説明

食品の切断装置

【課題】食品を手作業よりも切れ味良く且つ効率的に切断できて製造コストを抑制する。
【解決手段】ケーキKを載置するトルテ皿4のトルテ台3を所定角度回転させるトルテ台回転手段8と、把持部16を備えていてケーキを切断する刃部7と、刃部に対して超音波振動を与える超音波発生装置44と、刃部を水平方向及び上下方向に移動可能なスライド機構6とを備えている。把持部で手動操作してスライド機構6によって刃部をボックスモーションさせる。トルテ台回転手段は、トルテ台の回転軸28を所定角度回転させる駆動モータM1を設け、回転軸28に保持した切り欠けと突起部を有するインデックス板29a〜29dに光電センサ34を取付け、所定角度毎にトルテ台を停止させて刃部7でケーキKを切断する。刃部が後端位置から基準位置に戻る際に駆動スイッチをトリガーとして駆動モータを回転させてトルテ台の回転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ等の菓子やサンドイッチ、マス寿司等の各種食品を効率よく切断するためのケーキ等食品の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば円形のケーキを適宜の大きさの扇形に切断する場合、ケーキ等は通常柔らかく切断時に刃部に付着し易いので、切断を円滑に行うと共に切り口を滑らかで綺麗に仕上げるのが難しい。しかも、洋菓子工場やケーキ店等で生産するケーキを職人が手作業で所定の大きさに且つ滑らかな切り口に切断するのは手間がかかり、コスト高になっていた。特に生産するケーキの個数が増大すると一層手間がかかることになる。
多くのケーキを迅速且つ滑らかな切断面に仕上げるために、自動的にケーキ等を切断する切断装置が提案されている。このような切断装置の一例として、例えば特許文献1に記載のものがある。この切断装置は、トルテ台上に円形のケーキを載置し、水平方向に往復移動可能な刃体をケーキの上方で保持し、超音波振動を付与する。刃体は刃押さえローラによって上面と側面において支持され、ケーキの切断抵抗に関わらず刃体が曲がったりよじれたりしない。
そして、トルテ台駆動装置を作動させてケーキをトルテ台によって上昇させることで刃体がケーキに接触してケーキを切断する。このとき、刃体が超音波振動しているのでケーキの切断部にエネルギーが集中して切れ味よく切断される。そして、刃体の振動によって刃体にクリーム等が付着するのを抑制できる。
刃体の引き抜きの直前には拭取り装置のエアシリンダが作動して拭取り部材が刃体を両側から挟みつけ、刃体を引き抜くに従ってクリーム等の付着物が刃体からぬぐいさられて清浄化される。
そして、トルテ台駆動装置のインダクションモータが作動してトルテ台を所定角度回転させて停止させる。この位置で刃体によるケーキの切断が再度行われる。これを所定の角度づつ順次繰り返すことでケーキの切断が完了し、所定数の扇形ケーキが得られる。円形ケーキの分割数はトルテ台駆動装置によるトルテ台の回転角度を適宜の大きさに設定することで例えば8、10、12、14等分に設定できる。
【特許文献1】特公平5−45398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のケーキ等の切断装置では、刃体の往復動、刃体に対する超音波振動、トルテ台の上下動と回転等を全て自動制御で行うために、迅速に多量のケーキ等を切断できるが、構造が複雑で高価格になる。そのため、切断するケーキの数が少ない、比較的小規模の洋菓子工場や一般のケーキ店等ではコストの関係でこの種の自動式切断装置の導入が困難であるという問題がある。これに対し職人が全てのケーキを手作業で切断するのは刃体の切れ味を良好に維持するのが困難である上に切断作業に手間がかかって煩雑でコスト高になるという不具合があった。
【0004】
本発明は、このような実情に鑑みて、ケーキ等の食品を手作業よりも切れ味良く且つ効率的に切断できると共に全自動よりコストを低減できるようにしたケーキ等食品の切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による食品の切断装置は、ケーキ等の食品を載置する保持台と、該保持台を所定角度回転または所定距離移動させる駆動手段と、把持部を備えていて保持台上の食品を切断する刃部と、該刃部に対して超音波振動を与える超音波発生装置と、刃部を水平方向及び上下方向に移動可能なスライド機構とを備えていて、把持部を把持して刃部を水平方向及び上下方向に移動させることで食品を切断することを特徴とする。
