説明

食品殺菌方法、及び食品殺菌装置

【課題】装置を大型化することなく、外部からのロック機構によらない手法により密閉空間を形成することができる食品殺菌方法を提供する。
【解決手段】本発明に係わる食品殺菌方法は、食品50を開閉部3の第1開口28から加熱殺菌室2内に搬入する工程と、空気排出部10から加熱殺菌室2内の空気を排出し、当該空気の吸引力により密閉蓋5,6と加熱殺菌室2とを密着させて、加熱殺菌室2内を減圧状態とする工程と、蒸気供給部7,8から加熱殺菌室2内に蒸気を供給し、当該蒸気の圧力により密閉蓋5,6と第1開口28とを密着させて、蒸気供給部7,8から供給した蒸気により加熱殺菌室2内に搬入された食品50を加熱殺菌する工程と、蒸気排出部9から加熱殺菌室2内の蒸気を排出する工程と、食品50を開閉部4の第1開口28から加熱殺菌室2の外に搬出する工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品殺菌方法、及び食品殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の加熱殺菌を行う食品殺菌装置としては、多数の食品を入れる大型の釜と、この釜の開口部を外部から密閉するロック機構とを備えたものが用いられている。
【0003】
このような食品殺菌装置に関する従来技術として、食品一つ一つを密閉するために、上下から小型の第1のチャンバと第2のチャンバとを密接させることにより、密閉空間を形成するようにした装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−99061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先に述べた大型の釜とロック機構とを備えた食品殺菌装置では、釜の内部を加圧した際に、ロック部分に機械的な負荷がかかるため、ロック機構を大型化する必要がある。また、特許文献1の食品殺菌装置では、密閉空間を形成するために、第1のチャンバと第2のチャンバとを外部から圧接する必要がある。このため、第1及び第2のチャンバを外部から圧接する駆動機構が必要となり、装置構成が大型化することが考えられる。
【0006】
このように、従来の食品殺菌装置は、外部からのロック機構により密閉空間を形成する構造であるため、装置の大型化が避けられないものとなっていた。
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、装置を大型化することなく、外部からのロック機構によらない手法により密閉空間を形成することができる食品殺菌方法及び食品殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、食品が通過する開口を備えた開閉部と、当該開閉部から搬入された前記食品を加熱殺菌する加熱殺菌室と、前記開閉部の開口及び前記加熱殺菌室に対し移動自在に支持された密閉蓋と、前記加熱殺菌室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、前記加熱殺菌室内から蒸気を排出する蒸気排出部と、前記加熱殺菌室内の空気を排出する空気排出部と、を有する食品殺菌装置を用いた食品殺菌方法であって、前記食品を前記開閉部の開口から前記加熱殺菌室内に搬入する工程と、前記空気排出部から前記加熱殺菌室内の空気を排出し、当該空気の吸引力により前記密閉蓋と前記加熱殺菌室とを密着させて、前記加熱殺菌室内を密閉した後、当該加熱殺菌室内を減圧状態とする工程と、前記空気排出部を閉じて、前記蒸気供給部から前記加熱殺菌室内に蒸気を供給し、当該蒸気の圧力により前記密閉蓋と前記開閉部の開口とを密着させて、前記開閉部及び前記加熱殺菌室内を密閉した後、前記蒸気供給部から供給した前記蒸気により、前記加熱殺菌室内に搬入された前記食品を加熱殺菌する工程と、前記蒸気供給部を閉じて、前記蒸気排出部から前記加熱殺菌室内の蒸気を排出する工程と、前記食品を前記開閉部の開口から前記加熱殺菌室外に搬出する工程と、を含むことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、食品を加熱殺菌する加熱殺菌室と、前記食品が通過する第1開口及び第2開口を有する開閉部と、前記加熱殺菌室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