説明

顕微鏡装置

【課題】フィールドレンズを用いることなく、結像レンズと対物レンズとの間隔が変化したとしても瞳透過率を最大にすることを目的とする。
【解決手段】本発明の顕微鏡装置1は、試料Sに照射されるレーザ光Lを発振する光源2と、レーザ光Lを入射して試料Sに焦点を結ばせる結像レンズ28および対物レンズ29を有する顕微鏡光学系10と、光源2からのレーザ光Lを顕微鏡光学系10にリレーする第1リレーレンズ25および第2リレーレンズ26を有するリレー光学系9と、結像レンズ28と対物レンズ29との間隔に応じて、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26との間隔を調整するレンズ移動機構27と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象にレーザ光を照射して、観察対象からの戻り光を検出して観察を行う顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光色素や蛍光タンパク等を導入した試料に対してレーザ光を照射して蛍光を発生させ、発生した蛍光に基づいて試料の観察を行う顕微鏡装置が従来から用いられている。この種の顕微鏡装置が特許文献1に開示されている。この特許文献1が開示しているように、光源から発振したレーザ光は結像レンズおよび対物レンズにより試料に焦点を結ぶ。
【0003】
特許文献1の顕微鏡装置における顕微鏡光学系は、結像レンズと対物レンズにより構成されている。この顕微鏡光学系により、試料の微小領域にレーザ光の焦点を結ばせて、試料から蛍光を発生させる。この蛍光を観察することにより、試料の画像を得ることができる。
【0004】
この顕微鏡光学系において、結像レンズと対物レンズとの間隔を固定させることもできるが、結像レンズと対物レンズとの間に他の光学系を挿抜することにより、顕微鏡光学系に自由度を持たせることができる。例えば、特許文献2の段落0097にも記載されているように、結像レンズと対物レンズとの間にダイクロイックミラーを挿入する。これにより、結像レンズからのレーザ光以外の波長を持つ光を対物レンズに入射させることができる。このため、2つの異なる波長の光を試料に照射することができる。
【0005】
このように結像レンズと対物レンズとの間に自由に他の光学系を設けることにより、顕微鏡光学系に自由度を持たせることができる。このために、結像レンズと対物レンズとの間隔は変化し得る。例えば、特許文献2の段落0056にも記載されているように、結像レンズと対物レンズとの間隔を自由に変化させているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−028208号公報
【特許文献2】特開2008−170969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、顕微鏡光学系へのレーザ光Lの入射画角を固定したまま、結像レンズと対物レンズとの間隔を変化させると、レーザ光Lの対物レンズ瞳透過率(以下、単に「瞳透過率」と記す)が低下する。図6は、レーザ光Lの顕微鏡光学系への入射画角を0度、すなわち、全てのレーザ光Lの光軸が顕微鏡光学系の基準光軸に対して平行となる状態に固定して、結像レンズと対物レンズとの間隔を変化させたときの瞳透過率の変化を示している。同図のa)〜c)において、顕微鏡光学系101は結像レンズ102と対物レンズ103と結像面104とを有している。
【0008】
結像レンズ102は光源からのレーザ光Lを対物レンズ103に導く。対物レンズ103は結像レンズ102から入射したレーザ光Lの焦点を結ばせる。同図a)は結像レンズ102と対物レンズ103との間隔が短い場合(間隔L1)、同図b)は最適な間隔の場合(間隔L2:L2>L1)、同図c)は間隔が長い場合(間隔L3:L3>L2>L1)を示している。
【0009】
同図b)に示すように、結像レンズ102と対物レンズ103との間隔L2が最適な場合には、レーザ光Lの瞳透過率が最大になる。つまり、光の利用効率が最大になり、且つ何れのレーザ光Lも瞳全面を満たしていることから結像特性も最良になる。
【0010】
一方、同図a)のように間隔L1が短い場合、或いは同図c)のように間隔L3が長い場合には、レーザ光Lの一部が瞳を通過することができないため、瞳透過率は最大にならない。これにより、一部の光が利用されず、光の利用効率が低下する。また、結像特性も劣化する。
【0011】
結像面104にフィールドレンズを設けることで、結像レンズ102と対物レンズ103との間隔が最適にならない場合でも、瞳透過率を最大にすることができる。図7はフィールドレンズによる瞳透過率改善の例を示している。ただし、一般にフィールドレンズの焦点距離は固定されており、結像レンズ102と対物レンズ103との間隔に応じて最適な焦点距離を持つフィールドレンズを選択しなければならない。