本発明によれば、操作者が把持部を把持して刃部をスライド機構に沿って手動で水平方向に移動させ、更に上下方向に移動させることで保持台上の食品を超音波振動が与えられた刃部で切断し、更に水平方向及び上下方向に移動させて基準位置に戻す。そして駆動手段で保持台を所定角度回転させまたは所定距離移動させて、更に刃部を移動させることで順次食品を切断する。
【0006】
また、刃部をスライド機構によって水平方向及び上下方向に移動させることで駆動手段を駆動させる駆動スイッチを設け、該駆動スイッチの導通によって駆動手段で保持台を予め設定された所定角度だけ回転または所定距離だけ移動させるようにしてもよい。
刃部をスライド機構によって水平方向及び上下方向に往復移動させて食品の切断を行うボックスモーションに連動させて駆動スイッチを作動させ、食品を保持する保持台を所定角度回転させまたは所定距離移動させることで、食品を順次所定角度または所定長さづつに切断することができる。
【0007】
また、駆動手段には、保持台の回転角度を選択する回転角度設定手段が接続されている
ことが好ましく、食品の分割数を回転角度設定手段によって適宜設定することで選択した任意の数に分割できる。
また、駆動手段には、保持台の移動距離を選択する移動距離定手段が接続されていてもよく、食品の分割数を移動距離設定手段によって適宜設定することで選択した任意の数に分割できる。
また、刃部が食品切断後に保持台から離れた位置で駆動手段を駆動可能とするインデックス用スイッチを備えることが好ましい。これによって刃部が食品に入刀されている段階で保持台が回転したり移動したりして刃部と干渉する不具合を防止できる。
【0008】
また、把持部には超音波発生装置をON、OFFする超音波スイッチが備えられていてもよい。
操作者が刃部をスライド機構に沿って移動させて食品を切断するために把持部を把持した際に、超音波スイッチもONすることで、切断時に確実に超音波振動を刃部に与えて切れ味よく切断できて切り口が綺麗であり、把持部を離せば刃部の超音波振動も停止できるので刃部が不必要に超音波振動による熱をもつことがない。
或いは超音波スイッチは把持部とは別個に作動するように配置してもよい。
また、超音波振動によって刃部の切れ味が良くなり危険であるため、操作者の意志で超音波スイッチを操作して振動を停止できるようにした。
また、食品を切断した刃部を刃拭き部材で挟んで付着物を拭き取る刃拭き機構が設けられ、刃部で食品を切断する際に刃拭き部材が刃部を挟持し、該刃部が保持台から後退した位置で刃拭き部材を離間させるようにしてもよく、刃部による食品の切断に連動して切断後の刃部に付着する食品の付着物を除去できる。
【発明の効果】
【0009】
上述したように本発明による食品の切断装置は、刃部を把持して手動操作で水平移動と上下移動を行うことで食品を切れ味良く切断でき、駆動手段で食品を回転または移動させることで食品を順次切断できるため、自動切断装置と比較して構成が簡単で切断装置のコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第一実施の形態によるケーキ等の食品の切断装置を図1乃至図8により説明する。図1はケーキの切断装置の概略を示す要部斜視図、図2は図1に示す切断装置の要部側面図、図3は同じく要部平面図、図4は図2のA方向矢視図、図5はB方向矢視図、図6はインデックス板と光電センサの感知状態を示す要部斜視図、図7は切断装置の要部回路図、図8はケーキの切断工程を示すフローチャートである。
