説明

食品用抗酸化剤放出装置、収納箱、収納箱の運搬方法

【課題】 抗菌成分他の技術は食品の保鮮効果をうたいながらも、その本質は表面に付着した細菌の繁殖を抑制したり間接的に鮮度低下を送らせるという効果であり、食品中に含まれる栄養成分などは保持されないという問題点があった。さらに、従来の抗菌剤は危険物に指定されたものなどがあり、引火爆発の可能性があるなどの問題点があった。
【解決手段】 食品の保鮮効果を高める抗酸化剤の揮発性成分の発生をコントロールして抗酸化剤の寿命を大幅に伸ばすようにしたものである。また抗酸化剤を収納するケースにより寿命をコントロールして使い勝手の良いものにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗酸化剤を放出する装置、抗酸化効果を有する収納箱とその運搬方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜などの鮮度維持に関する技術は、例えば、特開2000−180034号公報、特開平10−238934号公報などで知られている。後者は冷蔵庫などで保管される野菜や果物などの呼吸作用によって発生するエチレンガスや腐敗の進行で起こる異臭を吸収し酸化分解するなどにより鮮度を維持するものである。前者は揮発性抗菌成分を有する抗菌材に保鮮作用のある芳香物質を練りこんだ保鮮抗菌物をカセット内に内蔵させ、野菜容器に上部より差し込んで取り付けることにより、この鮮度維持装置の脱着を容易にし交換しやすくする技術が開示してある。
【0003】
この後者の技術の説明によると抗菌剤と芳香物質を練り込んだ、複数の通気穴を有する保鮮抗菌カセットが野菜容器の奥壁に通気路を設けて取り付けてあることで、保鮮抗菌成分をスムースに拡散放出でき、特に保鮮効果の高い比重の重たい揮発性材のAIT抗菌材を上部より徐々に放出拡散して青果物の変色を回避できるとしている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−180034号公報(0026欄、図4)
【特許文献2】特開平10−238934号公報(0037欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のこのような発生ガスの抑制や抗菌成分を付着させての保鮮は食品の保鮮効果をうたいながらも、その本質は表面に付着した細菌の繁殖を抑制することで腐敗を遅らせるという効果のみであり、消極的な鮮度維持であり、食品中に含まれる栄養成分などは保持されないという問題点があった。また従来の技術と同様な技術として、特開平7−174455号公報に記載されているように青果物から発生するエチレンガスを触媒に金属性の接触させて酸素と結合させ食品貯蔵雰囲気を低酸素にしたり、特開平10−160328号公報や特開昭56−17633号公報のように食品環境の酸素を吸収するなどのものを設けるものがあるが、いずれも生鮮食品の鮮度低下や腐敗あるいはビタミンなどの低下を遅らせるなど周囲環境を改善して間接的に鮮度低下などを抑えるというもので、さらに寿命の問題を解決できず実用的なものではないという問題があった。
【0006】
また、揮発性抗菌成分を冷蔵庫に配設する方式として、基材に練り込む方式があるが、この方式は基材表面が乾燥・固化することによって内部の成分が放出されなくなるという問題点があった。またマイクロカプセル化、サイクロデキストリン包摂された粉末を冷気風路に配設する方式もあるが、表面部の粉末内の成分が放出されると、内部の成分は残査物が通気を妨害し放出速度が遅くなるという問題点があった。また、繊維に担持し配設する方式もあるが、この方式は担持体の欠落があること、形状が固定され難いという問題点があった。これらからどうしても早く揮発成分が無くなり寿命が短く頻繁に交換する手間が必要で特開2000−180034号公報に記載してあるごとく如何に簡単に交換できるかの構造検討が重要であるという問題があった。このため、従来の方式では2分割以上に区画された野菜容器の場合には、各区画ごとに抗菌剤を配置する必要性があり、コストアップの要因となるし、さらに取替えを考えるとカセットの取り付け構造に制約が発生するなどの問題があった。
