説明

飛行時間型質量分析装置

【課題】
高コストなインバー材のフライトチューブを使用することなく、低コストかつ簡単な構成で温度ドリフトを阻止し安定した質量スペクトルを得ることのでき、片持ちで支持しても自重によるたわみや外部からの振動の影響を受け難いフライトチューブを用いた飛行時間型質量分析装置を提供する。
【解決手段】
フライトチューブは、内外表面に無電解ニッケルめっき層17bが導電性処理として施されたCFRPパイプ17aを用い、フライトチューブ保持部材18との接着には導電接着剤21を使用する。フライトチューブにCFRPパイプ17aを用いると、従来の金属製フライトチューブと異なり、温度調整制御システムがなくても、フライトチューブが変形しない。また、CFRPは比重がステンレスの約1/5のため、フライトチューブを片持ち支持してもたわみ難い。そして、CFRPは耐振性もあるため、振動の影響も受け難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン源により生成された試料イオンを分析する飛行時間型質量分析装置に関し、特に環境温度が変化しても測定されるイオンの質量電荷比の値に誤差を生じない飛行時間型質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型質量分析装置では、電場によりほぼ同時に加速した各種イオンをフライトチューブ内に形成される飛行空間に導入し、飛行空間中に飛行してイオン検出器に到達するまでの飛行時間に応じて各種イオンを質量(厳密には質量電荷比m/z)毎に分離する。イオン検出器では、到達するイオンの量に応じた検出信号が連続的に得られることにより、飛行時間を質量に換算した上で、横軸を質量軸、縦軸を信号強度軸とする質量スペクトルを作成することができる。このような飛行時間型質量分析装置では、フライトチューブの温度が変化することで機械的に膨張又は収縮するとイオンの飛行距離が微妙に変化する。すると、同一質量のイオンにおける飛行時間が変化してしまうため、質量スペクトルの質量軸にズレが生じることになる。そして、フライトチューブの温度変化(温度ドリフト)が大きいと質量軸のズレが装置に定められた仕様上の質量精度を超えてしまう恐れがある。そのため、特許文献1における飛行時間型質量分析装置では、図4に示すように、ステンレス鋼性のフライトチューブ17を内装する真空チャンバーを恒温槽15内に設置し、恒温槽15内の温度変化を温度センサ32でモニタリングして、真空チャンバー10を温調制御するシステムによりフライトチューブ17の温度変化が少なくするようにしている。しかし、真空チャンバーで温調を制御しても、外気温(装置を設置している部屋の室温)が急激に変化した場合等は、真空チャンバーの温度調整制御が外気温の変化に追従することが難しく温調に乱れが生じ、その結果質量軸がずれてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐157671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、温調制御のシステムを用いた場合、装置構成が複雑になる問題や、温調制御をするだけでは外気温に急激な変化があった場合、正しい分析結果が得られないという問題がある。
【0005】
他の方法として、例えば、図5に示すようにフライトチューブ17の材質を線膨張係数が極めて小さいインバー系合金を用いる方法がある。しかし、フライトチューブ17の素材にインバー系合金材を用いる方法は、インバー材がスレンテス鋼材と比較して、流通している素材の口径に制限があり、素材自体も高価であり、パイプ両端にイオン加速器・イオン検出器、リフレクトロンをそれぞれ保持固定するフランジの溶接性が困難なため、フライトチューブ17の材料としては、高コストな部品になってしまう。
【0006】
また、フライトチューブ17は、温度変化で熱膨張収縮しても飛行空間にひずみが生じないようにするためにフライトチューブ17の端にあるリフレクトロン13側は、線膨張方向に機械的拘束せずに、もう一方の端にあるイオン加速器11側でフライトチューブ保持部材18によって片側固定とする必要がある。しかし、フライトチューブ17は水平に設置されていることから、フライトチューブ保持部材18は、フライトチューブ17とこれに接続されたリフレクトロン13の総重量を片持ち支持する必要があるため、フライトチューブ17が自重によって変形すると、質量の測定精度を落としてしまう。そのため、フライトチューブ17には自重によるたわみに耐え得る剛性が必要となる。
