説明

食品の連続殺菌方法

【目的】 二軸エクストルーダを使用して比較的低い温度で連続して減菌される食品素材を提供できる方法である。
【構成】 二軸エクストルーダのダイ押出出口に開孔面積を調整する開度調整弁4を取付けエクストルーダ出口内部の圧力を検出する圧力検出センサ7を取付け制御装置によって検出圧力が設定圧力となるように弁開度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は生おから等の高粘性食品及び脱脂大豆粉等の食品原料を処理するときの連続殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2軸エクストルーダを使用した高粘度食品材料の殺菌に関してはおからを原料としてテンペ製造用或いは食用菌類培養素材を製造するものに特開昭61−166374号、果実類,野菜類を原料としたジャム,ママーレード及び野菜ペーストを製造するものに特開昭62−36155号が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特開昭61−166374号のものはおから又はおからに種々の添加物等を加えて2軸型エクストルーダを使用しておからを主成分とする多孔質の顆粒状素材テンペ製造用素材、食用菌類栽培用素材を製造するものであり、水分含有量60〜85%、温度138°C〜150°Cで耐熱細菌が零で減菌効果があることが記載されている。しかしながら圧力に関しての記載は圧力がどのように影響を及ぼすかの探索がなされていない。そして減菌温度は138°C以上(140〜165°C)とした区分でも水分含有量が60%未満では減菌不充分である結果となっている。
【0004】特開昭62−36155号のものはリンゴ,みかん,いちご,桃などの果実類,南瓜,人参,さつまいも等の野菜類を2軸型エクストルーダに通してジャム,ママレード或いは野菜ペーストを製造しようとするものであり、温度は140°C以上で耐熱性菌が検出されないがその温度以下では不充分である結果となっている。そして同様に圧力制御は考えられていない。
【0005】本発明は従来の技術の有するこのような点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは食品材料の品質をいためないよう成るべく低い温度で連続的に殺菌できる方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明は2軸エクストルーダを用いる高粘性食品及び食品原料の連続処理において、内部圧力の変動を抑制するように押出出口の開孔面積を調整するものである。そして調整される内部圧力が2.0kg/cm2 以上であり、原料水分が40%以上、処理温度が90°C以上、滞留時間が80秒以上である条件にすることが望ましい。
【0007】
【作用】所定のフイード量で所定水分となるように2軸エクストルーダに投入された食品原料はバレル内で混練,加熱され先端部に送られ、この部の圧力がセンサで検出され制御装置内で設定値と比較され圧力変動を押さえるように開度調整弁の開度をモータで調整する。
【0008】
【実施例】本発明の方法を実施する2軸エクストルーダは公知のもの例えば末広鉄工所製アルファライザー50型を使用する。その押出出口部分を示した図1において、図示しない機枠に取付けられ投入口を有するバレル1は断面繭形の軸孔にスクリュー軸2が2本平行に同方向または異方向に図示しない駆動装置で回転するように挿通されている。バレル1には冷却水通路,バレル外周にはヒータが設けられている公知のものである。そして特にバレル1の押出出口3のダイ取付部には同出口3の開口面積を変化される開度調整弁4が取付けられている。開度調整弁4は開度調整が行えるものなら使用可能であるが、本実施例はボール弁が採用されており弁軸に例えばサーボモータ5の出力軸が連結されていて弁開閉制御装置6によってサーボモータ5が制御される。
【0009】そしてバレル押出口手前の圧力を常時測定する圧力検出センサ7が設けられており、この出力は弁開閉制御装置6に入力され、設定圧力に対して所定範囲内に圧力がおさまるように弁開閉制御装置6はサーボモータ5を駆動して弁の開度を調整するものである。
【0010】弁開閉制御装置6では実験データ等にもとづき事前に設定圧力値PoがMDIなどで入力され記憶装置61に記憶される。この記憶値Poと入力された圧力検出センサ7の検出値P1とが比較演算回路62で比較演算されてその差が駆動装置63に入力されてモータ5を駆動する。
【0011】このように構成されたものにおいて、バレル1の外周に設けたヒータによって目的とする処理温度にバレル内部が加熱される。2軸エクストルーダの図示しない投入口より所定水分量の食品原料が設定された送り量で連続して定量的に供給されると同方向に所定回転で回転される2本のスクリューによって粘性がある原料は混練,圧縮,加熱され、押出口側へ移送される。押出出口3の手前の圧力が圧力検出センサ7で検出され、この出力にもとづき制御装置6がサーボモータ5を制御し開孔面積がボール弁4によって規制され圧力変動が抑制されるので食品原料には均一な圧力がかかり完全な減菌がなされて連続して押出口より送りだされるものである。本発明の食品原料としては生おから、脱脂大豆粉、とうもろこし粉、小麦粉、そば粉等に適用することができる。
【0012】2軸エクストルーダを使用することにより搬送能力が高く高粘度食品材質が処理でき、スクリュー軸で攪拌され均一に加熱処理が行われる。さらに開度が調整可能な弁を取付けたことによりれ運転中の圧力制御要因である送り量,添加水量,スクリュー回転数,バレル温度等を変化させることなく圧力調整が可能である。
【0013】実験例1*条件・原料 脱脂大豆粉(水分12.0%)
・粉体送り量 15kg/hr・水添加量 12リットル/hr(51%になるように添加)
・スクリュー回転数 200r.p.m.
・機械 末広鉄工所製アルファライザー50型・調整開孔面積 0〜40mm2 (無段階)
上記の条件においてバレル1内で原料の滞留時間が極端に長くならない範囲約±25%以内の変動に押さえ、圧力を実験中ほぼ所定設定圧となるように開度調整弁4の調整を約半数で行い、特に温度を変化させて原料滞留時間、バレル内先端部圧力、一般細菌数、耐熱細菌数等を測定した結果を
【表1】


