説明

食品の加熱処理方法と装置

【課題】短時間に美味しくかつ長持ちするように処理できるようにする。
【解決手段】水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管1に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43として放出し、これと電熱管1からの輻射熱に食品42を曝す第1の工程と、マグネトロン51から発振するマイクロ波52に前記食品42を曝す第2の工程と、により食品42を加熱処理することにより、上記の目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品につき煮炊、澱粉のα化による糊化、蒸し、炊飯、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった加熱調理を始めとする各種の加熱処理の中の少なくとも1つの加熱処理を過熱水蒸気を含む水系熱媒体、それを生成する発熱体からの輻射熱、およびマイクロ波の3つを併用して行う食品の加熱処理方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気により食品の調理や殺菌などの加熱処理を行うことが従来から知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。過熱水蒸気によると微酸素状態での酸化、発火を抑制した加熱処理ができ、過熱度によって降温しても気体状態を維持させ、焼き、焙煎、乾燥ができる。しかも、単位体積当りの熱容量が例えば同じ温度の熱風の場合に比し約4倍と大きく、赤外線輻射による熱放射性のガス特性も加わって、少量にて処理時間が短縮する。
【特許文献1】特開平06−042750号公報
【特許文献2】特開平06−090677号公報
【特許文献3】特開平08−128639号公報
【特許文献4】特開2001−061655号公報
【特許文献5】特開2004−041098号公報
【特許文献6】特開2002−022107号公報
【特許文献7】特開2002−206868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のものは、オーブンレンジなどの加熱調理装置に、庫内の負圧と過大圧力の双方を防止する手段を設けて、調理物から発生する水蒸気を庫内加熱手段により加熱し過熱水蒸気として調理物に及ばせ調理時間の短縮と省エネルギーを実現するもので、庫内温度500℃程度で180℃以上の過熱水蒸気となるとしているが、広い庫内で食品から自然発生する蒸気を加熱するものであるので、過熱水蒸気量、水蒸気の過熱度共に低く調理への貢献度は十分でない。また、バッチ処理しかできない。
【0004】
特許文献2に記載のものは、水蒸気発生器で発生させた水蒸気を、加熱器での拘束を伴い100℃〜350℃に加熱した過熱水蒸気を調理容器内に供給し、食物を調理するもので、調理容器には内部を大気圧とするためのパイプを接続してあり、常圧での十分な量および過熱度が得られる過熱水蒸気により設定した過熱度に応じた各種調理はできるが、バッチ処理しかできない。また、調理容器外の加熱器で水蒸気を加熱するのでは熱効率はまだ低く、熱エネルギーが十分に生かし切れないし、調理容器への外部からの過熱水蒸気の噴き込みによっては過熱水蒸気の噴き込み時の放熱が大きいために調理容器内の温度を上げ難く熱効率、調理効率が低い。
【0005】
特許文献3に記載のものは、1つの調理装置内に誘導加熱方式の飽和水蒸気生成室、その上に飽和水蒸気生成室からの飽和水蒸気を受け入れて赤外線ヒータにより過熱水蒸気として排出する過熱水蒸気生成室、その上に赤外線ヒータを持ち、また、過熱水蒸気生成室からの過熱水蒸気を受け入れて加熱調理を行う加熱調理室を備え、飽和水蒸気生成室での解凍、蒸し調理と加熱調理室での加熱調理とが互いの影響なしに行えるようにするものであるが、バッチ処理しかできない。また、飽和水蒸気生成室で生成した飽和水蒸気を過熱水蒸気生成室に流入させてそこに滞留している間に赤外線ヒータで加熱して過熱水蒸気として加熱調理室へ抜けていくようにするだけで過熱対象蒸気の拘束は弱く、加熱効率も低いため、過熱水蒸気量、過熱度共に低い上、過熱水蒸気生成室から加熱調理室へ過熱水蒸気が流入するときの放熱が大きいために調理容器内の温度を上げにくく、熱効率、調理効率が低い。
