食品切断装置
【課題】切断刃の交換および張力調整が容易で、一つ一つの切断刃の張力調整がラフであっても、食品切断時には切断刃に所定の張力がかかるようにした食品切断装置を得る。
【解決手段】対象食品10を載置する食品載置台と、切断刃固定枠2によって長さ方向両端部が保持されている切断刃3と、対象食品を輪切り状に切断するために食品載置台と切断刃3を相対移動させる駆動機構と、を有し、切断刃3は、長さ方向両端部にボスが突設され、切断刃固定枠2には、一対の側縁部に沿ってそれぞれ切断刃3のボスを掛け止めるV字形の溝を有する切断刃掛け止め部材110,120が配置され、切断刃掛け止め部材の少なくとも片方は、他方の切断刃掛け止め部材との離間距離を調整することによって切断刃にかかる張力を調整することができる張力調整部材130を備えている。
【解決手段】対象食品10を載置する食品載置台と、切断刃固定枠2によって長さ方向両端部が保持されている切断刃3と、対象食品を輪切り状に切断するために食品載置台と切断刃3を相対移動させる駆動機構と、を有し、切断刃3は、長さ方向両端部にボスが突設され、切断刃固定枠2には、一対の側縁部に沿ってそれぞれ切断刃3のボスを掛け止めるV字形の溝を有する切断刃掛け止め部材110,120が配置され、切断刃掛け止め部材の少なくとも片方は、他方の切断刃掛け止め部材との離間距離を調整することによって切断刃にかかる張力を調整することができる張力調整部材130を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻き寿司などの棒状の食品を所定の幅に輪切り状に切断する食品切断装置に関するもので、特に、切断刃を両持ち状に支持した食品切断装置における上記切断刃の張力調整機構に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、回転寿司店などで提供される例えば巻き寿司などは、自動機によって棒状に成形され、さらに、所定の幅に輪切り状に切断される。棒状の巻き寿司などを包丁によって手作業で輪切りにしていたのでは多大の労力と時間を要するとともに、輪切りの幅寸法がばらつくので、食品切断装置が用いられている。食品切断装置には、固定した切断対象食品に対し切断刃を移動させて切断するものと、固定した切断刃に対し切断対象食品を移動させて切断するものがある。また、切断刃の支持形態によって、片持ち形式のもの、両持ち形式のものに分類することができる。
【0003】
固定した切断対象食品に対し切断刃を移動させて切断する食品切断装置によれば、切断対象食品のセット位置と切断後の食品の取り出し位置が同じであり、作業性は良い。しかし、載置台に載せられた切断対象食品を回転刃が横切るため、切断対象食品を回転刃が横切るときは載置台の周辺に手を差し入れることができないように安全機構を設けて安全性を確保する必要がある。また、切断刃は回転軸に片持ち的に固着されるため、刃の厚みを大きくして所定の強度を持たせる必要があり、切断対象食品に対する切れ味が、両持ち型の切断刃を用いる場合と比較すると若干劣る。したがった、海苔巻き寿司のような柔らかい切断対象食品の場合、切断時に加わる圧力で型崩れが生じにくい両持ち型の切断刃を用いることが望ましい。
【0004】
特許文献1には、固定した切断対象食品である海苔巻寿司等に、切断刃を移動させながら当てることにより海苔巻寿司等を輪切りにする海苔巻寿司等の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、刃物枠を複数の切断刃とともにリンク機構により移動させて海苔巻寿司等を切断する構成になっている。
【0005】
特許文献2には、固定した切断刃に対し切断対象食品である巻き寿司を移動させて切断する巻き寿司の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、上記刃物枠をフレームに固定している。上記巻き寿司はこれを受け台に載せ、この受け台を下から上方に向かって移動させることにより、巻き寿司に切断刃を徐々に食い込ませながら巻き寿司を輪切り状に切断する構成になっている。切断刃を固定し、切断刃に対し対象食品を相対移動させることによって対象食品を輪切り状に切断する食品切断装置は、特許文献3にも記載されている。
【0006】
切断刃が、特許文献1記載の切断装置のような可動の刃であっても、特許文献2および特許文献3記載の発明のような固定の刃であっても、矩形の枠体に複数の切断刃が平行に渡され、各切断刃の両端部が枠体に固定された両持ち型になっている。両持ち型の切断刃は、対象食品が接触するときに加わる圧力に耐えるように、適宜の張力を与える必要がある。そこで、特許文献1乃至3に記載されているように、枠体に対して一つ一つの切断刃ごとに張力調整構造を設けて、各切断刃の張力を個別に調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−31392号公報
【特許文献2】特許第4368024号公報
【特許文献3】特開2006−68848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食品切断装置が備えている切断刃は一種の消耗品であり、一定の使用回数ごとに交換する必要がある。しかし、特許文献1乃至3に記載されているような構造の両持ち型の切断刃を備えた従来の食品切断装置によれば、複数の切断刃ごとに設けられている張力調整構造によって個々の切断刃の張力を調整する必要があり、全ての切断刃の張力をバランスよく調整することは難しい。そのため、切断刃の交換および張力調整には専門的な技能が必要であり、食品切断装置のユーザー側で切断刃を交換し調整することは難しい。また、切断刃の張力を個別に調整すると、一つ一つの切断刃の張力が過大になりがちであり、全ての切断刃の張力が合成されて、切断刃を保持している枠体に過大な負荷がかかり、長期間使用しているうちに枠体が変形することがある。枠体が変形すると、切断刃の張力が緩み、食品切断性能が低下する。
【0009】
さらに、従来の食品切断装置によれば、切断刃の張力が経時的に変化することがある。その原因としては、切断刃の製造工程上の精度のばらつき、例えば、切断刃を固定するための孔のピッチのばらつき、刃付け、焼き付け、コーティングなどによる切断刃の収縮や反りなどがある。また、切断刃の使用回数を重ねることによって切断刃自身の延び、切断刃を固定するための孔の拡大なども、経時的な切断刃の張力の変動要因となる。
【0010】
本発明は、上に述べた従来の食品切断装置の問題点を解消すること、すなわち、切断刃の交換および張力調整が容易で、切断刃の張力が緩くても、食品切断時には切断刃に所定の張力がかかるようにして、切断刃の張力の緩みによる食品切断性能の低下を防止することができる食品切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る食品切断装置は、
切断対象食品を載置する食品載置台と、
切断刃固定枠によって長さ方向両端部が保持されている切断刃と、
上記切断対象食品を輪切り状に切断するために上記食品載置台と上記切断刃を相対移動させる駆動機構と、を有し、
上記切断刃は、長さ方向両端部にボスが突設され、
上記切断刃固定枠には、一対の側縁部に沿ってそれぞれ上記切断刃のボスを掛け止めるV字形の溝を有する切断刃掛け止め部材が配置され、
上記切断刃掛け止め部材の少なくとも片方は、他方の切断刃掛け止め部材との離間距離を調整することによって上記切断刃にかかる張力を調整することができる張力調整部材を有していることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る食品切断装置によれば、切断対象食品と切断刃とが接触すると、切断刃にかかる押圧力で切断刃のボスがV字形の溝に押圧され、上記V字形の溝の傾斜面で切断刃の両端部のボスを互いに引き離す向きの分力を生成する。この分力は切断刃の張力を高め、かつ、上記押圧力に対応した張力を生成するため、切断刃の張力調整が緩くても、必要なときに必要な張力が生成される利点がある。切断刃の交換および張力調整が容易になる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る食品切断装置の実施例を示す外観斜視図である。
【図2】側面カバーおよび前カバーを除去した状態の上記実施例を右前方から俯瞰して示す斜視図である。
【図3】側面カバーを除去した状態の上記実施例を示す正面図である。
【図4】上記実施例中の切断刃ユニットを示す斜視図である。
【図5】上記切断刃ユニットを別の角度から示す斜視図である。
【図6】上記切断刃ユニットに装着される切断刃の一端部の構造を示す分解正面図である。
【図7】上記切断刃ユニットを、中間を省略して示す拡大側面図である。
【図8】上記切断刃ユニットを、中間および一端側を省略して示す拡大背面図である。
【図9】前カバーおよび右側の側板を除去した状態の上記実施例の初期位置を示す左側面図である。
【図10】図9に示す動作態様に続く別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図11】図10に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図12】図11に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図13】図12に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図14】図13に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図15】図14に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図16】本発明に係る食品切断装置の別の実施例を図9に準じて示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下、本発明に係る食品切断装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施例では、切断刃が複数用いられているが、本発明に係る食品切断装置においては、切断刃の数は任意で、1個のみの切断刃を用いるものであってもよい。
【実施例1】
【0015】
図1乃至図3において、食品切断装置は、上端部が切断対象食品(以下、単に「食品」という)の供給部、前面下部が食品の取り出し部8となっていて、前面は上記供給部と取り出し部8を除き前面パネル15で覆われ、左右両側面はそれぞれ側面カバー14で覆われている。この装置の動作開始前の初期位置では上記供給部に食品載置台5があり、この食品載置台5に、食品10、例えば、寿司飯が海苔で巻かれた柱状の海苔巻きを、長手方向を水平方向に向けた姿勢で載置するように構成されている。食品載置台5に食品10を載置し、スタートスイッチを押すと、食品載置台5が後で詳細に説明する駆動機構によって装置の前側下部に向かって移動させられ、この移動の途中で食品10が切断刃によって輪切り状に切断され、上記取り出し部8に受け渡されるように構成されている。食品載置台5から取り出し部8に受け渡された食品10は、固定された傾斜案内部材81と、傾斜案内部材81に案内されて上下動する受け部材82で受け取られ、受け部材82が斜め下方にスライドし、食品載置台5は上記駆動機構によって原位置に復帰するように構成されている。
【0016】
次に、上記食品切断装置の内部構造を詳細に説明する。図1乃至図3および図9において、食品切断装置は、ベース1と、ベース1の左右両端部に結合されて互いに平行に垂直方向に立ち上がった左右の側板4と、各側板4の後端部を連結する背板を有していて、これらベース1、左右の側板4および背板で食品切断装置の骨格をなしている。装置の前寄りの位置に切断刃固定枠2(図2乃至図5、図7および図8参照)がほぼ垂直方向に立った姿勢で配置されている。切断刃固定枠2は、左右の両端縁部が、左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれ、上記ガイドレールにより左右の側板4間に実質的に固定されている。
【0017】
図2乃至図5および図8に示すように、切断刃固定枠2は、高さが装置の高さよりも僅かに低い四角形の枠形で、切断刃固定枠2の上下で複数の切断刃3の長さ方向両端部が保持され、各切断刃3は互いに平行に縦方向に並んでいる。図示の例では7本の切断刃3が一定間隔で配置されていて、食品10を8等分するようになっている。各切断刃3は細長い薄板状の部材で、その幅方向が装置の前後方向に向くように、かつ、刃の形成縁が背面側を向くように配置されている。各切断刃3の表面は食品10に対する滑りをよくするために例えばフッ素樹脂などでコーティングされている。各切断刃3は長さ方向の両端部が切断刃固定枠2の上下で保持された両持ち形式であるため、上記のように細長い薄板状の部材であっても、十分大きな機械的強度を保つことができる。切断刃固定枠2とこの切断刃固定枠2によって両持ち的に保持されている複数の切断刃3によって切断刃ユニット100を構成している。以下、切断刃ユニット100について詳細に説明する。
【0018】
