説明

顕微鏡装置

【課題】顕微鏡装置において、顕微鏡観察を行いつつ作業を行う場合に、試料あるいは試料の周囲の作業領域の清浄性を保つことができるとともに作業性が良好となるようにする。
【解決手段】試料Sを載置面3aに載置して、試料Sを載置面3aの上方から観察する双眼実体顕微鏡50であって、試料Sを観察する観察光学系Mが内蔵された鏡筒部1と、鏡筒部1を載置面3aの上方に支持するフレーム2と、フレーム2に設けられ、載置面3aと鏡筒部1との間の領域に対して清浄化された空気を送風する送風機4と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、精密部品の組立作業や、生物試料の観察作業または実験作業においては、作業対象(以下、試料)を清浄な状態に保つことが求められる。このため、これらの組立作業、観察作業、実験作業などは、従来、クリーンベンチを用いて行われることが多い。特に、試料が小さい場合には、顕微鏡をクリーンベンチの内部に持ち込んで作業が行われる。
このようなクリーンベンチとして、特許文献1には、作業台の上側に前面作業用開口部を除き準密閉状態の作業室が形成され、該前面作業用開口部の少なくとも上半部はシャッターにより開閉可能であり、且つ、作業室内で発生する汚染空気を一側から吸引回収し無菌清浄化する手段と、作業室内に他側から清浄空気を供給する手段を備えた内部陰圧式清浄作業台において、作業室前面のシャッター部に、作業室内に設置した顕微鏡の接眼レンズ部を貫通させ作業室外部に出すための小開口部を設けたことを特徴とする内部陰圧式清浄作業台が記載されている。
特許文献1の装置では、清浄空気を送風するターボファンは前面作業用開口部に対向して設けられ、顕微鏡の背面から前面作業用開口部側に送風されるようになっている。
また、特許文献2には、作業室と、この作業室の上方に配置されてこの作業室に清浄空気を供給するフィルタおよび送風機が格納された天井ケースと、上記作業室の下方に配設された作業台を備え、上記作業室に供給された清浄空気中でガスバーナを用いた作業が行われる卓上型清浄作業台であって、上記ガスバーナに遮風板を設けたことを特徴とする卓上型清浄作業台が記載されている。
特許文献2には、作業台が作業室より前方に突出するように形成され、前窓によって作業用開口部の開口面積が小さくなるためその部分の吹出風速が大きくなってエアカーテン作用により作業台上にも清浄空気を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−214675号公報
【特許文献2】特開平9−178234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなクリーンベンチに持ち込んだ顕微鏡による従来の作業には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、準密閉状態の作業室の中で作業中に清浄空気が顕微鏡の奥側から前面側に送風される。
顕微鏡は、試料を載置する載置台上に鏡筒部を支持するための支持フレームが設けられており、支持フレームは、特許文献1にも図示されているように、観察者が観察者の前側で作業が行いやすいように、観察者に対して奥側となる位置に設けられている。
このため、特許文献1の内部陰圧式清浄作業台では、顕微鏡を作業室内に持ち込んで作業する場合に、清浄空気の気流が支持フレームによって遮られてしまい、載置台上の試料や試料の周辺で作業を行う作業領域における気流の勢いが低下してしまう。このため、試料の表面や作業領域を場所によっては清浄に保つことができないおそれがあるという問題がある。
支持フレームを、作業を行う観察者に対して左右方向に設けることも考えられるが、この場合、試料に対して側方から作業を行う場合の妨げとなるため作業性が悪化するという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術でも、送風方向は観察者に対して奥側から手前側であるため、同様の問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、顕微鏡観察を行いつつ作業を行う場合に、試料あるいは試料の周囲の作業領域の清浄性を保つことができるとともに作業性が良好となる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、顕微鏡装置において、試料を載置面に載置して、前記試料を前記載置面の上方から観察する顕微鏡装置であって、前記試料を観察する観察光学系が内蔵された鏡筒部と、該鏡筒部を前記載置面の上方に支持する支持部材と、該支持部材に設けられ、前記載置面と前記鏡筒部との間の領域に対して清浄化された空気を送風する送風機と、を備える構成とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の顕微鏡装置において、前記鏡筒部を厚さ方向に貫通させるとともに前記載置面の上