【0006】
特許文献4、5に記載のものは、コンベアによって食品を搬送しながら過熱水蒸気が噴射される調理室内を通過させることにより、連続調理できるようにしたものであるが、調理室の外で生成した過熱水蒸気を、配管を通じて調理室内各部に分散して噴き込み排気するもので、飽和水蒸気を過熱水蒸気に加熱する熱効率がまだ低い分だけ、熱エネルギーが十分生かしきれないし、外部から過熱水蒸気を噴き込む方式でその噴き込み時の過熱水蒸気の放熱が大きいために調理容器内の温度を上げ難く熱効率、調理効率が低い。また、配管および噴射構造が複雑になる。
【0007】
特許文献6に記載のものは、底部から電磁誘導加熱される蒸気発生容器で発生させた飽和水蒸気を、蒸気発生容器の外側に設けた蒸気過熱容器と蒸気発生容器との間の螺旋通路に通して、蒸気過熱容器のその胴部外まわりの断熱材を介した電磁誘導加熱により過熱し、小型で容易に過熱水蒸気を発生させられるようにしたものであるが、生成した過熱水蒸気は調理室にその外部から供給するしかなく、過熱水蒸気生成時の熱効率が幾分高まるにしても飽和水蒸気を過熱水蒸気に加熱する熱効率がまだ低い分だけ、熱エネルギーが十分生かしきれないし、外部から過熱水蒸気を噴き込んだ時の放熱が大きいために調理容器内の温度を上げにくく熱効率、調理効率が低い。
【0008】
特許文献7に記載のものは、蓋をボルト止めした処理容器内に被処理体収納部を囲うように螺旋状に配した加熱ヒータ内に水蒸気を通して拘束力、熱効率よく過熱水蒸気とし、この過熱水蒸気と加熱ヒータからの輻射熱との双方を被処理体の加熱源として働かせてコーヒー豆の焙煎など熱効率、処理効率高く加熱処理するもので、数十ボルトの直流または交流電源を採用し、200V〜400Vの大電流を通電させることで800℃程度に収納部を昇温させられるとしているが、バッチ処理しかできないし、その1回1回の作業が蓋の開閉を伴うなど容易でなく手間が掛かる。従って、大量処理には向かない。
【0009】
しかも、上記のものはいずれも、構造が複雑で大型かつ高価なものになる共通した課題を有している。
【0010】
そこで、本発明者は、例えば蒸気を通して過熱水蒸気にする電熱管を平面域に配管して、嵩低く、被処理体が搬送されていてもその直近から、電熱管からの輻射熱と過熱水蒸気とに食品を曝して熱効率、処理効率よく加熱処理できるようにする加熱処理方法と装置を先に提案している。
【0011】
しかし、その後本発明者は、食品の加熱処理、特に微妙な加熱処理となる炊飯を、よより迅速に、よりむらなく、より美味しく炊き上げ、また、美味しさを長持ちさせることを目指し、試行錯誤しながらも過熱水蒸気の高温による加熱性、無、微酸素による3酸化防止性は得られても、ある時間の間内部での昇温むらがなお解消されず、時間を掛け内部の十分なα化は達成できるにしても昇温の時間差に起因する処理差が生じていて、処理時間のさらなる短縮、美味しさのさらなる増大の妨げになっていることが判明した。
【0012】
そこで、過熱水蒸気を含む水系熱媒体、それを生成する発熱体からの輻射熱、およびマイクロ波の3つを併用することを着眼し、本発明をなすに至った。
【0013】
本発明の目的は、上記のような新たな知見に基づき、短時間に美味しくかつ長持ちするように処理できる食品の加熱処理方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の食品の加熱処理方法は、水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気として放出し、これと電熱管からの輻射熱に食品を曝す第1の工程と、マグネトロンから発振するマイクロ波に前記食品を曝す第2の工程と、により食品を加熱処理することを特徴としている。
【0015】
このような構成では、通電により発熱する電熱管に水、温水または飽和水蒸気を通して加熱し放出する常圧となった温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気と、発熱する電熱管からの輻射熱とに、食品を曝して、過熱蒸気を用いる場合でも特別な圧力管理の必要無しに食品を外部から加熱性よく酸化を防止して加熱処理することができ、しかも、前記食品をマグネトロンから発振されるマイクロ波にも曝して内部をも加熱処理するので、「ある時間の間内部までの昇温むらが解消されず、時間を掛け内部の十分なα化は達成できるにしても昇温の時間差に起因する処理差が生じる」という、外部からの加熱処理の弱点を補完することができる。
