説明

食品添加物

本発明は、5’−ヌクレオチドならびに/あるいは野生型動物の共食いを防止および/または処置するのに有効な少なくとも1000ダルトンのペプチドを含有する薬剤、その調製物ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜における共食いの防止および/または処置に関する。
【0002】
現在最新の産業的畜産業者は、緊密な領域で迅速かつ安価に最も大量の肉、乳汁および卵を生産しようと努めている。これらの集約的なファクトリーファームのいくつかでは、共食いのような病的現象が観察されている。本明細書において用いられる用語「共食い」は、1つの動物が別の動物を食べる実際には極めて稀な場合に限定されない。ここで、用語「共食い」は、1つの動物が別の動物に噛み付くことによって、それを傷付ける任意の付随事象を指す。従って、用語「共食い」は、家禽農場において、およびに産卵鶏および狩猟鳥の間で観察されるつつき、およびブタ農場において時々認められる悪癖(尾および/または耳かじり)、ならびに反芻動物の攻撃行動を包含する。
【0003】
このような共食いは動物福祉に不利益であり、収量を低下させる。
【0004】
動物の福利を改善することを目的としたいくつかの商業製品は、市販されている。例えば、2000年に、獣医学研究所Ceva Sante Animaleは、ブタ農場における悪癖を減少することを目的とするフェロモンをSuilence(登録商標)の名称で販売した。アスコルビン酸もまた、家畜における共食いを減少するための飼料添加物として使用されている。
【0005】
本発明は、驚くべき様式で、5’−ヌクレオチドおよび/またはペプチドを含有する酵母誘導体を前記動物に投与することによって、家畜における共食いを防止ならびに/あるいは処置(減少)することが可能であるという観察に関し、前記ペプチドは、少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有する。
【背景技術】
【0006】
特許文献1は、養殖魚の食欲能(appetability)を改善するための飼料組成物への5’−ヌクレオチドの添加に関する。
【0007】
特許文献2は、成長速度を加速し、飼料から重量への飼料変換を改善するための広範囲の家畜の飼料への5’−ヌクレオチドの添加に関する。
【0008】
2つの特許、特許文献3および特許文献4は、体重増加、上皮および毛の成長、創傷治癒のような生理学的プロセスを調節するため、ならびに鎮痛剤および鎮静剤としての修復および同化プロセスを刺激するための多数のペプチドを提唱する。
【0009】
特許文献5では、分子量10,000ダルトン未満のペプチドが、自己溶解の前に物理的または化学的ストレスに供された酵母から抽出される。前記ペプチドは、ヒトにおいて、特に、ストレス緩和剤、鎮静剤および神経栄養因子として使用される。
【特許文献1】米国特許第A−5,188,851号明細書
【特許文献2】米国特許第A−3,686,392号明細書
【特許文献3】米国特許第B−6,248,716号明細書
【特許文献4】米国特許第B−6,184,208号明細書
【特許文献5】国際公開第02/067959号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する酵母誘導体を投与することを含んでなる、家畜における共食いを防止ならびに/あるいは減少するための方法に関する。好ましくは、本発明は、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドを投与することを含んでなる、家畜における共食いを防止ならびに/あるいは減少するための方法に関する。
【0011】
ヌクレオチドは:
・プリンまたはピリミジン窒素塩基、
・ペントース:リボースまたはデオキシリボース、および
・1つもしくはそれ以上のリン酸分子
を強制的に含んでなるヌクレオシドリン酸エステルである。
【0012】
本発明の趣旨において、用語「5’−ヌクレオチド」は、5’−ヌクレオチド自体、ならびにその塩、水和物、水和塩、および他の生理学的に許容可能な形態を含む。特に、5’−ヌクレオチドは、少なくとも1つの5’リン酸基を含んでなる。
【0013】
本発明の趣旨において、用語「ペプチド」は、ペプチド自体、ならびにその塩および他の生理学的に許容可能な形態を含む。
【0014】
本発明によれば、5’−ヌクレオチドは、リボヌクレオチドを有利に含んでなる。
【0015】
有用な様式では、5’−ヌクレオチド、および特に、5’−リボヌクレオチドは、5’−ヌクレオチド一リン酸であるかまたは該5’−ヌクレオチド一リン酸を含んでなる。
【0016】
好ましくは、それらは、モノヌクレオチドであるか、または該モノヌクレオチドを含んでなる。
【0017】
特に、5’−ヌクレオチドは、5’−IMP(イノシン5’−一リン酸)、5’−GMP(グアノシン5’−一リン酸)、5’−AMP(アデノシン5’−一リン酸)、5’−UMP(ウリジン5’−一リン酸)または5’−CMP(シチジン5’−一リン酸)であり得るかまたは含んでなり得る。前記5’−ヌクレオチドは、好ましくは、少なくとも2つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせとして、より好ましくは、3つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせの形態で、およびさらにより好ましくは、4つもしくは5つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせで使用される。それらは、例えば、5’−IMPと、5’−GMP、5’−AMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群から選択される5’−ヌクレオチドとの組み合わせ;またはその他に、5’−GMPと、5’−AMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において選択される5’−ヌクレオチドとの組み合わせ;5’−AMPと5’−UMPもしくは5’−CMPとの組み合わせ;またはその他に、5’−UMPと5’−CMPとの組み合わせを含んでなることができる。それらはまた、5’−IMPと、5’−GMPおよび5’−AMP、5’−GMPおよび5’−UMP、5’−GMPおよび5’−CMP、5’−AMPおよび5’−UMP、5’−AMPおよび5’−CMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群からの組み合わせの1つとの組み合わせを含んでなることができる。それらはまた、5’−GMPと、5’−AMPおよび5’−UMP、5’−AMPおよび5’−CMP、ならびに5’−UMPおよび5’−CMPからなる群からの組み合わせとの組み合わせを含んでなることができる。それらはまた、4つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせ、またはその他に、5つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせを含んでなることができる。好ましくは、それらは、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMPおよび5’−AMPの組み合わせ;または5’−GMP、5’−UMP、5’−CMPおよび5’−IMPの組み合わせ;またはその他に、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMP、5’−IMPおよび5’−AMPの組み合わせを含んでなる。
