説明

食品原木切断装置

【課題】食品原木から縦方向および送給方向に切断された切断片を、人手を介することなく自動的に製造することのできる食品原木切断装置が求められている。
【解決手段】食品原木切断装置1は、食品原木Hを傾斜状に載せるための載せ台5と、載せ台5上の食品原木Hを送給する送給機8と、送給機8により送給された食品原木Hを当該送給方向Dと交差する方向にスライスするスライス刃24とを備えて成り、送給機8の送給終点位置とスライス刃24との間の食品原木送給経路44に、送給されている食品原木Hを当該送給方向に沿って切断する少なくとも1つの縦切り刃25が配備されている。また、縦切り刃25を上下駆動させて食品原木Hを切断するための上下駆動機36が縦切り刃25に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、成型ベーコン、丸ハム、角ハム、ソーセージなどから成る棒状の食品原木を切断して切断片食品を得る食品原木切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の食品原木切断装置としては、食品原木を傾斜状に載せるための載せ台と、載せ台上の食品原木を送給する送給機と、送給機により送給された食品原木を当該送給方向と交差する方向にスライスするスライス刃とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方で、ハムやベ−コン製の、ハーフ分割品、短冊状片、サイコロカット状片などといった切断片食品が、サラダ、麺類、パスタ、ピザなどのトッピング具材として汎用されている。これらの具材の食品原木から前記の食品原木切断装置を用いて切断片食品を製造するに当たり、予め食品原木をその送給方向に沿って切断しておき、切断により分割した食品原木を載せ台に載せ、スライス刃により切断することによって前記の切断片食品を得るようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−98257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した従来の食品原木切断装置では、スライス刃で切断をする前に、予め食品原木をその送給方向に沿って切断しておかなければならず、切断により分割した食品原木は人の手で載せ台に移し変えていた。すなわち、人手に触れる工程が避けられないので、衛生的であるとは言い難い。また、いったん分割した食品原木を次工程に移し変えたり位置移動したりするときに、分割した食品原木間で大きな位置ズレを生じることがあるため、得られた切断片の切断寸法精度や切断形状が芳しくない場合があり、切断片食品の重量、容量、カロリーなどを一定に管理することは困難であった。また、分割した食品原木を移し変えたりする作業があるために、多くの作業人員と広い作業場所を必要としていた。また、複数台の機械が必要であり、それらを設置するための広い設置スペースも必要であった。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、食品原木から縦方向および送給方向前後に切断された切断片食品を、人手を介することなく自動的に製造することのできる食品原木切断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る食品原木切断装置は、食品原木を傾斜状に載せるための載せ台と、載せ台上の食品原木を送給する送給機と、送給機により送給された食品原木を当該送給方向と交差する方向にスライスするスライス刃とを備えて成り、送給機の送給終点位置とスライス刃との間の食品原木送給経路に、送給されている食品原木を当該送給方向に沿って切断する少なくとも1つの縦切り刃が配備されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、前記構成において、縦切り刃を上下駆動させて食品原木を切断するための上下駆動機が縦切り刃に連結されていることを特徴とするものである。
【0008】
そして、請求項3に係る発明は、前記した各構成において、送給機が、食品原木を送給駆動する送給駆動部と、食品原木の送給方向後端部を掴むために送給駆動部の送給方向前部に送給方向と交差する方向に離間して配備された複数の掴み部とを備えて成り、送給駆動部が送給終点位置に到達したときに縦切り刃を掴み部と接触させないための隙間部が、掴み部と掴み部との間の送給駆動部に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
更に、請求項4に係る発明は、前記した各構成において、装置フレームに回動自在に配備されていてスライス刃が取り付けられた回転駆動体を備え、縦切り刃により切断された食品原木の前部を、ほぼ水平方向に切断するための少なくとも1つの横切り刃が、回転駆動体における食品原木送給方向上流側の面に配備されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係る食品原木切断装置によれば、送給機の送給終点位置とスライス刃との間の食品原木送給経路に、送給されている食品原木を当該送給方向に沿って切断する少なくとも1つの縦切り刃が配備されているので、縦切り刃による縦切断、および、スライス刃による前後切断が一連に行なわれる。それにより、食品原木から縦方向および送給方向に切断された切断片食品を、人手を介することなく自動的に製造することができる。この場合において、個々の切断段階で人手が触れることがないので、極めて衛生的に切断片食品を得ることができる。また、個々の切断段階に際して食品原木を移し変えたり位置移動させたりしなくて済むことから、得られた切断片食品の切断寸法精度や切断形状がよい。その結果、製品の重量、容量などを一定にするという食品管理を厳密に行なうことができる。また、食品原木を迅速に切断できるから大量生産向きである。
