度上昇の抑制と、熱処理による顔料成分の析出抑制とが可能になるとしている。しかし、このような顔料分散剤を用いても、熱処理による顔料成分の析出を完全に抑制することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−220520号公報
【特許文献2】特開昭58−210084号公報
【特許文献3】特開平07−90189号公報
【特許文献4】特開昭61−120861号公報
【特許文献5】特開2002−265840公報
【特許文献6】特開2003−201434公報
【特許文献7】特開2008−069244公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、顔料粒子が安定的に高度に微細化された顔料組成物を提供することであり、とりわけカラーフィルター用インキとして加熱処理によってもジケトピロロピロール系顔料の結晶析出が起こらない低粘度で、経時安定性が飛躍的に優れた顔料組成物を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、少なくとも顔料、色素誘導体、分散剤、バインダー樹脂および溶剤からなる顔料組成物であって、
色素誘導体が、一般式「Q−X」
(一般式「Q−X」中、Qは、キナクリドン残基、ジケトピロロピロール残基、ベンゾイソインドール残基、アントラキノン残基、ジアントラキノン残基、チアジンインジゴ残基、アゾ色素残基又はキノフタロン残基であり、
Xは、それぞれ独立して、−OH、−SOH、−COOH、これらの酸性基の1価〜3価の金属塩、アルキルアミン塩、ピペラジニル塩、モルホニル塩;フタルイミドメチル基;3級アミノ基を有する塩基性基が導入されたトリアジン環が−NH−の一端に結合した基;下記式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)又は(h)で表される基であり、T1は、それぞれ独立して、−SONH−、−CONH−、−CHNHCOCH−、−S−又は−NH−であり、T2は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基であり、 R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、−H、−NH、−NHCOCH又は−NHRであり、ここでRは、炭素数1〜4のアルキル基又は3級アミノ基を有する塩基性基を導入したトリアジン環である。)で表される化合物であり、






バインダー樹脂が、(A):ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、イソボニル基またはアダマンタン基を有するエチレン性不飽和単量体2〜50モル%、(B):分子内に少なくとも1つのカルボン酸基を有するエチレン性不飽和単量体2〜95モル%、(C):(A)および(B)成分と共重合し得る他のエチレン性不飽和単量体2〜50モル%、(A)〜(C)の合計が100モル%となる共重合体(P1)または前記(P1)に含まれるカルボン酸基の5〜100%に、グリシジル基を有するエチレン性不飽和単量体を付加した共重合体(P2)であることを特徴とするカラーフィルター用顔料分散体に関する。
【0022】
本発明は、さらに、顔料と色素誘導体の比率が100:0.1から100:100であることを特徴とする上記のカラーフィルター用顔料分散体に関する。
【0023】
本発明は、さらに、分散剤が下記一般式(3)で示される化合物である上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
一般式(3)
【0024】
【化3】


( 式中、Rは数平均分子量500〜10000のポリエステル残基、yは1〜2を表す。)
【0025】
本発明は、さらに、分散剤が芳香族カルボキシル基を有する分散剤(E)で、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)及び/または芳香族テトラカルボン酸無水物(F2)と水酸基を有する重合体を反応させてなる化合物(G)である上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、水酸基を有する重合体(G)が、片末端に水酸基を有する重合体(G1)である上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
【0026】
本発明は、さらに、水酸基を有する重合体(G)が、側鎖に水酸基を有する重合体(G2)であることを特徴とする上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、片末端に水酸基を有する重合体(G1)が、片末端に2つの水酸基を有する重合体(G3)であることを特徴とする上記のカラーフィルター用顔料分散体に関する。
【0027】
本発明は、さらに、 前記顔料が、有機顔料であることを特徴とする上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、 前記顔料が、ジケトピロロピロール化合物であることを特徴とする上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
【0028】
本発明は、さらに、 前記顔料が、C.I.ピグメント・レッド254であることを特徴とする上記カラーフィルター用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、上記カラーフィルター用顔料分散体からなるカラーフィルター用顔料インキに関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明で得られた顔料分散体は、従来の色素誘導体または複素芳香族環誘導体や分散剤、バインダー樹脂を使用した顔料分散体よりも安定性に優れ、より微細な顔料を分散することが出来る。
そのため、本発明の顔料分散体により作製されたカラーフィルターは、高いコントラスト比を達成できるとともに、さらに加熱処理によってもジケトピロロピロール系顔料の結晶析出を起こさない優れた特性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明の顔料分散体およびインキは、主に顔料分散レジストとして使用されるものであって、顔料、色素誘導体、分散剤、バインダー樹脂および溶剤からなる顔料組成物である。
【0032】
本発明における顔料としては、公知の有機顔料及び無機顔料を用いることができるが、色調整の容易さの観点から有機顔料が好ましい。また、これらの顔料は、1種単独でも、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0033】
本発明における顔料は、前記顔料の中でも、より良好な色度と高い色純度とを有するという点で、有機顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料であれば特に制限されるものではない。それらの中でも、より好ましくは、C.I.ピグメント オレンジ71,C.I.ピグメント オレンジ73,C.I.ピグメント レッド254,C.I.ピグメント レッド255,C.I.ピグメント レッド264,C.I.ピグメント レッド270,C.I.ピグメント レッド272であり、さらに好ましくはC.I.ピグメント レッド254,C.I.ピグメント レッド255,C.I.ピグメント レッド264であり、特に好ましくはC.I.ピグメント レッド254である。
【0034】
本発明における顔料は、顔料と水溶性無機塩類と水溶性有機溶剤の混合物として湿式粉砕する工程を経ることにより、微細化処理することができる。湿式粉砕する顔料は、顔料として一般に入手可能な市販顔料でも、合成されたままで顔料化されていない、粗大な粒子を含む粗製顔料でも良い。
【0035】
水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテール、ジエチレングリコールモノエチルエーテール、ジエチレングリコールモノブチルエーテール、プロピレングリコール、プロピレンゴリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。これらは、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0036】
湿式粉砕工程では、少量用いることで顔料に吸着して廃水中に流失しないならば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘササン、ハロゲン化炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を上記水溶性有機溶剤と併用しても良い。これらは、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0037】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
水溶性無機塩の使用量は、多い方が顔料の摩砕効果は高いが、顔料に対して1〜50重量倍であることが好ましく、生産性の点で1〜20重量倍であることがより好ましい。さらに、水溶性無機塩に含まれる水分は1%以下であることが好ましい。
【0039】
また、水溶性有機溶剤の使用量は、顔料に対して0.5〜3重量倍であることが好ましく、1〜2重量倍であることがより好ましい。
湿式粉砕処理において使用する装置については特に制限はなく、トリミックス(井上製作所製)、スーパーミックス(新栄機械製)や、摩砕効果が高いニーダー(井上製作所製)等の装置を用いることができる。
【0040】
本発明における湿式粉砕装置の運転条件については特に制限はないが、粉砕メディアによる磨砕を効果的に進行させるため、装置がニーダーの場合は、以下の運転条件が好ましい。すなわち、装置内のブレードの回転数は10〜200rpmが好ましく、2軸の回転比が相対的に大きいほうが、摩砕効果が大きく好ましい。また、運転時間は1〜24時間が好ましく、装置の内温は50〜150℃が好ましい。また、粉砕メディアである水溶性無機塩は、粉砕粒度が5〜50μmで、粒子径の分布がシャープで、かつ球形が好ましい。
また、湿式粉砕工程で色素誘導体を使用すると、顔料のさらなる微細化および整粒化に非常に有効である。
【0041】
本発明において、色相などを改善するには、黄色、橙色を呈するジケトピロロピロール構造、ベンゾイソインドール構造、チアジンインジゴ構造、アゾ色素構造又はキノフタロン構造の色素誘導体の使用が好ましい。
【0042】
(キナクリドン誘導体の具体例)
キナクリドン誘導体としては、具体的には、以下の式(1)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化4】

