類似モデル検索システム及び作業指示再利用システム
【課題】
既存の製品モデルと新規の製品モデル間の部片の同定の精度を向上させ、作業指示情報を再利用する。
【解決手段】
第一および第二の製品モデル情報として形状情報及び位置情報を取得し、取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の類似度を算出し、類似したモデルを検索し、また検索結果に基づき、第一および第二の製品モデルの部片を一意に同定し、第二の製品モデルの作業指示情報に含まれる部片情報を第一の製品モデルの部片情報に置換し、第一の製品モデルの作業指示情報を生成する。
既存の製品モデルと新規の製品モデル間の部片の同定の精度を向上させ、作業指示情報を再利用する。
【解決手段】
第一および第二の製品モデル情報として形状情報及び位置情報を取得し、取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の類似度を算出し、類似したモデルを検索し、また検索結果に基づき、第一および第二の製品モデルの部片を一意に同定し、第二の製品モデルの作業指示情報に含まれる部片情報を第一の製品モデルの部片情報に置換し、第一の製品モデルの作業指示情報を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて作業員への作業指示書を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各製品の部品の共通化を目的として、過去に設計し登録した部品で形状特性が類似する部品を自動的に検索する技術がある。また、解析のためのモデル形状の簡易化を目的として、穴やフィレットなどの特徴部位を自動検索し、消去する技術がある。その他に切削加工条件の再利用を目的として、加工部品の切削条件に影響のある形状特性について類似する加工部品を検索し、加工諸元を再利用する技術がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003-202774号公報
【特許文献2】特願2005-330060号公報
【特許文献3】特願2003-202592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部片の加工、組立、溶接工程を含む製缶工程に代表される多種工程の作業指示を対象として、部片の製作工程と部片の溶接組立工程の作業指示の再利用ができれば、シリーズ製品の新機種の製作工程の作業指示書の作成工数を低減することができる。また、同一製品における類似な複数の部片の工程を登録する場合、類似な部片を検索する機能により一括して工程登録を可能とすることにより、登録の手間を低減することができる。
【0005】
しかしながら、類似な形状の部品の既存工程を再利用する場合に、類似形状を検索する従来方式として特許文献1、特許文献2のような形状外見寸法による簡易的な検索は精度に問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に対し、部片の類似検索の精度を高め、作業指示書の再利用を高精度に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、第1の製品モデルの情報と、第2の製品モデル情報とを取得し、その部片同士の特徴量を比較して部片の類似度を算出するにおいて、類似度算出に用いる特徴量に、部片の位置情報を含めた。さらには、このように算出した類似度を用いて部片同士の同定を行い、既存の第1の作業指示情報から、同定結果を用いて部片を置き換えることで、第2の作業指示情報を生成するようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製品モデル間の部片の同定を高精度に行うことができる。この同定結果をもちいれば、既存モデルの作業指示書を、新規モデルの作業指示書作成に再利用可能とすることができ、作業指示書の作成工数が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例にかかるシステムの構成図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる処理全体の流れである。
【図3】本発明の一実施例にかかる類似部片検索・同定処理の流れである。
【図4】本発明の一実施例にかかる類似モデルの例である。
【図5】本発明の一実施例にかかる部片の同定表である。
【図6】本発明の一実施例にかかる同定条件の例である。
【図7】本発明の一実施例にかかる同定結果の例である。
【図8】本発明の比較例にかかる同定条件の例である。
【図9】本発明の比較例にかかる同定結果の例である。
【図10】本発明の一実施例と比較例にかかる同定結果の比較表である。
【図11】本発明の一実施例にかかる再利用生成処理の流れである。
【図12】本発明の一実施例にかかる組立アニメ制御コードの再利用生成の例である。
【図13】本発明の一実施例にかかる組立工程フローの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明を実現するコンピュータシステムの構成を示す。本コンピュータシステムは、処理部101、記憶部102、入力部2、出力部3及びそれらを接続する接続線103の構成からなる。処理部101は例えばCPUなどのプロセッサであり、記憶部102は例えばHDDや半導体メモリであり、入力部2は例えばキーボードやマウスであり、出力部3は例えばディスプレイやプリンタであり、接続線103は例えば接続コードやネットワークである。
【0012】
処理部101は、その上で記憶装置などに記憶されたプログラムを実行することによって、CAD1、部片情報取得部4、部片間類似度算出部5、類似部片検索・同定処理部6、再利用生成部7として機能する。記憶装置は、部片・工程DB8、組立アニメDB9を記憶している。
【0013】
CAD1は、工程を設計して作業指示書を作成しようとする製品モデルの情報をロードする。部片情報取得部4は、ロードした製品モデルの情報から、当該製品を構成する部片の特徴量を取得する。
【0014】
部片・工程データベース8(図中、部片・工程DBと称す)は、取得した部片の特徴量と部片の工程情報を保存し管理する。
【0015】
入力部2は、ユーザの指示の入力を受け付け、出力部3は、本コンピュータシステムの処理結果を表示したり印刷したりする。
【0016】
部片間類似度算出部5は、取得した部片の特徴量から部片間の類似度を算出し、記憶部3に保持する。
【0017】
類似部片検索・同定処理部6は、算出した類似度と設定した同定条件を元に、部片の検索・同定を行う。
【0018】
組立アニメデータベース9(図中、組立アニメDBと略す)は、組立品のビューワモデルとそのアニメ制御コードが登録されている。
【0019】
再利用生成部7は、部片の同定結果を元に、組立アニメDB9に登録されている既存製品の組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立アニメ制御コードを再利用生成し、組立アニメDB9に登録する。