【0016】
このような方法は、食品を搬送する搬送手段と、水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気として放出して、これと電熱管からの輻射熱に前記搬送される食品を曝して加熱処理する第1の加熱手段と、マグネトロンからマイクロ波を発振して、これに前記搬送される食品を曝して加熱処理する第2の加熱手段と、を備えたことを特徴とする食品の加熱処理装置によって自動的に達成することができる。
【0017】
第1の工程と第2の工程とは、静止または移動する食品に対して同時か、あるいは前後したまたは交互の繰り返しとなる異時にて行うことができる。
【0018】
同時では、同じ処理空間を共用して2つの加熱処理を同時進行させられるし、同時進行中の2つの加熱処理の実行時間配分によって、あるいは特定の加熱処理を先行させることで、互いの補完バランスを取ることができる。異時では、互いの加熱処理機能の安全を単独に図りながら加熱処理を補完し合えるし、交互の繰り返しでは一方の加熱処理が過度に先行して補完バランスを崩すようなことを回避できる。また、特定の加熱処理を先行させ、あるいは加熱処理回数を増大して互いの補完バランスを取ることもできる。
【0019】
それには、第1の加熱手段と第2の加熱手段とは、食品の移動方向に順次または交互に繰り返し配置されたものとすればよく、特定の加熱手段は先行して、またはおよび、多く配置されているものとすることができる。
【0020】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面の記載によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ自体単独で、あるいは可能な限り種々な組合せで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の食品の加熱処理方法と装置の特徴によれば、通電により発熱する電熱管に水、温水または飽和水蒸気を通して加熱し放出する常圧となった温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気と、発熱する電熱管からの輻射熱とに、食品を曝すだけで特別な圧力管理の要らないが酸化なく焦がし等にも至れる効率のよい外部からの加熱処理と、食品を簡単な装置となるマグネトロンから発振されるマイクロ波に曝して外部加熱で弱点となる内部を加熱する内部加熱処理とによって、食品に必要な加熱処理が内部のほぼ均一な昇温を伴い短時間にむらなく美味しく達成でき、高い酸化防止性、殺菌性を伴い美味しさも長持ちする。具体的には、理想的な炊飯が安価な装置で短時間に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の食品の加熱処理方法と装置の実施の形態につき、図1〜図3を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0023】
本実施の形態の、食品の加熱処理方法は、食品につき煮炊、澱粉のα化による糊化、蒸し、炊飯、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった各種の加熱調理を始めとする少なくとも1つの加熱処理を主として過熱水蒸気とマイクロ波とにより行うものである。処理が蒸しである場合など、必要に応じて過熱水蒸気に代えて、飽和水蒸気や温水を用いることができる。
【0024】
