飛翔害虫捕殺具
【課題】飛翔害虫をより効率よく捕殺するための捕殺具を提供すること。
【解決手段】平板状の基材本体と、
前記基材本体上に設けられ、粘着剤が塗布される粘着剤塗布部、
とを有する飛翔害虫捕殺具であって、
前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2であることを特徴とする、飛翔害虫捕殺具。
【解決手段】平板状の基材本体と、
前記基材本体上に設けられ、粘着剤が塗布される粘着剤塗布部、
とを有する飛翔害虫捕殺具であって、
前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2であることを特徴とする、飛翔害虫捕殺具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は飛翔害虫を誘引して効果的に捕殺することができる捕殺具に関し、特に、表面に粘着剤が塗着された捕殺具であって、特に、コナジラミ類を多数、効率的に捕殺することができる捕殺具に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般的に農林園芸において、病害虫の防除にあたっては、化学農薬を使用する場合が多い。しかしながら、化学農薬を使用する場合は病害虫ばかりでなく人畜等の他の生物にも害を与える場合がある。近年、これらの化学薬剤の人畜に及ぼす影響あるいは環境汚染等が問題視されてきている。また、作業者自身の健康に対して悪影響を与える可能性があるといった欠点がある。そこで、環境保全、食への安全性の高まり、有機栽培の生産需要の高まりなどの理由で、化学農薬の使用を減らし、生物的防除、耕種的防除や、物理的防除による総合防除管理が実施されるようになってきている。
【０００３】
そのうち物理的防除法においては、光による色の波長を利用する粘着トラップ板が多用されるようになってきている。なかでもコナジラミ類は難防除害虫で、化学農薬による効果が低く薬剤耐性がつきやすいことから多用できないことから、この害虫防除を目的に黄色誘引粘着捕殺具が使用されている。
コナジラミ類による直接的な被害としては葉裏に寄生して汁を吸われるため、葉緑素が抜け白いカスリ状になる。生育が悪くなり、発生量が多くて被害が進行すると、草花や野菜では枯死する。また、シルバーリーフコナジラミではトマトなどの果 実の色がまだらになるなど着色異常果が発生したりする。間接的な被害としては、排泄物の上にすす病が発生して葉や果 実が黒くなる。ウイルスを媒介するタイプも出現し、それらによるトマト黄化葉巻病が大問題となっている。
しかし、光による色の波長を利用する粘着トラップ板の基材は、紙類やプラスチック板、あるいは、プラスチックフィルムで、それらの設置方法は、その基材に穴を開け紐や針金を通したり、洗濯鋏により現場に張りめぐられた紐やワイヤー等に吊るして使用されてきた。こうした作業は、取り付けばかりでなく、使用後の取り外しにおいても粘着剤で手を汚す、作業着に付着させてしまうなど作業上煩わしいものであった。
そこで、こうした取り付け時および取り外し時に簡便でかつ、作業上の煩わしさを回避する手段が求められていた。
【０００４】
特許文献１では、害虫捕殺粘着シートと握持固定台紙とによりなる捕虫材が開示されているが、かかる捕虫具では粘着剤の無い固定台紙を持って作業する以上、手や作業着に粘着剤が付着する問題はない。
しかし、現場で紐やワイヤー等に取り付ける部分は前記固定台紙の部分であり、そのためには当該台紙を紐等に通したり、洗濯鋏等での取り付けを余儀なくされていた。したがって、依然として作業効率は向上しうるものではなかった。また、かかる捕虫具は粘着シートのみを構成とするものではなく、台紙の入手とシートへの固定を必要とするため、その分のコスト、手間を要するものであった。
また、製造工程上基材への粘着は、基材全面に塗布することが一般的であり、持ちやすさを改善するために粘着部分の無い取りしろ等を設けることは、製造効率上好ましいものではない。
【０００５】
そこで、発明者らは特願2008-037710号において基材本体の基材表面の内部に一定の形状の切れ目を入れることで農業等の現場に張り巡らされた紐やワイヤー等への脱着を容易にすることを発明した。
しかし、短板を剥がして、1枚ずつ処理するのは、まだまだ時間がかかった。一方、コナジラミ類の捕獲は上下辺の短い捕殺具では非効率であった。
