説明

食品包装用フィルム

【課題】耐熱性、カット性、密着性、巻き剥離性等が高位にバランスした食品包装用フィルムを提供する。
【解決手段】4−メチル−1−ペンテン系重合体から形成された中間層の表裏両面に下記接着層樹脂組成物から形成された接着層が積層され、更にそれぞれの接着層の表面に下記外層樹脂組成物から形成された外層が積層された少なくとも5層からなる食品包装用フィルム。
<接着層樹脂組成物>:密度が0.840〜0.885g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体80〜95重量%及び粘着付与剤5〜20重量%を含む接着層樹脂組成物。
<外層樹脂組成物>:密度が0.915〜0.935g/cmの高圧法低密度ポリエチレン85〜99重量%、防曇剤0.5〜5重量%及び粘着付与剤0.5〜10重量%を含む外層樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルムに関する。詳しくは、耐熱性、カット性、密着性、巻き剥離性等の食品包装用フィルムに要求される全特性が高位にバランスした、家庭用および業務用として食品の包装に使用される食品包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる家庭用および業務用として食品の包装に使用されている食品包装用フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はポリエチレン等の比較的薄いフィルムからなるものが挙げられる。しかし、これらの食品包装用フィルムは、耐熱性に劣るため、例えば、油性の強い食品を直接包んで電子レンジなどで暖めて使用する場合、高温に晒されると形状を保持できずに破れて、包装した食品中に混入するなどの問題があった。
【0003】
そこで、耐熱性に優れた包装用フィルムが提案されている。例えば、特開平05−239291号公報(特許文献1参照)、特開平06−032952号公報(特許文献2参照)、特開平07−165940号公報(特許文献3参照)等には、耐熱性に優れた4−メチル−1−ペンテン系重合体を主成分とする包装用フィルムが開示されている。しかし、これらの包装用フィルムは粘着性が不十分であるため、低温でステンレス製容器等を包装した際に使用中に剥離するなどの問題がある。
【0004】
また、特開平11−207893号公報(特許文献4参照)には、表面層、中間層及び表面層の少なくとも3層の積層構造をなすフィルムであって、表面層が、結晶性ポリプロピレン系樹脂、液状脂肪族炭化水素及び脂肪族多価アルコール脂肪酸エステルを含む樹脂組成物からなり、中間層が、ポリ(4−メチルペンテン−1)樹脂及び結晶性ポリプロピレン系樹脂を含む樹脂組成物、又は、ポリ(4−メチルペンテン−1)樹脂及び非晶性オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなる自己粘着性包装用フィルムが開示されている。しかし、該包装用フィルムは粘着性が十分であるとは云えないものである。
【0005】
更に、特開2003−200539号公報(特許文献5参照)には、メチル−1−ペンテン系重合体フィルム層の両面或いは片面に、エチレン・α−オレフィン共重合体およびメチル−1−ペンテン系重合体からなる樹脂組成物フィルムを積層した食品包装用フィルムが開示されている。しかし、該食品包装用フィルムは、伸び特性が過大でカット性が劣るため、小型収納箱から引き出して所望の寸法に切断する際の作業性に問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平05−239291号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平06−032952号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平07−165940号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平11−207893号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2003−200539号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、耐熱性、カット性、密着性、巻き剥離性等の食品包装用フィルムに要求される全特性が高位にバランスした、家庭用および業務用として食品の包装に使用される食品包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、耐熱性及びカット性に優れて、適度の剛性を有する樹脂層で中間層を形成し、防曇性に優れ、密着性と巻き剥離性とが高位でバランスした樹脂層で外層を形成し、且つ、中間層と外層と密着させるために両層間に接着性に優れた樹脂層で接着層を形成した、少なくとも5層から形成された積層体フィルムが、上記課題を解決し得る食品包装用フィルムであることを見出し、本発明に到った。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも5層で構成された食品包装用フィルムであって、4−メチル−1−ペンテン系重合体から形成された中間層の表裏両面に、下記接着層樹脂組成物から形成された接着層が積層され、更にそれぞれの接着層の表面に下記外層樹脂組成物から形成された外層が積層されたことを特徴とする食品包装用フィルムである。