【0020】
次に本発明のシステムの処理方法を説明する。
【0021】
図2に本発明の処理全体のフローチャートを示す。ステップ201では、入力部2からの指示によりCAD1から新規製品モデルの入力を受け付ける。ステップ202では、部片情報取得部4により、前記入力に基づいてCADから新規製品モデルの部片情報を取得する。ステップ203では、入力部2を介して記憶部102に登録済みの既存製品モデルの選択を受け付ける。ステップ204では、部片・工程DB8から前記選択したモデルの既存製品モデルの部片情報を取得する。ステップ205では、部片間類似度算出部5により、ステップ202およびステップ204で取得した部片情報を元に、新規製品モデルと既存製品モデルとの部片間の類似度を算出し、記憶部102に保持する。ステップ206では、類似部片検索・同定処理部6により、算出した類似度と同定条件とを基に、部片の検索・同定を行う。ステップ207では、再利用生成部7により、部片の同定結果を基に、組立アニメDB9に登録されている既存製品の組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立アニメ制御コードを再利用生成し、また前記生成した組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立工程フローを生成し、組立アニメDB9に登録する。
【0022】
(部片情報取得処理)
ステップ202及びステップ204にて行う、部片情報取得処理について説明する。この処理では、類似部片検索・同定処理部6で用いる部片・工程DB8内のデータ作成として行なう、製品モデルおよび製品モデルを構成する部片の情報を部片・工程DB8に登録する。部片情報を取得しようとする製品モデルの情報をCAD1上にロードし、部片情報取得部4により製品モデルおよび製品モデルを構成する部片の特徴量をCAD1上のモデル情報から取得し、製品モデルおよび部片のIDに対応付けて部片・工程DB8へ登録する。ここで、ステップ202では、対象となる製品モデルは新規の製品モデルであり、ステップ204では、既存の製品モデルである。また、部片の特徴量とは、以下に示す情報を含むものである。(1)部片を内包する最小の直方体の寸法、(2)部片の質量、(3)部片の体積、(4)部片の表面積、(5)部片の主慣性モーメント、(6)部片の慣性主軸、(7)材質、(8)部片の名称、(9)部片の重心座標。また製品モデルの特徴量とは、以下に示す情報を含むものである。(10)製品モデル全体の重心座標、(11)製品モデル全体の座標原点、(12)製品モデル全体の主慣性モーメント。(13)製品モデル全体の慣性主軸。これらの特徴量は、製品モデル情報に直接記載してあってもよいし、製品モデル情報に含まれる他の情報から算出するようにしてもよい(例えば、製品モデル、部片の外形の情報から体積、表面積、重心を算出するなど)。
【0023】
(部片間類似度算出処理)
ステップ205で行う、部片間類似度算出処理について説明する。この処理では、部片情報取得処理で取得し、部片・工程DBに登録した製品モデルおよび製品モデルを構成する部片の特徴量を基に、部片間類似度算出5により、部片間類似度を算出する。部片間類似度の算出は1つの製品モデル内の部品同士または2つの異なる製品モデル間の部品同士で行うことができる。2つの異なる製品モデル間の部品同士で類似度を算出する場合、2つの製品モデルの向き合わせを行う。向きあわせとは、2つの製品モデルそれぞれについて、部片情報取得部4で取得したモデル全体の慣性主軸の成分から、1次独立な3次元ベクトルを定義し、ベクトルを正対させる変換行列を求め、この変換行列を用いて一方の製品モデルの向きをもう一方の製品モデルに合わせることである。
【0024】
部片間の類似度の算出方法を以下に示す。以下、算出対象となる2つの部片(以下、部片s、部片tとする)間の類似度をSi(s、t)と表現する。添え字iは類似度の種類を表す。算出する部片間類似度は以下に示す項目を含むものである。(1)部片形状の類似度、(2)部片体積の類似度、(3)部片名の類似度、(4)部片配置の類似度。
【0025】
(1)部片形状の類似度:部片形状の類似度を算出するにあたり、部片の形状に関する数値特徴量をパラメータとするk次元の特徴ベクトルを算出する。形状に関する特徴ベクトルは以下に示す情報を含むものである。(A)部片を内包する最小の直方体形状の類似度:部片を内包する最小の直方体の3つの寸法値(高さ、長さ、奥行き)をd1<d2<d3の昇順に並べた3次元ベクトル(d1、d2、d3)で1つの特徴ベクトルを表す。(B)部片の質量、部片の体積、部片の表面積:部片の質量m、体積v、表面積sの3つのスカラーを並べた3次元ベクトル(m、v、s)で1つの特徴ベクトルを表す。(C)部片の主慣性モーメント:主慣性モーメントの3つのスカラーをp1>p2>p3の降順に並べた3次元ベクトル(p1、p2、p3)で1つの特徴ベクトルを表す。
【0026】
特徴ベクトルに関する類似度Si(s、t)を、以下の数1で算出する。ここで、部片sの特徴ベクトルをvs、部片tの特徴ベクトルをvtとする。
【数1】
【0027】
一つの部片に対する特徴ベクトルが一つの場合、数1で算出した値が部片Sと部片tの類似度となるが、一つの部片に対してn個の形状に関する特徴ベクトルがある場合、総合的な形状の類似度は、以下の数2に示すように、それぞれの形状に対して類似度を算出し、算出したn個の類似度の相加平均値Savを用いる。
(数2) Sav=(s1+s2+・・・+sn)/n
【0028】
数1では、特徴ベクトルを自身のノルムで割ることで部片の大きさによらない形状の類似の度合いを算出する。Si(s、t)=0の時、部片sと部片tの形状は完全に一致しており、形状の類似度Si(s、t)の値が大きくなるほど、形状の乖離が大きいことを示す。 (2)部片体積の類似度:部片体積の類似度は、部片の体積値Vを用いて、以下の数3及び数4で算出する。
【数3】
【数4】
【0029】
数3および数4では、部片の体積比を取ることで体積の類似の度合いを算出する。体積が小さい方の部片を分母に取ることから、Si(s、t)≧1である。Si(s、t)=1の時、部片sと部片tの体積は完全に一致しており、部片体積の類似度の値が大きくなるほど、体積の乖離が大きいことを示す。
【0030】
(3)部片名の類似度:部片名の類似度は、2つの文字列がどの程度異なっているかを示す数値であるレーベンシュタイン距離を用いて算出する。レーベンシュタイン距離は、文字の挿入や削除、置換によって、一つの文字列を別の文字列に変形するのに必要な手順の最小回数として与えられる。部片名の類似度は整数値であり、Si(s、t)=0の時、部片sと部片tの部片名は完全に一致しており、部片名の類似度の値が大きくなるほど、部片名の乖離が大きいことを示す。
【0031】
