説明

顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型及び顕微鏡観察用サンプル包埋体及びその固定方法

【課題】光学顕微鏡や電子顕微鏡等による観察や検査分析において被検査体であるサンプルの切断面(観察対象面)を観察するために、そのサンプルをミクロトーム用試料ホルダーあるいはウルトラミクロトーム用試料ホルダー等の試料ホルダーに取り付ける際に、そのサンプルの切断面が再現性良く固定され、断面角度を再現性良くホールドして固定できるようにすることにある。
【解決手段】サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部Aが、切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁部6を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域1若しくは直方体形状凹部領域1と、該凹部領域の他の対向両端面に対して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域2、2とにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察や検査分析において使用する被検査体であるサンプルを透明樹脂にて包埋(ホールド)した顕微鏡観察用サンプル包埋体をモールド成形方式にて作製するためのサンプル包埋体成形用モールド成形型及びサンプル包埋体及びその固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡や電子顕微鏡用の観察用試料(サンプル)を作るにあたり、サンプルを、その切削の衝撃により歪むのを防ぐために、又は扱いを容易にするために、透明樹脂で包埋して固定保持する方法がある。
【0003】
透明樹脂で包埋されたサンプル包埋体(試料ブロック)は、その包埋体の先端を試料形状の大きさに合わせてトリミングしなければならないが、その労力を軽減するために、サンプル包埋体の先端付近を細く成形することができるモールド成形型が利用されるようになってきた。
【0004】
従来より、サンプル包埋体(試料ブロック)の形状としては様々な形があるが、その中で、例えば非特許文献1に記載されたサンプル包埋体の形状として、図5に示されているような直方体形状(六面体形状)の包埋体20の観察対象面(又は切削対象面)である一端面21の両側に、傾斜形状面22、22を備える形状のシングルエンド型や、図6に示されているような直方体形状(六面体形状)の包埋体20の観察対象面(又は切削対象面)である互いに平行に対向する両端面21、21の両側に、それぞれ傾斜形状面22、22を備えるダブルエンド型等が用いられている。
【0005】
以下に、本発明の技術に関連する公知の非特許文献を記載する。
【非特許文献1】応研商事株式会社、電子顕微鏡用材料型録2000年5月版、p28〜30
【非特許文献2】イーエムジャパン株式会社、電顕・光顕用材料カタログNo.7、p74〜77
【非特許文献3】日本電子データム株式会社、電子顕微鏡関連周辺機器 2002年、p19
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、物質を顕微鏡で観察して分析する方法としては、観察対象の物質として、例えば、パッケージ包材の一部を採取したサンプル(試料)を透明樹脂で包埋し、この包埋体の切断面(観察対象面)を顕微鏡で観察する分析方法がある。
【0007】
より正確な分析をするために、観察対象サンプルに対して、光学顕微鏡や電子顕微鏡等の様々な顕微鏡を用いて像を取得し、情報をまとめ、解析することがある。例えば、光学顕微鏡で観察した後に、より高倍率で観察するため、走査型電子顕微鏡(以下SEMと云う)や、透過型電子顕微鏡(以下TEMと云う)で観察することがある。
【0008】
特に、微小異物等、特定の個所にある物の分析においては、そのサンプル量が少なく、新たにサンプル包埋体を作るのは困難であり、同一の包埋体を幾度か観察して分析することがある。
【0009】
光学顕微鏡での観察で、焦点のずれを少なくするために、ミクロトームで切断した包埋体を、試料ホルダーから外さずに試料ホルダー毎、ミクロトーム本体から外し、切断面を観察すると、焦点の合う像が観察できる。
【0010】
しかし、例えば、SEM等による観察のため、ミクロトーム用試料ホルダーから一度取り外したサンプル包埋体の切断面(観察対象面)を、再び光学顕微鏡の視野の焦点深度内程度に水平にするのは困難であり、非常に効率が悪い。また、ミクロトームでのTEMによる観察用薄片作製においても、試料ホルダーに再び取り付けたサンプル包埋体の切断面角度(観察対象面角度)が、切削用ナイフに対し平行でない場合が多く、切削前にナイフ位置の移動をしたり、また、縦方向と横方向のナイフ角度の調整が必要なため、作業効率が悪い。
【0011】
本発明の課題は、光学顕微鏡や電子顕微鏡等による観察や検査分析において、被検査体であるサンプルの切断面(観察対象面)を観察するために、そのサンプルを、ミクロトーム用試料ホルダーあるいはウルトラミクロトーム用試料ホルダーに取り付ける際に、そのサンプルの切断面が再現性良く固定され、断面角度を再現性良くホールドして固定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁部を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、該凹部領域の他の対向両端面に対して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域とにより構成されていることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型である。