説明

飛翔昆虫類捕獲器

【課題】ハエやハチ等の飛翔昆虫類を良好に誘引し捕獲することができ、しかも、使用者に不快感を与えるといったことのない飛翔昆虫類捕獲器を提供する。
【解決手段】下側に縦向きの侵入口1を設けた中空状の上部容器2と、縦方向に向かう面壁部3を有し、上部容器2の下方に配置して上部容器2を支持する下部支持体4と、からなり、下部支持体4の上端を、上部容器2の下側に設けた侵入口1より上部容器2の内部に挿入することにより、下部支持体4の面壁部3に着地した飛翔昆虫類を、面壁部3に沿って上方に誘導し、侵入口1より上部容器2の内部に飛翔昆虫類を引き入れて、飛翔昆虫類を捕獲するようにした飛翔昆虫類捕獲器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエやハチ等の飛翔昆虫類を捕獲するために用いられる飛翔昆虫類捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
飛翔昆虫類、例えばハエを駆除するには、内部に殺虫剤を充填したエアゾールを用いて、駆除するハエに殺虫剤を噴霧して、これを駆除するのが一般的な手法であった。
【0003】
しかしながら、このエアゾールを用いたハエの駆除にあっては、いろいろな制約を受けるおそれがあり、これは、ハエ等が多く発生する食品や食器類のある台所付近では、エアゾールより噴霧した殺虫剤が食品や食器類に付着してしまうといった問題があり、これにより、食品や食器類のある台所付近での使用を控えているのが実情であった。
【0004】
このため、エアゾールによる殺虫剤の噴霧といった手法に代わって、ハエ取りリボンやハエ取り紙等を用いて、これらにハエを粘着させて捕獲する手法が考えられるが、このハエ取りリボンやハエ取り紙等では、どうしても粘着剤で捕獲したハエの死骸等が剥き出しのままとなり、使用中、使用者に不快感を与えるといった問題があったり、あるいは、粘着剤が露出しているので、使用者の手や衣服等に当該ハエ取りリボンやハエ取り紙等がくっついてしまうといったことがあり、取扱いに注意を払う必要があった。
【0005】
そこで、ハエ取りリボンやハエ取り紙等に代わって、捕獲器が普及しつつある。この捕獲器としては、例えば、特開2003−70403号公報に記載されているように、略球体状の容器において、その上部と下部とに害虫であるハエ等が侵入可能な小穴と大穴とを設けると共に、内部にハエ等を誘引して殺す作用を有する誘引殺虫剤を収納する。これによって、内部に収納した誘引殺虫剤の臭気が上下の小穴と大穴とから外部に放散され、この臭気に誘われて、小穴あるいは大穴よりハエ等が容器の内部に引き入れられる。そして、容器の内部に引き入れられたハエ等が内部において誘引殺虫剤に触れることで死ぬようになっていた。
【特許文献1】特開2003−70403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の捕獲器にあっては、ハエ等の誘引を、容器の内部に収納した誘引殺虫剤の臭気によって行うため、容器の内部に収納する誘引殺虫剤の臭気が弱いと、ハエ等を全く誘引することができず、また逆に、誘引殺虫剤の臭気を強くすると、今度は誘引殺虫剤の臭気を人間である使用者も嗅ぐことになり、使用者が不快感を覚えるといった問題が生じると共に、誘引殺虫剤の臭気によるハエ等の誘引には限界があり、臭気を強くしても、ハエ等を良好に誘引することができないといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような各問題の解消、すなわち、ハエやハチ等の飛翔昆虫類を良好に誘引し捕獲することができ、しかも、使用者に不快感を与えるといったことのない飛翔昆虫類捕獲器を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、下側に縦向きの侵入口を設けた中空状の上部容器と、縦方向に向かう面壁部を有し、上部容器の下方に配置して上部容器を支持する下部支持体と、からなり、下部支持体の上端を、上部容器の下側に設けた侵入口より上部容器の内部に挿入することにより、下部支持体の面壁部に着地した飛翔昆虫類を、面壁部に沿って上方に誘導し、侵入口より上部容器の内部に飛翔昆虫類を引き入れて、飛翔昆虫類を捕獲するようにした飛翔昆虫類捕獲器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上部容器の下方に配置した下部支持体の縦方向に向かう面壁部に、ハエやハチ等の飛翔昆虫類が着地するようになり、着地したハエやハチ等の飛翔昆虫類が、その負の走地性により、下部支持体の面壁部を上方に向かって移動して、上方の上部容器内部へと入り込むようになり、これにより、ハエやハチ等の飛翔昆虫類を極めて良好に誘引して捕獲することができる。よって、従来の誘引殺虫剤等の臭気によってハエ等の飛翔昆虫類を誘引して捕獲するものと比べても、極めて高い捕獲効果を得ることができる。しかも、臭気の強い誘引殺虫剤等を用いることなくハエ等の飛翔昆虫類を誘引して捕獲することができるので、使用者が不快感を覚えるといったこともなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による飛翔昆虫類捕獲器の一実施形態について説明する。
【0011】
飛翔昆虫類捕獲器としては、図1、図2に示すように、下側に縦向きの侵入口1を設けた中空状の上部容器2と、縦方向に向かう面壁部3を有し、上部容器2の下方に配置して上部容器2を支持する下部支持体4と、からなる。
【0012】