図1乃至図3に示すケーキの切断装置1は、基台2上に突出する円板状のトルテ台3に同軸に取付けられた交換可能な円形板状のトルテ皿4に円形のケーキKを載置し、基台2に対して水平方向及び上下方向に移動可能なスライド機構6に取付けられた刃部7によってケーキKを切断するようにした装置である。刃部7はスライド機構6による水平移動と上下動とを組み合わせることでボックスモーションする。ボックスモーションとは、図2に示すように刃部7に関し、後端の上昇位置を基準位置B1とし、トルテ台3方向に前進しトルテ皿4上のケーキK上方の前進位置B2、刃部7を降下させたケーキKの切断位置B3、後端まで後退させた後端位置B4という順序で順次刃部7を略四角形状に移動させる動作をいう。
なお、本明細書では、刃部7がトルテ台3方向へ移動することを前進、トルテ台3から離れる方向へ移動することを後退という。
トルテ台3は駆動手段としてのトルテ台回転手段8に設けられている。トルテ台回転装置8は、予め設定された所定角度づつトルテ台3をトルテ皿4と一体に回転させて停止した状態で、刃部7によってトルテ皿4上のケーキKを切断することができる。基台2の上面において、トルテ台3の近傍には降下位置にある刃部7を後退させる際にクリーム等の付着物を拭き取る刃拭き機構9が設けられている。
【0011】
次に、スライド機構6について図1乃至図4に沿って説明する。基台2の両側面2a、2aには断面略コ字形状のレール11、11が水平方向に配設され、各レール11には図示しない無限軌道のベアリングを介してスライド部材12がそれぞれ水平方向に摺動可能に嵌められている。これら一対のスライド部材12,12は板状の支持部材13によって連結されており、支持部材13は基台2の上面の延長面上を水平移動する。
支持部材13には孔を通して軸部材14が略垂直方向に貫通しており、上下動可能とされている。軸部材14の上部には支持台15が略水平に取付けられ、支持台15に略水平方向に延びる刃部7の基部7aが固定されている。支持部材13と支持台15の間で軸部材14には弾性部材として例えばコイルスプリング等のバネ部材10が圧縮状態で巻回されている。
基部7aの上部には操作者が刃部7を手動操作するための把持部16が固定されている。軸部材14の下端には拡径された押圧頭部17が固定され、支持台15の孔の裏面には軸部材14が挿通する中央孔を穿孔した上昇ストッパ18が固定されている。軸部材14が上昇する際に押圧頭部17が上昇ストッパ18に当接することで軸部材14の上昇を止める。
また支持台15の裏面には、軸部材14の両側に軸部材14と略平行にガイド軸20、20が垂下され、各ガイド軸20は支持部材13に設けた各孔を通して下方に延びており、刃部7を軸部材14で上下動させる際のガイドとなる。
スライド機構6において、レール11、ベアリングを備えたスライド部材12及び支持部材13は水平スライド機構6aを構成し、軸部材14、バネ部材10、支持部材13,支持台15、ガイド軸20,20は上下ガイド機構6bを構成する。刃部7の上部を覆うように略逆U字状の透明なカバー19がスライド部材12、12に取付けられており、スライド部材12、12と一体に前後動する。
【0012】
また、図4に示すように支持台15には例えば略階段状に屈曲する下降ストッパ21が設けられ、支持部材13上には刃部7が降下する際に下降ストッパ21で押圧されるリミットスイッチ22が設けられている。リミットスイッチ22がONすることで、後述のように刃拭き機構9が作動して刃部7を挟み込むことになる。なお、支持台15には下降ストッパ21と別に降下時に支持部材13に当接するストッパを設けてもよい。
図4において、支持部材13の裏面側には取付け金具23が設けられ、取付け金具23の側面には後述するトルテ台3用の駆動モータM1を駆動させるためのトリガーとして働く駆動スイッチ24が設けられている。そして刃部7がボックスモーションの後端位置B4である降下位置から上昇する際に軸部材14の押圧頭部17が駆動スイッチ24を叩くことで駆動モータM1を駆動開始させる。押圧頭部17は上昇ストッパ18に当接した状態では駆動スイッチ24から離間している。
また、刃部7の先端には図2、図3及び図5に示すように刃部7の降下をガイドする刃部ガイド機構26が設けられている。刃部ガイド機構26は一対のガイド棒26a、26aが基台2の上面の端部から略垂直に起立して設けられていて、ガイド棒26a、26a間を刃部7の先端が降下することで正確にケーキKを切断できる。
【0013】
次にトルテ台回転手段8について説明する。
