説明

風呂湯張り装置

【課題】年間を通じて所望の水位に湯張りを行うことができる湯張り装置を提供する。
【解決手段】所定の第一の水位まで湯を供給したときの水圧を第一の水圧値として保持し、また所定の供給完了水位まで湯を供給したときの水圧を第二の水圧値としてそれぞれ所定数分保持し、移動平均水圧値を求めてそれぞれ第一の移動平均水圧値および第二の移動平均水圧値とする。そして浴槽に湯を供給したときに検出される第一の水圧値が第一の移動平均水圧値から所定範囲値内にあるとき、第一の水圧値から所定の給湯完了水位に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値から給湯完了水位に至るまでの供給湯量を求める一方、第一の移動平均水圧値から所定範囲値以上であるとき、第二の移動平均水圧値を湯の供給を完了する第二の水圧値として差分水圧値を求めて供給湯量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂湯張り装置に係り、特に周囲温度の影響による水位変動を軽減するに好適な風呂湯張り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、省エネルギーの観点からヒートポンプを利用した給湯装置の利用が拡大し、例えば家庭用の風呂湯張り装置等にも適用されている。この種の湯張り装置は、概略的には、図8に示すように浴槽1と、外部から導いた給水を加熱するヒートポンプ2、このヒートポンプ2によって加熱された湯を保持する貯湯タンク3、この貯湯タンク3に蓄えられた湯を浴槽1に導く給湯配管路4を備えて構成される。
【0003】
このように構成された風呂湯張り装置は、浴槽1に湯を張ったとき、給湯配管路4に設けた水圧センサ(水位センサ)5が受ける水圧が予め設定した水圧に到達したことをもって湯張り完了を判定している。ちなみに水位センサ5には、一般的にピエゾ素子を用いた圧力センサが用いられている。
また浴槽の所定水位に湯を張る際、所望の水位(湯張り完了水位)より低い予め定めた所定流量を湯張りした後、水位センサでそのときの水位を検出し、これを所定回数繰り返して平均化して平均基準水位値を用い、これを湯張り時の基準水位とした風呂装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平4−340052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した湯張り装置は、水圧センサ5にピエゾ素子が用いられているため周囲温度が変化すると、その温度特性によって検出出力が変動し、それ故、季節によって湯張り完了の水位が変動するという問題があった。この問題を解決するには、湯張りの都度、ユーザが湯張り装置の完了水位を設定し直さなければならず、使い勝手を悪くする要因ともなっていた。
【0005】
また前述した特許文献1に記載の風呂装置は、例えば浴槽に残湯が残っていた場合であっても水位センサでそのときの水位を検出して平均化した基準水位としているので、所望の水位(湯張り完了水位)が浴槽の残湯によって変化するという問題もある。
本発明は、このような従来の湯張り装置の問題を解決するべくなされたもので、その目的とするところは、年間を通じて所望の水位に湯張りを行うことができる湯張り装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく本発明の湯張り装置は、浴槽に湯を供給する配管路に設けられて、その配管路から前記浴槽に供給された湯量を計測するフローセンサと、前記浴槽に湯張りされた湯によって生じる前記浴槽の所定位置における水圧を計測する水圧センサと、前記浴槽における所定の第一の水位まで湯張りしたとき、前記浴槽に湯張りされた湯によって生じる水圧を前記水圧センサにより計測して第一の水圧値として保持し、また所定の供給完了水位まで湯張りしたときに生じる水圧を前記水圧センサにより計測して第二の水圧値としてそれぞれ所定の湯張り回数分または所定の湯張り日数分保持する記憶部と、この記憶部が保持する複数の前記第一の水圧値および前記第二の水圧値からそれぞれの移動平均水圧値を求めて、それぞれ第一の移動平均水圧値および第二の移動平均水圧値とし、前記浴槽に湯張りしたときに検出される前記第一の水圧値が前記第一の移動平均水圧値から所定範囲値内にあるとき、前記記憶部が保持した前記第一の水圧値から所定の湯張り完了水位に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値から湯張り完了水位に至るまでの前記浴槽に供給する湯の供給湯量を求める演算部と、この演算部が求めた前記供給湯量に等しい湯量が前記フローセンサにより検出されたとき、前記浴槽への湯の供給を停止する制御部とを備えることを特徴としている。