コナジラミ類の捕殺目的も含め、大判の色誘引粘着板には、バグスキャン（BUG-SCAN：商標）という製品が存在する。当初、これは25cm×40cmの大きさで販売されていたが、大判になればなるほど重さが増し、一方では粘着力により面積に比例して引き剥がし強度が増すため作業性が極度に落ちるので、現在は20cm×40cmに縮小されている。
【特許文献１】特開平11-332446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明の課題は、コナジラミなどの飛翔害虫をより効率よく捕殺可能な捕殺具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するために、本発明は、平板状の基材本体と、前記基材本体上に設けられ、粘着剤が塗布される粘着剤塗布部、とを有する飛翔害虫捕殺具であって、前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2であることを特徴とする、飛翔害虫捕殺具を提供する。前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2の範囲内であれば、飛翔害虫の捕殺効率を維持しつつ、日照が遮られたり、取り付けに困難をきたしたりすることもないので好ましい。
面積はより好ましくは１５００〜５０００ｃｍ2である。
【０００８】
基材としては、フィルム、シート、板、紙等が好ましく用いられる。材質はポリスチレン、ポリプロピレン、プラスチック、アクリル等が用いられる。また、要求性状にあうものであれば、紙類、不織布でも良い。
基材の形状は多角形、円形、またはそれらを組み合わせた形状が挙げられるが、多角形が好ましく、四角形がより好ましい。
【０００９】
粘着剤とは、害虫を捕獲できる程度の粘着力があればよく、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤など種々の粘着剤を用いることができ、また、害虫を効率よくトラップするために前記粘着剤中に害虫誘引剤を配合させておくことが好ましい。あるいは、害虫を誘引するために基材に特定の波長の色を付けておいてもよい。コナジラミの捕殺を目的とする場合、黄色にすることが好ましい。粘着剤は基材の片面に塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
【００１０】
基材の表面上の内部には切れ目が設けられていることが好ましい。
切れ目を入れることにより、現場に張りめぐられた紐や棒やワイヤー等の引っ掛け部材に引っ掛けたり、取り外したりする際、専用の結び紐や針金を使うことなく、引っ掛けるだけで手も汚さずに着脱可能とすることができる。
切れ目は、基材の表面上の内部において、切れ目を入れることで、現場に張り巡らされた紐や棒やワイヤー等の引っ掛け部材に前記基材を容易に引っ掛けることができる程度の切れ目であれば良い。なお、基材の厚みや材質にもよるが、一般的な切断具、例えばカッター、刀、鋏等により切れ目を入れることができる。なお、「切れ目が基材の表面上の内部に設けられた」とは、切れ目の一端が、基材表面上に、該基材の外縁には達しないように設けられていることをいう。
【００１１】
切れ目は、曲線状に設けられていることが好ましい。切れ目を曲線状にすることで、捕殺具を紐や棒やワイヤー等の引っ掛け部材に引っ掛けやすく、取り外しやすい。曲線状の切れ目とは、矩形や波線状の切れ目も含まれるが、弧状の切れ目がより好ましい。半円以下の弧状で、地面に対して垂直に吊るして使用する時に下方（地面側）となる方向に対し
て膨らむ方向の形状を描いていることがより好ましい。
基材中、切れ目は粘着剤塗布部の中に設けられていてもよいし、粘着剤塗布部の外に設けられていてもよい。切れ目は、捕殺具を地面に対して垂直に吊るして使用する時に上方となる位置に設けられていることが好ましい。なお、切れ目は複数設けられていてもよい。
【００１２】
また、切れ目の端部の一方又は両方には貫通孔が設けられていることが好ましい。貫通孔を有することにより、紐等に引っ掛けたときに外れにくく、また、基材が切れ目から避けて破損することを防ぐことができる。
なお、その貫通孔の形状は円形、楕円形、三角形、ひし形、四角以上の多角形、星形等なんでも良いが、紐等から受ける圧力の耐久性、製造作業効率（金型）から円形であることが好ましい。特に、直径が２ｍｍ以上の円であれば、その耐久性はより安定になる。
【００１３】