ケーキKを載置するトルテ皿4の表面は円形のケーキKの分割数に応じて周方向に等間隔に溝4aが形成されており(図3では8分割)、各溝4aのうちの刃部7と略同一垂直面内の溝4a内に刃部7が進入することでケーキKを完全に切断できる。トルテ皿4はケーキKの分割数に応じて溝4aの数が対応するものに交換する。トルテ台3の中心を支持する回転軸28は基台2内に延びて下端を回転可能に支持されており、その途中段階には所定間隔で1または複数枚(図では4枚)の円形のインデックス板29a、29b、29c、29dが同軸に取付けられている。回転軸28に隣接してインデックス用モータM1が配設され、その出力軸30と回転軸28とがプーリ31a、31bと無端ベルト32によって連結されていてインデックス用モータM1の回転を回転軸28に伝達する。
ここで、回転軸28において、例えば最下端のインデックス板29aはケーキを8分割するためのものであり、図6に示す8つの切り欠け33aと突起33bが所定間隔で交互に配列されている。インデックス板29aの端部を挟んで上下に発光部と受光部を備えた光電センサ34が設けられ、インデックス用モータM1が回転開始した際に光電センサ34の発光がインデックス板29aの突起33aで遮光されるとモータM1が停止させられ、トルテ皿4が1/8回転して停止することになる。これによって刃部7でケーキKを8分割切断できる。
因みにインデックス板29b、29c、29dはそれぞれケーキKを10分割、12分割、14分割できるように分割数に応じた数の切り欠け33aと突起33bが配列され、各突起33bを検知する光電センサ34、…も設けられている。トルテ皿4についても、ケーキKの分割数に応じて半径方向の溝4aが8条、10条、12条、14条設けられたものを用意して選択されたケーキKの分割数に応じて交換する。そして、基台2の一方の側面2aにはケーキKの分割切断数を設定するための選択スイッチ35が設けられている。
ここで、光電センサ34、選択スイッチ35、インデックス板29a〜29dは回転角度設定手段を構成する。
【0014】
次に刃拭き機構9について図2,3,5を中心に説明する。
図において、刃拭き機構9はトルテ台3と支持部材13との間に配設され、一対の取付け金具36、36に固定された拭取り部材37、37が降下位置にある刃部7を挟んで対向して進退可能に設けられている。各取付け金具36の背面側にはそれぞれソレノイド38が設けられていて、ソレノイド38のON,OFFによって刃部7を拭取り部材37,37で挟持したり離間することになる。
各ソレノイド38は支持部材13に設けたリミットスイッチ22が刃部7の降下時に下降ストッパ21で押されることでONし、刃部7を挟持する。
【0015】
また、図2、4,5において、基台2の一方の側面2aの後端部には上述のソレノイド38をOFFするためのソレノイドオフ用スイッチ40が設けられている。更にソレノイドオフ用スイッチ40の上側にはインデックス用スイッチ41が配列されている。そして、一方のスライド部材12の下側にはスライド部材12の進退位置に応じて両スイッチ40,41をON,OFFする制御板42が取付けられている。
この制御板42は、スライド部材12が後端部まで後退した後端位置B4では両スイッチ40、41から外れて開放し、この状態でソレノイドオフ用スイッチ40はONとなってソレノイド38がOFFになり、インデックス用スイッチ41はON状態になってインデックス用モータM1を作動可能状態とする。他方、スライド部材12が後端位置から前進移動を開始してケーキKを切断するための前進位置B2へ到達するまでの間では制御板42は両スイッチ40,41を押圧状態に維持する。この状態でソレノイドオフ用スイッチ40はOFFとなってソレノイド38が作動可能となり、インデックス用スイッチ41はOFF状態になってインデックス用モータM1を停止状態に保持する。
【0016】
また、スライド機構6の把持部16には、刃部7に超音波振動を発振させるための超音波スイッチ43が設けられ、この超音波スイッチ43は図示しない回線または無線を介して超音波発信装置44に電気的に接続されている。操作者が刃部7の把持部16を把持する際に超音波スイッチ43も同時に把持することで超音波発生装置44がONとなり、刃部7が超音波振動する状態になる。