【0007】
好ましくは前記演算部は、前記浴槽に湯張りしたときに検出される前記第一の水圧値が前記第一の移動平均水圧値から所定範囲値を逸脱しているとき、前記第二の移動平均水圧値を前記湯の供給を完了する第二の水圧値とし、この第二の水圧値に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値に至るまでの前記浴槽に供給する湯の供給湯量を求めることが望ましい。
【0008】
また前記水位センサは、ピエゾ素子を用いたものとして構成される。
前述の風呂湯張り装置は、所定の第一の水位まで湯張りしたときに検出される第一の水圧値を第一の水圧値として所定回数分記憶部に保持し、この保持された複数の第一の水圧値の移動平均水圧値を求め、浴槽に湯張りしたときに検出される第一の水圧値が第一の移動平均水圧値から所定範囲値内にあるとき、湯張り完了水位までの差分水圧値から供給湯量を求めて、所望の完了水位まで湯張りする。
【0009】
また、第一の水圧値が第一の移動平均水圧値から所定範囲値を逸脱しているときには、第二の移動平均水圧値を湯の供給を完了する第二の水圧値とし、この第二の水圧値に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値に至るまでの浴槽に湯を供給する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の風呂湯張り装置によれば、記憶部に保持した所定の湯張り回数分または所定の湯張り日数分、浴槽における所定の第一の水位まで湯張りしたときの第一の水圧値および所定の湯張り完了水位まで湯張りしたときの第二の水圧値をそれぞれ保持し、この記憶部が保持する複数の第一の水圧値および第二の水圧値から演算部がそれぞれの移動平均水圧値を求めて、それぞれ第一の移動平均水圧値および第二の移動平均水圧値としている。
【0011】
そして浴槽に湯張りしたときに検出される第一の水圧値が演算部により求められた第一の移動平均水圧値から所定範囲値内にあるときは、記憶部が保持した第一の水圧値から所定の給湯完了水位に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値から湯張り完了水位に至るまでの前記浴槽に供給する湯の供給湯量を求めている。
一方、演算部は、第一の移動平均水圧値から所定範囲値以上であるとき、第二の移動平均水圧値を、湯張りを完了する第二の水圧値とし、この第二の水圧値に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値に至るまでの浴槽に供給する湯の供給湯量を求めている。
【0012】
そして制御部は、この演算部が求めた供給湯量に等しい湯量がフローセンサにより検出されたとき、湯張りを停止しているので、水圧センサが温度依存特性を有していたとしても、日々の湯張り完了水位を維持することができる等の実用上多大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1〜図7は発明を実施する形態の一例であって、図中、図8と同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的な構成は図8に示す従来のものと同様である。
この実施形態が適用される湯張り装置は、貯湯タンク3として低温貯湯タンク3aおよび高温貯湯タンク3bの二つの貯湯タンクを備え、市水等から供給される給水をヒートポンプ2によって加熱して湯を作り、この湯を貯湯タンク3a,3bに蓄え、浴槽等に給湯する構成をとっている。そこでまず図1に示す配管回路図を用いながら本発明の風呂湯張り装置について説明する。
【0014】