図4乃至図8において、切断刃固定枠2の背面側には、上端部に張力付与ブロック110が、下端部に張力保持板120が、それぞれ切断刃固定枠2を構成する上側の桁21と下側の桁22に沿って配置されている。張力付与ブロック110と張力保持板120は、切断刃掛け止め部材として機能する。切断刃固定枠2の上側の桁21の長さ方向両端部には張力調整部材としての張力調整ねじ130が桁21の上側から挿入され、各張力調整ねじ130のねじ部が張力付与ブロック110のねじ孔にねじ込まれている。各張力調整ねじ130の頭部は、上側の桁21の上面から突出していて、切断刃3の張力調整ノブとして機能する。各張力調整ねじ130は上記桁21に対して中心軸線の周りに回転可能に、しかし、桁21に対して中心軸線方向には移動不能に嵌め込まれている。したがって、各張力調整ねじ130の頭部を回転操作することにより、張力付与ブロック110を桁21に向かって引き付け、あるいは桁21から遠ざかるように位置調整することができる。上記張力保持板120は、上記下側の桁22に固定されている。
【0019】
張力付与ブロック110の上面には、図7に示すように、側面から見てV字形の溝111が張力付与ブロック110の長さ全体にわたって形成されている。張力付与ブロック110にはまた、図4、図8に示すように、切断刃3を挿入するためのスリット112が張力付与ブロック110の背面側から複数、張力付与ブロック110を幅方向すなわち図4、図8において上下方向に横切って一定間隔で形成されている。各切断刃3の両端部には、後で詳細に示すようにボスが固着されていて、各切断刃3の上端部のボスが通り抜けることができるように、上記桁21と張力付与ブロック110との間に適宜幅の間隙23が開けられている。
【0020】
図4、図7および図8に示すように、張力保持板120は、金属板を打ち抜きかつ折り曲げることによって製作されている。張力保持板120は、上端縁部の側面形状がV字状に折り返され、もって、張力保持板120の上端の天井部は逆V字形の溝124となっている。張力保持板120には、背面側から各切断刃3の下端部を張力保持板120内に導き入れるための複数のスリット121が張力保持板120の上下方向に、かつ、張力保持板120の長手方向に一定の間隔で形成されている。各スリット121の長さ方向の中間は、各切断刃3の下端部のボスが通り抜けることができるように拡幅部122が形成されている。図4、図8に示すように、各拡幅部122は、スリット121の左右の一方側の幅が狭く、他方側の幅が広くなっている。
【0021】
図6は、各切断刃3の両端部に固着されているボスの構造を示している。ボスは雄型ボス140と雌型ボス150からなる。雄型ボス140は頭部を主体としていて、この頭部から中心軸線に沿って延びた軸部141を有している。雌型ボス150は、雄型ボス140の頭部の外径と同じ外径の筒形で、中心孔151の内径は雄型ボス140の軸部141の外径とほぼ同じである。雌型ボス150の軸線方向長さは、雄型ボス140の頭部の軸線方向長さよりも長く、かつ、雄型ボス140の軸部141の軸線方向長さとほぼ同じかこれよりも長くなっている。各切断刃3の両端部には雄型ボス140の軸部141を貫通させるための孔が形成されていて、この孔に切断刃3の片面側から雄型ボス140の軸部141を貫通させ、切断刃3の他面側に突出している上記雄型ボス140の軸部141に雌型ボス150の中心孔151が嵌め合わされている。そして、雄型ボス140の軸部141をかしめるなどの手法により、切断刃3に雄型ボス140と雌型ボス150が一体に固着されている。
【0022】
図8に示すように、各切断刃3に固着されるボスの雌雄の関係は、切断刃3の一端側と他端側とでは、切断刃3を挟んだ一面側と他面側で互いに逆になっている。すなわち、図8に示す例では、各切断刃3の上端部においては、各切断刃3の左側面側が雄型ボス140、右側面側が雌型ボス150、各切断刃3の下端部においては、各切断刃3の左側面側が雌型ボス150、右側面側が雄型ボス140になっている。そして、切断刃固定枠2の下側の桁22に固定されている前記張力保持板120の各スリット121に形成されている拡幅部122は、図4、図8に示すように、左側が幅広で、右側が狭くなっている。
【0023】
各切断刃3のボスが上記のように構成され、張力保持板120の各スリット121の拡幅部122が上記のように形成されているため、スリット121に切断刃3の一端部を通したとき、幅広の上記拡幅部を雌型ボス150が通り抜け、幅が狭い方の上記拡幅部を雄型ボス140通り抜けることができるようになっている。仮に、切断刃3の向きが反転しているものとすると、幅が狭い方の拡幅部に雌型ボス150が当たって、上記拡幅部を雌型ボス150が通り抜けることができず、切断刃3を切断刃固定枠2に装着することができない。このように構成した理由は、各切断刃3は、刃の部分が切断刃固定枠2の背面側を向いて装着されている必要があるからである。
【0024】
張力保持板12に対しては上記のようにして各切断刃3の下端部を装着することができる。張力付与ブロック110に対しては、そのスリット112に切断刃3を通し、前記間隙23から切断刃3のボスを通すことにより、各切断刃3の上端部を装着することができる。このようにして、各切断刃3の上下両端部を張力付与ブロック110と張力保持板120に装着した後、前記一対の張力調整ねじ130を回転操作して張力付与ブロック110を上側の桁21に引き付ける。張力付与ブロック110が桁21に引き付けられることにより、各切断刃3の上下のボスは、図7に示すように、張力付与ブロック110のV字形の溝111と、張力保持板120の逆V字状のボス受け部122の、V字の谷に相当する部分に追い込まれ、各切断刃3に張力が与えられる。
【0025】
各切断刃3全体にかかる張力を一対の張力調整ねじ130によって調整することができる。各切断刃を個別に張力調整するものではないから、従来の食品切断装置における切断刃の張力調整のように、個々の切断刃の張力を強めに調整することにより、全ての切断刃の張力の合成値が強くなりすぎて前述のような不具合を防止することができる。
【0026】
各切断刃3全体にかかる張力を一対の張力調整ねじ130によって調整する構成になっていることから、切断刃3および雌雄のボス140,150の寸法精度誤差、張力付与ブロック110と張力保持板120の精度誤差などによって、各切断刃3に張力のばらつきが生じる。場合によっては、全体として所定の張力がかかっていても、一部の切断刃3には張力が弱く、ほとんど張力がかかっていないものもありえる。しかし、前述のように、各切断刃3の上下のボスは、張力付与ブロック110と張力保持板120のV字形の谷に相当する部分にあるため、後述の駆動機構によって食品が切断刃に押し当てられると、図7に矢印で示すように、上記上下のボスが張力付与ブロック110と張力保持板120のV字形の谷の斜面に押し当てられる。これらの斜面に沿って上記ボスが押し当てられることにより、図7に矢印で示すように、切断刃3の両端部のボスを互いに引き離す向きの分力が生成され、切断刃3に張力がかかる。この張力は、食品による切断刃3への押圧力が大きければ、それに応じて大きくなる。このように、各切断刃3は切断刃として機能するときに必要な張力がかかるため、個々の切断刃3に付与する張力は弱くてもよく、各切断刃3相互の張力のばらつきが大きくても食品切断性能が劣化することはない。
【0027】
以上説明したように構成されている切断刃ユニット100は、前述のように、切断刃固定枠2の左右の両端縁部が、左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれることにより食品切断装置に装着されている。切断刃ユニット100を装着したときの各切断刃3の刃先は、食品切断装置の背面側を向いている。
【0028】
次に、食品切断装置の他の構成部分について説明する。前記食品載置台5は、図9に示すように、上側のほぼ半分の側面形状がL字形に形成されることにより、L字の水平辺と垂直辺からなる角隅部に切断前の食品10を載置することができるようになっている。より具体的には、上記L字の水平方向に延びる部分が食品10の底面受け51、上記L字の垂直方向に延びる部分が食品10の背面受け52となっている。食品載置台5によって受けられる海苔巻きのような食品には幾種類かのサイズがあり、食品のサイズが異なっても、これに対応してこれを食品載置台5に保持することを可能にした機構が設けられる。ただし、かかる機構は本願発明に直接関係するものではないから、説明は省略する。
【0029】
食品載置台5に載置されている食品10を前記切断刃3で切断するために、食品載置台5には切断刃3が進入することができるスリット58が形成されている。スリット58は切断刃固定枠2に固定される切断刃3の数および設置位置に対応した数と位置に設けられる。図示の実施例では、食品10の分割数を4個、6個または8個というように選択することができるように、左右方向の中央のスリットを中心にして上記の分割数にそれぞれ対応した位置にスリット58が形成されている。各スリット58は、切断刃3を迎え入れて食品10を確実に切断することができるように、前記底面受け51および背面受け52を含む広い範囲にまたがって深く切り込まれている。
【0030】
図9などに示すように、食品載置台5には、載置される食品10の長さ方向両端位置を規制する規制板56が背面受け52の両端部に設けられている。規制板56は金属板を折り曲げて成形したもので、背面受け52に固定ねじで取り付けられる。食品10が例えば海苔巻き寿司であるとすれば、海苔の寸法は205mm×185mmに規格化されているため、海苔を横長にして巻くか、縦長にして巻くかによって切断前の海苔巻き寿司の長さが変わる。そこで、一対の規制板56の間隔を海苔巻き寿司の長さに合致するように調整する。
【0031】
次に、図2、図3、図9に符号6で示す食品載置台の駆動機構について詳細に説明する。図2、図3、図9において、左の側板4の内側面には駆動源としてのモータ61が固定され、モータ61の出力軸に固着されたギヤ62は、軸64に固着されたギヤ63と噛み合っている。軸64は左右の側板4にまたがって回転可能に支持されていて、左右の側板4を貫通した軸64の両端部にはそれぞれ駆動アーム65が固着されている。モータ61の回転駆動力は、ギヤ62,63を介して軸64に伝達され、軸64と一体の各駆動アーム65を各側板4の外側面と平行をなす面内において回転駆動するように構成されている。各駆動アーム65は軸64の回転中心を通る直線に沿って長孔66を有している。
【0032】
図9に示すように、食品載置台5の底部には、この底部を左右方向にかつ水平に貫通して2本の軸53,54が取り付けられている。軸53,54は互いに平行で、軸53は食品載置台5の前後方向中央部に、軸54は食品載置台5の前後方向後部に配置されている。これら2本の軸53,54のうち前側(食品載置台5の前後方向中央部)の軸53の両端部はそれぞれ両側の上記駆動アーム65の長孔66に嵌っている。したがって、各駆動アーム65が軸64とともに軸64を中心に回転駆動されると、長孔66の壁面で軸53が押され、各駆動アーム65の回転に伴い、後述のカム溝91に規制されながら、食品載置台5も移動させられるようになっている。この食品載置台5とともに食品10も移動し、この移動の途中で、食品10が切断刃3の位置を通り、食品10が切断されるようになっている。
【0033】
左右の各側板4には、側面から見て互いに重なり合うカム溝91が形成されている。これらのカム溝91に、食品載置台5に取り付けられている2本の軸53,54の両端部が嵌っていて、2本の軸53,54は、各カム溝91の側壁面で支持されるとともに、カム溝91に対する食品載置台5のカムフォロワとしても機能するようになっている。食品載置台5の高さ位置および姿勢は2本の軸53,54の高さ位置および相対的な高さの違いによって決まり、2本の軸53,54の相対的な高さ位置関係はカム溝91の形によって決まる。
【0034】
図2、図9は、一連の食品切断動作開始前の初期位置を示している。この初期位置では、各駆動アーム65がほぼ垂直近くまで最大に立ち上がった姿勢になっている。この態様では、図9に示すように、食品載置台5が最も高い位置になるように、上記2本の軸53,54がカム溝91の上端部に嵌っている。また、図10、図11に示すように、カム溝91の上端部は緩やかな円弧部92となっていて、この円弧部92は後ろ側が徐々に低くなっている。そして、上記のように食品載置台5が最も高い位置にあるとき、2本の軸53,54は上記円弧部92にあり、よって、食品載置台5は、後方に僅かに反ったような姿勢をとる。
【0035】
上記カム溝91はまた、図10、図12などに示すように、上記円弧部92から斜め下方に向かう円弧部93に連続しており、円弧部93はさらに斜め下方に延びた直線部94に連続している。食品載置台5が上記初期位置から移動を開始し、食品載置台5とともに食品10が移動して切断刃3に接触し始めると、上記2本の軸53,54が円弧部93に至る。2本の軸53,54が円弧部93を通るとき、食品載置台5は下方に移動しながら姿勢が徐々に下向きになる。すなわち、食品載置台5と食品10の伏角が徐々に大きくなり、食品10に対する切断刃3の進入角度が連続的に変化し、食品10の切断刃3に対する相対速度が早くなるように、カム溝91の上記円弧部93の下側の面が凸面になっている。
【0036】