【0007】
また、特開2000−180034号公報における保鮮効果の高い揮発性抗菌成分であるアリルイソキオシアネートは危険物第四類第二石油類の引火性物質である。このことは冷蔵庫などの密閉空間に充満した状態にあった場合、温度によっては引火して燃焼の危険性があるなどの問題点があり、冷蔵庫一台あたりの使用量が少ない場合でも倉庫などの保管状態や生産においては十分な注意が必要である上、引火爆発の危険性を伴うなどの問題点があった。特に炭化水素などの可燃性自然冷媒を使用する冷蔵庫などではいっそう燃焼の安全対策を必要とするなどの複合した問題が発生する。
【0008】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、食品に直接的に働きかけて食品が本来持っている栄養などの成分を保持する効果を高めるものを提供する。さらにこの発明は食品が保有するビタミンCなどの栄養を維持するもののみならず低下させることの無いものを提供する。さらにこの発明は収納箱内などに揮発性抗酸化剤を設け、この揮発する寿命を大幅に伸ばす構造を提供するものである。さらには、揮発性抗酸化成分が行き渡るように配置する構造を提供することを目的とする。又取り扱いが簡単で便利な使い方のでき食品の栄養価を維持できる抗酸化剤放出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の抗酸化剤放出装置は、容器内に包装されて内蔵され、この包装に使用される包装材を透過させて引火性のない揮発性成分を放出する抗酸化剤と、容器外部から加えられた外力により抗酸化剤が動かされる際、抗酸化剤が動く範囲を制限する制限手段と、制限手段にて制限される抗酸化剤が動く範囲に設けられ容器の外部と連通して抗酸化剤からの引火性のない揮発性成分を外部に徐放する容器の開口と、を備えたものである。
【0010】
この発明の抗酸化剤放出装置は、容器内に内蔵され揮発性成分を放出する流動可能な抗酸化剤と、容器の内部と外部と連通して抗酸化剤からの揮発性成分を内部から外部に徐放する隙間であって、抗酸化剤を容器内から流出しないように押さえ、且つ、液体としての水分を流入させない不織布で塞がれた隙間と、容器の外部から加わる外力により容器内の隙間に対向する位置の抗酸化剤が動かされて入れ替わり徐放が行われる抗酸化剤の表面部と、を備え、抗酸化剤の揮発性成分は引火性がないものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、容器内に包装されて内蔵され、この包装に使用される包装材を透過させて引火性のない揮発性成分を放出する抗酸化剤と、容器外部から加えられた外力により抗酸化剤が動かされる際、抗酸化剤が動く範囲を制限する制限手段と、制限手段にて制限される抗酸化剤が動く範囲に設けられ容器の外部と連通して抗酸化剤からの引火性のない揮発性成分を外部に徐放する容器の開口と、を備えたので、取り扱いが容易、簡単な構造で食品の栄養価を維持できる安全な装置が得られる。