市水等から供給される給水は、この給水に含まれる異物等の不純物を取り除くストレーナ6を介して、その下方に接続された配管路4aによって導かれて低温貯湯タンク3aに蓄えられる。また、ストレーナ6を出た給水の一部は、別の配管路4bを通り、給水の逆流を防止する逆止弁7aを介して高温貯湯タンク3bから供給される湯と混合して給湯出力する給湯混合弁8に導かれる。この給湯混合弁8は、給湯に適した温度になるよう給水と湯とを混合して給湯水を出力する役割を担っている。尚、ストレーナ6と逆止弁7aとを接続する配管路4bには、給湯水の温度を検出する給水サーミスタ9aが設けられ、また給湯混合弁8から供給される給湯水を導く配管路4cには、この給湯水の温度を検出する給湯サーミスタ9bおよび給湯量を計測するフローセンサ10が設けられている。
【0015】
低温貯湯タンク3aの下方には、この低温貯湯タンクに蓄えられた水を加熱するヒートポンプ2に導く配管路4dが接続される。この配管路4dには、低温貯湯タンクに蓄えられた水をヒートポンプ2に送り出すポンプ(HPポンプ11)が介装されている。
ヒートポンプ2によって加熱された水は、湯となって再びヒートポンプ2に戻すヒートポンプバイパス弁12に接続された配管路4e、および、このヒートポンプバイパス弁12からその上方に接続された配管路4fによって高温貯湯タンク3bに導かれる。尚、HPポンプ11とヒートポンプ2とを接続する配管路4gおよびヒートポンプ2とヒートポンプバイパス弁12とを接続する配管路4eには、それぞれエア抜きバルブ13a,13bが設けられて管路内の溜まったエアを抜くことができるようになっている。また、ヒートポンプ2とヒートポンプバイパス弁12を接続する配管路4eには、ヒートポンプ2によって加熱された湯の温度を検出するヒートポンプサーミスタ9cが設けられている。
【0016】
低温貯湯タンク3aの上方には、高温貯湯タンク3bの下方に接続される配管路4hが設けられている。そして高温貯湯タンク3bの上方には、この高温貯湯タンク3bに蓄えられた湯と低温貯湯タンク3aの上方に設けられた配管路4iによって導かれる湯を混合する中間混合弁14に湯を導く配管路4jが設けられている。
中間混合弁14によって混合された混合湯は、配管路4kに設けられた逆止弁7bを介して前述した給湯混合弁8に導かれる。更にこの混合湯は、配管路4kから分岐して別の逆止弁7cを介してストレーナ6から出た給水と混合して出力する風呂混合弁15に導かれる。尚、中間混合弁14から出た混合湯の温度は、配管路4kに設けられた混合サーミスタ9dによって検出される。また風呂混合弁15から出た湯は、配管路4qに設けられた風呂サーミスタ9eによって検出される。
【0017】
また高温貯湯タンク3bの上方には、更に別の配管路4mが設けられて、図示しない浴槽に蓄えられた湯を追い炊きする熱交換器16の一次側を通って熱交換した後、低温貯湯タンク3aに導かれるようになっている。尚、高温貯湯タンク3bと熱交換器16との間の配管路4mには、逆流を防止する逆止弁7d、熱交換器16の出口から低温貯湯タンク3aとの間には、追い炊き一次ポンプ17がそれぞれ設けられている。
【0018】
この熱交換器16の二次側は、図示しない浴槽と循環して風呂水を追い炊きする追い炊き回路が接続されている。この追い炊き回路は、浴槽に接続された配管路4nから浴槽内の湯を導き、熱交換器16の二次側を介して再び浴槽に戻す配管路4pによって構成され、配管路4nに介挿された風呂循環ポンプ18によって湯が循環して追い炊きができるようになっている。尚、浴槽と風呂循環ポンプ18とを接続する配管路4nには、浴槽に張られた湯の水圧を検出して浴槽の水位を求める水位センサ5、追い炊き回路内を湯が循環していることを検出するフロースイッチ19および循環する湯の温度を検出する循環サーミスタ9fが設けられている。またそれぞれの配管路4n,4pには、エア抜きバルブ13c,13dがそれぞれ設けられて、これらの配管路4n,4p内に存在する不要なエアが抜けるようになっている。更に追い炊き回路には、湯張りをするべく風呂混合弁15から風呂電磁弁20の開閉制御によって湯を導く配管路4qが風呂循環ポンプ18と熱交換器16との間に接続されている。
【0019】