【0017】
次に図7に基づいて切断装置1の回路系統図について説明する。
切断装置1の回路46では、電源に接続された刃拭き機構9の一対のソレノイド38、38は支持部材13に設けた常開のリミットスイッチ22と常閉のソレノイドオフ用スイッチ40とが直列に接続されており、刃部7の降下でリミットスイッチ22が降下ストッパ21で押されてONすると、一対のソレノイド38,38が作動して刃部7を拭取り部材37、37で挟み込む。スライド部材12が後端位置に到達すると制御板42からソレノイドオフ用スイッチ40が開放されてソレノイド38,38が遮断される。
また電源に接続された駆動スイッチ24とインデックス用スイッチ41が直列に接続され、更に駆動スイッチ24と選択される光電センサ34が並列接続されている。スライド部材12が後端位置B4に到達して制御板42から開放されたインデックス用スイッチ41がONし、更に刃部7が上昇することで駆動スイッチ24がONすることをトリガーとしてモータM1が駆動し、選択された光電センサ34によってインデックス板29a〜29dのいずれかの切り欠け33aを発光部の光が通過する時間通電して所定角度だけ回転軸28及びトルテ台3を回転させる。
【0018】
本実施の形態によるケーキKの切断装置1は上述の構成を備えており、次に図2及び図8を中心にしてケーキKの切断方法について説明する。
図2において、刃部7は上昇した基準位置B1にあり、この状態でケーキKの分割数に応じて選択したトルテ皿4上に略同心に円形のケーキKを載置する。また選択スイッチ35を操作してケーキKを何等分するかを指示する。ここでは例えば8等分するものとし、インデックス円板29aを選択して通電可能状態に設定する。この状態で操作者が刃部7の把持部16を把持すると共に超音波スイッチ43も握ってONすると、超音波発生装置44が励起発振して刃部7を超音波振動させる(ステップ101)。
そして操作者が刃部7を押して前進させると、スライド機構6は基台2の両側面2a、2aに位置するレール11,11に沿ってスライド部材12、12が摺動し支持部材13と共に刃部7が前進する(ステップ102)。スライド部材12がレール11上の図示しない前側ストッパに当接した前進位置B2で刃部7の先端は刃部ガイド機構26のガイド板26a、26a間に進入し、刃部7はケーキKの真上にある。
【0019】
この状態で把持部16を押動して刃部7を降下させる(ステップ103)と、バネ部材10の付勢力に抗して支持板15が降下して軸部材14及びガイド部材20,20が支持部材13に穿孔した孔を通して略垂直に降下する。刃部7が溝4a内に進入することでケーキKを切断する。このとき、刃部7は超音波振動しているため、ケーキKの切断面に大きなエネルギーが集中的に付与されてケーキKが切れ味よく切断されると共に振動のために刃部7にクリーム等の付着物が付着するのを抑制できる(ステップ104)。
刃部7の降下によって、支持部材13に設けた下降ストッパ21がリミットスイッチ22をONさせるため、刃拭き機構9に設けた一対のソレノイド38,38が作動して拭取り部材37,37で降下した刃部7を挟み込む(ステップ105)。
次いで、把持部16を後退方向に水平移動させると、スライド部材12、12がレール11,11に沿って後退移動し、刃部7の先端は刃部ガイド機構26から外れる(ステップ106)。刃部7が後退作動すると拭取り部37,37で刃部7に付着したクリーム等がぬぐい去られる。そしてスライド部材12がレール11の図示しない後側ストッパに当接する後端位置B4に到達すると、一方のスライド部材12に設けた制御板42からソレノイドオフ用スイッチ40とインデックス用スイッチ41が外れて開放される(図2参照)。
【0020】
ソレノイドオフ用スイッチ40が制御板42から開放されることで、刃拭き機構9のソレノイド38、38がOFFとなり、拭取り部材37,37が刃部7から離間する(ステップ107)。インデックス用スイッチ41が制御板42から開放されるとON状態になる。そして操作者が把持部16を離すまたは上昇させると、バネ部材10の付勢力で刃部7が軸部材14及びガイド軸20,20と共に支持部材13の各孔に沿って基準位置B1まで上昇する(ステップ108)。把持部16を上昇させる際に、超音波スイッチ43を離すことで超音波発生装置44がOFFになり、刃部7の振動が停止する(ステップ109)。