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁部を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、該凹部領域の他の対向両端面に対して線対称な両側面を有して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域とにより構成されることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型である。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁部を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、該凹部領域の他の対向両端面に対して互いに直角となる線対称な両側面を有して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域とにより構成されることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型である。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項に係る顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型において、前記成形型凹部のモールド深さDが2mm〜10mm、前記成形型凹部の突起形状凹部領域を含まない立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域のモールド幅W1 が1mm〜3mm、前記成形型凹部の前記突起形状凹部領域を含めたモールド幅W2 が5mm〜7mmであることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型である。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれか1項に係るサンプル包埋用モールド成形型の成形型凹部内にサンプルを混合したサンプル包埋用透明樹脂を充填
してモールド成形された成形体であって、立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、突起形状凹部領域とから構成されていることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体である。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項5に係るサンプル包埋体を、その包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、突起形状凹部領域との境界部にて顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定することを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体の固定方法である。
【0018】
本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項5に係るサンプル包埋体を、その包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、突起形状凹部領域との境界部が顕微鏡のネジ止め式ミクロトーム用試料ホルダーのネジ止め板に接するようにして係止固定することを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体の固定方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型によれば、サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも立方体形状(六面体形状)凹部領域若しくは直方体形状(六面体形状)凹部領域と、突起形状凹部領域とから構成されているので、本発明のモールド成形型を用いてモールド成形された成形体としての本発明のサンプル包埋体は、立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域の対向する両側面に対して突出する突起形状凹部領域を備えて成形され、成形されたサンプル包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と突起形状凹部領域との間には、切削対象面(観察対象面)に対して定位置に、顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部が成形できる。
【0020】
そのために、本発明のサンプル包埋体は、顕微鏡の試料ホルダーに対して、その包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と突起形状凹部領域との境界部にて確実に安定して係止でき、そのサンプル包埋体の切削対象面又は観察対象面を顕微鏡の試料ホルダーに対して所定の観察角度に保持した状態で係止固定することができる。又は、その包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と突起形状凹部領域との境界部(又は境界面)が顕微鏡のネジ止め式ミクロトーム用試料ホルダーのネジ止め板に接するようにして、確実に安定して係止でき、そのサンプル包埋体の切削対象面又は観察対象面を顕微鏡の試料ホルダーに対して所定の観察角度に保持した状態で係止固定することができる。
【0021】
このように本発明は、光学顕微鏡や電子顕微鏡等による観察や検査分析において、被検査体であるサンプルの切断面(観察対象面)を観察するために、そのサンプルを、顕微鏡観察用のミクロトーム用試料ホルダーあるいはウルトラミクロトーム用試料ホルダーに取り付ける際に、そのサンプルの切断面(観察対象面)を、常に安定して再現性良く確実に固定でき、切断面(観察対象面)の角度を、再現性良くホールドして固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型を、その実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。
