説明

顔料分散体の製造方法、及び顔料分散体

【課題】高透過率、高コントラスト比をもち、流動性や経時保存安定性に優れ、経時による高粘度化や、コントラスト比の低下が抑制されたカラーフィルタ用顔料分散体の製造方法と顔料分散体を提供する。
【解決手段】有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤とを含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bと、を混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散して顔料分散体Cを製造する工程を含むことを特徴とする顔料分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置、カラー撮像管素子等を構成するカラーフィルタの製造に使用される顔料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カラーフィルタの製造方法としては、耐光性、耐熱性に優れる顔料を着色剤とする顔料分散法と呼ばれる方法が主流となっている。顔料分散法では、例えば、透明樹脂または溶剤中に顔料を分散した顔料分散体を作製し、これに光重合性単量体、光重合開始剤等を混合、調整してなるカラーフィルタ用着色レジストが用いられている。
【0003】
また、カラーフィルタのような光の透過により色表現する機能を有する部材においては、高透過率、高コントラスト比、耐光性などが求められ、一般的に微細化した顔料が用いられている。特に近年は、液晶表示装置に対してより高輝度、高コントラスト比が求められることから、極限まで微細化処理して一次粒子の粒径を小さくした顔料が用いられるようになっている。このような微細化処理した顔料の一次粒子の一部は、凝集して二次粒子を生成するため、一般的には分散機を用いて顔料を透明樹脂または溶剤中に分散することにより、顔料の二次粒子をほぐしている。しかしながら、顔料を透明樹脂または溶剤中に分散する際に、過度な分散を行うと、二次粒子が一次粒子へほぐされるのと並行して、一次粒子の破砕が進み、得られる顔料分散体の安定性が低下する。また、カラーフィルタ用着色レジストの中間体として製造される顔料分散体は、後工程で添加する光重合性単量体、光重合開始剤等の溶解性やカラーフィルタ用着色レジストの組成自由度向上のため、特に顔料濃度や固形分をあげて調整されることが多い。従って、顔料分散体では、顔料と樹脂および溶剤との相互作用が大きくなり、顔料分散体の方が、最終のカラーフィルタ用着色レジストと比べて、顔料の分散度および粘性のコントロールが難しい。そのため、このような顔料分散体を用いてカラーフィルタ用着色レジストを調整すると、液晶表示装置の画素欠陥の要因となる大きさの塊状の顔料固形物を形成することがある。
【0004】
また、カラーフィルタを形成するRGB(赤、緑、青)などの各色フィルタセグメントは、一般に単一の顔料だけでは目標の分光スペクトルを得られないために2種以上の顔料を含む顔料分散体を用いることが多いが、異なる種類の顔料はヘテロ凝集を生じやすく、2種以上の微細な顔料を含む場合には、安定な顔料分散体を得ることが特に困難となっている。この際、補色関係にある顔料を含む顔料分散体を用いることが一般的である。
【0005】
上述の理由から、2種類以上の微細顔料を用いた顔料分散体においては高透過率、高コントラスト比を得ることが困難であるため、従来は、特許文献1にあるように着色レジストを製造する際に、赤色顔料を分散した顔料分散体に、橙色顔料を分散した顔料組成物を加え、さらに光重合性単量体、光開始剤を加え混合することや、赤色顔料と橙色顔料を混合して分散した顔料分散物に、光重合性単量体、光開始剤を加えることが開示されている。
しかし、従来の製造方法では、上述の高輝度、高コントラスト比への要求に対応すべく極限まで微細化した顔料を分散した場合や、またこれらの微細化顔料を複数用いた場合には、経時安定性に優れた顔料分散体を得ることは難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−51112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高透過率、高コントラスト比をもち、流動性や経時保存安定性に優れ、経時による高粘度化や、コントラスト比の低下が抑制されたカラーフィルタ用顔料分散体の製造方法と顔料分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤とを含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bと、を混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散して顔料分散体Cを製造する工程を含むことを特徴とする顔料分散体の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、顔料組成物Aが、有機顔料Aと透明樹脂および有機溶剤とを湿式分散してなる顔料分散体Aであることを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、顔料組成物Aまたは顔料分散体Bが、顔料分散剤を含むことを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、有機顔料Bが、有機顔料Aの補色顔料であることを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、顔料分散体Cに含まれる有機顔料Aの含有量が、全顔料重量を基準として、97%〜55%の範囲であることを特徴とする上記顔料分散体の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、上記製造方法により製造されてなる顔料分散体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の顔料分散体の製造方法により、少なくとも有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤を含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bとを混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散する事で、流動性、経時保存安定性に優れ、経時によるコントラスト比低下や、粘度増加等が抑制された顔料分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるカラーフィルタ用顔料分散体Cの製造方法は、少なくとも有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤を含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bとを混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散することを特徴とする。