この上部容器2は、略半球状の上部体11と、この上部体11の下部に着脱自在に嵌合する円形皿状の下部体12とから中空構造に形成して、ここを捕獲室13にしたものである。
【0013】
上部容器2における下部体12は、その下側中央において上方に向かって立ち上がる円筒状の筒部14を設けて、その上端を開放することで、ここに大きな径の縦向きの円形状の侵入口1を設ける。そして、この下部体12における侵入口1の周囲にはリング状の凹部15を設ける。
【0014】
なお、この上部体11と下部体12とからなる上部容器2にあっては、前述した略半球状や円形皿状に限定されるものではなく、円錐や角錐である錐体状のもの、円柱や角柱である柱体状のもの、直方体状のもの、多面体状のもの等、他の形状のものでも良い。
【0015】
また、この上部容器2の色については、その色を乳白色で内部が少し透けて見える半透明とする。なお、この色については、前記の色に限定されるものではなく、乳白色を含む白色等の淡い色であれば良い。
【0016】
一方、下部支持体4は、円錐形の立体形状として、その側面全面を縦方向に向かう面壁部3として、面壁部3を有するようになる。そして、この下部支持体4の上端を上部容器2の下側に設けた侵入口1より上部容器2の内部に挿入させると共に、その上端が上部容器2の上部体11の中央より垂下するように設けた嵌合部16に着脱自在に嵌合するようにし、上部容器2を下方より支持する。
【0017】
なお、この下部支持体4の色については、その色を黒色とする。ただし、この色については、前記の色に限定されるものではなく、こげ茶色や黒色等の濃い色であれば良い。
【0018】
そして、上部容器2内部の捕獲室13の凹部15には、液体を収納する。この液体は、醸造酢、醸造酒、果汁等の誘引作用を有する誘引液や水である。誘引液を使用した場合は、その誘引作用によって、飛翔昆虫類をより一層良好に誘引することができる。一方、水を使用した場合は、臭気等の発生がなく、使用時、使用者に一切の不快感を与えるといったことがないと共に、水であるので、安全でこぼれても床等を汚すことがない等の好適な点がある。また、これらの誘引液や水に殺虫剤等を混ぜても良い。さらに、捕獲室13に収納する物質としては、液体に限定されるものではなく、ゲル状物質等でも良い。そして、これらに醸造酢、醸造酒、果汁等を入れるようにしても良い。なお、捕獲室13の凹部15には液体等を収納するようにしていたが、飛翔昆虫類の習性等を考慮すれば、捕獲室13に液体等を収納することなく、捕獲室13の内面を粘着剤でコーティングする、あるいは粘着シートを貼着だけでも、飛翔昆虫類を捕獲することが可能である。なお、このように捕獲室13の内面に粘着剤でコーティング等する場合、上部容器2内部にリング状の凹部15を設ける必要はない。
【0019】
そして、このような飛翔昆虫類捕獲器における実際の使用状態について説明する。なお、これは、ハエを捕獲する例である。
【0020】
当該飛翔昆虫類捕獲器を、例えば台所に配置する。すると、飛び回っているハエが当該飛翔昆虫類捕獲器における下部支持体4の面壁部3に着地する。そして、下部支持体4の面壁部3に着地したハエは、ハエやハチ等の飛翔昆虫類における負の走地性により、面壁部3に沿って上方に向かって移動、すなわち上方に誘導する。この負の走地性とは、飛翔昆虫類等において、重力に逆らって上方に向かって移動する性質のことである。
【0021】
そして、この負の走地性により、ハエは下部支持体4の面壁部3に沿って上方に移動して、上部容器2における下部体12の侵入口1より上部容器2内部に侵入する。その後、上部容器2内部において飛び回り、内部を飛び回った後、上部容器2内部の捕獲室13の凹部15の液体に触れて、液体が醸造酢等の誘引液や水の場合は溺死し、液体が誘引液や水に殺虫剤等を混ぜたものの場合はそれに触れて死ぬようになる。
【0022】
このようにして、当該飛翔昆虫類捕獲器を台所等に配置して、下部支持体4の面壁部3に着地したハエを、面壁部3に沿って上方に誘導し、侵入口1より上部容器2の内部にハエを引き入れて捕獲するようにしたことで、台所付近にいるハエを駆除することができる。そして、上部容器2内部に捕獲したハエについては、これを廃棄することによって、当該飛翔昆虫類捕獲器を何度でも繰り返して使用することができる。
【0023】
以上のように、下部支持体4の面壁部3に着地したハエを、飛翔昆虫類における負の走地性を利用して、面壁部3に沿って上方に誘導し、上部容器2における下部体12の侵入口1より内部に引き入れることにより、ハエを良好に捕獲することができ、ハエの捕獲率を飛躍的に向上させることができる。
【0024】
次に、下部支持体における他の形状あるいは形態について述べる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0025】
下部支持体4としては、図3に示す四角錐形あるいは三角錐形の立体形状でも良く、この場合、それぞれの側面が縦方向に向かう面壁部3となる。また、図4に示すように、側面である面壁部3に、縦向きのスリット21を複数形成するようにしても良いし、図5や図6に示すように、側面である面壁部3に複数の穴部22を形成するようにしても良い。
【0026】
また、下部支持体4にあっては、前述した円錐形や角錐形の立体形状のものではなく、図7に示すように、二枚の三角形状となる板材31を交差させて十字状につなぎ合わせた形状のものでも良く、この場合、それぞれの面が縦方向に向かう面壁部3となる。なお、二枚の板材31をつなぎ合わせた形状のものに限定されるものではなく、三枚やそれ以上の枚数の板材31をつなぎ合わせた形状のものでも良い。
