説明

食品焼成装置

【課題】きれいな焼き上がりを長期間にわたって維持することができる食品焼成装置を提供する。
【解決手段】(1)第一の焼成板11を第二の焼成板13方向に回動させ、(2)両者を上下重合状態とする際に、第一の焼成板11のロックピン25を、第二の焼成板13のロック孔35に嵌号させ、第一の焼成板11と第二の焼成板13との位置合わせを確実に行う。(3)第一の焼成板11と第二の焼成板13とを適切な位置に配置し、上下重合状態を形成したのち、第一の焼成板11の取っ手27に位置する結合部材41を、第二の焼成板13の取っ手37に係合させ、両者を一体として固定する。これにより、第一の焼成板11と第二の焼成板13とを上下重合状態とする際に、両者を適切な位置に配置できる。よって、第一の焼成板11、第二の焼成板13のテフロン(登録商標)等の表面加工の消耗を防止することができ、きれいな焼き上がりを長期間にわたって維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成した食品を生成する食品生成装置に関し、特に、使用の際の位置合わせを容易に行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食品焼成装置を図3に示す。食品焼成装置100は、タイ焼きを焼成するための機械である。食品焼成装置100は、図3に示すように複数の焼成凹部103a、103bを設けた焼成板102を機枠101の上部に着脱可能に装着して左右複数対に対設して、左右対をなす一方の焼成板103aを他方の焼成板103b上へ回動して上下重合可能に構成している。また、各焼成板102には、多数個(図示は6個)の鯛焼き形状(図示例)に形成された焼成凹部103a、103bが比較的に浅くかつ左右逆向きに形成されている。
図3に示す食品焼成機100による食品の焼成方法を以下に示す。隣り合う焼成板102を矢視のように回動させ、焼成凹部103a、103bを上下に重ね合わせに整合させる。これにより、1個の鯛焼き形状を有する食品を焼成する。
【0003】
【特許文献1】特開2006−102009
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の食品焼成装置100には、以下に示す改善すべき点があった。食品焼成装置100は、左右対をなす一方の焼成板103aと他方の焼成板103bとは、作業上の便宜からある程度の余裕をもって固定されている。したがって、一方の焼成板103aを他方の焼成板103b上へ回動して上下重合とする際に、焼成板103aと焼成板103bとの位置が微妙にずれてしまい、それに伴い、焼成板103a、焼成板103bの表面上のテフロン(登録商標)加工を消耗させてしまっていた。かかる焼成板103a、焼成板103bの表面上のテフロン(登録商標)加工の消耗が要因となり、きれいな上がりを長期間にわたって維持できない、という改善すべき点があった。
【0005】
また、焼成板103a、焼成板103bが上下重合にある焼成中に、加熱蒸気等によって焼成板103a、焼成板103bが浮き上がる現象が生じ、それが要因となり、焼成板103aと焼成板103bの間に入れた原料(例えば、タイ焼きの場合における餡子)が噴出すという現象(パンク現象)が生じて、焼きあがりがきれいな食品を焼成することができない、という改善すべき点もある。
そこで、本発明は、きれいな焼き上がりを長期間にわたって維持することができる食品焼成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る食品焼成装置では、前記第一の焼成部は、一または複数の第一の焼成凹部、前記第一の焼成部以外の領域に位置する突出部、を有し、前記第二の焼成部は、前記第一の焼成凹部に対応する一または複数の第二の焼成凹部、前記第二の焼成凹部以外の領域に位置する凹部であって、前記上下重合状態において前記突出部に対応する位置に位置する凹部、を有する。
これにより、第一の焼成部と第二の焼成部とを上下重合状態とする際に、第一の焼成部若しくは第二の焼成部を対応するもう一方の焼成部に対して適切な位置に配置することができる。よって、上下重合状態において第一の焼成部と第二の焼成部とを適切な位置に配置できないことによる、第一の焼成部、第二の焼成部のテフロン(登録商標)等の表面加工の消耗を防止することができる。ひいては、きれいな焼き上がりを長期間にわたって維持することができる。
【0007】
(2)本発明に係る食品焼成装置では、前記突出部及び前記凹部は複数設けられている。
これにより、第一の焼成部と第二の焼成部とを上下重合状態とする際に、第一の焼成部若しくは第二の焼成部を対応するもう一方の焼成部に対して適切な位置に確実に配置することができる。よって、きれいな焼き上がりを長期間にわたって維持することができる。