(4)部片配置の類似度:部片配置の類似度は、製品モデル全体から見た部片の位置の捉え方によって、製品モデル全体の座標原点から見た位置と捉える絶対位置、および製品モデル全体の重心から見た位置と捉える相対位置の2種類の類似度を算出する。2つの製品モデル全体の座標原点が同じである場合には絶対位置の類似度を用い、異なる場合は相対位置の類似度を用いることで、部片配置の類似の度合いをより正確に判断することができる。絶対位置による部片配置の類似度は、製品モデル全体の座標原点から部片の重心までを結んで作られる3次元の特徴ベクトルを用いて、また、相対位置による部片配置の類似度は、製品モデル全体の重心から部片の重心までを結んで作られる3次元の特徴ベクトルvs及びvtを用いて、以下の数5で算出する。
【0032】
(数5) Si(s、t)=|vs- vt|
数5では、特徴ベクトルの差分を算出することで部片配置の類似の度合いを算出する。Si(s、t)=0の時、部片sと部片tの部片配置は完全に一致しており、部片配置の類似度の値が大きくなるほど、部片配置の乖離が大きいことを示す。
【0033】
(類似部片検索・同定処理)
図3に、ステップ206で類似部片検索・同定処理部6が行う類似部片検索・同定処理の処理フローを示す。ステップ301では、記憶部102に保持されている複数の同定条件を取得する。同定条件とは、二つの部片同士を類似とするか否か判断する判断基準として用いるものである。ステップ302では、ステップ301で取得した同定条件の1つを使用する条件として設定する。ステップ303では、部片間類似度算出部5で取得した類似度のうち、ステップ302で設定した同定条件を満たす部片の組み合わせをステップ202及び204で取得した部片情報から抽出する。ステップ304では、抽出された情報があるか否かを判断し、あればステップ305に進み、なければステップ307に進む。ステップ305では、ステップ303で抽出された情報から類似度Si(s、t)の値が最も小さい(最も類似している)部片の組合せを同定し、同定された部片の情報を記憶部102で保持している同定結果に追加する。同定結果は、同定された部片の部片名または部片番号の組み合わせを最小項目とし、同定された際に設定されていた同定条件や部片間類似度を追加項目として保持してもよい。設定された同定条件のみで部片の組み合わせ一意に決定できない場合は、部片が固有に持つ部片番号の値が最も小さい部片同士を同定する。ステップ306では、同定結果に追加された部片を同定の対象から削除し、ステップ304に戻る。ステップ304では、抽出された情報が残っていればステップ305及びステップ306を再度行い、情報が残ってなければ全部片に対して同定を実行したとして、次のステップ307に進む。
【0034】
ステップ307では、2つの製品モデルともに同定の対象となる部片(設定された同定条件を満たしておらず、ステップ303で抽出されなかった部片)が残っているか否かを判断し、あればステップ308に進み、なければ処理を終了する。ステップ308では、ステップ301で取得した同定条件が残っているか否かを判断し、あれば、ステップ302へ戻り、次の同定条件を設定してステップ303〜306を再度行い、なければ処理を終了する。同定の対象となる部片または同定条件の残りが無くなった場合には、ステップ206にかかる類似部片検索・同定処理が終了する。
【0035】
図4に、例題として使用する類似した2つの製品モデルを示す。図4(a)の製品モデルをAssembly_001、図4(b)の製品モデルをAssembly_002とする。どちらの製品モデルも7つの部片から構成されており、図中において各部片の部片名および括弧書きで部片番号を記載する。screwのように同一形状の部片はどちらの製品モデルにおいても同様の部片名であるが、部片番号は製品モデル間で命名規則が異なっており、連番とならない箇所もある。部片番号は製品モデルの設計者が個別に設定するか、あるいはCADで自動に割り振られ、重複は許可されない。また座標原点の取り方も製品モデルによって異なっている点に注意する必要がある。
【0036】
図5に、図4の2つの製品モデルで同定したい部片の組み合わせを整理した部片同定表501を示す。図4で示された製品モデルの向きを正とし、部片の対応を人が判断したものである。
【0037】
図6に、同定条件の入力例601を示す。同定条件は、入力部2を介して記憶部102に保持され、類似部片検索・同定処理部6がステップ301において取得する。同定条件は複数入力することができ、入力例601では条件1から条件7までの7つの同定条件を入力としている。1つの同定条件は複数の類似度の許容値の組み合わせからなっており、条件ごとに用いる類似度を選択することが可能である。例えば、条件1は部片形状、部片体積、部片名、部片配置(相対位置)の4つの類似度を用いているが、条件2から条件7では部片形状、部片体積、部片配置(相対位置)の3つの類似度を用いている。ステップ303において、同定条件を満たすとは、部片間類似度の値が、同定条件を構成する全ての類似度の許容値以下であることである。同定条件は自由に入力できるが、許容値の小さい条件から許容値の大きい条件へと条件を段階的に緩めることで、ステップ303で抽出する同定候補を絞り込むことができ、正しい同定結果を導くことが可能となる。また、前記入力例では座標原点の取り方が異なる製品モデル同士の同定を想定し(図4(a)では座標原点は左側、図4(b)では座標原点は中央)、同定条件として絶対位置による部片配置の類似度ではなく、相対位置による部片配置の類似度を用いている。
【0038】
図7に、図4の2つの製品モデルに対して図6の同定条件を入力とし類似部片検索・同定処理部6の処理を行った場合の同定結果701を示す。ステップ206にかかる類似部片検索・同定処理の結果である。同定結果の例では、1行ごとにAssembly_001とAssembly_002とで同定された部片の部片名と部片番号、同定した際の同定条件、部片間の類似度を保持している。前記同定結果の例から、条件1に当てはまる部片の組み合わせはなく、条件2から同定が行われていることがわかる。 また部片対応表501と比較し、全て正しく同定されていることがわかる。
【0039】
図4のscrewのように同一形状の部片がある場合、部片の正確な同定のためには、部片の形状情報だけでなく、部片の配置情報が重要である。比較例として、図8に示したように図6の同定条件から部片配置(相対位置)に関する条件を削除した同定条件の入力例801を用いた類似部片検索・同定処理を行った。他の条件は、同じである。図9にその同定結果901を、図10に実施例にかかる同定結果601と比較例にかかる同定結果901の比較表1001を示す。同定結果901では、部片対応表501と比較し、base001とbase002の組み合わせが正しく同定された以外は全ての組み合わせで間違った結果となっている。比較1001の結果より、部片の同定には部片の形状情報に加え、部片の配置情報を考慮する必要があることがわかる。
【0040】
(再利用生成処理)