、前記加熱殺菌室内から蒸気を排出する蒸気排出部と、前記加熱殺菌室内の空気を排出する空気排出部と、前記開閉部の前記第1開口及び前記第2開口に対し移動自在に支持され、前記空気排出部から前記加熱殺菌室内の空気が排出されたときは、当該空気の吸引力により前記開閉部の前記第2開口と密着することにより前記加熱殺菌室内を密閉状態とし、前記蒸気供給部から前記加熱殺菌室内に蒸気が供給されたときは、当該蒸気の圧力により前記開閉部の前記第1開口と密着することにより前記開閉部及び前記加熱殺菌室内を密閉状態とする密閉蓋と、を備えることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の食品殺菌装置において、前記加熱殺菌室が、前記食品を収容する略筒型の密閉容器からなり、当該密閉容器の長手方向の両端部にそれぞれ前記開閉部が設けられ、前記食品は、一方の前記開閉部から前記密閉容器の中に搬入され、一方の前記開閉部と対向する他方の前記開閉部から前記密閉容器の外に搬出されることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の食品殺菌装置において、前記密閉蓋が、前記開閉部を貫通する支持軸により、前記開閉部内で回動及び平行移動自在に支持され、前記支持軸の一方の端部は、前記密閉蓋の中心から偏心した位置で当該密閉蓋と結合することを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の食品殺菌装置において、少なくとも、前記密閉蓋と前記加熱殺菌室とが密着する位置にシール部材を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置を大型化することなく、外部からのロック機構によらない手法により密閉空間を形成することができる食品殺菌方法及び食品殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係わる食品殺菌装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す食品殺菌装置の左側面図である。
【図3】開閉部の概略断面図である。
【図4】リテーナーの外観斜視図である。
【図5】(a)〜(d)は食品殺菌装置を用いた食品の殺菌工程を示す工程図である。
【図6】(e)〜(g)は食品殺菌装置を用いた食品の殺菌工程を示す工程図である。
【図7】他の実施形態に係わる食品殺菌装置の概略断面図である。
【図8】(a)〜(e)はシールゴムの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係わる食品殺菌方法及び食品殺菌装置の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係わる食品殺菌装置1の全体構成図である。本実施形態に係わる食品殺菌装置1は、蒸気室となる加熱殺菌室2と、食品が通過する開閉部3,4と、開閉部3,4の内部に配置された密閉蓋5,6と、蒸気供給部7,8と、蒸気排出部9と、空気排出部10と、を備える。
【0016】
加熱殺菌室2は、内部に空間を有する略筒型の容器により構成されている。加熱殺菌室2は、長手方向の両側面に開口12を有する。加熱殺菌室2の開口12には、開閉部3,4が連結されている。加熱殺菌室2の内部には、後述のリテーナー40を載置するためのプレート23が配置されている。また、加熱殺菌室2の外周には、蒸気供給部7,8、蒸気排出部9、及び空気排出部10が接続されている。
【0017】
蒸気供給部7,8は、加熱殺菌室2内に高温高圧の蒸気(以下、加熱蒸気という)を供給するための機構である。蒸気供給部7,8は、蒸気供給電磁弁13,14と、導通管15,16とを備える。蒸気供給電磁弁13,14は、加熱殺菌室2に加熱蒸気を供給する図示しない蒸気供給器と接続されている。本実施形態の蒸気供給部7,8は、加熱殺菌室2の長手方向の両端付近に接続されているが、接続位置は本実施形態の例に限らず、他の位置であってもよい。
【0018】
蒸気排出部9は、加熱殺菌室2内に供給された蒸気を外部に排出するための機構である。蒸気排出部9は、蒸気排出電磁弁17と、導通管18とを備える。蒸気排出電磁弁17は、図示しない蒸気排出管と接続されている。本実施形態の蒸気排出部9は、加熱殺菌室2の長手方向の中央付近に接続されているが、接続位置は本実施形態の例に限らず、他の位置であってもよい。また、本実施形態では、蒸気排出部9を加熱殺菌室2の上部に設けているが、下部に設けてもよい。