【0011】
また、請求項2に係る食品原木切断装置によれば、縦切り刃を上下駆動させる上下駆動機が縦切り刃に連結されているので、縦切り刃は上下動しながら食品原木を切断する。従って、縦切り刃を固定して切る場合と比べ、格段に優れた切れ味で食品原木を縦切断することができる。
【0012】
そして、請求項3に係る食品原木切断装置によれば、送給駆動部の送給方向前部に送給方向と交差する方向に離間して配備された複数の掴み部を備え、送給駆動部が送給終点位置に到達したときに縦切り刃を掴み部と接触させないための隙間部が、掴み部と掴み部との間の送給駆動部に形成されているので、送給駆動部が送給終点位置に到達しても、縦切り刃は、掴み部と掴み部との間の隙間部内に入り込んで掴み部と接触干渉しない。従って、掴み部をスライス刃の直近位置まで到達させることができる。それにより、掴み部に掴まれている食品原木の末端部の量を極力少なくすることができ、製品の歩留まりを高めることができる。
【0013】
更に、請求項4に係る食品原木切断装置によれば、回転駆動体における食品原木送給方向上流側の面に、少なくとも1つの横切り刃が配備されているので、縦切り刃による縦切断、横切り刃による横切断、および、スライス刃による前後切断を一連に行なうことができる。それにより、請求項1に係る効果に加えて、食品原木から略立方体状ないし略直方体状にした切断片を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る食品原木切断装置の側面構成図である。
【図2】前記食品原木切断装置の要部を示し、(a)は部分正面図、(b)は部分拡大正面図である。
【図3】前記食品原木切断装置の載せ台に食品原木を載せた状態を示す側面構成図である。
【図4】前記食品原木切断装置の要部を示し、(a)は縦切り刃により分割された食品原木の前部をスライス刃で切断し始めた状態を示す部分平面部分平面図、(b)は(a)における部分側面図である。
【図5】前記食品原木切断装置により食品原木から短冊片を製造する態様を順に示したものであって、(a−1)は食品原木の前部を縦切り刃で分割した状態を示す部分平面図、(a−2)は(a−1)における部分正面図、(b−1)は分割された食品原木の前部をスライス刃で切断する直前の状態を示す部分平面図、(b−2)は(b−1)における部分正面図、(c−1)は分割された食品原木の前部をスライス刃で切断して短冊片を得た状態を示す部分平面図、(c−2)は(c−1)における部分正面図である。
【図6】前記食品原木切断装置の要部を示し、(a)は縦切り刃により分割された食品原木の前部をスライス刃で切断し終える直前の状態を示す部分平面図、(b)は(a)における部分側面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る食品原木切断装置の側面構成図である。
【図8】前記食品原木切断装置の要部を示し、(a)は部分側面図、(b)は(a)における部分平面図である。
【図9】前記食品原木切断装置の正面図である。
【図10】前記食品原木切断装置の要部を示す部分正面図である。
【図11】前記食品原木切断装置により食品原木からサイコロカット片を製造する態様を順に示したものであって、(a−1)は縦切り刃により分割された食品原木の前部を横切り刃で切断する直前の状態を示す部分平面図、(a−2)は(a−1)における部分正面図、(b−1)は食品原木の前部を横切り刃で分割した状態を示す部分平面図、(b−2)は(b−1)における部分正面図である。
【図12】図11(b−1)および(b−2)から続く態様を順に示したものであって、(a−1)は横切り刃により分割された食品原木の前部をスライス刃で切断する直前の状態を示す部分平面図、(a−2)は(a−1)における部分正面図、(b−1)は食品原木の前部をスライス刃で切断してサイコロカット片を得た状態を示す部分平面図、(b−2)は(b−1)における部分正面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る食品原木切断装置を示す側面構成図である。
【図14】前記食品原木切断装置の要部を示す部分側面構成図である。
【図15】前記食品原木切断装置を示す正面構成図である。
【図16】前記食品原木切断装置の直線移動手段による動作を正面から見た動作説明図である。
【図17】前記食品原木切断装置により得られたサイコロカット片を示す正面図である。
【図18】本発明の実施形態4に係る食品原木切断装置の正面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
[実施形態1.]
