説明

風向調整機構

【課題】構造を簡略化することができ、かつデザイン的にも斬新なものとすることが可能な風向調整機構を提供する。
【解決手段】風向調整機構1は、気体の吹出口2aを有するケーシング2内に移動可能に収容され、ケーシング2の内表面との間に気体通路を形成し、吹出口2aから吹き出される気体の風向を調整可能な風向調整部材3と、ケーシング2に取付けられ、風向調整部材3を駆動してケーシング2内で移動させることが可能な駆動部とを備える。この駆動部によりケーシング2内で風向調整部材3を移動させて気体通路の断面形状を変化させることで、吹出口2aから吹き出される気体の風向を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば空気調和装置等の気体の吹出部に取付けられ、該吹出部から吹き出される気体の流れの向きを調整可能な風向調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気調和装置等の吹出口には吹き出される空気の風向を調整可能な機構が取付けられることがある。
【0003】
たとえば、特開平10−119563号公報には、エアコンの吹出口などに取付けられ、風向調整用の縦フィンおよび横フィンを有し、これらのフィンを回動操作することで風向を調整可能なベンチレータが記載されている。また、風向調整機構の一例として、たとえば特開2007−218505号公報には、複数の縦風向板を間隔をあけて横方向にルーバー状に配列したものが記載されている。
【特許文献1】特開平10−119563号公報
【特許文献2】特開2007−218505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各文献に記載のように、従来の風向調整機構では、フィンや風向板のような風向調整用の板状部材を用いて風向を調整するのが一般的であった。また、吹出口から吹出される気体の流れを縦方向や横方向といった複数の向きに調整するには、特開平10−119563号公報に記載のベンチレータのように縦フィンと横フィンというように各方向に対応した風向調整用の板状部材を設け、これらをそれぞれ回転させて縦方向と横方向とに風向を調整するのが一般的であった。
【0005】
ところが、従来の風向調整機構では、調整したい風向の数に応じた数の風向調整用の板状部材が必要であった。そのため、複数の方向に風向を調整したい場合には複数の風向調整用の板状部材が必要となる。その結果、風向調整用の板状部材の数が増大することとなり、それに伴い風向調整機構の構造も複雑化するという問題があった。
【0006】
また、従来の風向調整機構では、吹出口の前方側に風向調整用の板状部材が取り付けられることが多く、デザイン的にも固定され外観上在り来たりのものとなり易く、斬新なデザインを追求するのも困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、構造を簡略化することができ、かつデザイン的にも斬新なものとすることが可能な風向調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る風向調整機構は、気体の吹出口を有するケーシング内に移動可能に収容され、ケーシングの内表面との間に気体通路を形成し、吹出口から吹き出される気体の風向を調整可能な風向調整部材と、ケーシングに取付けられ、風向調整部材を駆動してケーシング内で移動させることが可能な駆動部とを備える。そして、駆動部によりケーシング内で風向調整部材を移動させて気体通路の断面形状を変化させることで、吹出口から吹き出される気体の風向を調整する。
【0009】
上記風向調整部材は、典型的には、ケーシング内で移動させることで風向を調整可能な程度の容積を有する立体で構成される。たとえば、軽量化や内部に各種要素を収容可能となるという観点から、上記風向調整部材の形状を中空形状とすることが考えられる。たとえば、風向調整部材の形状を、該風向調整部材の内部に空間を規定する外殻部と、該外殻部の内側に配置され外殻部とともに移動可能である内殻部とを有する形状とすることも考えられる。
【0010】
上記駆動部は、たとえば、風向調整部材を貫通するようにケーシングに回転可能に取付られた第1回転軸と、風向調整部材を貫通するようにケーシングに回転可能に取付られ、第1回転軸と交差(典型的には直交)する方向に延在する第2回転軸と、第1回転軸を回転操作可能な第1操作部材と、第2回転軸を回転操作可能な第2操作部材と、風向調整部材に直接または間接的に設けられ、第1回転軸からの動力が伝達され、第1回転軸の回転運動を第1方向の並進運動に変換可能な第1動力伝達部と、風向調整部材に直接または間接的に設けられ、第2回転軸からの動力が伝達され、第2回転軸の回転運動を第2方向の並進運動に変換可能な第2動力伝達部とを有するものであってもよい。
【0011】