【0019】
空気排出部10は、加熱殺菌室2内の空気を外部に排出するための機構である。空気排出部10は、空気排出電磁弁19と、導通管20とを備える。空気排出電磁弁19は、加熱殺菌室2内の空気を排出する図示しない排出装置と接続されている。本実施形態において、空気排出部10の導通管20は、蒸気排出部9の導通管18の途中に接続されているが、この導通管20が加熱殺菌室2に直接に接続される構成としてもよい。
【0020】
次に、開閉部3,4の構成を、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、図1の左側面図である。図3は、開閉部3の概略断面図である。ここでは、開閉部3(及び密閉蓋5)を例として構成を説明し、開閉部4については図示と説明を省略する。ただし、開閉部4(及び密閉蓋6)も開閉部3と構成は同じである。また、開閉部3,4に共通の構成や動作等を説明する場合は、必要に応じて「開閉部3(4)」、「密閉蓋5(6)」と記載する。
【0021】
開閉部3は、内部に密閉蓋5を備える。また、開閉部3は、第1開口28及び第2開口29と、後述の支持軸5aが貫通する貫通穴30とを備える。第1開口28及び第2開口29は、食品が収容されたリテーナー40が通過可能な大きさを有する。また、第2開口29は、加熱殺菌室2の開口12と連通している。
【0022】
密閉蓋5(6)は、開閉部3(4)の貫通穴30を貫通する支持軸5a(6a)と結合している。支持軸5aは、一方の端部が密閉蓋5の中心から偏心した位置で密閉蓋5と結合している。支持軸5aの他方の端部は、図示しない駆動機構と接続している。この駆動機構は、密閉蓋5を回動させるための駆動力を支持軸5aに与えるものである。支持軸5aは、図3の矢印Aに示すように、時計回り又は反時計回りに回動する。図2では、第1開口28が開くように密閉蓋5を回動させた状態(開位置)を二点鎖線で示し、第1開口28が閉じるように密閉蓋5を回動させた状態を(閉位置)を破線で示す。なお、支持軸5aは、駆動機構により回動する例に限らず、手動により回動する構成であってもよい。
【0023】
また、開閉部3の内側には、図3に示すように、シールゴム24,25が取り付けられている。シールゴム24は、空気排出部10から空気が排出されたときの空気の吸引力により、密閉蓋5(6)が内側に平行移動して、開閉部3(4)の第2開口29と密着したときに、密閉蓋5(6)と第2開口29との間を密閉するためのシール部材である。シールゴム24は、開閉部3(4)の第2開口29の周囲の内壁に形成された溝26に嵌め込まれている。密閉蓋5(6)と開閉部3(4)の第2開口29とが密着すると、シールゴム24により密閉蓋5(6)と第2開口29との間が密閉され、開閉部3(4)の第2開口29が塞がれる。これにより、加熱殺菌室2内が密閉状態となる。
【0024】
一方、シールゴム25は、蒸気供給部7,8から加熱蒸気が供給されたときの加熱蒸気の圧力により、密閉蓋5(6)が外側に平行移動して、開閉部3(4)の第1開口28と密着したときに、密閉蓋5(6)と第1開口28との間を密閉するためのシール部材である。シールゴム25は、開閉部3(4)の第1開口28の周囲の内壁に形成された溝27に嵌め込まれている。密閉蓋5(6)と開閉部3(4)の第1開口28との間が密着すると、シールゴム25により密閉蓋5(6)と第1開口28との間が密閉され、開閉部3(4)の第1開口28が塞がれる。これにより、開閉部3(4)及び加熱殺菌室2内が密閉状態となる。
【0025】
なお、本実施形態では、図2に示すように、開閉部3(4)の第1開口28及び第2開口29を円形とし、シールゴム24,25をリング状とした例について示したが、第1開口28、第2開口29は四角形でもよい。その場合は、シールゴム24,25を四角形の枠状とする。
【0026】
支持軸5a(6a)は、図3の矢印Bに示すように、密閉蓋5(6)を平行移動自在に支持している。密閉蓋5(6)は、空気の吸引力又は蒸気の圧力により平行移動する。すなわち、密閉蓋5(6)は、空気排出部10から空気が排出された場合は、排出される空気の吸引力により開閉部3(4)の内側に平行移動して、加熱殺菌室2の側面と密着する。これにより、加熱殺菌室2は、密閉蓋5(6)及びシールゴム25により両側面が塞がれて密閉状態となる。