このように各部が接続された本発明の風呂湯張り装置は、図2に示す給湯制御部30によって制御される。この給湯制御部30は、前述した水位センサ(水圧センサ)5、フローセンサ10およびフロースイッチ19が検出した情報を受け取るセンサ情報入力部31、このセンサ情報入力部31から入力された情報に基づいて後述する所定の演算を行う演算部32、この演算部32が演算した結果の値、水位センサ5が検出した水圧値(水位値)情報を給湯毎に検出して所定の湯張り回数分または所定の湯張り日数分に亘る複数の水圧値(水位値)情報および所定の初期値等の情報を保持する記憶部33、給湯制御部30の作動状況を表示する表示部36、風呂電磁弁20、中間混合弁14、風呂混合弁15および風呂循環ポンプ18を駆動制御する出力部37、浴槽への湯張りの水位レベルを設定入力する操作入力部39およびこの給湯制御部30全体の制御を司る制御部38を備えて構成される。
【0020】
尚、演算部32は、記憶部33に保持された複数の水圧値からその移動平均水圧値を求める移動平均水位演算部32aと、この移動平均水位演算部32aが求めた移動平均水圧値から所望の湯張り完了水位までの水位差を求め、この水位差に単位水位当たりの水圧を乗じて得られた差分水位値(差分水圧値)を求める差圧演算部32bを有している。
概略的には上述したように構成された本発明の湯張り装置は、まず所定の初期値を記憶する記憶モードで運転され、その後、通常モードに切り換えて稼働される。そこでまず本発明の湯張り装置に係る記憶モードについて図3,4を用いて説明する。
【0021】
給湯制御部30は、例えば操作入力部39から記憶モードで作動させる旨の操作入力があると制御部38が記憶モードで運転を開始する。まず制御部38は、浴槽1に所定量としてa[L](例えば20[L])の湯張りを行う(ステップS1)。そして制御部38は、風呂循環ポンプ18を稼働させてフロースイッチ19がオンまたはオフであるかを判定する(ステップS2)。制御部38は、フロースイッチ19がオフであるときは、再びステップS1に戻って所定量a[L]の湯張りを繰り返す。これは、浴槽1の所定の位置まで湯張りができたかどうかを判定するものであって、具体的には制御部38が浴槽1に取り付けられた例えば風呂アダプタ1aの位置まで湯張りができたかどうかを判定するものである。
【0022】
一方、ステップS2で制御部38は、フロースイッチ19がオンであることが検出されると、更に浴槽1に所定量としてb[L]を湯張りする(ステップS3)。この湯張りは、フロースイッチ19を完全に水没させるため実行されるものである。
次いで制御部38は、b[L]を湯張りした後、水位センサ5が検出した水圧(a)を計測し、記憶部33にこの水圧値(a)を保持させる(ステップS4)。そうして制御部38は、更に所定量c[L]を浴槽1に湯張りした後(ステップS5)、水位センサ5が計測した水圧(a2)を記憶部33に保持させる(ステップS6)。
【0023】
ステップS5で浴槽1内に給湯した前後の圧力差は、浴槽1に湯張りしたことによって生じた浴槽内の水位差に等しい。そこで差圧演算部32bは、この水圧差[a−a]を求めると共に、ステップS5においてフローセンサ10が検出した供給湯量を用いて単位水位当たりの水圧差、即ち単位水位当たりの水位差を求めて記憶部33に保持させる。そうして演算部32は、この単位水位当たりの水圧差から湯張り完了の水位に至ったときの水位、即ち水圧値(a)を求める(ステップS7)。
【0024】
続いて制御部38は、浴槽1内に湯を供給し(ステップS8)、水位センサ5がステップS7で求めた水圧値(a)に至るまで湯張りを継続する(ステップS9)。
このようにして制御部38は、単位水位当たりの水圧値を記憶部33に保持させると通常モードが実行できる。そこでこの通常モードについて、図5,6を参照しながら説明する。
【0025】
まず制御部38は、浴槽1内に残湯があるかどうかを判定するために所定量d[L]の湯を供給し(ステップS11)、フロースイッチ19の状態を調べる(ステップS12)。そして制御部38は、ステップS12でフロースイッチ19がオフであると判定したときは、更に所定量e[L]の湯を浴槽1内に湯張りする(一次給湯;ステップS13)。このステップS13で浴槽1内に湯張りする供給湯量は、風呂アダプタ1aの上方における所定の水位(例えば、x[cm])になるまで湯張りされる(この水位を第一の水位とする)。このとき浴槽1内に供給する湯の供給量は、記憶部33に保持された単位水位当たりの水圧値から求まる。
【0026】