<接着層樹脂組成物>
密度が0.840〜0.885g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体80〜95重量%及び粘着付与剤5〜20重量%を含む接着層樹脂組成物。
<外層樹脂組成物>
密度が0.915〜0.935g/cmの高圧法低密度ポリエチレン85〜99重量%、防曇剤0.5〜5重量%、及び粘着付与剤0.5〜10重量%を含む外層樹脂組成物。
【0010】
上記接着層樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン単位の含有量が60〜90モル%、メルトフローレートが0.1〜100g/10分であることが好ましい。また、本発明に係わる食品包装用フィルムの各層の厚みについては、中間層の厚みが1〜10μm、接着層のそれぞれの厚みが0.5〜5μm、外層のそれぞれの厚みが1〜10μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品包装用フィルムは、耐熱性、カット性、密着性、巻き剥離性等の食品包装用フィルムに要求される全特性に優れ高位にバランスしている。そのため、家庭用および業務用として、食品の包装に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の食品包装用フィルムは、中間層、該中間層の表裏両面に形成された接着層、該接着層のそれぞれの表面に形成された外層から構成された、少なくとも5層から構成された積層体フィルムからなる。
【0013】
先ず、中間層について説明する。本発明における中間層は、4−メチル−1−ペンテン系重合体で形成される。4−メチル−1−ペンテン系重合体としては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、又は、4−メチル−1−ペンテンとそれ以外のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらのα−オレフィン単位は、4−メチル−1−ペンテン系共重合体中に単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。4−メチル−1−ペンテン系重合体の市販品としては、三井化学(株)製、商品名:TPX、MX002O等が挙げられる。
【0014】
本発明における接着層は、密度が0.840〜0.885g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体80〜95重量%及び粘着付与剤5〜20重量%を含む接着層樹脂組成物から形成される。かかる割合で用いることにより、高い接着性能を発揮する接着層樹脂組成物が得られる。
【0015】
接着層が優れた接着性を有するように形成することを考慮すると、エチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有量は60〜90モル%であることが好ましい。更に好ましいエチレン単位の含有量は70〜85モル%である。エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、2−ブテンなどが挙げられる。これらの内、プロピレンが特に好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。エチレン・α−オレフィン共重合体の上記組成は、13C−NMR法により測定することができる。
【0016】
エチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(以下、MFRという、ASTM D 1238の規定に準拠し、荷重2.16kg、温度230℃で測定)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜20g/10分である。上記範囲内にあるMFRを有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、粘着層樹脂組成物を構成する粘着付与剤との混合性がよくなり、優れた接着性能を有する接着層樹脂組成物が得られる。
【0017】