図1は本発明の実施形態1に係る食品原木切断装置の側面構成図、図2は前記食品原木切断装置の部分正面図、図3は前記食品原木切断装置の載せ台に食品原木を載せた状態を示す側面構成図、図4は前記食品原木切断装置の要部を示し、(a)は縦切り刃により分割された食品原木の前部をスライス刃で切断し始めた状態を示す部分平面部分平面図、(b)は(a)における部分側面図である。
各図において、この実施形態に係る食品原木切断装置1は、本体基台2の前部上面に装置フレーム3が立設され、装置フレーム3の後部に受けフレーム6が接続されている。受けフレーム6は前下りの傾斜姿勢に配置され、本体基台2の後部上面に立設された支柱4に支持されている。受けフレーム6は上面が開口した箱状に形成され、受けフレーム6内には、食品原木Hを傾斜状に載せるための載せ台5が設置されている。受けフレーム6内で載せ台5の上方位置には、載せ台5上の食品原木Hを送給する送給機8が配備されている。
【0016】
送給機8は、載せ台5の上方位置で載せ台5の長手方向に沿って配備されていて載せ台5のモータ(図示省略)の駆動により回転する雄ネジ軸9と、この雄ネジ軸9と螺合する送り体(雌ネジ体(図示省略))11を有して載せ台5の長手方向に沿って往復移動する送給駆動部10と、送給駆動部10の前部に配備されたグリッパ12と、から構成されている。この送給機8は、載せ台5側のモータを駆動させて雄ネジ軸9を正転または逆転させることで、グリッパ12を載せ台5に沿って前進(下降)または後退(上昇)させるようになっている。グリッパ12は、その前部12Aに爪状の掴み部13を複数備え、これらの掴み部13,13,13,・・・を閉じることで食品原木Hの送給方向末端部HEに食い込んで掴み、掴み部13,13,13,・・・が開くことで食品原木Hの保持を解除するようにしている。複数の掴み部13,13,13,・・・は、グリッパ12の前部12Aに送給方向と直交する水平方向に離間して配備されている。それぞれの掴み部13と掴み部13との間のグリッパ12には、隙間部42,42,42,・・・が形成されている。これらの隙間部42,42,42,・・・は、送給機8が送給終点位置8(T)に到達したときに縦切り刃25,25,25,・・・を掴み部13,13,13,・・・と接触させないためのものである。
【0017】
装置フレーム3の前部には、回転軸17回りに回転する回転駆動体15が設けられており、回転軸17は装置フレーム3に回動自在に軸支されている。回転駆動体15は、回転軸17と、回転軸17に連結されたモータ18とから成る公転駆動機19により例えば矢印AC方向(図2)に回転駆動される。回転駆動体15には、送給機8により送給された食品原木Hをその送給方向(矢印D方向)と直交方向にスライスする円盤状のスライス刃24が設けられている。スライス刃24は、回転軸21と、回転軸21に連結されたモータ22とから成る自転駆動機23により、例えば矢印C方向(図2)に回転駆動される。すなわち、スライス刃24は回転軸21回りに自転し回転軸17回りに公転するようになっている。尚、図2中の1点鎖線Uは回転軸21の公転軌跡を示している。また、図2中の2点鎖線Vは、スライス刃24において回転軸17から最も遠い位置にある刃先の回転軌跡を示している。スライス刃24と載せ台5の後端部との間は、食品原木Hを送給するための食品原木送給経路44となっている。
【0018】
そして、送給機8の送給終点位置8(T)とスライス刃24との間の食品原木送給経路44には、送給されている食品原木Hをその送給方向に沿って縦に切断する縦切りユニット26が配備されている。縦切りユニット26は、食品原木送給方向と直交する左右方向に間隔をあけて配置された複数の縦切り刃25,25,25,・・・と、前記縦切り刃25,25,25,・・・の下端部を固定する下部支持板41と、前記縦切り刃25,25,25,・・・の上端部に架け渡されて固定する上部支持板40とから構成されている。
【0019】