前述のように、食品10の受け入れ姿勢をとっている食品載置台5に食品10を載置し、駆動機構6を作動させると、2本の軸53,54がカム溝91の円弧部92から円弧部93に移動し、さらに直線部94に移動する。軸53,54が上記円弧部93を通るとき、軸53の高さ位置が軸54の高さ位置よりも徐々に低くなり、食品載置台5の姿勢が前傾姿勢となるとともに前傾角度が徐々に大きくなる。
【0037】
このようにして食品載置台5が姿勢を変化させているとき、食品載置台5に載置されている食品10が切断刃3に接触し始めるように、切断刃3、食品載置台5、軸53,54、カム溝91相互の位置関係が設定されている。軸53,54は、上記円弧部93を通過した後はカム溝91の直線部94に導かれ、食品載置台5は上記の前傾姿勢のままで前述のように上から斜め下に向かって直線状に移動し、切断刃3で食品が切断される。切断された食品10は次に説明する取り出し部材8に移動し、続いて駆動機構6が逆向きに作動して食品載置台5を原位置に復帰させる。
【0038】
このような駆動機構6の往復動作は、例えば、スタートボタンを押すだけで行わせることができる。スタートボタンが押されると、前記モータ61が正転方向に駆動されて駆動アーム65が図9において時計方向に回転駆動される。この駆動アーム65の回転方向は往動方向であり、往動方向の移動限界を検出するまで前記モータ61が正転方向に駆動される。駆動アーム65が往動方向の限界位置に達すると、モータの駆動方向が逆転方向に切り換えられ、駆動アーム65は復動方向に駆動され、復動方向の移動限界を検出するとモータ61の駆動を停止する。このようにして駆動アーム65が往復動することにより、食品載置台5が前述のように姿勢を変えながら下降し、食品載置台5で保持していた食品10が切断刃3で切断された後、食品載置台5のみが原位置に復帰する。
【0039】
次に、前記食品の受け取り部の構成について詳細に説明する。図1乃至図3に示すように、装置の前側下部に、切断後の食品10の取り出し部8が設けられている。取り出し部8は、下側が装置の前側に突出する向きに傾斜させて固定された傾斜案内部材81と、この傾斜案内部材81に案内されて上下動する受け部材82を有してなる。傾斜案内部材81の前面には、切断された食品10を傾斜案内部材81に沿って円滑に下降させることができるように、複数のリブ85が縦方向に平行に形成され、食品10との滑り抵抗を低減している。
【0040】
受け部材82は、傾斜案内部材81の前面に対し直角方向に、したがって斜め前上に向かって突出している。受け部材82は折り曲げ成形によって製作されていて、その基部は傾斜案内部材81の前面に案内されて斜めに上下動する摺動部86となっている。この摺動部86の左右方向両端部には折り曲げ部88が形成されている。各折り曲げ部88は、傾斜案内部材81の両端部に上下方向に形成されている案内溝87を貫いて傾斜案内部材81の背面側に潜り、さらに傾斜案内部材81の両側方に突出し、摺動部材89の前面にねじ止めされている。各摺動部材89は直方体状の部材で、横断面がU字形の案内レール90に案内されて摺動するようになっている。案内レール90は、左右の側板4の外側面に、傾斜案内部材81と平行になるように、かつ、U字形断面の開放端を側方に向けて固定されている。各案内レール90には、受け部材82の上記折り曲げ部88が摺動部材89とともに摺動するときの障害にならないように、上記折り曲げ部88に対する逃げ孔91が形成されている。
【0041】
受け部材82は、左右一対のリンクアーム30が回転することによって駆動されるようになっている。各リンクアーム30は、左右の側板4の外側面下方寄りの位置に、共通の軸31を中心にして側板4と平行をなす垂直面内で回転可能に取り付けられている。本実施例に係る食品切断装置を正面から見て左側の側板4に取り付けられているリンクアーム30の基端部には、軸31と同心円をなす小ギヤ32が固着されている。各リンクアーム30の先端部には軸31の中心を通る線に沿った長孔33が形成され、各長孔33には、各摺動部材89の側面に植えられているピン34が嵌っている。したがって、リンクアーム30が回転駆動されると、その長孔33の側壁によってピン34が押され、ピン34とともに受け部材82が案内レール90に案内されながら斜め上下方向に上昇し下降するように構成されている。
【0042】
この実施例では、リンクアーム30の駆動源はモータ61で、以下のような連携機構を介してモータ61の駆動力がリンクアーム30に伝達されるようになっている。前記各駆動アーム65の長さ方向中央付近の外側面にはピン68が植えられている。駆動アーム65の回転中心である前記軸64によって扇形の大ギヤ20が保持されている。大ギヤ20は、扇の中心に相当する位置に軸64があり、軸64を中心とした円弧に沿ってギヤが形成されている。大ギヤ20は、軸64に対しては相対回転自在となっており、ギヤ形成部分は上記小ギヤ32と噛み合っている。
【0043】
扇形をなす大ギヤ20には、図9において上側の側面に、三角形状の連携板40が固着されている。連携板40は、駆動アーム65の長さ方向に対し略直交する方向に長孔41を有している。この長孔41には駆動アーム65のピン68が嵌っている。ただし、ピン68の外径に対して長孔41の幅は十分に大きく、ピン68が長孔41の長さ方向の範囲内で移動するときは長孔41を画する壁面に接することはなく、ピン68が長孔41の長さ方向両端に至ったとき、大ギヤ20を駆動するようになっている。
【0044】
図9に示す態様では、駆動アーム65が反時計方向に最大限回転し、前述のように食品載置台5が最上位まで移動して食品10を受け入れる姿勢をとっている。この態様では、上記ピン68が連携板40の長孔41の一端にあって連携板40を引き上げ、連携板40と一体の大ギヤ20を、軸64を中心に反時計方向に回転させている。大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32を回転させる。図9に示す態様では、小ギヤ32が時計方向に最大限回転させられ、小ギヤ32と一体的に時計方向に回転したリンクアーム30によって摺動部材89が限界位置まで下降している。摺動部材89は下降限界位置で下部のストッパ35に当たって移動が制限され、摺動部材89と一体の受け部材82とともに下降位置が安定に保持されるようになっている。
【0045】
駆動アーム65が、図4に示す位置から時計方向に回転駆動され、図11に示すようにピン68が大ギヤ20の上縁に当たるまでは、ピン68は連携板40の長孔41内を、円弧を描きながら移動するだけで、ピン68に連動する部材はない。図11に示す動作態様は食品10が切断刃3で約半分切断された態様にある。図11に示す動作態様からさらに駆動アーム65が時計方向に回転するにしたがい、ピン68が大ギヤ20の上縁を押し、大ギヤ20を時計方向に回転させる。この大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32は反時計方向に回転駆動され、この回転力がリンクアーム30に伝達されてリンクアーム30が軸31を中心に反時計方向に回転駆動される。図11、図12は大ギヤ20の時計方向回転による小ギヤ32およびリンクアーム30の反時計方向回転を示している。このリンクアーム30の反時計方向への回転により長孔33とピン34を介して摺動部材89およびこれと実質一体の受け部材82が、傾斜案内部材81に案内されて斜め上方に押し上げられるようになっている。
【0046】
リンクアーム30の長さと食品載置台5の上下方向の移動距離との比に対して、大ギヤ20と小ギヤ32のギヤ比を大きくし、大ギヤ20の回転角度の割には小ギヤ32の回転角度が十分に大きくなるように設計されている。しかし、摺動部材89および食品載置台5が実際に移動することができるストロークは限られているので、小ギヤ32が食品載置台5の必要なストローク分を越えて回転駆動されるときは、小ギヤ32とリンクアーム30との間で滑りが生じるように、滑り機構が設けられている。滑り機構はトルクリミッタともいわれている。滑り機構の具体的な構成は図示していないが、周知の構成を適宜選択して採用すればよい。例えば、小ギヤ32とリンクアーム30との間に反発コイルばねを介在させることにより滑り機構を構成してもよい。
【0047】
図12に示す態様では、摺動部材89が上部のストッパ36に当たり、摺動部材89および食品受け台5が上昇限界位置にある。摺動部材89がストッパ36に当たってもなお図13に示すように大ギヤ20が時計方向に回転し、小ギヤ32が反時計方向に回転駆動される。しかし、摺動部材89が移動限界に達しているので、リンクアーム30は回転することができず、上記滑り機構で駆動部材89の余分な移動ストロークを吸収するようになっている。
【0048】
リンクアーム30は、本実施例に係る食品切断装置を正面から見て左右両側に設けられて食品載置台5を左右両側から駆動するようになっている。これに対して、一対のリンクアーム30に駆動力を伝達する連携板40、大ギヤ20、小ギヤ32および前記滑り機構は、本装置の左側にのみ設けられている。一対のリンクアーム30は共通の軸31で一体に結合されて一対のリンクアーム30が一体として駆動されるようになっている。
【0049】
次に、以上のように構成されている実施例の一連の動作を説明する。図2、図3、図9は動作開始前の初期状態を示している。駆動アーム65は図9において反時計方向への回転限界位置にあって、最も立ち上がった姿勢になっている。食品載置台5は2本の軸53,54がカム溝91の上側終端部の円弧部92にあって切断前の食品10の載置姿勢をとっている。駆動アーム65のピン68が連携板40長孔41の一端に当たり、連携板40とともに大ギヤ20を図9において反時計方向に回転させている。この大ギヤ20の回転により小ギヤ32は図9において時計方向に回転し、摺動部材89、受け部材82が下方への移動限界位置にある。
【0050】
上記初期状態において、食品載置台5に食品10を載置し、スタートボタンを操作すると、モータ61が起動され、駆動機構6が作動を開始する。ギヤ列61,62、軸64を経て駆動機構6の駆動アーム65が図5に示すように時計方向に回転駆動され、その長孔66に嵌っている食品載置台5の軸53がカム溝91に沿って移動させられる。軸53とともに軸54もカム溝91に沿って移動する。食品載置台5の高さ位置と姿勢は2本の軸53、54の高さ位置および相互の高さ位置の違いによって定まる。軸53、54がカム溝91の円弧部93の位置にさしかかると、軸53の高さ位置が軸54の高さ位置に対して連続的に低くなり、もって、食品載置台5が前傾姿勢をとるとともに前傾姿勢が徐々に深くなる。
【0051】
上記のように、食品載置台5が前傾姿勢をとり始める位置は、食品10が切断刃3に接触し始めるときである。食品10と切断刃3の接触開始当初は、食品10に対する切断刃3の進入角度を連続的に変化させて切断刃3と食品10の相対速度を速めるようになっている。図10はこのときの動作態様示している。こうして切断開始当初の食品10への切断刃3の進入を容易にし、食品10の切断が円滑に行われるように工夫されている。
【0052】
食品載置台5の軸53、54がカム溝91の直線部94に至ると、食品載置台5は最大の傾斜角度を保ったまま上記直線部94に沿って斜め下方に移動する。この間、垂直方向に両持ち状に固定された切断刃3と交差しながら、食品載置台5とともに食品10が斜め下方に一定の相対速度で移動し、食品10が輪切り状に切断される。図11乃至図13はこの作動態様を示しており、図13は切断完了直後の状態を示している。食品載置台5には、前述の通り、切断歯3に対する逃げ溝が形成されている。
【0053】
図11は、食品10の切断工程の途中であって食品10が約半分切断され、駆動アーム65のピン68が大ギヤ20に当たり始めた動作態様を示している。駆動アーム65がさらに回転することにより、ピン68が大ギヤ20を下に向かって押し、大ギヤ20を、図12、図13に示すように時計方向に回転させる。大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32を反時計方向に回転させる。小ギヤ32の回転力は、前記滑り機構を介してリンクアーム30に伝達され、リンクアーム30は反時計方向に回転駆動される。このリンクアーム30の回転により摺動部材89および受け部材82が、傾斜案内部材81および案内レール90に案内されて斜め上方に押し上げられる。図11は受け部材82が斜め上方に上昇している途中の態様を、図12は受け部材82が上側のストッパ36に当たる限界位置まで上昇した態様を示している。
【0054】
前記カム溝91の直線部94の傾斜角度と案内レール90の傾斜角度は同じ角度になっていて、上記直線部94に沿った食品載置台5の上下移動方向と案内レール90に沿った受け部材82の上下移動方向は平行になっている。そして、図12に示すように、上側の限界位置まで上昇した受け部材82は、食品載置台5に載置されて食品載置台5とともに斜めに下降してくる食品10の移動方向前方に位置して、食品10を受け取る態勢をとっている。
【0055】
受け部材82が上側の限界位置まで上昇したのちもなお駆動アーム65が図13に示すように時計方向に回転駆動され、駆動アーム65は軸53を下降させる。軸53は軸54とともにカム溝91の直線部94に沿って下降し、食品載置台5は食品10を保持しかつ前傾姿勢を保ったまま斜め下方に向かって移動する。図12は、食品載置台5で保持されている食品10の切断完了直前の動作態様を示している。この動作態様では、食品載置台5が上記のように移動し、食品載置台5に保持されている食品10が受け部材82に接している。