基材は０．１ｍｍ以上の厚みであることが好ましい。基材は粘着剤をほぼ全面に塗付するものであり、作業者は基材の側（壁）を持って作業することが一般的である。基材厚みを０．１ｍｍ以上にすることにより、持ちやすく、取り付け等の作業をしやすくするためである。基材厚みは０．３ｍｍ以上にすることがより好ましい。
なお、より取り扱いやすくするために、基材の外周に少なくとも１箇所の取りしろ（粘着剤非塗布部）を設けても良い。
また、本発明の捕殺具は片面又は両面に粘着剤が塗布された基材を複数枚重ねてなり、使用時に１枚ずつ剥がして使用されるものであってもよい。
【００１４】
なお、本発明の捕殺具の捕殺対象となる「飛翔害虫」は特に制限されないが、広く各種農作物、樹木等に被害を与える害虫が挙げられ、カミキリムシ類、コガネムシ類、コナジラミ類、スリップス類、アブラムシ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、ハエ類、ウンカ類、ヨコバイ類、コナガ類等が挙げられるが、コナジラミ類がより好ましい。
本発明の補殺具は農地やハウス内などで使用することができる。使用方法として、植栽の上で使用してもよいが、ハウス出入り口や窓、特に天窓や出入り口周囲に使用するのが効果的である。
【発明の効果】
【００１５】
捕殺具の大きさにおいて、面積１２００〜１２０００ｃｍ2の大判にすることによってコナジラミ類などの捕殺性能を高めることができる。また、小さい捕殺具を多数吊り下げるよりも、短時間で引掛けられ、引掛ける数が減少し作業性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、図面を参照して本発明の飛翔害虫捕殺具についてより具体的に説明する。ただし、本発明の飛翔害虫捕殺具は以下の態様には限定されない。
【００１７】
図１に本発明の飛翔害虫捕殺具１の平面図を示す。
飛翔害虫捕殺具１は、面積１２００〜１２０００ｃｍ2の長方形の平板を基材２とし、基材２の上部には、下方に向かって膨らむ弧状の切れ目４が３カ所設けられ、各切れ目４の端部の両方には貫通孔５が設けられている。
そして、基材２には図示しない取りしろが設けられ、貫通孔と取りしろ以外の部分に粘着剤が塗布されている（粘着剤塗布部３）。作業者は取りしろを持って引っ掛け作業をすることにより、粘着剤が手につくのを防ぐことができる。
このような飛翔害虫捕殺具１は、基材２を部分的に切断して弧状の切れ目４を３カ所設け、さらに、各切れ目４の端部の両方には貫通孔５となる穴を設け、所定の位置に粘着剤を塗布することにより得ることができる。
【００１８】
図２は飛翔害虫捕殺具１の使用態様を示す図である。
農地やビニールハウスなどにおいて、地面と水平に張られた紐６に、切れ目４を介して飛翔害虫捕殺具１を引っ掛ける。粘着剤塗布部３に飛翔害虫が付着し、捕殺される。
使用終了後、紐６から飛翔害虫捕殺具１を外し、廃棄することができる。
【実施例】
【００１９】
以下、実施例を参照してより具体的に説明する。
以下の実施例では、ポリスチレンを素材とする基材を用いた飛翔害虫捕殺具を使用した。基材の両面にアクリル系粘着剤を塗布した。
【００２０】
実施例では図１の飛翔害虫捕殺具１（縦58cm×横30cm：面積1740cm2）を用いた。
比較例では図２の飛翔害虫捕殺具１１（縦10cm×横27cm：面積270cm2）を用いた。
【００２１】
１．コナジラミの捕獲性能比較試験
飛翔害虫捕殺具１（ｎ＝２；実施例１，２）と飛翔害虫捕殺具１１（ｎ＝２；比較例１，２）を、トマトを植栽するハウス内の地上１ｍの高さにつるしたワイヤーに5cm間隔で引っかけて設置した。
２ヶ月間設置した後、補殺具を回収し、コナジラミの捕殺数を各捕殺具の両面において測定した。結果を表１に示す。
【００２２】
【表１】
【００２３】
以上の結果から、面積の大きい飛翔害虫捕殺具１はコナジラミの単位面積当たりの捕殺数が顕著に多いことがわかった。
【００２４】
２．設置時間の比較
飛翔害虫捕殺具１１（比較例）１８枚をハリコードに吊り下げるのには、約６分間を要した。
これに対し、飛翔害虫捕殺具１１（比較例）１８枚分に相当する、面積の大きい形状の捕殺具１（実施例）３枚を設置するのに、３分とかからなかった。
【００２５】
コナジラミは、植物の新芽の葉裏に寄生して養分を吸汁するため、ハウス内では、ほぼ同じ高さから発生する。したがって、間隔を開けて設置するよりも、面積の大きい粘着板の方が効果的である。また、上下方向においても長い方が取り逃がしをなくする。