方を覆って配置された仕切り板を備える構成とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の顕微鏡装置において、前記送風機は、前記鏡筒部によって前記試料を観察する際に観察者が位置する側である装置手前側に対して前記載置面を挟んで対向するように装置奥側に設けられた送風口から送風する構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の顕微鏡装置において、前記載置面と前記鏡筒部との間の領域は、前記載置面に載置した試料を前記鏡筒部で観察作業を行う作業領域である構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の顕微鏡装置によれば、鏡筒部を支持する支持部材に送風機が設けられ、送風機から清浄化された空気が載置面と鏡筒部との間の領域に対して送風されるため、顕微鏡観察を行いつつ作業を行う場合に、試料あるいは試料の周囲の作業領域の清浄性を保つことができるとともに作業性が良好となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な右側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な正面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な右側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の変形例に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な右側面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な正面図である。
【0014】
本実施形態の双眼実体顕微鏡50(顕微鏡装置)は、図1、2に示すように、観察者が両眼で覗くことによって、試料Sの上方から立体的な拡大像を観察することができるようにしたものである。双眼実体顕微鏡50は、試料Sの立体形状を観察したり、試料Sを組立相手部品に組み立てたり、試料Sを実験するといった作業に好適に用いることができる。
双眼実体顕微鏡50の概略構成は、鏡筒部1、フレーム2(支持部材)、試料載置台3、および送風機4を備える。
【0015】
鏡筒部1は、対物レンズLを内蔵する対物レンズユニット1aと、接眼レンズLを内蔵する1対の接眼レンズユニット1bと、対物レンズユニット1aおよび1対の接眼レンズユニット1bを一体に保持するとともに、対物レンズユニット1aに入射した光束を1対の接眼レンズユニット1bにそれぞれ分岐させる分岐光学系Pを内蔵する鏡筒本体1cとを備える。
対物レンズL、接眼レンズL、および分岐光学系Pは、試料を観察する観察光学系Mを構成している。
鏡筒部1の具体的な構成は、観察光学系Mの構成も含めて、双眼実体顕微鏡における周知の構成を適宜採用することができる。
特に詳細は図示しないが、鏡筒部1には、焦点調整を行うための対物レンズユニット1aを昇降させる昇降機構や、昇降機構を操作するための操作ハンドルなどが適宜設けられている。
【0016】
フレーム2は、鏡筒部1を支持する支持部材であり、本実施形態では、板状の底面部2aと、底面部2aの一端部において底面部2aに対して垂直上向きに立設された板状の背面部2bと、背面部2bの上端から底面部2aと対向するよう底面部2aと平行に延ばされた板状の上面部2cとからなる。このため、フレーム2は、側面視では、図1に示すように底面部2aと上面部2cとの間が一方側に開口したコ字状の形状を有している。
なお、底面部2aは傾斜面上に配置することもできるが、以下では、簡単のため、図1、2に示すような、底面部2aが水平面上に配置された位置関係に基づいて説明する。このため、例えば、上面部2cは底面部2aに対して鉛直上方に水平に配置されており、背面部2bは底面部2a上に鉛直上方に延ばされているものとして方向を説明する場合がある。
【0017】
上面部2cは、図2に示すように、本実施形態では、正面視の幅が、底面部2aの正面視の幅よりも小さく、正面視では、底面部2aの中心部において底面部2aと対向されている。
また、上面部2cには、鏡筒部1を板厚方向に貫通させた状態で取り付ける取付穴2eが設けられている。取付穴2eに貫通された鏡筒部1は、例えば、鏡筒本体1cの側方に延ばされたフランジ(不図示)を介して固定ネジ(不図示)などによって上面部2cと固定されている。
【0018】
鏡筒部1は、本実施形態では、対物レンズユニット1aの光軸が底面部2aと直交する方向(鉛直方向)に整列され、接眼レンズユニット1bの光軸が、対物レンズユニット1aの光軸に対して、側面視において背面部2bと反対側に傾斜される姿勢で固定されている。
このため、双眼実体顕微鏡50を用いて試料Sを観察する観察者は、背面部2bと対向する位置において、1対の接眼レンズユニット1bを両眼で覗いて、対物レンズユニット1aによる像を観察することができるようになっている。