【0007】
一方、フライトチューブをフライトチューブ保持部材で片側固定し、フライトチューブを鉛直に設置して使用する場合(図示しない)、フライトチューブが自重によってたわむことはないが、フライトチューブの重心やリフレクトロンの位置が装置下部の位置から高くなることから、装置が横揺れした場合に振動の影響を受けやすくなり、分析ノイズの要因や場合によってはマスずれの問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、このような課題を解決するために成されたものであり、高性能の恒温槽を設けることや、高コストなインバー材のフライトチューブを使用することなく、低コストかつ簡単な構成で温度ドリフトを阻止し安定した質量スペクトルを得ることができ、フライトチューブを片持ちで支持をしても自重によるたわみや振動の影響を受けないフライトチューブを用いた飛行時間型質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、内部が真空雰囲気である真空容器内に、イオンが飛行する飛行空間を形成する飛行管と、イオンの初期加速を行うための加速電極と、イオンを検出する検出器が設置された飛行時間型質量分析装置において、前記飛行管の材料は表面が導電性処理をされた炭素繊維強化熱硬化性プラスチックであり、前記飛行管は飛行管保持部材に片持ちで支持されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、フライトチューブの材質として、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(以下、「CFRP」とする)を用いる。CFRPは、成形性が優れていることなどから航空機などで広く使われており、CFRP材と繊維方向の配向と積層により、線膨張係数が金属よりも小さいため(従来のステンレス鋼材の1/170以下、インバー材の1/5以下の熱膨張性)、温度調整制御システムがなくても、フライトチューブが変形しない。
【0011】
一方、フライトチューブには±数kVの高電圧を印加するため、フライトチューブは導電性の素材でなければならないが、CFRPの表面には樹脂層が形成されているためCFRPは導電性をもっていない。そのため、CFRPの表面に無電解めっき処理などの方法で導電性処理を施しCFRPに導電性をもたせる必要がある。このように、CFRPの表面に導電性処理を行うことで、CFRPを用いて従来の金属製フライトチューブと同様の機能をもたせたCFRP製フライトチューブを作ることができる。
【0012】
また、CFRPは、航空機に使われるほど衝撃に対して強く、たわみ剛性に関係する機械的強度として縦弾性係数がステンレスの約1.4倍あり、比重もステンレスの約1/5であるため、フライトチューブを片持ち支持しフライトチューブを水平に設置した場合でも、フライトチューブが自重によってたわまない。そして、CFRPは、複合材であることから、金属と比べて振動減衰が高く制振性も高いため、フライトチューブを片持ち支持しフライトチューブを鉛直に設置したときでも、外部からの振動の影響を受け難い。
【発明の効果】
【0013】
CFRP材を用いたフライトチューブは、従来の金属製フライトチューブと異なり、線膨張係数をほとんどゼロにすることができるため、温度調整制御システムがなくても、フライトチューブが変形しない。また、縦弾性係数が高く、軽量であるため、フライトチューブを片持ち支持しフライトチューブを水平に設置した場合でも、フライトチューブがたわまない。そして、CFRPは、制振性も高いため、フライトチューブを片持ち支持しフライトチューブを鉛直に設置した場合でも、外部からの振動の影響を受け難い。さらに、CFRPは成形性に優れるため、自由な口径のパイプ形状にすることができることや、パイプとパイプ両端のイオン加速器・イオン検出器、リフレクトロンの固定フランジの接合を接合方法は接着になるため、金属の場合に溶接加工をする場合と比べて作業工程が簡略化でき加工コストも抑えることができる。また、CFRP表面に無電解ニッケルめっき膜などの金属性の導電性処理により、金属製フライトチューブと同じ機能を有し、排気速度の小さい真空ポンプを使用している真空環境下では、アウトガス抑制効果もあるため、真空中で高電圧をかけるフライトチューブでは、真空放電対策の効果も期待できる。以上より、低コストかつ簡単な構成で温度ドリフトを阻止し安定した質量スペクトルを得ることのできる飛行時間型質量分析装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した飛行時間型質量分析装置。