【0027】
また、密閉蓋5(6)は、蒸気供給部7,8から加熱蒸気が供給された場合には、供給された蒸気の圧力により開閉部3(4)の外側に平行移動して、開閉部3(4)の第1開口28と密着する。これにより、開閉部3(4)は、密閉蓋5(6)及びシールゴム24により第1開口28が塞がれ、開閉部3(4)及び加熱殺菌室2内が密閉状態となる。
【0028】
上述したように、図1に示す開閉部4(及び密閉蓋6)も、開閉部3(及び密閉蓋5)と同一構成であり、開閉部4の密閉蓋6は、開閉部3の密閉蓋5と同期した所定のタイミングで駆動される。
【0029】
次に、加熱殺菌の対象となる食品及びリテーナーについて説明する。図4は、リテーナー40の外観斜視図である。リテーナー40は断面が略コ字型に形成された金属製のトレイである。
【0030】
リテーナー40には、食品50を収容するための複数の開口部41が形成されている。食品50は、略箱枠形状のプラスチック製の容器で構成されている。この容器中には、内容物として米、大豆、根菜類、麺類等が充填される。本実施形態では、容器内に内容物が充填されている状態を「食品」と呼ぶ。なお、図4では、1つのリテーナー40に4つの食品50を一列に収容する例を示すが、食品50の収容数や配置は適宜に選択可能である。
【0031】
本実施形態において、食品50を収容したリテーナー40は、開閉部3の第1開口28及び第2開口29から加熱殺菌室2内に搬入される。そして、後述する加熱殺菌の処理を施した後、開閉部3と対向する側に連結された開閉部4の第1開口28及び第2開口29(図示を省略)から加熱殺菌室2の外に搬出される。
【0032】
なお、食品殺菌装置1は、リテーナー40を開閉部3の第1開口28から及び第2開口29連続的に加熱殺菌室2の内部に搬入するための図示しない搬入機構と、リテーナー40を開閉部4の第1開口28及び第2開口29から連続的に加熱殺菌室2の外部に搬出するための図示しない搬出機構とを備える。そして、これら搬入機構及び搬出機構の動作と連動して、開閉部3,4の密閉蓋5,6を回動するように構成されている。
【0033】
上述した搬入機構及び搬出機構は、リテーナー40を連続的に搬入/搬出することができれば、様々な機構を採用することができる。例えば、ベルトコンベア式の移動機構を採用してもよいし、竿送り機構を採用してもよい。
【0034】
次に、上記のように構成された食品殺菌装置1を用いた食品殺菌方法について説明する。図5(a)〜(d)、及び図6(e)〜(g)は、食品殺菌装置1を用いた食品の殺菌工程を示す工程図である。なお、図5及び図6では、各工程の説明に必要な箇所にのみ符号を付している。また、各部における断面のハッチング等を省略する。更に、開いている電磁弁を白地で表わし、閉じている電磁弁には「×」印を付している。
【0035】
第1の工程では、図5(a)に示すように、開閉部3の密閉蓋5を開位置まで回動させ、食品50を収容したリテーナー40を開閉部3の第1開口28及び第2開口29から加熱殺菌室2内に搬入する。なお、図5(a)に示すように、リテーナー40の出口側となる開閉部4の密閉蓋6は、リテーナー40の入口側となる開閉部3の密閉蓋5と同じく開位置に回動している。ただし、リテーナー40の搬入時は、開閉部4の密閉蓋6を閉位置としてもよい。また、密閉蓋5,6は、この状態で平行移動自在となっている。
【0036】
第2の工程では、図5(b)に示すように、開閉部3の密閉蓋5、及び開閉部4の密閉蓋6を閉位置まで回動させる。また、蒸気供給部7,8の蒸気供給電磁弁13,14、及び蒸気排出部9の蒸気排出電磁弁17を閉じる。
【0037】
第3の工程では、図5(c)に示すように、空気排出部10の空気排出電磁弁19を開いて、空気排出部10から加熱殺菌室2内の空気を排出する。このとき、排出される空気の吸引力により、密閉蓋5,6がそれぞれ開閉部3,4の内側に平行移動して、第2開口29と密着する。これにより、加熱殺菌室2の両側面に形成された開口12が、密閉蓋5,6及びシールゴム24により塞がれて密閉状態となる。この後、更に空気排出部10から加熱殺菌室2内の空気を排出して、加熱殺菌室2内を減圧する。この減圧により加熱殺菌室2内が真空圧となったときに、次の工程に移行する。
【0038】