【0012】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、容器内に内蔵され揮発性成分を放出する流動可能な抗酸化剤と、容器の内部と外部と連通して抗酸化剤からの揮発性成分を内部から外部に徐放する隙間であって、抗酸化剤を容器内から流出しないように押さえ、且つ、液体としての水分を流入させない不織布で塞がれた隙間と、容器の外部から加わる外力により容器内の隙間に対向する位置の抗酸化剤が動かされて入れ替わり徐放が行われる抗酸化剤の表面部と、を備え、抗酸化剤の揮発性成分は引火性がないので,使い勝手が良く確実に徐放が行え食品の栄養価を維持できる安全な装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係わる粒状の抗酸化剤を内蔵する容器を示す断面図、図2は封入した抗酸化剤の効果の一例を示した抗酸化雰囲気中におけるブロッコリのビタミンCの変化を示すグラフである。図1において、1は密閉性を保つことのできる抗酸化放出ユニット容器、2は容器1に開けられた細穴、3は封入された抗酸化剤、40はユニット容器1の開口である細穴を外部から塞ぐように貼りつけられた不織布で粒状の抗酸化剤を容器1内に留めると共に揮発性成分は外部に放出可能である。
【0014】
以上のように構成されているため、容器1内に封入された抗酸化剤3の揮発性成分は細穴2を通って外部に放出される。この時に抗酸化剤としてユーカリ抽出物またはローズマリー抽出物またはその両者の混合物を封入することで、図2の試験結果に示したように、この抗酸化雰囲気では野菜中のビタミンC成分が保持される。なお図1の抗酸化放出ユニットのケース容器1はプラスチック製であり、細穴2は粒状の抗酸化剤3が飛び出さない寸法や方向に設けられる。この粒状の抗酸化剤3は外部より衝撃や振動などの外力を受けるとケース容器1内でずれたり動いたりして開口2に面した粒子が入れ替わる。図1のような剥き出しの抗酸化剤を使用する場合は、ケース容器1の穴2は内蔵する粒の大きさより小さくすれば良く、又穴2を不織布40など目を抗酸化剤の粒より小さいもので覆う場合は容器の穴は大きなものでも外力を受けて外部に飛び出したりせず都合が良い。なお図1の容器はプラスチック製としたが、全体を不織布として袋状としておき周囲全体の隙間から抗酸化剤の揮発性成分が透過するようにしてもよい。この場合は衝撃を受けて袋が変形すると袋内の抗酸化剤が流動して表面に近い粒子と袋の中心に近い粒子の入れ替わりが起こる。
【0015】
図2に示すメカニズムについて説明する。野菜中に含まれている栄養成分の中には、空気中の酸素が結びついて、すなわち成分が酸化されて分解し減少するものがある。野菜の表面に抗酸化成分があることによって、空気中の酸素が野菜に到達する前に、抗酸化成分と結びついて消失し、結果的に野菜中の栄養成分が酸化分解されないというものである。図2は、このような効果を示している。ユーカリ、ローズマリーを入れてブロッコリを貯蔵することによって、抗酸化剤がない場合に比べてブロッコリ中のビタミンC減少が抑えられている。このような抗酸化能をもつ物質の代表として、ユーカリ類・ローズマリーがあるが、そのほかにもユーカリ・ローズマリー中含まれている抗酸化作用をもつ成分であるユーカリプトール(1.8シネオール)、α−ピネンを多く含んでいる物質、ニアウリ・カンファーホワイト、マージョラムスパニッシュなどでも良い。その他、分子量の大きい高分子抗酸化剤では、たとえば、SOD、カタラーゼ、グルタチオン、リン酸グルコース、パーオキスターゼ、脱水素酵素などの酵素類、分子量の小さい低分子抗酸化剤では、たとえば、ビタミンE、C、B、カテキンなどに代表されるポリフェノール類、フラボノイド、タンニン、カロチンなどが上げられる。また図1では粒子状のもので説明したが液体状でも良くいずれも流動可能な状態で容器内に内蔵されている。
【0016】
