説明

顔料微粒子の製造方法、及び顔料微粒子分散物

【課題】微小な顔料粒子の製造方法、並びに顔料粒子が凝集せず分散性、流動性および経時安定性に優れた顔料微粒子分散物を提供する。
【解決手段】顔料が保護基により修飾された構造の顔料前駆体について、ヘテロ環基を有する重合体の存在下で前記顔料前駆体の保護基を脱離させて、前記顔料前駆体を前記顔料に転換させる工程を含む、顔料微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な顔料粒子の製造方法、及び分散性・経時安定性に優れた顔料微粒子分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着色材としての顔料は、鮮明な色調と高い着色力、耐候性を有し、多くの分野で広く使用されてきている。これらの顔料の中でも実用上重要なものは、一般に、微細な粒子のものが多く、該顔料の凝集を防ぎ微細化することによって鮮明な色調と高い着色力とが得られる。
【0003】
このような微細な有機顔料は、例えば塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等を用途としてあげることができ、非常に重要な化合物となっている。中でも高性能が要求され、実用上特に重要なものとしては、インクジェット用顔料及びカラーフィルタ用顔料が挙げられる。
【0004】
インクジェット用インクの色材については、従来、染料が用いられてきたが、耐水性や耐光性の点で問題があり、高い耐水性や耐光性を有する顔料が用いられるようになってきている。顔料インクにより得られた画像は、染料系のインクによる画像に比べて耐光性、耐水性に優れるという利点を有する。しかしながら、紙表面の空隙にしみこむことが可能なナノメートルサイズで均一に微細化(すなわち単分散化)することは難しく、紙への密着性に劣るという問題がある。
【0005】
またデジタルカメラの高画素化に伴い、CCDセンサーなどの光学素子や表示素子に用いるカラーフィルタの薄層化が望まれている。カラーフィルタには有機顔料が用いられているが、フィルタの厚さは有機顔料の粒子径に大きく依存するため、ナノメートルサイズレベルでしかも単分散で安定な微粒子の製造が望まれている。
【0006】
しかし、例えばソルトミリングのような物理的な方法(ブレイクダウン法)で顔料をより微細化していくと、該顔料の分散液は高粘度を示すことが多い。このため、この顔料分散液を工業的規模で調製した場合は、該顔料分散液の分散機からの取り出しが困難となったり、パイプラインによる輸送ができなくなったり、更には貯蔵中にゲル化して使用不能となる等の問題があった。
【0007】
そこで、従来においては、流動性、分散性に優れた顔料分散液あるいは着色感光性組成物を得るため、有機顔料の表面処理を行ったり(例えば、特許文献1及び2参照)、種々の分散剤を使用したりすることが知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかしながらこれら方法で調製された有機顔料については、分散性・流動性に問題が有り、満足のいくものを供給できていないのが現状である。
【0008】
また、良溶媒に溶解した試料を攪拌条件や温度を制御した貧溶媒に注入することにより、ナノ粒子を得る再沈法を用いる方法がある(例えば特許文献5参照)。この方法(ビルドアップ法)で作られた粒子は単分散性が良く、近年注目されてきているが、その一方で製造工程が煩雑であり、生産性などに課題がある。
【0009】
近年、特定の有機顔料を化学修飾し、有機溶剤可溶にする技術が開発された。キナクリドン、インジゴ等の顔料上の窒素原子をオキシカルボニル基で修飾した化合物が知られており(例えば特許文献6参照)、さらにこの修飾した化合物を加熱処理することで、元の顔料に再生することが知られている。
【0010】
しかしながら、これら化学修飾された顔料前駆体は、元の顔料に定量的に再生させることが難しく、再生工程には大量のエネルギーが必要で、微小なナノ粒子を効率良く製造することは困難であった。さらにこれら、微小な顔料ナノ粒子は凝集しようとするため、溶媒中で安定に分散させることは困難であった。
【特許文献1】特開平11−269401号公報
【特許文献2】特開平11−302553号公報
【特許文献3】特開平8−48890号公報
【特許文献4】特開2000−239554号公報
【特許文献5】特開2004−123853号公報
【特許文献6】特開平7−150068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ナノメートルサイズの微小な顔料粒子の製造方法、並びに顔料粒子が凝集せず分散性、流動性および経時安定性に優れた顔料微粒子分散物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は下記の手段によって達成された。
<1>顔料が保護基により修飾された構造の顔料前駆体について、ヘテロ環基を有する重合体の存在下で前記保護基を脱離させて、前記顔料前駆体を前記顔料に転換させる工程を含むことを特徴とする顔料微粒子の製造方法。
<2>前記顔料前駆体が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする<1>項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、xは1〜8の整数である。Aは、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ、アゾ、インジゴ、キノフタロン、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、フタロシアニン、またはジケトピロロピロール系列の発色団の基を表し、この基のうち1つ以上のヘテロ原子はx個の保護基B基により修飾される。これらのヘテロ原子は窒素原子、酸素原子、及びイオウ原子からなる群から選択され、かつA基の一部を構成する。保護基Bは、シリル基、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
<3>前記一般式(1)で表される顔料前駆体が、顔料のカルボニル基の酸素原子が保護基によりエノール保護された顔料前駆体であることを特徴とする<2>項に記載の顔料微粒子の製造方法。
<4>前記のヘテロ環基を有する重合体が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR6−、−OCO−、またはフェニレン基を表し、R6は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Gはヘテロ環基を表す。)
<5>前記一般式(2)におけるGが、有機顔料を構成するヘテロ環残基を表すことを特徴とする<4>項に記載の顔料微粒子の製造方法。
<6>前記一般式(2)におけるGが、キナクリドン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びアントラキノンからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ環残基であることを特徴とする<4>又は<5>項に記載の顔料微粒子の製造方法。