【0018】
5’−ヌクレオチドは、生成および合成の異なる方法によって入手することができる。本発明について、5’−ヌクレオチド、および特に、調味料エンハンサー5’−GMPおよび5’−IMPは、前記方法のいずれか1つによって入手することができる。
【0019】
本発明の好適な実施態様では、酵母誘導体、5’−ヌクレオチドおよび/またはペプチドは、少なくとも部分的におよび好ましくは全体的に、酵母細胞、より好ましくは、カンジダ(Candida)属またはサッカロマイセス(Saccharomyces)属の酵母の細胞から生じる。好ましくは、前記酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種またはカンジダ・ウチリス(Candida utilis)種(一般に、食物に使用されるカンジダ(Candida)の種は、一般に、トルラ(Torula)と呼ばれる)に属する。
【0020】
従って、本発明はまた、家畜に、酵母誘導体、ならびに特に、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する酵母誘導体を、特に、家畜における共食いの防止および/または処置のために提供することに関する。特に、酵母誘導体は、酵母の酵素加水分解物、および特に、水に不溶な物質の排除によって酵母の酵素加水分解物から生じる酵母抽出物のような酵母抽出物であり得る。酵母から誘導される少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドは、好ましくは、酵母誘導体であって、好ましくは、酵母の酵素加水分解物の形態、およびさらにより好ましくは、酵母抽出物の形態である。
【0021】
5’−ヌクレオチドの5’−GMPおよび5’−IMPは、それらの特定の顕著な風味増強特性が公知である。特に、高い含有量の前記5’−ヌクレオチド、および従って、酵母抽出物の生成に適用される方法によって生じる調味料を有する酵母抽出物を入手するための仕方が公知である。
【0022】
事実、主に内因性の酵母酵素による自己溶解物または酵素加水分解を含んでなる酵母抽出物の生成のための従来の方法では、酵母リボ核酸(RNA)は、アデノシン3’−一リン酸(3’−AMP)およびグアノシン3’−一リン酸(3’−GMP)のような無味のヌクレオチド、塩基、リボースおよびリン酸塩に主に分解される。前記内因性酵母酵素は、主に、リボヌクレアーゼ、特異的3’−ヌクレオチダーゼ、酸性ホスファターゼである。従って、前記従来の方法は、5’−ヌクレオチドに富む酵母抽出物を産出しない。
【0023】
5’−ヌクレオチドに富む酵母誘導体を入手するための適切な方法は、参考文献の研究「Yeast Technology」において、G.リード(G.Reed)およびT.W.ナゴダウィサナ(T.W.Nagodawithana)、第2版(Van Nostrand Reinhold,ISBN 0−442−31892−8)382〜385頁によって説明されている。
【0024】
特に、内因性酵母ホスファターゼおよびヌクレアーゼの不活化を伴う5’−ホスホジエステラーゼの存在下における酵母の酵素加水分解によって、5’−ヌクレオチドに富む酵母抽出物を入手することが公知である。これにより、次の5’−ヌクレオチド:5’−GMP、5’−UMP、5’−CMPおよび5’−AMP(4つのRNA塩基に対応する)を含有する酵母抽出物が産出される。5’−GMPとは対照的に、5’−AMPは効率的な調味料ではない。しかし、5’−AMPは、AMPデアミナーゼの添加によって、調味料5’−IMPに変換され得る。これにより、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMP、5’−IMP、およびおそらくいくつかの残留5’−AMPを含有する酵母抽出物が産生される。
【0025】
5’−ヌクレオチドならびに/または少なくとも1000ダルトン、および好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドに富む酵母誘導体の生成に適用される既知の方法のうち、以下の方法についても述べられ得る:
米国特許第A−4,810,509号明細書は、5’−ヌクレオチドに富む酵母抽出物を調製するための方法であって、(1)酵母懸濁液を55°C〜70°Cの間に加熱する工程、(2)pH8〜10での酵母細胞自己溶解の工程、(3)自己溶解した酵母懸濁液のpHの5〜7の間への調整、(4)前記懸濁液を90℃もしくはそれ以上で加熱する工程、(5)前記加熱した懸濁液からの不溶性物質の排除、および(6)5’−ヌクレオチドを含有する酵母抽出物の回収を含んでなる方法について記載している。自己溶解後の酵素5’−アデニル酸デアミナーゼ(AMPデアミナーゼ)による処置は、5’−AMPを、よりにおいのある、従って、より需要の多い5’−IMPに変換することが可能である。
【0026】
EP−A−0299078において開示される方法は、多量のRNAを含有する酵母懸濁液を(リボヌクレアーゼを破壊するために)80°C〜120℃の間で加熱し、次いで、アルカリ処置によりRNAを抽出し、5’−GMPおよび5’−IMPに富む抽出物が得られるように、5’−ホスホジエステラーゼ、および場合により、デアミナーゼの作用を介して、それを5’−ヌクレオチドに切断することよりなる。
【0027】
国際公開第02/067959号パンフレットにおいて開示される方法は、例えば、35℃〜70℃の間、好ましくは、50℃〜60℃の間に含まれる35℃を超える温度での自己溶解によって酵母誘導体を調製することを含んでなる。酵母は、好ましくは、1つもしくはそれ以上のプロテアーゼによる自己溶解中または後に加水分解される。場合により、生成物を遠心分離することができ、さらなる上清の限外ろ過工程を行うことができる。この方法では、家畜における共食いの防止および/または処置のためにそれを使用することができる。上清を精製するために、他の古典的な方法、特にクロマトグラフィー精製方法を使用することができる。
【0028】
本発明は、特に、前記家畜に酵母誘導体を投与することによって家畜における共食いの防止および/または処置に関し、前記酵母誘導体は、おそらく、酵母細胞の水に不溶な膜および/または膜フラグメントを含有する酵母の酵素加水分解物、あるいは酵母の酵素加水分解物から前記膜および膜フラグメントの排除によって得られる酵母抽出物であり、ならびに特に、1つのそのような酵母誘導体は、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する。そのような酵母誘導体は、特に、5’−ヌクレオチドの形成を促進する上記方法によって、得ることができる。
【0029】
有用な様式では、酵母誘導体は、アミノN/総Nの比として表現される40%未満もしくはそれに等しい、好ましくは、25%〜40%である分解速度を有する。「N」は、窒素の記号である。「総N」は、ケルダール(Kjeldahl)方法によって決定される窒素含有量であり、「アミノN」は、窒素アッセイのソレンセン(Sorensen)の正式な滴定によって決定される窒素含有量である。
【0030】
