説明

飛しょう体用レドーム

【課題】 従来からアンテナを空力荷重や空力加熱から保護するための飛しょう体用レドームに使用されてきたセラミクスは、耐熱温度800℃以上の耐熱性能を有しているが、広帯域の電波に対して優れた電波透過性を得ることは困難であった。一方、飛しょう体用レドームにFRPの多層構造を用いた場合、広帯域の電波に対して優れた電波透過性を得ることができるが耐熱性に問題があった。
【解決手段】 FRP(Fiber Reinforced Plastics)サンドイッチ材の外気側表面にセラミックファイバー成形層を配置する。これにより、耐熱性および広帯域電波透過特性を有する飛しょう体用レドームを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は飛しょう体のレーダ用アンテナを保護するレドームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体の先端部には目標を探知するためのレーダ用アンテナが備えられているが、飛しょう体の先端部は空力荷重や空力加熱を受けやすい部位でもあるため、アンテナを空力荷重や空力加熱から保護するためのレドームを必要とする。レドームはレーダ用アンテナが送受信する電波を透過させる必要があるが、透過する電波の帯域を広帯域化する方法としてレドームを誘電体材料の多層構造とする方法がある。具体的にはアルミナやコージェライト、ヒューズドシリカ焼結体などのセラミクスやFRP(繊維強化プラスチック、Fiber Reinforced Plastics)材などが用いられている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−21713号公報
【特許文献2】特開平7−1673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナを空力荷重や空力加熱から保護するためのレドームに従来から使用されてきたセラミクスは耐熱温度800℃以上の耐熱性能を有しているが、脆性材料であることから厚さの低減には加工上の限界があり、広帯域の電波に対して優れた電波透過性を得ることは困難であった。
【0005】
また、レドームを透過する電波の帯域を広帯域化するための多層構造は、透過損失を低減するためにFRP材製のレドームを薄肉化する一方、空力荷重に対応する強度を確保するため、薄肉化した2層のレドームの間隙をハニカム材やフォーム材などのコア材を埋めて結合したものである。レドームの広帯域化のためにFRPの多層構造を用いた場合、FRPのプラスチックが空力加熱による温度上昇により熱分解するなどしてレーダ用アンテナの保護の役割を喪失してしまい、所望の性能が得られないという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、耐熱性と広帯域電波透過特性を両立させた飛しょう体用レドームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る飛しょう体用レドームは、耐熱ポリイミドFRPまたは耐熱ポリイミドFRPを表皮とするサンドイッチ材の外気側表面にセラミックファイバー成形層を接着・配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、セラミックファイバー成形層を配置したことで、その耐熱性および断熱特性により、従来のFRP材製レドームでは実現不可能であった、500〜1000℃程度の耐熱性が得られる。一方、セラミックファイバー成形層は例えば誘電率がアルミナやコージェライトなどの従来のセラミクスに比べ誘電率が小さいため、広帯域な電波透過特性を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1による飛しょう体用レドームを示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態2による飛しょう体用レドームを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る飛しょう体用レドームを示す断面図である。
実施の形態1に係る飛しょう体用レドームは、耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材5と、セラミックファイバー成形層6とから構成される。
耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材5は、耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2、耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材3および耐熱ポリイミド発泡コア材4により構成される。耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2および耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材3の構成繊維としては誘電体繊維を用いるが、クォーツ繊維が好ましい。耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材は、例えばメス型状金型およびオス型状金型を用いてそれぞれ耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2および耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材3を成形した後、該表皮材と耐熱ポリイミド発泡コア材4とを耐熱ポリイミドワニスなどで接着することにより作製される。
【0011】
耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2の外気側表面にはセラミックファイバー成形層6が接着されている。セラミックファイバー成形層6は、例えばセラミックファイバーを解繊、分散させたスラリーの中に、レドーム形状をしたネット状金型を投入し、真空吸引により作製することができる。セラミックファイバーはアルミナシリケート繊維が好ましい。セラミックファイバー成形層6の表面硬度はシリカゾルを表面に塗布し、乾燥させることにより調整可能で、本発明に使用するセラミックファイバー成形層6の表面硬度は、形状保持のため、JIS S 6050準拠硬度計で70〜90程度が望ましい。この時、該成形層の空隙率は40〜60%、嵩密度は0.6〜0.7g/cm程度となり、耐熱温度1200℃、熱伝導率は800℃で0.18〜0.25の特性を有する。耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材5とセラミックファイバー成形層6の接着は、耐熱ポリイミドワニスを接着剤として行うことが好ましいが、耐熱ポリイミドFRPプリプレグを接着剤として用いてもよい。セラミックファイバー成形層6の厚さは耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材5との接着後に切削または研削加工によって調整することができる。