下部支持板41の下面には摺動軸27,27が垂設されており、これらの摺動軸27,27の下端部は横連結杆34で連結されている。摺動軸27,27は、本体基台2に配備された摺動軸受28,28に上下摺動自在に軸支されている。そして、横連結杆34に接続された連結杆35は、軸29を介してクランク杆30に揺動自在に連絡されており、クランク杆30は軸31を介して円盤状のクランク部材32に揺動自在に連絡されている。クランク部材32はモータ33の駆動軸46に連結されている。すなわち、縦切り刃25,25,25,・・・を上下駆動させて食品原木Hを縦に切断する上下駆動機36が、前記の摺動軸27、摺動軸受28、横連結杆34、連結杆35、軸29、クランク杆30、軸31、クランク部材32、およびモータ33から構成される。
【0020】
載せ台5における縦切りユニット26直前の左右端部には、食品原木Hを縦切りユニット26に導く側面ガイド板45,45が設置されている。そして、食品原木送給経路44における縦切りユニット26の送給方向直前位置には、上下駆動される縦切り刃25により切断される食品原木Hを押さえつけて浮き上がりを防止するための原木押え14が配備されている。更に、スライス刃24の送給方向直後位置には、スライス刃24により食品原木Hから切り離された切断片食品を受けて搬送するコンベア43が配備されている。
【0021】
上記のように構成された食品原木切断装置1により角棒状ハムの食品原木Hを切断して短冊片(切断片食品)を製造する態様を説明する。まず、図3に示すように、食品原木Hが載せ台5の上面に載置される。続いて、送給機8が前進し、グリッパ12の掴み部13が下向きに揺動駆動して食品原木Hの後端部を掴持する。その後、送給機8が更に前進し、食品原木Hの前部HAは左右の側面ガイド板45,45に案内されて縦切りユニット26に到達する。
【0022】
食品原木Hは、送給方向と直角の水平方向に所定間隔で配置された縦切り刃25,25,25,・・・を通過することにより、図5(a−1)の平面図および図5(a−2)の正面図に示すように、食品原木Hの前部HAから送給方向に沿って縦向きに切断、すなわち左右方向に分割される。このとき、縦切りユニット26は、上下駆動機36のモータ33の駆動により上下(図2中の矢印Sと矢印Tの方向)に振動しているため、縦切りユニット26を停止させて切る場合と比べ、格段に優れた切れ味で食品原木Hを縦切断することができる。尚、各縦切り刃25自体の切れ味が元来高く、且つ、食品原木H自体が柔らかくて切れ易いものである場合は、縦切りユニット26を停止させた状態で食品原木Hを縦切断することも可能である。また、縦切り刃25,25,25,・・・は、その上端部に上部支持板40を架け渡されて固定されているので、食品原木Hの切断時にそれぞれの上端部が互いに離れることがない。これにより、食品原木Hを、切断寸法精度よく見た目よく縦切断することができる。このような効果は下部支持板41に関しても同様である。
【0023】
そのうち、分割された食品原木Hの前部HA,HA,HA,・・・は、送給機8の駆動により所定ピッチぶん前進し、図5(b−1)の平面図および図5(b−2)の正面図ならびに図4(a)の平面図および図4(b)の側面図に示すように、側面ガイド板45,45の前端から前方にはみ出る。そして、はみ出た食品原木Hの前部HAは、回転軸17回りに公転(矢印AC方向)し回転軸21回りに自転するスライス刃24により送給方向と直角の方向に切断され始める。尚、図4(a)において、2点鎖線Wで示した位置は、縦切り刃25,25,25,・・・における送給方向最上流側の位置、すなわち分割開始ラインを示している。そうして、左右に分割された食品原木Hの前部HA,HA,HA,・・・の全てが、図5(c−1)の平面図および図5(c−2)の正面図に示すように、スライス刃24により切断されることにより前後に分断されて、例えば縦長長方形状の短冊片H1,H1,H1,・・・が多数得られる。これらハムの短冊片H1,H1,H1,・・・は、例えば冷麺などのトッピング具材として使用される。
【0024】