【0016】
<顔料分散体Cの製造方法>
まず、顔料分散体Cを製造する工程について説明する。
本発明の顔料分散体Cを製造する工程は、少なくとも有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤を含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bとを混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散する工程からなる。ここで、顔料組成物とは、単に顔料と、透明樹脂、有機溶剤等を混合したのみのものであり、湿式分散処理を施してはいないものであっても、湿式分散処理を施したものであってもよい。
【0017】
(顔料組成物A、顔料分散体Aの製造)
本発明の顔料組成物Aは、少なくとも有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤とからなり、透明樹脂および有機溶剤をともに含んでいてもよい。
顔料組成物Aは、緑色有機顔料Aと透明樹脂および/または有機溶剤とを攪拌機等により混合するだけで製造することができるが、有機顔料Aと透明樹脂および有機溶剤を湿式分散して製造し、顔料分散体Aとして用いると、高コントラスト比となるため、好ましい。
【0018】
(顔料分散体Bの製造)
顔料分散体Bは、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂および有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体である。
【0019】
顔料分散体Aおよび顔料分散体Bの製造における湿式分散は、有機顔料、透明樹脂、有機溶剤、および必要に応じて顔料分散剤、添加剤等を混合して、三本ロールミル、二本ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機、超音波分散機、または円筒型分散機の横型、縦型、さらには環状型(アニュラータイプ)等のビーズミルのようなメディア型湿式分散機で分散することにより行うことができる。
また、顔料分散体Aおよび顔料分散体Bは、有機顔料と熱可塑性樹脂とを含む着色チップの形態を経て製造した顔料分散体でも良い。着色チップは、有機顔料、熱可塑性樹脂および必要に応じて顔料分散剤などのその他の成分を、ヘンシェルミキサー、クーラーミキサー、ナウターミキサー、ドラムミキサー、タンブラー等を用い混合した後に、三本ロールミル、二本ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機等により加熱、混練し、冷却後粉砕することにより製造される。こうして製造された着色チップは、必要に応じ、ハンマーミル、ターボクラッシャー、エアージェットミルなどの各種粉砕装置を用い微細化され、有機溶剤に攪拌溶解するだけで容易に溶解する。着色チップは、そのまま用いることもでき、さらにビーズミル等のメディア型湿式分散機で有機溶剤に分散しておくこともできる。
着色チップを用いる方法は、得られる顔料分散体のコントラスト比向上効果が大きくなるため好ましい。
【0020】
(顔料分散体Cの製造)
顔料分散体Cは、顔料組成物Aまたは顔料分散体Aと、顔料分散体Bとを混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散することにより製造される。
メディア型湿式分散機の種類としては、横型、縦型、さらには環状型(アニュラータイプ)の円筒型分散機があり、例えば、ペイントコンディショナー、アトライター、サンドミル、ダイノミル、ボールミル、スーパーアペックスミル、コボールミル、ダイヤモンドファインミル、DCPミル、OBミル、アイガーミル、スパイクミル、ピコグレンミル等のビーズミルが挙げられる。なかでも環状型(アニュラータイプ)分散機であるスーパーアペックスミル、アイガーミル、DCPミル、ピコグレンミルなどが好ましい。
【0021】
メディアの材質は、剛体であれば特に限定されるものでなく、一般に用いられているガラス、スチール、ステンレス、陶磁器、ジルコン、ジルコニア等が挙げられる。また、メディアの粒径は、微分散、高コントラスト比を達成するために1.0mmφ以下が好ましく、さらに0.5〜0.05mmφの範囲のメディアを用いると、より高コントラスト比の効果を発揮しやすいため好ましい。また、あらかじめ粒径の大きいメディアを用いた湿式分散機で分散した後に、それよりも粒径の小さいメディアを用いて多段階の湿式分散を行うことも分散効率の面で好ましい。分散方法としては、循環およびパス分散のいずれでも用いることができる。
【0022】
このように、有機顔料Bを透明樹脂および有機溶剤中にあらかじめ湿式分散し、均一に分散した顔料分散体Bと、有機顔料Aを含む顔料組成物Aを混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散することにより、透明樹脂および有機溶剤中に分散された2種以上の微細化された顔料同士が安定に存在することができ、経時による増粘、およびコントラスト比の低下を抑制することが可能となる。
【0023】
<顔料組成物A、顔料分散体A、及び顔料分散体Bの構成材料>
以下、本発明の顔料組成物A、顔料分散体A、及び顔料分散体Bを構成する各成分について説明する。
<有機顔料>