第3の工程において、加熱殺菌室2内を真空圧とするのは、食品50の内容物の表面に空気が存在していると、加熱蒸気を供給したときに熱の伝わりが不均等になるためである。加熱殺菌室2内を真空圧として、空気のように熱を伝える媒体を少なくすることにより、加熱蒸気の熱を食品50に均等に伝えることができる。また、加熱蒸気の熱を食品50に伝えやすくなるため、加熱殺菌に要する時間を短縮することができる。更に、加熱殺菌室2の内部を短時間で高温にすることができる。なお、加熱殺菌室2内は絶対真空とすることが望ましいが、真空圧にするまでに時間がかかると、生産効率の低下を招くことになる。このため、減圧工程では、数秒の排気時間で実用的な真空圧とすることが望ましい。一例として、0.07MPa〜0.09MPa程度の真空圧であれば、短時間で十分な効果を得ることができる。ただし、上記のような真空圧としない場合でも、加熱殺菌室2内を大気圧よりも減圧することにより、相当の効果を得ることができる。
【0039】
第4の工程では、図5(d)に示すように、空気排出部10の空気排出電磁弁19を閉じて、空気の排出を停止する。これにより、密閉蓋5,6と第2開口29との密着が解除され、平行移動可能な状態となる。続いて、蒸気供給部7,8の蒸気供給電磁弁13,14を開いて、蒸気供給部7,8から加熱殺菌室2内に加熱蒸気を供給する。このとき、供給された加熱蒸気の圧力により、密閉蓋5,6がそれぞれ開閉部3,4の外側に平行移動して、開閉部3,4の第1開口28と密着する。これにより、開閉部3,4のそれぞれの第1開口28が密閉蓋5,6及びシールゴム25により塞がれ、開閉部3,4及び加熱殺菌室2内は密閉状態となる。この後、加熱殺菌室2内に供給した加熱蒸気により、食品50を所定時間、加熱殺菌する。この加熱殺菌が完了すると、次の工程に移行する。
【0040】
第5の工程では、図6(e)に示すように、蒸気供給部7,8の蒸気供給電磁弁13,14を閉じて、加熱蒸気の供給を停止する。これにより、密閉蓋5,6と開閉部3,4の第1開口28との密着が解除され、回動可能な状態となる。続いて、蒸気排出部9の蒸気排出電磁弁17を開いて、蒸気排出部9から加熱殺菌室2内の加熱蒸気を排出する。加熱蒸気の排出が完了すると、次の工程に移行する。
【0041】
第6の工程では、図6(f)に示すように、開閉部3の密閉蓋5、及び開閉部4の密閉蓋6を開位置まで回動させる。
【0042】
第7の工程では、図6(g)に示すように、加熱殺菌した食品50を収容したリテーナー40を開閉部4の第1開口28及び第2開口29から加熱殺菌室2の外に搬出する。
【0043】
なお、開閉部4の第1開口28及び第2開口29からリテーナー40を搬出すると同時に、次に加熱殺菌する食品50を収容した別のリテーナー40を、開閉部3の第1開口28及び第2開口29から加熱殺菌室2内に搬入するようにしてもよい。本実施形態の食品殺菌装置1では、開閉部3の第1開口28及び第2開口29からリテーナー40を加熱殺菌室2内に搬入し、加熱殺菌を施した後、開閉部4の第1開口28及び第2開口29からリテーナー40を搬出するようにしている。これによれば、上述したように、食品50を収容したリテーナー40を加熱殺菌室2に対し連続的に搬入/搬出することができるので、加熱殺菌処理の効率化を図ることができる。
【0044】
上記第1〜第7の工程を繰り返し実施することにより、リテーナー40に収容した食品50を連続的に加熱殺菌することができる。なお、実際の加熱殺菌では、複数の殺菌工程を実施することがほとんどである。例えば、米を内容物とした場合の生産ラインでは、一例として以下のような工程が含まれる。
(a)プラスチックの容器をリテーナー40に収容する。
(b)内容物となる米を計量し、前記容器に充填する(以下、食品50)。
(c)リテーナー40を加熱殺菌室2内に搬入する。
(d)食品50を所定時間、加熱殺菌(一次殺菌)する。一次殺菌後、リテーナー40を加熱殺菌室2の外に搬出する。
(e)リテーナー40から食品50を取り出し、次工程で用いる炊飯装置まで搬送する。なお、食品50を取り出したリテーナー40は、クリーントンネルを経由して、再び(a)の工程を行う場所まで返却される。
(f)食品50の容器内に所定量の水を充填する。
(g)炊飯装置の蒸気槽で20〜30分、100℃前後で加熱殺菌(二次殺菌)する。二次殺菌後、食品50を炊飯装置の蒸気槽から搬出し、次工程で用いるシール装置まで搬送する。
(h)シール装置内のクリーンな環境下で食品50に蓋をかぶせてシールする。