【0012】
このために、最適なフィールドレンズを選択する作業が著しく煩雑になり、結像レンズ102と対物レンズ103との間隔が変化するごとに、煩雑な選択作業を行なわなければならなくなる。且つ、フィールドレンズの焦点距離は離散的な値を持つため、結像レンズ102と対物レンズ103との間隔に最適な焦点距離を持つフィールドレンズを用いることができないこともある。
【0013】
そこで、本発明は、フィールドレンズを用いることなく、結像レンズと対物レンズとの間隔が変化したとしても瞳透過率を最大にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、本発明の顕微鏡装置は、観察対象に照射されるレーザ光を発振する光源と、前記レーザ光を入射して前記観察対象に焦点を結ばせる結像レンズおよび対物レンズを有する顕微鏡光学系と、前記光源からの前記レーザ光を前記顕微鏡光学系にリレーする第1リレーレンズおよび第2リレーレンズを有するリレー光学系と、前記結像レンズと前記対物レンズとの間隔に応じて、前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整するレンズ移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この顕微鏡装置によれば、結像レンズと対物レンズとの間隔に応じて、第1リレーレンズと第2リレーレンズとの間隔を調整している。結像レンズと対物レンズとの間隔の変化によって生じた瞳透過率の低下を、第1リレーレンズと第2リレーレンズとの間隔を調整することで防止することができる。
【0016】
さらには、前記レンズ移動機構は、前記結像レンズと前記対物レンズとの間隔に基づく前記対物レンズの瞳透過率が最大となるように、前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整することを特徴とする。
【0017】
結像レンズと対物レンズとの間隔に応じて第1リレーレンズと第2リレーレンズとの間隔を対物レンズの瞳透過率が最大となるように設定することで、理想的な光利用効率が得られ、結像特性を最良にすることができるようになる。
【0018】
また、ピンホールを複数配列したピンホールディスクと、前記ピンホールと同じパターンで配列され、前記ピンホールに前記レーザ光を集光させる複数のレンズを配列したレンズディスクと、前記ピンホールディスクと前記レンズディスクとを一体的に回転させる回転部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
ピンホールを設けることで、生成される画像を高分解能の共焦点画像とすることができる。且つ、ピンホールディスクおよびレンズディスクを回転させることで、レーザ光を高速に走査させることができるようになる。
【0020】
また、前記光源から発振した前記レーザ光を1方向の偏光方向に変換する偏光調整素子と、前記レーザ光の偏光方向を透過し、この偏光方向に直交する偏光方向の光を反射する偏光ビームスプリッタと、前記レーザ光を反射する前記観察対象と前記偏光ビームスプリッタとの間に設けられるλ/4波長板と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
観察対象が試料のように蛍光を放出する素材ではなく、ICチップや光ディスク等の反射体の場合にも、瞳透過率が最大となるように設定することができる。このため、理想的な光利用効率が得られ、結像特性も最良とすることができる。
【0022】
また、前記結像レンズと前記対物レンズとの間に挿抜される前記レーザ光を反射するミラーと、前記対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置されるカメラと、を備え、前記レンズ移動機構は、前記カメラが検出する前記レーザ光のスポットが最小となるように前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整することを特徴とする。
【0023】
ミラーによりレーザ光をカメラに導き、カメラを対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置して、レーザ光のスポットが最小となるように第1リレーレンズと第2リレーレンズとの間隔を事前に調整する。これにより、瞳透過率が最大となるように設定することができる。
【0024】
また、前記結像レンズと前記対物レンズとの間に挿抜される前記レーザ光を反射するミラーと、前記対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置されるフォトディテクタと、このフォトディテクタの前段に配置される前記対物レンズの瞳面と同一の開口半径を有する開口部と、を備え、前記レンズ移動機構は、前記フォトディテクタが検出する光量が最大となるように前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整することを特徴とする。