<7>前記のヘテロ環基を有する重合体が、さらに末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマー(マクロモノマー)を共重合単位として含むグラフト共重合体であることを特徴とする<4>〜<6>のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【0017】
<8>前記の顔料前駆体の保護基を脱離させる工程が、溶媒中で行われることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
<9>前記溶媒が、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族化合物、二硫化炭素、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル類、スルホキシド化合物、アミド化合物、ハロゲン含有化合物、ニトロ化合物、窒素含有複素環化合物、またはこれらの混合物であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
<10>前記の顔料前駆体における保護基を、化学的、熱的および光分解的方法からなる群から選択された少なくとも1つの方法によって脱離させる工程を含むことを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
<11><1>〜<10>のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法で作製された有機顔料が媒体中に分散していることを特徴とする顔料微粒子分散物。
本発明における「顔料前駆体」とは、顔料中の少なくとも1つの官能基に有機溶剤可溶性を促進させる保護基が導入された有機溶剤可溶性物質であって、該保護基を脱離させることで不溶性顔料に転換され得るものをいう。また、本発明における「保護基」とは、不溶性顔料の少なくとも1つのヘテロ原子を保護する基であって、当該不溶性顔料を有機溶剤に可溶化させるものをいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明の顔料微粒子の製造方法によれば、ナノメートルサイズの微小な粒子を効率よく製造することができる。さらに、適切な顔料分散剤と共存させておくことで、分散性、流動性および経時安定性に優れた顔料微粒子分散物を提供することができ、この微小な粒子が凝集することなく安定に分散された状態で長期間安定に保存することができる。
本発明で得られた顔料分散液、及びそこから得られる顔料ナノ粒子は、好適なインクジェットインクもしくはその原料微粒子、またはカラーフィルタ塗布液もしくはその原料微粒子として利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、ヘテロ環基を有する重合体化合物の存在下において顔料前駆体の保護基を脱離させることで顔料粒子を形成させ、かつ安定に分散させることに関するものである。
【0020】
本明細書中に記載されているエノール酸素原子について説明する。通常、カルボニル基はそのα位にプロトンがある場合、ケト−エノール互変異性体を生じ、ケト型とエノール型とは平衡状態を示している。このエノール型のヒドロキシル基を構成する酸素原子のことを、本発明ではエノール酸素原子と呼ぶことにする。一般に、エノール型異性体はケト型異性体よりも高エネルギー状態であり、不安定である。エノール酸素原子に保護基が結合されている場合には、当該保護基を低いエネルギーでかつ短時間で外すことができ、その結果微細なナノ粒子を形成することができる。したがって、本発明における顔料前駆体はエノール酸素原子に保護基が結合されていることが好ましい。
【0021】
また、本明細書中における「脂肪族基」は、その脂肪族部位が直鎖、分岐鎖または環状であって、飽和および不飽和のいずれであってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基を含み、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。また、本明細書中における「アリール基」は、単環および縮合環のいずれでもよく、例えば芳香族基が含まれ、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。本明細書中における「ヘテロ環基」は、そのヘテロ環部位が環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環および不飽和環のいずれであってもよく、単環および縮合環のいずれでもよく、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。
【0022】
また、本明細書中における「置換基」は、置換可能な基であればよく、例えば、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基等を挙げることができる。
【0023】
(a)顔料前駆体
本発明で使用する顔料前駆体は、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
一般式(1)中、xは1〜8の整数であり、Aは、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ、アゾ、インジゴ、キノフタロン、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、フタロシアニン、またはジケトピロロピロール系列の発色団の基であり、中でも、キナクリドン、アントラキノン、アゾ、イソインドリン、ジケトピロロピロール系列の発色団残基が好ましく、キナクリドン、アゾ、ジケトピロロピロール系の発色団残基が特に好ましく、ジケトピロロピロール系の発色団残基が最も好ましい。この基のうち1つ以上のヘテロ原子はx個の保護基B基により修飾される。これらのヘテロ原子は、窒素原子(N)、酸素原子(O)、及びイオウ原子(S)からなる群から選択され、かつA基の一部を構成する。
保護基Bは、シリル基、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群から選ばれる基であり、中でも、シリル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が好ましく、シリル基、アルキルオキシカルボニル基が特に好ましい。また。xが2〜8の場合、複数の保護基Bはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
【0026】
本発明の前駆体としては、更に以下に説明する下記一般式(3)〜(7)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。尚、下記一般式(3)〜(7)におけるA’は前記一般式(1)で表されている発色団基Aの一部であり、Yはヘテロ原子を示し、A’とYとで発色団基Aを表す。ここでAは前記一般式(1)中に記載されているxと同義であり、好ましい範囲も同様である。また一般式(3)〜(7)におけるxは、前記一般式(1)中に記載されているxと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0027】
まず、下記一般式(3)で表される化合物について説明する。
【化4】