【図2】本発明に係るフライトチューブの説明図面。
【図3】本発明に係るフライトチューブの拡大図。
【図4】温度調整機構を備えたフライトチューブを用いた飛行時間型質量分析装置。
【図5】インバー性のフライトチューブを用いた飛行時間型質量分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施例による飛行時間型質量分析装置の要部の構成図である。この飛行時間型質量分析装置は、前段に液体クロマトグラフを接続した液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)として利用などすることができる。本装置の動作を説明すると、目的成分を含む試料液はエレクトロスプレイイオン化法等の方法でイオン化され、生成したイオンは、真空ポンプ14で真空引きされた真空チャンバー10内に入る。イオンは、イオン加速器11で射出され、フライトチューブ17の内部に形成されているイオン飛行空間16を飛行し、フライトチューブ17の一端に設置されたリフレクトロン13により形成される電場により折り返されて飛行空間16中を戻り、検出器12に到達して検出される。なお、本実施例は、リフレクトロン13が設けられている往復型の飛行時間型質量分析装置について説明をしているが、本発明には、フライトチューブの一端にイオン加速器が設置され、その他端にイオン検出器が設けられた一方向型のものの他、複数のリフレクトロンを介してイオンが飛行空間を往復する多重往復型のものも含むものとする。また、本実施例は、フライトチューブ17を水平に設置しているものであるが、本発明には、フライトチューブ17を鉛直に設置しているものも含むものとする(図示しない)。
【0016】
図2には、本実施例の飛行時間型質量分析装置のフライトチューブ周辺部を説明する図であり、イオン加速器・検出器保持部材19とフライトチューブ保持部材18が接続されている。また、フライトチューブ17の一端にはフライトチューブ保持部材18が接続されており、その他端はリフレクトロン保持部材20を介してリフレクトロン13が接続され、フライトチューブ保持部材18は、フライトチューブ17、リフレクトロン保持部材20、リフレクトロン13の総重量をフライトチューブ17の一端を支持することで片持ち支持している。
【0017】
このように、片持ちで支持している理由は、フライトチューブ17は、温度変化で熱膨張収縮しても飛行空間にひずみが生じないようにするためにフライトチューブ17の端にあるリフレクトロン13側は、線膨張方向に機械的に拘束しない方が良いことから、もう一方の端にあるイオン加速器11側で、フライトチューブ保持部材18で片持ち支持構造にしているものである。そのため、フライトチューブ17には、片持ちで保持する重量5kg程度のリフレクトロン13とフライトチューブ17の自重によるたわみに耐えうる剛性が必要となる。
【0018】
そこで、フライトチューブ17は、図3に示すとおり、無電解ニッケルめっき層17bが導電性処理として施されたCFRPパイプ17aを用い、フライトチューブ保持部材18との接着には導電接着剤21を使用する。以下にその理由を説明する。
【0019】
イオン加速器11とイオン検出器13とは共にフライトチューブに固定されているため、両者間をイオン飛行時間長さ(イオンの飛行距離)とすると、イオン飛行時間長さはフライトチューブ17の長さに依存する。そのため、温度ドリフトの影響によるフライトチューブ17の長さの変化が小さくなるように、フライトチューブ17の材質は極めて線膨張係数の小さいものにする必要がある。
【0020】
そして、フライトチューブ17の材質には、長手方向のたわみに対して剛性があり、かつ線膨張係数も小さい材質であるインバー材が一般的に知られているが、インバー材は高価であるため同様の性質を有する他の材料を用いた方が望ましい。そこで、たわみ剛性に関係する機械的強度として引張強度および縦弾性係数(ヤング率)が金属以上で、さらに線膨張係数が金属よりも小さく、更に成形性が優れていることなどからCFRPをフライトチューブ17の材料に用いる。
【0021】