以下では、水平方向において1対の接眼レンズユニット1bを両眼で覗く観察者が位置する側を、双眼実体顕微鏡50の「装置手前側」、これと反対の背面部2b側を「装置奥側」と称する。すなわち、装置手前側は、双眼実体顕微鏡50の正面側である。
また、鏡筒部1の正面視の位置は、対物レンズユニット1aの光軸が、上面部2cの正面視の幅方向の中心軸と一致する位置とされている。
【0019】
また、フレーム2の底面部2a上には、鏡筒部1の対物レンズユニット1aと対向する位置に試料載置台3が配置されている。
試料載置台3は、底面部2aと平行に設けられた円板状部材であり、上面に試料Sを載置する載置面3aが設けられている。載置面3aの直径は、上面部2cの正面視の幅よりも狭くなっている。
このような配置により、フレーム2は、鏡筒部1を載置面3aの上方に支持する支持部材となっている。
また、フレーム2の背面部2bには、図2に示すように、装置手前側から見て、少なくとも対物レンズユニット1aと試料載置台3との間の領域に重なる位置に、背面部2bの板厚方向に貫通された孔部である送風機取付開口部2dが設けられている。
本実施形態では、送風機取付開口部2dは、鉛直方向には上面部2cの下面よりわずかに下側から載置面3aよりわずかに上側まで開口され、水平方向には上面部2cの正面視の幅と略同じ幅を有する矩形孔とされている。
【0020】
送風機4は、矩形状に開口された送風口4dが一端側に形成された筐体4aと、筐体4aの内部において送風口4dと対向して設けられ、不図示の吸気口から空気を吸い込んで送風口4d側に送風する回転ファン4bと、送風口4dを覆うように設けられ、回転ファン4bから送風される空気を清浄化するフィルタ4cとを備える。
フィルタ4cとしては、例えば、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ、不織布等を採用することができる。
このような構成の送風機4は、背面部2bに対して装置奥側に配置され、送風口4dが送風機取付開口部2dの内部に嵌合された状態で固定されている。なお、好ましくはフィルタの吹き出し側にルーバーが取り付けられて層流効果を生むことで、更に粉塵が巻き込まれない構成にすることも可能である。
【0021】
このため、送風機4は、フレーム2に設けられており、回転ファン4bを回転させることで、載置面3aと鏡筒部1との間の領域の側方から、フィルタ4cを通して清浄化された空気を送風することができるようになっている。
また、送風口4dは、装置手前側に対して載置面3aを挟んで対向するように装置奥側に設けられている。
【0022】
次に、このような構成を有する双眼実体顕微鏡50の作用について説明する。
双眼実体顕微鏡50では、載置面3a上に試料Sを配置し、送風機4の回転ファン4bを回転させると、不図示の吸気口から吸い込まれた空気が送風口4dから水平方向に送風される。このため、図1に示すように、送風された空気はフィルタ4cを通過して、気流Fとして水平方向に沿って装置手前側に流れていく。このとき、気流Fは、フィルタ4cを通過することで空気中の塵埃などが除去されるため清浄化されている。
この気流Fは、送風口4dから送風方向の側方に拡散しつつ進むため、少なくとも、上面部2cの正面視の幅で上面部2cと底面部2aとの間に位置する矩形状の領域である作業エリアW(作業領域)に吹き付けられる。これにより少なくとも作業エリアW内の載置面3a、載置面3a上に配置された試料S、および対物レンズユニット1aなどが清浄に保たれる。
また、気流Fは、上方からの落下物に対してエアカーテンとしても機能するため、上方からの落下物は、気流Fの上層側で装置手前側に吹き飛ばされる。このため、下方側の試料Sなどに上方からの落下物が付着しにくくなる。
【0023】
双眼実体顕微鏡50によれば、送風機4がフレーム2の背面部2bに設けられ、送風口4dが試料Sの側方に対向して設けられているため、試料Sとの間に送風の障害となる部材が存在しない。このため、フィルタ4cから送風された気流Fが弱まることなく試料Sに吹き付けられる。
したがって、双眼実体顕微鏡50では、従来のように装置奥側に支柱がある顕微鏡をクリーンベンチに持ち込んで観察を行う場合のように、装置奥側から送風される清浄空気が支柱に当たって弱まってしまう場合に比べて、対物レンズユニット1aや試料Sをより清浄な状態に保つことができる。
【0024】
このような状態で、観察者は、装置手前側に位置して、1対の接眼レンズユニット1bを両眼で覗くことにより、作業エリアW内の試料Sを立体的に観察することができる。
また、観察者は、鏡筒部1によって試料Sを観察しながら、作業エリアW内で試料Sに対する実験を行ったり、試料Sを組み立てたりすることができる。
また、このとき、フレーム2は、水平方向において側面視でコ字状に開口されているため、観察者の手や作業治具などを、作業エリアWの側方から自由に出し入れすることができる。このため、作業エリアWの側方に支持部材が配置されている場合に比べて作業性が良好となる。