【0028】
一般式(3)中、Yはヘテロ原子を表し、またR1はシリル原子に結合可能な1価の基であり、好ましい例として、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。また複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
【0029】
一般式(3)中、R1で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0030】
一般式(3)中、R1で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0031】
一般式(3)中、R1で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(3)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
【0033】
次に、下記一般式(4)で表される化合物について説明する。
【化5】

【0034】
一般式(4)中、Yはヘテロ原子を表し、またR2はカルボニル炭素に結合可能な1価の基であり、好ましい例として、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。
【0035】
一般式(4)中、R2で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0036】
一般式(4)中、R2で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
【0037】
一般式(4)中、R2で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
【0038】
一般式(4)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
【0039】
次に、下記一般式(5)で表される化合物について説明する。
【化6】

【0040】
一般式(5)中、Yはヘテロ原子を表し、またR3は窒素原子に結合可能な1価の基であり、好ましい例として、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。また複数のR3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
【0041】
一般式(5)中、R3で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0042】
一般式(5)中、R3で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
【0043】
一般式(5)中、R3で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
【0044】
一般式(5)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
【0045】
次に、下記一般式(6)で表される化合物について説明する。
【化7】

【0046】
一般式(6)中、Yはヘテロ原子を表し、またR4は酸素原子に結合可能な1価の基であり、好ましい例として、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。
【0047】
一般式(6)中、R4で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0048】
一般式(6)中、R4で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
【0049】
一般式(6)中、R4で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
【0050】
一般式(6)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
【0051】
次に、下記一般式(7)で表される化合物について説明する。
【化8】

【0052】
一般式(7)中、Yはヘテロ原子を表し、またR5はヘテロ原子に結合可能な1価の基であり、好ましい例として、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。
【0053】
一般式(7)中、R5で表される脂肪族基は無置換でも置換基を有していてもよく、飽和基でも不飽和基でもよく、総炭素数1〜15の脂肪族基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0054】
一般式(7)中、R5で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
【0055】
一般式(7)中、R5で表されるヘテロ環基としては、飽和環基でも不飽和環基でもよく、総炭素数3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基等が挙げられる。
【0056】
一般式(7)中、Yで表されるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群の中から選ばれ、好ましくは窒素原子、酸素原子であり、より好ましくは酸素原子であり、最も好ましくはエノール酸素原子である。
【0057】
前記一般式(1)で表される顔料前駆体は、顔料のカルボニル基の酸素原子が保護基によりエノール保護された顔料前駆体であることが好ましい。また、上記一般式(1)で表される顔料前駆体は、一種のみで用いてもよく、二種以上併用しても良い。
【0058】
以下に、本発明に用いられる、不溶性顔料に転換されうる顔料前駆体について、その具体例を示す。ただし、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
【化12】