【0025】
ミラーによりレーザ光をフォトディテクタに導き、開口部により対物レンズの瞳面と同一の開口半径をレーザ光に通過させる。フォトディテクタで受光されるレーザ光の強度が最大となるように調整することで、瞳透過率が最大となるように設定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、結像レンズと対物レンズとの間隔に応じて、第1リレーレンズと第2リレーレンズとの間隔を任意に調整できることから、結像レンズと対物レンズとの間隔が変化したとしても、対物レンズの瞳透過率を最大にすることができる。これにより、高い光利用効率および良好な結像特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の顕微鏡装置の構成図である。
【図2】レンズ移動機構による第2リレーレンズの調整を説明した図である。
【図3】第1変形例の顕微鏡装置の概念図である。
【図4】第2変形例の顕微鏡装置の構成図である。
【図5】第2変形例の他の例の顕微鏡装置の構成図である。
【図6】対物レンズと結像レンズとに基づく画角を説明した図である。
【図7】フィールドレンズによる瞳透過率改善の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態の顕微鏡装置1を示している。この顕微鏡装置1の観察対象は蛍光タンパクや蛍光色素等を導入した試料Sになり、試料Sを照明することにより蛍光を生じる。後述するように、観察対象は試料Sには限定されず、例えば反射体のようなものであってもよい。
【0029】
この顕微鏡装置1は、光源2と集光レンズ3とファイバ入射端4とファイバ5とファイバ出射端6とコリメートレンズ7と走査部8とリレー光学系9と顕微鏡光学系10と撮像レンズ11とカメラ12とを備えて構成している。
【0030】
光源2はレーザ光Lを発振するレーザ光源である。レーザ光Lは試料Sに照射される光であり、試料Sに導入した蛍光タンパクや蛍光色素等が反応する波長を有している。なお、レーザ光Lではなくランプ光を用いてもよく、この場合には光源2はランプを適用する。光源2から発振されたレーザ光Lは集光レンズ3によりファイバ入射端4に集光する。
【0031】
ファイバ入射端4はファイバ5の入射端になっている。ファイバ5はレーザ光Lを導光する。ファイバ5の出射端にはファイバ出射端6が設けられており、導光されたレーザ光Lが発散光として出射する。発散光となったレーザ光Lはコリメートレンズ7に入射する。コリメートレンズ7により発散光となっているレーザ光Lは平行光に変換される。このために、コリメートレンズ7の焦点位置にファイバ出射端6を配置している。コリメートレンズ7により平行光になったレーザ光Lは走査部8に入射する。
【0032】
走査部8はレーザ光Lを平面方向に走査する走査手段であり、レンズディスク21とピンホールディスク22と連結ドラム23とダイクロイックミラー24とを有して構成している。レンズディスク21は複数のレンズ(マイクロレンズ)21Rを配列した円盤状のディスクである。レンズディスク21には複数のレンズ21Rが螺旋状に多条に配列されている。各レンズ21Rはレーザ光Lを集光させる機能を有している。
【0033】
ピンホールディスク22は複数のピンホール22Pを配列した円盤状のディスクである。ピンホールディスク22にはレンズディスク21に形成されている各レンズRと同じパターンでピンホール22Pを配列している。つまり、多条の螺旋状のパターンで配列している。且つ、ピンホール22Pはレンズ21Rの集光位置に形成されている。ピンホール22Pはレーザ光Lおよび後述する戻り光Rが通過する微小開口部であり、戻り光Rのうち試料Sの焦点の範囲内の光のみが通過するようになっている。これにより、光軸方向に分解能の高い共焦点顕微鏡として顕微鏡装置1を用いることができる。
【0034】
レンズディスク21とピンホールディスク22とは回転部としての連結ドラム23に一体的に取り付けられている。連結ドラム23は図示しないモータに接続されており、モータの回転力が連結ドラム23に付与される。これにより、レンズディスク21とピンホールディスク22とは一体的に回転を行う。
【0035】
レンズディスク21とピンホールディスク22との間、つまりレンズ21Rとピンホール22Pとの間にダイクロイックミラー24を配置している。ダイクロイックミラー24はレーザ光Lの波長域によって透過と反射とを分ける光学素子である。ここでは、レーザ光Lの波長の光を透過させ、後述する戻り光Rの波長の光を反射する特性を有しているものとする。よって、レンズRを通過したレーザ光Lはダイクロイックミラー24を透過して、ピンホール22Pに入射する。
【0036】