CFRPは、炭素繊維にエポキシなどの熱硬化性樹脂を含浸し加熱硬化させた複合材料であり、一般的にドライカーボンと呼ばれる樹脂の含有率が40%以下のものを指す。CFRPをパイプ形状に成型する方法としては、フィラメントワインディング法やシートワインディング法が用いられる。フィラメントワインディング法は、連続した炭素強化繊維にエポキシ樹脂などを含浸したものを回転する金属製マンドレル(中空円筒形の成形型)に巻き付けて成形し加熱硬化炉で硬化させて完成品を得る方法であり、シートワインディング法は、プリプレグと炭素繊維を一方向に引き揃えたテープや織物にあらかじめエポキシ樹脂などを含浸させてシート状になった半硬化状の中間素材を使い、回転するマンドレルに巻き付けて成形し加熱硬化炉で硬化させて完成品を得る方法である。CFRP素材としては、線膨張係数の小さいピッチ系素材とPAN系素材があり、任意の組合せもしくはいずれか一つでも良い。
【0022】
また、炭素繊維には繊維方向に熱膨張・収縮する性質があることから、CFRPに用いる炭素素材としてPAN系、又はピッチ系の炭素繊維の種類や、熱膨張方向、強度(剛性)の大きさに合わせて、その繊維の配向角度を任意に組み合わせることで、線膨張係数がゼロに近いCFRPを作ることができ、フライトチューブにはそのようなCFRPを材料として用いる。
【0023】
一方、フライトチューブ17、イオン加速器11、リフレクトロン13にはそれぞれ±数kVの高電圧を印加して、フライトチューブ17とイオン加速器11やリフレクトロン13とフライトチューブ17の間に電位差を設け、通過するイオンを加速させる。このように、フライトチューブ17には電圧を印加することから、フライトチューブ17には導電性の材料を用いなければならないが、CFRPの表面には樹脂層が形成されているためCFRPは導電性をもっていない。そのため、CFRPの表面に無電解めっき処理などの方法で導電性処理を施しCFRPに導電性をもたせる必要がある。このように、CFRPの表面に導電性処理を行うことで、CFRPを用いて従来の金属製フライトチューブと同様の機能をもたせたCFRP製フライトチューブを作成することができる。
【0024】
また、CFRPの表面に施す導電処理層の膜厚は、膜厚が100μm以上では、導電処理層の線膨張係数が大きくなり、CFRPの低熱膨張性に影響を与えてしまうことやコスト高要因にもなる。その一方で、膜厚を1μm以下にすると、電気抵抗が大きくなる問題や、膜厚を均一にすることが難しくなる問題がある。そのため、無電解ニッケルめっきなどでCFRPの低熱膨張性に影響が小さく、全面均一にできる膜厚としては、10μm程度が好ましいと考えられる。また、この程度の膜厚であれば、導電処理層の電気抵抗は1Ω程度であるため、導電処理層に流れる電流による自己発熱の温度上昇は、×10-7℃のオーダーとなり、温度変化は極めて小さいのでこれを無視することができる。
【0025】
導電性処理の種類としては、無電解めっき(金、又は銀、又は銅、又はニッケル、又はスズ等の内いずれか一つ)又は、電気めっき(金、又は銀、又は銅、又はニッケル、又は3価クロム、又はスズ等の内いずれか一つ)又は、蒸着(金、又は銀、又は銅、又はアルミニウムなどの内いずれか一つ)又は、溶射(アルミニウム、又はステンレス鋼、又はニッケル、又は亜鉛等の内いずれか一つ)などを使う。また、アウトガスが許容できる真空環境下では、導電性フィラーが入ったエポキシ系導電性塗料を使った塗装などを使う。なお、これらの内いずれか一つもしくは任意の組合せでも良い。
【0026】
また、フライトチューブは、真空中内にあるため、排気速度の小さい真空ポンプを使用している真空環境下では、CFRP表面の樹脂層に吸着している水分などがアウトガスとして真空度を悪くしてしまい、このような状況でフライトチューブに高電圧をかけると真空放電の要因となるため、CFRPパイプ表面に、無電解ニッケルめっきなどの金属性の導電性処理層を施すことにより、金属膜がコーティングされるため、吸着ガスを抑制する効果が発生しアウトガス低減効果としても有効である。
【0027】
上記の導電性処理以外にCFRP表面に均一な導電性を得る方法としては、CFRPパイプ表面の樹脂層を機械的(旋盤加工や研磨など)、又は化学的(ケミカルウェットエッチングなど)に除去して、炭素繊維をむき出し状態にしてもCFRP表面に導電性が得られるので有効である。但し、この場合は、樹脂層が完全に無い状態でむき出しになったパイプ内面の炭素繊維がムラなく均一になっている必要がある。