【0044】
(ジケトピロロピロール誘導体の具体例)
また、ジケトピロロピロール誘導体としては、具体的には、以下の式(2)又は(3)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化5】

【0046】
(ベンゾイソインドール誘導体の具体例)
また、ベンゾイソインドール誘導体としては、具体的には、式(4)で表される以下の化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化6】

【0048】
(アントラキノン誘導体の具体例)
また、アントラキノン誘導体としては、具体的には、以下の式(5)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化7】

【0050】
(ジアントラキノン誘導体の具体例)
また、ジアントラキノン誘導体としては、具体的には、以下の式(6)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
【化8】

【0052】
(チアジンインジゴ誘導体の具体例)
また、チアジンインジゴ誘導体としては、具体的には、以下の式(7)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
【化9】

【0054】
(アゾ色素誘導体の具体例)
アゾ色素誘導体としては、具体的には、以下の式(8)、(9)又は(10)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
【化10】


【0056】
(キノフタロン誘導体の具体例)
キノフタロン誘導体としては、具体的には、以下の式(11−1)〜式(11−17)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化11】



【0058】
本発明の顔料分散体およびインキに用いられるバインダー樹脂は、(A):ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、イソボニル基またはアダマンタン基を有するエチレン性不飽和単量体2〜50モル%、(B):分子内に少なくとも1つのカルボン酸基を有するエチレン性不飽和単量体2〜95モル%、(2〜50モル%)、(C):(A)および(B)成分と共重合し得る他のエチレン性不飽和単量体、(A)〜(C)の合計が100モル%となる共重合体(P1)または前記(P1)に含まれるカルボン酸基の5〜100%に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を付加した共重合体(P2)である。
【0059】
バインダー樹脂の構成成分である(A):ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、イソボニル基またはアダマンタン基を有するエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び2−2−エチルアダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または複数を組み合わせて用いることができる。
【0060】
バインダー樹脂の構成成分である(B):分子内に少なくとも1つのカルボン酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸等のビニル系単量体;アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものである単量体;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにコハク酸、マレイン酸、フタル酸、或いはそれらの無水物等の酸或いは無水物を付加させた単量体等が挙げられる。これらは複数種使用してもよい。
【0061】
これらのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体のうち、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸であり、更に好ましいのは、(メタ)アクリル酸である。
【0062】
バインダー樹脂の構成成分である(C):(A)および(B)成分と共重合し得る他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、及び3−メチルオキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、及びパラクミルフェノキシエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の芳香族置換基を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;並びに、
これらの混合物があげられる。
【0063】
また、上記アクリル単量体と併用できる単量体として、
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類; エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類; 酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;並びに、これらの混合物があげられる。
【0064】
本発明における(A)〜(C)を共重合させて得られる共重合体P1において、(A)〜(C)のそれぞれから導かれる構成成分の比率が、前記の共重合体P1を構成する構成成分の合計モル数に対してモル分率で、以下の範囲にあることが好ましい。
(A)から導かれる構成単位;2〜50モル%
(B)から導かれる構成単位;2〜95モル%
(C)から導かれる構成単位;2〜50モル%
また、さらに、次に、前記の共重合体P1に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を付加することにより、光/熱硬化性を付与した共重合体P2を得ることができる。
【0065】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル−α−エチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の非環式エポキシ基含有不飽和化合物も挙げることができる。
【0066】
ここで、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、その脂環式エポキシ基として、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、7,8−エポキシ[トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル]基等が挙げられる。又、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基に由来するものであるのが好ましい。
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の付加量は、(A)〜(B)を重合させて得られた共重合体P1中のカルボキシル基に対して、5〜90モル%、好ましくは10〜80モル%である。
【0067】
本発明の共重合体P1は、公知の溶液重合法により得ることができる。使用する溶剤は、ラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。例えばその具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は単独又は2種以上を併用してもよい。溶剤の使用量は、バインダ樹脂100重量部に対し、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常1000重量部以下、好ましくは800重量部以下の範囲である。この範囲外では分子量の制御が困難となる。
【0068】
本発明において使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物を使用することができる。例えばその具体例としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものであり、またアゾ化合物も有効である。具体例としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドなどが使用できる。重合温度に応じて適当な半減期のラジカル重合開始剤を選択する。ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用されるモノマーの合計100重量部に対して、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲である。
【0069】
共重合体P1の重合方法は、共重合反応に使用されるモノマー及びラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して重合反応を行なってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加したモノマーを昇温、攪拌した溶剤中に滴下してもよい。また、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中にモノマーを滴下してもよい。反応条件は、目標とする分子量に応じて自由に変えることができるが、反応温度としては、通常70℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは130℃以下の範囲である。また、反応時間としては、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、また、通常20時間以下、好ましくは10時間以下の範囲である。
【0070】
共重合体P1のカルボキシル基部分に、エポキシ基を含有する不飽和単量体を付加させ共重合体P2を得るには、公知の手法を用いることができる。例えば、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物とを、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;ピリジン、トリフェニルホスフィン等の触媒とp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、2,3−ジ−tert−ブチルp−クレゾール等の重合禁止剤の存在下、有機溶剤中、反応温度50〜150℃で数時間〜数十時間反応させることにより、樹脂のカルボキシル基にエポキシ基含有不飽和化合物を導入することができる。
【0071】
共重合体P1、P2の酸価は、通常10〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、より好ましくは30〜150mgKOH/gである。共重合体P1の酸価は、(B)成分の比率により、 共重合体P2の酸価は、共重合体P1へのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の付加量により調整することができる。
【0072】
又、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜100000、好ましくは4000〜50000、更に好ましくは5000〜30000である。
【0073】
本発明の顔料分散体に使用する分散剤は以下のような化合物が挙げられる。例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系の直鎖状または櫛状の樹脂からなるものや界面活性剤が使用できる。
【0074】
樹脂型顔料分散剤としては、直鎖状樹脂の主鎖または末端、櫛状樹脂の主鎖または側鎖に、ブロックまたはランダムに塩基性基、酸性基、芳香族基等を有するものが好ましい。具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキ
サン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などが用いられる。また、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、燐酸エステル等が用いられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
市販の樹脂型顔料分散剤としては、例えば、ソルスパーズ13240、20000、24000、26000、28000、31000、76500などの各種ソルスパーズ分散剤(以上日本ルーブリゾール株式会社製)、ディスパービック110、111、160、161、162、163、164、167、170、182、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2096、2150などの各種ディスパービック分散剤(以上ビックケミー製)、アジスパーPB711、PB411、PB111、PB814、PB821、PB822などの各種アジスパー分散剤(以上味の素ファインテクノ製)、エフカ46、47、4300、4330、4340などのエフカ分散剤(以上エフカ・アディティブス社製)などが挙げられる。
【0076】
本発明における顔料分散体で用いられる分散剤として、より安定性が向上するという点で下記一般式(3)及び/または芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)で示される分散剤が好ましい。
一般式(3)
【0077】
【化3】




