説明

食品収容容器

【課題】接着剤による吸液力の低下が軽減された食品収容容器を提供する。
【解決手段】食品収容容器は複合層よりなるシート材料により構成され、底部と底部の外方端部から斜め上方に立ち上がる側壁部からなる形状を有する。複合層は、吸液性層13と、第1接着剤12を介して吸液性層13の上面に貼り合わされた、ミシン目7a、7b及び7cを有する第1非吸液性層と、第2接着剤を介して吸液性層13の下面に貼り合わされた第2非吸液性層とからなる。尚、第1非吸液性層が食品収容容器の内面側の層となるため、おかずから発生した液体は各々のミシン目7a、7b及び7cの上に溜まる。第1接着剤12は、各々のミシン目7a、7b及び7cから所定距離dをおいた位置に市松模様状に塗布されるため、ミシン目7a、7b及び7cの形成方向を分断しない。吸液性層13は開口8より流入した液体を各々のミシン目7a、7b及び7cに沿って連続的に吸液し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は食品収容容器に関し、特に弁当等に入れるおかずを収容する食品収容容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、弁当箱等に収納される食品収容容器であって、種々のおかずを収容しつつ、各々のおかずから発生する汁や油等が他のおかずに移らないようにするものとして、特許文献1に示されているような食品収容容器が提案されている。
【0003】
図7は、従来の食品収容容器の外観形状を示した斜視図であり、図8は、図7で示したVIII−VIIIラインの拡大端面図である。
【0004】
これらの図を参照して、食品収容容器61は、後述する複合層よりなるシート材料のプレス成形により形成され、円形形状の底部63と、底部63の外周端部から斜め上方に立ち上がる側壁部64とから構成されている。側壁部64にはプレス加工時に全周複数の襞65が形成されている。又、底部63の中央を横切り側壁部64の上方端部まで線状に延びるミシン目67が形成されている。このミシン目67は、食品収容容器61の内面側の層にのみ形成されている。
【0005】
図9は、図8で示した“Y”部分の拡大端面図であり、図10は、図9で示したX−Xラインから見た平面図である。
【0006】
これらの図を参照して、複合層70は、中間層に形成された紙(坪量:20g/m)よりなる吸液性を有する吸液性層73と、吸液性層73の上面に格子状に部分的に塗布された第1接着剤72を介してその全面に貼り付けられた、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる非吸液性を有する第1非吸水性層71と、吸液性層73の下面に格子状に部分的に塗布された第2接着剤75を介してその全面に貼り付けられた厚さ12μmのPETよりなる非吸液性を有する第2非吸水性層74とから構成されている。
【0007】
上述のように、線状に所定間隔をもって矩形形状の開口が形成されるミシン目67は、第1非吸液性層71にのみ形成されている。そしてその位置は、図10に示されているように第1接着剤72が塗布されていない部分の第1非吸液性層71に形成されている。そのため、ミシン目67は、図9に示されているように第1非吸液性層71の開口に対向する部分同士がずれて実質的な開口面積が拡大している。
【0008】
次に、図7〜図10を参照して、使用時における吸液動作について説明する。
【0009】
使用時にあっては、図7に示されている食品収容容器61の内部に調理済みのおかずを収容する。するとおかずから汁や油等が染み出て容器内面に付着し、主に底部63に溜まる。ところが、底部63にはミシン目67が形成されているため、これらの液体はその開口の隙間から吸液性層73に流入する。流入した液体は吸液性層73の吸液性能によって吸液性層73の全面に広がることになる。即ち、食品収容容器61の底部63の上に溜まった液体はミシン目67を通して吸液性層73に吸液されることになり、容器内面のみかけ上の液体は減少する。その結果、収納されたおかずによるべと付きが防げ、又、それから発生する液体が他のおかず等に移る虞もない。