顔料組成物A、顔料分散体A及びBに用いられる有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
赤色顔料分散体を製造する場合には、有機顔料Aとして赤色顔料を用い、他の有機顔料Bとして他の赤色顔料、黄色顔料またはオレンジ顔料を用いことが好ましい。
赤色顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、255、264、272等が用いられる。
なかでも、C.I.Pigment Red48:1、177、242、及び254からなる群から選ばれる赤色顔料を有機顔料Aとして用いることが好ましい。
【0024】
緑色顔料分散体を製造する場合には、有機顔料Aとして緑色顔料を用い、他の有機顔料Bとして他の緑色顔料または黄色顔料を用いることが好ましい。緑色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green7、10、36、37、58等が用いられる。
なかでも、C.I.Pigment Green7、36、及び58からなる群から選ばれる緑色顔料を有機顔料Aとして用いることが好ましい。
【0025】
青色顔料分散体を製造する場合には、有機顔料Aとして青色顔料を用い、他の有機顔料Bとして他の青色顔料または紫色顔料を用いることが好ましい。
青色顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、80等が用いられる。
なかでも、C.I.Pigment Blue15:6を有機顔料Aとして用いることが好ましい。
【0026】
シアン色顔料分散体を製造する場合には、有機顔料Aとして青色顔料を用い、他の有機顔料Bとして黄色顔料または緑色顔料を用いることが好ましい。
青色顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、80等が用いられる。
なかでも、C.I.Pigment Blue15:3または15:4を有機顔料Aとして用いることが好ましい。
【0027】
マゼンタ色顔料分散体を製造する場合には、有機顔料Aとして赤色顔料を用い、他の有機顔料Bとして黄色顔料または紫色顔料を用いることが好ましい。
赤色顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 144、146、177、169、81等が用いられる。
【0028】
イエロー色顔料分散体を製造する場合には、有機顔料Aとして黄色顔料を用い、他の有機顔料Bとして他の黄色顔料を用いることが好ましい。
黄色顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199等が用いられる。
なかでも、C.I.Pigment Yellow 138、139、150、185及び199からなる群から選ばれる黄色顔料を有機顔料Aおよび有機顔料Bとして用いることが好ましい。
【0029】
赤色顔料分散体、緑色顔料分散体、シアン色顔料分散体、マゼンタ色顔料分散体に含まれる黄色顔料としては、イエロー色顔料分散体に含まれる黄色顔料と同様のものを用いることができる。
【0030】
シアン色顔料分散体に含まれる緑色顔料としては、緑色顔料分散体に含まれる緑色顔料と同様のものを用いることができる。
【0031】
赤色顔料分散体に含まれるオレンジ顔料としては、例えばC.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71等のオレンジ色顔料を用いることができる。なかでも、C.I.Pigment Orange43またはC.I.Pigment Orange71が好ましい。
【0032】
青色顔料分散体、マゼンタ色顔料分散体に含まれる紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet19またはC.I.Pigment Violet23が好ましい。
【0033】
工程により得られる顔料分散体Cに含まれる有機顔料Aの含有量は、用途に応じて適宜選択することができ、全顔料重量を基準(100重量%)として、55〜97重量%の範囲であることが好ましい。また、より好ましくは66〜92%であり、さらに好ましくは 75〜88重量%である。また、有機顔料Aの含有量が全顔料を基準(100重量%)として、55重量%未満の場合、経時により増粘してしまい、また、92重量%を超えると経時によりコントラスト比が低下してしまい好ましくない。
【0034】
また、顔料組成物A、顔料分散体Aおよび顔料分散体Bに用いられる有機顔料の体積平均一次粒子径は、20〜100nmであることが好ましく、特に好ましいのは25〜85nmの範囲である。有機顔料の体積平均一次粒子径が20nm以上であると有機溶剤中への分散が容易であり、100nm以下であると十分なコントラスト比を得ることができるため、好ましい。
本発明における体積平均一次粒子径は、透過型(TEM)電子顕微鏡写真を用いて、100個の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、短軸径と長軸径の平均をその顔料粒子の粒径(d)とし、次いで個々の顔料が、求めた粒径を有する球と仮定してそれぞれの粒子の体積(V)を求め、この作業を100個の顔料粒子について行い、そこから下式より得られる体積平均粒径(MV)を平均一次粒子径としたものである。
MV=Σ(V・d)/Σ(V)
【0035】
<顔料の微細化>
顔料組成物A、顔料分散体Aおよび顔料分散体Bに用いられる有機顔料は、例えばソルトミリング処理を行い、微細化することが好ましい。
ソルトミリング処理とは、有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤との混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する処理である。水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して顔料が破砕され、それにより活性面が生じて、結晶成長がおこると考えられている。従って、混練時は有機顔料の破砕と結晶成長が同時に起こり、混練条件により得られる有機顔料の一次粒子径および形状が異なる。
【0036】