刃部7が後端位置B4から上昇すると、軸部材14の下端に設けた押圧頭部17が駆動スイッチ24を叩くのでON状態になり、これをトリガーとして直列に接続された駆動スイッチ24とインデックス用スイッチ41を導通して電流が駆動モータM1に流れる。トルテ台回転手段8において、駆動モータM1が駆動し回転軸28が回転する(ステップ110)と、予め選択されたインデックス板29aの回転に対向する光電センサ34が発光して切り欠け部33aでは受光部で受光して駆動モータM1が通電状態を維持し、突起33bによって発光が遮光されると光電センサ34で感知し(ステップ111)通電が遮断されて駆動モータM1が停止する。そのため、トルテ台3及びトルテ皿4は所定角度(1360°/8)回転して停止する。
図2に示すように刃部7を手動操作で基準位置B1〜後端位置B4までボックスモーションさせることで1回の切断動作を終了する(ステップ113)。
このような動作を順次繰り返すことで、ケーキKを8等分に切断することができる。
【0021】
上述のように本実施形態によるケーキKの切断装置1によれば、刃部7の把持部16を操作者が把持して手動操作によりボックスモーションすることで、ケーキKを自動的に所定角度づつ回転させて切断作業を繰り返し行えるから、容易に所定数に分割切断することができる。しかも刃拭き機構9による切断後の刃部7に付着したクリーム等の除去も自動的に行える。そのため、刃部7の自動移動機構をなくして構成を簡略化できると共に製造コストを低廉にできるから、小規模の洋菓子工場や洋菓子店等でも採用できる。
また、ケーキKを載置したトルテ皿4やトルテ台3の回転による次の切断位置の設定については、刃部7が後端位置B4に後退し且つ刃部7を基準位置B1に向けて上昇させることで初めて回転作動するため、ケーキKが誤って刃部7と干渉するおそれがなく安全である。
【0022】
次に本発明の第二実施形態によるケーキの切断装置50を図9及び図10により説明するが、上述の切断装置1と同一、同様の部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。図9はケーキを切断する状態を示す要部斜視図、図10は図9に示す切断装置のテーブル移動手段を示す図である。
本実施形態による切断装置50は円形のケーキKに代えて直方体形状や円柱状、角柱状等のケーキK2を一方向に例えば8,10,12,14等分に切断するものである。切断装置50による切断に際して、図9に示すように、例えば直方体形状のケーキK2を一方向に移動可能なテーブル51(保持台)上に載置する。テーブル51の表面にはゴム等の弾性シートが敷かれている。ケーキK2の切断時には第一実施形態と同様にボックスモーションする刃部7が切断位置B3でテーブル51の弾性シートを押すまで降下することでケーキK2を切断できることになる。
【0023】
本実施形態による切断装置50は、トルテ台回転手段8及びトルテ台3の部分で第一実施形態による切断装置1と相違する。即ち、基台2の上面にテーブル51を含むスライドユニット52が取付けられている。更に、切断装置50において、上述のトルテ台回転手段8と略同一構造を有するテーブル移動手段53は、モータM1の回転を伝達する回転軸28の上部にトルテ台3に代えて大径のギヤ54を一体回転するように固着している。
また、基台2上のスライドユニット52には一対のスライドレール55、55が対向配置されている。このスライドレール55,55間にはスライド板56が摺動可能に保持されており、スライド板56にはテーブル51の下面に連結された軸部57が垂直方向に形成されている。そして、軸部57の途中部分にはスライドレール55の長手方向に延びるラック58が図示しないボルト等で連結され、このラック58の片面に形成された歯部58aはギヤ54の外周面に形成した歯部54aに噛合している。
図10において、ラック58は紙面に直交する方向に延びており、ギヤ54を介して駆動モータM1の回転力を受けてテーブル51及びスライド板56をスライドレール55,55にガイドされつつ紙面に直交する方向に進退させる。