本実施の形態の食品の加熱処理方法は、図1に示す食品の加熱処理装置を参照して、水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管1に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43として放出し、これと電熱管1からの輻射熱44とに食品42を曝す第1の工程と、マグネトロン51から発振するマイクロ波52に前記食品42を曝す第2の工程と、により食品42を加熱処理する。このようにすると、通電により発熱する電熱管1に水、温水または飽和水蒸気を通して加熱し放出する常圧となった温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43と、発熱する電熱管1からの輻射熱44とに、食品42を曝して、過熱水蒸気43を用いる場合でも特別な圧力管理の必要無しに食品42を外部から加熱性よく酸化を防止して加熱処理することができ、しかも、前記食品42をマグネトロン51から発振されるマイクロ波52にも曝して内部をも加熱処理するので、「ある時間の間内部までの昇温むらが解消されず、時間を掛け内部の十分なα化は達成できるにしても昇温の時間差に起因する処理差が生じる」という、外部からの加熱処理の弱点を補完することができる。
【0025】
この結果、通電により発熱する電熱管1に水、温水または飽和水蒸気を通して加熱し放出する常圧となった温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43と、発熱する電熱管1からの輻射熱44とに、食品42を曝すだけで特別な圧力管理の要らないが酸化なく焦がし等にも至れる効率のよい外部からの加熱処理と、食品42を簡単な装置となるマグネトロン51から発振されるマイクロ波に曝して外部加熱で弱点となる内部を加熱する内部加熱処理とによって、食品42に必要な加熱処理が内部のほぼ均一な昇温を伴い短時間にむらなく美味しく達成でき、高い酸化防止性、殺菌性を伴い美味しさも長持ちする。具体的には、炊飯では、米の内部の全体をほぼ時間差なく外部および内部から迅速に昇温させて、ほぼ同時にα化を終えることができ、理想的な炊飯が安価な装置で短時間に達成できる。近時の機械洗米されて洗米の必要のないいわゆる無洗米を、浸漬や洗米による吸水のない状態で炊飯しても米全体の十分なα化が早期に達成される。
【0026】
このような方法は、図1に示すように、食品42を搬送する例えばステンレスメッシュ等を利用した通気性のある搬送手段32と、水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管1に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43として放出して、これと電熱管1からの輻射熱44に前記搬送される食品42を曝して加熱処理する第1の加熱手段30と、マグネトロン51からマイクロ波52を発振して、これに前記搬送される食品42を曝して加熱処理する第2の加熱手段53と、を備えた食品の加熱処理装置によって自動的に達成することができる。
【0027】
しかし、第1の工程と第2の工程とは、搬送手段32を用いないで静止している食品42、あるいは搬送手段32の搬送などによって移動する食品42に対して、同時か、あるいは前後したまたは交互の繰り返しとなる異時にて行うことができる。同時では、同じ処理空間を共用して2つの加熱処理を同時進行させられるし、同時進行中の2つの加熱処理の実行時間配分によって、あるいは特定の加熱処理を先行させることで、互いの補完バランスを取ることができる。異時では、互いの加熱処理機能の安全を単独に図りながら加熱処理を補完し合えるし、交互の繰り返しでは一方の加熱処理が過度に先行して補完バランスを崩すようなことを回避できる。また、特定の加熱処理を先行させ、あるいは加熱処理回数を増大して互いの補完バランスを取ることもできる。それには、第1の加熱手段30と第2の加熱手段53とは、食品42の搬送方向に順次または図1に示すように交互に繰り返し配置されたものとすればよく、特定の加熱手段、具体的に第2の加熱手段53は他の従って第1の加熱手段30に先行して、またはおよび、多く配置されているものとすることができる。第2の加熱手段53はマイクロ波の周りへの影響を防止する措置をしたケーシング54が必要なものであるし、装置が小型なものでよいが、移動する食品42に対しては処理時間は通過時間に等しく長い時間が取れないので、設置数を多くして加熱処理回数を増やすことで、第1の加熱手段30による外部加熱をバランス良く補完できるようになる。また、第2の加熱手段53による内部加熱を第1の加熱手段30による外部加熱に先行させることで、食品42の内部の昇温を保証しておき、第1の加熱手段30による高い温度、加熱性を持った外部加熱が先行して食品42の外部が先行して早期に昇温してしまうのを防止し、食品42の内外全体のほぼ同時の昇温、α化などの加熱処理が達成されやすくすることができる。