接着層樹脂組成物が含む粘着付与剤としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、テルペン系炭化水素樹脂、合成テルペン系炭化水素樹脂、クマロンインデン系炭化水素樹脂、ロジン系炭化水素樹脂、ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、水添脂肪族系炭化水素樹脂、水添芳香族系炭化水素樹脂、水添脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、水添ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、水添テルペン系炭化水素樹脂等が挙げられる。これらの内、水添脂肪族系炭化水素樹脂、水添芳香族系炭化水素樹脂、水添脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、水添ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、水添テルペン系炭化水素樹脂等の脂環族飽和炭化水素樹脂が特に好ましい。これらの粘着付与剤は、1種単独、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。粘着付与剤の軟化点(環球法)は80〜160℃であることが好ましく、更に好ましくは100〜140℃である。軟化点が80℃未満、または160℃を超えると接着強度が不足するため好ましくない。1種類または2種類以上の混合物としてもよい。粘着付与剤である脂環族飽和炭化水素の市販品としては、荒川化学(株)製、商品名アルコンP−125等が挙げられる。
【0018】
本発明に係る接着層樹脂組成物は、高い接着性能が得られるという点から、MFR(ASTM D 1238の規定に準拠し、荷重5.0kg、温度260℃で測定)が、1.0〜100g/10分の範囲にあることが好ましい。更に好ましくは2〜50g/10分の範囲である。本発明に係る接着層樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、シランカップリング剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ剤、核剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに添加、使用される各種配合剤を添加することができる。
【0019】
本発明に係る接着層樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン共重合体、粘着付与剤、及び必要に応じて添加される各種配合剤を、所定の割合で種々公知の方法、たとえばV型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダーで混合した後、単軸押出機もしくは複軸押出機、または、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押出機等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する方法に従って調製することができる。
【0020】
本発明に係わる外層は、高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)85〜99重量%、防曇剤0.5〜5重量%、及び粘着付与剤0.5〜10重量%を含む外層樹脂組成物から形成される。外層樹脂組成物が含む高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)は、いわゆる高圧法ラジカル重合により製造される長鎖分岐を有する分岐の多いポリエチレンであり、密度が0.915〜0.935g/cmである。このHPLDは、温度190℃、荷重2.16kgにおいて、ASTM D1238に規定される方法により測定したMFRが0.01〜100g/10分である。好ましくは0.05〜10g/10分、更に好ましくは0.1〜8g/10分である。
【0021】
このHPLDは、長鎖分岐の度合を表わすスウェル比、すなわち、毛細管式流れ特性試験機を用い、190℃の条件下で内径(d)2.0mm、長さ15mmのノズルより押出速度10mm/分で押し出したストランドの径(ds)とノズル内径(d)との比(ds/d)が1.3以上であることが好ましい。HPLDの市販品としては、プライムポリマー(株)製、商品名:ミラソン、住友化学(株)製、商品名:スミカセン等が挙げられる。
【0022】
外層樹脂組成物が含む防曇剤は、空気中の水分が凝縮してフィルムの表面を曇らせるのを防止するために配合される薬剤である。従って、食品包装用フィルムの表面を親水性にして、生じた水滴を拡がらせる作用を有するものであれば特に制限はなく、一般に防曇剤として用いられているものがそのまま使用できる。
【0023】
このような防曇剤としては、界面活性剤が用いられる。例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノオレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンセスキラウレート、ジグリセリンセスキオレート、テトラグリセリンモノオレート、テトラグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノラウレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル;ラウリルジエタノールアミン等の脂肪酸アミン;オレイン酸アミド等の脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらに限定されるものではなく、またこれらは単独で、または混合物として使用される。