走査部8を通過したレーザ光Lは、リレー光学系9に入射する。リレー光学系9は第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26とを有しており、レーザ光Lを顕微鏡光学系10に導く。第1リレーレンズ25はレンズ自身の焦点距離だけ、ピンホールディスク22より離れた位置に設けられており、レンズ21Rによりピンホール22P上に一旦集光し、次いで発散光となったレーザ光Lが第1リレーレンズ25に入射する。
【0037】
第1リレーレンズ25は発散光となっているレーザ光Lを平行光に変換して、第2リレーレンズ26に向けて出射する。第2リレーレンズ26は平行光となっているレーザ光Lを集光させる。このうち、第2リレーレンズ26には光軸方向に移動可能なレンズ移動機構27が取り付けられている。
【0038】
第1リレーレンズ25および第2リレーレンズ26は走査部8を通過したレーザ光Lを顕微鏡光学系10にリレーするための光学系となっている。リレーされたレーザ光Lは顕微鏡光学系10に入射する。顕微鏡光学系10は結像レンズ28と対物レンズ29とを有している。
【0039】
顕微鏡光学系10は無限遠光学系となっており、まず結像レンズ28にレーザ光Lを入射して、その次に対物レンズ29に入射させる。これにより、レーザ光Lは試料Sに焦点を結ぶ。試料Sは対物レンズ29の焦点位置に配置するようにしている。試料Sは図示しないディッシュ等に搭載されており、レーザ光Lが試料Sで焦点を結ぶことにより、蛍光を発生させる。この蛍光が戻り光Rとなって、レーザ光Lと同じ光路を戻っていく。
【0040】
試料Sはレーザ光Lを吸収することにより、蛍光を戻り光Rとして放出する。この戻り光Rは対物レンズ29により捕捉されて、結像レンズ28を介して、リレー光学系9に導かれる。そして、戻り光Rは、リレー光学系9を通過して、ピンホールディスク22のピンホール22Pからダイクロイックミラー24に入射する。つまり、戻り光Rはレーザ光Lと同じ光路を辿ってダイクロイックミラー24まで導かれる。
【0041】
ダイクロイックミラー24は戻り光Rを反射する光学特性を有しているため、戻り光Rを側方に反射する。そして、撮像レンズ11により観察部としてのカメラ12の撮像面に集光する。なお、ピンホールディスク22の表面とカメラ12の撮像面とは共役面となる関係になっている。
【0042】
以上が構成である。次に、動作について説明する。光源2からレーザ光Lを発振する。このレーザ光Lはファイバ入射端4からファイバ5を導光され、ファイバ出射端6から出射する。そして、コリメートレンズ7により平行光に変換されて、走査部8に入射する。
【0043】
走査部8は連結ドラム23に回転力を付与することで、レンズディスク21とピンホールディスク22とが一体的に回転する。レンズ21Rとピンホール22Pとは多条の螺旋状のパターンで配列されており、且つ両者は対応した位置関係になっている。よって、レンズディスク21とピンホールディスク22とが一体的に回転することにより、試料Sに照射されるレーザ光Lの位置が高速に変化する。これにより、試料Sの平面方向(光軸に直交する方向)にレーザ光Lを走査することができる。
【0044】
ピンホール22Pを通過したレーザ光Lは、リレー光学系9に入射する。第1リレーレンズ25により平行光になったレーザ光Lは第2リレーレンズ26に入射して、顕微鏡光学系10の結像レンズ28に入射する。結像レンズ28を通過したレーザ光Lは対物レンズ29により試料Sに焦点を結ぶ。試料Sはレーザ光Lにより蛍光を発生し、この蛍光が戻り光Rとなる。
【0045】
発生した戻り光Rは対物レンズ29、結像レンズ28、第2リレーレンズ26、第1リレーレンズ25、ピンホール22Pを介してダイクロイックミラー24に入射し、ダイクロイックミラー24で反射して、撮像レンズ11に入射する。そして、撮像レンズ11によりカメラ12の結像面に結像する。カメラ12に結像された戻り光Rの像に基づいて、試料Sの画像が生成される。
【0046】
ピンホール22Pを通過した戻り光Rは試料Sの焦点の範囲内の光のみが通過している。つまり、カメラ12に集光した戻り光Rの像に基づく画像は共焦点画像になる。従って、顕微鏡の光軸方向に高い分解能の画像を得ることができるようになる。ピンホールディスク22が回転して、レーザ光Lは走査されることになるが、いずれにしてもピンホール22Pを通過するため、カメラ12が受光される像に基づく画像は必ず光軸方向に高い分解能の共焦点画像になる。
【0047】
このとき、レンズ移動機構27は、ピンホールディスク22と第1リレーレンズ25との間隔、および結像レンズ28と第2リレーレンズ26との間隔を保持したまま、結像レンズ28と対物レンズ29との間隔に応じて、第2リレーレンズ26を光軸方向に移動させることにより、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26との間隔を変化させる。