図2のデータでは抗酸化雰囲気中のブロッコリのビタミンC量が最初2−3日は120パーセント程度まで上昇している。これは野菜が収穫後も生きておりビタミンCを増やしているものであるが、従来、たとえば周囲を低い酸素状態にしたとしても野菜が酸化されてビタミンCは減少していき、増加するよりも減るほうが多く常に栄養は低下するものと思われていた。しかし本発明のような抗酸化剤の揮発成分が直接野菜に働きかけると酸化すなわちビタミンの減少が押さえられてビタミンCが増えるというデータが表面化する。ビタミンCの減る量がより少なくなり結果的に増加が得られるものである。植物は土から栄養分を摂取していたが、収穫後は自分の体内の成分を使って生きている。この時成分を消耗するような呼吸作用を抑制することで鮮度を保つ。鮮度維持に高い効果があるものとして、呼吸抑制には温度を下げることが有効であり、さらに乾燥対策として湿度を高くすることが有効である。しかしながら本発明では栄養価的に維持し、おいしさとしても良い方向にするため、特に野菜表面で酸素により劣化するビタミンCにたいし、抗酸化剤の揮発成分を満たして維持のみならず栄養を増やすことも可能にするものである。なお、この発明のものにさらに野菜の温度を低くしてビタミンCの減少をさらに押さえるようにしても良い。0゜Cなどで長期に保存すると野菜の体内の成分を環境に合わせて換えていくためアミノ酸が増加して旨みが増すなども可能になる。
【0017】
図3はこの発明の抗酸化剤を内蔵させた抗酸化放出ユニット容器1をチルド室4に取り付けた例を示す断面図である。図3において、4は冷蔵庫の冷蔵室の一角に設けられ引き出し式の食品容器5とこれを引き出すことに連動して開閉する扉6を有する冷蔵室と区分けされて温度も異なるチルド室であり、7は扉6の内側に設置された抗酸化放出ユニットで、図1に示した抗酸化剤3を粒子状にしたものが包装された状態でプラスチックのケース容器1の中に封入されている。
【0018】
次に動作について説明する。引き出し式の食品容器5の中には生鮮食品、たとえば肉や魚が収納されている。この食品容器5を取っ手により矢印8の方向に引き出すことによって、内部の食品を取り出すことができる。冷蔵庫の冷蔵室の一角に設けられ引き出し式の食品容器5はこれを引き出すことに連動して開閉する扉6を有し冷蔵室と区分けされている。これにより冷蔵室と温度も異なるチルド室4は扉6により冷蔵室と区切られているが、食品容器5の引出しで部分的に接触している扉6が上のほうに開き、扉6に設置されているユニット7も扉の傾きにあわせて傾いていく。このユニット7はこのように傾いて位置が変わったり、食品容器5が引き出されるときに強くあたったり、食品容器が戻されて扉6が閉鎖されるときの衝撃など外力を受けることになる。
【0019】
この作用によって、ユニット7の中に入っている粒子状などの流動性がある抗酸化物質は多方向に移動したり、衝撃を与えられたりすることによって穴2に対抗する表面部の粒子と内部の粒子が入れ替わり、容器1の開口である穴2に向かい合う新放出面が確保され揮発性成分を放出可能な新放出面が食品容器を引き出し戻すたびに新たに開口2にむき出され、抗酸化剤の揮発性成分の徐放が継続できる。これにより食品容器5の内部に収納された生鮮食品の酸化が直接的に押さえられる。この穴の面積と内蔵される粒などの量によって望まれる寿命が設定可能になる。抗酸化剤によりビタミンC、アスコルビン酸以外、たとえばポリフェノールの低下を防止でき、これにより食品の褐変を防止する。更には肉、魚の変色にも効果がある。たとえば牛肉やマグロはヘモグロビンを多く含み酸素の結びついて黒ずむがその酸素を食品表面からのぞくので肉、魚の変色を防ぐことができる。ソフトフリージング温度、約−7゜C程度でも冷凍温度−18゜Cより低いので抗酸化作用の効果が得られる。したがってこの抗酸化剤対策は、冷蔵庫の野菜室、冷蔵室、チルド・氷温室、ソフトフリージング室など広い温度帯をまたがる各温度帯の各室に対し有効である。
【0020】