5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、および特に、1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体は、好ましくは、カンジダ(Candida)もしくはサッカロマイセス(Saccharomyces)の誘導体、およびより好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)もしくはカンジダ・ウチリス(Candida utilis)の誘導体である。
【0031】
酵母は、好ましくは、パン酵母である。パン酵母は、先に引用した参考文献の研究「Yeast Technology」の第6章「Baker’s yeast production」の教示内容におけるような操作または好気的培養によって本質的に産生されるサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する酵母である。
【0032】
酵母はまた、それぞれビール、ワインおよびアルコール製造の副生成物であり、従って、回収されて、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する酵母誘導体にされる前にビール、ワインまたはアルコールの製造に使用されているビール酵母、ワイン酵母または醸造酵母であり得る。
【0033】
酵母誘導体は、有利なことに、乾燥物に基づいて、少なくとも2重量%、好ましくは、少なくとも3重量%、より好ましくは、少なくとも4重量%およびさらにより好ましくは少なくとも5重量%の5’−ヌクレオチド含有量、ならびに/あるいは乾燥物に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは、少なくとも6重量%およびさらにより好ましくは少なくとも8重量%の1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドの含有量を有する。
【0034】
本発明によれば、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する酵母誘導体は、少なくとも90重量%、好ましくは、少なくとも94重量%およびさらにより好ましくは少なくとも96重量%の乾燥物含有量を有することができる。
【0035】
特に好適な実施態様によれば、酵母誘導体は、6.8%の5’−ヌクレオチド、少なくとも6%の1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドを含有し、約11.3%のケルダール(Kjeldahl)法によって決定される総N含有量、約4.1%のソレンセン(Sorensen)正式アッセイによって決定されるアミノN含有量および約70.6%のタンパク質含有量(6.25×窒素)を有する。バイオ・スプリンガー(Bio Springer)(94701 Maisons−Alfort、仏国)により市販の前記生成物については、表1にさらに詳細に記載されている。
【0036】
本発明は、広範なブタのような家畜、家禽ならびにヒツジおよびウシのような反芻動物における共食いの防止および/または処置に効果的である。特に、本発明は、家禽、特に、キジ目(galliformes)のつつきの防止および/または処置、ならびにブタの悪癖の防止および/または処置に関する。キジ目(galliformes)は、好ましくは、雄鶏、去勢鶏、雌鶏、ニワトリ、ホロホロチョウ、シチメンチョウならびにそれらのひな、例えば、特に、ブロイラー雄鶏、ブロイラー去勢鶏、ブロイラー雌鶏およびブロイラーニワトリならびに産卵鶏からなる群において選択される。ブタは、好ましくは、雌性ブタ、成長期ブタおよび乳期仔ブタからなる群において選択される。反芻動物は、好ましくは、ヒツジ、肥育牛、繁殖牛、仔ウシおよび乳牛からなる群において選択される。本発明はまた、狩猟鳥ならびに特に、キジ、アカアシイワシャコおよびヨーロッパヤマウズラ、ウズラ(quail duck)およびマガモにおける共食いの防止および/または処置に効果的である。
【0037】
本発明によれば、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する酵母誘導体、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量の酵母から誘導されるペプチドは、有利なことに、経口経路によって動物に投与される。それらは、異なる形態または体裁、特に、固体形態で(例えば、特に、顆粒支持体、例えば、飼料ミール、または散剤、顆粒剤、微粒剤もしくは粒剤の形態で)、または液体(好ましくは、水性)で、単独あるいは他の成分、例えば、1つもしくはいくらかの他の飼料成分および/または1つもしくはいくらかの他の栄養成分、例えば、1つもしくはいくらかの食餌中鉱物および/または1つもしくはいくらかのビタミンとの組み合わせで投与し得、ならびに/あるいは飲料水または主要な飼料に希釈し得る。
【0038】
従って、本発明によれば、顆粒支持体上の酵母誘導体、5’−ヌクレオチドおよび/またはペプチドは、産卵鶏もしくはブロイラーニワトリ用飼料ミールまたはブタ用飼料ミールに組み入れることができ、顆粒調製物は、家禽用の穀物あるいは粉砕されたおよび/または全粒穀物に基づく混合物、例えば、特に、産卵鶏のための混合物に組み入れることができる。調製物はまた、押し出し形成された形態の動物飼料、例えば、ブタ飼料の栄養素の組成物の部分であり得る。
【0039】
一般に、ブタの悪癖の防止および/または処置のために、5’−ヌクレオチドは、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.1g、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.2g、およびより好ましくは少なくとも1週間あたり1動物あたり0.4gの量で投与される。少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンの酵母誘導体ペプチドは、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.15g、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.30gおよびより好ましくは少なくとも0.60gの量で投与される。ブタの悪癖の防止および/または処置のために、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体は、好ましくは、少なくとも10mg/体重1kgの1週間量、より好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも20mg/体重1kg、さらにより好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも50mg/体重1kgで投与される。
【0040】