尚、外側の第2非吸液性層74にはミシン目等の開口が全く形成されていないため、吸液性層73によって吸液された液体が第2非吸液性層74を通して外面に染み出る虞はない。よって、食品収容容器61を摘んだような場合に外面がべと付くような不快感を生じる虞はない。又、吸液性層73は外方に露出しないため、箸等を使っておかずを取り出す際に吸液性層73が破れる虞もなく、おかずが取り出し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−341863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような従来の食品収容容器では、第1接着剤がミシン目の開口の周囲を取り囲むように配置されているため、第1接着剤が液体の流入及び吸液性層における広がりを妨げていた。そのため、粘度の高い液体、特に油の吸液において吸液力が不足しがちであった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、接着剤による吸液力の低下が軽減された食品収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、吸液性を有する吸液性層と、非吸液性を有し、吸液性層の一方の面の全面に第1接着剤を介して接着され、複数の開口を構成する少なくとも一本のミシン目を有する第1非吸液性層と、非吸液性を有し、吸液性層の他方の面の全面に第2接着剤を介して接着された第2非吸液性層とを備える複合層よりなるシート材料により構成され、第1非吸液性層を内面側とする食品収容容器において、第1接着剤が、ミシン目から所定距離離れた位置であって、ミシン目の形成方向に沿うように配置されたことを特徴とするものである。
【0014】
このように構成すると、第1接着剤がミシン目の形成方向を分断しない。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、食品収容容器は、底部と、底部に接続され上方に立ち上がる側壁部とからなり、ミシン目は、少なくとも底部に形成されるものである。
【0016】
このように構成すると、液体はミシン目の上に溜まる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、所定距離は、1mm以上3mm以下に設定されるものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、第1接着剤は、島状に配置されるものである。
【0019】
このように構成すると、第1接着剤同士の隙間を縫って液体が吸液される。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、ミシン目による開口の各々は、形成方向の長さが5mm、幅が1mmであり、開口の各々は6mmの間隔で形成されると共に、ミシン目は、25mmの間隔で少なくとも2本形成され、接着剤は、ミシン目の各々の間において、一辺の長さが2〜5mmのほぼ正方形によって構成される市松模様状に配置されるものである。
【0021】
このように構成すると、開口からの吸液力が安定すると共に、第1接着剤同士の隙間を確保しつつ、第1接着剤が満遍なく配置される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、第1接着剤がミシン目の形成方向を分断しないので、吸液性層はミシン目に沿って連続的に吸液し得る。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、液体はミシン目の上に溜まるので、ミシン目の開口部に液体が流入しやすくなる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、ミシン目の開口から接着剤が溶出しにくくなるとともに、第1非吸液性層と吸液性層との接着状態が安定する。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第1接着剤同士の隙間を縫って液体が吸液されるので、接着強度を維持しつつ接着剤による吸液力の低下が軽減される。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、開口からの吸液力が安定すると共に、第1接着剤同士の隙間を確保しつつ、第1接着剤が満遍なく配置されるので、第1接着剤による吸液力の低下を軽減させつつ、第1非吸液性層と吸液性層との接着状態を安定させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施の形態による食品収容容器の外観形状を示した斜視図であって、従来技術の図7に対応する図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大端面図であって、従来技術の図8に対応する図である。