【0027】
さらに、本発明による飛翔昆虫類捕獲器の別の例について述べると、この例としては、実際に台所やリビング、玄関等の屋内に設置することを考慮して、デザイン性を高めたものである。
【0028】
図8、図9に示すように、上部容器2は円錐台形となりその表面には花等の模様を付すようにする。一方、下部支持体4は円錐形の立体形状ではあるものの、少し曲線をつけて上側が絞り込まれた形状にする。
【0029】
これによっても、ハエを良好に捕獲することができ、ハエの捕獲率を飛躍的に向上させることができると共に、屋内に設置した際、使用者等に飛翔昆虫類捕獲器と認識させることなく、部屋を飾り立てる装飾品のような美しい品物にすることができ、使用中に不快感を生じさせないようにすることができる。
【0030】
次に、本発明による飛翔昆虫類捕獲器において、試験を行ったので、これらについて説明する。
【0031】
この試験としては、まず、実施品A、実施品B、比較品Cをそれぞれ用意する。実施品Aは、図10(a)に示すように、下側に侵入口1を設けた上部容器2と、縦方向に向かう面壁部3を有した下部支持体4とからなり、下部支持体4は二枚の三角形状となる板材31を交差させて十字状につなぎ合わせた形状のもので、上部容器2内部の捕獲室13の凹部15には水Wを収納する。実施品Bは、図10(b)に示すように、実施品Aと同じであるが、上部容器2内部の捕獲室13の凹部15には誘引液である赤酢Sを収納する。比較品Cは、図10(c)に示すように、下側に侵入口1を設けた上部容器2のみからなり、上部容器2内部の捕獲室13の凹部15には誘引液である赤酢Sを収納する。
【0032】
この用意した実施品A、実施品B、比較品Cを、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内に配置し、これは、実施品A、実施品Bは、チャンバー内の床に置くと共に、比較品Cは、実施品Aや実施品Bと上部容器2において同じ高さとなる位置に吊るす。そして、このチャンバー内に、ショウジョウバエ50匹を放ち、24時間経過した後、それぞれの捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
本発明による飛翔昆虫類捕獲器である実施品Aは、その捕獲数が16匹、本発明による飛翔昆虫類捕獲器である実施品Bは、その捕獲数が23匹であるのに対し、従来の捕獲器に近似する比較品Cは、その捕獲数が2匹であり、これから、本発明による飛翔昆虫類捕獲器である実施品Aや実施品Bの方が、比較品Cよりも明らかに捕獲において著しい効果がある。要するに、本発明による飛翔昆虫類捕獲器の方が、誘引液等の臭気によって飛翔昆虫類を誘引して捕獲する従来の捕獲器よりも極めて高い捕獲効果を得ていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明における飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図2】本発明における飛翔昆虫類捕獲器の断面図である。
【図3】本発明における他の飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図4】本発明における他の飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図5】本発明における他の飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図6】本発明における他の飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図7】本発明における他の飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図8】本発明における別の例の飛翔昆虫類捕獲器の斜視図である。
【図9】本発明における別の例の飛翔昆虫類捕獲器の断面図である。
【図10】(a)試験における試験品Aを説明する斜視図である。(b)試験における試験品Bを説明する斜視図である。(c)試験における比較品Cを説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1…侵入口、2…上部容器、3…面壁部、4…下部支持体、11…上部体、12…下部体、13…捕獲室、14…筒部、15…凹部、16…嵌合部、21…スリット、22…穴部、31…板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側に縦向きの侵入口1を設けた中空状の上部容器2と、
縦方向に向かう面壁部3を有し、上部容器2の下方に配置して上部容器2を支持する下部支持体4と、
からなり、
下部支持体4の上端を、上部容器2の下側に設けた侵入口1より上部容器2の内部に挿入することにより、下部支持体4の面壁部3に着地した飛翔昆虫類を、面壁部3に沿って上方に誘導し、侵入口1より上部容器2の内部に飛翔昆虫類を引き入れて、飛翔昆虫類を捕獲するようにしたことを特徴とする飛翔昆虫類捕獲器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−165402(P2009−165402A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6886(P2008−6886)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】