一般に、雄鶏、雌鶏またはニワトリおよび狩猟鳥のつつきの防止および/または処置のために、5’−ヌクレオチドは、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.001g、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.002g、およびより好ましくは少なくとも1週間あたり1動物あたり0.003gの量で投与される。少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンの酵母誘導体ペプチドは、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.002g、好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも0.003gおよびより好ましくは少なくとも0.004gの量で投与される。雄鶏、雌鶏またはニワトリおよび狩猟鳥のつつきの防止および/または処置のために、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体は、好ましくは、少なくとも5mg/体重1kgの1週間量、より好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも10mg/体重1kg、さらにより好ましくは、1週間あたり1動物あたり少なくとも25mg/体重1kgで投与される。
【0041】
有利な様式では、処置は、数週間行われ、好ましくは、動物の生理学的状態に従って決定され得る異なる週間用量によって特徴付けられる2つの相を含んでなる。
【0042】
有利な様式では、家畜、および特に、ブタ、反芻動物、家禽および狩猟鳥における中等度または重度の共食いの処置のために、5’−ヌクレオチド、酵母誘導体ペプチドならびに/あるいは5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体は、好ましくは、週間中に1つもしくはそれ以上の画分に分割される、好ましくは、週間中に3回の投与に分割される週間用量で投与される。第1の相は、好ましくは、1週間継続する。以後の週は、週間用量を減少し得る期間中、第2相の処置を継続する。好ましくは、第2相の処置中に投与される週間用量は、第1相中に投与される週間用量と比較して、3倍減少する。第2相の週間用量は、好ましくは、週間中に1つもしくはそれ以上の画分に分割され、好ましくは、中等度の共食いの処置のために1つの画分および重度の共食いの処置のために2つの画分に分割される。第2の相の処置の期間は、中等度の共食いの処置には少なくとも3週間、重度の共食いの処置には少なくとも5週間である。好ましくは、処置は、症状が認められなくなるまで継続され、例えば、約26週間の期間、継続され得る。
【0043】
有利な様式では、ブタ、狩猟鳥および家禽における中等度の共食いの処置のために、1動物あたりの週間用量は、好ましくは、以下のとおりに規定される:
・酵母誘導体の投与のために、週間用量は、第1相中に30mg/体重1kg〜150mg/体重1kgの間、および好ましくは、75mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に10mg/体重1kg〜50mg/体重1kgの間、好ましくは、25mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドの投与のために、週間用量は、第1相中に30mg/体重1kg〜60mg/体重1kgの間、および好ましくは、42mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に10mg/体重1kg〜20mg/体重1kgの間、好ましくは、14mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・5’−ヌクレオチドの投与のために、週間用量は、第1相中に4.5mg/体重1kg〜6mg/体重1kgの間、および好ましくは、5.25mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に1.5mg/体重1kg〜2mg/体重1kgの間、好ましくは、1.75mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
【0044】
有利な様式では、反芻動物における中等度の共食いの処置のために、ブタおよび家禽の処置のための上記の週間用量は、4倍増倍され、即ち、それらは、好ましくは、1動物あたり以下のように規定される:
・酵母誘導体の投与のために、週間用量は、第1相中に120mg/体重1kg〜600mg/体重1kgの間、および好ましくは、300mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に40mg/体重1kg〜200mg/体重1kgの間、好ましくは、100mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドの投与のために、週間用量は、第1相中に120mg/体重1kg〜240mg/体重1kgの間、および好ましくは、168mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に40mg/体重1kg〜80mg/体重1kgの間、好ましくは、56mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・5’−ヌクレオチドの投与のために、週間用量は、第1相中に18mg/体重1kg〜24mg/体重1kgの間、および好ましくは、21mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に6mg/体重1kg〜8mg/体重1kgの間、好ましくは、7mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
【0045】
中等度の共食いの処置に有利な上記の用量は、重度の共食いの処置のために倍加される。従って、有利な様式では、ブタ、狩猟鳥および家禽における重度の共食いの処置のために、1動物あたりの週間用量は、好ましくは、以下のとおりに規定される:
・酵母誘導体の投与のために、週間用量は、第1相中に60mg/体重1kg〜300mg/体重1kgの間、および好ましくは、150mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に20mg/体重1kg〜100mg/体重1kgの間、好ましくは、50mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドの投与のために、週間用量は、第1相中に60mg/体重1kg〜120mg/体重1kgの間、および好ましくは、84mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に20mg/体重1kg〜40mg/体重1kgの間、好ましくは、28mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・5’−ヌクレオチドの投与のために、週間用量は、第1相中に9mg/体重1kg〜12mg/体重1kgの間、および好ましくは、10.5mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に3mg/体重1kg〜4mg/体重1kgの間、好ましくは、3.5mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
【0046】
有利な様式では、反芻動物における重度の共食いの処置のために、ブタおよび家禽の処置のための上記の週間用量は、4倍増倍され、即ち、それらは、好ましくは、1動物あたり以下のように規定される:
・酵母誘導体の投与のために、週間用量は、第1相中に240mg/体重1kg〜1200mg/体重1kgの間、および好ましくは、600mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に80mg/体重1kg〜400mg/体重1kgの間、好ましくは、200mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・少なくとも1000ダルトン、有利には、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドの投与のために、週間用量は、第1相中に240mg/体重1kg〜480mg/体重1kgの間、および好ましくは、336mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に80mg/体重1kg〜160mg/体重1kgの間、好ましくは、112mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
・5’−ヌクレオチドの投与のために、週間用量は、第1相中に36mg/体重1kg〜48mg/体重1kgの間、および好ましくは、42mg/体重1kgのオーダーで含まれ、その後、それは第2相中に12mg/体重1kg〜16mg/体重1kgの間、好ましくは、14mg/体重1kgのオーダーで含まれる。
【0047】
本発明の1つの目的はまた、家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体の使用である。本発明は、家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンのペプチドの使用にさらに関する。
【0048】
有用な様式では、5’−IMP、5’−GMP、5’−AMP、5’−UMPまたは5’−CMPよりなる群において選択される少なくとも1つの5’−ヌクレオチドが、前記調製物のために使用される。それらは、好ましくは、少なくとも2つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせとして、およびより好ましくは、3つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせの形態で、およびさらにより好ましくは、4つもしくは5つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせで使用される。例えば、5’−IMPと、5’−GMP、5’−AMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において選択される5’−ヌクレオチドとの組み合わせを使用することができる。5’−IMPと、5’−AMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において選択される5’−ヌクレオチドとの組み合わせを使用することができる。また、5’−AMPと、5’UMPもしくは5’−CMPとの組み合わせまたはその他に、5’−UMPと5’−CMPとの組み合わせを使用することができる。5’−GMPおよび5’−AMP、5’−GMPおよび5’−UMP、5’−GMPおよび5’−CMP、5’−AMPおよび5’−UMP、5’−AMPおよび5’−CMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において選択される組み合わせと5’−IMPとの組み合わせもまた可能である。別の可能性は、5’−AMPおよび5’−UMP、5’−AMPおよび5’−CMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において選択される組み合わせと5’−GMPとの組み合わせである。また、4つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせ、またはその他に、5つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせを使用することができる。好ましくは、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMPおよび5’−AMPの組み合わせ;5’−GMP、5’−UMP、5’−CMPおよび5’−IMPの組み合わせ;またはその他に、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMP、5’−IMPおよび5’−AMPの組み合わせが使用される。
【0049】
本発明はまた、家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための酵母誘導体の使用に関し、前記誘導体は、おそらく、酵母細胞の水に不溶な膜および/または膜フラグメントを含有する酵母の酵素加水分解物、あるいは酵母の酵素加水分解物から前記膜および膜フラグメントの排除によって得られる酵母抽出物であり、ならびに特に、1つのそのような酵母誘導体は、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量を有するペプチドを含有する。前記酵母誘導体は、特に、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトンの分子量のペプチドの形成を促進する上記の方法によって得ることができる。
【0050】
酵母は、好ましくは、サッカロマイセス(Saccharomyces)属またはカンジダ(Candida)属に属する。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種およびカンジダ・ウチリス(Candida utilis)種に属する酵母が好適である。食物酵母であるカンジダ(Candida)属に属する種は、しばしば、トルラ(Torula)と呼ばれ、従って、トルラ(Torula)は、カンジダ(Candida)と部分的に同義である。特に、酵母は、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母および醸造酵母からなる群において選択される酵母であり得、ならびにより好ましくは、酵母はパン酵母である。
【0051】
有利な様式では、前記酵母誘導体は、乾燥物に基づいて、少なくとも2重量%、好ましくは、少なくとも3重量%、より好ましくは、少なくとも4重量%およびさらにより好ましくは少なくとも5重量%の5’−ヌクレオチド含有量、ならびに/あるいは乾燥物に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは、少なくとも6重量%およびさらにより好ましくは少なくとも8重量%の1000〜10,000ダルトンの分子量の酵母由来ペプチドを含有する。
【0052】
特に好適な実施態様によれば、本発明は、家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための6.8%の5’−ヌクレオチド、少なくとも6%の1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドを含有し、約11.3%のケルダール(Kjeldahl)法によって決定される総N含有量、約4.1%のソレンセン(Sorensen)正式アッセイによって決定されるアミノN含有量および約70.6%のタンパク質含有量(6.25×窒素)を含有する酵母誘導体の使用にさらに関する。バイオ・スプリンガー(Bio Springer)(94701 Maisons−Alfort、仏国)により市販の前記生成物については、表1にさらに詳細に記載されている。