【0024】
防曇剤の含有量は、外層樹脂組成物全体の0.5〜5重量%である。防曇剤の配合割合が0.5重量%未満である場合は、防曇効果が得られず、また、5重量%を超える場合は、防曇剤のブリードのために透明性が低下する。防曇剤は、予めHPLDの一部に混合してマスターバッチを形成し、これを残余のHPLDと混合して樹脂組成物を得ることが好ましい。
【0025】
外層樹脂組成物が含む粘着付与剤としては、液状ポリブテン、非晶性ポリオレフィンや、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、水添脂肪族系炭化水素樹脂、水添芳香族系炭化水素樹脂、水添脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、水添ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂、合成テルペン系炭化水素樹脂、テルペン系炭化水素樹脂、水添テルペン系炭化水素樹脂、クマロンインデン系炭化水素樹脂、低分子量スチレン系樹脂、及びロジン系炭化水素樹脂等が挙げられる。1種類または2種類以上の混合物としてもよい。粘着付与剤の市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:クリアロン等が挙げられる。
【0026】
上記粘着付与剤の含有量は、外層樹脂組成物全体の0.5〜10重量%である。粘着付与剤の配合割合が0.5重量%未満である場合は、充分な密着力が得られないため好ましくない。また、10重量%を超える場合は、ブロッキングして巻剥離力が過大となるため好ましくない。
【0027】
本発明に係わる食品包装用フィルムは、上記樹脂組成物を使用して、Tダイ付押出機を用いる押出成形法、円形ダイを用いるインフレーション成形法等で製造することが可能である。Tダイ押出成形法では、配向防止処理として、例えば、成形温度200〜270℃、ドラフト比(ドラフト距離内での延伸比)40〜130、ドラフト距離(ダイ先からフィルムが冷却ロールに接触するまでの距離)50〜120mmとし、フィルム温度40〜70℃で延伸倍率1.2倍以下にして巻き取るような多層押出成形法が好ましい。
【0028】
本発明の食品包装用フィルムを構成する各層の厚みは、特に限定されるものでなく、任意に選択することができる。好ましくは、中間層の厚みが1〜10μm、接着層の厚みがそれぞれ0.5〜5μm、外層の厚みがそれぞれ1〜10μmの範囲に形成する。また、積層体としての総厚みは約5〜30μmの範囲である。
【0029】
上記のように、本発明に係わる食品包装用フィルムは、外層/接着層/中間層/接着層/外層の順に積層された少なくとも5層からなる層構成を有する。本発明の目的を損なわない範囲において、上記組成の中間層及び接着層を更に増やした層構成でもよい。また、他の組成からなる層を積層してもよい。その場合、各層間には接着層を設けることが好ましい。5層を超える層構成とした場合であっても、積層フィルムの表裏最外層は上記外層樹脂組成物から形成された外層であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を示して本発明について更に詳細に説明する。尚、実施例に示した各種特性値は下記方法により測定した。
【0031】
(1)メルトフローレート(MFR)(g/10分)
ASTM D1238に規定される方法により測定する。各試料の測定荷重及び測定温度は以下の通り。
<荷重:2.16kg、温度:230℃>ポリプロピレン、及び、エチレン・プロピレン共重合体。
<荷重:2.16kg、温度:190℃>高圧法低密度ポリエチレン、及び、1−ブテン・エチレン共重合体。
<荷重:5kg、温度:260℃>接着層樹脂組成物、及び、4−メチル−1−ペンテン系重合体。
【0032】
(2)密度(g/cm
ASTM D1505に規定される方法により測定する。
【0033】
(3)カット性
市販の家庭用ラップ収納小箱〔三井化学ファブロ(株)製、家庭用ハイラップ収納箱、ポリ乳酸樹脂製カット刃付〕に、実施例又は比較例で得られたフィルムの紙管巻物(20m巻、幅:30cm)を収納する。収納箱からフィルムを引き出し、収納箱に取り付けられたカット刃で長さ約30cmに切断する。この操作を収納フィルムがなくなるまで繰り返す。この評価を20名の評価員が実施する。<評価基準>○:16人以上の評価員が切断し易いと判定したフィルム。△:7〜15人の評価員が切断し易いと判定したフィルム。×:6人以下の評価員が切断し易いと判定したフィルム。
【0034】
(4)密着性