【0063】
本発明に用いられる顔料前駆体は、顔料中の少なくとも1つのヘテロ原子に保護基を結合させることで得ることができる。例えば顔料中のエノール酸素原子に保護基を結合させる場合には、ケト−エノール変異性を示す顔料において、エノール型のヒドロキシル基に保護基を導入することで得られる。保護基の導入は任意の方法で行うことができ、例えばAngew.Chem.Int.Ed.Engl.,1987,26,552.等に記載の方法により行うことができる。
また、本発明に用いられる顔料前駆体は、Industrial Organic Pigments(Wiley,Third edition)等に記載の方法に準じて、直接合成することもできる。
【0064】
(b)ヘテロ環基を有する重合体
次に、本発明に用いられるヘテロ環基を有する重合体(以下、適宜、特定重合体と称する。)について説明する。
【0065】
本発明における特定重合体はヘテロ環基を有する重合体である。特定重合体の中でも、有機顔料を構成するヘテロ環残基を有する重合体であることがより好ましい。ここで、該ヘテロ環残基により構成される有機顔料の構造は、本発明に用いられる前記顔料前駆体から転換されて得られる顔料の構造と同一であっても異なっていてもよいが、強親和性とする観点から同一又は類似する構造であることが好ましい。特定重合体は顔料分散剤として使用することが特に好ましく、Van−der−Waals相互作用により顔料との親和性が高いヘテロ環基を有することで、顔料との吸着性が良好であることから安定分散物を得ることができる。また、特定の繰り返し構造単位を有する高分子化合物であるが故、高分子鎖の立体反発効果により分散安定化が可能である。
【0066】
有機顔料としては、具体的にフタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系、キノフタロン系等が挙げられる。本発明における特定重合体は上記有機顔料を構成するヘテロ環残基を含んでいることが好ましい。該ヘテロ環残基としてはチオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、キナクリドン、アントラキノン、フタルイミド、キナルジン、キノフタロン等の化合物の残基(化合物から水素原子を1つ取り除いて形成される基)が挙げられる。これらの内、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、又はフタルイミドの残基が特に好ましい。
【0067】
本発明における特定重合体は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。
【0068】
【化13】

【0069】
一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR6−、−OCO−、またはフェニレン基を表し、R6は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Gは有機色素残基またはこれに類似するヘテロ環残基を表す。
【0070】
式(2)中、Jは、−CO−、−COO−、−CONR6−、−OCO−、またはフェニレン基を表し、R6は水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状の置換又は無置換のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、など)、アリール基(置換又は無置換であってもよく、例えばフェニル基)を表す。これらの内、Jとしては−COO−、−CONH−、フェニレン基が好ましい。
【0071】
Wは、単結合又は2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基等が挙げられ、これらは置換基を有してもよい。
前記Wで表されるアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、プロピレン基等が特に好ましい。
前記Wで表されるアラルキレン基としては、炭素数7〜13のアラルキレン基が好ましく、例えば、ベンジリデン基、シンナミリデン基等が挙げられる。
前記Wで表されるアリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基は特に好ましい。
また、各2価の連結基中には、−NR7−、−NR78−、−COO−、−OCO−、−O−、−SO2NH−、−NHSO2−、−NHCOO−、−OCONH−、又はヘテロ環から誘導される基(ヘテロ環化合物から2個の水素原子を取り除いて形成される2価の基)、が結合基として介在されていてもよい。前記R7、R8は、それぞれ独立に水素又はアルキル基を表し、水素、メチル基、エチル基、プロピル基等が好適に挙げられる。
【0072】
前記Wで表される連結基の中でも、単結合、アルキレン基が特に好ましく、メチレン基、エチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基が特に好ましい。
【0073】
式(2)中、Gはヘテロ環基を表し、中でも、有機顔料を構成するヘテロ環残基が好ましく、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系、キノフタロン系顔料を構成するヘテロ環残基があげられる。該へテロ環残基としてはチオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、キナクリドン、アントラキノン、フタルイミド、キナルジン、キノフタロン等の残基が挙げられる。これらの内、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、又はフタルイミドの残基が特に好ましい。さらに、これらのヘテロ環残基は、本発明に使用する顔料に類似するヘテロ環残基であることが特に好ましい。具体的には、キナクリドン系顔料に対してはアクリドン、アントラキノン等が本発明においては特に好適に用いられる。
【0074】
前記一般式(2)で表される繰返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。尚、本発明はこれに限るものではない。
【0075】
【化14】