上記第1操作部材で第1回転軸を回転操作することで風向調整部材を第1方向に移動させることができ、上記第2操作部材で第2回転軸を回転操作することで風向調整部材を第2方向に移動させることができる。
【0012】
上記外殻部と内殻部との間に間隙を設けてもよい。この場合、風向調整機構は、この間隙内にスライド移動可能に設置され第1回転軸が挿通される第1スライド部材と、上記間隙内にスライド移動可能に設置され第2回転軸が挿通される第2スライド部材とをさらに備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る風向調整機構では、ケーシング内で風向調整部材を移動させて気体通路の断面形状を変化させることで、吹出口から吹き出される気体の風向を調整するようにしているので、気体の流れを複数の方向に調整したい場合でも、当該調整したい方向の数よりも少ない数の風向調整部材で対応することができる。それにより、風向調整部材の数を低減することができ、結果的に風向調整機構の構造を簡略化することができる。また、風向調整部材をケーシング内に収容することができるので、デザイン的にも従来にない斬新なものとなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図5(a),(b)を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の1つの実施の形態における風向調整機構1の斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の風向調整機構1は、気体の吹出口2aを有するケーシング2と、風向調整部材3と、風向調整部材3の駆動部とを備える。
【0016】
ケーシング2は、中空形状であり、たとえば樹脂を用いて作製することができる。ケーシング2は、内部に空気等の気体が流れる気体流路を有する。図1の例では、ケーシング2の一端側に吹出口2aを設け、他端側にケーシング2内に気体を送り込むことが可能な気体送込口を設けている。
【0017】
風向調整部材3は、たとえば樹脂製であり、ケーシング2内に移動可能に収容される。該風向調整部材3とケーシング2との間に気体通路を形成する。図1の例では、風向調整部材3の外表面と、ケーシング2の内表面との間に気体通路を形成している。
【0018】
図3に、風向調整機構1の部分断面図を示す。図3に示すように、風向調整部材3は、典型的には、所定の容積を有する立体で構成する。より詳しくは、ケーシング2内で移動させることで風向を調整可能な程度の容積を有する立体で構成する。また、軽量化および内部空間の有効活用という観点から、風向調整部材3を中空状とすることが好ましいが、中実状とすることも考えられる。風向調整部材3の具体的な形状としては任意の立体形状を採用可能であるが、たとえば球状、紡錘形状、卵形等の丸みを帯びた立体形状や、円柱形状、角柱形状、円錐形状、角錐形状等の細長い形状とすることが考えられる。
【0019】
図3の例では、風向調整部材3を中空の略球状としている。図3に示すように、風向調整部材3は、内部に空間を規定する外殻部(外側部材:外側フレーム)3aと、該外殻部3aの内側に配置され外殻部3aとともに移動可能である内殻部(内側部材:内側フレーム)3bとを有する。なお、外殻部3aと内殻部3bとを、何らかの接続部材を介して接続してもよい。
【0020】
駆動部は、ケーシング2に設けられ、ケーシング2内で風向調整部材3を駆動して移動させ、風向調整部材3の周囲の気体通路の断面形状(気体が流れる方向であるケーシング2の軸方向と直交する平面でケーシング2とともに風向調整部材3を切断した場合の気体通路の形状)を変化させることができる。このように気体通路の断面形状を変化させることにより、該気体通路を通過する気体の流量を、風向調整部材3の外周に沿う方向に変化させることができる。
【0021】
たとえば、図4において実線で示す中央位置に風向調整部材3が位置する場合(紙面と垂直方向においてもケーシング2の中央位置にあるものと仮定する)、図4において風向調整部材3の上下に位置する気体通路11を通過する気体の流量はほぼ等しくなり、気体は図4の左向きにほぼ真直ぐに吹出されることとなる。この中央位置から、風向調整部材3を図4の点線の位置に移動させることにより、図4の上側に位置する気体通路11を通過する気体の流量を、図4の下側に位置する気体通路11を通過する気体の流量よりも多くすることができ、吹出口2aから吹き出される気体の風向を図4の下向きに変化させることができる。このようにして吹出口2aから吹き出される気体の風向を調整することができる。
【0022】
本実施の形態の風向調整機構1では、上記のようにケーシング2内で風向調整部材3を移動させて気体通路11の断面形状を変化させることで、吹出口2aから吹き出される気体の風向を調整するようにしているので、風向調整部材3の数を従来と比較して低減することができる。それに伴い、風向調整機構1の構造を簡略化することができる。
【0023】