【0023】
図1は、モールド成形型の構造及び形状の一例を説明する全体斜視図であり、全体の外観形状としては、例えば、矢印状になっている。
【0024】
図1に示すように、本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用のモールド成形型のサ
ンプル包埋用樹脂を充填成形するための成形型凹部Aは、平坦な上面を備える基台Fと、該基台Fの上面に、少なくとも、モールド成形型の底部5と、切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁面6を一端面に備え、成形面7を他端面に備える(又は切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁面6、7を対向両端面に備える)立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域1と、該凹部領域1の他の対向両端面4、4に対して突出するそれぞれ突起形状凹部領域2、2とにより構成されている。
【0025】
前記立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域1、及び該凹部領域1の対向両端面4、4に対して突出する突起形状凹部領域2、2は、それら凹部領域1、凹部領域2、2を適宜なる包囲部材によって包囲して形成されている。なお、基台Fは省略することも可能である。
【0026】
成形型凹部Aとなるそれら立方体形状凹部領域1若しくは直方体形状凹部領域1、突起形状凹部領域2、2を包囲する包囲部材、及び底部5を形成する材料としては、本発明においては特に限定されるものではなく、例えば、合成樹脂材、金属材、木質材、セラミック材、ガラス材、陶磁器材等、適宜に選択が可能である。
【0027】
例えば、凹部領域1及び凹部領域2、2を囲むように適宜なる材料により形成されたプレート状包囲部材F1 を、基台F上面に立設することにより形成されていてもよいし、あるいは凹部領域1及び凹部領域2、2を囲むように適宜なる材料により形成されたブロック状包囲部材F2 を、基台F上面に所定領域に亘って、成形型凹部Aとなる凹部領域1、2、2のそれぞれモールド深さ方向上端部に対して面一に形成するようにしてもよい。
【0028】
前記立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域1の両側面部より突出する突起形状凹部領域2、2は、該成形型凹部Aによって後に成形されるサンプル包埋体の全体を、顕微鏡の観察試料ホルダー等に対して定角度にて定位置に位置決め係止するための係止部であり、位置決め基準部となるものである。
【0029】
位置決め基準部となる前記突起形状凹部領域2、2は、顕微鏡の観察試料ホルダー等に対して常に定角度にて定位置に係止できるように、立方体形状凹部領域1若しくは直方体形状凹部領域1の対向両端面4、4に対して、予め設定される所定位置に突出して形成されていれば、その形状、サイズ、容積等の限定は無いが、例えば、該凹部領域1の対向両端面4、4に対して、線対称な両突起状側面3、3を有して突出するように設けられていても良いし、あるいは、該凹部領域1の対向両端面4、4に対して、互いに直角(垂直)となる線対称な両突起状側面3、3を有して突出するように形成されていても良い。
【0030】
成形型凹部Aのモールド深さD、成形型凹部の突起形状凹部領域2、2を含まない立方体形状凹部領域1若しくは直方体形状凹部領域1のモールド幅W1 、成形型凹部の前記突起形状凹部領域2、2を含めたモールド幅W2 、モールド長さLは、本発明においては特に限定されるものではないが、例えば、一例としては、モールド深さDは2mm〜10mm、前記成形型凹部Aの突起形状凹部領域2、2を含まない立方体形状凹部領域1若しくは直方体形状凹部領域1のモールド幅W1 は1mm〜3mm、前記成形型凹部Aの前記突起形状凹部領域2、2を含めたモールド幅W2 は5mm〜7mm、前記モールド長さLは3mm〜10mm程度である。
【0031】
本発明のサンプル包埋体は、図1に示すようなモールド成形型によりモールド成形された成形体であり、サンプル包埋用モールド成形型の成形型凹部A内にサンプルを混合したサンプル包埋用透明樹脂を充填してモールド成形された成形体であって、立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11と、該成形領域11の両側面14、14から突起状に各々突起状成形面13、13を以て突出する突起形状成形領域12、12とから構
成されているものである。
【0032】
サンプル包埋体Bは、例えば、図2の平面図に示すように、成形型凹部Aの突起形状凹部領域2、2を含まない立方体形状凹部領域1若しくは直方体形状凹部領域1によって成形されたモールド深さD、モールド幅W1 、モールド長さLの立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11と、成形型凹部Aの突起形状凹部領域2、2によって成形されたモールド深さD、モールド幅W2 の立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11の両側面14、14から突起状に各々突起状成形面13、13を以て突出した位置決め基準部となる突起形状成形領域12、12が成形され、例えば矢印状に成形される。
【0033】
位置決め基準部となる前記突起形状成形領域12、12は、サンプル包埋体Bが顕微鏡の観察試料ホルダー等に対して常に定角度にて定位置に係止できるように、立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11の対向両端面14、14に対して予め設定される所定位置に突出して形成されていれば、その形状、サイズ、容積等の限定は無いが、例えば、該成形領域11の対向両端面14、14に対して、線対称な両突起状成形面13、13を有して突起状に突出するように設けられていても良いし、あるいは、該成形領域11の対向両端面14、14に対して、互いに直角(垂直)となる線対称な両突起状成形面13、13を有して突起状に突出するように形成されていても良い。