(i)再び炊飯装置の蒸気槽(又は温水)で10〜20分、70〜80℃で加熱殺菌(三次殺菌)する。
(j)三次殺菌後、食品50を10〜30分、冷水又は冷水シャワーで冷却する。
(k)冷却後、食品50を乾燥工程、外観検査工程、包装工程の順に搬送する。
【0045】
以上説明した、本実施形態の食品殺菌装置1及びこれを用いた食品殺菌方法よれば、以下のような効果を奏する
【0046】
(1)本実施形態の食品殺菌装置1では、加熱殺菌室2内を真空圧にするときは、空気の吸引力により加熱殺菌室2を密閉状態とすることができる。また、加熱殺菌室2内の食品50を加熱殺菌するときは、加熱蒸気の圧力により開閉部3,4及び加熱殺菌室2を密閉状態とすることができる。これによれば、密閉空間を形成するための外部からのロック機構が不要となるため、装置を大型化することなく、外部からのロック機構によらない手法により密閉空間を形成することができる。
【0047】
(2)外部からのロック機構や、その駆動機構等を備えた従来装置では、密閉容器の蓋が内圧で開かないように、蓋を固定する作業が必要となる。また、殺菌処理の後は、蓋の固定を解除する作業が必要となる。このため、従来装置では、蓋を固定したり、解除したりするための作業時間が必要となっていた。しかしながら、本実施形態の食品殺菌装置1では、加熱殺菌室2からの空気の排気や蒸気の供給だけで、加熱殺菌室2を密閉状態とすることができる。また、加熱殺菌室2からの空気の排気や蒸気の供給を停止するだけで、加熱殺菌室2の密閉状態を解除することができる。これによれば、蓋の固定や解除のための作業工程が不要となるため、作業時間を短縮することができる。
【0048】
(3)密閉蓋5,6は、外部から回動のための駆動力を与えるだけでよく、平行移動のための駆動力を与える必要がないため、装置構成を簡略化することができる。
【0049】
(3)本実施形態の食品殺菌装置1では、開閉部3の第1開口28及び第2開口29からリテーナー40を加熱殺菌室2内に搬入し、加熱殺菌を施した後、開閉部3と対向する側に連結された開閉部4の第1開口28及び第2開口29からリテーナー40を搬出するようにしている。この構成によれば、食品50を収容したリテーナー40を、一方通行で直線的に加熱殺菌室2に搬入/搬出することができる。したがって、ベルトコンベア等を用いた搬入/搬出機構により、リテーナー40の搬入/搬出を容易に自動化することが可能となる。
【0050】
(4)本実施形態の食品殺菌装置1では、密閉蓋5,6を、開閉部3,4を貫通する支持軸5a,6aにより回動及び平行移動自在に支持するとともに、支持軸5a,6aの一方の端部を、密閉蓋5,6の中心から偏心した位置で密閉蓋5,6と結合させている。この構成によれば、支持軸5a,6aを回動させることによって、開閉部3,4の第1開口28を容易に開閉することができる。また、開閉部3,4を貫通するのは支持軸5a,6aのみとなるため、密閉性を低下させる開口部分を必要最小限とすることができる。
【0051】
(5)本実施形態の食品殺菌装置1では、密閉蓋5(6)と開閉部3(4)の第2開口29とが密着する位置にシール部材としてシールゴム24を設けている。この構成によれば、密閉蓋5(6)と第2開口29とが密着したときの密閉性を高めることができる。更に、本実施形態の食品殺菌装置1では、密閉蓋5(6)と開閉部3(4)の第1開口28とが密着する位置にシール部材としてシールゴム25を設けている。この構成によれば、密閉蓋5(6)と第1開口28とが密着したときの密閉性を高めることができる。
【0052】
また、本発明に係わる食品殺菌方法及び食品殺菌装置は、上記実施形態以外にも、以下に示すような種々の変形、置き換え、構成の追加等が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものである。
【0053】
(1)加熱殺菌室2は、本実施形態に示すような筒型以外の形状であってもよい。例えば、角柱型、だ円柱型、かまぼこ型等の形状を採用することができる。また、加熱殺菌室2の高さ、幅、全長は、加熱殺菌する食品50の大きさや個数により適宜設定することができる。例えば、リテーナー40を2列同時に搬入/搬出可能な構成としてもよい。更に、食品殺菌装置1を、複数並列に配置した構成としてもよい。その場合は、同一工程の処理を同時に実行してもよいし、所定の時間差で実行するようにしてもよい。