また、たとえば図1に示すように、風向調整部材3をケーシング2内に収容することができるので、吹出口2aの前方側にフィン等を設置する必要がなくなり、デザイン的にもシンプルでかつ従来にない斬新なものとなる。
【0024】
図4に示すように、ケーシング2の内径は、気体の流れる方向であるケーシング2の軸方向(図4の左右方向)の中央部で最も大きくなり、吹出口2aの内径は、ケーシング2の軸方向の中央部の内径よりも小さくなっている。それにより、図4において矢印で示すように、風向調整部材3がケーシング2の中央位置に位置する場合に、上下の気体通路11を通過して吹出口2aから吹出される気体を、互いに近づく方向に導くことができる。つまり、ケーシング2は、吹出口2aにおいて絞られたような形状となっており、上下の気体通路11を通過した気体を吹出口2aから斜め前方に吹出し、吹出口2aの前方でこれらを合流させることができる。なお、図4の左側から見れば、気体通路11は環状となっているので、風向調整部材3の周囲を通過した気体が、吹出口2aの前方で合流することとなる。その結果、吹出口2aから吹出された気体が直接人に当たるのを回避することができ、吹出口2aからマイルドな風を室内等に供給することができる。
【0025】
また、図4に示すように、ケーシング2の内表面を、風向調整部材3の外表面が当接可能となるように、風向調整部材3の外表面に沿う形状としてもよい。たとえば、風向調整部材3の外表面が凸状である場合には、風向調整部材3と対向するケーシング2の内表面を凹状とすればよい。それにより、図4において点線で示すように、風向調整部材3の外表面と、ケーシング2の内表面との接触面積を大きくすることができ、一部の気体通路11を容易に遮断することができる。
【0026】
上記駆動部は、典型的には、回転運動を並進運動に変換して風向調整部材3に伝達し、該風向調整部材3をケーシング2内で所望の方向に移動させる。しかし、風向調整部材3をケーシング2内で所望の方向に移動させることができるものであれば、これ以外の駆動方法を採用可能である。
【0027】
駆動部は、図1〜図3の例では、風向調整部材3を貫通するようにケーシング2に回転可能に取付られた第1回転軸7aと、風向調整部材3を貫通するようにケーシング2に回転可能に取付られ第1回転軸7aと直交あるいは交差する方向に延在する第2回転軸7bと、第1回転軸7aを回転操作可能な第1操作部材4aと、第2回転軸7bを回転操作可能な第2操作部材4bとを有する。
【0028】
第1回転軸7aは、図2に示すように、複数のギア6a,6b,6cを介して第1操作部材4aと接続されており、第1操作部材4aを回転操作するこで第1回転軸7aを回転操作することができる。図2の例では、第1操作部材4aの内周部に内歯10を形成し、この内歯10と噛合うように外側にギア6aを設け、該ギア6aと噛合うように中間にギア6bを設け、このギア6bと噛合うように内側にギア6cを設け、このギア6cとともに第1回転軸7aを回転可能としている。このとき、第1回転軸7aと第1操作部材4aとの間に所定数のギアを設置することで、第1回転軸7aと第1操作部材4aとを同じ方向に回転操作することができる。第2回転軸7bおよび第2操作部材4bの形状ならびに第2回転軸7bと第2操作部材4b間の接続構造も、第1回転軸7aおよび第1操作部材4aの場合と同様であるので、説明は省略する。
【0029】
図1〜図3に示すように、第1操作部材4aと第2操作部材4bは、ケーシング2の外表面上に間隔をあけて配置される。より詳しくは、ケーシング2の外周方向に略90度ずれた位置に第1操作部材4aと第2操作部材4bは配置される。なお、図1〜図3の例では第1操作部材4aと第2操作部材4bの形状は円板状であるが、これ以外の任意の形状とすることができる。また、第1操作部材4aと第2操作部材4bは、係止部材5a,5bによりケーシング2に固定される。
【0030】
図3に示すように、第1回転軸7aは、長さ方向の中央部に第1スプライン部8aを有する。他方、風向調整部材3には、第1スプライン部8aと対向する位置に第1動力伝達壁(第1動力伝達部)9aを設ける。第1動力伝達壁9aは、典型的には風向調整部材3の内部に設けられるが、外殻部3aと内殻部3bのいずれに設けてもよい。また、第1動力伝達壁9aは、風向調整部材3に直接設置されてもよいが、何らかの部材を介して間接的に風向調整部材3に装着するようにしてもよい。さらに、第1動力伝達壁9aの数は単数でも複数でもよいが、複数としてもよい。複数とすることで、第1スプライン部8aを第1動力伝達壁9aで安定して支持することができる。
【0031】
上記の第1動力伝達壁9aの表面(第1スプライン部8aとの対向面)には、第1スプライン部8aと噛合う複数の歯部を設ける。この第1動力伝達壁9aの表面の複数の歯部と、第1スプライン部8aとを噛合させることにより、第1回転軸7aの回転運動を、第1スプライン部8aを介して第1動力伝達壁9aに伝達することができる。
【0032】