【0056】
食品10の太さが図示のものより大きい場合は、上昇限界にある受け部材82に対する食品10の接触タイミングが早く、受け部材82は下降してくる食品10で押し下げられる。この押し下げ力で摺動部材65と受け部材82が下方に押し下げられ、リンクアーム30が図9において時計方向に強制的に押し戻される。このリンクアーム30の強制的な時計方向への回転は、リンクアーム30と小ギヤ32との間の前記滑り機構が滑ることによって許容される。
【0057】
切断歯3による食品10の切断が完了したのちも駆動アーム65は時計方向に回転駆動され、図13に示す時計方向への回転限界に至る。図13に示す動作態様から図14に示す動作態様に至る間、駆動アーム65の長孔66と軸53の嵌り合いによって食品載置台5はなおも斜め下方に下降する。食品載置台5とともに食品10も下降するため、食品10の切断が完了するとともに、受け部材82も食品10に押されて下降する。上記駆動アーム65が時計方向に回転すると、ピン68によって大ギヤ20が時計方向に回転させられ、小ギヤ32が反時計方向に回転させられる。しかし、小ギヤ32とリンクアーム30との間に上記滑り機構が介在しているため、小ギヤ32の回転力はリンクアーム30に伝達されず、上記強制的な受け部材82の下降によるリンクアーム30の時計方向への回転が許容される。
【0058】
このようにして食品10の切断が完了し、食品10の受け部材82への受け渡しが完了した動作態様に至ると、前記モータ61の回転方向が逆向きに切り換えられる。図14は、モータ61が逆転し、駆動アーム65が反時計方向に回転して初期位置の方に向かい戻っている途中の状態を示している。駆動アーム65の戻し動作に伴い、食品載置台65の軸53と駆動アーム65の長孔66の嵌り合いにより食品載置台65がカム溝91に沿って上昇する。駆動アーム65の戻り動作の途中までは、駆動アーム65が有するピン68は連携板40の長孔41の幅と長さの範囲内で円弧を描いて移動するだけで、連携板40には作用しない。よって、大ギヤ20は回転せず、リンクアーム30、受け部材82も動かない。
【0059】
駆動アーム65が反時計方向に回転し、食品載置台5が初期位置に戻る途中で、駆動アーム65のピン68が連携板40の長孔41の一端に至ると、ピン68と連携板40を介して大ギヤ20が反時計方向に回転駆動される。この大ギヤ20の回転により小ギヤ32が時計方向に回転駆動され、前記滑り機構を介して駆動力がリンクアーム30に伝達され、リンクアーム30が時計方向に回転駆動される。このリンクアーム30の回転により摺動部材89とともに受け部材82が斜め下方に下降し、摺動部材89がストッパ35に当たり、摺動部材89および受け部材82の下降限界位置に至る。この受け部材82の下降限界位置において、受け部材82で支持されている切断済みの食品10が取り出し部8にあり、食品10を取り出すことができる。
【0060】
受け部材82が下降限界位置に至った後も、駆動アーム65は反時計方向に駆動され、食品載置台5が図15に示す初期位置に戻ることによりモータ61の駆動が停止して一連の動作が停止する。復帰動作の途中から図15に示す初期位置への復帰までの間、ピン68によって大ギヤ20が反時計方向に、小ギヤ32が時計方向に回転駆動されリンクアーム30に時計方向の回転トルクがかかる。しかし、リンクアーム30はストッパ35によって回転が制限され、前記滑り機構によって小ギヤ32とリンクアーム32が滑り、受け部材82は取り出し部8に位置したままである。
【0061】
取り出し部8にある受け部材82から切断済みの食品10を取り出し、装置の上部の食品供給部に移動している食品載置台5に食品10を載せ、再びスタートスイッチを押すと、上に述べた一連の動作を経て食品10が切断され、切断された食品10は取り出し部8に至る。
【0062】
以上説明した実施例に係る食品切断装置は、切断後の食品10をその重力で落下させるのではなく、受け部材82で受け取りに行き、食品10を受け取った受け部材82を取り出し部8まで下降させるように構成されている。したがって、切断後の食品10は所定の姿勢を保ったまま取り出し部8に至るため、切断後の食品取り出しの作業性をより一層向上させることができる。また、取り出し部8に至った食品10の姿勢がそろっているため、見た目もきれいである。
【0063】
上記実施例は、食品載置台5の駆動源と切断後の食品10を受け取る受け部材82の駆動源を共通のモータ61とし、コストの低減を図っている。そして、駆動減の共通化を図るために、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構とを連携させ、食品載置台5の駆動による食品切断行程の途中から、受け部材82を食品受け取り位置まで上昇させるように構成している。さらに、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構との移動ストロークの差を吸収するために、受け部材82の駆動機構内に滑り機構を設けている。
【実施例2】
【0064】
図16は、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構の別の実施例を示す。この実施例は、食品載置台5の駆動機構6と、切断後の食品10の受け部材82の駆動機構とを連携する連携機構がなく、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構が個別に駆動源を備えている。なお、図16に示す実施例では、前記第1の実施例の構成部分と同じ構成部分には同じ符号を付し、同じ構成部分の説明は簡略化する。
【0065】
図16において、食品載置台5の駆動機構6は、前記実施例と同様に、駆動源としてのモータ61、ギヤ62,63、駆動アーム65、食品載置台5を貫く2本の軸53,54、側板4に形成されているカム溝91を有している。駆動アーム65の回転による食品載置台5の動作および切断刃3による食品10の切断動作は、第1の実施例と同じである。
【0066】
切断後の食品10の受け部材82を駆動する駆動機構の駆動源として、上記モータ61とは別のモータ101を備えている。モータ101の出力軸にはギヤ102が固着されていて、ギヤ102はギヤ32と噛み合っている。ギヤ32は前記実施例と同様に軸31を回転中心としており、軸31にはまた、この軸31を回転中心とするリンクアーム30が嵌められている。リンクアーム30とギヤ32との間には、前記実施例と同様に滑り機構が設けられている。リンクアーム30は、前記実施例と同様に摺動部材89と、長孔とピンによって連携され、摺動部材89は受け部材82と実質一体に結合されている。
【0067】
モータ101を駆動源とするリンクアーム30の回転範囲は、下側のストッパ35と上側のストッパ36で規制される摺動部材89の摺動範囲よりも十分大きな摺動範囲を得ることができる回転範囲に設定され、摺動部材89が上下のストッパ36,35に当接してもなおリンクアーム30に加えられる回転駆動力は、上記滑り機構によって逃がされるようになっている。
【0068】
図16に示す実施例において、図示の初期位置にある食品載置台5に巻き寿司のような食品10を載置してスタートボタンを押すと、モータ61が起動されて食品載置台5が食品10とともに姿勢を変えながら斜め下方に向かって移動する。その間、切断刃3によって食品10が複数個に切断される。この切断行程の途中からモータ101が起動され、ギヤ102,32を経てリンクアーム30が反時計方向に駆動され、摺動部材89がストッパ36に当接する位置まで移動してモータ101が停止する。摺動部材89と一体の受け部材82も斜め上方に移動して、切断される食品10を受け取る態勢をとる。
【0069】
食品10の切断が完了した時点では、食品10が受け部材82に食品10が受け渡され、食品10のサイズの大小に応じて受け部材82が下方に押される。この押し下げ力により上記滑り機構が滑り、リンクアーム30、摺動部材89および受け部材82が押し戻される。
【0070】
駆動アーム65が食品10を切断するに必要な角度回転駆動されると、次にモータ61の回転方向が逆向きに切り換えられ、食品載置台10は初期位置に復帰する。また、モータ101も逆向きに回転駆動され、摺動部材89がストッパ35に当接するまでリンクアーム30が時計方向に回転駆動され、モータ61の駆動が停止する。このとき、受け部材82は食品の取り出し部8にあり、受け部材82の上に所定の姿勢を保って支持されている切断済みの食品10を能率よく取り出すことができる。
【0071】
本発明の要旨は前述の切断刃ユニット100の構成にある。したがって、食品載置台の駆動機構は任意であって、本実施例に採用されている駆動機構6の構成に限定されるものではない。また、切断される食品を受け取りに行く機構を設けるか否かも任意である。さらに、切断刃ユニットを固定して対象食品を移動させることによって対象食品を切断する機構にするか、切断刃ユニットを移動させて固定の対象食品を切断する機構にするかも任意である。
【0072】
前述のとおりに構成されている切断刃ユニット100によれば、切断刃3の張力調整がラフで、張力が緩くても、食品切断時に切断刃ごとに適切な張力が働く。すなわち、自動的に切断刃ごとに適切な張力が働くため、切断刃の張力調整はラフであってもよく、張力が緩く調整されていてもよい。そのため、食品切断装置のユーザーが切断刃を交換し、張力を調整することも可能である。複数の切断刃全体としての張力が強くなりすぎることを回避することができるため、切断刃保持枠2が変形することもなくなり、食品切断性能の劣化を軽減することができる。
【0073】
各切断刃3の両端部に設けるボスは、一端側と他端側で、一面側と他面側の長さを異ならせて方向性を持たせ、各切断刃3の両端部のボスを受け入れる張力保持板120の拡幅部122にも幅に差をつけて方向性を持たせ、切断刃3が所定の向きでなければ保持枠2に装着することができない構成になっている。よって、切断刃3を誤った向きに装着することもなくなり、この点からも、食品切断装置のユーザー側で切断刃3を交換することを容易にしている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る食品切断装置は、主として海苔巻きなどの巻き寿司を主な対象食品として想定しているが、円柱状、角柱状、あるいは棒状の食品を輪切り状に切断することができる。したがって、切断対象となる食品は、巻き寿司のほか、蒲鉾、竹輪などの練り製品、その他の食品の切断にも使用可能である。
【符号の説明】
【0075】
2 切断刃固定枠
3 切断刃
4 側板
5 食品載置台
6 駆動機構
10 食品
100 切断刃ユニット
110 切断刃掛け止め部材(張力付与ブロック)
111 V字形の溝
112 スリット
120 切断刃掛け止め部材(張力保持板)
121 スリット
122 拡幅部
124 V字形の溝
130 張力調整ねじ
140 雄型ボス
150 雌型ボス
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻き寿司などの棒状の食品を所定の幅に輪切り状に切断する食品切断装置に関するもので、特に、切断刃を両持ち状に支持した食品切断装置における上記切断刃の張力調整機構に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、回転寿司店などで提供される例えば巻き寿司などは、自動機によって棒状に成形され、さらに、所定の幅に輪切り状に切断される。棒状の巻き寿司などを包丁によって手作業で輪切りにしていたのでは多大の労力と時間を要するとともに、輪切りの幅寸法がばらつくので、食品切断装置が用いられている。食品切断装置には、固定した切断対象食品に対し切断刃を移動させて切断するものと、固定した切断刃に対し切断対象食品を移動させて切断するものがある。また、切断刃の支持形態によって、片持ち形式のもの、両持ち形式のものに分類することができる。
【0003】
固定した切断対象食品に対し切断刃を移動させて切断する食品切断装置によれば、切断対象食品のセット位置と切断後の食品の取り出し位置が同じであり、作業性は良い。しかし、載置台に載せられた切断対象食品を回転刃が横切るため、切断対象食品を回転刃が横切るときは載置台の周辺に手を差し入れることができないように安全機構を設けて安全性を確保する必要がある。また、切断刃は回転軸に片持ち的に固着されるため、刃の厚みを大きくして所定の強度を持たせる必要があり、切断対象食品に対する切れ味が、両持ち型の切断刃を用いる場合と比較すると若干劣る。したがった、海苔巻き寿司のような柔らかい切断対象食品の場合、切断時に加わる圧力で型崩れが生じにくい両持ち型の切断刃を用いることが望ましい。
【0004】
特許文献1には、固定した切断対象食品である海苔巻寿司等に、切断刃を移動させながら当てることにより海苔巻寿司等を輪切りにする海苔巻寿司等の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、刃物枠を複数の切断刃とともにリンク機構により移動させて海苔巻寿司等を切断する構成になっている。
【0005】