以上の図3では、扉部の開閉によって上下左右方向に変異や振動または衝撃を受ける場所に設置したものであるが、次に引き出しの開閉によって上下左右方向に振動または衝撃を受ける場所に設置した場合の例を示す。図4はこの発明の冷蔵庫の野菜室内部の一例を示す断面図である。図4において、9は冷蔵庫の引き出し扉の引出しや戻し入れに伴い一緒に動く野菜室内箱、10は野菜室のケース9から分割されて上部に配置された上ケース、11は野菜ケース9の側部に設置されていて、上ケース10のストッパーとなっている凸部、12は上ケース10に設置されていて、ストッパー凸部11に引っかかるようになっている凸部、13は上ケース10の野菜室9側の底面で、上ケース引っかかり部12の下方に設置された設置された抗酸化放出ユニットで、図1のように抗酸化物質を粒子状にしたものが封入され、細穴2は下方向に設けられている。なお上ケース10と抗酸化放出ユニット13のユニットケースを一体のものとして成形しても良い。
【0021】
図4では上ケース10がストッパー11に引っかかっている状態と上に乗り上げた状態の両方を同時に示している。上ケース10を前後方向に移動させると、上ケース引っかかり部12は野菜室内箱ストッパー部11に乗り上がり、上ケースは矢印14の方向に移動し、野菜室内箱ストッパー部11を越えると下の方向に移動する。この時にユニット13は上下左右の方向に振動または衝撃を受ける。このストッパー11と凸部12は野菜ケース9に上ケース10が追随して動かしたり、野菜ケース9内部に収納した野菜を取り出すときに上ケース10をずらしたり、あるいは各ケースをはずすときなどの為に設けてある。
【0022】
抗酸化剤を内蔵するユニット13が受ける外力のこの作用によって、中に入っている粒子状の抗酸化物質は多方向に移動または衝撃を受け、表面部の粒子と内部の粒子が入れ替わるなどにより新放出面が確保され、抗酸化剤の揮発性成分の徐放、すなわち徐々の放出は継続して行われることになる。なお抗酸化放出ユニット1が図1のように長方形の形状をしている場合長手方向へ衝撃や振動を与える方が穴の位置に新放出面が出てきやすく、且つ、既に放出された面が再度出現する可能性が小さいので徐放にとって有利である。更に内蔵量の多い長手方向への入れ替わりのため寿命も長くなる。
【0023】
以上の図3、図4の例では、扉部や引き出し容器やケースの開閉や出し入れによって振動または衝撃を受ける場所に設置したものであるが、次に引き出しの開閉によって撹拌する装置を具備した場合の例を図5と図6にて示す。図5はこの発明に係わる野菜室の上面図であり、図6は抗酸化物質が封入されている容器である。図5において、14は野菜室外箱、15は野菜ケース、16は野菜室外箱に14に設置された磁石、17は野菜ケース15の内側に設置された図6に示す抗酸化放出ユニットである。
【0024】
図6において、18は密閉性を保つことのできる抗酸化放出ユニット容器、19は容器18に開けられた細穴、20金属性の棒、21は容器18の上面に設けられた金属製の棒20のガイドバー、22は容器18の下面に設けられた金属製の棒20のガイドバー、23は封入された抗酸化剤、40は容器内面の細穴部分を塞ぐように貼りつけられた不織布である。
【0025】
野菜ケース15を引き出すと同時に抗酸化剤が封入された容器17が磁石16を通過する、この時容器17内の金属製の棒20は磁石16と引き合いガイドバー21、22に沿って、野菜ケース15を引き出すときは金属製の棒20は向かって左から右へ、野菜ケース15をしまうときは金属製の棒20は向かって右から左へ移動する。
【0026】