【図3】図2で示した“X”部分の拡大端面図であって、従来技術の図9に対応する図である。
【図4】図3で示したIV−IVラインの端面図である。
【図5】実施例7による食品収容容器の端面図であって、先の第1の実施の形態の図4に対応する図である。
【図6】実施例8による食品収容容器の端面図であって、先の第1の実施の形態の図4に対応する図である。
【図7】従来の食品収容容器の外観形状を示した斜視図である。
【図8】図7で示したVIII−VIIIラインの拡大端面図である。
【図9】図8で示した“Y”部分の拡大端面図である。
【図10】図9で示したX−Xラインから見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、この発明の第1の実施の形態による食品収容容器の外観形状を示した斜視図であって、従来技術の図7に対応する図であり、図2は、図1で示したII−IIラインの拡大端面図であって、従来技術の図8に対応する図である。
【0029】
これらの図を参照して、食品収容容器1の内部には、複数の開口が備えられており、底部3の中央を横切り側壁部4の上方端部まで線状に延びる3本のミシン目7a、7b及び7cが形成されている。尚、他の部分は図7に示したものと同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0030】
このように構成すると、食品収容容器1におかずを収容した際に、おかずから発生する汁や油等の液体がミシン目7a、7b及び7cの上に溜まるので、ミシン目7a、7b及び7cの各々の開口に液体が流入しやすくなる。
【0031】
図3は、図2で示した“X”部分の拡大端面図であって、従来技術の図9に対応する図であり、図4は、図3で示したIV−IVラインの端面図である。
【0032】
これらの図を参照して、複合層10は、吸液性層13と、吸液性層13の上面に塗布された第1接着剤12を介してその全面にヒートラミネートによって貼り合わされた第1非吸液性層11と、吸液性層13の下面に塗布された、バイロン接着剤を混合したインクよりなる第2接着剤15を介してその全面にヒートラミネートによって貼り合わされた第2非吸液性層14とからなる。第1接着剤12の塗布量は第1非吸液性層11と吸液性層13とをヒートラミネートで接合する際、経済的で十分な接着力が得られる通常の塗布量でよいが、本実施の形態では乾燥状態で2.5g/mの付着量となるように調整されている。
【0033】
吸液性層13は、中間層に形成され、吸液性を有する紙(目付45g/m)よりなる。第1非吸液性層11は、ミシン目7a、7b及び7cが形成された厚さ12μmの透明のポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる。尚、ミシン目7a、7b及び7cの各々の間隔aは25mmに設定されている。この第1非吸液性層11へのミシン目7a、7b及び7cの形成手段は、巻き取りスリッターに下記のミシン目ピッチを有する回転刃を25mm間隔で設置し、行うこともできる。又、ミシン目7の開口8の寸法は、ミシン目7の形成方向の長さbが5.0mm、幅fが1.0mm、開口8の各々の間隔cが6.0mmに設定されている。
【0034】
このように構成すると、開口8の大きさが一定のものとなると共に開口8が均等に配置されるので、開口8への液体の流入量が安定して食品収容容器の吸液力が安定する。
【0035】
第1接着剤12は、グラビア印刷ロールの印刷版にて吸液性層13の上面に部分的に塗布される。具体的には、ミシン目7a、7b及び7cの各々の間であってそれぞれのミシン目7から所定距離dをおいた位置に、各ミシン目7a、7b及び7cの形成方向に沿うように一辺の長さeが2.0〜5.0mmの範囲で設定された複数の略正方形からなる市松模様状に塗布される。
【0036】
このように構成すると、第1接着剤12がミシン目7の各々の形成方向を分断しないので、吸液性層13は各々のミシン目7に沿って連続的に吸液し得る。
【0037】
又、ミシン目7の各々と第1接着剤12とが離れるため、開口8から接着剤成分が溶出しにくくなる。
【0038】
更に、第1接着剤12において、略正方形の第1接着剤12同士の角が対向する部分には隙間(又はわずかな接着剤のみの存在)が生じる。その結果、液体はその各々の隙間を縫って吸液されるため、第1接着剤12による吸液力の低下が軽減される。
【0039】
更に、第1接着剤12はミシン目7の各々の間に満遍なく配置されるから、第1非吸液性層12と吸液性層13との接着状態が安定する。