特許文献2には、固定した切断刃に対し切断対象食品である巻き寿司を移動させて切断する巻き寿司の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、上記刃物枠をフレームに固定している。上記巻き寿司はこれを受け台に載せ、この受け台を下から上方に向かって移動させることにより、巻き寿司に切断刃を徐々に食い込ませながら巻き寿司を輪切り状に切断する構成になっている。切断刃を固定し、切断刃に対し対象食品を相対移動させることによって対象食品を輪切り状に切断する食品切断装置は、特許文献3にも記載されている。
【0006】
切断刃が、特許文献1記載の切断装置のような可動の刃であっても、特許文献2および特許文献3記載の発明のような固定の刃であっても、矩形の枠体に複数の切断刃が平行に渡され、各切断刃の両端部が枠体に固定された両持ち型になっている。両持ち型の切断刃は、対象食品が接触するときに加わる圧力に耐えるように、適宜の張力を与える必要がある。そこで、特許文献1乃至3に記載されているように、枠体に対して一つ一つの切断刃ごとに張力調整構造を設けて、各切断刃の張力を個別に調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−31392号公報
【特許文献2】特許第4368024号公報
【特許文献3】特開2006−68848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食品切断装置が備えている切断刃は一種の消耗品であり、一定の使用回数ごとに交換する必要がある。しかし、特許文献1乃至3に記載されているような構造の両持ち型の切断刃を備えた従来の食品切断装置によれば、複数の切断刃ごとに設けられている張力調整構造によって個々の切断刃の張力を調整する必要があり、全ての切断刃の張力をバランスよく調整することは難しい。そのため、切断刃の交換および張力調整には専門的な技能が必要であり、食品切断装置のユーザー側で切断刃を交換し調整することは難しい。また、切断刃の張力を個別に調整すると、一つ一つの切断刃の張力が過大になりがちであり、全ての切断刃の張力が合成されて、切断刃を保持している枠体に過大な負荷がかかり、長期間使用しているうちに枠体が変形することがある。枠体が変形すると、切断刃の張力が緩み、食品切断性能が低下する。
【0009】
さらに、従来の食品切断装置によれば、切断刃の張力が経時的に変化することがある。その原因としては、切断刃の製造工程上の精度のばらつき、例えば、切断刃を固定するための孔のピッチのばらつき、刃付け、焼き付け、コーティングなどによる切断刃の収縮や反りなどがある。また、切断刃の使用回数を重ねることによって切断刃自身の延び、切断刃を固定するための孔の拡大なども、経時的な切断刃の張力の変動要因となる。
【0010】
本発明は、上に述べた従来の食品切断装置の問題点を解消すること、すなわち、切断刃の交換および張力調整が容易で、切断刃の張力が緩くても、食品切断時には切断刃に所定の張力がかかるようにして、切断刃の張力の緩みによる食品切断性能の低下を防止することができる食品切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る食品切断装置は、
切断対象食品を載置する食品載置台と、
切断刃固定枠によって長さ方向両端部が保持されている切断刃と、
上記切断対象食品を輪切り状に切断するために上記食品載置台と上記切断刃を相対移動させる駆動機構と、を有し、
上記切断刃は、長さ方向両端部にボスが突設され、
上記切断刃固定枠には、一対の側縁部に沿ってそれぞれ上記切断刃のボスを掛け止めるV字形の溝を有する切断刃掛け止め部材が配置され、
上記切断刃掛け止め部材の少なくとも片方は、他方の切断刃掛け止め部材との離間距離を調整することによって上記切断刃にかかる張力を調整することができる張力調整部材を有していることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る食品切断装置によれば、切断対象食品と切断刃とが接触すると、切断刃にかかる押圧力で切断刃のボスがV字形の溝に押圧され、上記V字形の溝の傾斜面で切断刃の両端部のボスを互いに引き離す向きの分力を生成する。この分力は切断刃の張力を高め、かつ、上記押圧力に対応した張力を生成するため、切断刃の張力調整が緩くても、必要なときに必要な張力が生成される利点がある。切断刃の交換および張力調整が容易になる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る食品切断装置の実施例を示す外観斜視図である。
【図2】側面カバーおよび前カバーを除去した状態の上記実施例を右前方から俯瞰して示す斜視図である。
【図3】側面カバーを除去した状態の上記実施例を示す正面図である。
【図4】上記実施例中の切断刃ユニットを示す斜視図である。
【図5】上記切断刃ユニットを別の角度から示す斜視図である。
【図6】上記切断刃ユニットに装着される切断刃の一端部の構造を示す分解正面図である。
【図7】上記切断刃ユニットを、中間を省略して示す拡大側面図である。
【図8】上記切断刃ユニットを、中間および一端側を省略して示す拡大背面図である。
【図9】前カバーおよび右側の側板を除去した状態の上記実施例の初期位置を示す左側面図である。
【図10】図9に示す動作態様に続く別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図11】図10に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図12】図11に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図13】図12に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図14】図13に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図15】図14に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図9に準じて示す左側面図である。
【図16】本発明に係る食品切断装置の別の実施例を図9に準じて示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下、本発明に係る食品切断装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施例では、切断刃が複数用いられているが、本発明に係る食品切断装置においては、切断刃の数は任意で、1個のみの切断刃を用いるものであってもよい。
【実施例1】
【0015】
図1乃至図3において、食品切断装置は、上端部が切断対象食品(以下、単に「食品」という)の供給部、前面下部が食品の取り出し部8となっていて、前面は上記供給部と取り出し部8を除き前面パネル15で覆われ、左右両側面はそれぞれ側面カバー14で覆われている。この装置の動作開始前の初期位置では上記供給部に食品載置台5があり、この食品載置台5に、食品10、例えば、寿司飯が海苔で巻かれた柱状の海苔巻きを、長手方向を水平方向に向けた姿勢で載置するように構成されている。食品載置台5に食品10を載置し、スタートスイッチを押すと、食品載置台5が後で詳細に説明する駆動機構によって装置の前側下部に向かって移動させられ、この移動の途中で食品10が切断刃によって輪切り状に切断され、上記取り出し部8に受け渡されるように構成されている。食品載置台5から取り出し部8に受け渡された食品10は、固定された傾斜案内部材81と、傾斜案内部材81に案内されて上下動する受け部材82で受け取られ、受け部材82が斜め下方にスライドし、食品載置台5は上記駆動機構によって原位置に復帰するように構成されている。
【0016】
次に、上記食品切断装置の内部構造を詳細に説明する。図1乃至図3および図9において、食品切断装置は、ベース1と、ベース1の左右両端部に結合されて互いに平行に垂直方向に立ち上がった左右の側板4と、各側板4の後端部を連結する背板を有していて、これらベース1、左右の側板4および背板で食品切断装置の骨格をなしている。装置の前寄りの位置に切断刃固定枠2(図2乃至図5、図7および図8参照)がほぼ垂直方向に立った姿勢で配置されている。切断刃固定枠2は、左右の両端縁部が、左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれ、上記ガイドレールにより左右の側板4間に実質的に固定されている。
【0017】
図2乃至図5および図8に示すように、切断刃固定枠2は、高さが装置の高さよりも僅かに低い四角形の枠形で、切断刃固定枠2の上下で複数の切断刃3の長さ方向両端部が保持され、各切断刃3は互いに平行に縦方向に並んでいる。図示の例では7本の切断刃3が一定間隔で配置されていて、食品10を8等分するようになっている。各切断刃3は細長い薄板状の部材で、その幅方向が装置の前後方向に向くように、かつ、刃の形成縁が背面側を向くように配置されている。各切断刃3の表面は食品10に対する滑りをよくするために例えばフッ素樹脂などでコーティングされている。各切断刃3は長さ方向の両端部が切断刃固定枠2の上下で保持された両持ち形式であるため、上記のように細長い薄板状の部材であっても、十分大きな機械的強度を保つことができる。切断刃固定枠2とこの切断刃固定枠2によって両持ち的に保持されている複数の切断刃3によって切断刃ユニット100を構成している。以下、切断刃ユニット100について詳細に説明する。
【0018】
図4乃至図8において、切断刃固定枠2の背面側には、上端部に張力付与ブロック110が、下端部に張力保持板120が、それぞれ切断刃固定枠2を構成する上側の桁21と下側の桁22に沿って配置されている。張力付与ブロック110と張力保持板120は、切断刃掛け止め部材として機能する。切断刃固定枠2の上側の桁21の長さ方向両端部には張力調整部材としての張力調整ねじ130が桁21の上側から挿入され、各張力調整ねじ130のねじ部が張力付与ブロック110のねじ孔にねじ込まれている。各張力調整ねじ130の頭部は、上側の桁21の上面から突出していて、切断刃3の張力調整ノブとして機能する。各張力調整ねじ130は上記桁21に対して中心軸線の周りに回転可能に、しかし、桁21に対して中心軸線方向には移動不能に嵌め込まれている。したがって、各張力調整ねじ130の頭部を回転操作することにより、張力付与ブロック110を桁21に向かって引き付け、あるいは桁21から遠ざかるように位置調整することができる。上記張力保持板120は、上記下側の桁22に固定されている。
【0019】
張力付与ブロック110の上面には、図7に示すように、側面から見てV字形の溝111が張力付与ブロック110の長さ全体にわたって形成されている。張力付与ブロック110にはまた、図4、図8に示すように、切断刃3を挿入するためのスリット112が張力付与ブロック110の背面側から複数、張力付与ブロック110を幅方向すなわち図4、図8において上下方向に横切って一定間隔で形成されている。各切断刃3の両端部には、後で詳細に示すようにボスが固着されていて、各切断刃3の上端部のボスが通り抜けることができるように、上記桁21と張力付与ブロック110との間に適宜幅の間隙23が開けられている。
【0020】
図4、図7および図8に示すように、張力保持板120は、金属板を打ち抜きかつ折り曲げることによって製作されている。張力保持板120は、上端縁部の側面形状がV字状に折り返され、もって、張力保持板120の上端の天井部は逆V字形の溝124となっている。張力保持板120には、背面側から各切断刃3の下端部を張力保持板120内に導き入れるための複数のスリット121が張力保持板120の上下方向に、かつ、張力保持板120の長手方向に一定の間隔で形成されている。各スリット121の長さ方向の中間は、各切断刃3の下端部のボスが通り抜けることができるように拡幅部122が形成されている。図4、図8に示すように、各拡幅部122は、スリット121の左右の一方側の幅が狭く、他方側の幅が広くなっている。
【0021】
図6は、各切断刃3の両端部に固着されているボスの構造を示している。ボスは雄型ボス140と雌型ボス150からなる。雄型ボス140は頭部を主体としていて、この頭部から中心軸線に沿って延びた軸部141を有している。雌型ボス150は、雄型ボス140の頭部の外径と同じ外径の筒形で、中心孔151の内径は雄型ボス140の軸部141の外径とほぼ同じである。雌型ボス150の軸線方向長さは、雄型ボス140の頭部の軸線方向長さよりも長く、かつ、雄型ボス140の軸部141の軸線方向長さとほぼ同じかこれよりも長くなっている。各切断刃3の両端部には雄型ボス140の軸部141を貫通させるための孔が形成されていて、この孔に切断刃3の片面側から雄型ボス140の軸部141を貫通させ、切断刃3の他面側に突出している上記雄型ボス140の軸部141に雌型ボス150の中心孔151が嵌め合わされている。そして、雄型ボス140の軸部141をかしめるなどの手法により、切断刃3に雄型ボス140と雌型ボス150が一体に固着されている。
【0022】
図8に示すように、各切断刃3に固着されるボスの雌雄の関係は、切断刃3の一端側と他端側とでは、切断刃3を挟んだ一面側と他面側で互いに逆になっている。すなわち、図8に示す例では、各切断刃3の上端部においては、各切断刃3の左側面側が雄型ボス140、右側面側が雌型ボス150、各切断刃3の下端部においては、各切断刃3の左側面側が雌型ボス150、右側面側が雄型ボス140になっている。そして、切断刃固定枠2の下側の桁22に固定されている前記張力保持板120の各スリット121に形成されている拡幅部122は、図4、図8に示すように、左側が幅広で、右側が狭くなっている。