このように図6は、容器内に揮発性成分を放出する粒状もしくは粉末状の抗酸化剤が内蔵され、容器の内部と外部と連通して抗酸化剤からの揮発性成分を内部から外部に徐放可能な開口であって、粒状もしくは粉末状の抗酸化剤を容器内から流出しないように押さえるとともに抗酸化剤の揮発性成分が通過可能な開口が設けられており、容器内部には移動可能な金属が容器の外部から加わる磁力の外力の変化に応じて粒状もしくは粉末状の抗酸化剤を連動して移動させるので、この作用によって、中に入っている粒子状の抗酸化物質はガイドバー20の動きに一部が連動して移動して、細穴19に向かい合う表面部の粒子とそのほかの部分に内蔵されている内部の粒子が強制的に入れ替わり、新放出面が確保される。図13は冷蔵庫31の野菜室扉33aが引き出された状態を示す図である。野菜室扉33aにはフレーム33bとローラー33cが取りつけられており冷蔵庫31本体に取りつけられているレール31aをローラー33cが移動することにより野菜室扉33aは、引き出される。ローラー33cはレール31aの開口部手前側に到達した時に停止する。その際にフレーム33bに設置されている野菜容器35が振動し、野菜容器35に設置されている抗酸化剤ケース36が衝撃・振動を受け、抗酸化剤ケース36内の抗酸化剤成分が移動する。以上のように、通常の扉の開閉においても抗酸化剤ケース36へ振動衝撃が加わる。
【0027】
以上は抗酸化剤の新放出面を確保する事例について説明した。以下は放出した揮発性抗酸化成分を効率よく拡散させるための事例について説明する。図7はこの発明の冷凍冷蔵庫31の構成を説明する図で、一番上に冷蔵室32その下に野菜室33と最下段に冷凍室34が配置されている。野菜室33は引き出し式の扉で扉を引き出すと上方が開放された野菜容器35も同時に引き出されるように構成されている。野菜容器35は上段のケース35aと下段のケース35bに別れており、上段のケース35aは奥側にスライドするように構成され、下段ケース35bの奥側に収納された野菜等を取り出す際に取り出し易いようにされている。
【0028】
図8は野菜容器35の断面図で上段ケース35aの手前コーナー部手前に抗酸化剤ケース36が配置されており、上段ケース35a手前のフランジ部35a1に抗酸化剤のケースで構成したコ字上の係止部36aにて固定される。上段ケース35aには抗酸化剤の成分が下段ケース35bにも流入するように穴部35a2が配置されている。抗酸化剤成分は空気より重いため(比重が大きい)上段ケース35aに配置した場合は図8に示す矢印のように上方から下方に抗酸化成分が下降し、下段ケース35bに流入しやすい。より効果的にケース内に抗酸化成分を拡散させるために上ケース背面に冷蔵庫の冷気を循環させる通風ダクトを設けたり、冷気循環用のファン装置などを抗酸化剤ケース36の開口の無い背面から吹きつけるように配置して強制的に抗酸化成分をケース内に拡散させるようにしても良い。または、冷蔵室内を区切るような温度の異なるチルド室などに設ける場合は、部分的な温度の違いを利用して自然対流を起こし,チルド室と冷蔵室の両方に拡散させるなど、あるいは野菜室の異なる位置に吹出口と吸込口を設けることによって冷気の対流を起こし、抗酸化成分を拡散するようにしても良い。
【0029】
図9は図8の抗酸化剤部を上方より見たZ-Z断面図である。抗酸化剤ケース36を左右に分割するように上段ケース35aよりリブ35a3が配置されており、そのリブ35a3の左側、上段ケース35aのセンター方向(図では上側)には下段ケース35bへの流入用の穴35a4が配置され、抗酸化剤ケース36にも内部に設置された抗酸化剤成分36bを放出する穴部36cが設けられている。なお、リブ35a3の右側は抗酸化ケース36には成分放出用の穴部36cは配置されているが、上段ケース35aにはリブの隙間を介して矢印のように流れるように配置されている。抗酸化剤ケース36は上記に示すように野菜室の上方に位置する上段ケース35aに配置し、比重が空気より重いことを利用して野菜室全体に拡散するようにしているが、食汁などが抗酸化剤ケース36に流入しないように上段ケース35aの底面35cを一段上げ配置している。もちろん、今回は上段ケース35aに配置したが図10に示すように野菜室の天井面に配置しても良い。上段ケース35aが下段ケース35bより奥行き方向で小さい場合には天井面であれば矢印で示すように両ケースに抗酸化成分は流入される。なお図7乃至9の構造においては,野菜室各ケースの出し入れに伴う衝撃や振動が抗酸化剤成分36bに伝わるし,天井面に設けた図10の構造においても重たい野菜室扉が内壁にぶつかる衝撃や野菜室を内壁が保持するレール部からの振動が伝わり徐放を行う開口に面した抗酸化剤成分36bが入れ替わるので有効な徐放を長い間続けることができる。