また、図3に示すように、第1動力伝達壁9aの表面の各歯部は、図3の上下方向(第1方向)に並ぶように設けられている。それにより、第1回転軸7aの回転運動を図3の上下方向の並進運動に変換することができる。その結果、第1操作部材4aによって第1回転軸7aを回転操作することにより、風向調整部材3を上下方向に並進移動させることができ、ケーシング2内で風向調整部材3を上下方向に移動させることができる。
【0033】
第2回転軸7bも、第1回転軸7aの場合と同様に、長さ方向の中央部に第2スプライン部8bを有する。また、風向調整部材3には、第2スプライン部8bと対向する位置に第2動力伝達壁(第2動力伝達部)9bを設ける。第2動力伝達壁9bも、典型的には風向調整部材3の内部に設けられるが、外殻部3aと内殻部3bのいずれに設けてもよい。また、第2動力伝達壁9bの場合も、風向調整部材3に直接設置されてもよいが、何らかの部材を介して間接的に風向調整部材3に装着するようにしてもよい。さらに、第2動力伝達壁9bの場合も、その数は単数でも複数でもよく、複数でもよい。しかし複数とすることで、第2スプライン部8bを第2動力伝達壁9bで安定して支持することができる。
【0034】
この第2動力伝達壁9bの表面(第2スプライン部8bとの対向面)にも、第2スプライン部8bと噛合う複数の歯部を設ける。それにより、第1動力伝達壁9aの場合と同様に、第2回転軸7bの回転運動を、第2スプライン部8bを介して第2動力伝達壁9bに伝達することができる。
【0035】
図3に示すように、第2動力伝達壁9aの表面の各歯部は、図3の横方向(第2方向)に並ぶように設けられている。それにより、第2回転軸7bの回転運動を図3の横方向の並進運動に変換することができる。その結果、第2操作部材4bによって第2回転軸7bを回転操作することにより、風向調整部材3を横方向に並進移動させることができ、ケーシング2内で風向調整部材3を横方向に移動させることができる。
【0036】
上記のように第1操作部材4aや第2操作部材4bを回転操作することによりケーシング2内で風向調整部材3を並進移動させることができるが、図4において点線で示すように、風向調整部材3がケーシング2の内表面に当接した場合に、さらにケーシング2側(図4の下側)に風向調整部材3を移動させることができると、風向調整機構1のいずれかの要素が損傷する危険性があると考えられる。そこで、本実施の形態では、ラチェット機構を採用する等して、風向調整部材3がケーシング2の内表面に当接した後は、さらにケーシング2側に風向調整部材3が移動しないように、第1操作部材4aや第2操作部材4bを空回りさせるようにする。
【0037】
図3の例では、風向調整部材3の外殻部3aと内殻部3bとの間に間隙を設けている。この間隙内に1組の板状のスライド部材(第2スライド部材)13を、間隔をあけて、風向調整部材3に対しスライド移動可能に設置する。この1組のスライド部材13に第2回転軸7bが挿通され、スライド部材13と第2回転軸7bとは一体化される。同様に、第1回転軸7aが挿通される1組の板状のスライド部材(第1スライド部材)も、風向調整部材3の外殻部3aと内殻部3bとの間の間隙に、スライド移動可能に設置する。なお、図3の例では、風向調整部材3の外殻部3aと内殻部3bとの間の環状の間隙が、上記スライド部材の案内部として機能することとなる。
【0038】
風向調整部材3の外殻部3aと内殻部3bには、それぞれ各スライド部材の上下に位置する部分に、開口部(切欠部)12a,12bを形成する。それにより、風向調整部材3を所望の距離だけ各回転軸に対し並進運動させることができる。また、風向調整部材3の移動方向における各開口部12a,12bの長さは、各開口部12a,12bの上側あるいは下側に配置される各スライド部材の上記移動方向における長さよりも短くする。それにより、風向調整部材3の移動後にスライド部材が各開口部12a,12bから抜け出すのを抑制することができる。
【0039】
次に、上記の構造を有する本実施の形態の風向調整機構1の動作について図5(a),(b)を用いて説明する。なお、図5(a),(b)では、第2操作部材4bを回転操作して風向調整部材3を移動させる場合を示しているが、第1操作部材4aを回転操作して風向調整部材3を移動させる場合も基本的に同様である。ただし、第1操作部材4aを回転操作した場合、第1操作部材4aの回転方向と、風向調整部材3の移動方向は同じ方向になる。
【0040】
図5(a)に示すように風向調整部材3がケーシング2内部の中央位置に位置する状態から、第2操作部材4bを図5(a)の左から右に向かう方向(第2回転軸7bに関して時計周りの方向)に回転操作する。それにより、第2操作部材4bと方向に第2回転軸7bも回転する。
【0041】