図11に、ステップ207にて再利用生成部7が行う再利用生成処理の処理フローを示す。ステップ1101では、既存製品モデル(Assembly_001)に関連付けて登録されている組立アニメ制御コードを組立アニメDB9から読み込む。ステップ1102では、ステップ206で作成した同定結果を読み込む。ステップ1103では、ステップ1101で読み込んだ既存モデルの登録情報を再利用し、同定結果に基づいて部片番号、部片名などを置換することで、新規製品モデル(Assembly_002)の組立アニメ制御コードを再利用生成する。ステップ1104では、前記生成した組立アニメ制御コードを組立アニメDB9に登録する。ステップ1105では、前記生成した組立アニメ制御コードから、新規製品モデルの組立工程フローを生成する。ステップ1106では、前記生成した組立工程フローを部片・工程DB8に登録する。
【0041】
図12に、図4の2つのモデルに対して同定結果701を用いて、ステップ1103で再利用生成される組立アニメ制御コードの例を示す。図4(a)のAssembly_001に対して組立アニメDB9に組立アニメ制御コード1201が登録済みであるとする。再利用生成部7では、組立アニメ制御コード1201および同定結果1202を、記憶部102から読み込む。同定結果1202に基づき組立アニメ制御コード1201の部片番号を置換することで、図4(b)のAssembly_002の組立アニメ制御コード1203が自動的に生成される。
【0042】
図13に、図4(b)のAssembly_002の組立工程フローの例を示す。この組立工程フローは、ステップ1105にて、組立アニメ制御コード1203から生成され、部片・工程DB8に登録される。組立工程フローには、工程名及びその工程の内容を示す工程情報1301と、順序立てて示される作業及び各作業の内容を示す作業情報1306が含まれる。
【0043】
組立工程情報1301は、以下の情報から構成される。(1)工程の名称である「工程名」、(2)対象となる部片の「部片番号」、(3)加工工程か組立工程かの工程の種別を区別する「工程種別」、(4)「作業順序」1302。
【0044】
組立工程の作業順序1302は、組付け動作の時系列的な前後関係である。データとしては、工程内の作業の直前に行う作業である「前作業」1303と直後に行う作業である「後作業」1304の順序関係が、各作業について示されている。現作業1305に対し登録される「前作業」と「後作業」は1つ以下である。
【0045】
組付作業1306の内容を記述する作業情報は、以下の内容を含むテキスト、数値、ファイルにより構成される。(1)「作業名称」、(2)作業対象となる部片の「部片番号」、(3)作業内容は「組付」、(4)組付け動作を表す「軌跡ベクトル」。
【0046】
本発明の実施の形態によれば、類似した2つの製品モデルを構成する部片間の類似度を算出し、類似した部片の組み合わせを一意に決定することができる。またこれにより、既存製品モデルに関連して登録されている組立アニメ制御コードから、既存製品モデルと類似した新規製品モデルの組立アニメ制御コードを再利用生成することができる。さらに再利用生成した組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立工程フローを生成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・CAD、2・・・入力部、3・・・出力部、4・・・部片情報取得部、5・・・部片間類似度算出部、6・・・類似部片検索・同定処理部、7・・・再利用生成部、8・・・部片・工程データベース(部片・工程DB)、9・・・組立アニメデータベース(組立アニメDB)、101・・・処理部、102・・・記憶部、103・・・接続線103。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて作業員への作業指示書を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各製品の部品の共通化を目的として、過去に設計し登録した部品で形状特性が類似する部品を自動的に検索する技術がある。また、解析のためのモデル形状の簡易化を目的として、穴やフィレットなどの特徴部位を自動検索し、消去する技術がある。その他に切削加工条件の再利用を目的として、加工部品の切削条件に影響のある形状特性について類似する加工部品を検索し、加工諸元を再利用する技術がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003-202774号公報
【特許文献2】特願2005-330060号公報
【特許文献3】特願2003-202592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部片の加工、組立、溶接工程を含む製缶工程に代表される多種工程の作業指示を対象として、部片の製作工程と部片の溶接組立工程の作業指示の再利用ができれば、シリーズ製品の新機種の製作工程の作業指示書の作成工数を低減することができる。また、同一製品における類似な複数の部片の工程を登録する場合、類似な部片を検索する機能により一括して工程登録を可能とすることにより、登録の手間を低減することができる。
【0005】
しかしながら、類似な形状の部品の既存工程を再利用する場合に、類似形状を検索する従来方式として特許文献1、特許文献2のような形状外見寸法による簡易的な検索は精度に問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に対し、部片の類似検索の精度を高め、作業指示書の再利用を高精度に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、第1の製品モデルの情報と、第2の製品モデル情報とを取得し、その部片同士の特徴量を比較して部片の類似度を算出するにおいて、類似度算出に用いる特徴量に、部片の位置情報を含めた。さらには、このように算出した類似度を用いて部片同士の同定を行い、既存の第1の作業指示情報から、同定結果を用いて部片を置き換えることで、第2の作業指示情報を生成するようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製品モデル間の部片の同定を高精度に行うことができる。この同定結果をもちいれば、既存モデルの作業指示書を、新規モデルの作業指示書作成に再利用可能とすることができ、作業指示書の作成工数が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例にかかるシステムの構成図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる処理全体の流れである。
【図3】本発明の一実施例にかかる類似部片検索・同定処理の流れである。
【図4】本発明の一実施例にかかる類似モデルの例である。
【図5】本発明の一実施例にかかる部片の同定表である。
【図6】本発明の一実施例にかかる同定条件の例である。
【図7】本発明の一実施例にかかる同定結果の例である。
【図8】本発明の比較例にかかる同定条件の例である。
【図9】本発明の比較例にかかる同定結果の例である。
【図10】本発明の一実施例と比較例にかかる同定結果の比較表である。
【図11】本発明の一実施例にかかる再利用生成処理の流れである。