そのためには、設置における板の取り剥がしと設置が課題であったが、粘着剤を剥がしやすいものとし、基材にカットを入れることによって可能となった。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】（Ａ）本発明の飛翔害虫捕殺具１（実施例１）の模式図（平面図）。（Ｂ）本発明の飛翔害虫捕殺具１（実施例１）の使用態様を示す模式図（平面図）。
【図２】（Ａ）比較例の飛翔害虫捕殺具１１の模式図（平面図）。（Ｂ）比較例の飛翔害虫捕殺具１１の使用態様を示す模式図（平面図）。
【符号の説明】
【００２７】
１、１１：飛翔害虫捕殺具
２、１２：基材本体
３、１３：粘着剤塗布部
４、１４：切れ目
５、１５：貫通孔
６、１６：紐
【技術分野】
【０００１】
本発明は飛翔害虫を誘引して効果的に捕殺することができる捕殺具に関し、特に、表面に粘着剤が塗着された捕殺具であって、特に、コナジラミ類を多数、効率的に捕殺することができる捕殺具に関する。
【背景技術】
【０００２】
一般的に農林園芸において、病害虫の防除にあたっては、化学農薬を使用する場合が多い。しかしながら、化学農薬を使用する場合は病害虫ばかりでなく人畜等の他の生物にも害を与える場合がある。近年、これらの化学薬剤の人畜に及ぼす影響あるいは環境汚染等が問題視されてきている。また、作業者自身の健康に対して悪影響を与える可能性があるといった欠点がある。そこで、環境保全、食への安全性の高まり、有機栽培の生産需要の高まりなどの理由で、化学農薬の使用を減らし、生物的防除、耕種的防除や、物理的防除による総合防除管理が実施されるようになってきている。
【０００３】
そのうち物理的防除法においては、光による色の波長を利用する粘着トラップ板が多用されるようになってきている。なかでもコナジラミ類は難防除害虫で、化学農薬による効果が低く薬剤耐性がつきやすいことから多用できないことから、この害虫防除を目的に黄色誘引粘着捕殺具が使用されている。
コナジラミ類による直接的な被害としては葉裏に寄生して汁を吸われるため、葉緑素が抜け白いカスリ状になる。生育が悪くなり、発生量が多くて被害が進行すると、草花や野菜では枯死する。また、シルバーリーフコナジラミではトマトなどの果 実の色がまだらになるなど着色異常果が発生したりする。間接的な被害としては、排泄物の上にすす病が発生して葉や果 実が黒くなる。ウイルスを媒介するタイプも出現し、それらによるトマト黄化葉巻病が大問題となっている。
しかし、光による色の波長を利用する粘着トラップ板の基材は、紙類やプラスチック板、あるいは、プラスチックフィルムで、それらの設置方法は、その基材に穴を開け紐や針金を通したり、洗濯鋏により現場に張りめぐられた紐やワイヤー等に吊るして使用されてきた。こうした作業は、取り付けばかりでなく、使用後の取り外しにおいても粘着剤で手を汚す、作業着に付着させてしまうなど作業上煩わしいものであった。
そこで、こうした取り付け時および取り外し時に簡便でかつ、作業上の煩わしさを回避する手段が求められていた。
【０００４】
特許文献１では、害虫捕殺粘着シートと握持固定台紙とによりなる捕虫材が開示されているが、かかる捕虫具では粘着剤の無い固定台紙を持って作業する以上、手や作業着に粘着剤が付着する問題はない。
しかし、現場で紐やワイヤー等に取り付ける部分は前記固定台紙の部分であり、そのためには当該台紙を紐等に通したり、洗濯鋏等での取り付けを余儀なくされていた。したがって、依然として作業効率は向上しうるものではなかった。また、かかる捕虫具は粘着シートのみを構成とするものではなく、台紙の入手とシートへの固定を必要とするため、その分のコスト、手間を要するものであった。
また、製造工程上基材への粘着は、基材全面に塗布することが一般的であり、持ちやすさを改善するために粘着部分の無い取りしろ等を設けることは、製造効率上好ましいものではない。
【０００５】
そこで、発明者らは特願2008-037710号において基材本体の基材表面の内部に一定の形状の切れ目を入れることで農業等の現場に張り巡らされた紐やワイヤー等への脱着を容易にすることを発明した。
しかし、短板を剥がして、1枚ずつ処理するのは、まだまだ時間がかかった。一方、コナジラミ類の捕獲は上下辺の短い捕殺具では非効率であった。
コナジラミ類の捕殺目的も含め、大判の色誘引粘着板には、バグスキャン（BUG-SCAN：商標）という製品が存在する。当初、これは25cm×40cmの大きさで販売されていたが、大判になればなるほど重さが増し、一方では粘着力により面積に比例して引き剥がし強度が増すため作業性が極度に落ちるので、現在は20cm×40cmに縮小されている。