得られる有機顔料の一次粒子径および形状の観点から、加熱温度が40〜150℃であることが好ましい。加熱温度が40℃未満の場合は、結晶成長が十分に起こらず、顔料粒子の形状が無定形に近くなるため好ましくない。一方、加熱温度が150℃を越える場合は、結晶成長が進みすぎ、顔料の一次粒子径が大きくなるため、カラーフィルタ用着色レジストの着色料としては好ましくない。また、ソルトミリング処理の混練時間は、ソルトミリング処理顔料の一次粒子の粒度分布とソルトミリング処理に要する費用のバランスの点から2〜24時間であることが好ましい。
【0037】
また、ソルトミリング処理に用いる水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いるのが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、有機顔料100重量部に対して、50〜2000重量部用いることが好ましく、300〜1000重量部用いることが最も好ましい。
【0038】
また、水溶性有機溶剤は、有機顔料および水溶性無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。ただし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましい。例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が用いられる。水溶性有機溶剤は、有機顔料100重量部に対して、5〜1000重量部用いることが好ましく、50〜500重量部用いることが最も好ましい。
【0039】
ソルトミリング処理する際には、必要に応じて樹脂を添加してもよい。用いられる樹脂の種類は特に限定されず、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等を用いることができる。用いられる樹脂は、室温で固体であり、水不溶性であることが好ましく、かつ上記有機溶剤に一部可溶であることがさらに好ましい。樹脂の使用量は、有機顔料100重量部に対して5〜200重量部の範囲であることが好ましい。
【0040】
<顔料分散剤>
本発明における顔料組成物Aまたは顔料分散体Bは、適宜、顔料誘導体や、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤等の顔料分散剤を含むことが好ましい。そのため、顔料組成物A、顔料分散体Bともに顔料分散剤を含んでいることが好ましい。
【0041】
色素誘導体は、下記一般式(1)で示される化合物であり、塩基性置換基を有するものと酸性置換基を有するものとがある。
【0042】
一般式(1):
A−B 式(1)
A:有機色素残基
B:塩基性置換基又は酸性置換基
【0043】
色素誘導体は、例えば、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、又は特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
色素誘導体の配合量は、顔料100重量部に対して好ましくは0.1〜30重量部であり、最も好ましくは、顔料100重量部に対して0.5〜25重量部である。顔料全量に対し色素誘導体の配合量が、0.1重量部未満であると分散性が悪くなる場合があり、30重量部を超えると耐熱性、耐光性が悪くなる場合がある。
【0044】
樹脂型顔料分散剤としては、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、色素担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の色素担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
市販の樹脂型顔料分散剤としては、ビックケミー社製のDisperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、またはAnti−Terra−U、203、204、またはBYK−P104、P104S、220S、またはLactimon、Lactimon−WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE−3000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32600、34750、36600、38500、41000、41090、53095等、エフカケミカルズ社製のEFKA−46、47、48、452、LP4008、4009、LP4010、LP4050、LP4055、400、401、402、403、450、451、453、4540、4550、LP4560、120、150、1501、1502、1503等が挙げられる。
【0046】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
樹脂型顔料分散剤、界面活性剤を添加する場合には、顔料100重量部に対し好ましくは0.1〜55重量部、さらに好ましくは0.1〜45重量である。分散助剤の配合量が、0.1重量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、配合量が55重量部より多いと、過剰な分散助剤により分散に影響を及ぼすことがある。
【0048】
(透明樹脂)
透明樹脂としては、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において分光透過率が80%以上、さらには95%以上の樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性樹脂を用いることができる。
【0049】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂等が挙げられる。
【0050】
また、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子と、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光硬化性基を該線状高分子に導入した樹脂や、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化した樹脂等が挙げられる。