【図12】本発明の一実施例にかかる組立アニメ制御コードの再利用生成の例である。
【図13】本発明の一実施例にかかる組立工程フローの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明を実現するコンピュータシステムの構成を示す。本コンピュータシステムは、処理部101、記憶部102、入力部2、出力部3及びそれらを接続する接続線103の構成からなる。処理部101は例えばCPUなどのプロセッサであり、記憶部102は例えばHDDや半導体メモリであり、入力部2は例えばキーボードやマウスであり、出力部3は例えばディスプレイやプリンタであり、接続線103は例えば接続コードやネットワークである。
【0012】
処理部101は、その上で記憶装置などに記憶されたプログラムを実行することによって、CAD1、部片情報取得部4、部片間類似度算出部5、類似部片検索・同定処理部6、再利用生成部7として機能する。記憶装置は、部片・工程DB8、組立アニメDB9を記憶している。
【0013】
CAD1は、工程を設計して作業指示書を作成しようとする製品モデルの情報をロードする。部片情報取得部4は、ロードした製品モデルの情報から、当該製品を構成する部片の特徴量を取得する。
【0014】
部片・工程データベース8(図中、部片・工程DBと称す)は、取得した部片の特徴量と部片の工程情報を保存し管理する。
【0015】
入力部2は、ユーザの指示の入力を受け付け、出力部3は、本コンピュータシステムの処理結果を表示したり印刷したりする。
【0016】
部片間類似度算出部5は、取得した部片の特徴量から部片間の類似度を算出し、記憶部3に保持する。
【0017】
類似部片検索・同定処理部6は、算出した類似度と設定した同定条件を元に、部片の検索・同定を行う。
【0018】
組立アニメデータベース9(図中、組立アニメDBと略す)は、組立品のビューワモデルとそのアニメ制御コードが登録されている。
【0019】
再利用生成部7は、部片の同定結果を元に、組立アニメDB9に登録されている既存製品の組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立アニメ制御コードを再利用生成し、組立アニメDB9に登録する。
【0020】
次に本発明のシステムの処理方法を説明する。
【0021】
図2に本発明の処理全体のフローチャートを示す。ステップ201では、入力部2からの指示によりCAD1から新規製品モデルの入力を受け付ける。ステップ202では、部片情報取得部4により、前記入力に基づいてCADから新規製品モデルの部片情報を取得する。ステップ203では、入力部2を介して記憶部102に登録済みの既存製品モデルの選択を受け付ける。ステップ204では、部片・工程DB8から前記選択したモデルの既存製品モデルの部片情報を取得する。ステップ205では、部片間類似度算出部5により、ステップ202およびステップ204で取得した部片情報を元に、新規製品モデルと既存製品モデルとの部片間の類似度を算出し、記憶部102に保持する。ステップ206では、類似部片検索・同定処理部6により、算出した類似度と同定条件とを基に、部片の検索・同定を行う。ステップ207では、再利用生成部7により、部片の同定結果を基に、組立アニメDB9に登録されている既存製品の組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立アニメ制御コードを再利用生成し、また前記生成した組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立工程フローを生成し、組立アニメDB9に登録する。
【0022】
(部片情報取得処理)
ステップ202及びステップ204にて行う、部片情報取得処理について説明する。この処理では、類似部片検索・同定処理部6で用いる部片・工程DB8内のデータ作成として行なう、製品モデルおよび製品モデルを構成する部片の情報を部片・工程DB8に登録する。部片情報を取得しようとする製品モデルの情報をCAD1上にロードし、部片情報取得部4により製品モデルおよび製品モデルを構成する部片の特徴量をCAD1上のモデル情報から取得し、製品モデルおよび部片のIDに対応付けて部片・工程DB8へ登録する。ここで、ステップ202では、対象となる製品モデルは新規の製品モデルであり、ステップ204では、既存の製品モデルである。また、部片の特徴量とは、以下に示す情報を含むものである。(1)部片を内包する最小の直方体の寸法、(2)部片の質量、(3)部片の体積、(4)部片の表面積、(5)部片の主慣性モーメント、(6)部片の慣性主軸、(7)材質、(8)部片の名称、(9)部片の重心座標。また製品モデルの特徴量とは、以下に示す情報を含むものである。(10)製品モデル全体の重心座標、(11)製品モデル全体の座標原点、(12)製品モデル全体の主慣性モーメント。(13)製品モデル全体の慣性主軸。これらの特徴量は、製品モデル情報に直接記載してあってもよいし、製品モデル情報に含まれる他の情報から算出するようにしてもよい(例えば、製品モデル、部片の外形の情報から体積、表面積、重心を算出するなど)。
【0023】
(部片間類似度算出処理)
ステップ205で行う、部片間類似度算出処理について説明する。この処理では、部片情報取得処理で取得し、部片・工程DBに登録した製品モデルおよび製品モデルを構成する部片の特徴量を基に、部片間類似度算出5により、部片間類似度を算出する。部片間類似度の算出は1つの製品モデル内の部品同士または2つの異なる製品モデル間の部品同士で行うことができる。2つの異なる製品モデル間の部品同士で類似度を算出する場合、2つの製品モデルの向き合わせを行う。向きあわせとは、2つの製品モデルそれぞれについて、部片情報取得部4で取得したモデル全体の慣性主軸の成分から、1次独立な3次元ベクトルを定義し、ベクトルを正対させる変換行列を求め、この変換行列を用いて一方の製品モデルの向きをもう一方の製品モデルに合わせることである。
【0024】
部片間の類似度の算出方法を以下に示す。以下、算出対象となる2つの部片(以下、部片s、部片tとする)間の類似度をSi(s、t)と表現する。添え字iは類似度の種類を表す。算出する部片間類似度は以下に示す項目を含むものである。(1)部片形状の類似度、(2)部片体積の類似度、(3)部片名の類似度、(4)部片配置の類似度。
【0025】
(1)部片形状の類似度:部片形状の類似度を算出するにあたり、部片の形状に関する数値特徴量をパラメータとするk次元の特徴ベクトルを算出する。形状に関する特徴ベクトルは以下に示す情報を含むものである。(A)部片を内包する最小の直方体形状の類似度:部片を内包する最小の直方体の3つの寸法値(高さ、長さ、奥行き)をd1<d2<d3の昇順に並べた3次元ベクトル(d1、d2、d3)で1つの特徴ベクトルを表す。(B)部片の質量、部片の体積、部片の表面積:部片の質量m、体積v、表面積sの3つのスカラーを並べた3次元ベクトル(m、v、s)で1つの特徴ベクトルを表す。(C)部片の主慣性モーメント:主慣性モーメントの3つのスカラーをp1>p2>p3の降順に並べた3次元ベクトル(p1、p2、p3)で1つの特徴ベクトルを表す。