に示す。
【0014】
【表1】
【0015】注ここで開度調整無とは開度調整弁を全開、有とは開度25±5%である。表1より減菌効果が認められた条件は■開度調整 有処理温度 100°C〜120°C先端圧力 14.1kg/cm2 〜19.6kg/cm2 滞留時間 80sec〜95sec■開度調整 無処理温度 120°C先端圧力 1.3kg/cm2 滞留時間 95secであった。即ち■は開度調整が行われて先端圧力が高いものでは減菌される温度範囲が広くなるとともに処理温度を下げることが可能であって食品品質の向上に寄与する。なお開度調整が行われても処理温度が80°Cでは圧力4.0kg/cm2 に調整されても充分な減菌効果が得られなかった。
■は処理温度が120°Cとなると開度調整を行われなくとも多少の圧力上昇があり、高温度により温度との相乗効果によって減菌効果が現れたものと考える。温度を高くすれば減菌されるが食品素材の品質低下はまぬがれない。
【0016】実験例2*条件・原料 生おから (水分82%)
・粉体送り量 35kg/hr・水添加量 0リットル/hr・スクリュー回転数 200r.p.m.
・機械 末広鉄工所製アルファライザー50型・調整開孔面積 0〜40mm2 (無段階)
*実験結果を
【表2】


に示す。
【0017】
【表2】
【0018】表2より減菌効果が認められた条件■開度調整 有処理温度 90°C〜110°C先端圧力 8kg/cm2 〜14kg/cm2 滞留時間 95sec〜105sec実験例1と同様開度調整の効果が顕著で、減菌される温度も比較的低い範囲であった。しかし開度調整により先端圧力が10kg/cm2 であっても処理温度が70°Cでは低すぎて良い効果は得られなかった。なお開度調整無では処理温度90°C〜110°Cで先端圧力は0〜0.5kg/cm2と低いが処理時間90sec〜95secで菌の減少は確認されたが不充分なものであり、開度調整の効果が顕著であった。
【0019】実験例3*条件・原料 脱脂大豆粉(水分12.0%)
・スクリュー回転数 200r.p.m.
・処理温度 95°C・機械他 末広鉄工所製アルファライザー50型*実験結果を
【表3】


に示す。
【0020】
【表3】
【0021】表3より減菌効果が認められた条件■開度調整 有水分 41%〜70%先端圧力 2kg〜8kg滞留時間 80sec〜90sec処理温度が95°Cとなると開度調整が行われ圧力が2kgと僅かに上昇することで減菌効果がでており、弁調整の有効性が立証された。
【0022】
【発明の効果】上述のようであるので本発明は以下の効果を奏する。開度調整によって出口内部圧力を上げるとともに圧力変動を抑制することにより減菌に必要な処理温度を下げることができ、食品の栄養分の損傷,変色等品質の低下を少なくすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する装置先端部断面図である。
【図2】制御ブロック線図である。
【符号の説明】
1 バレル
2 スクリュー
3 押出出口
4 ボール弁
5 モータ
6 弁開閉制御装置
7 圧力検出センサ
61 記憶回路
62 比較演算回路
63 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2軸エクストルーダを用いる高粘性食品及び食品原料の連続処理において、内部圧力の変動を抑制するように押出出口の開孔面積を調整することを特徴とする食品の連続殺菌方法。
【請求項2】 調整される内部圧力が2.0kg/cm2 以上であり原料水分が40%以上、処理温度が90°C以上、滞留時間が80秒以上である請求項1記載の食品の連続殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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