そして、縦切り刃25による連続した縦切断と、スライス刃24による前後切断の繰り返しが行なわれるうちに、図6に示すように、送給機8が図中符号8(T)で示した位置、すなわち送給終点位置に到達する。このとき、縦切り刃25,25,25,・・・は、隣り合った掴み部13,13間の隙間部42,42,42,・・・内に入り込んで各掴み部13と接触干渉しない。従って、掴み部13,13,13,・・・の前端をスライス刃24の直近まで到達させることができる。その結果、歩留まりに影響する食品原木Hの末端部HEの量を極力少なくすることができる。
【0025】
以上のように、実施形態1の食品原木切断装置1によれば、縦切り刃25により食品原木Hの先頭部を切断して左右に分割したのち、分割された複数の前部HA,HA,HA,・・・をスライス刃24により前後に分断するように構成されているので、食品原木Hから略直方体状の短冊片H1,H1,H1,・・・を製造することができる。この場合において、個々の切断段階で人手が触れることがないので、極めて衛生的に短冊片H1を得ることができる。また、個々の切断段階に際して食品原木Hを移し変えたり位置移動させたりしなくて済むことから、得られた短冊片H1の切断寸法精度や切断形状がよい。その結果、短冊片H1の重量、容量、カロリーなどを一定にするという食品製品管理を厳密に行なうことができる。また、食品原木Hを迅速に処理できるから、大量生産向きの装置であると言える。
【0026】
[実施形態2.]
尚、上記の実施形態1では、ハムの食品原木Hから多数の短冊片H1,H1,H1,・・・を製造する態様を説明したが、本発明の食品原木切断装置はそれに限定されるものでない。例えばハムの食品原木Hから多数のサイコロカット片(切断片食品)を製造するものも、本発明に含まれる。このような食品原木切断装置1Aを図7〜図10に示す。この食品原木切断装置1Aは前述した食品原木切断装置1と同様の基本構成を有しているが、食品原木切断装置1と異なる特徴的構成は、突出板部50が連結された回転駆動体15Aを備えており、突出板部50における食品原木送給方向上流側の面50A、すなわち縦切り刃25,25,25,・・・との対向面に、複数の横切り刃51,51,51,・・・が配備されていることである。これらの横切り刃51,51,51,・・・は、縦切り刃25,25,25,・・・により切断された食品原木Hの前部HAを、回転駆動体15の回転軸17の軸心を中心とする円周方向、すなわち水平方向(図12(b−2)中の1点鎖線Eで示す方向)に近い方向に切断するためのものである。また、縦切りユニット26Aと縦切りユニット26Bの2つを備えていることも異なる構成である。上下駆動機36Aは前述した上下駆動機36と多少異なっているが、基本的な構成は変わらない。
【0027】
前述した複数の横切り刃51,51,51,・・・は、回転軸17の軸心を中心として半径方向に所定間隔離間した配置で突出板部50の上流側面50Aに取り付けられている。各横切り刃51の刃面は、回転軸17の軸心を中心とする円周方向に沿うように配置されている。
【0028】
食品原木送給経路44における突出板部50の横切り刃51,51,51,・・・の送給方向直前位置には、食品原木Hを縦に切断する縦切りユニット26Aが配備されている。縦切りユニット26Aは、食品原木送給方向と直交する左右方向に間隔をあけて配置された複数の縦切り刃25A,25A,25A,・・・と、これらの縦切り刃25A,25A,25A,・・・の下端部を固定する下部支持板41Aと、縦切り刃25A,25A,25A,・・・の上端部に架け渡されて固定する上部支持板40Aとから構成されている。下部支持板41Aの下面には摺動軸27Aが垂設されており、この摺動軸27Aは、本体基台2に配備された摺動軸受28に上下摺動自在に軸支されている。摺動軸27Aの下端部は軸31を介してクランク部材32に揺動自在に連結されており、クランク部材32は本体基台2内の内部フレーム52に回動自在に軸支された水平向きの駆動軸46に固設されている。駆動軸46は、プーリ47、ベルト48、およびプーリ49を介して、モータ33の回転駆動軸と連結されている。
【0029】