【0024】
テーブル移動手段53によってテーブル51上のケーキK2を予め設定された所定距離だけ直線移動させた状態で刃部7によってケーキK2を切断する。ケーキK2の切断間隔を調整するためにテーブル51を交換する必要はなく、回転軸28において、例えばインデックス板29a、29b、29c、29dのいずれかを基台2の側面2aに設けた選択スイッチ35によって選択する。
インデックス板29a、29b、29c、29dはそれぞれケーキK2を8分割、10分割、12分割、14分割できるように分割数に応じた数の切り欠け33aと突起33bが配列され、各突起33bを検知する光電センサ34、…も設けられている。
ここで、光電センサ34、選択スイッチ35、インデックス板29a〜29dは移動距離設定手段を構成する。
【0025】
本実施の形態によるケーキK2の切断装置50は上述の構成を備えており、次にケーキK2の切断方法についてテーブル移動手段53に基づいて説明する。その余の機構とその作用は上述の第一実施形態と同一である。
図9,図10において、刃部7が基準位置B1にある状態で、テーブル51上の所定位置に略直方体または筒状のケーキK2を載置する。また、選択スイッチ35によってケーキK2を何等分するかを指示すると、インデックス板29a〜29dのいずれか及びその光電センサ34が選択される。
そして操作者が刃部7を把持してボックスモーションさせ、前進位置B2で刃部7をケーキKの真上に持ちきたす。この状態で把持部16を押動して超音波振動する刃部7をテーブル51に当たるまで降下させ、ケーキK2を切断する。刃部7の降下によって、下降ストッパ21がリミットスイッチ22をONさせるため、一対のソレノイド38,38が作動して拭取り部材37,37で降下した刃部7を挟み込む。
次いで、把持部16を後退方向に水平移動させると、拭取り部37,37で刃部7に付着したクリーム等がぬぐい去られる。
【0026】
刃部7を後退位置B4まで後退させると、インデックス用スイッチ41が制御板42から開放されてON状態になる。そして操作者が把持部16を離すまたは上昇させると、刃部7が後退位置B4から基準位置B1まで上昇する。刃部7が後端位置B4から上昇すると、押圧頭部17が駆動スイッチ24を叩くのでON状態になり、これをトリガーとして直列に接続された駆動スイッチ24とインデックス用スイッチ41を導通して駆動モータM1が駆動する。
そして、テーブル移動手段53において、駆動モータM1の駆動によって回転軸28が回転するとギヤ54を介してラック58に回転が伝達され、ラック58はガイド板56がガイドレール55、55にガイドされつつ直線移動する。これと一体にテーブル51及びケーキK2が長手方向に直線移動する。次いで、予め選択されたいずれかのインデックス板、例えばインデックス板29aが所定角度回転した後に、光電センサ34で突起33bを感知することで通電が遮断されて駆動モータM1が停止する。そのため、テーブル51及びケーキK2は所定距離だけ移動して停止する。このように、刃部7を手動操作で基準位置B1〜後端位置B4までボックスモーションさせることで1回の切断動作を終了する。
その後、刃部7を手動操作することで、ケーキK2について次の切断を行うことになる。このような動作を順次繰り返すことで、ケーキK2を8等分等、適宜の個数に切断することができる。
【0027】
上述のように本実施形態によるケーキKの切断装置50によれば、直方体や柱状のケーキK2についても、テーブル移動手段53によってテーブル51を所定距離づつ直線移動させては、刃部7を手動操作してボックスモーションすることで順次切断できる。そして、第一実施形態による切断装置1と同様な作用効果を奏する。
【0028】
なお、上述の各実施形態ではトルテ台3及びトルテ皿4、またはテーブル51は駆動モータM1、インデックス用スイッチ41,駆動スイッチ24によって自動回転または自動直線移動するように構成したが手動で回転させるようにしてもよい。この場合、例えば固定保持されたトルテ台3に対してトルテ皿4、テーブル51を回転可能または直線移動可能に支持してクリック機構等で設定された角度または間隔の切断位置に位置決めするようにすればよい。