【0012】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施形態2に係る飛しょう体用レドームを示す断面図である。
実施の形態2に係る飛しょう体用レドームは、耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材8と、セラミックファイバー成形層6とから構成される。
耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材8は、耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2、耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材3および耐熱ポリイミドFRPコア材7により構成される。耐熱ポリイミドFRPコアはハニカムコアまたはフレックスハニカムコアが好ましい。耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2および耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材3の構成繊維としては誘電体繊維を用いるが、クォーツ繊維が好ましい。耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材8は例えばメス型状金型およびオス型状金型を用いてそれぞれ耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2および耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材3を成形した後、該表皮材と耐熱ポリイミドFRPコア材7とを耐熱ポリイミドワニスなどで接着することにより作製される。
【0013】
耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材2の外気側表面にはセラミックファイバー成形層6が接着されている。セラミックファイバー成形層6は、例えばセラミックファイバーを解繊、分散させたスラリーの中に、レドーム形状をしたネット状金型を投入し、真空吸引により作製することができる。セラミックファイバーはアルミナシリケート繊維が好ましい。セラミックファイバー成形層6の表面硬度はシリカゾルを表面に塗布し、乾燥させることにより調整可能で、本発明に使用するセラミックファイバー成形層6の表面硬度は、形状保持のため、JIS S 6050準拠硬度計で70〜90程度が望ましい。この時、該成形層の空隙率は40〜60%、嵩密度は0.6〜0.7g/cm程度となり、耐熱温度1200℃、熱伝導率は800℃で0.18〜0.25の特性を有する。耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材8とセラミックファイバー成形層6の接着は、耐熱ポリイミドワニスを接着剤として行うことが好ましいが、耐熱ポリイミドFRPプリプレグを接着剤として用いてもよい。セラミックファイバー成形層6の厚さは耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材8との接着後に切削または研削加工によって調整する。耐熱ポリイミドFRPコア材7を用いた耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材8は耐熱ポリイミド発泡コア材4を用いた耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材5よりも曲面形状の成形性が劣るが、耐熱ポリイミドFRPコア材7の誘電率は耐熱ポリイミド発泡コア材4よりも小さいため、電波損失を小さくすることが可能である。
【符号の説明】
【0014】
1 飛しょう体用レドーム、2 耐熱ポリイミドFRP外気側表皮材、3 耐熱ポリイミドFRPレーダ側表皮材、4 耐熱ポリイミド発泡コア材、5 耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材、6 セラミックファイバー成形層、7 耐熱ポリイミドFRPコア材、8 耐熱ポリイミドFRPサンドイッチ材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体の先端部に設けられる飛しょう体用レドームであって、
コア材の両面をFRP(Fiber Reinforced Plastics)の表皮材で挟んだ構成のFRPサンドイッチ材と、
前記FRPサンドイッチ材の外気側にあたる前記表皮材の表面に設けられたセラミックファイバー成形層と、
からなることを特徴とする飛しょう体用レドーム。
【請求項2】
前記セラミックファイバー成形層はアルミナシリケート繊維からなり、JIS−S−6050に規定される硬度計で計測した表面硬度が70〜90であることを特徴とする請求項1記載の飛しょう体用レドーム。
【請求項3】
前記セラミックファイバー成形層は、空隙率が40〜60%、嵩密度が0.6〜0.7g/cm程度であることを特徴とする請求項1、2いずれか記載の飛しょう体用レドーム。
【請求項4】
前記セラミックファイバー成形層は、前記表皮材の表面に、耐熱耐熱ポリイミドワニスを接着剤として接着されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の飛しょう体用レドーム。
【請求項5】
前記FRPは耐熱ポリイミドFRPであり、前記コア材は耐熱ポリイミド発泡材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の飛しょう体用レドーム。
【請求項6】
前記FRPは耐熱ポリイミドFRPであり、前記コア材は耐熱ポリイミドFRPであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の飛しょう体用レドーム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−211521(P2011−211521A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77722(P2010−77722)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】