一方、縦切りユニット26Aの送給方向直前位置には、食品原木Hを縦に切断する縦切りユニット26Bが配備されている。縦切りユニット26Bは、食品原木送給方向と直交する左右方向に間隔をあけて配置された複数の縦切り刃25B,25B,25B,・・・と、これらの縦切り刃25B,25B,25B,・・・の下端部を固定する下部支持板41Bと、縦切り刃25B,25B,25B,・・・の上端部に架け渡されて固定する上部支持板40Bとから構成されている。下部支持板41Bの下面には摺動軸27Bが垂設されており、この摺動軸27Bは摺動軸受28に上下摺動自在に軸支されている。摺動軸27Aの下端部は軸31を介してクランク部材32に揺動自在に連結されている。クランク部材32は前記した駆動軸46に固設されている。
【0030】
すなわち、縦切り刃25,25,25,・・・を上下駆動させて食品原木Hを縦に切断する上下駆動機36Aは、前記の摺動軸27A,27B、摺動軸受28、軸31,31、クランク部材32,32、駆動軸46、プーリ47、ベルト48、プーリ49、およびモータ33から構成される。尚、縦切りユニット26Aの上下動と縦切りユニット26Bの上下動は互いに反対の動作となるように、駆動軸46に対するクランク部材32,32の取り付け位置が規定されている。
【0031】
そして、前述した縦切りユニット26Aにおいて隣り合う縦切り刃25A,25A間の左右方向の配置ピッチと、縦切りユニット26Bにおいて隣り合う縦切り刃25B,25B間の左右方向の配置ピッチは、等しく設定されている。また、正面から見て、隣り合う縦切り刃25A,25Aの左右方向中間位置に、縦切り刃25Bがそれぞれ配置されている。
【0032】
上記のように構成された食品原木切断装置1Aにより角棒状ハムの食品原木Hを切断してサイコロカット片を製造する態様を説明する。送給機8の駆動により、食品原木Hは、送給方向と直角の左右方向に所定間隔で配置された縦切り刃25A,25B,25A,25B,・・・間を通過することにより、図11(a−1)の平面図および図11(a−2)の正面図に示すように、前部HAから送給方向に沿って縦向きに切断、すなわち左右方向に分割される。このとき、上下駆動機36Aのモータ33の駆動により、縦切りユニット26A,26Bは、上下に振動しているため、縦切りユニット26A,26Bを停止させて切る場合と比べ、格段に優れた切れ味で食品原木Hを縦切断することができる。
【0033】
ところで、縦切り刃25A,25Bで切るとき、食品原木Hは縦切り刃25A,25Bの厚さぶん左右方向に押し広げられることになる。従って、複数の縦切り刃25A,25B,25A,25B,・・・で切ると、分割された食品原木Hが、隣り合う縦切り刃25A,25B間で左右方向に押圧されて縦切り刃25A,25Bの刃面との摩擦力が大きくなる。それにより、分割された食品原木Hが、縦切り刃25A,25Bに同伴して同じ方向に大きく上下動したり、載せ台5上に強く押し付けられて圧縮変形したりする場合がある。このように、食品原木Hが上下動したり圧縮変形したりすると、最終的に得られる、既述の短冊片H1やサイコロカット片H2の切断形状や寸法にバラツキが生じたり、製品外観が悪くなるおそれがある。
【0034】
しかしながら、この実施形態の食品原木切断装置1Aでは、縦切りユニット26Aと縦切りユニット26Bとが互いに上下反対の向きに動く。従って、食品原木Hの切り口と縦切り刃25A,25Bの刃面との摩擦力が大きくなっても、縦切り刃25A,25Bは互いに隣り合っているので、食品原木Hを上下に移動させようとする力は隣り合う縦切り刃25A,25Bにより相殺される。その結果、縦切り刃25A,25Bにより分割された食品原木Hが、大きく上下動したり載せ台5上に強く押し付けられるといったことがない。これにより、最終的に得られる短冊片H1やサイコロカット片H2の切断形状や切断寸法がほぼ一定でそれぞれの許容範囲内にあり、外観も好ましい製品を得ることができる。
【0035】
そして、分割された食品原木Hの前部HA,HA,HA,・・・は、図11(b−1)の平面図および図11(b−2)の正面図に示すように、モータ18によって回転駆動体15Aと一体で回転軸17回りに回転する突出板部50の横切り刃51,51,51,・・・により、突出板部50の半径方向に複数条ぶん、切断される。
【0036】