【0028】
ここで、第1の加熱手段30は、通電により発熱し供給され通される水、温水または飽和水蒸気を温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気にして放出し常圧で処理に供する電熱管1を、例えば図3に示すように平面域に配管して図2(b)に示すように食品42、あるいは図1に示すように食品42の搬送経路に対向させることにより、電熱管1からの輻射熱44に食品42を広域にてほぼ均等にさらすことができる。また、電熱管1の電熱管1の図3に示す蒸気放出口3には図2(a)(b)に示すように、電熱管1が放出する過熱水蒸気43を分散して食品42の側に放出ないしは噴出する多数のノズルを持ったノズル管5を接続して電熱管1の場合と同様平面域に配管し、食品42ないしは食品42の移動経路に対向させることで、食品42に向け広域にて同じ距離から過熱水蒸気43などを噴出して食品42を満遍なく曝すことができる。これによって第1の加熱手段30による過熱水蒸気43、輻射熱44による食品42に対する外部からの加熱処理がむらなく効率良く達成できる。
【0029】
もっとも、第1の加熱手段30は、図2に示すように断熱壁が囲ったキャビネット6内に電熱管1およびノズル管5を収容して使用上の熱的安全と、熱の外部への逃げを抑制して熱効率が低下しないようにしており、食品42の静止処理時の出し入れや、静止処理、移動処理を含めたメンテナンスのために、ヒンジ9などを中心に開閉できる断熱壁が囲った蓋11を設けて処理室13を形成し、限られた排出口12を通じてしか排出しないようにし、十分な接触時間と過熱水蒸気43の栓熱を奪いやすい相対移動とが図れる更新状態となるように過熱水蒸気43の流れの経路や流れの速度を制限している。しかし、図1に示す搬送手段32を有した装置では、キャビネット6には搬送手段32および食品42の出入り口も必要であるが、過熱水蒸気43を正圧を保つ程度にキャビネット6に噴出させ続ければ同様の条件が保てる。
【0030】
なお、図示する例では電熱管1は、図2(a)(b)、図3に示すように、図1(a)(b)の電熱管1における、図1(a)に示す蒸気供給口2側の図1(a)(b)において下側配管の上流部1aと、図1(a)に示す蒸気放出口3側の図1(a)(b)において上側配管の下流部1bとして、上下に重なる2つの平面域に配管することにより、入流する水や蒸気等を加熱し始める上流部1aに比べ過熱負荷が小さく高温に発熱する下流部1bを配管した平面域側を食品42に対向させ、電熱管1から放出する温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43と電熱管1からの輻射熱44とに、食品42を曝して加熱処理するようにしている。これにより、輻射熱44による加熱効率を均一に高められる。
【0031】
また、キャビネット6の過熱水蒸気43や輻射熱44を食品42に向ける開口、具体的には上端開口には過熱水蒸気43や輻射熱44は下から上方へ通すが、結露水や万一の調理上の汁類が上方から下方へ落ちるのを受けて、側方などに案内し排出処理などできるようにする図1、図2(b)に示すようなグリル格子7が設けられ、その上で、図1のような容器に入れない食品42や図2(b)に示すような食品42を入れた容器8を配置また搬送し、加熱処理ができるようにした場合の例を示している。さらに、図1では搬送手段32による食品42の搬送経路の上の空間を搬送方向に仕切る仕切り板45を設けて、過熱水蒸気43を捕捉しながらも更新を図って搬送される食品42との相対移動を促進し、食品42が過熱水蒸気43の潜熱をさらに奪いやすくしている。
【0032】