【0008】
(3)本発明に係る食品焼成装置では、前記突出部は、前記第一の焼成部における第一の焼成凹部以外の領域の対角線上に位置し、前記凹部は、前記第二の焼成部における第二の焼成凹部以外の領域の対角線上に位置する。
これにより、第一の焼成部と第二の焼成部とを上下重合状態とする際に、簡易な構成で、第一の焼成部若しくは第二の焼成部を対応するもう一方の焼成部に対して適切な位置に確実に配置することができる。
【0009】
(4)本発明に係る食品焼成装置では、前記第一の焼成部及び前記第二の焼成部の前記上下重合状態を維持する重合状態維持部を有する。
これにより、第一の焼成部と第二の焼成部とが上下重合状態にある焼成中に、加熱蒸気等によって第一の焼成部と第二の焼成部とが乖離することを防止することができる。よって、焼きあがりがきれいな食品を焼成することができる。
【0010】
(5)本発明に係る食品焼成装置では、前記第一の焼成部は、当該第一の焼成部を回動させるための第一の持ち手、を有し、前記第二の焼成部は、当該第二の焼成部を回動させるための第二の持ち手、を有し、前記上下重合状態維持部は、前記第一の焼成部及び前記第二の焼成部が前記上下重合状態にある際に、前記第一の持ち手及び前記第二の持ち手を一体として固定する。
これにより、簡易な構成で、第一の焼成部と第二の焼成部とが上下重合状態にある焼成中における第一の焼成部と第二の焼成部との乖離を防止することができる。よって、焼きあがりがきれいな食品を焼成することができる。
【0011】
(6)本発明に係る食品焼成装置では、前記第一の焼成部は、複数の第一の焼成小部、を有し、前記第一の焼成小部は、一の前記第一の焼成凹部、を有し、前記第二の焼成部は、複数の第二の焼成小部、を有し、前記第二の焼成小部は、一の前記第二の焼成凹部、を有する。
これにより、焼成中に生ずる第一の焼成小部の反りを小さくすることができ、ひいては、第一の焼成部の反りを小さくすることができる。よって、焼きあがりがきれいな食品を焼成することができる。
【0012】
(7)本発明に係る食品焼成装置では、前記第一の焼成小部及び前記第二の焼成小部は、熱伝導率が高い物質により形成されている。
これにより、焼成過程における省エネルギー効果を得ることができる。
【0013】
(8)本発明に係る食品焼成装置では、前記熱伝導率が高い物質は、銅若しくは真ちゅうである。
これにより、容易に焼成過程における省エネルギー効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食品焼成装置は、焼成板の表面上のテフロン(登録商標)加工の消耗が少なく、きれいな上がりを長期間にわたって維持できるといった効果がある。
また、上下の焼成板が上下重合にある焼成中に、加熱蒸気等によって上部の焼成板が浮き上がる現象が生じず、焼きあがりがきれいな食品を焼成することができるといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0016】
(食品焼成装置の全体構成)
本発明に係る食品焼成装置の一実施例を、図1を用いて説明する。食品焼成装置1は、タイ焼きや今川焼等の食品を生成するための装置である。なお、図1における食品焼成装置1は、栗を形取った中に、餡子やクリーム等を詰め込んだタイ焼きのような食品(ここでは、説明の便宜上、タイ焼きと称する。)を生成するものである。
【0017】
食品焼成装置1は、複数の第一の焼成板11、複数の第二の焼成板13、及び機枠15を有している。一の第一の焼成板11及び対応する一の第二の焼成板13は、一の回動軸17に取り付けられている。これにより、第一の焼成板11は、対応する第二の焼成板13の方向(矢印a11方向)に回動可能である。また、第二の焼成板13は、対応する第一の焼成板11の方向(矢印a13方向)に回動可能である。
【0018】
第一の焼成板11を矢印a11方向に回動させることによって、対応する第二の焼成板13の上に重ね合わせることができる。また、第二の焼成板13を矢印a13方向に回動させることによって、対応する第一の焼成板11の上に重ね合わせることができる。このように、第一の焼成板11と第二の焼成板13とが上下に重ね合わさった状態を上下重合状態とする。
【0019】
機枠15は、上面に複数の第一の焼成板11及び複数の第二の焼成板13を有している。なお、図1には示されていないが、機枠15の内部には、第一の焼成板11、第二の焼成板13を加熱するためのバーナー等の加熱装置が内蔵されている。
【0020】
(第一の焼成板11の構成)