【0076】
【化15】

【0077】
前記一般式(2)で表される繰返し単位を含む重合体は、任意の方法で得ることができ、例えば特開2007−9117号公報等に記載の方法に準じて合成することもできる。
【0078】
本発明における前記特定重合体は、さらに末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーを共重合単位として含むグラフト共重合体であることが特に好ましい。
【0079】
このような末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、所定の分子量を有する化合物であることからマクロモノマーとも呼ばれる。
本発明において、所望により用いられる重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基の部分からなる。このようなエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望のグラフト重合体を得るという観点から好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0080】
また、このマクロモノマーは、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1000〜10000の範囲にあることが好ましく、特に、2000〜9000の範囲が好ましい。
【0081】
上記ポリマー鎖の部分は、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル及びブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体あるいは共重合体、あるいはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカプロラクトンであることが一般的である。
【0082】
前記一般式(2)で表される繰返し単位を含み、かつ、末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーを共重合単位として含むグラフト共重合体は、前記一般式(2)で表される繰返し単位を与えるモノマーと前記重合性オリゴマーの末端のエチレン性不飽和二重結合部分が反応して形成されるものであり、前記重合性オリゴマーのポリマー鎖部分が枝状に結合しているグラフト共重合体である。
【0083】
上記重合性オリゴマーは、下記一般式(8)で表される重合性オリゴマーであることが好ましい。
【0084】
【化16】

【0085】
式中、R9及びR11は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R10は炭素原子数1〜12のアルキレン基(好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、置換基(例えば水酸基)を有していても良く、さらにエステル結合、エーテル結合、アミド結合等を介して連結していてもよい。)を表し、Zは、フェニル基、炭素原子数1〜4のアルキル基を有するフェニル基又は−COOR12(但し、R12は、炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数7〜10のアリールアルキル基を表す。)を表し、そしてqは20〜200である。Zは、フェニル基又は−COOR12(但し、R12は、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)であることが好ましい。
【0086】
上記重合性オリゴマー(マクロモノマー)の好ましい例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート及びポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。市場で入手できるこのような重合性オリゴマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0087】
上記の末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、前記一般式(8)で表される重合性オリゴマーだけでなく、下記一般式(9)で表される重合性オリゴマーであることも好ましい。
【0088】
【化17】