【0034】
また、モールド長さL方向の一端面には、成形型凹部Aの切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁面6によって成形された切削対象面若しくは観察対象面16が、また、それと対向する他端面には、成形型凹部Aの成形用の型壁面7によって成形された成形面17(又は成形型凹部Aの切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁面7によって成形された切削対象面若しくは観察対象面17)が成形される。
【0035】
例えば、サンプル包埋体Bの一例としては、図1に示す本発明のモールド成形型の成形型凹部A内に、最大幅1mm、長さ数mm程度のくさび形に裁断したサンプル15(高分子多層膜)を置き、エポキシ樹脂等の一液硬化型又は二液硬化型の透明な樹脂液を流し込み冷却固化又は反応硬化させたものである。
【0036】
なお、本発明のサンプル包埋体Bにおいては、例えば、切削対象面(観察対象面)が一端面側のみのシングルエンド型のサンプル包埋体Bの場合には、サンプル包埋体Bの長さL方向の一端面に切削対象面16(観察対象面)を備え、他端面には単に成形面17を備えており、ダブルエンド型のサンプル包埋体Bの場合には、サンプル包埋体Bの長さL方向の一端面に切削対象面16(観察対象面)を備え、他端面にも切削対象面17(観察対象面)を備えている。
【0037】
シングルエンド型のサンプル包埋体Bの場合には、一端面の切削対象面16(観察対象面)側からサンプル包埋体Bを切削(切断)していくために、切削対象面16の幅W3 は成形面17の幅W1 と比較して、その面の幅が狭いこと(W3 <W1 )が望ましい。
【0038】
次に、本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体Bを、顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定する固定方法を以下に説明すれば、本発明のサンプル包埋体Bの立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11と、その成形領域11の両側面14、14から突起する各々突起形状凹部領域12、12との境界部にて、そのサンプル包埋体Bを、顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するものである。
【0039】
また、本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体Bの立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11と、その成形領域11の両側面14、14から突起する各々突起形状
凹部領域12、12との境界部が、顕微鏡のネジ止め式ミクロトーム用試料ホルダーのネジ止め板に接するようにして係止固定するものである。
【0040】
まず、硬化させたサンプル包埋体B(図2参照)をモールド成形型の成形型凹部A内から取り外し、図3(a)の側面図、図3(b)の上面図に示すように、顕微鏡のミクロトーム用試料ホルダーCに取り付ける。
【0041】
顕微鏡のミクロトーム用試料ホルダーCは、図3(a)〜(b)に示すように、互いに平行に離反する一対の対向する固定側ネジ止め板31と可動側ネジ止め板32と、該可動側ネジ止め板32を固定側ネジ止め板31側に接近移動させるネジ部33とから構成されている。
【0042】
図3(a)に示すように、平行に離反する一対の対向する固定側ネジ止め板31と可動側ネジ止め板32との対向面間に、サンプル包埋体B(図2参照)の立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11を嵌入して、各々突起形状凹部領域12、12の突出する各々突起状成形面13、13を、2枚のネジ止め板31、32の各々一端面に突き当てることによりサンプル包埋体Bを抜け落ちないように係止した後、該可動側ネジ止め板32を固定側ネジ止め板31側に矢印方向に移動させて、サンプル包埋体Bの両側面14、14を締め付けて固定する。
【0043】
サンプル包埋体Bは、その各々突起形状凹部領域12、12の両突起状成形面13、13と、立方体形状成形領域11若しくは直方体形状成形領域11の両側面14、14とが作る角隅部18(図2参照)が、ネジ止め板31、32のそれぞれ一端面と、そのネジ止め板31、32の対向面とが作る角隅部にて互いに接触するように固定することにより、このサンプル包埋体Bは、定位置に定角度にて固定することができる。
【0044】
サンプル包埋体Bを試料ホルダーCに係止固定した後は、そのサンプル包埋体Bを切削対象面(観察対象面)16が上になるように試料ホルダーC毎垂直に立てることにより、切削対象面(観察対象面)16(断面)がほぼ水平になり、光学顕微鏡(又は電子顕微鏡)での観察を効率よく行うことができる。
【0045】
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてサンプル包埋体Bにてサンプル15を観察する際には、試料ホルダーCに取り付けたサンプル包埋体Bの薄片を作製する必要があるが、サンプル包埋体Bを係止固定した試料ホルダーCをミクロトームに取り付けることにより、切削(断裁)ナイフの角度設定を簡略化でき、効率よく作業することができる。
【0046】
ミクロトーム用試料ホルダーCは、金属製であって、ネジ止め板31、32の側面は、ほぼ垂直であり、また包埋に用いられる透明樹脂もネジ止めの圧力によって変形しない程度の強度が必要である。また、図3(a)〜(b)に示すように試料ホルダーCにサンプル包埋体Bを係止固定した際に、サンプル包埋体Bの縦方向と横方向の樹脂断面角度を一定角度にて、ほぼ一定位置にて固定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型の全体斜視図。