【0028】
CFRP以外に、線膨張係数がインバー材並みに小さい素材として、石英が知られているが、縦弾性係数がステンレスの半分以下と劣るため、フライトチューブを片持ち支持構造で水平に設置する場合に、リクレクトロンとフライトチューブの自重によるたわみに耐えうる構造とするためには、フライトチューブのパイプ部分の肉厚をステンレスの場合の2倍以上に厚くする必要がある。また、石英は絶縁体のため、フライトチューブとして使用する場合は、CFRP同様に石英パイプの表面に導電性処理を行い、パイプ両端に金属性フランジを導電性接着することが必要である。石英は、非常にもろいため、衝撃などで破損しやすく取り扱いに注意が必要である。
【0029】
それに比較してCFRPは、航空機に使われるほど衝撃に対して強く、たわみ剛性に対しても縦弾性係数がステンレスの約1.4倍あるため、パイプ部分の肉厚はステンレスの場合よりも20%程度薄くできる。また、比重もステンレスの約1/5のため、肉厚を薄くできる効果と合わせて20%程度の重量に軽量化することが可能になる。そのため、フライトチューブを片持ち支持した場合で、フライトチューブを水平に設置したとき、フライトチューブが自重によりたわむことはない。
【0030】
また、CFRPは、複合材であることから、金属と比べて振動減衰が高く制振性も高いため、フライトチューブをフライトチューブ保持部材で片側固定し、フライトチューブを鉛直に設置して使用する場合でも、振動の影響を受け難くなり、分析ノイズの要因やマスずれの発生を防止することができる。
【0031】
フライトチューブ17とフライトチューブ保持部材18との接着には導電接着剤21を使用し、100℃程度のオーブンで硬化させる。フランジ部分は、ステンレス以外にアルミニウム、インバー材等でも良いし、CFRPで成形したものでも良い。
【0032】
導電性接着剤21には、高い導電性と接着強度のある導電性フィラーが入ったエポキシ接着剤を用いる。導電性塗料や導電性接着材に含まれる導電性フィラーとしては、銀、又は銅、又は黄銅、又は鉄、又は亜鉛、又はアルミニウム、又はニッケル、又はステンレス、又はカーボン等の内いずれか一つ、又は任意の組合せとし、粉末状、又は繊維状、又は粒子状、又はフレーク状など任意の形態で実施され、導電性接着剤に含まれるのに適したサイズ、形状とは当然異なるものとしてよい。上記のフランジ部分とパイプ部分を接着する方法以外に、CFRPでRTM(Resin
Transfer Molding)と呼ばれる金型内で炭素繊維に樹脂を流し込んで加熱硬化させて成形する方法を用いて、フランジ部分とパイプ部分を一体成形した後に表面を導電性処理したものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 真空チャンバー
11 イオン加速器
12 イオン検出器
13 リフレクトロン(イオン反射器)
14 真空ポンプ
15 恒温槽
16 イオン飛行空間
17 フライトチューブ
17a CFRPパイプ
17b 無電解ニッケルめっき層
18 フライトチューブ保持部材
19 イオン加速器・検出器保持部材
20 リフレクトロン保持部材
21 導電接着剤
30 ヒータ
31 ファン
32 温度センサ
33 操作制御部
34 温度制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空雰囲気である真空容器内に、イオンが飛行する飛行空間を形成する飛行管と、イオンの初期加速を行うための加速電極と、イオンを検出する検出器が設置された飛行時間型質量分析装置において、
前記飛行管の材料は表面が導電性処理をされた炭素繊維強化熱硬化性プラスチックであり、前記飛行管は飛行管保持部材に片持ちで支持されていることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項2】
前記飛行管は、水平又は鉛直に設置されたことを特徴とする請求項1に記載された飛行時間型質量分析装置。
【請求項3】
前記炭素繊維強化熱硬化性プラスチックの線膨張係数はゼロに近いことを特徴とする請求項1又は2に記載された飛行時間型質量分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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