【0051】
顔料組成物A、顔料分散体Aおよび顔料分散体Bに用いられる透明樹脂は、顔料100重量部に対し好ましくは17〜710重量部、さらに好ましくは76〜267重量部である。
【0052】
(有機溶剤)
顔料組成物A、顔料分散体Aおよび顔料分散体Bに用いられる有機溶剤としては、例えば1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、N−メチルピロリドン、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
好ましい有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、シクロヘキサノン、および2−アセトキシプロピオン酸エチルである。また、より好ましい有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンおよびシクロヘキシルアセテートである。
2種以上の有機溶剤を用いる場合は、顔料や樹脂との親和性や有機溶剤の乾燥性等を考慮して適宜その比率を増減する。
【0053】
また、顔料分散体に用いられる有機溶剤は、着色レジストが塗工装置内で乾燥し固体状の凝集物や乾燥膜にならないためには、760mmHgにおける沸点が130℃以上であることが好ましく、より好ましくは140℃以上である。また、基板に塗工したときの乾燥が容易であるために、沸点が190℃以下であることが好ましく、より好ましくは180℃以下である。
【0054】
顔料組成物A、顔料分散体Aおよび顔料分散体Bに用いられる有機溶剤は、顔料100重量部に対し好ましくは460〜810重量部、さらに好ましくは490〜590重量である。
【0055】
(粗大粒子の除去)
顔料分散体A、顔料分散体B、および顔料分散体Cは、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。特に好ましくは、0.3μm以上の粒子を除去する。なお、ここでの粒子径は、SEMにより測定した粒子径を意味する。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」とは「重量部」及び「重量%」をそれぞれ意味する。
【0057】
まず、実施例及び比較例で用いたアクリル樹脂溶液、微細化処理顔料、顔料組成物A、顔料分散体A、顔料分散体Bの製造方法、及び顔料分散剤溶液の調整について説明する。
【0058】
なお、アクリル樹脂の分子量は、装置としてHLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラムとしてTSK−GEL SUPER HZM−Nを2連でつなげて使用し、溶媒としてTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0059】
また、顔料の体積平均一次粒子径(MV)は、透過型(TEM)電子顕微鏡写真を用いて、100個の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、短軸径と長軸径の平均をその顔料粒子の粒径(d)とし、次いで個々の顔料が、求めた粒径を有する球と仮定してそれぞれの粒子の体積(V)を求め、この作業を100個の顔料粒子について行い、そこから下式より算出した。
MV=Σ(V・d)/Σ(V)
【0060】
<アクリル樹脂溶液の製造>
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70.0部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、n−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノール エチレン オキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)7.4部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)が26,000のアクリル樹脂溶液を得た。
室温まで冷却した後、アクリル樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して固形分を測定した。測定結果に基づき、先に合成したアクリル樹脂溶液に、固形分が30%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加して、アクリル樹脂溶液を得た。
【0061】
<微細化処理顔料の製造>
【0062】
(赤色微細化処理顔料(PR-1)の調製)
赤色顔料C.I.Pigment Red 177(チバ・ジャパン社製「クロモフタルレッド A2B」)500部、塩化ナトリウム3500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、120℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、赤色微細化処理顔料(PR-1)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は30nmであった。
【0063】
(赤色微細化処理顔料PR-2の調製)
赤色顔料C.I.Pigment Red 254(チバ・ジャパン社製「イルガフォアレッド B−CF」)152部、一般式(1)の色素誘導体8部、塩化ナトリウム1600部、及びジエチレングリコール190部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で10時間混練した。つぎにこの混合物を3リットルの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして塩化ナトリウム及び溶剤を除いた後、80℃で1昼夜乾燥し、赤色微細化処理顔料(PR-2)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は35nmであった。
【0064】
一般式(1):
【化1】




【0065】
(緑色微細化処理顔料(PG-1)の製造)