このようにして、処理室13内で電熱管1からの輻射熱44と、電熱管1に通して加熱し放出する常圧の過熱水蒸気43とに、食品42を曝して食品42を加熱処理するのに、電熱管1の発熱の低い上流部1aと発熱の高い下流部1bとを上下に重なった2つの平面域に配管するだけの特に複雑化や大型化しない形態にて、発熱の高い下流部1bを配管した平面域側を食品42に対向させて食品42を加熱処理するので、過熱水蒸気43と共に電熱管1からの強い輻射熱を、より均等に、効率よく、しかも食品42の搬送などを邪魔することなく、その食品42に及ぼすことができる。従って、電熱管1に通してその上流側ほど多くの熱量を奪って早期に立ち上がりながら下流側では必要な程度の過熱水蒸気43にして食品42に曝しながら、電熱管1からは過熱水蒸気43の昇温を伴い安定した高温状態、赤熱状態になる下流部1bのほぼ均一な輻射熱44を曝して、食品42を熱効率、処理効率よく、食品の種類や用途に応じた適度な水分量を保って適度に加熱処理することが、第2の加熱手段53でのマイクロ波52による内部加熱との交互加熱にて、容易かつ確実に短時間に達成することができる。もっとも、上流部1aも発熱して輻射熱44を発散するのでこれが食品42の側に及ぶのを下流部1bが邪魔しない図1、図2(a)に示すように上下で若干ずれる配管関係としている。
【0033】
特に、上流部1aと下流部1bとが、図1、図2(a)に黒塗りと白抜きとで区別して示した配管横に矢印を付しているように、それらへの通電方向が逆向きで対向し合うように配管して前記処理を行うようにしている。これにより、電熱管1に通電したときその周波数に応じた交番磁界がまわりに発生し、これは周波数の大小によって電気機器を誤動作させるノイズになったり、人体に影響したりするといわれているが、上流部1aと下流部1bとが互いに逆向きに通電される状態で対向し合っていることでそれらのまわりに生じる交番磁界を互いに打ち消し合わせることができ、電磁波のまわりへの影響を防止ないしは軽減することができる。図示する例では上流部1aと下流部1bとは渦巻状の配管で相互の接続部1cを渦巻の中心部に位置させることで上記のように対向し合う配管条件を満足しているが、上流部1aおよび下流部1bは同じ長さどうしで対向し合うようにすればより好ましい。
【0034】
一方、電熱管1はその飽和水蒸気などの供給方向で見た下流側ほど上流側に比べ熱を奪われにくく赤熱しやすいのを利用して、供給する水、温水、飽和水蒸気の種類や温度、流量、通電時の電圧、電流の大きさなどの設定により、下流部1bのほぼ全域が赤熱して輻射熱44を発生させ食品に作用させられ、少なくとも下流部1bを赤熱域とした食品42の加熱処理が容易に実現し輻射熱44による食品の加熱処理がむらなく均一に行えるようになる。
【0035】
なお、前記互いのずれは図示するように上流部1aを下流部1bよりもほぼ配管1本分だけ小さな経路径となるように配管して満足している。もっとも、過熱水蒸気43などを生成し放出するのに、電熱管1の赤熱する下流部1bは上流部1aよりも長い範囲に亘らせるのが食品の加熱効率上好ましい。これを配慮して食品42に対向する側に配管する下流部1bを、反食品42側に配管する上流部1aよりも長くして食品42に対する輻射熱の効用を高めている。しかし、配管の形態や長さの関係は特に問うものではない。
【0036】
上記のような食品の処理を行うのに、第1の加熱手段30における電熱管1に供給して過熱水蒸気43とする過熱水蒸気源として、水21を供給してヒータ22により加熱し飽和水蒸気を生成することができる蒸気発生装置23を接続し、ヒータ22および電熱管1の両端間に接続して通電を図るドライバ24、25、および第2の加熱手段53におけるマグネトロン51への通電を図るドライバ55をマイクロコンピュータなどの制御装置26によって、初期設定され、あるいは操作パネル27から入力された制御信号を基に制御するようにしている。制御は主としてヒータ22の駆動、駆動停止、駆動電流、電圧の制御、電熱管1の駆動、駆動停止、駆動電流、駆動電圧を制御する。ここに、蒸気発生装置23はヒータ22の駆動停止状態にて常温水を電熱管1に供給することができるし、ヒータ22を駆動して飽和水蒸気にして電熱管1に供給することもできる。また、ヒータ22の駆動電流や駆動電圧、通電のデューティ比を飽和水蒸気生成に必要な値未満に設定することで、その未満となる程度によって種々な温度の温水や熱水を電熱管1に供給することもできる。一方、電熱管1は駆動停止状態で蒸気発生装置23から供給される過熱水蒸気源をそのまま放出することができるし、駆動電流、駆動電圧、通電のデューティ比によってさらに温度を上げた温水、熱水、飽和水蒸気、過熱水蒸気43として放出することができ、電熱管1に供給する水21や飽和蒸気の電磁弁101を介した調節によって、それらの電熱管1による昇温度合いを調節することもできる。過熱水蒸気43は700℃〜800℃程度にまで昇温させることができ、食品42の担持間での加熱処理が可能になる。また、食品42の表面に焼きを与えられるし、食品42の水分を余り奪わない特徴がある。このとき、電熱管1は500℃程度以上で赤熱し温度の高い遠赤外線の輻射熱44を放射し、食品42を風味よく焦げ目を付けるのに好適となる。