【特許文献１】特開平11-332446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明の課題は、コナジラミなどの飛翔害虫をより効率よく捕殺可能な捕殺具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するために、本発明は、平板状の基材本体と、前記基材本体上に設けられ、粘着剤が塗布される粘着剤塗布部、とを有する飛翔害虫捕殺具であって、前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2であることを特徴とする、飛翔害虫捕殺具を提供する。前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2の範囲内であれば、飛翔害虫の捕殺効率を維持しつつ、日照が遮られたり、取り付けに困難をきたしたりすることもないので好ましい。
面積はより好ましくは１５００〜５０００ｃｍ2である。
【０００８】
基材としては、フィルム、シート、板、紙等が好ましく用いられる。材質はポリスチレン、ポリプロピレン、プラスチック、アクリル等が用いられる。また、要求性状にあうものであれば、紙類、不織布でも良い。
基材の形状は多角形、円形、またはそれらを組み合わせた形状が挙げられるが、多角形が好ましく、四角形がより好ましい。
【０００９】
粘着剤とは、害虫を捕獲できる程度の粘着力があればよく、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤など種々の粘着剤を用いることができ、また、害虫を効率よくトラップするために前記粘着剤中に害虫誘引剤を配合させておくことが好ましい。あるいは、害虫を誘引するために基材に特定の波長の色を付けておいてもよい。コナジラミの捕殺を目的とする場合、黄色にすることが好ましい。粘着剤は基材の片面に塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
【００１０】
基材の表面上の内部には切れ目が設けられていることが好ましい。
切れ目を入れることにより、現場に張りめぐられた紐や棒やワイヤー等の引っ掛け部材に引っ掛けたり、取り外したりする際、専用の結び紐や針金を使うことなく、引っ掛けるだけで手も汚さずに着脱可能とすることができる。
切れ目は、基材の表面上の内部において、切れ目を入れることで、現場に張り巡らされた紐や棒やワイヤー等の引っ掛け部材に前記基材を容易に引っ掛けることができる程度の切れ目であれば良い。なお、基材の厚みや材質にもよるが、一般的な切断具、例えばカッター、刀、鋏等により切れ目を入れることができる。なお、「切れ目が基材の表面上の内部に設けられた」とは、切れ目の一端が、基材表面上に、該基材の外縁には達しないように設けられていることをいう。
【００１１】
切れ目は、曲線状に設けられていることが好ましい。切れ目を曲線状にすることで、捕殺具を紐や棒やワイヤー等の引っ掛け部材に引っ掛けやすく、取り外しやすい。曲線状の切れ目とは、矩形や波線状の切れ目も含まれるが、弧状の切れ目がより好ましい。半円以下の弧状で、地面に対して垂直に吊るして使用する時に下方（地面側）となる方向に対し
て膨らむ方向の形状を描いていることがより好ましい。
基材中、切れ目は粘着剤塗布部の中に設けられていてもよいし、粘着剤塗布部の外に設けられていてもよい。切れ目は、捕殺具を地面に対して垂直に吊るして使用する時に上方となる位置に設けられていることが好ましい。なお、切れ目は複数設けられていてもよい。
【００１２】
また、切れ目の端部の一方又は両方には貫通孔が設けられていることが好ましい。貫通孔を有することにより、紐等に引っ掛けたときに外れにくく、また、基材が切れ目から避けて破損することを防ぐことができる。
なお、その貫通孔の形状は円形、楕円形、三角形、ひし形、四角以上の多角形、星形等なんでも良いが、紐等から受ける圧力の耐久性、製造作業効率（金型）から円形であることが好ましい。特に、直径が２ｍｍ以上の円であれば、その耐久性はより安定になる。
【００１３】
基材は０．１ｍｍ以上の厚みであることが好ましい。基材は粘着剤をほぼ全面に塗付するものであり、作業者は基材の側（壁）を持って作業することが一般的である。基材厚みを０．１ｍｍ以上にすることにより、持ちやすく、取り付け等の作業をしやすくするためである。基材厚みは０．３ｍｍ以上にすることがより好ましい。
なお、より取り扱いやすくするために、基材の外周に少なくとも１箇所の取りしろ（粘着剤非塗布部）を設けても良い。