緑色顔料C.I.Pigment Green 36(東洋インキ製造株式会社製「リオノールグリーン 6YK」)500部、塩化ナトリウム1500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、120℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、緑色微細化処理顔料(PG-1)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は32nmであった。
(緑色微細化処理顔料(PG−2)の製造)
緑色顔料C.I.Pigment Green 58(DIC株式会社製「ファーストゲーングリーンA110」)500部、塩化ナトリウム1500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、120℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、緑色微細化処理顔料(PG−2)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は25nmであった。
【0066】
(青色微細化処理顔料(PB-1)の製造)
青色顔料C.I.Pigment Blue 15:6(東洋インキ製造社製「リオノールブルーES」)500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、120℃で12時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、青色微細化処理顔料(PB-1)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は25nmであった。
【0067】
(黄色微細化処理顔料(PY−1)の製造)
キノフタロン系黄色顔料C.I.Pigment Yellow138(BASF社製「パリオトールイエロー K0960−HD」)500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール:250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、100℃で6時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、黄色微細化処理顔料(PY−1)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は26nmであった。
【0068】
(黄色微細化処理顔料(PY−2)の製造)
金属錯体系黄色顔料C.I.Pigment Yellow150(ランクセス社「E4GN」)500部、塩化ナトリウム2500部、及びジエチレングリコール250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、100℃で6時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、黄色微細化処理顔料(PY−2)を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は28nmであった。
【0069】
(紫色微細化処理顔料(PV-1)の製造)
ジオキサジン系紫色顔料C.I.Pigment Violet 23(Clariant社製「Fast Violet RL」)500部、塩化ナトリウム2500部、及びポリエチレングリコール(東京化成社製)250部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、120℃で12時間混練した。次に、この混合物を約5リットルの温水に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除き、80℃で一昼夜乾燥し、紫色微細化処理顔料PV-1を得た。得られた顔料の体積平均一次粒子径は30nmであった。
【0070】
<顔料分散剤溶液Xの調整>
樹脂型分散剤(味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、固形分30%の顔料分散剤溶液(X−1)を調整した。また、同様に樹脂型分散剤(ビックケミー・ジャパン社製「BYK2001」)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、固形分30%の顔料分散剤溶液(X−2)を調整した。
【0071】
<顔料組成物A、顔料分散体Aの製造>
(赤色顔料組成物(A−1)の製造)
赤色微細化処理顔料(PR−1)19.5部、顔料分散剤溶液(X−1)13.0部、アクリル樹脂溶液22.0部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45.5部の混合物を1.0時間、ディスパーで均一に撹拌混合し赤色顔料組成物(A−1)を得た。
(赤色顔料組成物(A−2)の製造)
赤色微細化処理顔料を赤色微細化処理顔料(PR−2)とした以外は、(赤色顔料分散体(A−1)の製造)と同様に赤色顔料組成物(A−2)を得た。
(緑色顔料組成物(A−3)の製造)
赤色微細化処理顔料(PR−1)を緑色微細化処理顔料(PG−1)とした以外は、(赤色顔料分散体(A−1)の製造)と同様に緑色顔料組成物(A−3)を得た。
(緑色顔料組成物(A−4)の製造)
赤色微細化処理顔料(PR−1)を緑色微細化処理顔料(PG−2)とした以外は、(赤色顔料分散体(A−1)の製造)と同様に緑色顔料組成物(A−4)を得た。
【0072】
(緑色顔料組成物(A−5)の製造)
緑色微細化処理顔料(PG−2)22.5部、顔料分散剤溶液(X−1)15.0部、アクリル樹脂溶液10.0部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート52.5部の混合物を1.0時間、ディスパーで均一に撹拌混合し緑色顔料組成物(A−5)を得た。
(緑色顔料組成物(A−6)の製造)
緑色微細化処理顔料(PG−2)35.8部、顔料分散剤溶液(X−1)23.9部、アクリル樹脂溶液40.3部の混合物を充分混合した後、2本ロールミルにて練肉し、シート状物とした。このシート状物を数枚に折り畳み、再度2本ロールミルに通した。この工程を10〜40回繰り返し行った後、粉砕機で粉砕し、緑色顔料組成物(A−6)を得た。得られた顔料分散体(A−6)の固形分を測定したところ92%であった。