【0026】
特徴ベクトルに関する類似度Si(s、t)を、以下の数1で算出する。ここで、部片sの特徴ベクトルをvs、部片tの特徴ベクトルをvtとする。
【数1】
【0027】
一つの部片に対する特徴ベクトルが一つの場合、数1で算出した値が部片Sと部片tの類似度となるが、一つの部片に対してn個の形状に関する特徴ベクトルがある場合、総合的な形状の類似度は、以下の数2に示すように、それぞれの形状に対して類似度を算出し、算出したn個の類似度の相加平均値Savを用いる。
(数2) Sav=(s1+s2+・・・+sn)/n
【0028】
数1では、特徴ベクトルを自身のノルムで割ることで部片の大きさによらない形状の類似の度合いを算出する。Si(s、t)=0の時、部片sと部片tの形状は完全に一致しており、形状の類似度Si(s、t)の値が大きくなるほど、形状の乖離が大きいことを示す。 (2)部片体積の類似度:部片体積の類似度は、部片の体積値Vを用いて、以下の数3及び数4で算出する。
【数3】
【数4】
【0029】
数3および数4では、部片の体積比を取ることで体積の類似の度合いを算出する。体積が小さい方の部片を分母に取ることから、Si(s、t)≧1である。Si(s、t)=1の時、部片sと部片tの体積は完全に一致しており、部片体積の類似度の値が大きくなるほど、体積の乖離が大きいことを示す。
【0030】
(3)部片名の類似度:部片名の類似度は、2つの文字列がどの程度異なっているかを示す数値であるレーベンシュタイン距離を用いて算出する。レーベンシュタイン距離は、文字の挿入や削除、置換によって、一つの文字列を別の文字列に変形するのに必要な手順の最小回数として与えられる。部片名の類似度は整数値であり、Si(s、t)=0の時、部片sと部片tの部片名は完全に一致しており、部片名の類似度の値が大きくなるほど、部片名の乖離が大きいことを示す。
【0031】
(4)部片配置の類似度:部片配置の類似度は、製品モデル全体から見た部片の位置の捉え方によって、製品モデル全体の座標原点から見た位置と捉える絶対位置、および製品モデル全体の重心から見た位置と捉える相対位置の2種類の類似度を算出する。2つの製品モデル全体の座標原点が同じである場合には絶対位置の類似度を用い、異なる場合は相対位置の類似度を用いることで、部片配置の類似の度合いをより正確に判断することができる。絶対位置による部片配置の類似度は、製品モデル全体の座標原点から部片の重心までを結んで作られる3次元の特徴ベクトルを用いて、また、相対位置による部片配置の類似度は、製品モデル全体の重心から部片の重心までを結んで作られる3次元の特徴ベクトルvs及びvtを用いて、以下の数5で算出する。
【0032】
(数5) Si(s、t)=|vs- vt|
数5では、特徴ベクトルの差分を算出することで部片配置の類似の度合いを算出する。Si(s、t)=0の時、部片sと部片tの部片配置は完全に一致しており、部片配置の類似度の値が大きくなるほど、部片配置の乖離が大きいことを示す。
【0033】
(類似部片検索・同定処理)
図3に、ステップ206で類似部片検索・同定処理部6が行う類似部片検索・同定処理の処理フローを示す。ステップ301では、記憶部102に保持されている複数の同定条件を取得する。同定条件とは、二つの部片同士を類似とするか否か判断する判断基準として用いるものである。ステップ302では、ステップ301で取得した同定条件の1つを使用する条件として設定する。ステップ303では、部片間類似度算出部5で取得した類似度のうち、ステップ302で設定した同定条件を満たす部片の組み合わせをステップ202及び204で取得した部片情報から抽出する。ステップ304では、抽出された情報があるか否かを判断し、あればステップ305に進み、なければステップ307に進む。ステップ305では、ステップ303で抽出された情報から類似度Si(s、t)の値が最も小さい(最も類似している)部片の組合せを同定し、同定された部片の情報を記憶部102で保持している同定結果に追加する。同定結果は、同定された部片の部片名または部片番号の組み合わせを最小項目とし、同定された際に設定されていた同定条件や部片間類似度を追加項目として保持してもよい。設定された同定条件のみで部片の組み合わせ一意に決定できない場合は、部片が固有に持つ部片番号の値が最も小さい部片同士を同定する。ステップ306では、同定結果に追加された部片を同定の対象から削除し、ステップ304に戻る。ステップ304では、抽出された情報が残っていればステップ305及びステップ306を再度行い、情報が残ってなければ全部片に対して同定を実行したとして、次のステップ307に進む。
【0034】
ステップ307では、2つの製品モデルともに同定の対象となる部片(設定された同定条件を満たしておらず、ステップ303で抽出されなかった部片)が残っているか否かを判断し、あればステップ308に進み、なければ処理を終了する。ステップ308では、ステップ301で取得した同定条件が残っているか否かを判断し、あれば、ステップ302へ戻り、次の同定条件を設定してステップ303〜306を再度行い、なければ処理を終了する。同定の対象となる部片または同定条件の残りが無くなった場合には、ステップ206にかかる類似部片検索・同定処理が終了する。
【0035】
図4に、例題として使用する類似した2つの製品モデルを示す。図4(a)の製品モデルをAssembly_001、図4(b)の製品モデルをAssembly_002とする。どちらの製品モデルも7つの部片から構成されており、図中において各部片の部片名および括弧書きで部片番号を記載する。screwのように同一形状の部片はどちらの製品モデルにおいても同様の部片名であるが、部片番号は製品モデル間で命名規則が異なっており、連番とならない箇所もある。部片番号は製品モデルの設計者が個別に設定するか、あるいはCADで自動に割り振られ、重複は許可されない。また座標原点の取り方も製品モデルによって異なっている点に注意する必要がある。
【0036】
図5に、図4の2つの製品モデルで同定したい部片の組み合わせを整理した部片同定表501を示す。図4で示された製品モデルの向きを正とし、部片の対応を人が判断したものである。
【0037】
図6に、同定条件の入力例601を示す。同定条件は、入力部2を介して記憶部102に保持され、類似部片検索・同定処理部6がステップ301において取得する。同定条件は複数入力することができ、入力例601では条件1から条件7までの7つの同定条件を入力としている。1つの同定条件は複数の類似度の許容値の組み合わせからなっており、条件ごとに用いる類似度を選択することが可能である。例えば、条件1は部片形状、部片体積、部片名、部片配置(相対位置)の4つの類似度を用いているが、条件2から条件7では部片形状、部片体積、部片配置(相対位置)の3つの類似度を用いている。ステップ303において、同定条件を満たすとは、部片間類似度の値が、同定条件を構成する全ての類似度の許容値以下であることである。同定条件は自由に入力できるが、許容値の小さい条件から許容値の大きい条件へと条件を段階的に緩めることで、ステップ303で抽出する同定候補を絞り込むことができ、正しい同定結果を導くことが可能となる。また、前記入力例では座標原点の取り方が異なる製品モデル同士の同定を想定し(図4(a)では座標原点は左側、図4(b)では座標原点は中央)、同定条件として絶対位置による部片配置の類似度ではなく、相対位置による部片配置の類似度を用いている。