( 式中、Rは数平均分子量500〜10000のポリエステル残基、yは1〜2を表す。)更に好ましい数平均分子量は500〜3000である。
【0078】
一般式(3)で示されるリン酸エステルは、片末端に水酸基を有するポリエステル残基をリン酸エステル化して得ることができる。片末端に水酸基を有するポリエステル残基は、モノアルコールを開始剤としてε−カプロラクトン等の開環付加をすることによって得ることができる。
モノアルコールは、分子内に1つの水酸基を持つものであれば特に限定されるものではなく、1級、2級、3級アルコールの何れも使用可能である。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール等並びにその混合物が用いられる。
【0079】
片末端に水酸基を有するポリエステル残基は、モノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン等を開環付加することによって得ることができる。ε−カプロラクトンの付加反応は、公知の方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器にモノアルコール、ε−カプロラクトン、重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。反応には、無溶剤またはトルエン、キシレンの様な適当な脱水溶媒を使用することもできる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
反応温度は120℃〜220℃、好ましくは160℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が120℃未満では反応速度がきわめて遅く、220℃を越えるとε−カプロラクトンの付加反応以外の副反応、たとえばε−カプロラクトン付加体のε−カプロラクトンモノマーへの分解、環状のε−カプロラクトンダイマーの生成等が起こりやすい。モノアルコール1モルに対するε−カプロラクトンの付加モル数は、1〜50モル、好ましくは、3〜20モルである。付加モル数が、1モルより少ないと、分散剤としての効果を得にくくなり、50モルより大きいと反応物の分子量が大きくなりすぎ、分散性、流動性の低下を招く傾向がある。
【0080】
重合触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨードなどの四級アンモニウム塩、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨードなどの四級ホスホニウム塩の他、トリフェニルフォスフィンなどのリン化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸塩、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラートなどのアルカリ金属アルコラートの他、三級アミン類、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、及び塩化亜鉛などの亜鉛化合物等が挙げられる。触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜100ppmである。触媒量が3000ppmを越えると樹脂の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える傾向がある。逆に、触媒の使用量が1ppm未満では環状エステルの開環重合速度が極めて遅くなる傾向がある。
【0081】
片末端に水酸基を有するポリエステル残基は、五酸化リン、ポリリン酸、オルトリン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤の1種あるいは2種以上組み合わせて反応させることにより、リン酸エステル化を行うことができる。これらのうち、塩酸ガス等の副生がなく、特殊な設備が不要であることから、オルトリン酸、ポリリン酸および五酸化リンからなる群より選ばれる1種以上のリン酸エステル化剤が好ましい。なかでもオルトリン酸換算含有量116%のポリリン酸が好ましい。
リン酸エステル化剤の仕込み比は、片末端に水酸基を有するポリエステル残基の水酸基に対する、リン酸エステル化剤中のリン原子の比が0.5〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.3であることが更に好ましく、1.05〜1.2であることが最も好ましい。これは、エポキシ基に対するリン原子の比が0.5未満では、水酸基に対するリン酸エステル化が不十分となったり、リン酸ジエステルの副生量が増加したりする傾向があり、1.5を超えると、添加量に見合う増量効果は得られない傾向がある。
【0082】
一般式(3)で示されるリン酸エステルにおいて、y=1とy=2の存在比が100:0 〜100:30であると、顔料分散性が良好になり好ましい。
また、一般式(3)で示されるリン酸エステルにおいて、R4がポリカプロラクトン残基であると、顔料分散性、乾燥溶解性、基材密着性が良好になり好ましい。数平均分子量500〜3000のポリカプロラクトン残基がより好ましい。
【0083】
芳香族カルボキシル基を有する分散剤(E)
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(E)は、数平均分子量が500〜30,000であることが好ましい。500未満であっても、30,000を越えても顔料分散体の粘度、及び粘度安定性が悪くなる場合があるので好ましくない。
また、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(E)は、酸価が10〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0084】
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(E)は、その分子内に芳香族カルボキシル基を有するものである。その製造方法には、例えば、水酸基を有する重合体(G)に芳香族トリカルボン酸無水物(F1)及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)を反応させる製造方法1、芳香族カルボキシル基を有する単量体を用いて重合体を作る製造方法2、水酸基を有する単量体を重合しながら芳香族トリカルボン酸無水物(F1)及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)を反応させる製造方法3、のいずれかが挙げられる。この中で、顔料分散性の観点から、分散剤(E)中の芳香族カルボキシル基の個数をより制御し易い製造方法1により作られたものが好ましい。
【0085】
〈重合体(G)〉
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の前駆体として使用する水酸基を有する重合体(G)としては、片末端に水酸基を有する重合体(G1)と、側鎖に水酸基を有する重合体(G2)とに分けられる。更に、片末端に水酸基を有する重合体(G1)として、片末端に2つの水酸基を有する重合体(C3)が好ましい。
〔重合体(G1)〕
まず、片末端に水酸基を有する重合体(G1)について説明する。本発明に用いる片末端に水酸基を有する重合体(G1)としては、片末端に水酸基を有するポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(G1−1)と、片末端に水酸基を有するビニル系重合体(G1−2)とが挙げられる。
[ポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(G1−1)]
片末端に水酸基を有するポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(G1−1)としては、下記一般式(4)で示されるものが好ましい。
一般式(4):
【0086】
【化4】