(緑色顔料分散体(A−7)の製造)
緑色顔料組成物(A−4)66.7部を直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、メディア型湿式分散機としてアイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)を用いて4時間分散し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33.3部を追加し0.5時間分散し、緑色顔料分散体(A−7)を得た。
【0073】
(青色顔料組成物(A−8)の製造)
赤色微細化処理顔料(PR−1)を青色微細化処理顔料(PB−1)とした以外は、(赤色顔料組成物(A−1)の製造)と同様に青色顔料組成物(A−8)を得た。
【0074】
<顔料分散体Bの製造>
(黄色顔料分散体(B−1)の製造)
黄色微細化処理顔料(PY−1)を10.0部、顔料分散剤溶液(X−1)6.7部、アクリル樹脂溶液26.7部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23.4部の混合物をディスパーで均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、メディア型湿式分散機としてアイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)を用いて4時間分散した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33.2部を添加し、黄色顔料分散体(B−1)を得た。
(黄色顔料分散体(B−2)の製造)
黄色微細化処理顔料を(PY−2)とし、顔料分散剤溶液(X−1)を顔料分散剤溶液(X−2)にした以外は、(黄色顔料分散体(B−1)の製造)と同様に黄色顔料分散体(B−2)を得た。
【0075】
(紫色顔料分散体(B−3)の製造)
紫色微細化処理顔料を(PV−1)とし、顔料分散剤溶液(X−1)を顔料分散剤溶液(X−2)にした以外は、(黄色顔料分散体(B−1)の製造)と同様に紫色顔料分散体(B−3)を得た。
【0076】
[実施例1]
赤色顔料組成物(A−1)72.9部に、黄色顔料分散体(B−1)27.1部を加え、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、メディア型湿式分散機としてアイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)を用いて4.0時間分散し、さらにアクリル樹脂溶液、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて顔料分50%、固形分18%となるように調整し、5.0μmのフィルタで濾過をすることにより顔料分散体(DG−1)を得た。
【0077】
[実施例2〜8]
赤色顔料組成物(A−1)、黄色顔料分散体(B−1)を、表1に示される顔料組成物に置き換えた以外は実施例1と同様にして顔料分散体(DG−2〜DG−8)を得た。
【0078】
[実施例9〜21]
赤色顔料組成物(A−1)、黄色顔料分散体(B−1)を、表1に示される顔料組成物、顔料分散体の種類および、量を置き換えた以外は実施例1と同様にして顔料分散体(DG−9〜DG−21)を得た。
【0079】
[実施例22]
緑色顔料組成物(A−6)17.4部に、黄色顔料分散体(B−2)19.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.4部を加え、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、メディア型湿式分散機としてアイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)を用いて4.0時間分散し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33.4部を加え、0.5時間分散した。さらにアクリル樹脂溶液、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて顔料分50%、固形分18%となるように調整し、5.0μmのフィルタで濾過をすることにより顔料分散体(DG−22)を得た。
【0080】
[実施例23]
緑色顔料組成物(A−7)80.2部に、黄色顔料分散体(B−2)19.8部を加え、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、メディア型湿式分散機としてアイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)を用いて4.0時間分散し、さらにアクリル樹脂溶液、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて顔料分50%、固形分18%となるように調整し、5.0μmのフィルタで濾過をすることにより顔料分散体(DG−23)を得た。
【0081】
[実施例24]
緑色顔料組成物(A−1)、黄色顔料分散体(B−1)を、表1に示される顔料組成物に置き換えた以外は実施例1と同様にして顔料分散体(DG24)を得た。
【0082】
[比較例1]
赤色顔料組成物(A−1)72.9部と、黄色顔料分散体(B−1)27.1部を均一になるようにディスパーで攪拌混合し、(この際に、メディア型分散機は通さず、分散処理は施さない。)さらにアクリル樹脂溶液、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて顔料分50%、固形分18%となるように調整し、5.0μmのフィルタで濾過をすることにより顔料分散体(DG−C1)を得た。
【0083】
[比較例2〜9]
表1に示した顔料分散体Aおよび顔料分散体Bの種類の組み合せに変更して顔料分散体(DG−C2〜DG−C9)を得た。
【0084】
【表1】

【0085】
以下に、顔料分散体の評価方法について説明する。
(初期粘度、経時増粘率の測定)