【0040】
第2非吸液性層14は、厚さ12μmの透明のPETよりなり、吸液性層13の下面に全面に塗布された第2接着剤15を介して吸液性層13に貼り合わされる。尚、第2非吸液性層14には、ミシン目等の開口が全く形成されていない。
【0041】
このように構成すると、吸液性層13に吸液された液体は、第2接着剤15及び第2非吸液性層14によって塞き止められるため、外面へ染み出す虞がない。
【0042】
尚、上記の第1の実施の形態においては、ミシン目は3本形成されていたが、少なくとも1本形成されていればよい。
【0043】
又、上記の第1の実施の形態においては、ミシン目の各々の間隔及びミシン目の開口の寸法が、特定寸法に設定されていたが、開口から液体が流入できる寸法であれば他の寸法に設定されていてもよい。例えば、ミシン目の各々の間隔aは15mm〜30mmが好ましく、開口のミシン目の形成方向の長さbは1.0mm〜5.0mmが好ましく、開口の各々の間隔cは0.5mm〜3.0mmが望ましい。又、複数の開口が点線状に形成されたものについては、本願におけるミシン目に含まれるものである。
【0044】
更に、上記の第1の実施の形態においては、ミシン目は底部及び側壁部に形成されていたが、底部又は側壁部のどちらかにのみに形成されていてもよい。
【0045】
更に、上記の第1の実施の形態においては、側壁部に襞が形成されているが、襞は無くてもよい。又、食品収容容器の外周端部において全周縁巻を形成したり、第1非吸液性層と第2非吸液性層とを接着したりしてもよい。この場合、吸液性層に染み込んだ液体が食品収容容器の外周端部から流出することが防止され、信頼性が向上するので好ましい。
【0046】
更に、上記の第1の実施の形態においては、吸液性層は目付が45g/mの紙よりなるとしていたが、吸液性を有する素材であって同一の効果を奏するものより形成されていればよい。
【0047】
更に、上記の第1の実施の形態においては、第1非吸液性層及び第2非吸液性層は厚さ12μmのPETよりなるとしていたが、他の合成樹脂フィルムや樹脂コーティングを施した紙素材等、同一の効果を奏するものより形成されていればよい。
【0048】
更に、上記の第1の実施の形態においては、第2非吸液性層は透明な厚さ12μmのPETよりなるとしていたが、柄入りのものや、アルミニウム箔等、同一の効果を奏するものより形成されていればよい。
【0049】
更に、上記の第1の実施の形態においては、第2接着剤が吸液性層の全面に塗布されていたが、部分的に塗布されていてもよい。
【0050】
更に、上記の第1の実施の形態においては、市松模様状に第1接着剤が配置されていたが、ドット状等の完全に分離した島状に配置されていてもよい。この場合、第1接着剤同士の隙間が大きくなるので吸液力が向上するので好ましい。又、これら以外の形状に配置されていてもよい。しかし、配置の形状によってはこの発明の効果を十分に奏さない場合がある。その例については以下の実施例の記載において説明する。
【0051】
更に、上記の第1の実施の形態においては、第1接着剤の一辺の長さを2.0〜5.0mmの範囲で設定するとしていたが、この範囲外の長さに設定されてもよい。しかし、長さによってはこの発明の効果を十分に奏さない場合がある。その例についても以下の実施例の記載において説明する。
【0052】
更に、上記の第1の実施の形態においては、ミシン目と第1接着剤との所定距離を2.0mmと設定していたが、これ以外の長さに設定してもよい。しかし、距離によってはこの発明の効果を十分に奏さない場合がある。その例についても以下の実施例の記載において説明する。
【実施例】
【0053】
上記の食品収容容器の第1接着剤の配置の違いによる吸液力、開口からの第1接着剤の成分の溶出量、及び第1非吸液性層と吸液性層との剥離強度の違いを検討するために実験を行った。実験に際して試料を下記の表1の実施条件のように準備した。
【0054】
【表1】

上記の表を参照して、第1接着剤の印刷パターンは「ア」、「イ」及び「ウ」の三種類とする。このうち、実施例1〜6及び実施例9〜11にて用いられている印刷パターン「ア」は、上記の第1の実施の形態において示した市松模様状のものをいう。実施例7にて用いられている印刷パターン「イ」及び実施例8にて用いられている印刷パターン「ウ」は、以下の図面をもって説明する。
【0055】
図5は、実施例7による食品収容容器の端面図であって、先の第1の実施の形態の図4に対応する図である。
【0056】