前項と同様の操作で切断したフィルム(長さ:30cm、幅:30cm)20枚をそれぞれ20個のステンレス製容器(開口部:一辺20cmの正方形)の開口部を覆うように被せ、フィルムの外縁部を容器の形状に合わせて折り曲げて密着させる。30分間放置した後、フィルムの剥離発生の有無を観察する。<評価基準>○:4枚以下のフィルムに剥離が認められたもの。△:5〜14枚のフィルムに剥離が認められたもの。×:15枚以上のフィルムに剥離が認められたもの。
【0035】
(5)巻き剥離性
前3項のカット性の評価を最後のフィルムまで実施する際に、フィルムを最後まで収納箱からスムーズに取り出せるかどうかを評価員20人が評価する。<評価基準>○:16人以上が取り出し易いと判定したフィルム。△:7〜15人が取り出し易いと判定したフィルム。×:6人以下が取り出し易いと判定したフィルム。
【0036】
(6)層間剥離
実施例又は比較例で得られたフィルムの表裏両面に市販の粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標)、長さ:35cm、幅:17mm)を貼り付け、引き剥がした時に層間剥離が発生するかどうかを観察する。10枚のフィルムについて評価する。<評価基準>○:層間剥離が全く発生しない。×:少なくとも1枚に層間剥離が発生した。
【0037】
(7)耐熱温度(℃)
東京都生活文化局消費者部適正表示課発行の品質表示要領〔ラップ(食品包装用ラップフィルム)〕に従って測定する。
<試料>
実施例又は比較例で得られたフィルム(MD方向長さ:14cm、TD方向長さ:3cm)及び板目紙(長さ:2.5cm、幅:3cm)を用意する。粘着テープを用いて、フィルムのMD方向の両端部の2.5cmずつの部分に板目紙を重ね合わせて固定して試料とする。
<測定法>
フィルムと板目紙が重なった両端部2.5cmずつの部分の上部を治具に固定し、下端に10gの荷重をかける。所定温度に調整したエアーオーブン中に迅速に入れ、1時間加熱した後、フィルムの切断の有無を調べる。試験温度は5℃刻みに設定する。試料が切断しなかった場合は、温度を5℃上げて前記の操作を繰り返す。試料が切断されない最高温度を耐熱温度とする。
【0038】
実施例1
<中間層樹脂>
中間層を構成する4−メチル−1ペンテン系樹脂として、三井化学(株)製、商品名:TPX MX002O〔4−メチル−1−ペンテンと炭素数16及び18のα−オレフィンとの共重合体、密度:0.83g/cm、MFR:23g/10分(260℃、荷重:5kg)〕を使用した。
【0039】
<接着層樹脂組成物>
中間層の表裏両面に積層する接着層を構成する樹脂として、エチレン・プロピレン共重合体[D1、エチレン含有量:80モル%、密度:0.8g/cm、MFR(ASTM D 1238、荷重:2.16kg、温度:230℃)2g/10分]90重量部、及び脂環族飽和炭化水素樹脂[E1、荒川化学(株)製、商品名:アルコンP125、軟化点:125℃]10重量部を配合し、両者をヘンシェルミキサーを用いてドライブレンドした。次いで、得られた混合物を270℃に設定した65mmφの二軸押出機を用いて溶融混練し、接着層樹脂組成物を調製した。この組成物のMFRをASTM D1238に準拠して荷重5kg、温度260℃の条件にて測定した。
【0040】
<外層樹脂組成物>
それぞれの接着層の表面に形成される外層を構成する高圧法低密度ポリエチレンとして、住友化学工業(株)製、商品名:スミカセンCE3506(密度:0.931g/cm、MFR:5g/10分、A2)93.5重量部、防曇剤としてジグリセリンオレート〔B、理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールO−71DE〕1.5重量部、粘着付与剤として、水添テルペン樹脂〔C1、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:クリアロンP−125〕5.0重量部を使用し、口径30mm、L/Dが26の二軸押出機を用いて樹脂温度200℃で混練し、造粒して外層樹脂組成物を得た。
【0041】
<フィルムの製造及び評価>
上記樹脂及び樹脂組成物を使用して、積層フィルムの層構成が外層/接着層/中間層/接着層/外層となるようにし、また、各層の厚み構成比が上記の順に3/1/2/1/3、合計厚みが10μmの3種5層の積層フィルムをフィードブロック型Tダイ押出成形機を用いて、樹脂温度280℃、ドラフト比50、ドラフト距離80mmとして、キャストロール温度を40℃とし、バキュームチャンバー方式で延伸倍率1.2倍、巻取速度250m/分で食品包装用フィルムを製造した。得られたフィルムについて、上記方法により各種特性を評価した。主な製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0042】
実施例2〜3、比較例1〜3
使用原料及び製造条件を表1〜2に示した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造し、得られた樹脂組成物から食品包装用フィルムを製造した。各種特性を実施例1と同様にして評価した。主な製造条件及び評価結果を表1〜2にそれぞれ示す。
【0043】
実施例4