【0025】
このように、双眼実体顕微鏡50によれば、顕微鏡観察を行いつつ作業を行う場合に、試料S、あるいは試料Sの周囲の作業エリアWの清浄性を保つことができるとともに作業性が良好となる。
また、双眼実体顕微鏡50によれば、双眼実体顕微鏡50をクリーンベンチなどに持ち込むことなく作業エリアWのみを清浄な環境とすることができるため、双眼実体顕微鏡50を種々の場所に移動しても、同様に清浄な環境で試料Sを観察したり、試料Sに対して作業を行ったりすることができて便利である。また、高価なクリーンベンチを用いることなく、作業スペースも省スペース化することができる。
【0026】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な斜視図である。図4は、本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な右側面図である。
【0027】
本実施形態の双眼実体顕微鏡51(顕微鏡装置)は、図3、4に示すように、上記第1の実施形態の双眼実体顕微鏡50に仕切り板5を追加したものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0028】
仕切り板5は、上面部2cの下面に固定され、装置奥側から装置手前側に向かって上面部2cの端部の近傍まで水平方向(上面部2cと平行な方向)に延ばされた水平部5aと、水平部5aの装置手前側の端部から下方側に屈曲された傾斜部5bとを備える。
仕切り板5の平面視の形状は、上面部2cの側方および装置手前側に延ばされ、底面部2aとほぼ重なる大きさの矩形形状とされている。
【0029】
このような構成の双眼実体顕微鏡52によれば、送風機4によって底面部2aと仕切り板5との間の作業エリアW(作業領域)において清浄化された空気が送風されて気流Fが形成されるため、上記第1の実施形態と同様に、載置面3a上に載置された試料Sを観察しながら作業を行うことができる。
本実施形態では、このような仕切り板5を備えるため、仕切り板5よりも上方から落下する落下物を遮蔽することができる。このため、例えば、接眼レンズユニット1bをのぞき込む観察者落下する皮脂や頭髪など異物が試料S上に落下して付着することを確実に防止することができる。
【0030】
また、仕切り板5は、送風口4dから送風される気流Fの上側の流路を規制する整風板の機能を有している。
このため、本実施形態では、送風口4dから水平方向に送風された気流Fは、図4に示すように、側面視では、装置手前側に近づくにつれて気流Fの進行方向が斜め下方側曲げられることになる。この結果、装置手前側に抜ける気流Fは、観察者の下半身側に進むため、観察者の顔、つまり接眼レンズユニット1bの方向に向かう気流が低減されて、より快適に観察を行うことができる。
【0031】
[変形例]
次に、本発明の第2の実施形態の変形例に係る顕微鏡装置について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【0032】
本変形例の双眼実体顕微鏡52(顕微鏡装置)は、図5に示すように、上記第2の実施形態の双眼実体顕微鏡51のフレーム2、仕切り板5に代えて、それぞれフレーム12(支持部材)、仕切り板15を備え、さらに送風機4が2台追加されたものである。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0033】
フレーム12は、上記第2の実施形態のフレーム2の底面部2aおよび背面部2bの装置手前側から装置奥側を見たとき(以下、正面視と称する)の幅を左右方向に拡げて、それぞれ3倍以上とした底面部12aおよび背面部12bを備える。
本変形例では、試料載置台3は、底面部12aの正面視の幅方向の中央に設けられている。
また、上面部2cは、背面部12bの上端部において正面視の幅方向の中央には、試料載置台3と対向するように設けられ、上記第2の実施形態と同様にして鏡筒部1が取り付けられている。
また、背面部12bの正面視の幅方向の中央には、上記第2の実施形態の送風機取付開口部2dと同様な形状を有する中央開口部12eが板厚方向に貫通して設けられている。中央開口部12eには、上記第2の実施形態と同様に送風機4が設けられている。なお、図5では、中央開口部12eにおいては、フィルタ4cの図示を省略し筐体4aの内部を描いている。
中央開口部12eの正面視の左右には、それぞれ、送風機取付開口部2dと同様な形状を有する左側開口部12d、右側開口部12fが板厚方向に貫通して設けられている。
左側開口部12dおよび右側開口部12fには、上記第2の実施形態と同様にそれぞれ送風機4が設けられている。
【0034】
仕切り板15は、上記第2の実施形態の仕切り板5の正面視の幅を、底面部12aの幅に合わせて拡げたものであり、水平部5a、傾斜部5bに対応して、正面視の幅のみが異なる水平部15a、傾斜部15bを備える。