このとき、第2回転軸7bの第2スプライン部8bは第2動力伝達壁9bの歯部と噛合しているので、第2回転軸7bの回転運動が第2動力伝達壁9bに伝達されて並進運動に変換され、風向調整部材3は、図5(b)に示すように左側に並進移動することとなる。また、第2回転軸7bは、風向調整部材3の外殻部3aと内殻部3bとにそれぞれ設けた開口部12a,12b内を移動し、各スライド部材13は、風向調整部材3の外殻部3aの内表面と内殻部3bの外表面とに案内されて、外殻部3aと内殻部3bとの間の間隙内でスライド移動することとなる。
【0042】
図5(b)に示すように、風向調整部材3がケーシング2内を左側に移動することにより、風向調整部材3の周囲の気体通路11の断面形状を変化させることができる、それにより、ケーシング2の吹出口2aから吹出される気体の風向を調整することができる。なお、第1操作部材4aを回転操作した場合には、図5(a),(b)の上下方向に風向調整部材3を移動させることができる。
【0043】
上述の風向調整機構は、典型的には、空気調和機の吹出口に適用可能である。特に、車両に搭載された空気調和機の吹出口に有用である。しかし、これ以外の任意の装置の気体の吹出口に適用可能である。
【0044】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。たとえば、上述の各回転軸に設けたスプライン部の代わりにピニオン(小歯車)を使用することができ、また動力伝達壁の代わりに、ピニオンと組み合わされるラック(板状のギア)を使用することも考えられる。また、ケーシングの形状も上述のものに限らず、任意の形状とすることができる。
【0045】
また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の1つの実施の形態における風向調整機構の斜視図である。
【図2】図1に示す風向調整機構の側面図である。
【図3】図1に示す風向調整機構の部分断面斜視図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態における風向調整機構における風向調整部材の動作を説明するための模式的である。
【図5】(a),(b)は、図1に示す風向調整機構の動作を説明するための部分断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 風向調整機構、2 ケーシング、2a 吹出口、3 風向調整部材、3a 外殻部、3b 内殻部、4a 第1操作部材、4b 第2操作部材、5a,5b 係止部材、6a,6b,6c ギア、7a 第1回転軸、7b 第2回転軸、8a 第1スプライン部、8b 第2スプライン部、9a 第1動力伝達壁、9b 第2動力伝達壁、10 内歯、11 気体通路、12a,12b 開口部、13 スライド部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の吹出口を有するケーシング内に移動可能に収容され、前記ケーシングの内表面との間に気体通路を形成し、前記吹出口から吹き出される気体の風向を調整可能な風向調整部材と、
前記ケーシングに取付けられ、前記風向調整部材を駆動して前記ケーシング内で移動させることが可能な駆動部とを備え、
前記駆動部により前記ケーシング内で前記風向調整部材を移動させて前記気体通路の断面形状を変化させることで、前記吹出口から吹き出される気体の風向を調整するようにした、風向調整機構。
【請求項2】
前記風向調整部材は、該風向調整部材の内部に空間を規定する外殻部と、該外殻部の内側に配置され前記外殻部とともに移動可能である内殻部とを有し、
前記駆動部は、
前記風向調整部材を貫通するように前記ケーシングに回転可能に取付られた第1回転軸と、
前記風向調整部材を貫通するように前記ケーシングに回転可能に取付られ、前記第1回転軸と交差する方向に延在する第2回転軸と、
前記第1回転軸を回転操作可能な第1操作部材と、
前記第2回転軸を回転操作可能な第2操作部材と、
前記風向調整部材に設けられ、前記第1回転軸からの動力が伝達され、前記第1回転軸の回転運動を第1方向の並進運動に変換可能な第1動力伝達部と、
前記風向調整部材に設けられ、前記第2回転軸からの動力が伝達され、前記第2回転軸の回転運動を第2方向の並進運動に変換可能な第2動力伝達部とを有し、
前記第1操作部材で前記第1回転軸を回転操作することで前記風向調整部材を前記第1方向に移動させ、前記第2操作部材で前記第2回転軸を回転操作することで前記風向調整部材を前記第2方向に移動させるようにした、請求項1に記載の風向調整機構。
【請求項3】
前記外殻部と前記内殻部との間に間隙を設け、
前記間隙内にスライド移動可能に設置され、前記第1回転軸が挿通される第1スライド部材と、
前記間隙内にスライド移動可能に設置され、前記第2回転軸が挿通される第2スライド部材とをさらに備えた、請求項2に記載の風向調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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