また、本発明の捕殺具は片面又は両面に粘着剤が塗布された基材を複数枚重ねてなり、使用時に１枚ずつ剥がして使用されるものであってもよい。
【００１４】
なお、本発明の捕殺具の捕殺対象となる「飛翔害虫」は特に制限されないが、広く各種農作物、樹木等に被害を与える害虫が挙げられ、カミキリムシ類、コガネムシ類、コナジラミ類、スリップス類、アブラムシ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、ハエ類、ウンカ類、ヨコバイ類、コナガ類等が挙げられるが、コナジラミ類がより好ましい。
本発明の補殺具は農地やハウス内などで使用することができる。使用方法として、植栽の上で使用してもよいが、ハウス出入り口や窓、特に天窓や出入り口周囲に使用するのが効果的である。
【発明の効果】
【００１５】
捕殺具の大きさにおいて、面積１２００〜１２０００ｃｍ2の大判にすることによってコナジラミ類などの捕殺性能を高めることができる。また、小さい捕殺具を多数吊り下げるよりも、短時間で引掛けられ、引掛ける数が減少し作業性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、図面を参照して本発明の飛翔害虫捕殺具についてより具体的に説明する。ただし、本発明の飛翔害虫捕殺具は以下の態様には限定されない。
【００１７】
図１に本発明の飛翔害虫捕殺具１の平面図を示す。
飛翔害虫捕殺具１は、面積１２００〜１２０００ｃｍ2の長方形の平板を基材２とし、基材２の上部には、下方に向かって膨らむ弧状の切れ目４が３カ所設けられ、各切れ目４の端部の両方には貫通孔５が設けられている。
そして、基材２には図示しない取りしろが設けられ、貫通孔と取りしろ以外の部分に粘着剤が塗布されている（粘着剤塗布部３）。作業者は取りしろを持って引っ掛け作業をすることにより、粘着剤が手につくのを防ぐことができる。
このような飛翔害虫捕殺具１は、基材２を部分的に切断して弧状の切れ目４を３カ所設け、さらに、各切れ目４の端部の両方には貫通孔５となる穴を設け、所定の位置に粘着剤を塗布することにより得ることができる。
【００１８】
図２は飛翔害虫捕殺具１の使用態様を示す図である。
農地やビニールハウスなどにおいて、地面と水平に張られた紐６に、切れ目４を介して飛翔害虫捕殺具１を引っ掛ける。粘着剤塗布部３に飛翔害虫が付着し、捕殺される。
使用終了後、紐６から飛翔害虫捕殺具１を外し、廃棄することができる。
【実施例】
【００１９】
以下、実施例を参照してより具体的に説明する。
以下の実施例では、ポリスチレンを素材とする基材を用いた飛翔害虫捕殺具を使用した。基材の両面にアクリル系粘着剤を塗布した。
【００２０】
実施例では図１の飛翔害虫捕殺具１（縦58cm×横30cm：面積1740cm2）を用いた。
比較例では図２の飛翔害虫捕殺具１１（縦10cm×横27cm：面積270cm2）を用いた。
【００２１】
１．コナジラミの捕獲性能比較試験
飛翔害虫捕殺具１（ｎ＝２；実施例１，２）と飛翔害虫捕殺具１１（ｎ＝２；比較例１，２）を、トマトを植栽するハウス内の地上１ｍの高さにつるしたワイヤーに5cm間隔で引っかけて設置した。
２ヶ月間設置した後、補殺具を回収し、コナジラミの捕殺数を各捕殺具の両面において測定した。結果を表１に示す。
【００２２】
【表１】
【００２３】
以上の結果から、面積の大きい飛翔害虫捕殺具１はコナジラミの単位面積当たりの捕殺数が顕著に多いことがわかった。
【００２４】
２．設置時間の比較
飛翔害虫捕殺具１１（比較例）１８枚をハリコードに吊り下げるのには、約６分間を要した。
これに対し、飛翔害虫捕殺具１１（比較例）１８枚分に相当する、面積の大きい形状の捕殺具１（実施例）３枚を設置するのに、３分とかからなかった。
【００２５】
コナジラミは、植物の新芽の葉裏に寄生して養分を吸汁するため、ハウス内では、ほぼ同じ高さから発生する。したがって、間隔を開けて設置するよりも、面積の大きい粘着板の方が効果的である。また、上下方向においても長い方が取り逃がしをなくする。
そのためには、設置における板の取り剥がしと設置が課題であったが、粘着剤を剥がしやすいものとし、基材にカットを入れることによって可能となった。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】（Ａ）本発明の飛翔害虫捕殺具１（実施例１）の模式図（平面図）。（Ｂ）本発明の飛翔害虫捕殺具１（実施例１）の使用態様を示す模式図（平面図）。