第一の焼成板11の構成を、図2を用いて説明する。第一の焼成板11は、複数の第一の焼成ブロック21及び取っ手27を有している。一の第一の焼成ブロック21は、他の一の第一の焼成ブロック21とは、独立して形成されている。また、第一の焼成ブロック21のそれぞれは、タイ焼きの型を形どった第一の焼成凹部23を一つ有している。
第一の焼成ブロック21のうち、上下両端に位置する第一の焼成ブロック21u及び第一の焼成ブロック21dは、それぞれロックピン25を有している。第一の焼成ブロック21uは、第一の焼成凹部23が形成されている領域以外の領域で、回転軸17に近い上端部にロックピン25を有している。一方、第一の焼成ブロック21dは、第一の焼成凹部23が形成されている領域以外の領域で、外枠に近い下端部にロックピン25を有している。したがって、第一の焼成板11全体としては、ほぼ対角線上にロックピン25を有していることになる。
【0021】
なお、第一の焼成ブロック21のそれぞれは、銅により形成されている。また、複数の第一の焼成ブロック21は、第一の焼成凹部23の凸面側においてアルミ合金によって結合され、一体として第一の焼成板11を構成している。
取っ手27は、第一の焼成板11の一端部の回転軸17から遠い外枠に近い位置に設けられている。取っ手27は、第二の焼成板13の取っ手37と係合し、取っ手27と取っ手37とを一体とするJ字状の係合部材41を有している。
【0022】
(第二の焼成板13の構成)
第二の焼成板13の構成を、図2を用いて説明する。第二の焼成板13は、複数の第二の焼成ブロック31を有している。一の第二の焼成ブロック31は、他の一の第二の焼成ブロック31とは、独立して形成されている。また、第二の焼成ブロック31のそれぞれは、タイ焼きの型を形どった第一の焼成凹部33を一つ有している。
第二の焼成ブロック31のうち、上下両端に位置する第二の焼成ブロック31u及び第二の焼成ブロック31dは、それぞれロック孔35を有している。第一の焼成ブロック31uは、第二の焼成凹部33が形成されている領域以外の領域で、回転軸17に近い上端部にロック孔35を有している。なお、一方、第二の焼成ブロック31dは、第二の焼成凹部33が形成されている領域以外の領域で、外枠に近い下端部にロック孔35を有している。したがって、第二の焼成板13全体としては、ほぼ対角線上にロック孔35を有していることになる。ロック孔35は、第一の焼成板11と第二の焼成板13とが上下重合状態にあるときに、ロックピン25と嵌号する位置に設けられる。
【0023】
なお、第二の焼成ブロック31のそれぞれは、銅により形成されている。また、複数の第二の焼成ブロック31は、第二の焼成凹部33の凸面側においてアルミ合金によって結合され、一体として第二の焼成板13を構成している。
【0024】
(食品焼成装置1の使用方法)
(1) 第一の焼成板11を第二の焼成板13方向に回動させる。
(2) 第一の焼成板11と第二の焼成板13とを上下重合状態とする際に、第一の焼成板11のロックピン25を、第二の焼成板13のロック孔35に嵌号させ、第一の焼成板11と第二の焼成板13との位置合わせを確実に行う。
(3)第一の焼成板11と第二の焼成板13とを適切な位置に配置し、上下重合状態を形成したのち、第一の焼成板11の取っ手27に位置する結合部材41を、第二の焼成板13の取っ手37に係合させ。第一の焼成板11と第二の焼成板13とを一体として固定する。
[その他の実施形態]
【0025】
(1)前述の実施例1に1においては、食品焼成装置1としてタイ焼きを生成するものを示したが、第一の焼成板11若しくは第二の焼成板13を、対応するもう一つの焼成板に向かって回動させることによって、食品を生成するものであれば、例示のものに限定されない。
【0026】
(2)前述の実施例1においては、ロックピン25及びロック孔35を、それぞれ対応する焼成板において二つ配置することとしたが、第一の焼成板11と第二の焼成板13とを上下重合状態とする際の位置合わせとして機能するものであれば、例示の数に限定されない。たとえば、一つでも、三つ以上であってもよい。
また、ロックピン25及びロック孔35を、それぞれ対応する焼成板における対角線上に配置することとしたが、第一の焼成板11と第二の焼成板13第一の焼成板11と第二の焼成板13とを上下重合状態とする際の位置合わせとして機能するものであれば、例示の数に限定されない。たとえば、各焼成板の外周に沿って一定間隔で配置するようにしてもよい。
【0027】
(3)前述の実施例1においては、第一の焼成ブロック21及び第二の焼成ブロック31を銅により形成することとしたが、熱伝導率が高く
ができるものであれば、例示の材質に限定されない。例えば、真ちゅうであってもよい。
【0028】