【0037】
ところで、上記の図1、図2に示すような食品の加熱処理装置30を、図3に示すような食品42の搬送経路31の途中に配し、搬送される食品42を電熱管1からの輻射熱44および過熱水蒸気43などの放出蒸気に曝して処理するようにすると、前記のような特徴のある食品42の加熱処理が連続して自動的に進行させて行える。食品42は容器に入れないか、開放した容器に収容して搬送することにより、食品42は供給される蒸気ないしは過熱水蒸気に直接曝されるので、蒸気の種類に応じた効率のよい水分補給を受けながら飽和水蒸気または過熱水蒸気の潜熱と電熱管1の赤熱による遠赤外線の輻射熱44とによって設定通りに効率よく、風味よく調理される。
【0038】
この場合、特に、図3に示すように食品42として米を始めとする穀類を容器に入れないで搬送する通気性のあるステンレスメッシュなどよりなる搬送手段32により前記搬送経路31を形成し、この搬送手段32による搬送経路31の途中1箇所以上の上側またはおよび下側に前記加熱処理装置30を配置し、連続に炊き上げるようにすることができ、搬送経路31の途中に食品42の加熱処理装置30が設けられた位置および数、順位の違いに応じた、温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気43による水分と熱と、電熱管からの輻射熱44とに、搬送手段32が搬送する食品42を搬送手段42の通気性構造を生かして温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気43などの遮断なく通過性よく、効率良く曝して処理し、また、温水や結露水の溜まりによる液分過多による影響なく、穀類の種類、搬送量の違い、目的の違いなどに応じた、温水による浸漬、吸水、1回または同じ放出蒸気または異なった放出蒸気の違いを利用した、一次蒸しと二次蒸しなど2回以上の蒸し工程による、吸水、アルファ化をむら無く効率よく十分に満足して美味しいご飯類を極く短時間で、しかも必要な量まで連続して炊き上げられる。
【0039】
また、食品42の加熱処理装置30は、飽和水蒸気や過熱水蒸気43を放出して食品42を曝して加熱処理するには、蒸気放出の噴出勢力を利用して搬送される食品42の上側からでも下側からでも通気させられるし、上方への自然発散性も得られることから搬送経路31の下側に上向きで設置してもよいが、万一にも発生する結露水の強制的な分離を図るには、搬送経路31の上側に下向きで配置すると、万一にも結露水が穀類間や搬送手段32上に発生しても、それを放出する過熱水蒸気43などの放出勢力によって吹き通し、吹き落せるので液分過多の影響防止上好適である。第1の加熱処理手段30が温水や熱水を放出して食品42の加熱処理を行う場合は、特に、図3に仮想線で示すように搬送経路31の上側に下向きに設置して温水や熱水を食品42に搬送手段32の通液性、通気性を利用して掛け通す形式を採るのが、余分な液分切りに噴射エネルギと自然流下特性とを活かせるので好適である。特に、電熱管1から放出する温水はクラスタが微少となってマイナスイオンが発生するので、マイナスイオンによる殺菌効果も得られる。
【0040】
なお、図3に示す温水による加熱処理を行う仮想線で示す第1の加熱処理手段30と飽和水蒸気または過熱水蒸気43実線で示す加熱処理する加熱処理装置30とが上下に重なってもよいが、食品42に対して温水加熱処理と蒸気加熱処理とを個別に働かせるには食品42の搬送方向に位置ずれして配置するのが好適であり、位置ずれ度合ないしは重なり度合によっては一部同時処理、一部個別処理の使い分けもできる。また、搬送経路31の上側に下向きに設置される加熱処理装置30では、仕切り板45は不要である。