【0048】
図2は、結像レンズ28と対物レンズ29との間隔に応じて、瞳透過率が最大となるよう、結像レンズ28へのレーザ光Lの入射画角が変化する様子を示している。同図b)は結像レンズ28と対物レンズ29との間隔が最適な値L2となっている場合であり、瞳透過率が最大となる結像レンズ28の結像面側の画角αが「α=0度」となっている。
【0049】
同図a)は結像レンズ28と対物レンズ29との間隔が最適な値より短い値L1となっている場合であり、瞳透過率が最大となる結像レンズ28の結像面側の画角αが「α>0度」となっている。同図c)は結像レンズ28と対物レンズ29との間隔が最適な値より長い値L3の場合であり、瞳透過率が最大となる結像レンズ28の結像面側の画角αが「α<0度」となっている。
【0050】
図2に示す例のように、走査部8の光学系を出射するレーザ光Lの画角が0度のとき、同図b)の場合は、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26の間隔L2'をピンホールディスク22と第1リレーレンズ25との間隔Lと、第2リレーレンズ26と顕微鏡光学系10の結像面104の間隔Lの和、すなわち、2Lに等しくなるように設定することにより、瞳透過率が最大となる。
【0051】
一方、図2a)の場合は、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26の間隔L1'を間隔L1に応じて前記の2Lに比べて長くなるように設定することにより、瞳透過率が最大となる。また、図2c)の場合は、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26の間隔L3'を間隔L3に応じて前記の2Lに比べて長くなるように設定することにより、瞳透過率が最大となる。
【0052】
このように、走査部8の光学系を出射するレーザ光Lの出射画角が任意の値に固定されており、且つ瞳透過率が最大となる結像レンズ28へのレーザ光Lの入射画角が、走査部8の光学系を出射するレーザ光Lの出射画角と一致していなくても、レンズ移動機構27により第2リレーレンズ26に前記の作用を加えることにより、瞳透過率を最大にすることができる。
【0053】
以上において、レンズ移動機構27は第2リレーレンズ26を移動させることによって、瞳透過率を最大にしているが、この瞳透過率は必ずしも最大でなくてもよい。つまり、瞳透過率が理想的に最大でなくても、瞳透過率を向上させるものであればよい。これにより、理想的でないとしても、結像特性を向上させることができる。
【0054】
また、レンズ移動機構27は第2リレーレンズ26を移動させているが、ピンホールディスク22と第1リレーレンズ25との間隔、および結像レンズ28と第2リレーレンズ26との間隔を保持したままであれば、第1リレーレンズ25を移動させてもよいし、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26との両者を移動させてもよい。
【0055】
次に、第1変形例について説明する。図3は第1変形例の顕微鏡装置1を示している。図1で示した顕微鏡装置1とは異なり、コリメートレンズ7と走査部8との間に偏光調整素子31を設けている。また、ダイクロイックミラー24に代えて偏光ビームスプリッタ32を設けており、リレー光学系9の第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26との間にλ/4波長板33を追加している。その他の構成は図1の顕微鏡装置1と同じである。
【0056】
また、この第1変形例では、観察対象は蛍光色素や蛍光タンパク等を導入した試料Sではなく、反射体S1であるものとする。この反射体S1としては、例えばICチップの表面や光ディスク等を適用することができ、レーザ光Lを高い反射率で反射する素材であれば、任意の素材を観察対象とすることができる。
【0057】
偏光調整素子31はレーザ光Lの偏光方向を1つの偏光方向(直線偏光)となるように調整する。例えば、λ/2波長板や偏光板等のように1つの偏光面を振動する光に変換する。このときのレーザ光Lの偏光方向は偏光ビームスプリッタ32の透過率が最大となる偏光方向と一致させる。
【0058】
偏光ビームスプリッタ32は所定の偏光方向の光を透過し、この偏光方向に直交する偏光方向の光を反射する光学素子である。偏光ビームスプリッタ32は偏光調整素子31により調整された偏光方向のレーザ光Lを透過し、直交する方向の偏光方向(戻り光R)を反射する。
【0059】
λ/4波長板33は直線偏光を円偏光に変換する光学素子である。λ/4波長板33はレーザ光Lの偏光面を45度回転させる機能を有している。これにより、λ/4波長板33を透過したレーザ光Lは直線偏光から円偏光になる。
【0060】