【図２】（Ａ）比較例の飛翔害虫捕殺具１１の模式図（平面図）。（Ｂ）比較例の飛翔害虫捕殺具１１の使用態様を示す模式図（平面図）。
【符号の説明】
【００２７】
１、１１：飛翔害虫捕殺具
２、１２：基材本体
３、１３：粘着剤塗布部
４、１４：切れ目
５、１５：貫通孔
６、１６：紐
【特許請求の範囲】
【請求項１】
平板状の基材本体と、
前記基材本体上に設けられ、粘着剤が塗布される粘着剤塗布部、
とを有する飛翔害虫捕殺具であって、
前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2であることを特徴とする、飛翔害虫捕殺具。
【請求項２】
前記基材の形状が、多角形、円形、またはそれらを組み合わせた形状であることを特徴とする、請求項１に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項３】
前記基材の表面上の内部には、使用時に飛翔害虫捕殺具を引っ掛け部材に引っ掛けるための切れ目が設けられていることを特徴とする、請求項１または２に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項４】
前記切れ目が曲線状に設けられていることを特徴とする、請求項３に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項５】
前記切れ目の端部の一方又は両方に貫通孔が設けられた、請求項３または４に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項６】
前記基材が０．１ｍｍ以上の厚みであることを特徴とする、請求項１〜５のいずれか一項に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項７】
飛翔害虫がコナジラミ類である、請求項１〜６のいずれか一項に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項１】
平板状の基材本体と、
前記基材本体上に設けられ、粘着剤が塗布される粘着剤塗布部、
とを有する飛翔害虫捕殺具であって、
前記基材の面積が１２００〜１２０００ｃｍ2であることを特徴とする、飛翔害虫捕殺具。
【請求項２】
前記基材の形状が、多角形、円形、またはそれらを組み合わせた形状であることを特徴とする、請求項１に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項３】
前記基材の表面上の内部には、使用時に飛翔害虫捕殺具を引っ掛け部材に引っ掛けるための切れ目が設けられていることを特徴とする、請求項１または２に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項４】
前記切れ目が曲線状に設けられていることを特徴とする、請求項３に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項５】
前記切れ目の端部の一方又は両方に貫通孔が設けられた、請求項３または４に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項６】
前記基材が０．１ｍｍ以上の厚みであることを特徴とする、請求項１〜５のいずれか一項に記載の飛翔害虫捕殺具。
【請求項７】
飛翔害虫がコナジラミ類である、請求項１〜６のいずれか一項に記載の飛翔害虫捕殺具。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１０−７５０８４（Ｐ２０１０−７５０８４Ａ）
【公開日】平成２２年４月８日（２０１０．４．８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２４５９４０（Ｐ２００８−２４５９４０）
【出願日】平成２０年９月２５日（２００８．９．２５）
【出願人】（０００１８３６４６）出光興産株式会社 (2,069)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年４月８日（２０１０．４．８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年９月２５日（２００８．９．２５）
【出願人】（０００１８３６４６）出光興産株式会社 (2,069)
【Ｆターム（参考）】
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