【0035】
このような構成の双眼実体顕微鏡52によれば、3台の送風機4の各回転ファン4bを回転させることにより、左側開口部12d、中央開口部12e、右側開口部12fの3箇所に設けられた送風機4の送風口4dから、装置手前側に清浄化された空気を送風することができる。
これにより、上記第2の実施形態の双眼実体顕微鏡51に比べて3倍以上の幅を有する底面部12a上で、清浄化された空気が送風され、上記第2の実施形態の双眼実体顕微鏡51に比べてより幅広い作業エリアW(作業領域)に清浄な雰囲気が形成される。
このため、観察者は、上記第2の実施形態と同様にして、載置面3a上で、試料Sを観察しながら試料Sに対する作業を行うことができる。
その際、本変形例では、さらに、試料載置台3の左右の底面部12a上に、例えば、複数の部品が収容された部品パレットや、作業を行うための治具などを、清浄な状態を保ちつつ配置しておくことができる。
したがって、観察者は、左右に配置されたこれらの部品、部品パレット、治具などを適宜使用しながら、清浄な環境で作業を行うことができる。
この結果、クリーンベンチなどを用いることなく、種々の部品や治具などを用いつつ、試料Sに対する作業を行うことができる。
また、作業エリアWは、双眼実体顕微鏡52の装置手前側に開口しているため、作業エリアW内に配置する試料S、部品、部品パレット、および治具等を、観察者が装置手前側から、自由に出し入れすることができる。
【0036】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る顕微鏡装置の構成を示す模式的な斜視図である。
【0037】
本実施形態の双眼実体顕微鏡53(顕微鏡装置)は、図6に示すように、上記第1の実施形態の双眼実体顕微鏡50の試料載置台3を削除し、フレーム2に代えて、箱型フレーム22(支持部材)を備えたものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0038】
双眼実体顕微鏡53は、試料載置台3を有しないため、試料Sを載置する作業台20上に配置して用いる。作業台20は、試料Sを載置できる平面20aを有し、双眼実体顕微鏡53を配置するスペースを備える部材であれば特に限定されない。
【0039】
箱型フレーム22は、水平に配置され、上記第1の実施形態の上面部2cと同様にして鏡筒部1が取り付けられた天板部22bと、天板部22bの装置奥側の端部を支持する鉛直方向に延ばされた背面板部22dと、天板部22bおよび背面板部22dを装置手前側から装置奥側を見たとき(以下、正面視と称する)天板部22bおよび背面板部22dの左右方向から挟むように取り付けられた同形の1対の矩形板である左側板部22aおよび右側板部22cとを備える。
【0040】
左側板部22a、背面板部22d、および右側板部22cの下端部は、同一平面に整列されている。また、左側板部22a、天板部22b、および右側板部22cの装置手前側の端部は、背面板部22dに平行な平面に整列されている。
このような構成により、箱型フレーム22は、正面視では、装置手前側に左側板部22a、天板部22b、および右側板部22cで囲まれた矩形状の開口が形成されている。
また箱型フレーム22を、作業台20の平面20a上に配置した場合、平面20aの一部が、箱型フレーム22の左側板部22a、背面板部22d、および右側板部22cによって三方からが囲まれることになる。この領域は、天板部22bおよび天板部22bに設けられた鏡筒部1と対向する平面であり、試料Sを載置する載置面20bとして用いることができる。
【0041】
背面板部22dには、上記第1の実施形態の背面部2bと同様に、送風機4を取り付けることができる送風機取付開口部22eが厚さ方向に貫通して設けられている。
送風機取付開口部22eの内部には、装置奥側から送風機4の送風口4dが嵌合されている。
【0042】
このような構成により、載置面20b上には、上方に鏡筒部1が配置され、箱型フレーム22によって囲まれた直方体状の空間である作業エリアW(作業領域)が、装置奥側から装置手前側の開口部に向かって形成されている。
【0043】
このような構成の双眼実体顕微鏡53によれば、載置面20bに載置された試料Sを上記第1の実施形態と同様に観察しながら作業を行うことができる。
その際、送風機4から清浄化された空気を送風すると、気流は作業エリアW内を装置奥側から装置手前側に向かって流れる。作業エリアWは、左側板部22a、天板部22b、および右側板部22cによって囲まれているため、気流は作業エリアWの側方に漏れることなく装置手前側の開口部に向かって流れる。このため、気流が効率的に試料Sに吹き付けられ、試料Sを清浄化する作用が高められる。