さらに、搬送経路31の途中複数箇所で蒸気過熱処理をして、一次蒸し、二次蒸し、あるいはそれ以上の回数の蒸しを行うのに、上流側と下流側で同じ処理を繰り返させることはできるが、温水による加熱処理を省略するような場合は、特に、上流側の加熱処理装置30では低温の飽和水蒸気から過熱水蒸気43、従って100℃〜200℃程度の蒸気を供給して食品42の穀粒間を例えば下方から上方へ強制的に通過させながら、電熱管1からの適度な輻射熱44とにより、穀粒全体に高効率で芯までの吸水を最低限、あるいは、さらには幾分のα化を極く短時間に図っておいて、下流側の加熱処理装置30では飽和水蒸気に比して高温の過熱水蒸気、例えば104℃〜110℃程度の過熱水蒸気43を供給して穀粒間を例えば下方から上方へ強制的に通過させながら、電熱管1の高い輻射熱44とによって、穀粒を芯部までの吸水と相まってむら無く急速にアルファ化させて、美味しいご飯類を極く短時間に炊き上げるようにすることができる。この結果、穀類を容器に入れないで搬送して、上流側および下流側の食品の加熱処理装置30に順次に通して、飽和水蒸気や過熱水蒸気43と電熱管1からの輻射熱44とによる効率のよい一次蒸し、二次蒸しを行って、急速に十分な吸水とアルファ化を達成して美味しいご飯類を極く短時間に連続に炊き上げられる。なお、処理室13の蓋11内側には搬送方向に多数並んだ仕切り板45を設けて、ノズル管5から放出される過熱水蒸気43などの流れを制限しながらも穀粒との適度な相対移動成分をもって排出口12から順次に排出するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は食品の加熱処理に実用でき、過熱水蒸気を利用した処理に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の1つの実施の形態に掛かる食品を連続に加熱処理する食品の加熱処理装置を示す概略側面図である。
【図2】図1の装置に適用した第1の加熱処理手段の全体構成を示す平面図、横断面図である。
【図3】図1の装置の制御系を含めた概略構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 電熱管
1a 上流部
1b 下流部
2 蒸気供給口
3 蒸気放出口
5 ノズル管
6 キャビネット
7 グリル格子
8 容器
9 ヒンジ
11 蓋
12 排出口
13 処理室
21 水
22 ヒータ
23 蒸気発生装置
24、25 ドライバ
26 制御装置
27 操作パネル
30 第1の加熱処理手段
31 搬送経路
32 搬送手段
42 食品
43 過熱水蒸気
44、44a 輻射熱
45 仕切り板
51 マグネトロン
52 マイクロ波
53 第2の加熱処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気として放出し、これと電熱管からの輻射熱に食品を曝す第1の工程と、マグネトロンから発振するマイクロ波に前記食品を曝す第2の工程と、により食品を加熱処理することを特徴とする食品の加熱処理方法。
【請求項2】
第1の工程と第2の工程とは、静止または移動する食品に対して同時か、あるいは前後したまたは交互の繰り返しとなる異時にて行う請求項1、2のいずれか1項に記載の食品の加熱処理方法。
【請求項3】
食品を搬送する搬送手段と、水、温水または飽和水蒸気を通電により発熱する電熱管に通しながら温水、飽和水蒸気または過熱水蒸気として放出して、これと電熱管からの輻射熱に前記搬送される食品を曝して加熱処理する第1の加熱手段と、マグネトロンからマイクロ波を発振して、これに前記搬送される食品を曝して加熱処理する第2の加熱手段と、を備えたことを特徴とする食品の加熱処理装置。
【請求項4】
第1の加熱手段と第2の加熱手段とは、食品の搬送方向に順次または交互に繰り返し配置されている請求項3に記載の食品の加熱処理装置。
【請求項5】
特定の加熱手段は先行して、またはおよび、多く配置されている請求項3、4のいずれか1項に記載の食品の加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253202(P2008−253202A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99709(P2007−99709)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(591130537)株式会社両双 (9)
【出願人】(501005830)
【Fターム(参考)】