〔一般式(4)中、
は、炭素原子数1〜20、酸素原子数0〜12、及び窒素原子数0〜3の1価の末端基であり、
は、−O−、−S−、または−N(Rb)−(但し、Rbは水素原子または炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
は、−OHであり、
は、−RO−で示される繰り返し単位であり、
は、−C(=O)RO−で示される繰り返し単位であり、
は、−C(=O)RC(=O)−ORO−で示される繰り返し単位であり、
は、炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、または炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、
は、炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、または炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、
は、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、または炭素原子数6〜20アリーレン基であり、
は、−CH(R10)−CH(R11)−であり、
10とR11は、どちらか一方が水素原子であり、もう一方が炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アルキル部分の炭素原子数1〜20のアルキルオキシメチレン基、アルケニル部分の炭素原子数2〜20のアルケニルオキシメチレン基、アリール部分の炭素原子数6〜20でアリール部分が場合によりハロゲン原子で置換されていることのあるアリールオキシメチレン基、N−メチレン−フタルイミド基であり、
は、前記R、−C(=O)R−、または−C(=O)RC(=O)−OR−であり、
は、0〜100の整数であり、
は、0〜60の整数であり、
は、0〜30の整数であり、
但しm+m+mは1以上100以下であり、
一般式(4)における前記繰り返し単位G〜Gの配置は、その順序を限定するものではなく、一般式(4)で表される重合体において、基Zと基Rとの間に繰り返し単位G〜Gが任意の順序で含まれていることを示し、更に、それらの繰り返し単位G〜Gは、それぞれランダム型またはブロック型のどちらでもよい。〕
【0087】
前記一般式(4)は、Zが炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0088】
また、別の形態として、前記一般式(4)の中でZがエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。この場合、芳香族カルボキシル基を有する分散剤に活性エネルギー線硬化性を付与することができる。
また、前記一般式(4)の中で、mが3〜15の整数であることが、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0089】
また、前記一般式(4)の中で、m=0、m=0の場合、Zは炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、若しくはエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。
前記一般式(4)で示される片末端に水酸基を有するポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(C1-1)は、公知の方法で製造することができ、モノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールの群から選択される化合物を開始剤として、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、及びエポキシドの群から選択される環状化合物を開環重合して容易に得られる。
【0090】
モノアルコールとしては、水酸基を一つ有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。例示すると、
メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、またはオレイルアルコール等の脂肪族モノアルコール類;ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、パラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環を有するモノアルコール類;あるいは、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、またはテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0091】
モノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用してもよい。この場合、生成される芳香族カルボキシル基を有する分散剤に、活性エネルギー線硬化性能を付与することができる。
【0092】
前記のエチレン性不飽和二重結合を有する基の例としては、ビニル基、または(メタ)アクリロイル基(なおここで、以降「(メタ)アクリロイル」または「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、それぞれ「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」または「メタアクリレート及び/またはアクリレート」を示すものとする。)が挙げられるが、好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。これら二重結合を有する基の種類は、一種類でもよいし、複数種類でもよい。
【0093】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールとしては、エチレン性不飽和二重結合を1個、2個、及び3個以上含む化合物を用いることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が1個のモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(なお、「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、アクリレート及び/またはメタクリレートを示すものとする。以下同じ。)、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、または4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が2個のモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、またはグリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が3個のモノアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5個のモノアルコールとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
【0094】
このうち、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、それぞれ、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物として得られるので、生成される分散剤の分子量を制御するためにはHPLC(高速液体クロマトグラフィ)法や水酸基価の測定によりモノアルコール体の比率を決定する必要がある。モノアルコール体の数とG1〜G3を形成する原料の比率により、分散剤の分子量が決まるからである。
【0095】
前記のモノアルコールのうち、エチレン性不飽和二重結合の数が2個以上のものは、硬化性の点で活性エネルギー線硬化型顔料組成物に用いる場合に好ましい。
【0096】
1級モノアミンとしては、例えば、
メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、3−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、4−メチル−2−ペンチルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−ノニルアミン、イソノニルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−ミリスチルアミン、セチルアミン、1−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、2−オクチルデシルアミン、2−オクチルドデシルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、ベヘニルアミン、またはオレイルアミン等の脂肪族1級モノアミン類;
3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−イソブチロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、または3−ミリスチロキシプロピルアミン等のアルコキシアルキル1級モノアミン類;あるいは、
ベンジルアミン等の芳香族1級モノアミンが挙げられる。
2級モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−1−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−(4−メチル−2−ペンチル)アミン、ジ−1−ヘプチルアミン、ジ−1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−1−ノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−1−デシルアミン、ジ−1−ドデシルアミン、ジ−1−ミリスチルアミン、ジセチルアミン、ジ−1−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジ−(2−オクチルデシル)アミン、ジ−(2−オクチルドデシル)アミン、ジ−(2−ヘキシルデシル)アミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ピペラジン、またはアルキル置換ピペラジン等の脂肪族2級モノアミン類が挙げられる。
【0097】
モノチオールとしては、例えば、メチルチオール、エチルチオール、1−プロピルチオール、イソプロピルチオール、1−ブチルチオール、イソブチルチオール、tert−ブチルチオール、1−ペンチルチオール、イソペンチルチオール、3−ペンチルチオール、1−ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4−メチル−2−ペンチルチオール、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、イソオクチルチオール、2−エチルヘキシルチオール、1−ノニルチオール、イソノニルチオール、1−デシルチオール、1−ドデシルチオール、1−ミリスチルチオール、セチルチオール、1−ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2−オクチルデシルチオール、2−オクチルドデシルチオール、2−ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール、またはオレイルチオール等の脂肪族モノチオール類;あるいは、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、またはメルカプトプロピオン酸トリデシル等のメルカプトプロピオン酸アルキルエステル類が挙げられる。
【0098】
本発明で言うモノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールからなる群から選ばれる化合物は、前記例示に限定されることなく、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、またはチオール基を一つ有する化合物であればいかなる化合物も用いることができ、また、単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
ここで、モノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、またはモノチオールのそれぞれ水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、またはチオール基を除いた部分が、前記一般式(4)におけるZ1を構成する。
【0099】
前記例示したモノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールからなる群から選ばれる化合物を開始剤として、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せからなる群から選ばれる環状化合物を開環重合して、前記一般式(4)で示される重合体のうちZ3が−OHのものを製造することができる。但し、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの組み合わせは、必ず、同時に用いられ、交互に重合させる。
【0100】
ここで、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せからなる群から選ばれる環状化合物の反応順序は、どのようなものでもよく、例えば、一段階目として、前記開始剤にアルキレンオキサイドを重合した後、二段階目にラクトンを重合し、更に三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合することもできる。この例では、二段階目にラクトンを重合するときの開始剤は、一段階目に重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体となる。また、三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合するときの開始剤は、二段階目までに重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体とラクトン重合体のブロック共重合体となる。本発明の製造方法では、以降に説明する前記一般式(4)で示される重合体を製造する場合の開始剤として、このような前記一般式(4)で示される重合体のうちZ3が−OHのものや、後述する一般式(6)で示される重合体も開始剤となりうる。
【0101】
前記の環状化合物の反応順序は、一段階目のアルキレンオキサイド、二段階目のラクトン、三段階目のジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せに限定されず、アルキレンオキサイド、ラクトン(及び/またはラクチド)、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せを任意の順序で、それぞれ1ないし複数回に亘って実施することができる。あるいは、アルキレンオキサイド、ラクトン(及び/またはラクチド)、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せについて、全ての開環重合を実施せずに、それらの内から、任意の環状化合物を選択して、開環重合を実施することもできる。
【0102】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、または1,3−ブチレンオキサイド等が挙げられ、これらを、単独あるいは2種以上併用して用いることができる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式は、ランダム及び/またはブロックのいずれでもよい。開始剤1モルに対するアルキレンオキサイドの重合モル数は、0〜100が好ましい。
【0103】
アルキレンオキサイドの重合は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で、加圧状態で行うことができる。モノアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを重合して得られる片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体は市販されており、例えば、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、日本油脂社製ブレンマーシリーズ等があり、前記一般式(4)で示される重合体のうちZが−OHでG〜Gの繰り返し単位のうちGのみを有するものとして本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料にそのまま使用することもできる。市販品を具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、10APB−500B等がある。
【0104】
ここで、アルキレンオキサイドのアルキレン基が、前記一般式(4)における繰り返し単位G中のRを構成する。
【0105】
ラクトンとしては、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、またはアルキル置換されたε−カプロラクトン、が挙げられ、この内、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、またはアルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。
【0106】
本発明の製造方法において、ラクトンは、前記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。2種類以上を併用して用いることで結晶性が低下し室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0107】
ラクチドとしては、下記一般式(5)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
一般式(5):
【0108】
【化5】