引き続き、分割された食品原木Hの前部HA,HA,HA,・・・は、送給機8の駆動により所定ピッチぶん前進し(図11(b−1)の矢印D)、図12(a−1)の平面図および図12(a−2)の正面図に示すように、側面ガイド板45,45の前端からはみ出る。そうして、上下左右に分割されてはみ出た食品原木Hの前部HAの全てが、図12(b−1)の平面図および図12(b−2)の正面図に示すように、公転(矢印AC方向)および自転をするスライス刃24により切断されて前後に分断され、例えばほぼ立方体状のサイコロカット片H2,H2,H2,・・・が多数得られる。これらハムのサイコロカット片H2,H2,H2,・・・は、例えばパスタなどのトッピング具材として使用される。
【0037】
上記したように、この実施形態2の食品原木切断装置1Aによれば、縦切り刃25A,25B,・・・で縦切断を、横切り刃51,51,・・・で横切断を、スライス刃24で前後切断を行なうことにより、個々の切断段階において人手に触れることなく、切断片食品であるサイコロカット片H2,H2,H2,・・・を製造することができる。従って、個々の切断段階において人手で触れることがないので、極めて衛生的である。個々の切断段階で食品原木Hを移し変えたり位置変えしたりする必要がなく、各切断中の食品原木Hの上下左右位置もほとんど変わらないので、サイコロカット片H2の切断寸法精度や切断形状がよい。それにより、製品の重量、容量などを一定にするという食品製品管理を厳密に行なうことができる。また、サイコロカット片H2,H2,H2,・・・を連続して迅速に製造できるから大量生産向きである。
【0038】
[実施形態3.]
続いて、実施形態2の食品原木切断装置1Aの一部を改良した実施形態3を図13から図16に示す。この食品原木切断装置1Aでは、突出板部50における食品原木送給方向上流側の面に、送給方向に陥没した凹状の装着用溝54が形成され、この装着用溝54内に直方体状の移動子58が半径方向移動自在に装着されている。移動子58の上流側面50Aには、複数の横切り刃51,51,51,・・・が、回転軸17の軸心を中心とする半径方向に所定間隔離間した配置で取り付けられている。装着用溝54内には移動子58を半径方向外向きに付勢するコイルバネ55が配備されている。突出板部50の外周面には、装着用溝54内と連通する軸穴57が形成されている。この軸穴57は、移動子58の先端部に突設された支持脚56を半径方向に摺動自在に軸支する。支持脚56の先端には食品原木送給方向を向いた枢支軸59が設けられ、この枢支軸59にガイドローラ53が回動自在に軸支されている。一方、スライス刃24の下流側で、突出板部50のガイドローラ53の回転軌跡Pと交差する位置には、平板状のガイド板60が配備されている。このガイド板60は、その上面が縦切り刃25A,25Bと直交する水平方向(図16中の1点鎖線Eで示す方向)を向くように配置されている。
【0039】
この実施形態3の食品原木切断装置1Aによれば、突出板部50が回転軸17の軸心を中心として回転し、ガイドローラ53がガイド板60に接した位置からガイド板60より離れる位置までの区間L(図16参照)で、移動子58がコイルバネ55のバネ力に抗して装着用溝54内を回転軸17向きに押されて移動する。このため、横切り刃51,51,51,・・・は、区間Lに入ったときに円運動から水平直線運動に変わり、区間Lを移動中は水平直線運動が継続される。この区間Lは食品原木Hの切断領域でもある。従って、食品原木Hの前部HAは横切り刃51,51,51,・・・により水平向きの直線状に切断される。その結果、得られたサイコロカット片H3は、図17に示すように、全ての辺が直線である直方体ないし立方体のものが得られ、付加価値の高いトッピング材として提供することができる。すなわち、装着用溝54、移動子58、支持脚56、軸穴57、コイルバネ55、枢支軸59、およびガイドローラ53を有する突出板部50と、ガイド板60とから成る構成が、食品原木Hの前部HAを切る際に横切り刃51,51,51,・・・を水平方向に直線移動させる直線移動手段61の構成である。
【0040】
[実施形態4.]