顔料分散体の粘度は、顔料分散体調整当日25℃において、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて回転数20rpmにおける粘度(初期粘度)を測定した。
そして、顔料分散体調整当日から数えて7日間40℃で静置したものについて、25℃にサンプル温度を戻した後に、上記粘度測定法に従い、経時粘度を測定し、下式から経時増粘率を求めた。
経時増粘率=(経時粘度)/(初期粘度)×100(%)
【0086】
(初期コントラスト比、経時コントラスト比変化率の測定法)
各顔料分散体を10cm×10cmのガラス基板上にスピンコータで塗工し、70℃のオーブン内に15分間静置、余剰の溶剤を除去乾燥させ、約2.0μmの厚さの顔料分散体が塗布されたガラス基板を作成し、下記の方法でコントラスト比を測定した。
顔料分散体塗布基板を2枚の偏光板の間に挟み、一方の偏光板側から液晶ディスプレー用バックライトユニットを用いて光を照射する。バックライトユニットから出た光は、1枚目の偏光板を通過して偏光され、ついで顔料分散体塗布基板を通過し、2枚目の偏光板に到達する。1枚目の偏光板と2枚目の偏光板の偏光面が平行であれば、光は1枚目の偏光板を透過するが、偏光面が直行している場合には光は2枚目の偏光板により遮断される。しかし、1枚目の偏光板によって偏光された光が、顔料分散体塗布基板を通過するときに、顔料粒子による散乱等が起こり偏光面の一部にずれを生じると、偏光板が平行のときは2枚目の偏光板を透過する光量が減り、偏光板が直行のときは2枚目の偏光板を光の一部が透過する。この透過光の輝度を偏光板上の輝度計にて測定し、偏光板が平行のときの輝度と直行のときの輝度との比をコントラスト比とする。
コントラスト比=(平行のときの輝度)/(直行のときの輝度)
【0087】
顔料分散体塗布膜中の顔料により散乱が起こると、平行のときの輝度が低下し、かつ直行のときの輝度が増加するため、コントラスト比が低くなる。
なお、輝度計は株式会社トプコン社製「色彩輝度計BM−5A」、偏光板はサンリツ社製「偏光フィルムLLC2−92−18」を用いた。なお、測定に際しては、不要光を遮断するために、測定部分に1cm角の孔を開けた黒色のマスクを当てた。
そして、顔料分散体の分散当日から数えて7日間40℃で静置したものについて、上述の方法と同様にして、経時コントラスト比を測定し、下式から経時コントラスト比変化率を算出した。
経時コントラスト比変化率=経時コントラスト比/初期コントラスト比×100(%)
【0088】
(評価)
経時安定性に関しては、経時増粘率、経時コントラスト比変化率により評価を行った。経時増粘率は90%〜120%であれば実用上耐えうる。この範囲を超え減粘又は増粘してしまうと、顔料分散体をガラス基板に塗工するときに、同一の塗工条件で塗布することが出来ず、生産性に問題が出てきてしまう。より好ましくは、95%〜105%の範囲である。また、経時コントラスト比変化率は90%以上であることが好ましく、より好ましくは、95%以上である。89%以下であると、極端にライフの短い顔料分散体となってしまう。
上記のようにして得られた顔料分散体(DG−1〜DG−24、DG−C1〜DG−C9)の経時増粘率、経時コントラスト比変化率の評価結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例のように、少なくとも有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤を含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bとを混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散することによって、経時増粘率が90%〜120%であり、経時コントラスト比変化率が90%以上の経時保存安定性にすぐれた顔料分散体を得る事ができた。
【0091】
中でも、顔料組成物Aが有機顔料Aと透明樹脂および有機溶剤を湿式分散してなる顔料分散体Aである場合には、初期のコントラスト比が高く、良好であった。
また、顔料分散体Cに含まれる有機顔料Aの含有量が全顔料重量を基準として、97重量%〜55重量%の範囲であれば、流動性、経時保存安定性に優れ、経時によるコントラスト比低下や、粘度増加等が抑制された顔料分散体を得ることができる。また、92〜66重量%の範囲であればさらに経時増粘率が良好であり、88重量%〜75重量%であれば、さらに経時コントラスト比変化率が良好となる。これに対し、比較例では、顔料分散体Aと顔料分散体Bとを混合攪拌のみをした場合、2種類の顔料を一緒に分散した場合では特に経時コントラスト比の減少が大きくライフの極端に短い顔料分散体となってしまう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料Aと透明樹脂又は有機溶剤とを含む顔料組成物Aと、有機顔料A以外の1種類以上の有機顔料Bを透明樹脂及び有機溶剤に湿式分散してなる顔料分散体Bと、を混合し、さらにメディア型湿式分散機を用いて湿式分散して顔料分散体Cを製造する工程を含むことを特徴とする顔料分散体の製造方法。
【請求項2】
顔料組成物Aが、有機顔料Aと透明樹脂および有機溶剤とを湿式分散してなる顔料分散体Aであることを特徴とする請求項1記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
顔料組成物Aまたは顔料分散体Bが、顔料分散剤を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
有機顔料Bが、有機顔料Aの補色顔料であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
顔料分散体Cに含まれる有機顔料Aの含有量が、全顔料重量を基準として、97%〜55%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の製造方法により製造されてなる顔料分散体。

【公開番号】特開2010−242036(P2010−242036A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95395(P2009−95395)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】