〔一般式(5)中、
12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
14及びR15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、並びに飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。〕
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料として、特に好適なラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。また、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料として前記ラクトンまたはラクチドのうち、ラクトンが用いられるのが好ましい。
【0109】
ラクトン及び/またはラクチドの開環重合は、公知方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器に、開始剤、ラクトン及び/またはラクチド、及び重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。また、モノアルコールにエチレン性不飽和二重結合を有するものを使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
開始剤1モルに対するラクトン及び/またはラクチドの重合モル数は、1〜60モルの範囲が好ましく、更には2〜20モルが好ましく、最も好ましくは3〜15モルである。
【0110】
ラクトン及び/またはラクチドの重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、
テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、またはベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、またはテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;
トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、または安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;
ナトリウムアルコラート、またはカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;三級アミン類;
有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、または有機チタネート化合物等の有機金属化合物;あるいは、
塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/またはラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない。
【0111】
ラクトン及び/またはラクチドの重合温度は100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅く、220℃を超えるとラクトン及び/またはラクチドの付加反応以外の副反応、たとえばラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
【0112】
ここで、ラクトンまたはラクチドのエステル基以外の部分が、前記一般式(4)における繰り返し単位G2中のR7を構成する。
【0113】
ジカルボン酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、またはクロレンデック酸無水物等が挙げられる。
【0114】
エポキシドとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、2,4−ジブロモフェニルグリシジルエーテル、3−メチル−ジブロモフェニルグリシジルエーテル(ただし、ブロモの置換位置は任意である)、アリルグリシジルエーテル、エトキシフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルフタルイミド、またはスチレンオキシド等が挙げられる。
【0115】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとは開始剤に対して同時に使用され、交互に反応する。このとき、開始剤の水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、またはチオール基に対して、まずジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応してカルボキシル基を生じ、次いでこのカルボキシル基にエポキシドのエポキシ基が反応して水酸基を生じる。更に、この水酸基にジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応するというように、以下、順次、前記と同様の反応を進行させることができる。開始剤1モルに対するジカルボン酸無水物及びエポキシドの重合モル数はそれぞれ0〜30モルが好ましい。また、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの反応比率([D]/[E])は、
0.8≦[D]/[E]≦1.0
([D]はジカルボン酸無水物のモル数であり、[E]はエポキシドのモル数である)
であることが好ましい。0.8未満であるとエポキシドが残り好ましくなく、1.0を超えると、片末端に水酸基を有する重合体が得られず、片末端にカルボキシル基を有する重合体ができるので好ましくない。
【0116】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとの交互重合は、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、60℃〜150℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満となる場合や180℃を超える場合では反応速度がきわめて遅い。
【0117】
ここで、ジカルボン酸無水物のジカルボン酸無水物基以外の部分が前記一般式(5における繰り返し単位G中のRを構成し、エポキシドの環状エーテルを形成する酸素原子以外の部分が前記一般式(4)における繰り返し単位G中のRを構成する。
【0118】
前記一般式(4)で示される重合体を製造するときに、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコール、ジカルボン酸無水物、またはエポキシドを使用する場合は、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、フェノチアジン等が好ましく、これらを単独若しくは併用で0.01%〜6%、好ましくは、0.05%〜1.0%の範囲で用いる。
片末端に水酸基を有するビニル系重合体(G1−2)
片末端に水酸基を有するビニル系重合体(G1−2)としては、下記一般式(6)で示される重合体が好ましい。
一般式(6):
【0119】
【化6】