【0053】
特に、調製物は、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽および狩猟鳥からなる群において選択される家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物であり得る。
【0054】
従って、調製物は、特に、雌性ブタ、成長期ブタおよび乳期仔ブタのようなブタにおける悪性の防止および/または処置のための調製物であり得る。それはまた、好ましくは、ヒツジ、肥育牛、繁殖牛、仔ウシおよび乳牛からなる群において選択される反芻動物の攻撃行動の防止および/または処置を目的とする調製物であり得る。
【0055】
調製物はまた、狩猟鳥ならびに特に、キジ、アカアシイワシャコおよびヨーロッパヤマウズラ、ウズラ(quail duck)およびマガモのつつきの防止および/または処置のための調製物であり得る。調製物はまた、家禽、特に、雄鶏、去勢鶏、雌鶏、ニワトリ、シチメンチョウ、ホロホロチョウならびにそれらのひなからなる群において選択されるキジ目(galliformes)、好ましくは、ブロイラー雄鶏、ブロイラー去勢鶏、ブロイラーニワトリおよび産卵鶏からなる群において選択されるキジ目(galliformes)のようなキジ目(galliformes)のつつきの防止および/または処置のための調製物であり得る。
【0056】
有用な様式では、調製物は、家畜への経口投与のための調製物である。
【0057】
例えば、調製物は、飼料ミールの形態、または飼料ペレット、特に、押し出し形成によって得られるペレットの形態、または散剤、微粒剤もしくは粒剤の形態の顆粒支持体、例えば、完全な飼料における調製物のような固体調製物であり得る。
【0058】
調製物はまた、液体の形態、好ましくは、水性であり得る。
【0059】
好適な様式では、調製物は、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトンおよび好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドを含有する酵母誘導体ならびに/あるいは5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトンおよび好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドを含有し、先に規定された有用な週間用量で家畜へのその投与を可能にするような用量で使用される。好ましくは、調製物は、5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、および好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドを含有する酵母誘導体の投与のために先に規定された週間用量ならびに/あるいは5’−ヌクレオチドの投与のための先に規定された有用な週間用量ならびに/あるいは少なくとも1000ダルトンおよび好ましくは、1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドの投与のために先に規定された有用な週間用量を含有する。特に有利な実施態様によれば、調製物は、動物の体重に従って、1つもしくはそれ以上の画分で使用および投与される。
【0060】
本発明はまた、本発明に従う製造の方法によって得ることができる調製物、ならびにそれらを含有する動物飼料および飲料、ならびに共食いの予防的または治療的処置におけるその使用に関する。
【0061】
そのような飼料製品は、例えば、ブタ用飼料ミール、ヒナ、ニワトリまたは産卵鶏用飼料ミール、家禽および狩猟鳥用の穀物あるいは粉砕されたおよび/または全粒穀物に基づく混合物、例えば、産卵鶏、リッキングブロック(licking block)またはペッキングブロック(pecking block)用混合物である。
【0062】
本発明に従う調製物、飼料製品および飲料もまた、1つもしくはそれ以上の食餌中鉱物および/または1つもしくはそれ以上のビタミンを含んでなり得る。
【0063】
本発明は、家畜施設における共食いおよびつつきの問題の出現を防止または遅延させることにより予防的でもあり得、および/または前記問題が出現すると直ちにその有意な減少を可能にするか、またはさらに前記問題を排除することによって、治療的でもあり得る。本発明の重要な利点は、特に抗生物質のような肉および/または卵に残留し得る獣医学的製品を動物に投与することなく結果を達成することができることである。
【0064】
特定の実施態様では、本発明に従って処置および/または防止される家畜の共食いは、ストレスによるものではない。
【0065】
本発明を、例示目的のためであって、制限的方法によらずに与えられる以下の実施例において例示する。
【実施例】
【0066】
実施例1
「EXL」酵母抽出物の組成
実施例2および3において使用されるEXL酵母抽出物は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種の酵母の酵素加水分解および水に不溶な画分の排除によって得られる酵母抽出物である。温水中5%で、前記酵母抽出物は、僅かに乳白色の溶液を形成する。それは、塵を含まない操作を可能にする微粒散剤である。
【0067】
前記酵母抽出物は、1000ダルトン〜10,000ダルトンの間の約10重量%のペプチドを含有する。
【0068】
酵母抽出物の主な特性を表1に示す。
【0069】
このタイプの酵母抽出物は市場において容易に利用可能であり、特に、バイオ・スプリンガー(Bio Springer)社、94701 Maisons−Alfort、仏国から購入することができ、酵母抽出物の世界的に主要な製造者が酵母加水分解物および酵母抽出物のそれらの生産ライン内でこのタイプの酵母抽出物を提供することが理解される。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例2
ブタの悪癖の発症に対するEXL酵母抽出物の効果
既知の悪癖および悪癖の再発の危険性を伴うブタ肥育単位集団において、連続3週間、飲料水にEXL酵母抽出物を添加した。処置は、第1週中に、3画分で投与される75mg/体重1kgの週間用量(1週間に3回反復される1ブタあたり25mg/体重1kg)、続く単回用量で与えられる1ブタあたり25mg/体重1kgの週間用量に基づいた。酵母抽出物の補充は、悪癖が報告された後にのみ行った。3週間後、EXL酵母抽出物の補充は、悪癖の発症を2倍を超えて減少したことが認められ得、このことは、統計的に有意であった(p<0.05)。
【0072】
実施例3
産卵鶏におけるつつきにより誘導される致死率に対するEXL酵母抽出物の効果
産卵鶏における致死率に対するEXL酵母抽出物の効果を、ファクトリーファームにおいて19から30週齢まで評価した。
【0073】
1ケージあたり5羽の雌鶏の密度でケージ内で飼育した800羽の産卵鶏(イサ・ブラウン(Isa Brown)系)に、コムギに基づく飼料(その組成を表2に示す)を与えた。
【0074】
以下の実験デザインを使用した:
・補充を伴わない400羽の産卵鶏(コントロール)、