【図2】本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体の平面図。
【図3】(a)は本発明の顕微鏡観察用サンプル包埋体の固定方法を説明する試料ホルダーの側面図、(b)はその上面図。
【図4】従来の顕微鏡観察用サンプル包埋体であって、シングルエンド型の包埋板の上面図。
【図5】従来の顕微鏡観察用サンプル包埋体であって、ダブルエンド型の包埋板の上面図。
【符号の説明】
【0048】
A…成形型凹部
B…サンプル包埋体
C…顕微鏡の試料ホルダー
D… 成形型凹部のモールド深さ
F…基台
F1 …プレート状包囲部材
F2 …ブロック状包囲部材
W1 …モールド幅
W2 …モールド幅
L…モールド長さL
1…立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域
2…突起形状凹部領域
3…突起状側面
4…凹部領域1の対向両端面
5…底部
6…切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁面
7…成形面(又は切削対象面成形用若しくは観察対象面成形用の型壁面)
11…立方体形状成形領域若しくは直方体形状成形領域
12…突起形状成形領域
13…突起状成形面
14…立方体形状成形領域若しくは直方体形状成形領域の側面
15…サンプル
16…切削対象面若しくは観察対象面
17…成形面(又は切削対象面若しくは観察対象面)
31…固定側ネジ止め板
32…可動側ネジ止め板
33…ネジ部33

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも切削対象面若しくは観察対象面を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、該凹部領域の他の対向両端面に対して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域とにより構成されていることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型。
【請求項2】
サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも切削対象面若しくは観察対象面を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、該凹部領域の他の対向両端面に対して線対称な両側面を有して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域とにより構成されることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型。
【請求項3】
サンプル包埋用樹脂を充填成形する成形型凹部が、少なくとも切削対象面若しくは観察対象面を一端面又は対向両端面に備える立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、該凹部領域の他の対向両端面に対して互いに直角となる線対称な両側面を有して突出し且つ顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定するための係止固定部を成形するための突起形状凹部領域とにより構成されることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型。
【請求項4】
前記成形型凹部のモールド深さDが2mm〜10mm、前記成形型凹部の突起形状凹部領域を含まない立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域のモールド幅W1 が1mm〜3mm、前記成形型凹部の前記突起形状凹部領域を含めたモールド幅W2 が5mm〜7mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の顕微鏡観察用サンプル包埋体成形用モールド成形型。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のサンプル包埋用モールド成形型の成形型凹部内にサンプルを混合したサンプル包埋用透明樹脂を充填してモールド成形された成形体であって、立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、突起形状凹部領域とから構成されていることを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体。
【請求項6】
請求項5記載のサンプル包埋体を、その包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、突起形状凹部領域との境界部にて顕微鏡の観察試料ホルダーに係止固定することを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体の固定方法。
【請求項7】
請求項5記載のサンプル包埋体を、その包埋体の立方体形状凹部領域若しくは直方体形状凹部領域と、突起形状凹部領域との境界部が顕微鏡のネジ止め式ミクロトーム用試料ホルダーのネジ止め板に接するようにして係止固定することを特徴とする顕微鏡観察用サンプル包埋体の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−177692(P2006−177692A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368912(P2004−368912)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】