【0054】
(2)図5(d)に示す第4の工程において、蒸気供給部7,8から加熱殺菌室2内に加熱蒸気を供給しつつ、その一部を外部に排出するように構成してもよい。図7は、本発明に係わる食品殺菌装置の他の実施形態を示す概略断面図である。図7では、図5又は図6に示す食品殺菌装置1と同等部分を同一符号で示している。本実施形態の食品殺菌装置1Aは、開閉部3,4の下部に蒸気抜き部31、32を備える。蒸気抜き部31、32は、蒸気抜き電磁弁33,34と、導通管35,36とを備える。電磁弁33,34は、図示しない蒸気抜き管と接続されている。
【0055】
本実施形態の食品殺菌装置1Aを用いた食品殺菌方法では、上述した第4の工程において、蒸気供給部7,8から加熱殺菌室2内に加熱蒸気を供給するのと同時に、蒸気抜き電磁弁33,34を開いて、蒸気供給部7,8から供給された加熱蒸気の一部を蒸気抜き部31、32から排出する。例えば、蒸気供給部7,8から3.2km/mの加熱蒸気を供給したとすると、蒸気抜き部31、32において0.2km/mの加熱蒸気を排出する。これにより、加熱殺菌室2の内部には、常に3.0km/mの圧力で加熱蒸気が供給されることになる。
【0056】
図7に示す実施形態の構成によれば、加熱殺菌室2の内部を密閉状態とした場合と比べて、加熱殺菌室2の隅々まで加熱蒸気を行き渡らせることができる。このため、リテーナー40に収容されたすべての食品50を均等に加熱殺菌することが可能となる。また、加熱殺菌室2に供給された加熱蒸気の一部が凝固して水に変わった場合でも、開閉部3,4の下部に溜まることなく、蒸気抜き部31、32から排出される。この構成によれば、開閉部3,4から水を抜く作業が不要となり、連続して加熱殺菌処理を行うことができる。したがって、作業効率を向上させることができる。また、装置のメンテナンス回数を減らすことができる。
【0057】
(3)図8(a)〜(e)は、シールゴムの構成例を示す概略断面図である。本実施形態では、図3に示すように、開閉部3(4)の第2開口29側にシールゴム24、開閉部3(4)の第1開口28側にシールゴム25をそれぞれ取り付けた例を示したが、シール部材は、少なくとも密閉蓋5(6)と開閉部3(4)の第2開口29とが密着する位置に設けられていればよい。以下、変形の構成例について説明する。なお、図8に示す各図では、開閉部3(及び密閉蓋5)を例として構成を説明し、開閉部4については図示と説明を省略する。
【0058】
図8(a)は、シールゴム24を、開閉部3の第2開口29の周囲の内壁に設けた場合の構成例を示す。また図8(b)は、シールゴム24を、密閉蓋5の、加熱殺菌室2側(開閉部3の第2開口29側)となる側面に設けた場合の構成を示す。いずれの場合も、開閉部3の第1開口28の周囲の内壁にはシールゴム(25)を設けていない。図8(a)、(b)の構成例において、蒸気供給部7,8から加熱蒸気を供給したときに、密閉蓋5と開閉部3の第1開口28との間の密閉性は、図3の構成と比べて低くなる。しかしながら、密閉蓋5と第1開口28(開口周囲部分)とが接触するそれぞれの面の平滑性を高めることにより、蒸気漏れを最小限に抑えることができる。図8(a)、(b)の構成例によれば、部品点数や組み付け工数を少なくすることができるので、コスト削減が可能となる。
【0059】
また、シールゴム24,25を設けた場合の配置についても種々の変形が考えられる。図8(c)は、シールゴム24,25を密閉蓋5の両側面に設けた場合の構成を示す。また図8(d)は、シールゴム24を開閉部3の第2開口29の周囲の内壁に設け、シールゴム25を密閉蓋5の、開閉部3の第1開口28側となる側面に設けた場合の構成を示す。更に図8(e)は、シールゴム24を密閉蓋5の、加熱殺菌室2側(開閉部3の第2開口29側)となる側面に設け、シールゴム25を開閉部3の第1開口28の周囲の内壁に設けた例を示す。図8(c)〜(e)の構成例とした場合においても、図3に示す構成と同等の効果を得ることができる。
【0060】
なお、シール部材となるシールゴム24、25を、いずれも設けない構成としてもよい。この場合は、密閉蓋5(6)と第1開口28(開口周囲部分)、又は密閉蓋5(6)と第2開口29(開口周囲部分)とが接触するそれぞれの面の平滑性を高めることにより、蒸気漏れを最小限に抑えることができる。
【0061】