・EXLを補充した400羽の産卵鶏。
【0075】
第1週について3画分に分割された75mg/体重1kgの1つの週間用量(1雌鶏あたり25mg/体重1kg)、続く以後の週について単回用量で投与される1雌鶏あたりの25mg/kgの週間用量の理論的処置に基づいて、EXL酵母抽出物を、12週間、飲料水に添加した。実際には、これは、1000羽の雌鶏あたり50gの酵母抽出物を投与することに当たる。
【0076】
この試験における衛生条件は、良質であった。
【0077】
表3は、産卵鶏における致死率に対するEXL酵母抽出物の効果を示す。
【0078】
EXL酵母抽出物の補充は、コントロールと比較して、産卵鶏の致死率の減少に対して有意なポジティブな効果を有したことが認められ得る。屠殺体の調査により、EXL酵母抽出物は、雌鶏の致死率を減少しただけではなく、つつきにより誘導される損傷を伴う屠殺体の百分率のかなりの減少ももたらしたことが示された。
【0079】
本試験は、EXL酵母抽出物が産卵鶏におけるつつきにより誘発される致死率を減少するのに効果的であることを明らかに実証する。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体の使用。
【請求項2】
前記酵母誘導体が、5’−IMP、5’−GMP、5’−AMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において選択される少なくとも1つの5’−ヌクレオチドを単独で、または組み合わせで、好ましくは、少なくとも2つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせの形態で、より好ましくは、3つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせ、ならびにさらにより好ましくは、4もしくは5つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせで含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
5’−ヌクレオチドおよび/または少なくとも1000ダルトンのペプチドを含有する酵母誘導体が、酵母の酵素加水分解物、および好ましくは酵母抽出物である、請求項1または2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項4】
酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属またはカンジダ(Candida)属、および好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種もしくはカンジダ・ウチリス(Candida utilis)種に属する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
酵母が、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母および醸造酵母からなる群において選択される酵母であり、好ましくは、酵母はパン酵母である、請求項1および4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
酵母誘導体が、乾燥物に基づいて、5’−ヌクレオチドの少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4重量%およびさらにより好ましくは少なくとも5重量%を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
酵母誘導体が、乾燥物に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも6重量%およびさらにより好ましくは少なくとも8重量%の1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
家畜が、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽および狩猟鳥からなる群において選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
調製物が、ブタ、ならびに好ましくは、雌性ブタ、成長期ブタおよび乳期仔ブタからなる群において選択されるブタの悪癖の防止および/または処置のための調製物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
調製物が、家禽、ならびに好ましくは、キジ目(galliformes)および狩猟鳥のつつきの防止および/または処置のための調製物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
調製物が、反芻動物、ならびに好ましくは、ヒツジ、肥育牛、繁殖牛、仔ウシおよび乳牛からなる群において選択される反芻動物の攻撃行動の防止および/または処置のための調製物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
調製物が経口投与のための調製物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
調製物が固体調製物、好ましくは、散剤の形態、あるいは微粒剤の形態または顆粒剤もしくは粒剤の形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
調製物が液体、好ましくは、水性である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための5’−ヌクレオチドの使用。
【請求項16】
5’−ヌクレオチドが、5’−IMP、5’−GMP、5’−AMP、5’−UMPおよび5’−CMPからなる群において、単独で、または組み合わせで、好ましくは、少なくとも2つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせの形態で、より好ましくは、3つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせ、ならびにさらにより好ましくは、4もしくは5つの前記5’−ヌクレオチドの組み合わせで選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
少なくとも一部または好ましくはすべての5’−ヌクレオチドが、5’−ヌクレオチドを含有する酵母誘導体から生じ、好ましくは、5’−ヌクレオチドを含有する酵母の酵素加水分解物の形態、およびさらにより好ましくは、5’−ヌクレオチドを含有する酵母抽出物の形態である、請求項15または16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属またはカンジダ(Candida)属、および好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種もしくはカンジダ・ウチリス(Candida utilis)種に属する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