また、箱型フレーム22は、作業エリアWの上方および側方から塵埃の侵入を防止できるため、作業エリアW内の清浄性をより良好に保つことができる。すなわち、天板部22bは、載置面20bの上方を覆うように送風口の上側から送風方向に沿って延ばされるとともに、鏡筒部1を厚さ方向に貫通させるように配置された仕切り板としても機能している。
【0044】
また、双眼実体顕微鏡53は、載置台を備えず、試料Sが配置された適宜の作業台20上に配置して試料Sの観察を行うことができるため、例えば、試料Sが特定の作業台20から移動しにくい場合でも容易に試料Sを観察したり作業を行ったりすることができる。
【0045】
なお、上記の説明では、支持部材は、フレーム2、フレーム12等は、平板部材の組合せで構成されたフレーム構造の場合の例で説明したが、トラスからなるフレーム構造を採用してもよい。
【0046】
また、上記第2の実施形態およびその変形例における仕切り板5、15は、装置手前側に傾斜部が設けられた場合の例で説明したが、これは一例であって、仕切り板は、少なくとも載置面の上方を覆うように設けられていれば、適宜の形状に形成することができる。
例えば、単に水平方向に延びる平板としてもよいし、アーチ形状が送風方向に延ばされたドーム状の湾曲板などとしてもよい。
【0047】
また、上記第3の実施形態の説明では、試料Sが作業台20上の平面20b上に配置された場合の例で説明したが、作業台20上の載置面の形状は、双眼実体顕微鏡53を載置することができれば、平面には限定されない。例えば、作業台20上で試料Sの姿勢を安定して載置するため、試料Sの形状に応じた凹凸部や湾曲面などが設けられた構成としてもよい。
【0048】
また、上記の各実施形態、各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
例えば、上記の第3の実施形態では、箱型フレーム22が平板部材の組合せで構成されたフレーム構造からなり、これにより、作業エリアWを囲むダクトが構成されている場合の例で説明したが、気流の左側板部22aおよび右側板部22cをトラス構造として、天板部22bに仕切り板の機能のみを残して、第2の実施形態と同様に、気流が側方に拡散できる構成としてもよい。
また、さらに天板部22bをトラス構造として、上記第1の実施形態と同様に仕切り板を用いることなく、作業エリアWに清浄化された空気を送風するようにしてもよい。
また箱型フレーム22の一部または全てを、光を透過する部材を用いることで、試料Sに外部からの視認性が高まり、作業性が向上する。また箱型フレーム22の一部または全てを一部の波長を遮蔽する部材を用いてもよい。
同様に上記第1の実施形態におけるフレーム2、上記第2の実施形態における仕切り板5、上記第2の実施形態の変形例における仕切り板15やフレーム12においても、一部または全てを、光を透過する部材を用いたり、一部の波長を遮蔽する部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 鏡筒部
2、12 フレーム(支持部材)
3 試料載置台
3a、20b 載置面
4 送風機
4c フィルタ
4d 送風口
5、15 仕切り板
12d 左側開口部
12e 中央開口部
12f 右側開口部
22 箱型フレーム(支持部材)
22b 天板部(仕切り板)
50、51、52、53 双眼実体顕微鏡(顕微鏡装置)
、F 気流
M 観察光学系
S 試料
、W、W、W 作業エリア(作業領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置面に載置して、前記試料を前記載置面の上方から観察する顕微鏡装置であって、
前記試料を観察する観察光学系が内蔵された鏡筒部と、
該鏡筒部を前記載置面の上方に支持する支持部材と、
該支持部材に設けられ、前記載置面と前記鏡筒部との間の領域に対して清浄化された空気を送風する送風機と、
を備えることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記鏡筒部を厚さ方向に貫通させるとともに前記載置面の上方を覆って配置された仕切り板を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記送風機は、前記鏡筒部によって前記試料を観察する際に観察者が位置する側である装置手前側に対して前記載置面を挟んで対向するように装置奥側に設けられた送風口から送風する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記載置面と前記鏡筒部との間の領域は、前記載置面に載置した試料を前記鏡筒部で観察作業を行う作業領域である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−221342(P2011−221342A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91351(P2010−91351)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】