【0030】
図14は野菜容器35の保湿性(密閉性)を上げるため保湿手段を示す図である。野菜容器35の天井部に配置されているのがフタ35cで野菜容器35の上方の開口部を塞ぐ役目をしており、その結果、野菜室33を冷却する冷気はフタ35cの外側から下段容器35bの前面、そして床面を通り、冷却器に戻るように流れることで野菜容器35を間接的に(冷気が野菜容器内に入らないように)冷却している。野菜容器35に保存された野菜から蒸散する水分は野菜容器35外に放出されず、野菜容器35内は湿度が高くなる。野菜容器35を上記のように密閉することで野菜は包装なしでも保存が可能となり、抗酸化剤の成分もより野菜に作用するため、ビタミン保持効果も高まる。図15はその効果を示したグラフでラップとは包装した状態で保存した場合の抗酸化剤(この場合はローズマリー)によるビタミンcの減衰抑制効果と包装なしで保存した場合の抗酸化剤によるビタミンcの減衰抑制効果と抗酸化剤がない場合の減衰抑制効果を比較しており、包装がない方がより、抑制効果が高いことがわかる。ただし、抗酸化剤成分は図15に示すように包装材(ラップ)を透過するので特別な保湿構造になっていない場合においても、保湿手段として食品をラップすることにより、その抗酸化作用は有効に作用するため、特に肉や魚などニオイの面で包装が必要な食品については、乾燥を防止しても包装が必要となるため、包装を透過して作用する本発明の抗酸化剤は、有効である。
【0031】
図11は抗酸化剤ケース36を開いた状態を示す図である。抗酸化剤ケース36は中央のミラーヒンジ部36dで折り曲げられケース内に抗酸化剤を保持する。ミラーヒンジ化することで1部品で容器が構成可能であり、抗酸化剤ケース36内の抗酸化剤の効果がなくなった場合には簡単に抗酸化剤のみ交換が可能である。抗酸化剤は抗酸化成分の透過性を30℃において約2mg/sec・cm以下の包装材料にて包装されている。この包装材料により粒状だけでなく粉末状の抗酸化剤や液体状の抗酸化剤がそのままユニットケースの外に出ることを防止している。この包装材は空気を通し水をはじき,通さない。すなわち通気性があり防水性のあるフィルムで液体が漏れたり流入すしない。抗酸化剤の揮発性成分は直径0.0004μmの水蒸気にとけこんでフィルムの隙間である例えば0.6μmの微細孔を透過するが、液体である水は100−3000μmの径のためフィルムの隙間保とおることができない。透過性については、冷蔵庫の野菜室の低温化では測定が難しいため30℃における透過性を記載した。抗酸化剤の種類によって透過性は異なるが、ローズマリーについては上記の透過性が目安である。このように、抗酸化剤を包装する包装材の透過性は湿気の出入りはあるが液体としての水は浸入しないレベルである。先に説明したように抗酸化剤を抗酸化成分の透過性を30℃において約2mg/sec・cm以下の包装材料にて包装された袋状の容器の状態で使用しても、更にこの中に粒子状だけでなく液体状のものを内蔵させても良いことは当然である。この場合寿命的には早く揮発性成分が放出されるが放出の効果は大きくなる。更に袋状のため食品の上にぽんと置くだけでも良く、置きかえる毎に袋が変形し、新たな粒子が袋の表面に近いところに移動させられて揮発性成分の放出が継続される。