上記構成例以外にも各種の組み合わせが可能である。また、開閉部3,4内におけるシールゴムの構成は同一であることが望ましいが、それぞれが異なる構成としてもよい。更に、シールゴム以外にも、例えば、耐熱性樹脂からなるシール部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,1A:食品殺菌装置、2:加熱殺菌室、3,4:開閉部、5,6:密閉蓋、5a,6a:支持軸、7,8:蒸気供給部、9:蒸気排出部、10:空気排出部、24,25:シールゴム、28:第1開口、29:第2開口、31:蒸気抜き部、40:リテーナー、50:食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品が通過する開口を備えた開閉部と、当該開閉部から搬入された前記食品を加熱殺菌する加熱殺菌室と、前記開閉部の開口及び前記加熱殺菌室に対し移動自在に支持された密閉蓋と、前記加熱殺菌室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、前記加熱殺菌室内から蒸気を排出する蒸気排出部と、前記加熱殺菌室内の空気を排出する空気排出部と、を有する食品殺菌装置を用いた食品殺菌方法であって、
前記食品を前記開閉部の開口から前記加熱殺菌室内に搬入する工程と、
前記空気排出部から前記加熱殺菌室内の空気を排出し、当該空気の吸引力により前記密閉蓋と前記加熱殺菌室とを密着させて、前記加熱殺菌室内を密閉した後、当該加熱殺菌室内を減圧する工程と、
前記空気排出部を閉じて、前記蒸気供給部から前記加熱殺菌室内に蒸気を供給し、当該蒸気の圧力により前記密閉蓋と前記開閉部の開口とを密着させて、前記開閉部及び前記加熱殺菌室内を密閉した後、前記蒸気供給部から供給した前記蒸気により、前記加熱殺菌室内に搬入された前記食品を加熱殺菌する工程と、
前記蒸気供給部を閉じて、前記蒸気排出部から前記加熱殺菌室内の蒸気を排出する工程と、
前記食品を前記開閉部の開口から前記加熱殺菌室外に搬出する工程と、
を含むことを特徴とする食品殺菌方法。
【請求項2】
食品を加熱殺菌する加熱殺菌室と、
前記食品が通過する第1開口及び第2開口を有する開閉部と、
前記加熱殺菌室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記加熱殺菌室内から蒸気を排出する蒸気排出部と、
前記加熱殺菌室内の空気を排出する空気排出部と、
前記開閉部の前記第1開口及び前記第2開口に対し移動自在に支持され、前記空気排出部から前記加熱殺菌室内の空気が排出されたときは、当該空気の吸引力により前記開閉部の前記第2開口と密着することにより前記加熱殺菌室内を密閉状態とし、前記蒸気供給部から前記加熱殺菌室内に蒸気が供給されたときは、当該蒸気の圧力により前記開閉部の前記第1開口と密着することにより前記開閉部及び前記加熱殺菌室内を密閉状態とする密閉蓋と、
を備えることを特徴とする食品殺菌装置。
【請求項3】
前記加熱殺菌室は、前記食品を収容する略筒型の密閉容器からなり、当該密閉容器の長手方向の両端部にそれぞれ前記開閉部が設けられ、
前記食品は、一方の前記開閉部から前記密閉容器の中に搬入され、一方の前記開閉部と対向する他方の前記開閉部から前記密閉容器の外に搬出されることを特徴とする請求項2に記載の食品殺菌装置。
【請求項4】
前記密閉蓋は、前記開閉部を貫通する支持軸により、前記開閉部内で回動及び平行移動自在に支持され、前記支持軸の一方の端部は、前記密閉蓋の中心から偏心した位置で当該密閉蓋と結合することを特徴とする請求項2又は3に記載の食品殺菌装置。
【請求項5】
少なくとも、前記密閉蓋と前記開閉部の前記第2開口とが密着する位置にシール部材を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の食品殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−78354(P2011−78354A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233224(P2009−233224)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(509279859)エムワイフーズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】