そうして制御部38は、ステップS13で一次給湯が完了すると水位センサ5が検出した水位値、即ち水圧値(a)を検出して保持する(ステップS14)。制御部38は、このとき検出した水圧値(a)を第一の水圧値とする。次いで制御部38は、検出した水圧値(a)と後述する移動平均水位演算部32aが求めた前回までの湯張りにおける第一の移動平均水圧値a3aveとを比較する(ステップS15)。
【0027】
移動平均水位演算部32aが求める移動平均水圧値a3aveは、ステップS14で検出した第一の水圧値(a)を所定の湯張り回数分保持している記憶部33のデータを用いて演算する(ステップS16)。具体的に第一の水圧値は、図7に示すように給湯時において水位センサ5が検出した水圧値(水位値)を所定の湯張り回数分、記憶部33に保持させる。
【0028】
この記憶部33が保持する複数の水圧値(水位値)情報は、浴槽1内に湯張りをするたびに記憶部33にそれぞれ保持するようにしてもよいし、1日に数回湯張りした場合、1日分の水圧値を1回分として保持し、複数の日数分の水圧値情報を保持するようにしてもよい。ここに湯張り回数は、例えば10回とか30回分とし、あるいは複数の日数分としては、例えば10日とか30日とかある程度の日数とし、記憶部33に保持された古い水圧値情報は捨て去り常に新しい水圧値情報を記憶部33に保持するようにする。つまり記憶部33は、リングバッファの如く常に新しい水圧値情報を保持するよう構成する。ちなみに検出回数または検出日数は、温度特性を有する水位センサ5が季節によって生じる周囲温度の変化による特性変化の影響が平均化されてその影響が受けにくくなる検出回数または検出日数とすることが望ましい。
【0029】
具体的に例えば複数の日数分(ここでは、n日分とする)を記憶部33に保持させるようにした場合、移動平均水位演算部32aは、記憶部33に保持されたn日分の水圧情報a31,a32,・・・a3nの総和を求め、これをnで除して、1日当たりに平均化した移動平均水圧値a3aveを求める。つまり演算部32は、次式の演算を実行する。
3ave=(a31+a32+・・・+a3n)/n
さてステップS15で制御部38は、水位センサ5が検出した水圧値(a)と、移動平均水位演算部32aが求めた第一の移動平均水圧値a3aveとを比較した結果、所定の範囲内にあるとき、制御部38は、更に後述する第二の水圧値(a)の移動平均水圧値a4aveを湯の供給を完了する第二の水圧値とし(ステップS17)、差圧演算部32bによってこの第二の水圧値に至るまでの差分水圧値(a−a)を求め、この差分水圧値に至るまで浴槽に供給する湯の供給湯量を求める(ステップS18)。
【0030】
尚、制御部38は、水位センサ5によって検出された水圧値(a)が移動平均水位演算部32aによって求められた第一の移動平均水圧値a3aveから所定の範囲を逸脱していると判定したとき、この逸脱した水圧値(a)を記憶部33に保持せず、かつ、第一の移動平均水圧値a3aveにも反映せず(ステップS19)、ステップS17以降の処理を実行する。制御部38は、ステップS19にて検出された水圧値(a)の逸脱値を除くことにより常に第一の移動平均水圧値と第二移動平均水圧値のいずれも湯張りの目標値として使用することができる。また本発明の風呂湯張り装置は、水圧値(a)の逸脱値を除いているので第二の移動平均水圧値も日常の湯張りの目標値として使用することが可能となる。
【0031】
次いで制御部38は、演算部32が求めた差分水圧値(a−a)に相当する供給湯量を受けて、出力部37を介して風呂電磁弁20をオンすると共に、中間混合弁14および風呂混合弁15を適切に開き、フローセンサ10が計測した湯量がステップS15で求めた供給湯量になるまで浴槽1へ湯を供給する(二次給湯;ステップS20)。そして制御部38は、ステップS20で二次給湯が完了すると水圧センサ5により水圧値(a’)を検出する(ステップS21)。制御部38は、このとき検出した水圧値(a’)を第二の水圧値とする。
【0032】
尚、制御部38は、ステップS21で水圧センサ5によって検出された第二の水圧値(a’)を前述した第一の水圧値と同様に所定の湯張り回数分、記憶部33に保持させる。そして制御部38は、前述した第一の移動平均水圧値a3aveを求めた方法と同一の演算を行い第二の移動平均水圧値a4aveを求めて記憶部33に保持させる(ステップS22)。