【0089】
前記一般式(9)中、R13は水素原子またはメチル基を表し、R14は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。Qは−OR15または−OCOR16を表す。ここでR15、R16は水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。nは2〜200を表す。
【0090】
前記一般式(9)において、R13は、水素原子又はメチル基を表す。
14は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。
Qは、−OR15又は−OCOR16を表す。ここで、R15は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表すことが好ましい。R16は、炭素数1〜18のアルキル基を表すことが好ましい。
また、nは、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0091】
前記一般式(9)で表される重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0092】
本発明に係る一般式(9)で表される重合性モノマーは前記したように市販品としても入手可能であり、市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G、M−90G、M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)製);商品名:ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000、日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B、日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800、日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050、日本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0093】
本発明に用いられる特定重合体は、さらに、窒素原子を有するモノマーとの共重合体であってもよい。
【0094】
窒素原子を有するモノマーとしては、具体的にN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート(以上(メタ)アクリレート類);
【0095】
ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドおよびN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);
【0096】
2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類);
【0097】
p−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン、p−ビニルベンジル−N,N−ジエチルアミン、p−ビニルベンジル−N,N−ジヘキシルアミン(以上ビニルベンジルアミン類);及び2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールを挙げることができる。
これらのうち、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールが好ましい。
【0098】
本発明に用いられる特定重合体は、さらにこれらと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であることも好ましい態様である。
これらと共重合可能な他のモノマーの例として、不飽和カルボン酸(例、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸)、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなど)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン)を挙げることができる。
これらの中で、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0099】
本発明の特定重合体は、上記一般式(2)で表される単位と前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)から与えられる単位とからなる共重合体、あるいは上記一般式(2)で表される単位と前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)から与えられる単位および窒素原子を有するモノマーから与えられる単位とからなる共重合体であることが好ましい。
【0100】
上記共重合体が、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位の5〜70質量%(特に5〜30質量%)の範囲で有することが好ましい。さらに、前記重合性オリゴマー(マクロモノマー)から与えられる単位を、全繰り返し単位の30〜80質量%(特に50〜80質量%)、窒素含有基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を、全繰り返し単位の5〜80質量%(特に5〜50質量%)の範囲で有することが好ましい。
さらにこれらと共重合可能な他のモノマーを使用する場合、このモノマーに由来する繰り返し単位を全繰り返し単位の5〜30質量%の範囲で有することが好ましい。
【0101】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1000〜200000の範囲が好ましく、特に10000〜100000の範囲が好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0102】
特定重合体に好適に用いられる前記グラフト共重合体の例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0103】
1)上記例示繰返し単位M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
2)上記例示繰返し単位M−1を与えるモノマー/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
3)上記例示繰返し単位M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン共重合体
4)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
5)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
6)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン共重合体
7)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
8)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
9)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
10)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
11)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/2−ビニルピリジン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
【0104】
12)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/p−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
13)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリn−ブチルメタクリレート共重合体
14)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/スチレン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
15)上記例示繰返し単位M−4を与えるモノマー/N,N−ジメチルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
16)上記例示繰返し単位M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
17)上記例示繰返し単位M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
18)上記例示繰返し単位M−6を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
19)上記例示繰返し単位M−13を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
20)上記例示繰返し単位M−13を与えるモノマー/4−ビニルピリジン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
21)上記例示繰返し単位M−13を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
22)上記例示繰返し単位M−14を与えるモノマー/3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
【0105】
このようなグラフト重合体は、前記一般式(2)で表される繰返し単位を与えるモノマー、前記重合性オリゴマー、所望により併用される窒素原子含有基を有するモノマーや他のモノマーを、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。その際、一般に、ラジカル重合開始剤が使用されるが、開始剤に加えてさらに連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を添加して合成してもよい。
【0106】
本発明において、特定重合体は1種のみ添加してもよく、2種以上を併用してもよい。顔料分散液中の特定重合体の含有量は、有機顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、有機顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、さらに好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると有機顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0107】
なお、本発明の顔料分散物には、効果を損なわない限りにおいて、特定重合体に加えて、公知の顔料分散剤を併用することができる。この添加量としては、特定重合体の50質量%以下であることが好ましい。
【0108】
本発明における前記顔料前駆体の保護基を脱離させる工程は、溶媒中で行われることが好ましい。本発明に用いられる溶媒は、前記顔料前駆体や特定重合体を溶解または分散し、かつこれらの成分と反応しないものであるならば、どのような溶媒であっても良い。また、本発明の方法では、顔料前駆体を溶媒に溶かした状態で保護基を脱離させ、形成された不溶性顔料微粒子をその溶媒中で分散状態にさせた分散物の形態で顔料微粒子を製造することができる。このとき用いられる分散溶媒は、顔料微粒子を分散させることができれば特に制約は無いが、顔料前駆体に対しては良溶媒、顔料微粒子に対しては貧溶媒と成り得るような溶媒が好ましい。
【0109】
前記の顔料前駆体に対しては良溶媒、顔料微粒子に対しては貧溶媒と成り得るような溶媒としては、例えば、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族化合物、二硫化炭素、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル類、スルホキシド化合物、アミド化合物、ハロゲン含有化合物、ニトロ化合物、窒素含有複素環化合物等が挙げられ、1箇所、または数箇所が不飽和結合であっても、あるいはハロゲン化されていてもよい。これらの中でも、水、アルコール類、エステル類、又はケトン類であることが好ましく、水、アルコール類、又はエステル類であることがより好ましい。また、これらの溶媒は2種以上の液体の混合物として使っても良い。
【0110】
具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ピリジン、キノリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