【0023】
各切断刃3のボスが上記のように構成され、張力保持板120の各スリット121の拡幅部122が上記のように形成されているため、スリット121に切断刃3の一端部を通したとき、幅広の上記拡幅部を雌型ボス150が通り抜け、幅が狭い方の上記拡幅部を雄型ボス140通り抜けることができるようになっている。仮に、切断刃3の向きが反転しているものとすると、幅が狭い方の拡幅部に雌型ボス150が当たって、上記拡幅部を雌型ボス150が通り抜けることができず、切断刃3を切断刃固定枠2に装着することができない。このように構成した理由は、各切断刃3は、刃の部分が切断刃固定枠2の背面側を向いて装着されている必要があるからである。
【0024】
張力保持板12に対しては上記のようにして各切断刃3の下端部を装着することができる。張力付与ブロック110に対しては、そのスリット112に切断刃3を通し、前記間隙23から切断刃3のボスを通すことにより、各切断刃3の上端部を装着することができる。このようにして、各切断刃3の上下両端部を張力付与ブロック110と張力保持板120に装着した後、前記一対の張力調整ねじ130を回転操作して張力付与ブロック110を上側の桁21に引き付ける。張力付与ブロック110が桁21に引き付けられることにより、各切断刃3の上下のボスは、図7に示すように、張力付与ブロック110のV字形の溝111と、張力保持板120の逆V字状のボス受け部122の、V字の谷に相当する部分に追い込まれ、各切断刃3に張力が与えられる。
【0025】
各切断刃3全体にかかる張力を一対の張力調整ねじ130によって調整することができる。各切断刃を個別に張力調整するものではないから、従来の食品切断装置における切断刃の張力調整のように、個々の切断刃の張力を強めに調整することにより、全ての切断刃の張力の合成値が強くなりすぎて前述のような不具合を防止することができる。
【0026】
各切断刃3全体にかかる張力を一対の張力調整ねじ130によって調整する構成になっていることから、切断刃3および雌雄のボス140,150の寸法精度誤差、張力付与ブロック110と張力保持板120の精度誤差などによって、各切断刃3に張力のばらつきが生じる。場合によっては、全体として所定の張力がかかっていても、一部の切断刃3には張力が弱く、ほとんど張力がかかっていないものもありえる。しかし、前述のように、各切断刃3の上下のボスは、張力付与ブロック110と張力保持板120のV字形の谷に相当する部分にあるため、後述の駆動機構によって食品が切断刃に押し当てられると、図7に矢印で示すように、上記上下のボスが張力付与ブロック110と張力保持板120のV字形の谷の斜面に押し当てられる。これらの斜面に沿って上記ボスが押し当てられることにより、図7に矢印で示すように、切断刃3の両端部のボスを互いに引き離す向きの分力が生成され、切断刃3に張力がかかる。この張力は、食品による切断刃3への押圧力が大きければ、それに応じて大きくなる。このように、各切断刃3は切断刃として機能するときに必要な張力がかかるため、個々の切断刃3に付与する張力は弱くてもよく、各切断刃3相互の張力のばらつきが大きくても食品切断性能が劣化することはない。
【0027】
以上説明したように構成されている切断刃ユニット100は、前述のように、切断刃固定枠2の左右の両端縁部が、左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれることにより食品切断装置に装着されている。切断刃ユニット100を装着したときの各切断刃3の刃先は、食品切断装置の背面側を向いている。
【0028】
次に、食品切断装置の他の構成部分について説明する。前記食品載置台5は、図9に示すように、上側のほぼ半分の側面形状がL字形に形成されることにより、L字の水平辺と垂直辺からなる角隅部に切断前の食品10を載置することができるようになっている。より具体的には、上記L字の水平方向に延びる部分が食品10の底面受け51、上記L字の垂直方向に延びる部分が食品10の背面受け52となっている。食品載置台5によって受けられる海苔巻きのような食品には幾種類かのサイズがあり、食品のサイズが異なっても、これに対応してこれを食品載置台5に保持することを可能にした機構が設けられる。ただし、かかる機構は本願発明に直接関係するものではないから、説明は省略する。
【0029】
食品載置台5に載置されている食品10を前記切断刃3で切断するために、食品載置台5には切断刃3が進入することができるスリット58が形成されている。スリット58は切断刃固定枠2に固定される切断刃3の数および設置位置に対応した数と位置に設けられる。図示の実施例では、食品10の分割数を4個、6個または8個というように選択することができるように、左右方向の中央のスリットを中心にして上記の分割数にそれぞれ対応した位置にスリット58が形成されている。各スリット58は、切断刃3を迎え入れて食品10を確実に切断することができるように、前記底面受け51および背面受け52を含む広い範囲にまたがって深く切り込まれている。
【0030】
図9などに示すように、食品載置台5には、載置される食品10の長さ方向両端位置を規制する規制板56が背面受け52の両端部に設けられている。規制板56は金属板を折り曲げて成形したもので、背面受け52に固定ねじで取り付けられる。食品10が例えば海苔巻き寿司であるとすれば、海苔の寸法は205mm×185mmに規格化されているため、海苔を横長にして巻くか、縦長にして巻くかによって切断前の海苔巻き寿司の長さが変わる。そこで、一対の規制板56の間隔を海苔巻き寿司の長さに合致するように調整する。
【0031】
次に、図2、図3、図9に符号6で示す食品載置台の駆動機構について詳細に説明する。図2、図3、図9において、左の側板4の内側面には駆動源としてのモータ61が固定され、モータ61の出力軸に固着されたギヤ62は、軸64に固着されたギヤ63と噛み合っている。軸64は左右の側板4にまたがって回転可能に支持されていて、左右の側板4を貫通した軸64の両端部にはそれぞれ駆動アーム65が固着されている。モータ61の回転駆動力は、ギヤ62,63を介して軸64に伝達され、軸64と一体の各駆動アーム65を各側板4の外側面と平行をなす面内において回転駆動するように構成されている。各駆動アーム65は軸64の回転中心を通る直線に沿って長孔66を有している。
【0032】
図9に示すように、食品載置台5の底部には、この底部を左右方向にかつ水平に貫通して2本の軸53,54が取り付けられている。軸53,54は互いに平行で、軸53は食品載置台5の前後方向中央部に、軸54は食品載置台5の前後方向後部に配置されている。これら2本の軸53,54のうち前側(食品載置台5の前後方向中央部)の軸53の両端部はそれぞれ両側の上記駆動アーム65の長孔66に嵌っている。したがって、各駆動アーム65が軸64とともに軸64を中心に回転駆動されると、長孔66の壁面で軸53が押され、各駆動アーム65の回転に伴い、後述のカム溝91に規制されながら、食品載置台5も移動させられるようになっている。この食品載置台5とともに食品10も移動し、この移動の途中で、食品10が切断刃3の位置を通り、食品10が切断されるようになっている。
【0033】
左右の各側板4には、側面から見て互いに重なり合うカム溝91が形成されている。これらのカム溝91に、食品載置台5に取り付けられている2本の軸53,54の両端部が嵌っていて、2本の軸53,54は、各カム溝91の側壁面で支持されるとともに、カム溝91に対する食品載置台5のカムフォロワとしても機能するようになっている。食品載置台5の高さ位置および姿勢は2本の軸53,54の高さ位置および相対的な高さの違いによって決まり、2本の軸53,54の相対的な高さ位置関係はカム溝91の形によって決まる。
【0034】
図2、図9は、一連の食品切断動作開始前の初期位置を示している。この初期位置では、各駆動アーム65がほぼ垂直近くまで最大に立ち上がった姿勢になっている。この態様では、図9に示すように、食品載置台5が最も高い位置になるように、上記2本の軸53,54がカム溝91の上端部に嵌っている。また、図10、図11に示すように、カム溝91の上端部は緩やかな円弧部92となっていて、この円弧部92は後ろ側が徐々に低くなっている。そして、上記のように食品載置台5が最も高い位置にあるとき、2本の軸53,54は上記円弧部92にあり、よって、食品載置台5は、後方に僅かに反ったような姿勢をとる。
【0035】
上記カム溝91はまた、図10、図12などに示すように、上記円弧部92から斜め下方に向かう円弧部93に連続しており、円弧部93はさらに斜め下方に延びた直線部94に連続している。食品載置台5が上記初期位置から移動を開始し、食品載置台5とともに食品10が移動して切断刃3に接触し始めると、上記2本の軸53,54が円弧部93に至る。2本の軸53,54が円弧部93を通るとき、食品載置台5は下方に移動しながら姿勢が徐々に下向きになる。すなわち、食品載置台5と食品10の伏角が徐々に大きくなり、食品10に対する切断刃3の進入角度が連続的に変化し、食品10の切断刃3に対する相対速度が早くなるように、カム溝91の上記円弧部93の下側の面が凸面になっている。
【0036】
前述のように、食品10の受け入れ姿勢をとっている食品載置台5に食品10を載置し、駆動機構6を作動させると、2本の軸53,54がカム溝91の円弧部92から円弧部93に移動し、さらに直線部94に移動する。軸53,54が上記円弧部93を通るとき、軸53の高さ位置が軸54の高さ位置よりも徐々に低くなり、食品載置台5の姿勢が前傾姿勢となるとともに前傾角度が徐々に大きくなる。
【0037】
このようにして食品載置台5が姿勢を変化させているとき、食品載置台5に載置されている食品10が切断刃3に接触し始めるように、切断刃3、食品載置台5、軸53,54、カム溝91相互の位置関係が設定されている。軸53,54は、上記円弧部93を通過した後はカム溝91の直線部94に導かれ、食品載置台5は上記の前傾姿勢のままで前述のように上から斜め下に向かって直線状に移動し、切断刃3で食品が切断される。切断された食品10は次に説明する取り出し部材8に移動し、続いて駆動機構6が逆向きに作動して食品載置台5を原位置に復帰させる。
【0038】
このような駆動機構6の往復動作は、例えば、スタートボタンを押すだけで行わせることができる。スタートボタンが押されると、前記モータ61が正転方向に駆動されて駆動アーム65が図9において時計方向に回転駆動される。この駆動アーム65の回転方向は往動方向であり、往動方向の移動限界を検出するまで前記モータ61が正転方向に駆動される。駆動アーム65が往動方向の限界位置に達すると、モータの駆動方向が逆転方向に切り換えられ、駆動アーム65は復動方向に駆動され、復動方向の移動限界を検出するとモータ61の駆動を停止する。このようにして駆動アーム65が往復動することにより、食品載置台5が前述のように姿勢を変えながら下降し、食品載置台5で保持していた食品10が切断刃3で切断された後、食品載置台5のみが原位置に復帰する。
【0039】
次に、前記食品の受け取り部の構成について詳細に説明する。図1乃至図3に示すように、装置の前側下部に、切断後の食品10の取り出し部8が設けられている。取り出し部8は、下側が装置の前側に突出する向きに傾斜させて固定された傾斜案内部材81と、この傾斜案内部材81に案内されて上下動する受け部材82を有してなる。傾斜案内部材81の前面には、切断された食品10を傾斜案内部材81に沿って円滑に下降させることができるように、複数のリブ85が縦方向に平行に形成され、食品10との滑り抵抗を低減している。
【0040】
受け部材82は、傾斜案内部材81の前面に対し直角方向に、したがって斜め前上に向かって突出している。受け部材82は折り曲げ成形によって製作されていて、その基部は傾斜案内部材81の前面に案内されて斜めに上下動する摺動部86となっている。この摺動部86の左右方向両端部には折り曲げ部88が形成されている。各折り曲げ部88は、傾斜案内部材81の両端部に上下方向に形成されている案内溝87を貫いて傾斜案内部材81の背面側に潜り、さらに傾斜案内部材81の両側方に突出し、摺動部材89の前面にねじ止めされている。各摺動部材89は直方体状の部材で、横断面がU字形の案内レール90に案内されて摺動するようになっている。案内レール90は、左右の側板4の外側面に、傾斜案内部材81と平行になるように、かつ、U字形断面の開放端を側方に向けて固定されている。各案内レール90には、受け部材82の上記折り曲げ部88が摺動部材89とともに摺動するときの障害にならないように、上記折り曲げ部88に対する逃げ孔91が形成されている。
【0041】