図を参照して、第1接着剤12が、各々のミシン目7から所定距離dをおいて、吸液性層13の上面の全面に塗布されている。この第1接着剤12の配置が印刷パターン「イ」である。
【0057】
図6は、実施例8による食品収容容器の端面図であって、先の第1の実施の形態の図4に対応する図である。
【0058】
図を参照して、第1接着剤12が、各々のミシン目7から所定距離dをおいて、ミシン目7の形成方向と平行に伸びる複数の帯状に、吸液性層13の上面に塗布されている。第1接着剤12の各々の幅及び第1接着剤12同士の間隔はeとする。この第1接着剤12の配置が印刷パターン「ウ」である。
【0059】
ここで表1に戻って、寸法のうち、ミシン目の各々の間隔a及びミシン目の開口の寸法(b、c)はいずれの試料においても共通である。相違点は、ミシン目と第1接着剤との所定距離dと、配置パターン「ア」における第1接着剤の一辺の長さe又は配置パターン「ウ」における第1接着剤の幅eとである。
【0060】
吸液力についての実験方法としては、容積が50ccの食品収容容器を試料毎に30個ずつ用意し、各々に3.0ccの食用油(サラダ油)を注いで5時間放置した。
【0061】
吸液力の評価ついては、30個全ての食品収容容器において、底部に溜まっていた油が5時間後に吸液されていれば合格とした。尚、吸液の程度は、吸液性層が完全に油で濡れている状態を合格とし、一部でも未吸液で乾いている部分があれば不合格とした。
【0062】
接着剤成分の溶出量についての実験方法としては、厚生省告示第370号に準ずる試験方法を参考にし、4%酢酸、95℃、30分浸漬後の残留蒸発物の測定を行った。
【0063】
溶出量の評価については、検出限界である5μg/ml以下であれば合格とした。
【0064】
剥離強度についての実験方法としては、乾燥状態の食品収容容器を用いて、一般の引っ張り試験にて、第1非吸液性層と吸液性層との剥離強度を測定した。
【0065】
剥離強度については、0.5N/25mm以上、或いは層間剥離(第1非吸液性層と吸液性層との接着界面ではなく、吸液性層の紙の層で剥離)の場合を合格とした。
【0066】
実験結果は以下の通りである。
【0067】
【表2】

:吸液力について
上記の表を参照して、まず、実施例1と実施例7との油吸液の結果に注目してみる。これらの試料は第1接着剤の印刷パターンにおいてのみ異なる。
【0068】
印刷パターン「ア」の実施例1は、全ての食品収容容器において吸液の程度が合格基準を満たし、吸液力は合格となった。一方、印刷パターン「イ」の実施例7は、30個の食品収容容器のうち吸液の程度が合格基準を満たしたものは18個に留まり、吸液力は不合格となった。つまり印刷パターン「イ」は、第1接着剤がミシン目から所定距離離れた位置においてミシン目の形成方向に沿うように配置されているものではあり、それなりの吸液力があるものの、吸液力が十分安定しているものではないことが確認された。
【0069】
次に、実施例1と実施例8との油吸液の結果に注目してみる。これらの試料も第1接着剤の印刷パターンにおいてのみ異なる。
【0070】
印刷パターン「ア」の実施例1は上述の通り、吸液力は合格であったが、印刷パターン「ウ」の実施例8は、30個の食品収容容器のうち吸液の程度が合格基準を満たしたものは9個に留まり、吸液力は不合格となった。つまり印刷パターン「ウ」も、第1接着剤がミシン目から所定距離離れた位置においてミシン目の形成方向に沿うように配置されるものではあり、それなりの吸液力があるものの、吸液力が十分安定しているものではないことが確認された。
【0071】
尚、実施例7よりも実施例8の方が吸液力において劣る結果になったのは、実施例7は第1接着剤が全面に配置されるため、液体の吸液に対する抵抗が一つのみであるのに対し、実施例8は第1接着剤が複数の帯状に配置されるため、液体の吸液に対する抵抗が拡大することに起因すると考えられる。又、実施例8の剥離実験の結果は不合格となっているが、これは第1接着剤の配置が吸液性層の上面の全体に満遍なく配置されるものではなかったことに起因すると考えられる。
【0072】
更に、実施例1、5及び6と実施例9との油吸液の結果に注目してみる。これらの試料は第1接着剤の一辺の長さeにおいてのみ異なる。
【0073】
長さeが4.0mmの実施例1、2.0mmの実施例5及び5.0mmの実施例6はいずれも、30個全ての食品収容容器において吸液の程度が合格基準を満たし、吸液力の合格基準を満たす。一方、長さeが7.0mmの実施例9は、30個の食品収容容器のうち吸液の程度が合格基準を満たしたものは25個に留まり、吸液力の合格基準を満たしていない。よって、先の第1の実施の形態においても、第1接着剤の一辺の長さeが5.0mm以下でなければ、吸液力が十分得られないことが確認された。