【0033】
具体的に第二の移動平均水圧値a4aveを求めるため差圧演算部32bは、移動平均水圧値a3aveまたは今回検出したaを基準として操作入力部39からユーザによって入力された供給完了水位における水圧値(a)を求める。差圧演算部32bが実行する演算は、記憶モード時に得られた記憶部33が保持する単位高さ当たりの水圧値を用いる。即ち差圧演算部32bは、単位高さ当たりの水圧値がΔP〔kPa/cm〕であり、第二の水位と第一の水位との差がL〔cm〕であったとすれば、第二の水圧値(a)は、
=a3ave+ΔP×L〔kPa〕
または、
=(今回検出したa)+ΔP×L〔kPa〕
のいずれかの式で求める。
【0034】
次いで制御部38は、ステップS21で検出した水圧値(a’)が所定の範囲内(a±α)にあるかどうかを調べ(ステップS23)、所定の範囲内にあるときは、そのまま湯張りを終了する一方、所定の範囲を逸脱していると判定したときは、異常処理を実行する(ステップS24)。
尚、ステップS12でフロースイッチ19がオンであると判定したとき制御部38は、ステップS14以降の処理を実行する。
【0035】
かくして本発明の風呂湯張り装置によれば、記憶部33に保持した所定の湯張り回数分または所定の湯張り日数分、浴槽における所定の第一の水位まで湯張りしたときの第一の水圧値(a)および所定の湯張り完了水位まで湯を供給したときの第二の水圧値(a)をそれぞれ所定の湯張り回数分保持し、この記憶部33が保持する複数の第一の水圧値および第二の水圧値から演算部32の移動平均水位演算部32aがそれぞれの水圧値の移動平均値を求めて、それぞれ第一の移動平均水圧値(a3ave)および第二の移動平均水圧値(a4ave)としている。
【0036】
そして浴槽1に所定量の湯を供給したときに検出される第一の水圧値(a)が演算部により求められた第一の移動平均水圧値(a3ave)から所定範囲値内(a3ave±α)にあるときは、検出された第一の水圧値(a)を用いて所定の湯張り完了水位に至るまでの差分水圧値(a−a)を求め、この差分水圧値から湯張り完了水位に至るまでの浴槽1に供給する湯の供給湯量を求めている。また第一の水圧値(a)が演算部により求められた第一の移動平均水圧値(a3ave)から所定範囲値(a3ave±α)を逸脱しているときは、この逸脱した第一の水圧値(a)を記憶部33に保持せず、かつ、第一の移動平均水圧値(a3ave)にも反映しないので、水位センサ5に周囲温度変化の影響を受けやすい検出素子(例えば、ピエゾ素子タイプの水位センサ)が用いられていたとしても移動平均水圧値を基準として湯張りしているので所望の水位に湯張りすることができる。
【0037】
更に本発明の風呂湯張り装置は、逸脱した第一の水圧値(a)を除くことにより常に第一の移動平均水圧値(a3ave)と第二移動平均水圧値(a4ave)のいずれも湯張りの目標値として使用することができ、また水圧値(a)の逸脱値を除いているので第二の水圧値の移動平均水圧値も日常の湯張りの目標値として使用することが可能となる。
【0038】
尚、浴槽1内に残り湯があった場合、前述した第一の水位が残り湯のない場合に比べて高い水位となる。この場合、制御部38は、第二の移動平均水圧値(a4ave)を、湯張りを完了する第二の水圧値とし、この第二の水圧値に至るまでの差分水圧値(a4ave−a)を求め、この差分水圧値に至るまでの浴槽に供給する湯の供給湯量とし湯張りを実行する。つまり本発明の風呂湯張り装置は、前日または前回の湯張りの際に求めた移動平均水圧値(a4ave)を用いているので、例え浴槽1内に残り湯がある状態で給湯したとしても所望の満水位に湯を張ることが自動的にできる。
【0039】
尚、演算部32は、記憶部33に保持されたn日分の水圧値の中で、平均水圧値から異常に離れた水圧値が含まれているとき、これを除いた水圧値を用いて移動平均化することが望ましい。また前述した実施形態は、水位センサ5が検出したn日分の水圧値を平均して移動平均水圧値を求めていたが、n回分の湯張りにおいて水位センサ5が検出した水圧値を用いて移動平均水圧値を求めても勿論かまわない。
【0040】
尚、本発明の風呂湯張り装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る風呂湯張り装置の機能部品との配管路接続を示す要部配管回路図。