以上に述べた実施形態1〜3では、スライス刃として、円盤状に形成されたスライス刃24を自転および公転させるようにした食品原木切断装置1,1Aを例示したが、本発明に用いるスライス刃はそれに限定されない。例えば、図18に示すような、正面から見て刃先形状がほぼインボリュート曲線状に形成された所謂ナギナタ刃状のスライス刃24Aを回転軸17回りに自転駆動させる食品原木切断装置1Bも、本発明に含まれる。この食品原木切断装置1Bの側面構成は、図13に示した食品原木切断装置1Aの側面構成とほぼ同じありスライス刃24をスライス刃24Aに替えただけであるから、図示は省略する。
【0041】
このようなナギナタ刃状のスライス刃24Aを自転させる食品原木切断装置1Bは、円盤状のスライス刃24を自公転させる食品原木切断装置1,1Aと比べて、軸受故障などが少なく耐久性が高い。尚、図18に示した食品原木切断装置1Bでは、直線移動手段61を有する突出板部50付きの装置を示したが、直線移動手段61を持たない突出板部50付きの装置、横切り刃51を有する突出板部50を持たない装置、縦切りユニットが1つである装置、または、縦切り刃が2〜3枚である装置などにも、ナギナタ刃状のスライス刃24Aを用いることができる。
【0042】
尚、縦切り刃が1枚である食品原木切断装置も本発明に含まれる。例えば、食品原木として厚板状のベーコンブロックを用い、このベーコンブロックの左右中央部を1枚の縦切り刃で左右に分割し、左右半分に分割したベーコンブロックをスライス刃で薄く切断することにより、個々の切断段階において人手で触れることなく切断寸法精度よく、ハーフベーコンを得ることができる。あるいは、1枚の横切り刃を回転駆動体に取り付けた食品原木切断装置も、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B 食品原木切断装置
5 載せ台
6 受けフレーム
8 送給機
8(T) 送給終点位置
10 送給駆動部
11 送り体
12 グリッパ
12A 前部
13 掴み部
15,15A 回転駆動体
19 公転駆動機
23 自転駆動機
24,24A スライス刃
25,25A,25B 縦切り刃
26,26A,26B 縦切りユニット
36,36A 上下駆動機
42 隙間部
44 食品原木送給経路
50 突出板部
50A 上流側面
51 横切り刃
AC,C,D,S,T 矢印
E 1点鎖線
H 食品原木
H1 短冊片
H2,H3 サイコロカット片
HA 前部
HE 末端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品原木を傾斜状に載せるための載せ台と、載せ台上の食品原木を送給する送給機と、送給機により送給された食品原木を当該送給方向と交差する方向にスライスするスライス刃とを備えて成り、送給機の送給終点位置とスライス刃との間の食品原木送給経路に、送給されている食品原木を当該送給方向に沿って切断する少なくとも1つの縦切り刃が配備されていることを特徴とする食品原木切断装置。
【請求項2】
縦切り刃を上下駆動させて食品原木を切断するための上下駆動機が縦切り刃に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の食品原木切断装置。
【請求項3】
送給機は、食品原木を送給駆動する送給駆動部と、食品原木の送給方向後端部を掴むために送給駆動部の送給方向前部に送給方向と交差する方向に離間して配備された複数の掴み部とを備えて成り、送給駆動部が送給終点位置に到達したときに縦切り刃を掴み部と接触させないための隙間部が、掴み部と掴み部との間の送給駆動部に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食品原木切断装置。
【請求項4】
装置フレームに回動自在に配備されていてスライス刃が取り付けられた回転駆動体を備え、縦切り刃により切断された食品原木の前部を、ほぼ水平方向に切断するための少なくとも1つの横切り刃が、回転駆動体における食品原木送給方向上流側の面に配備されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の食品原木切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−187680(P2012−187680A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54429(P2011−54429)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(503049427)匠技研株式会社 (14)