【0074】
これらの実験結果から考えると、第1接着剤の形状において、ミシン目の形成方向の長さが長くなるほど吸液力が低下する虞があると言える。
:接着剤成分の溶出量について
実施例1〜3と実施例10との溶出試験結果に注目してみる。これらの試料はミシン目と第1接着剤との所定距離dにおいてのみ異なる。
【0075】
所定距離dが1.0〜3.0mmの実施例1〜3はいずれも、溶着剤成分の溶出量が5μg/ml以下となって溶出試験の合格基準を満たすが、所定距離dが0.5mmの実施例10は接着剤成分の溶出量が10μg/mlとなって溶出試験の合格基準を満たせなかった。よって、先の第1の実施の形態においても、所定距離dが1.0mm以上でなければ、接着剤成分が過度に溶出する虞があることが確認された。
:剥離強度について
実施例1〜3と実施例11との剥離試験結果に注目してみる。これらの試料はミシン目と第1接着剤との所定距離dにおいてのみ異なる。
【0076】
所定距離dが2.0mmの実施例1、1.0mmの実施例2及び3.0mmの実施例3はいずれも、剥離試験の合格基準を満たす。一方、所定距離dが5.0mmの実施例11は剥離試験の合格基準を満たしていない。よって、先の第1の実施の形態においても、所定距離dが3.0mm以下でなければ、第1非吸易性層と吸液性層とが剥がれ易くなる虞があることが確認された。
【0077】
尚、上述した実施例1〜3、5及び6に加えて、所定距離dを1.0mm、第1接着剤の一辺の長さを5.0mmとする実施例4が、吸液力、接着剤成分の溶出量及び剥離強度のいずれの試験においても合格している。
【0078】
よってこれらの全実験結果から考えると、先の第1の実施の形態において、ミシン目と第1接着剤との所定距離dが1.0mm以上3.0mm以下に設定され、第1接着剤の一辺の長さeが2.0mm以上5.0mm以下に設定されれば、この発明の効果のいずれもを十分に発揮し得ると言える。
【符号の説明】
【0079】
1…食品収容容器
3…底部
4…側壁部
7…ミシン目
8…開口
10…複合層
11…第1非吸液性層
12…第1接着剤
13…吸液性層
14…第2非吸液性層
15…第2接着剤
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸液性を有する吸液性層と、非吸液性を有し、前記吸液性層の一方の面の全面に第1接着剤を介して接着され、複数の開口を構成する少なくとも一本のミシン目を有する第1非吸液性層と、非吸液性を有し、前記吸液性層の他方の面の全面に第2接着剤を介して接着された第2非吸液性層とを備える複合層よりなるシート材料により構成され、前記第1非吸液性層を内面側とする食品収容容器において、
前記第1接着剤が、前記ミシン目から所定距離離れた位置であって、前記ミシン目の形成方向に沿うように配置されたことを特徴とする、食品収容容器。
【請求項2】
前記食品収容容器は、底部と、前記底部に接続され上方に立ち上がる側壁部とからなり、
前記ミシン目は、少なくとも前記底部に形成される、請求項1記載の食品収容容器。
【請求項3】
前記所定距離は、1mm以上3mm以下に設定される、請求項1又は請求項2記載の食品用容器。
【請求項4】
前記第1接着剤は、島状に配置される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の食品収容容器。
【請求項5】
前記ミシン目による開口の各々は、形成方向の長さが5mm、幅が1mmであり、前記開口の各々は6mmの間隔で形成されると共に、前記ミシン目は、25mmの間隔で少なくとも2本形成され、
前記接着剤は、前記ミシン目の各々の間において、一辺の長さが2〜5mmのほぼ正方形によって構成される市松模様状に配置される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の食品収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−195168(P2011−195168A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63621(P2010−63621)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】