外層樹脂組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレンとして、プライムポリマー(株)製、商品名:ミラソンF212、(A1、密度:0.924g/cm、MFR:2.0g/10分)を用い、環状5層ダイが装着された共押出インフレーション成形機を使用し、樹脂温度280℃、ブローアップ比4.5で共押出インフレーション製膜し、巻き取り速度40m/分として共押出インフレーション成形を行った以外、実施例1と同様にして食品包装用フィルムを製造した。得られたフィルムについて、上記方法により各種特性を評価した。主な製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1〜表2の記載の説明
(1)A1:高圧法低密度ポリエチレン〔プライムポリマー(株)製、商品名:ミラソンF212、密度0.924g/cm、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR2.0g/10分〕。
(2)A2:高圧法低密度ポリエチレン〔住友化学工業(株)製、商品名:スミカセンCE3506(密度:0.931g/cm、MFR:5g/10分)。
(3)B:ジグリセリンオレート〔理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールO−71DE〕
(4)C1:水添テルペン樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製、商品名:クリアロンP−125〕
(5)C2:液状ポリブテン〔新日本石油化学(株)製、商品名:日石ポリブテンHV−300F、100℃における動粘度590cSt〕。
(6)TPX:4−メチル−1−ペンテン・炭素数16及び18のα−オレフィンとの共重合体〔三井化学(株)製、商品名:TPX MX002O、密度:0.83g/cm、260℃、荷重:5kgにおけるMFR:23g/10分〕
(7)PP:プロピレン重合体〔プライムポリマー(株)製、商品名:三井ポリプロF122G、密度:0.90g/cm、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR:2.2g/分〕。
(8)D1:エチレン・プロピレン共重合体〔エチレン含有量80mol%、密度:0.87g/cm、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR:2g/10分〕。
(9)D2:エチレン・プロピレン共重合体〔エチレン含有量75mol%、密度:0.86g/cm、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR:5g/10分〕。
(10)E1:脂環族飽和炭化水素樹脂〔荒川化学(株)製、商品名:アルコンP−125〕。
(11)E2:1−ブテン・エチレン共重合体〔1−ブテン含有量85モル%、190℃、荷重2.16kgにおけるMFR:0.2g/10分〕。
(12)外層、中間層、及び接着層の各層の配合比の単位:重量部
【産業上の利用可能性】
【0047】
家庭用および業務用の食品包装用フィルムとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5層で構成された食品包装用フィルムであって、4−メチル−1−ペンテン系重合体から形成された中間層の表裏両面に、下記接着層樹脂組成物から形成された接着層が積層され、更にそれぞれの接着層の表面に下記外層樹脂組成物から形成された外層が積層されたことを特徴とする食品包装用フィルム。
<接着層樹脂組成物>
密度が0.840〜0.885g/cmであるエチレン・α−オレフィン共重合体80〜95重量%及び粘着付与剤5〜20重量%を含む接着層樹脂組成物。
<外層樹脂組成物>
密度が0.915〜0.935g/cmの高圧法低密度ポリエチレン85〜99重量%、防曇剤0.5〜5重量%、及び粘着付与剤0.5〜10重量%を含む外層樹脂組成物。
【請求項2】
接着層樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有量が60〜90モル%、メルトフローレートが0.1〜100g/10分である請求項1記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
中間層の厚みが1〜10μm、接着層の厚みがそれぞれ0.5〜5μm、外層の厚みがそれぞれ1〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の食品包装用フィルム。

【公開番号】特開2007−160745(P2007−160745A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360770(P2005−360770)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000111432)三井化学ファブロ株式会社 (36)
【Fターム(参考)】