〔一般式(6)中、Zは、ビニル重合体の重合停止基であり、Zは、−OH、または−R20(OH)であり、R20は、炭素原子数1〜18の3価の炭化水素基であり、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R18及びR19は、いずれか一方が水素原子、他の一方が芳香族基、または−C(=O)−Z−R21(但し、Zは、−O−若しくは−N(R22)−であり、R21、R22は、水素原子、炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換基として芳香族基を有する炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、Zは、−O−R23−、または−S−R23−であり、R23は、直接結合、または炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、nは、2〜50である。〕
前記一般式(6)で示される重合体はエチレン性不飽和単量体を重合せしめたビニル系重合体である。
前記一般式(6)で示される重合体の繰り返し単位の部分、すなわち、{−〔C(R16)(R18)−C(R17)(R19)〕n−}は、相互に同一のものからなる(ホモポリマー)であっても、異なるものからなる(コポリマー)でもよい。前記一般式(5)で示される重合体の好ましい形態は、R16及びR17が、いずれか一方が水素原子、他の一方が水素原子またはメチル基であり、R18及びR19は、いずれか一方が水素原子、他の一方が−C(=O)−O−R24(R24は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基で置換基として芳香族基を有していることができるもの)であり、−Z−Zが−S−CHCH−OH、若しくはS−CHCH(OH)CH−OH、の場合である。
【0120】
前記一般式(6)中のZ、すなわち、ビニル重合体の重合停止基は、通常のエチレン性不飽和単量体の重合を通常の方法で実施した場合に導入される任意の公知重合停止基であり、当業者には自明である。具体的には、例えば、重合開始剤由来の基、連鎖移動剤由来の基、溶剤由来の基、またはエチレン性不飽和単量体由来の基であることができる。Zがこれらのいずれの化学構造を有していても、本発明の分散剤は、重合停止基Zの影響を受けずに、その効果を発揮することができる。
【0121】
前記一般式(6)で示される重合体のうち6が−OHのものは、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基とチオール基とを有する化合物とエチレン性不飽和単量体とを混合して加熱することで得ることができる。
分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物としては、例えば、メルカプトメタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1−メルカプト−2−ブタノール、または2−メルカプト−3−ブタノール等が挙げられる。
【0122】
前記一般式(6)で示される重合体のうちZが−R20(OH)のものは、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基2つとチオール基1つとを有する化合物とエチレン性不飽和単量体とを混合して加熱することで得ることができる。この場合に片末端に水酸基を有する重合体(C)の中でも、もっとも好ましい態様である片末端に2つの水酸基を有する重合体(C3)となる。
【0123】
分子内に水酸基2つとチオール基1つとを有する化合物としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、または2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0124】
好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の水酸基とチオール基とを有する化合物を用い、塊状重合または溶液重合を行う。反応温度は好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜110℃、反応時間は好ましくは3〜30時間、より好ましくは5〜20時間である。水酸基とチオール基を有する化合物が、1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性のビニル重合体部分による立体反発効果が少なくなるため好ましくない場合がある。
【0125】
チオール基はエチレン性不飽和単量体を重合するためのラジカル発生基となるため、該重合には必ずしも別の重合開始剤は必要ではないが、使用することもできる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。
重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0126】
エチレン性不飽和単量体としては、アクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられる。アクリル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、またはエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、あるいは、(メタ)アクリルアミド(なお、「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、アクリルアミド及び/またはメタクリルアミドを示すものとする。以下同じ。)、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、またはアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0127】
また、前記アクリル単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン、またはα−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、またはイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、あるいは、酢酸ビニル、またはプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類が挙げられる。アクリル単量体以外の前記単量体を、前記アクリル単量体と併用することもできる。
【0128】
また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を単独で用いるか、若しくは前記単量体と併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ε−カプラロラクトン付加アクリル酸、ε−カプラロラクトン付加メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、またはクロトン酸等が挙げられ、1種または2種以上を選択することができる。
【0129】
前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程では、無溶剤または場合によって溶剤を使用することができる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、またはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0130】
使用する溶剤量はエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0〜300重量部が好ましく、更には0〜100重量部が好ましい。使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま、分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0131】
側鎖に水酸基を有する重合体(G2)
本発明の側鎖に水酸基を有する重合体(G2)は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と必要に応じその他のエチレン性不飽和単量体を重合せしめて得ることができる。水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、
水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(若しくは3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(若しくは3若しくは4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、またはシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、またはエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート等のアルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、あるいは、
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、またはN−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、
水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、または2−(若しくは3−若しくは4−)ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは、
水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、または2−(若しくは3−若しくは4−)ヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル等が挙げられる。
また、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を2つ有する単量体も挙げられる。更に、エポキシ基等の環状エーテル基を有するエチレン系不飽和単量体に、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を反応させたものや、あるいは(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体に、単官能エポキシ化合物等の単官能環状エーテル化合物を反応させたもの等も挙げられる。
【0132】
また、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルヒドロキシアルキルアリルエーテル、またはグリセロールモノ(メタ)アクリレートに、アルキレンオキサイド及び/またはラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明方法において、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、または1,2−、1,4−、2,3−、若しくは1,3−ブチレンオキサイドが挙げられ、これらの2種以上の併用系も用いることができる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式は、ランダム及び/またはブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、または炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトンが挙げられ、これらの2種以上の併用系も用いることができる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
【0133】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合比は、重合後の一分子に平均で少なくとも0.3〜177個の水酸基が入るように決められるのが好ましい。
【0134】
その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明したアクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられ、任意に使用することができる。
【0135】
重合開始剤としては、例えば、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明したアゾ系化合物、または有機過酸化物を用いることができる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。
重合溶剤としては、例えば、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明した溶剤を同じ様に用いることができる。
【0136】
OH樹脂と酸無水物の反応
次に、片末端に水酸基を有する重合体(G1)または側鎖に水酸基を有する重合体(G2)とトリカルボン酸無水物(F1)「及び/またはテトラカルボン酸二無水物(F2)とを反応させる工程について説明する。
【0137】
前記の片末端に水酸基を有する重合体(G1)または側鎖に水酸基を有する重合体(G2)の水酸基と、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)の無水物基とを反応させることによって、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤を得ることができる。
【0138】
芳香族トリカルボン酸無水物(F1)としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物)など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、または3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等を挙げることができる。
【0139】
芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、M−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、または9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。
【0140】
本発明で使用される芳香族トリカルボン酸無水物(F1)及び芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)は、前記に例示した化合物に限らず、どのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。本発明に使用されるものは、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0141】
重合体(C)の水酸基のモル数を<H>、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F)のカルボン酸無水物基のモル数を<N>としたとき、反応比率は0.3≦<H>/<N>≦3が好ましく、更に好ましくは0.5≦<H>/<N>≦2の場合である。特に重合体(G1)に重合体(G3)を用いる場合は、1<<H>/<N>≦2であることが好ましい。もし、<H>/<N><1で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解しても、単官能アルコールでアルコリシスしてもよい。
【0142】
重合体(G2)を用いる場合は、一分子に0.3個から3個の芳香族トリカルボン酸及び/または芳香族テトラカルボン酸が導入せしめるのが好ましい。具体的には重合体(G2)の数平均分子量を測定し、その測定値が[X]であった場合、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.3モル以上3モル以下の芳香族トリカルボン酸無水物を反応させれば良い。一方、芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.15モル以上1.5モル以下の芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させれば良い。これは、芳香族テトラカルボン酸二無水物は酸無水物基を2つ有するため、重合体(G2)分子を橋掛けするため芳香族トリカルボン酸無水物(F1)を使用する場合の半分の量で良いためである。
【0143】
重合体(G)と、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)との反応には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、例えば、3級アミン系化合物が使用でき、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、または1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0144】
重合体(F)と、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)との反応は無溶剤で行ってもよいし、適当な脱水有機溶媒を使用してもよい。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま分散剤の製品の一部として使用することもできる。使用する溶剤は、特に限定はないが、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明した溶剤を同じ様に用いることができる。
【0145】
重合体(G)と、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(F2)との反応温度は、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは60℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く、180℃を超えると反応して開環した酸無水物が、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
本発明の顔料分散体に使用する溶剤は、例えばプロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、n−ブチルアルコールおよびその異性体、n−ペンチルアルコールおよびその異性体、n−ヘキシルアルコールおよびその異性体、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブタノール、1,3−ブチレングリコール、トリアセチン、3,3,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン、酢酸イソアミル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独でもしくは混合して用いることができる。
【0146】
溶剤は、顔料分散体中の固形分100重量部に対して、100〜4000重量部、好ましくは150〜1000重量部の量で用いることができる。
【0147】
次に、本発明の顔料分散体を使用したインキは、本発明の顔料分散体と顔料担体を含有する。
【0148】
顔料担体は、樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。本発明のインキを用いてカラーフィルターを製造する場合には、樹脂として、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が80%以上、特に95%以上の透明樹脂を用いることが好ましい。
【0149】
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂等が挙げられる。樹脂の前駆体としては、放射線照射により硬化して樹脂を生成するモノマーまたはオリゴマーが挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0150】
顔料担体は、顔料分散体中の顔料組成物100重量部に対して、30〜700重量部、好ましくは60〜450重量部の量で用いることができる。また、樹脂とその前駆体との混合物を顔料担体として用いる場合には、樹脂は、顔料分散体中の顔料組成物100重量部に対して、20〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の量で用いることができる。また、樹脂の前駆体は、顔料分散体中の顔料組成物100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部の量で用いることができる。
【0151】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0152】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0153】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性の置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0154】
樹脂の前駆体であるモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0155】
本発明のインキを紫外線等の光照射により硬化する場合には、光重合開始剤が添加される。
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0156】
上記光重合開始剤は、単独でまたは2種以上混合して用いることができるが、増感剤として、α−アシロキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。増感剤は、着色組成物中の光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で用いることができる。
【0157】
本発明のインキには、分散体の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0158】
また、本発明のインキには、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱重合防止剤、可塑剤、表面保護剤、平滑剤、塗布助剤、密着向上剤、塗布性向上剤または現像改良剤などの添加剤を添加することができる。
【0159】
本発明における顔料分散体の製造方法としては、従来公知の混練り機、分散機を使用した製造工程を用いる事ができる。使用する分散機の例としては、2本ロールミル、3本ロールミル、ニーダー、加圧ニーダー、連続ニーダー、エクストルーダー、連続エクストルーダー、ボールミル、アトライター、サンドミル、コボールミル、アジテーターミル、スーパーミル、ショットミル、ピンミル、ジェットミル、ディスクミル、ホモジナイザー、バスケットミル、ペブルミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー、ディゾルバー、超音波分散機などを単独あるいは2種以上組み合わせて用いる事ができる。
【0160】
分散に使用するビーズはガラス、スチール、セラミックなど種々の素材が使用できるが、磨耗や破損等による異物混入の影響を避けるためにセラミック製が良く、特にジルコニア等の硬度の高いものが好ましい。
【0161】
ビーズのサイズは使用する顔料や目標とする性能によって選択するが、微細化された顔料を分散して高いコントラストを達成するためには細かいビーズの方が好ましく、本発明の効果を最大限に得るためには0.5μm以下が望ましい。
【0162】
また、ビーズミル等で分散した後、30〜80℃の加温状態にて数時間〜1週間保存するエージングといわれる後処理や、超音波分散機や衝突型ビーズレス分散機を用いた後処理を行うと、顔料分散体の安定性に対して有効である。
【0163】
製造例1
市販のジケトピロロピロール顔料(C.I.Pigment Red 254、チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガフォアレッドB−CF」)86部、下記(4−1)で表されるベンゾイソインドール誘導体の色素誘導体4部、食塩900部、及びジエチレングリコール110部を、混練機(株式会社井上製作所製「1ガロンニーダー」)中に仕込み、15時間混練した。次に、混練した混合物を温水に投入し、約80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥後、粉砕し、微細ジケトピロロピロール顔料86.0部を得た。得られた微細ジケトピロロピロール顔料(E1)は、TEM観察により、1次粒子の大きさは直径20〜40nmの丸い形状の粒子であった。
【0164】
【化22】