【0038】
図7に、図4の2つの製品モデルに対して図6の同定条件を入力とし類似部片検索・同定処理部6の処理を行った場合の同定結果701を示す。ステップ206にかかる類似部片検索・同定処理の結果である。同定結果の例では、1行ごとにAssembly_001とAssembly_002とで同定された部片の部片名と部片番号、同定した際の同定条件、部片間の類似度を保持している。前記同定結果の例から、条件1に当てはまる部片の組み合わせはなく、条件2から同定が行われていることがわかる。 また部片対応表501と比較し、全て正しく同定されていることがわかる。
【0039】
図4のscrewのように同一形状の部片がある場合、部片の正確な同定のためには、部片の形状情報だけでなく、部片の配置情報が重要である。比較例として、図8に示したように図6の同定条件から部片配置(相対位置)に関する条件を削除した同定条件の入力例801を用いた類似部片検索・同定処理を行った。他の条件は、同じである。図9にその同定結果901を、図10に実施例にかかる同定結果601と比較例にかかる同定結果901の比較表1001を示す。同定結果901では、部片対応表501と比較し、base001とbase002の組み合わせが正しく同定された以外は全ての組み合わせで間違った結果となっている。比較1001の結果より、部片の同定には部片の形状情報に加え、部片の配置情報を考慮する必要があることがわかる。
【0040】
(再利用生成処理)
図11に、ステップ207にて再利用生成部7が行う再利用生成処理の処理フローを示す。ステップ1101では、既存製品モデル(Assembly_001)に関連付けて登録されている組立アニメ制御コードを組立アニメDB9から読み込む。ステップ1102では、ステップ206で作成した同定結果を読み込む。ステップ1103では、ステップ1101で読み込んだ既存モデルの登録情報を再利用し、同定結果に基づいて部片番号、部片名などを置換することで、新規製品モデル(Assembly_002)の組立アニメ制御コードを再利用生成する。ステップ1104では、前記生成した組立アニメ制御コードを組立アニメDB9に登録する。ステップ1105では、前記生成した組立アニメ制御コードから、新規製品モデルの組立工程フローを生成する。ステップ1106では、前記生成した組立工程フローを部片・工程DB8に登録する。
【0041】
図12に、図4の2つのモデルに対して同定結果701を用いて、ステップ1103で再利用生成される組立アニメ制御コードの例を示す。図4(a)のAssembly_001に対して組立アニメDB9に組立アニメ制御コード1201が登録済みであるとする。再利用生成部7では、組立アニメ制御コード1201および同定結果1202を、記憶部102から読み込む。同定結果1202に基づき組立アニメ制御コード1201の部片番号を置換することで、図4(b)のAssembly_002の組立アニメ制御コード1203が自動的に生成される。
【0042】
図13に、図4(b)のAssembly_002の組立工程フローの例を示す。この組立工程フローは、ステップ1105にて、組立アニメ制御コード1203から生成され、部片・工程DB8に登録される。組立工程フローには、工程名及びその工程の内容を示す工程情報1301と、順序立てて示される作業及び各作業の内容を示す作業情報1306が含まれる。
【0043】
組立工程情報1301は、以下の情報から構成される。(1)工程の名称である「工程名」、(2)対象となる部片の「部片番号」、(3)加工工程か組立工程かの工程の種別を区別する「工程種別」、(4)「作業順序」1302。
【0044】
組立工程の作業順序1302は、組付け動作の時系列的な前後関係である。データとしては、工程内の作業の直前に行う作業である「前作業」1303と直後に行う作業である「後作業」1304の順序関係が、各作業について示されている。現作業1305に対し登録される「前作業」と「後作業」は1つ以下である。
【0045】
組付作業1306の内容を記述する作業情報は、以下の内容を含むテキスト、数値、ファイルにより構成される。(1)「作業名称」、(2)作業対象となる部片の「部片番号」、(3)作業内容は「組付」、(4)組付け動作を表す「軌跡ベクトル」。
【0046】
本発明の実施の形態によれば、類似した2つの製品モデルを構成する部片間の類似度を算出し、類似した部片の組み合わせを一意に決定することができる。またこれにより、既存製品モデルに関連して登録されている組立アニメ制御コードから、既存製品モデルと類似した新規製品モデルの組立アニメ制御コードを再利用生成することができる。さらに再利用生成した組立アニメ制御コードから新規製品モデルの組立工程フローを生成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・CAD、2・・・入力部、3・・・出力部、4・・・部片情報取得部、5・・・部片間類似度算出部、6・・・類似部片検索・同定処理部、7・・・再利用生成部、8・・・部片・工程データベース(部片・工程DB)、9・・・組立アニメデータベース(組立アニメDB)、101・・・処理部、102・・・記憶部、103・・・接続線103。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の製品モデル情報を取得する第一の製品モデル情報取得手段と、
第二の製品モデル情報を取得する第二の製品モデル情報取得手段と、
前記取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の特徴量に基づいて、部片間の類似度を算出する類似度算出手段とを備え、
前記類似度算出に用いる特徴量には前記部品の位置情報を含まれることを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記位置情報は、製品モデル全体の重心から部片の重心までの相対位置であることを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記製品モデルの重心及び前記部片の重心は、前記製品モデル情報に含まれてることを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記製品モデル情報は前記形状情報を含み、