溶媒の量については特に制約されないが、顔料前駆体の保護基が脱離して形成された顔料微粒子が得られた際、溶媒に対する顔料微粒子の濃度が0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.3質量%〜15質量%であることがより好ましい。溶媒が多すぎると、顔料微粒子を溶媒中から取り出す際に時間を必要とし、また顔料分散液として用いたい場合には濃縮する工程が必要となるなどの問題が生ずる。溶媒が少なすぎると、凝集しやすくなり粘度が高くなるなどの問題が生ずる。
【0112】
顔料前駆体は、化学的、熱的あるいは光分解的方法などのいずれかの方法、あるいはこれら方法を組み合わせた方法で保護基を脱離させ、顔料へと変換させ得る。どの方法を用いるかは、顔料前駆体の構造によってそれぞれ異なる。
【0113】
化学的方法とは、顔料前駆体の不溶性顔料への転換を開始もしくは促進させる化合物を何らかの方法で顔料前駆体と共存させることをいう。この際、顔料前駆体は、溶液中に溶解していても、固体のまま(例えば、ガラス基板上にスピンコートされた状態等で)存在していても良い。
【0114】
顔料化を促す化合物の添加方法として、顔料前駆体に直接添加しても、その化合物を溶解させうる溶媒に希釈して添加しても良い。また、一度に全量添加しても、適当な時間に分割して添加しても良い。またその添加量について、特に制約は無いが、前記一般式(1)で表される顔料前駆体についてB基がx個ある場合、添加量は0.01x mol〜10x molであることが好ましく、0.1x mol〜2x molであることがより好ましい。この顔料化を促す化合物の添加方法、使用量によって、顔料の粒子サイズが変化し得る。
【0115】
顔料化を促す化合物としては、酸、塩基、求核剤、親電子剤、酸化剤、還元剤、配位性化合物などが挙げられ、好ましくは酸または塩基であり、特に好ましいのは酸である。また、特に前記一般式(3)で表される顔料前駆体であってYが酸素原子を表し酸素原子とシリル原子が結合しているような顔料前駆体に対しては、酸やフッ素アニオンを有するような化合物(例えば、テトラブチルアンモニウムフルオライド等)を用いて顔料化することが好ましい。
【0116】
用いうる適当な酸としては、有機酸、無機酸のいずれでもよく、有機酸としては、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ラウリン酸、アクリル酸、アスコルビン酸、安息香酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸等が挙げられ、無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。また、化学反応(例えば錯形成反応等)、光反応、加熱などによって酸が発生する潜在酸についても含まれる。これらは、単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0117】
用いうる適当な塩基としては、有機塩基、無機塩基のいずれでもよく、有機塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、アミノエタノール、トリエタノール、ジメチルアニリン、ルチジン等が挙げられ、無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。また、化学反応(例えば錯形成反応等)、光反応、加熱などによって塩基が発生する潜在塩基についても含まれる。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0118】
熱的方法とは、顔料前駆体を加熱することで不溶性顔料に転換させることをいい、顔料前駆体は、溶液中に溶解していても、固体のまま(例えば、ガラス基板上にスピンコートされた状態等で)存在していても良い。加熱温度は、特に制約は無いが、50℃〜250℃であることが好ましく、70℃〜190℃であることがより好ましい。
【0119】
光分解的方法とは、顔料前駆体に紫外線、可視光、赤外線などを照射することによって不溶性顔料に転換させることをいう。顔料前駆体は、溶液中に溶解していても、固体のまま(例えば、ガラス基板上にスピンコートされた状態等で)存在していても良い。
【0120】
以下に、顔料前駆体を不溶性顔料に転換させて顔料微粒子を得る本発明の好ましい実施態様について以下説明する。尚、これは1例であり、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
まず、顔料前駆体と特定重合体を共存させて溶媒に溶解させる。分散剤や溶媒の種類は、顔料前駆体及び得られる顔料によって適宜選択される。この顔料前駆体溶液を攪拌させながら適当な酸を加えることで、顔料前駆体が転換されて瞬時に不溶性顔料が形成される。得られる顔料微粒子の大きさは、酸の種類や量によって変化し、顔料微粒子(一次粒子)の粒径は、1μm以下であり(例えば、その大きさの結晶または会合体であり)、1〜200nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましく、5〜50nmであることが特に好ましい。
【0121】
撹拌する際の撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく、150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。粒子形成時の溶媒の温度については、特に制約は無いが、−20℃〜100℃であることが好ましく、0℃〜50℃であることがより好ましい。
【0122】
このような方法で作製した顔料微粒子液において、顔料微粒子は凝集を起こしていることがある。このような凝集微粒子を分散させる方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法等の任意の方法を用いることができ、分散物の形態で得ることもできる。
【0123】
用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(「最新顔料分散技術」技術情報協会、1995、p166参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御などによって行うことができる。
【0124】
物理的なエネルギーを加えて濃縮した有機ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。
【0125】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0126】
実施例1
下記特定重合体1(0.5g)及び先に示した顔料前駆体P−3(0.90g)を1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かした溶液を、藤沢製薬工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名)を用いて、25℃、500rpmで攪拌し、その溶液中にトリフルオロ酢酸0.22mlを一括添加することで、1,4−ジケト−3,6−ビス(4−クロロフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロールを調製した。またこの際に、完全に顔料化が完了したことを、紫外可視分光光度計(島津製作所社製UV−2400PC、商品名)を用いて確認した。さらにこの溶液に、日本精密製作所社製超音波ホモジナイザーUSシリーズ(商品名)を用いて、超音波を30分照射することで、顔料粒子分散液を調製した。
【0127】
特定重合体1
例示繰返し単位M−4を与えるモノマー 10質量部
末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート 90質量部
(数平均分子量6000、東亞合成化学(株)製AA−6、商品名)
【0128】
実施例2
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、特定重合体1(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−1(0.78g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0129】
実施例3
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、特定重合体1(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−2(0.82g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0130】
実施例4
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、特定重合体1(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−5(0.82g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0131】
実施例5
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、特定重合体1(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−7(0.94g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0132】
実施例6
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、特定重合体1(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−18(0.87g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0133】
実施例7
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、下記に示すような特定重合体2(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−3(0.90g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0134】
特定重合体2
例示繰返し単位M−5を与えるモノマー 10質量部
末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート 90質量部
(数平均分子量6000、東亞合成化学(株)製AA−6、商品名)
【0135】
実施例8
実施例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート100mlに溶かす化合物を、下記に示すような特定重合体3(0.50g)及び先に示した顔料前駆体P−3(0.90g)に変更した以外は全て実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0136】
特定重合体3
例示繰返し単位M−9を与えるモノマー 10質量部
末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート 90質量部
(数平均分子量6000、東亞合成化学(株)製AA−6、商品名)
【0137】
比較例1
実施例1において用いた特定重合体1に代えて、市販の顔料分散剤である「SORSPERSE 24000GR」(日本リーブリゾール社製、商品名)を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0138】
比較例2
実施例1において用いた特定重合体1に代えて、市販の顔料分散剤である「SORSPERSE 3200GR」(日本リーブリゾール社製、商品名)を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0139】
比較例3
実施例1において用いた特定重合体1に代えて、下記に示した重合体4を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、顔料分散液を得た。
【0140】
重合体4
メタクリル酸 10質量部
末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート 90質量部
(数平均分子量6000、東亞合成化学(株)製AA−6、商品名)
【0141】
<評価>
各分散液について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(1.粘度(流動性))
各分散液の25℃における粘度を、粘度計(東機産業(株)社製、RE80、商品名)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
A:10mPa・s未満
B:10mPa・s以上、30mPa・s未満
C:30mPa・s以上
【0142】
(2.安定性)
各分散液を25℃で1ヶ月保存後の分散状態を目視および粘度変化により評価した。
○:沈殿物の発生、粘度の増加がほとんどない。
×:沈殿物の発生が認められる。
【0143】
(3.平均粒径)
顔料粒子の粒子径は、堀場製作所社製LB−500(商品名)を用いて動的光散乱法により測定し、そのメジアン径を平均粒径とした。各分散液について、その平均粒径を下記の基準で評価した。
A:平均粒径が80nm未満
B:平均粒径が80nm以上、200nm未満
C:平均粒径が200nm以上
【0144】
【表1】