受け部材82は、左右一対のリンクアーム30が回転することによって駆動されるようになっている。各リンクアーム30は、左右の側板4の外側面下方寄りの位置に、共通の軸31を中心にして側板4と平行をなす垂直面内で回転可能に取り付けられている。本実施例に係る食品切断装置を正面から見て左側の側板4に取り付けられているリンクアーム30の基端部には、軸31と同心円をなす小ギヤ32が固着されている。各リンクアーム30の先端部には軸31の中心を通る線に沿った長孔33が形成され、各長孔33には、各摺動部材89の側面に植えられているピン34が嵌っている。したがって、リンクアーム30が回転駆動されると、その長孔33の側壁によってピン34が押され、ピン34とともに受け部材82が案内レール90に案内されながら斜め上下方向に上昇し下降するように構成されている。
【0042】
この実施例では、リンクアーム30の駆動源はモータ61で、以下のような連携機構を介してモータ61の駆動力がリンクアーム30に伝達されるようになっている。前記各駆動アーム65の長さ方向中央付近の外側面にはピン68が植えられている。駆動アーム65の回転中心である前記軸64によって扇形の大ギヤ20が保持されている。大ギヤ20は、扇の中心に相当する位置に軸64があり、軸64を中心とした円弧に沿ってギヤが形成されている。大ギヤ20は、軸64に対しては相対回転自在となっており、ギヤ形成部分は上記小ギヤ32と噛み合っている。
【0043】
扇形をなす大ギヤ20には、図9において上側の側面に、三角形状の連携板40が固着されている。連携板40は、駆動アーム65の長さ方向に対し略直交する方向に長孔41を有している。この長孔41には駆動アーム65のピン68が嵌っている。ただし、ピン68の外径に対して長孔41の幅は十分に大きく、ピン68が長孔41の長さ方向の範囲内で移動するときは長孔41を画する壁面に接することはなく、ピン68が長孔41の長さ方向両端に至ったとき、大ギヤ20を駆動するようになっている。
【0044】
図9に示す態様では、駆動アーム65が反時計方向に最大限回転し、前述のように食品載置台5が最上位まで移動して食品10を受け入れる姿勢をとっている。この態様では、上記ピン68が連携板40の長孔41の一端にあって連携板40を引き上げ、連携板40と一体の大ギヤ20を、軸64を中心に反時計方向に回転させている。大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32を回転させる。図9に示す態様では、小ギヤ32が時計方向に最大限回転させられ、小ギヤ32と一体的に時計方向に回転したリンクアーム30によって摺動部材89が限界位置まで下降している。摺動部材89は下降限界位置で下部のストッパ35に当たって移動が制限され、摺動部材89と一体の受け部材82とともに下降位置が安定に保持されるようになっている。
【0045】
駆動アーム65が、図4に示す位置から時計方向に回転駆動され、図11に示すようにピン68が大ギヤ20の上縁に当たるまでは、ピン68は連携板40の長孔41内を、円弧を描きながら移動するだけで、ピン68に連動する部材はない。図11に示す動作態様は食品10が切断刃3で約半分切断された態様にある。図11に示す動作態様からさらに駆動アーム65が時計方向に回転するにしたがい、ピン68が大ギヤ20の上縁を押し、大ギヤ20を時計方向に回転させる。この大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32は反時計方向に回転駆動され、この回転力がリンクアーム30に伝達されてリンクアーム30が軸31を中心に反時計方向に回転駆動される。図11、図12は大ギヤ20の時計方向回転による小ギヤ32およびリンクアーム30の反時計方向回転を示している。このリンクアーム30の反時計方向への回転により長孔33とピン34を介して摺動部材89およびこれと実質一体の受け部材82が、傾斜案内部材81に案内されて斜め上方に押し上げられるようになっている。
【0046】
リンクアーム30の長さと食品載置台5の上下方向の移動距離との比に対して、大ギヤ20と小ギヤ32のギヤ比を大きくし、大ギヤ20の回転角度の割には小ギヤ32の回転角度が十分に大きくなるように設計されている。しかし、摺動部材89および食品載置台5が実際に移動することができるストロークは限られているので、小ギヤ32が食品載置台5の必要なストローク分を越えて回転駆動されるときは、小ギヤ32とリンクアーム30との間で滑りが生じるように、滑り機構が設けられている。滑り機構はトルクリミッタともいわれている。滑り機構の具体的な構成は図示していないが、周知の構成を適宜選択して採用すればよい。例えば、小ギヤ32とリンクアーム30との間に反発コイルばねを介在させることにより滑り機構を構成してもよい。
【0047】
図12に示す態様では、摺動部材89が上部のストッパ36に当たり、摺動部材89および食品受け台5が上昇限界位置にある。摺動部材89がストッパ36に当たってもなお図13に示すように大ギヤ20が時計方向に回転し、小ギヤ32が反時計方向に回転駆動される。しかし、摺動部材89が移動限界に達しているので、リンクアーム30は回転することができず、上記滑り機構で駆動部材89の余分な移動ストロークを吸収するようになっている。
【0048】
リンクアーム30は、本実施例に係る食品切断装置を正面から見て左右両側に設けられて食品載置台5を左右両側から駆動するようになっている。これに対して、一対のリンクアーム30に駆動力を伝達する連携板40、大ギヤ20、小ギヤ32および前記滑り機構は、本装置の左側にのみ設けられている。一対のリンクアーム30は共通の軸31で一体に結合されて一対のリンクアーム30が一体として駆動されるようになっている。
【0049】
次に、以上のように構成されている実施例の一連の動作を説明する。図2、図3、図9は動作開始前の初期状態を示している。駆動アーム65は図9において反時計方向への回転限界位置にあって、最も立ち上がった姿勢になっている。食品載置台5は2本の軸53,54がカム溝91の上側終端部の円弧部92にあって切断前の食品10の載置姿勢をとっている。駆動アーム65のピン68が連携板40長孔41の一端に当たり、連携板40とともに大ギヤ20を図9において反時計方向に回転させている。この大ギヤ20の回転により小ギヤ32は図9において時計方向に回転し、摺動部材89、受け部材82が下方への移動限界位置にある。
【0050】
上記初期状態において、食品載置台5に食品10を載置し、スタートボタンを操作すると、モータ61が起動され、駆動機構6が作動を開始する。ギヤ列61,62、軸64を経て駆動機構6の駆動アーム65が図5に示すように時計方向に回転駆動され、その長孔66に嵌っている食品載置台5の軸53がカム溝91に沿って移動させられる。軸53とともに軸54もカム溝91に沿って移動する。食品載置台5の高さ位置と姿勢は2本の軸53、54の高さ位置および相互の高さ位置の違いによって定まる。軸53、54がカム溝91の円弧部93の位置にさしかかると、軸53の高さ位置が軸54の高さ位置に対して連続的に低くなり、もって、食品載置台5が前傾姿勢をとるとともに前傾姿勢が徐々に深くなる。
【0051】
上記のように、食品載置台5が前傾姿勢をとり始める位置は、食品10が切断刃3に接触し始めるときである。食品10と切断刃3の接触開始当初は、食品10に対する切断刃3の進入角度を連続的に変化させて切断刃3と食品10の相対速度を速めるようになっている。図10はこのときの動作態様示している。こうして切断開始当初の食品10への切断刃3の進入を容易にし、食品10の切断が円滑に行われるように工夫されている。
【0052】
食品載置台5の軸53、54がカム溝91の直線部94に至ると、食品載置台5は最大の傾斜角度を保ったまま上記直線部94に沿って斜め下方に移動する。この間、垂直方向に両持ち状に固定された切断刃3と交差しながら、食品載置台5とともに食品10が斜め下方に一定の相対速度で移動し、食品10が輪切り状に切断される。図11乃至図13はこの作動態様を示しており、図13は切断完了直後の状態を示している。食品載置台5には、前述の通り、切断歯3に対する逃げ溝が形成されている。
【0053】
図11は、食品10の切断工程の途中であって食品10が約半分切断され、駆動アーム65のピン68が大ギヤ20に当たり始めた動作態様を示している。駆動アーム65がさらに回転することにより、ピン68が大ギヤ20を下に向かって押し、大ギヤ20を、図12、図13に示すように時計方向に回転させる。大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32を反時計方向に回転させる。小ギヤ32の回転力は、前記滑り機構を介してリンクアーム30に伝達され、リンクアーム30は反時計方向に回転駆動される。このリンクアーム30の回転により摺動部材89および受け部材82が、傾斜案内部材81および案内レール90に案内されて斜め上方に押し上げられる。図11は受け部材82が斜め上方に上昇している途中の態様を、図12は受け部材82が上側のストッパ36に当たる限界位置まで上昇した態様を示している。
【0054】
前記カム溝91の直線部94の傾斜角度と案内レール90の傾斜角度は同じ角度になっていて、上記直線部94に沿った食品載置台5の上下移動方向と案内レール90に沿った受け部材82の上下移動方向は平行になっている。そして、図12に示すように、上側の限界位置まで上昇した受け部材82は、食品載置台5に載置されて食品載置台5とともに斜めに下降してくる食品10の移動方向前方に位置して、食品10を受け取る態勢をとっている。
【0055】
受け部材82が上側の限界位置まで上昇したのちもなお駆動アーム65が図13に示すように時計方向に回転駆動され、駆動アーム65は軸53を下降させる。軸53は軸54とともにカム溝91の直線部94に沿って下降し、食品載置台5は食品10を保持しかつ前傾姿勢を保ったまま斜め下方に向かって移動する。図12は、食品載置台5で保持されている食品10の切断完了直前の動作態様を示している。この動作態様では、食品載置台5が上記のように移動し、食品載置台5に保持されている食品10が受け部材82に接している。
【0056】
食品10の太さが図示のものより大きい場合は、上昇限界にある受け部材82に対する食品10の接触タイミングが早く、受け部材82は下降してくる食品10で押し下げられる。この押し下げ力で摺動部材65と受け部材82が下方に押し下げられ、リンクアーム30が図9において時計方向に強制的に押し戻される。このリンクアーム30の強制的な時計方向への回転は、リンクアーム30と小ギヤ32との間の前記滑り機構が滑ることによって許容される。
【0057】
切断歯3による食品10の切断が完了したのちも駆動アーム65は時計方向に回転駆動され、図13に示す時計方向への回転限界に至る。図13に示す動作態様から図14に示す動作態様に至る間、駆動アーム65の長孔66と軸53の嵌り合いによって食品載置台5はなおも斜め下方に下降する。食品載置台5とともに食品10も下降するため、食品10の切断が完了するとともに、受け部材82も食品10に押されて下降する。上記駆動アーム65が時計方向に回転すると、ピン68によって大ギヤ20が時計方向に回転させられ、小ギヤ32が反時計方向に回転させられる。しかし、小ギヤ32とリンクアーム30との間に上記滑り機構が介在しているため、小ギヤ32の回転力はリンクアーム30に伝達されず、上記強制的な受け部材82の下降によるリンクアーム30の時計方向への回転が許容される。
【0058】
このようにして食品10の切断が完了し、食品10の受け部材82への受け渡しが完了した動作態様に至ると、前記モータ61の回転方向が逆向きに切り換えられる。図14は、モータ61が逆転し、駆動アーム65が反時計方向に回転して初期位置の方に向かい戻っている途中の状態を示している。駆動アーム65の戻し動作に伴い、食品載置台65の軸53と駆動アーム65の長孔66の嵌り合いにより食品載置台65がカム溝91に沿って上昇する。駆動アーム65の戻り動作の途中までは、駆動アーム65が有するピン68は連携板40の長孔41の幅と長さの範囲内で円弧を描いて移動するだけで、連携板40には作用しない。よって、大ギヤ20は回転せず、リンクアーム30、受け部材82も動かない。
【0059】
駆動アーム65が反時計方向に回転し、食品載置台5が初期位置に戻る途中で、駆動アーム65のピン68が連携板40の長孔41の一端に至ると、ピン68と連携板40を介して大ギヤ20が反時計方向に回転駆動される。この大ギヤ20の回転により小ギヤ32が時計方向に回転駆動され、前記滑り機構を介して駆動力がリンクアーム30に伝達され、リンクアーム30が時計方向に回転駆動される。このリンクアーム30の回転により摺動部材89とともに受け部材82が斜め下方に下降し、摺動部材89がストッパ35に当たり、摺動部材89および受け部材82の下降限界位置に至る。この受け部材82の下降限界位置において、受け部材82で支持されている切断済みの食品10が取り出し部8にあり、食品10を取り出すことができる。
【0060】
受け部材82が下降限界位置に至った後も、駆動アーム65は反時計方向に駆動され、食品載置台5が図15に示す初期位置に戻ることによりモータ61の駆動が停止して一連の動作が停止する。復帰動作の途中から図15に示す初期位置への復帰までの間、ピン68によって大ギヤ20が反時計方向に、小ギヤ32が時計方向に回転駆動されリンクアーム30に時計方向の回転トルクがかかる。しかし、リンクアーム30はストッパ35によって回転が制限され、前記滑り機構によって小ギヤ32とリンクアーム32が滑り、受け部材82は取り出し部8に位置したままである。
【0061】