【図2】図1に示す風呂湯張り装置に適用される給湯制御部の構成を示すブロック図。
【図3】図2に示す給湯制御部における記憶モードの手順を示すフローチャート。
【図4】図3に示す記憶モード時に浴槽に供給される湯の水位関係を示す図。
【図5】図2に示す給湯制御部における通常モードの手順を示すフローチャート。
【図6】図5に示す通常モード時に浴槽に供給される湯の水位関係を示す図。
【図7】図2に示す記憶部に保持されるデータを概略的に示した図。
【図8】従来の風呂湯張り装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0042】
5 水位センサ
10 フローセンサ
30 給湯制御部
31 センサ情報入力部
32 演算部
33 記憶部
36 表示部
37 出力部
38 制御部
39 操作入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に湯を供給する配管路に設けられて、その配管路から前記浴槽に供給された湯量を計測するフローセンサと、
前記浴槽に湯張りされた湯によって生じる前記浴槽の所定位置における水圧を計測する水圧センサと、
前記浴槽における所定の第一の水位まで湯張りしたとき、前記浴槽に湯張りされた湯によって生じる水圧を前記水圧センサにより計測して第一の水圧値として保持し、また所定の供給完了水位まで湯張りしたときに生じる水圧を前記水圧センサにより計測して第二の水圧値としてそれぞれ所定の湯張り回数分または所定の湯張り日数分保持する記憶部と、
この記憶部が保持する複数の前記第一の水圧値および前記第二の水圧値からそれぞれの移動平均水圧値を求めて、それぞれ第一の移動平均水圧値および第二の移動平均水圧値とし、前記浴槽に湯張りしたときに検出される前記第一の水圧値が前記第一の移動平均水圧値から所定範囲値内にあるとき、前記記憶部が保持した前記第一の水圧値から所定の湯張り完了水位に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値から湯張り完了水位に至るまでの前記浴槽に供給する湯の供給湯量を求める演算部と、
この演算部が求めた前記供給湯量に等しい湯量が前記フローセンサにより検出されたとき、前記浴槽への湯の供給を停止する制御部と
を備えることを特徴とする風呂湯張り装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記浴槽に湯張りしたときに検出される前記第一の水圧値が前記第一の移動平均水圧値から所定範囲値を逸脱しているとき、前記第二の移動平均水圧値を前記湯の供給を完了する第二の水圧値とし、この第二の水圧値に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値に至るまでの前記浴槽に供給する湯の供給湯量を求めることを特徴とする請求項1に記載の風呂湯張り装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記第一の水圧値が前記第一の移動平均水圧値から所定範囲値を逸脱しているとき、この逸脱した前記第一の水圧値を前記記憶部に保持せず、かつ、前記第一の移動平均水圧値にも反映しないことを特徴とする請求項2に記載の風呂湯張り装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第一の水圧値が前記第一の移動平均水圧値から所定範囲値内にあるときは、前記第二の移動平均水圧値を湯の供給を完了する第二の水圧値とし、この第二の水圧値に至るまでの差分水圧値を求め、この差分水圧値に至るまでの前記浴槽に供給する湯の供給湯量を求めることを特徴とする請求項2に記載の風呂湯張り装置。
【請求項5】
前記水位センサは、ピエゾ素子を用いたものである請求項1から4のいずれかに記載の風呂湯張り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−164195(P2008−164195A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351974(P2006−351974)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】