(4)前述の実施例1においては、第一の焼成ブロック21、第二の焼成ブロック31を、それぞれアルミ合金により結合することによって、第一の焼成板11、第二の焼成板13を形成することとしたが、第一の焼成ブロック21、第二の焼成ブロック31を、それぞれ結合することができるものであれば、例示のものに限定されない。
【0029】
(5)前述の実施例1においては、取っ手27及び取っ手37を結合する構造として、J字状の結合部材41を取っ手27に設けることとしたが、両者を結合できるものであれば、例示のものに限定されない。
また、第一の焼成板11及び第二の焼成板13が上下重合状態にある際に両者を固定し上下重合状態を維持できるものであれば、例示のJ字状の結合部材41に限らない。例えば、同様のJ字状の結合部材をいずれか一方の焼成板の端部に設け、もう一方の焼成板の端部に当該結合部材と係合する突出部を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る食品焼成装置は、回転焼き、たい焼き等の様々の形状の食品を焼成する装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る食品焼成装置1の全体構成を示す図である。
【図2】本発明に係る第一の焼成板11及び第二の焼成板13の構成を示す図である。
【図3】従来の食品焼成装置を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・・・食品焼成装置
11・・・・・第一の焼成板
13・・・・・第二の焼成板
15・・・・・機枠
17・・・・・回転軸
21・・・・・第一の焼成ブロック
23・・・・・第一の焼成凹部
25・・・・・ロックピン
27・・・・・取っ手
31・・・・・第一の焼成ブロック
33・・・・・第一の焼成凹部
35・・・・・ロック孔
37・・・・・取っ手
41・・・・・係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸を中心に左右対峙して取り付けられる第一の焼成部及び第二の焼成部であって、一方の前記焼成部を他方の前記焼成部上へ回動させることによって、前記第一の焼成部と前記第二の焼成分とが上下に重ね合わさった状態である上下重合状態を形成する第一の焼成部及び第二の焼成部を、機枠の上面に有する食品焼成装置であって、
前記第一の焼成部は、
一または複数の第一の焼成凹部、
前記第一の焼成部以外の領域に位置する突出部、
を有し、
前記第二の焼成部は、
前記第一の焼成凹部に対応する一または複数の第二の焼成凹部、
前記第二の焼成凹部以外の領域に位置する凹部であって、前記上下重合状態において前記突出部に対応する位置に位置する凹部、
を有すること、
を特徴とする食品焼成装置。
【請求項2】
前記突出部及び前記凹部は複数設けられていること、
を特徴とする請求項1に係る食品焼成装置。
【請求項3】
前記突出部は、
前記第一の焼成部における第一の焼成凹部以外の領域の対角線上に位置し、
前記凹部は、
前記第二の焼成部おける第二の焼成凹部以外の領域の対角線上に位置すること、
を特徴とする請求項2に係る食品焼成装置。
【請求項4】
前記第一の焼成部及び前記第二の焼成部の前記上下重合状態を維持する重合状態維持部を有する請求項1〜請求項3に記載のいずれかの食品焼成装置。
【請求項5】
前記第一の焼成部は、
当該第一の焼成部を回動させるための第一の持ち手、
を有し、
前記第二の焼成部は、
当該第二の焼成部を回動させるための第二の持ち手、
を有し、
前記上下重合状態維持部は、
前記第一の焼成部及び前記第二の焼成部が前記上下重合状態にある際に、前記第一の持ち手及び前記第二の持ち手を一体として固定すること、
を特徴とする請求項4に係る食品焼成装置。
【請求項6】
前記第一の焼成部は、
複数の第一の焼成小部、
を有し、
前記第一の焼成小部は、
一の前記第一の焼成凹部、
を有し、
前記第二の焼成部は、
複数の第二の焼成小部、
を有し、
前記第二の焼成小部は、
一の前記第二の焼成凹部、
を有すること、
を特徴とする請求項1〜請求項5に係るいずれかの食品焼成装置。
【請求項7】
前記第一の焼成小部及び前記第二の焼成小部は、
熱伝導率が高い物質により形成されていること、
を特徴とする請求項1〜請求項6に係るいずれかの食品焼成装置。
【請求項8】
前記熱伝導率が高い物質は、
銅若しくは真ちゅうであること、
を特徴とする請求項7に係る食品焼成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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