【0165】
製造例2−1
攪拌容器中に安息香酸540gを添加し、130℃に加熱して溶融させた。溶融した安息香酸中にキナルジン34gとテトラクロロ無水フタル酸204gを添加した。反応容器を160℃に加熱し、10時間攪拌した。その後130℃に冷却し、25%−水酸化ナトリウム水溶液950gを添加した。生じた懸濁液を水10L中に注入し、80℃に加熱して1時間攪拌した。懸濁液を吸引ろ過し、濾液が中性になるまで水洗した後、乾燥して下記の構造のキノフタロン誘導体S1を89g(91%)得た。
【0166】
【化23】




【0167】
製造例2−2
氷冷下、下に示す化合物(I)50gに四塩化炭素1000mLを加えた。クロロスルホン酸200gを2時間かけて滴下した後、55℃で1時間攪拌する。そこに、塩化チオニル75gを滴下し、さらに2時間攪拌した。室温まで冷却した後、氷500gにあけ、有機層を分離した。再沈殿により、化合物(1)を40g得た。室温まで冷却した反応混合物の四塩化炭素溶液を次の反応に用いることができる。
【0168】
【化23】


化合物(I)

【0169】
化合物(I)5.8g含有する四塩化炭素溶液に、ジエチルアミン3.0gのTHF8mL溶液を氷冷下で30分かけて滴下する。40℃に昇温した後、さらに1時間攪拌し、再沈殿することにより、ベンゾイソインドール誘導体S2を2.0g得た。同定は、H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0170】
〈一般式(3)の製造例〉
製造例3−1
窒素ガス導入管、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、ラウリルアルコール186g 、ε−カプロラクトンモノマー571g 、テトラブチルチタネート0 .6gを仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃ で3時間加熱、撹拌した。カプロラクトンモノマーの消失を、テトラハイドロフランを溶離液とするGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)のRI検出器により確認した。40℃以下に冷却した後、オルトリン酸換算含有量116% のポリリン酸84.5gと混合し、徐々に昇温し、80℃ で6時間、攪拌しながら加熱し、Rの数平均分子量760 、y=1と2の存在比が100:12の分散剤D1を得た。反応物の酸価は、166であった。
【0171】
〈芳香族カルボキシル基を有する分散剤(F)の製造例〉
製造例3−2
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認した後、ここに無水ピロメリット酸36.6部を加え、120℃で2時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し分散剤を得た。このようにして固形分当たりの酸価49mgKOH/g、数平均分子量(Mn)2,500の芳香族カルボキシル基を有する分散剤D2を得た。
【0172】
製造例3−3
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、メチルメタクリレート40部、ベンジルメタクリレート28部、ブチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。このようにして、数平均分子量が3,800であり、一分子中の水酸基の平均個数3.5個である中間体を得た。該中間体を固形分で100部、トリメリット酸無水物5.1部、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、100℃で6時間反応させた。このようにして、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数が1個、固形分当たりの酸価30mgKOH/g、数平均分子量(Mn)4,000である芳香族カルボキシル基を有する分散剤D3を得た。
【0173】
製造例4−1
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gを仕込み、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
滴下管より、ベンジルメタクリレート0.3モル(52.9g)、メタクリル酸0.5モル(43.0g)、トリシクロデセン骨格を含有するジシクロペンテニルメタクリレートFA−511A(日立化成工業製)0.2モル(40.9g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート152.3gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6部をメトキシプロピルアセテートに溶解した溶液を添加し、更に1時間反応を継続した。
【0174】
その後、フラスコ内を空気置換に替え、グリシジルメタクリレート0.25モル(35.5g、カルボキシル基の50%)にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.8gおよびハイドロキノン0.14gを、120℃で6時間反応を続け固形分酸価80となったところで反応を終了し、不揮発分30%の樹脂B01を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は20000であった。
【0175】
製造例4−2
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gを仕込み、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
【0176】
滴下管より、ベンジルメタクリレート0.3モル(52.9g)、メタクリル酸0.5モル(43.0g)、トリシクロデカン骨格を含有するジシクロペンタニルメタクリレートFA−513M(日立化成工業製)0.2モル(44.1g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート209.5gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6部をメトキシプロピルアセテートに溶解した溶液を添加し、更に1時間反応を継続した。
【0177】
その後、フラスコ内を空気置換に替え、グリシジルメタクリレート0.25モル(35.5g、カルボキシル基の50%)にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.8gおよびハイドロキノン0.14gを、120℃で6時間反応を続け固形分酸価80となったところで反応を終了し、不揮発分30%の樹脂B2を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は21000であった。
【0178】
製造例4−3
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gを仕込み、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
【0179】
滴下管より、ベンジルメタクリレート0.3モル(52.9g)、メタクリル酸0.5モル(43.0g)、イソボニルアクリレートIBXA(大阪有機化学工製)0.2モル(40.9g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート153.9gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6部をメトキシプロピルアセテートに溶解した溶液を添加し、更に1時間反応を継続した。
その後、フラスコ内を空気置換に替え、グリシジルメタクリレート0.25モル(35.5g、カルボキシル基の50%)にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.8gおよびハイドロキノン0.14gを、120℃で6時間反応を続け固形分酸価80となったところで反応を終了し、不揮発分30%の樹脂B3を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は22000であった。
【0180】
製造例4−4
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gを仕込み、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
【0181】
滴下管より、ベンジルメタクリレート0.3モル(52.9g)、メタクリル酸0.5モル(43.0g)、アダマンタン基を含有するメタクリレート2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート0.2モル(46.9g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート166gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6部をメトキシプロピルアセテートに溶解した溶液を添加し、更に1時間反応を継続した。
その後、フラスコ内を空気置換に替え、グリシジルメタクリレート0.25モル(35.5g、カルボキシル基の50%)にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.8gおよびハイドロキノン0.14gを、120℃で6時間反応を続け固形分酸価80となったところで反応を終了し、不揮発分30%の樹脂B4を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は22000であった。
【0182】
製造例4−5
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gを仕込み、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
【0183】
滴下管より、ベンジルメタクリレート0.78モル(137.4g)、メタクリル酸0.22モル(18.9g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート271gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6部をメトキシプロピルアセテートに溶解した溶液を添加し、更に1時間反応を継続した。不揮発分30%の樹脂B5を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は18000であった。
【0184】
製造例4−6
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gを仕込み、窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。
【0185】
滴下管より、ベンジルメタクリレート0.5モル(88.1g)、メタクリル酸0.3モル(25.8g)、トリシクロデカン骨格を含有するジシクロペンタニルメタクリレートFA−513M(日立化成工業製)0.2モル(44.1g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート118.6gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6部をメトキシプロピルアセテートに溶解した溶液を添加し、更に1時間反応を継続し、不揮発分30%の樹脂B6を得た。GPCにより測定した重量平均分子量は20000であった。
【0186】
[実施例1]
製造例1で得られたジケトピロロピロール顔料(E1)1部、製造例2−1で得られた色素誘導体(S1)1部、分散剤(D1)4部、バインダー樹脂(B1)4部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート80.0部を混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したサンドミルを用いて5時間分散した。
[実施例2〜25]
実施例1において、表1に記載した顔料、色素誘導体、分散剤、バインダー樹脂の組み合わせに変更した以外は、同様にして顔料分散体を得た。
【0187】
[比較例1]
実施例1において、顔料を市販のジケトピロロピロール顔料(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガフォアレッドB−CF」)(E2)に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例2]
実施例1において、バインダー樹脂をB5に変更した以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例3]
実施例1において、製造例2−1で得られた色素誘導体(S1)を使用しない以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例4]
実施例1において、分散剤(D1)を使用しない以外は同様にして顔料分散体を得た。
【0188】
〔性能評価〕
得られた各顔料分散液を下記の方法に従って測定した。その結果を表1に記す。
1.粘度
各実施例および比較例における顔料分散液の25℃における粘度及び50℃1週間の経時粘度をE型粘度計(商品名TVE−22L、東機産業(株)社製)により測定し、表1に記載した。
2.コントラスト
・測定基板の作成
得られた顔料分散体を、スピンコ一ターを用いて、100mmx100mm、1.1mm厚のガラス基版上に塗布し、4種の着色膜の膜厚が異なる塗布基板を得た。次に、70℃で20分乾燥後、さらに230℃で1時間加熱して放冷後、測定用の塗布基板とした。
【0189】
・コントラストの測定
ガラス基板上形成したカラーフィルター用の感光性樹脂層を偏光板で挟み込み、偏光板が平行時の輝度と直行時の輝度とを(BM−5、トプコン社製)にて測定し、コントラスト(=平行時の輝度/直行時の輝度)を求めた。
4種の膜厚の異なる塗布基板の色相x値とコントラスト比の関係から、色相x=0.64のときのコントラスト比を算出した。
【0190】
3.耐熱性評価
得られた4種の膜厚の異なる塗布基板を、250℃で1時間再加熱を行い、電子顕微鏡を用いて倍率500倍で観察した。表に示した観察結果は、色相x=0.64となるときの膜厚のものである。
【0191】
○:結晶析出が認められない
△:わずかに結晶析出が認められる
×:多量の結晶析出が認められる。
【0192】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は従来の技術では難しかった高度に微細化された顔料の分散を可能にし、非常に高いコントラストを達成することができるとともに、加熱処理によってもジケトピロロピロール系顔料の結晶析出を抑制できるため、高品位のテレビやモニター用のカラーフィルターへの展開が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、色素誘導体、分散剤、バインダー樹脂および溶剤からなる顔料組成物であって、
色素誘導体が、一般式(1)
【化1】