この円偏光となったレーザ光Lは顕微鏡光学系10により反射体S1に入射する。反射体S1はレーザ光Lを反射する。これにより、戻り光Rが発生する。この戻り光Rは顕微鏡光学系10を通って、再びλ/4波長板33に入射する。これにより、戻り光Rは円偏光から直線偏光に変換される。このとき、戻り光Rの偏光面は再び45度回転する。これにより、λ/4波長板33を透過した戻り光Rは円偏光から直線偏光になる。且つ、もともとのレーザ光Lから見ると、偏光面が90度回転した状態になる。
【0061】
この戻り光Rは偏光ビームスプリッタ32に入射する。戻り光Rはレーザ光Lのときから偏光面が90度回転しており、つまり偏光方向が直交している。このため、偏光ビームスプリッタ32で戻り光Rが反射する。そして、カメラ12に戻り光Rが集光することで、画像が得られる。
【0062】
このとき、レンズ移動機構27は第2リレーレンズ26を光軸方向に移動させている。これにより、結像レンズ28と対物レンズ29との間隔に応じて、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26との間隔を調整している。従って、瞳透過率を最大にすることができ、理想的な光利用効率が得られ、最良の結像特性が得られる。
【0063】
従って、この第1変形例では、試料Sのように蛍光する素材を観察対象とするのではなく、反射体S1を観察対象としている。偏光調整素子31、偏光ビームスプリッタ32、λ/4波長板33を設けるだけで、ICチップや光ディスク等の反射体S1を観察対象とすることができる。
【0064】
次に、第2変形例について説明する。図4に示すように、顕微鏡光学系10の結像レンズ28と対物レンズ29との間にミラー40を設けている。ミラー40にはミラー移動機構41が取り付けられている。また、対物レンズ29の瞳位置と共役な位置に調整用カメラ42を設けている。
【0065】
ミラー40は結像レンズ28からのレーザ光Lを側方に向けて反射する。これにより、レーザ光Lは対物レンズ29に向かうことなく、調整用カメラ42に向けて反射する。ミラー40にはミラー移動機構41が取り付けられている。ミラー移動機構41はレーザ光Lの光路からミラー40を挿抜する。
【0066】
レンズ移動機構27は第2リレーレンズ26を移動させることにより、対物レンズ29の瞳透過率を調整している。この調整を行うときにはミラー40をレーザ光Lの光路に位置させ、試料Sの観察を行うときにはミラー40をレーザ光Lの光路から退避させる。
【0067】
調整用カメラ42はレーザ光Lを受光して光量を検出するカメラである。調整用カメラ42の撮像面は対物レンズ29の瞳位置と共役な位置に配置している。つまり、対物レンズ29の瞳位置におけるレーザ光Lの状態を調整用カメラ42は反映していることになる。
【0068】
調整用カメラ42は図示しない表示装置に接続され、当該表示装置によりレーザ光Lの受光状態を視認することができる。対物レンズ29の瞳透過率が高ければ、対物レンズ29の瞳位置におけるレーザ光Lのスポットは極小になる。
【0069】
そこで、表示装置に表示されるレーザ光Lの受光状態を視認しながら、レンズ移動機構27を用いて第2リレーレンズ26を移動させる。これにより、調整用カメラ42におけるレーザ光Lのスポット径が変化する。結像レンズ28と対物レンズ29との間隔が最適であればスポット径が極小化され、最適な間隔からずれを生じると、スポット径が大きくなる。
【0070】
従って、ユーザ等はレンズ移動機構27を用いて第2リレーレンズ26の位置を調整して、観察されるスポット径が極小化される位置に設定する。調整用カメラ42は対物レンズ29の瞳位置に共役な位置に配置していることから、結像レンズ28と対物レンズ29との間隔に応じて、第1リレーレンズ25と第2リレーレンズ26との間隔を最適に設定することができる。
【0071】
第2リレーレンズ26の位置調整は、試料Sを観察する前の調整ステップとして行われる。この調整ステップで、ミラー移動機構41はミラー40をレーザ光Lの光路上に配置するように移動することで、試料Sの観察をする前に瞳透過率が最大となるように第2リレーレンズ26の調整を行うことができる。一方、調整ステップを終了した後に、ミラー移動機構41によりミラー40をレーザ光Lの光路から退避させることで、試料Sの観察を行うことができる。
【0072】
このとき、光検出部としての調整用カメラ42は所定範囲を撮影するカメラとして用いているが、図5に示すように、調整用カメラ42に代えてフォトダイオード43を用いてもよい。フォトダイオード43の前段(レーザ光Lの入射側)には対物レンズ29の瞳面と同一の開口半径を有する開口部44を設ける。
【0073】
ミラー40で反射したレーザ光Lは開口部44により対物レンズ29の瞳面と同一のスポットとなってフォトダイオード43に入射する。フォトダイオード43は受光したレーザ光Lの光量に基づいて光電変換を行う。これにより、レーザ光Lの光量に応じた電流或いは電圧が発生する。