酵母が、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母および醸造酵母からなる群において選択される酵母であり、好ましくは、酵母はパン酵母である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
酵母誘導体が、乾燥物に基づいて、5’−ヌクレオチドの少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4重量%およびさらにより好ましくは少なくとも5重量%を含有する、請求項17〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
酵母誘導体が、乾燥物に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも6重量%およびさらにより好ましくは少なくとも8重量%の1000〜10,000ダルトンの分子量のペプチドをさらに含有する、請求項17〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
家畜が、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽および狩猟鳥からなる群において選択される、請求項15〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
調製物が、ブタ、ならびに好ましくは、雌性ブタ、成長期ブタおよび乳期仔ブタからなる群において選択されるブタの悪癖の防止および/または処置のための調製物である、請求項15〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
調製物が、狩猟鳥および家禽、好ましくは、キジ目(galliformes)のつつきの防止および/または処置のための調製物である、請求項15〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
調製物が、反芻動物、ならびに好ましくは、ヒツジ、肥育牛、繁殖牛、仔ウシおよび乳牛からなる群において選択される反芻動物の攻撃行動の防止および/または処置のための調製物である、請求項15〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
調製物が経口投与のための調製物である、請求項15〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
調製物が固体調製物、好ましくは、散剤の形態、あるいは微粒剤の形態または顆粒剤もしくは粒剤の形態である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
調製物が液体、好ましくは、水性である、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
家畜における共食いの防止および/または処置のための調製物を製造するための少なくとも1000ダルトン、好ましくは、1000〜10,000ダルトンのペプチドの使用。
【請求項30】
前記ペプチドが、酵母誘導体から生じ、好ましくは、酵母の酵素加水分解物の形態、およびより好ましくは、場合により、限外ろ過を経験している酵母抽出物の形態である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
酵母が、サッカロマイセス(Saccharomyces)属またはカンジダ(Candida)属、および好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種もしくはカンジダ・ウチリス(Candida utilis)種に属する、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
酵母が、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母および醸造酵母からなる群において選択される酵母であり、好ましくは、酵母はパン酵母である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
酵母誘導体が、乾燥物に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも6重量%およびさらにより好ましくは少なくとも8重量%の分子量1000〜10,000ダルトンのペプチドを含有する、請求項30〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
酵母誘導体が、乾燥物に基づいて、5’−ヌクレオチドの少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4重量%およびさらにより好ましくは少なくとも5重量%を含有する、請求項30〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
家畜が、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽および狩猟鳥からなる群において選択される、請求項29〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
調製物が、ブタ、ならびに好ましくは、雌性ブタ、成長期ブタおよび乳期仔ブタからなる群において選択されるブタの悪癖の防止および/または処置のための調製物である、請求項29〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
調製物が、狩猟鳥および家禽、ならびに好ましくは、キジ目(galliformes)のつつきの防止および/または処置のための調製物である、請求項29〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
調製物が、反芻動物、ならびに好ましくは、ヒツジ、肥育牛、繁殖牛、仔ウシおよび乳牛からなる群において選択される反芻動物の攻撃行動の防止および/または処置のための調製物である、請求項29〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
調製物が経口投与のための調製物である、請求項29〜38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
調製物が固体調製物、好ましくは、散剤の形態、あるいは微粒剤の形態または顆粒剤もしくは粒剤の形態である、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
調製物が液体、好ましくは、水性である、請求項39に記載の使用。

【公表番号】特表2008−509694(P2008−509694A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526513(P2007−526513)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002095
【国際公開番号】WO2006/021693
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(506261567)ルサッフル・エ・コンパニー (7)
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
【Fターム(参考)】