【0145】
表1の結果から明らかなように、本発明に特徴的な特定重合体(ヘテロ環基を有する重合体)を添加して顔料粒子形成を行って得られる顔料分散液は、その他の重合体を添加したときに比べ、低粘度かつ安定性に優れた分散液が得られるということが分かった。さらにその顔料粒子の平均粒径は、比較例のものに比べて微小なものであった。
したがって、本発明の顔料微粒子の製造方法によれば、微小な粒子を効率よく製造することができ、分散性、流動性および経時安定性に優れた顔料微粒子分散物を提供することができ、この微小な粒子が凝集することなく安定に分散された状態で長期間安定に保存することができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料が保護基により修飾された構造の顔料前駆体について、ヘテロ環基を有する重合体の存在下で前記保護基を脱離させて、前記顔料前駆体を前記顔料に転換させる工程を含むことを特徴とする顔料微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記顔料前駆体が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の顔料微粒子の製造方法。
【化1】

(式中、xは1〜8の整数である。Aは、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ、アゾ、インジゴ、キノフタロン、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、フタロシアニン、またはジケトピロロピロール系列の発色団の基を表し、この基のうち1つ以上のヘテロ原子はx個の保護基B基により修飾される。これらのヘテロ原子は窒素原子、酸素原子、及びイオウ原子からなる群から選択され、かつA基の一部を構成する。保護基Bは、シリル基、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される顔料前駆体が、顔料のカルボニル基の酸素原子が保護基によりエノール保護された顔料前駆体であることを特徴とする請求項2記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記のヘテロ環基を有する重合体が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR6−、−OCO−、またはフェニレン基を表し、R6は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Gはヘテロ環基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(2)におけるGが、有機顔料を構成するヘテロ環残基を表すことを特徴とする請求項4記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(2)におけるGが、キナクリドン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びアントラキノンからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ環残基であることを特徴とする請求項4又は5に記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記のヘテロ環基を有する重合体が、さらに末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマー(マクロモノマー)を共重合単位として含むグラフト共重合体であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記の顔料前駆体の保護基を脱離させる工程が、溶媒中で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族化合物、二硫化炭素、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル類、スルホキシド化合物、アミド化合物、ハロゲン含有化合物、ニトロ化合物、窒素含有複素環化合物、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記の顔料前駆体における保護基を、化学的、熱的あるいは光分解的方法から選ばれた少なくとも1つの方法によって脱離させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の顔料微粒子の製造方法で作製された有機顔料が媒体中に分散していることを特徴とする顔料微粒子分散物。