またトルテ皿4に溝4aを設けなくても良く、この場合、表面にゴム等の弾性シートを貼ることが好ましい。同様にテーブル51に分割数に応じた溝を所定間隔で設けてもよい。
なお、上述の実施形態ではケーキK、K2の切断装置1、50について説明したが、ケーキK、K2に代えてサンドイッチ、マス寿司等、各種の食品の切断装置に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施の形態によるケーキの切断装置を示す要部斜視図である。
【図2】図1に示す切断装置の要部側面図である。
【図3】図1に示す切断装置の要部平面図である。
【図4】図3に示す切断装置のA方向矢視図である。
【図5】図3に示す切断装置のB方向矢視図である。
【図6】インデックス板と光電センサの感知状態を示す要部斜視図である。
【図7】切断装置の要部回路図である。
【図8】ケーキの切断工程を示すフローチャートである。
【図9】第二の実施の形態によるケーキの切断装置を示す部分斜視図である。
【図10】図9に示す切断装置のテーブル移動手段の要部説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1、50 切断装置
2 基台
3 トルテ台(保持台)
4 トルテ皿(保持台)
4a 溝
6 スライド機構
6a 水平スライド機構
6b 上下スライド機構
7 刃部
8 トルテ台回転手段(駆動手段)
9 刃拭き機構
11 レール
12 スライド部材
14 軸部材
16 把持部
17 押圧頭部
22 リミットスイッチ
24 駆動スイッチ
29a、29b、29c、29d インデックス板(回転角度設定手段、移動距離設定手段)
34 光電センサ(回転角度設定手段、移動距離設定手段)
35 選択スイッチ(回転角度設定手段、移動距離設定手段)
40 ソレノイドオフ用スイッチ
41 インデックス用スイッチ
43 超音波スイッチ
44 超音波発生装置
46 回路
51 テーブル(保持台)
53 テーブル移動手段(駆動手段)
54 ギヤ
58 ラック
K、K2 ケーキ(食品)
M1 駆動モータ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ等の食品を載置する保持台と、該保持台を適宜角度回転または適宜距離移動させる駆動手段と、把持部を備えていて前記保持台上の食品を切断する刃部と、該刃部に対して超音波振動を与える超音波発生装置と、前記刃部を水平方向及び上下方向に移動可能なスライド機構とを備えていて、
前記把持部を把持して刃部を水平方向及び上下方向に移動させることで食品を切断することを特徴とする食品の切断装置。
【請求項2】
前記刃部をスライド機構によって水平方向及び上下方向に移動させることで前記駆動手段を駆動させる駆動スイッチを設け、該駆動スイッチの導通によって前記駆動手段で前記保持台を予め設定された所定角度だけ回転または所定距離だけ移動させるようにした請求項1に記載の食品の切断装置。
【請求項3】
前記駆動手段には、前記保持台の回転角度を選択する回転角度設定手段が接続されている請求項1または2に記載の食品の切断装置。
【請求項4】
前記駆動手段には、前記保持台の移動距離を選択する移動距離定手段が接続されている請求項1または2に記載の食品の切断装置。
【請求項5】
前記刃部が食品切断後に前記保持台から離れた位置で前記駆動手段を駆動可能とするインデックス用スイッチを備えた請求項1乃至4のいずれかに記載の食品の切断装置。
【請求項6】
前記把持部には超音波発生装置をON、OFFする超音波スイッチが備えられている請求項1乃至5のいずれかに記載の食品の切断装置。
【請求項7】
前記食品を切断した刃部を刃拭き部材で挟んで付着物を拭き取る刃拭き機構が設けられ、前記刃部で食品を切断する際に刃拭き部材が刃部を挟持し、該刃部が保持台から後退した位置で刃拭き部材を離間させるようにした請求項1乃至5のいずれかに記載の食品の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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