【0074】
この電流或いは電圧は表示装置に表示されて視認することができる。そして、レンズ移動機構27を用いて第2リレーレンズ26を移動することにより、対物レンズ29の瞳透過率が変化する。フォトダイオード43を対物レンズ29の瞳位置と共役な位置に配置することで、瞳透過率に応じたレーザ光Lの光量がフォトダイオード43に受光される。
【0075】
そして、フォトダイオード43が発生した電流或いは電圧を表示装置で視認する。対物レンズ29の瞳透過率が高い位置に第2リレーレンズ26を配置していれば、発生する電流或いは電圧が高くなり、瞳透過率が低ければ電流或いは電圧が低くなる。そこで、フォトダイオード43が発生する電流或いは電圧が最大となるようにレンズ移動機構27を用いて第2リレーレンズ26の位置を調整することで、瞳透過率を最大にすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 顕微鏡装置
8 走査部
9 リレー光学系
10 顕微鏡光学系
12 カメラ
21 レンズディスク
21R レンズ
22 ピンホールディスク
22P ピンホール
25 第1リレーレンズ
26 第2リレーレンズ
27 レンズ移動機構
28 結像レンズ
29 対物レンズ
30 ミラー
31 偏光調整素子
32 偏光ビームスプリッタ
33 λ/4波長板
40 ミラー
41 ミラー移動機構
42 調整用カメラ
43 フォトダイオード
44 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象に照射されるレーザ光を発振する光源と、
前記レーザ光を入射して前記観察対象に焦点を結ばせる結像レンズおよび対物レンズを有する顕微鏡光学系と、
前記光源からの前記レーザ光を前記顕微鏡光学系にリレーする第1リレーレンズおよび第2リレーレンズを有するリレー光学系と、
前記結像レンズと前記対物レンズとの間隔に応じて、前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整するレンズ移動機構と、
を備えたことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記レンズ移動機構は、前記結像レンズと前記対物レンズとの間隔に基づく前記対物レンズの瞳透過率が最大となるように、前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整すること
を特徴とする請求項1記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
ピンホールを複数配列したピンホールディスクと、
前記ピンホールと同じパターンで配列され、前記ピンホールに前記レーザ光を集光させる複数のレンズを配列したレンズディスクと、
前記ピンホールディスクと前記レンズディスクとを一体的に回転させる回転部と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記光源から発振した前記レーザ光を1方向の偏光方向に変換する偏光調整素子と、
前記レーザ光の偏光方向を透過し、この偏光方向に直交する偏光方向の光を反射する偏光ビームスプリッタと、
前記レーザ光を反射する前記観察対象と前記偏光ビームスプリッタとの間に設けられるλ/4波長板と、
を備えたことを特徴とする請求項3記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記結像レンズと前記対物レンズとの間に挿抜される前記レーザ光を反射するミラーと、
前記対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置されるカメラと、
を備え、
前記レンズ移動機構は、前記カメラが検出する前記レーザ光のスポットが最小となるように前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整すること
を特徴とする請求項3記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記結像レンズと前記対物レンズとの間に挿抜される前記レーザ光を反射するミラーと、
前記対物レンズの瞳位置と共役な位置に配置されるフォトディテクタと、
このフォトディテクタの前段に配置される前記対物レンズの瞳面と同一の開口半径を有する開口部と、
を備え、
前記レンズ移動機構は、前記フォトディテクタが検出する光量が最大となるように前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズとの間隔を調整すること
を特徴とする請求項3記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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