前記類似度算出手段は、前記形状情報に基づいて前記重心及び前記位置情報を算出することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第一の製品モデルを前記第二の製品モデルの向きに合わせる正対処理を行い、当該正対処理後に前記位置情報を算出することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記類似度算出に用いる特徴量は、モデルまたは部片の名称を含み、レーベンシュタイン距離を用いて前記名称の類似度を算出することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記類似度算出に用いる特徴量は、部片の形状または部片の体積を含むことを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記算出した部片の類似度に基づいて、前記第一と第二の製品モデル間の類似部片を一意に同定する部片同定処理手段を備えた類似モデル検索システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記類似度は、特徴量ごとに算出されており、
前記部片同定処理手段は、前記算出した部片間類似度の特徴量ごとに閾値を設定した同定条件を設定し、
当該設定された同定条件を満たす部片を同定することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のモデル検索システムと、
前記第1の製品モデルにかかる第1の作業指示情報を取得し、前記同定結果に基づいて、前記第1の作業指示情報内の部片を、第2の製品モデルの部片に置き換えることによって、前記第2の製品モデルにかかる第2の作業指示情報を生成する再利用生成手段とを備えた作業指示再利用システム。
【請求項11】
第一の製品モデル情報取得手段が、第一の製品モデル情報を取得する第一の製品モデル情報取得工程と、
第二の製品モデル情報取得手段が、第二の製品モデル情報を取得する第二の製品モデル情報取得工程と、
類似度算出手段が、前記取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の特徴量に基づいて、部片間の類似度を算出する類似度算出工程とを含み、
前記類似度算出に用いる特徴量は前記部品の位置情報を含むことを特徴とする類似モデル検索方法。
【請求項12】
第一の製品モデル情報を取得する第一の製品モデル情報取得手段と、
第二の製品モデル情報を取得する第二の製品モデル情報取得手段と、
前記取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の特徴量に基づいて、部片間の類似度を算出する類似度算出手段としてコンピュータを機能させ、
前記類似度算出に用いる特徴量は前記部品の位置情報を含むことを特徴とする類似モデル検索プログラム。
【請求項1】
第一の製品モデル情報を取得する第一の製品モデル情報取得手段と、
第二の製品モデル情報を取得する第二の製品モデル情報取得手段と、
前記取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の特徴量に基づいて、部片間の類似度を算出する類似度算出手段とを備え、
前記類似度算出に用いる特徴量には前記部品の位置情報を含まれることを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記位置情報は、製品モデル全体の重心から部片の重心までの相対位置であることを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記製品モデルの重心及び前記部片の重心は、前記製品モデル情報に含まれてることを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記製品モデル情報は前記形状情報を含み、
前記類似度算出手段は、前記形状情報に基づいて前記重心及び前記位置情報を算出することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第一の製品モデルを前記第二の製品モデルの向きに合わせる正対処理を行い、当該正対処理後に前記位置情報を算出することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記類似度算出に用いる特徴量は、モデルまたは部片の名称を含み、レーベンシュタイン距離を用いて前記名称の類似度を算出することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記類似度算出に用いる特徴量は、部片の形状または部片の体積を含むことを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記算出した部片の類似度に基づいて、前記第一と第二の製品モデル間の類似部片を一意に同定する部片同定処理手段を備えた類似モデル検索システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記類似度は、特徴量ごとに算出されており、
前記部片同定処理手段は、前記算出した部片間類似度の特徴量ごとに閾値を設定した同定条件を設定し、
当該設定された同定条件を満たす部片を同定することを特徴とする類似モデル検索システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のモデル検索システムと、
前記第1の製品モデルにかかる第1の作業指示情報を取得し、前記同定結果に基づいて、前記第1の作業指示情報内の部片を、第2の製品モデルの部片に置き換えることによって、前記第2の製品モデルにかかる第2の作業指示情報を生成する再利用生成手段とを備えた作業指示再利用システム。
【請求項11】
第一の製品モデル情報取得手段が、第一の製品モデル情報を取得する第一の製品モデル情報取得工程と、
第二の製品モデル情報取得手段が、第二の製品モデル情報を取得する第二の製品モデル情報取得工程と、
類似度算出手段が、前記取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の特徴量に基づいて、部片間の類似度を算出する類似度算出工程とを含み、
前記類似度算出に用いる特徴量は前記部品の位置情報を含むことを特徴とする類似モデル検索方法。
【請求項12】
第一の製品モデル情報を取得する第一の製品モデル情報取得手段と、
第二の製品モデル情報を取得する第二の製品モデル情報取得手段と、
前記取得した第一の製品モデル情報と第二の製品モデル情報とを比較し、製品に含まれる部片の特徴量に基づいて、部片間の類似度を算出する類似度算出手段としてコンピュータを機能させ、
前記類似度算出に用いる特徴量は前記部品の位置情報を含むことを特徴とする類似モデル検索プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−248622(P2011−248622A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121109(P2010−121109)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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