(一般式「Q−X」中、Qは、キナクリドン残基、ジケトピロロピロール残基、ベンゾイソインドール残基、アントラキノン残基、ジアントラキノン残基、チアジンインジゴ残基、アゾ色素残基又はキノフタロン残基であり、
Xは、それぞれ独立して、−OH、−SOH、−COOH、これらの酸性基の1価〜3価の金属塩、アルキルアミン塩、ピペラジニル塩、モルホニル塩;フタルイミドメチル基;3級アミノ基を有する塩基性基が導入されたトリアジン環が−NH−の一端に結合した基;下記一般式(2)の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)又は(h)で表される基であり、T1は、それぞれ独立して、−SONH−、−CONH−、−CHNHCOCH−、−S−又は−NH−であり、T2は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基であり、 R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、−H、−NH、−NHCOCH又は−NHRであり、ここでRは、炭素数1〜4のアルキル基又は3級アミノ基を有する塩基性基を導入したトリアジン環である。)で表される化合物であり、
バインダー樹脂が、(A):ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、イソボニル基またはアダマンタン基を有するエチレン性不飽和単量体2〜50モル%、(B):分子内に少なくとも1つのカルボン酸基を有するエチレン性不飽和単量体2〜95モル%、(C):(A)および(B)成分と共重合し得る他のエチレン性不飽和単量体2〜50モル%、(A)〜(C)の合計が100モル%となる共重合体(P1)または前記(P1)に含まれるカルボン酸基の5〜100%に、グリシジル基を有するエチレン性不飽和単量体を付加した共重合体(P2)であることを特徴とするカラーフィルター用顔料分散体。
一般式(2)
【化2】

【請求項2】
顔料と色素誘導体の比率が100:0.1から100:100であることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項3】
分散剤が下記一般式(3)で示される化合物である請求項1または2記載のカラーフィルター用顔料分散体。
一般式(3)
【化3】

( 式中、Rは数平均分子量500〜10000のポリエステル残基、yは1〜2を表す。)

【請求項4】
分散剤が芳香族カルボキシル基を有する分散剤(E)で、芳香族トリカルボン酸無水物(F1)及び/または芳香族テトラカルボン酸無水物(F2)と水酸基を有する重合体を反応させてなる化合物(G)である請求項1または2記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項5】
水酸基を有する重合体(G)が、片末端に水酸基を有する重合体(G1)である請求項4記載のカラーフィルター用顔料分散体。

【請求項6】
水酸基を有する重合体(G)が、側鎖に水酸基を有する重合体(G2)であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項7】
片末端に水酸基を有する重合体(G1)が、片末端に2つの水酸基を有する重合体(G3)であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項8】
前記顔料が、有機顔料であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項9】
前記顔料が、ジケトピロロピロール化合物であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項10】
前記顔料が、C.I.ピグメント・レッド254であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項に記載のカラーフィルター用顔料分散体。
【請求項11】
請求項1から10いずれか1項に記載のカラーフィルター用顔料分散体からなるカラーフィルター用顔料インキ。


【公開番号】特開2012−172092(P2012−172092A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36539(P2011−36539)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】