取り出し部8にある受け部材82から切断済みの食品10を取り出し、装置の上部の食品供給部に移動している食品載置台5に食品10を載せ、再びスタートスイッチを押すと、上に述べた一連の動作を経て食品10が切断され、切断された食品10は取り出し部8に至る。
【0062】
以上説明した実施例に係る食品切断装置は、切断後の食品10をその重力で落下させるのではなく、受け部材82で受け取りに行き、食品10を受け取った受け部材82を取り出し部8まで下降させるように構成されている。したがって、切断後の食品10は所定の姿勢を保ったまま取り出し部8に至るため、切断後の食品取り出しの作業性をより一層向上させることができる。また、取り出し部8に至った食品10の姿勢がそろっているため、見た目もきれいである。
【0063】
上記実施例は、食品載置台5の駆動源と切断後の食品10を受け取る受け部材82の駆動源を共通のモータ61とし、コストの低減を図っている。そして、駆動減の共通化を図るために、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構とを連携させ、食品載置台5の駆動による食品切断行程の途中から、受け部材82を食品受け取り位置まで上昇させるように構成している。さらに、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構との移動ストロークの差を吸収するために、受け部材82の駆動機構内に滑り機構を設けている。
【実施例2】
【0064】
図16は、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構の別の実施例を示す。この実施例は、食品載置台5の駆動機構6と、切断後の食品10の受け部材82の駆動機構とを連携する連携機構がなく、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82の駆動機構が個別に駆動源を備えている。なお、図16に示す実施例では、前記第1の実施例の構成部分と同じ構成部分には同じ符号を付し、同じ構成部分の説明は簡略化する。
【0065】
図16において、食品載置台5の駆動機構6は、前記実施例と同様に、駆動源としてのモータ61、ギヤ62,63、駆動アーム65、食品載置台5を貫く2本の軸53,54、側板4に形成されているカム溝91を有している。駆動アーム65の回転による食品載置台5の動作および切断刃3による食品10の切断動作は、第1の実施例と同じである。
【0066】
切断後の食品10の受け部材82を駆動する駆動機構の駆動源として、上記モータ61とは別のモータ101を備えている。モータ101の出力軸にはギヤ102が固着されていて、ギヤ102はギヤ32と噛み合っている。ギヤ32は前記実施例と同様に軸31を回転中心としており、軸31にはまた、この軸31を回転中心とするリンクアーム30が嵌められている。リンクアーム30とギヤ32との間には、前記実施例と同様に滑り機構が設けられている。リンクアーム30は、前記実施例と同様に摺動部材89と、長孔とピンによって連携され、摺動部材89は受け部材82と実質一体に結合されている。
【0067】
モータ101を駆動源とするリンクアーム30の回転範囲は、下側のストッパ35と上側のストッパ36で規制される摺動部材89の摺動範囲よりも十分大きな摺動範囲を得ることができる回転範囲に設定され、摺動部材89が上下のストッパ36,35に当接してもなおリンクアーム30に加えられる回転駆動力は、上記滑り機構によって逃がされるようになっている。
【0068】
図16に示す実施例において、図示の初期位置にある食品載置台5に巻き寿司のような食品10を載置してスタートボタンを押すと、モータ61が起動されて食品載置台5が食品10とともに姿勢を変えながら斜め下方に向かって移動する。その間、切断刃3によって食品10が複数個に切断される。この切断行程の途中からモータ101が起動され、ギヤ102,32を経てリンクアーム30が反時計方向に駆動され、摺動部材89がストッパ36に当接する位置まで移動してモータ101が停止する。摺動部材89と一体の受け部材82も斜め上方に移動して、切断される食品10を受け取る態勢をとる。
【0069】
食品10の切断が完了した時点では、食品10が受け部材82に食品10が受け渡され、食品10のサイズの大小に応じて受け部材82が下方に押される。この押し下げ力により上記滑り機構が滑り、リンクアーム30、摺動部材89および受け部材82が押し戻される。
【0070】
駆動アーム65が食品10を切断するに必要な角度回転駆動されると、次にモータ61の回転方向が逆向きに切り換えられ、食品載置台10は初期位置に復帰する。また、モータ101も逆向きに回転駆動され、摺動部材89がストッパ35に当接するまでリンクアーム30が時計方向に回転駆動され、モータ61の駆動が停止する。このとき、受け部材82は食品の取り出し部8にあり、受け部材82の上に所定の姿勢を保って支持されている切断済みの食品10を能率よく取り出すことができる。
【0071】
本発明の要旨は前述の切断刃ユニット100の構成にある。したがって、食品載置台の駆動機構は任意であって、本実施例に採用されている駆動機構6の構成に限定されるものではない。また、切断される食品を受け取りに行く機構を設けるか否かも任意である。さらに、切断刃ユニットを固定して対象食品を移動させることによって対象食品を切断する機構にするか、切断刃ユニットを移動させて固定の対象食品を切断する機構にするかも任意である。
【0072】
前述のとおりに構成されている切断刃ユニット100によれば、切断刃3の張力調整がラフで、張力が緩くても、食品切断時に切断刃ごとに適切な張力が働く。すなわち、自動的に切断刃ごとに適切な張力が働くため、切断刃の張力調整はラフであってもよく、張力が緩く調整されていてもよい。そのため、食品切断装置のユーザーが切断刃を交換し、張力を調整することも可能である。複数の切断刃全体としての張力が強くなりすぎることを回避することができるため、切断刃保持枠2が変形することもなくなり、食品切断性能の劣化を軽減することができる。
【0073】
各切断刃3の両端部に設けるボスは、一端側と他端側で、一面側と他面側の長さを異ならせて方向性を持たせ、各切断刃3の両端部のボスを受け入れる張力保持板120の拡幅部122にも幅に差をつけて方向性を持たせ、切断刃3が所定の向きでなければ保持枠2に装着することができない構成になっている。よって、切断刃3を誤った向きに装着することもなくなり、この点からも、食品切断装置のユーザー側で切断刃3を交換することを容易にしている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る食品切断装置は、主として海苔巻きなどの巻き寿司を主な対象食品として想定しているが、円柱状、角柱状、あるいは棒状の食品を輪切り状に切断することができる。したがって、切断対象となる食品は、巻き寿司のほか、蒲鉾、竹輪などの練り製品、その他の食品の切断にも使用可能である。
【符号の説明】
【0075】
2 切断刃固定枠
3 切断刃
4 側板
5 食品載置台
6 駆動機構
10 食品
100 切断刃ユニット
110 切断刃掛け止め部材(張力付与ブロック)
111 V字形の溝
112 スリット
120 切断刃掛け止め部材(張力保持板)
121 スリット
122 拡幅部
124 V字形の溝
130 張力調整ねじ
140 雄型ボス
150 雌型ボス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象食品を載置する食品載置台と、
切断刃固定枠によって長さ方向両端部が保持されている切断刃と、
上記切断対象食品を輪切り状に切断するために上記食品載置台と上記切断刃を相対移動させる駆動機構と、を有し、
上記切断刃は、長さ方向両端部にボスが突設され、
上記切断刃固定枠には、一対の側縁部に沿ってそれぞれ上記切断刃のボスを掛け止めるV字形の溝を有する切断刃掛け止め部材が配置され、
上記切断刃掛け止め部材の少なくとも片方は、他方の切断刃掛け止め部材との離間距離を調整することによって上記切断刃にかかる張力を調整することができる張力調整部材を有している食品切断装置。
【請求項2】
一対の上記切断刃掛け止め部材の一方は切断刃固定枠に固定され、他方の切断刃掛け止め部材は切断刃固定枠に対し移動可能でありかつ張力調整部材を有している請求項1記載の食品切断装置。
【請求項3】
切断刃掛け止め部材が有するV字形の溝は、切断対象食品と切断刃とが接触することによって上記切断刃にかかる押圧力で、上記切断刃の両端部のボスを互いに引き離す向きの分力を生成するように構成されている請求項1または2記載の食品切断装置。
【請求項4】
張力調整部材は、2個を一対として切断刃掛け止め部材の長さ方向両端部に設けられている請求項1,2または3記載の食品切断装置。
【請求項5】
一対の切断刃掛け止め部材はそれぞれ切断刃を導入するスリットを有し、少なくとも片方の上記切断刃掛け止め部材は、上記切断刃に突設されているボスを導入する拡幅部を上記スリットの中間部に有している請求項1乃至4のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項6】
切断刃に突設されているボスは、上記切断刃の両面に突設されるとともに一面側のボスの突出寸法と他面側のボスの突出寸法が異なり、切断刃の上記ボスを導入する切断刃掛け止め部材の拡幅部は、上記スリットを挟んだ一方側と他方側とで、上記ボスの突出寸法に対応させることにより互いに異なり、上記切断刃は、所定の向きでなければ上記切断刃掛け止め部材に掛け止めることができないように構成されている請求項5記載の食品切断装置。
【請求項7】
切断刃固定枠と、切断刃と、一対の切断刃掛け止め部材および張力調整部材によって切断刃ユニットが構成され、上記切断刃ユニットは、上記切断刃固定枠の左右の両端縁部が、左右一対のガイドレールに沿って落とし込まれることによって固定されている請求項1乃至6のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項8】
複数の切断刃が、切断刃固定枠に互いに平行に保持されている請求項1乃至7のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項1】
切断対象食品を載置する食品載置台と、
切断刃固定枠によって長さ方向両端部が保持されている切断刃と、
上記切断対象食品を輪切り状に切断するために上記食品載置台と上記切断刃を相対移動させる駆動機構と、を有し、
上記切断刃は、長さ方向両端部にボスが突設され、
上記切断刃固定枠には、一対の側縁部に沿ってそれぞれ上記切断刃のボスを掛け止めるV字形の溝を有する切断刃掛け止め部材が配置され、
上記切断刃掛け止め部材の少なくとも片方は、他方の切断刃掛け止め部材との離間距離を調整することによって上記切断刃にかかる張力を調整することができる張力調整部材を有している食品切断装置。
【請求項2】
一対の上記切断刃掛け止め部材の一方は切断刃固定枠に固定され、他方の切断刃掛け止め部材は切断刃固定枠に対し移動可能でありかつ張力調整部材を有している請求項1記載の食品切断装置。
【請求項3】
切断刃掛け止め部材が有するV字形の溝は、切断対象食品と切断刃とが接触することによって上記切断刃にかかる押圧力で、上記切断刃の両端部のボスを互いに引き離す向きの分力を生成するように構成されている請求項1または2記載の食品切断装置。
【請求項4】
張力調整部材は、2個を一対として切断刃掛け止め部材の長さ方向両端部に設けられている請求項1,2または3記載の食品切断装置。
【請求項5】
一対の切断刃掛け止め部材はそれぞれ切断刃を導入するスリットを有し、少なくとも片方の上記切断刃掛け止め部材は、上記切断刃に突設されているボスを導入する拡幅部を上記スリットの中間部に有している請求項1乃至4のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項6】
切断刃に突設されているボスは、上記切断刃の両面に突設されるとともに一面側のボスの突出寸法と他面側のボスの突出寸法が異なり、切断刃の上記ボスを導入する切断刃掛け止め部材の拡幅部は、上記スリットを挟んだ一方側と他方側とで、上記ボスの突出寸法に対応させることにより互いに異なり、上記切断刃は、所定の向きでなければ上記切断刃掛け止め部材に掛け止めることができないように構成されている請求項5記載の食品切断装置。
【請求項7】
切断刃固定枠と、切断刃と、一対の切断刃掛け止め部材および張力調整部材によって切断刃ユニットが構成され、上記切断刃ユニットは、上記切断刃固定枠の左右の両端縁部が、左右一対のガイドレールに沿って落とし込まれることによって固定されている請求項1乃至6のいずれかに記載の食品切断装置。
【請求項8】
複数の切断刃が、切断刃固定枠に互いに平行に保持されている請求項1乃至7のいずれかに記載の食品切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−71216(P2013−71216A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212914(P2011−212914)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】
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