【0032】
なお、抗酸化剤が使用環境下において湿気によりまとまる(固まる)などの不具合があり、振動や衝撃があっても抗酸化剤が内部で入れ替わらない状況の場合は(新放出面が確保されない)、抗酸化剤と共にシリカゲルなどの乾燥剤をユニットケース36内に同封することで包装材内の水分を除去し、抗酸化剤が振動または衝撃で内部で移動可能となる。抗酸化剤としてはユーカリの抽出物またはローズマリーの抽出物または、その両者の混合物等、上記に記載した抗酸化剤が封入されている。抗酸化剤ケース内部36にはリブ36eがあり、抗酸化剤が上段ケース35aに設置された場合や野菜容器5を引き出した場合などの振動で包装材内で下方または左右に抗酸化剤が一部に集まらないように保持するものである。これは、包装材内での新放出面を確保するために振動または衝撃で粒子が移動する必要がある一方で放出面積を確保するためには、一部に粒子がまとまってしまい放出面積が小さくなることを防止するものである。よって、新放出面が確保される程度に抗酸化成分の粒子が移動可能な空間を確保しつつ、全体として複数分割の空間を確保することで一定の放出面積を確保するものである。
【0033】
次に動作について説明する。抗酸化剤成分36bが包装材料を透過し、さらに抗酸化剤ケース36の穴部36cより抗酸化剤ケース36外に放出される。リブ35a3左側の穴部35a4より放出された成分は上段ケース35a手前の穴部35a4より下段ケース35bに放出される。また、リブ35a3右側の穴部36cより放出された成分は上段ケース35a手前に穴部が無いため上段ケース35aの壁面と抗酸化剤ケース36との間を通り上段ケース35a側へ放出される。この時、上段ケース35a内に食品が収納されているが、抗酸化剤ケース36の図9のA面には抗酸化剤成分36bの放出穴部は無いため、食品が接触しても抗酸化剤の放出量に影響することはない。さらに、上段ケース35aの穴部35a4は抗酸化剤ケース36で塞ぐ形で構成されているので上段ケース35aに収納されている食品が誤って下段に落下するなどのことも防いでいる。
【0034】
次に、上段ケース35a、下段ケース35bに放出された抗酸化剤の野菜に対する作用について説明する。このメカニズムは、野菜中に含まれている栄養成分の中には、空気中の酸素が結びついて(成分が酸化されて)分解し減少するものがある。抗酸化成分があることによって、空気中の酸素が野菜に到達する前に、抗酸化成分と結びついて消失し、結果的に野菜中の栄養成分が酸化分解されないというものである。これは、既に説明した作用と同様である。このようなユーカリやローズマリーの放出成分は食品添加物として認定されているものが多い上、引火性もないため安全性にすぐれているものである。
【0035】
なお、上記の実施例では抗酸化剤を封入した包装材料にて透過性をコントロールしているが、外郭の抗酸化剤ケース36の穴部36cの開口面積でコントロールしても良い。つまり、上記例では包装材料透過性より抗酸化剤ケース36の透過性を大きくしているが、逆にすれば抗酸化剤ケース36でコントロールできる。たとえば、野菜容器の容量が異なる冷凍冷蔵庫に設置する場合に抗酸化剤ケース36の穴部36cの数や面積を変更したり、上段ケース35aの穴部35a4の面積で放出量をコントロールすることでさまざまな容量のケースに対応できる。さらに、家庭によって野菜保存量が異なる冷蔵庫の場合などは抗酸化剤のケース36の穴部36cをテープ等で塞いだり、開口したりすることで放出量をコントロールすることができる。
【0036】
図12は抗酸化剤ケース36を閉じた状態を示す図である。包装材料に注意書きと共に印刷をほどこし包装材料を着色、たとえば野菜をイメージするグリーンやさわやかなブルーなど、した場合に抗酸化剤ケース36の穴部36cより包装材が見えるため抗酸化材ケース6を着色したり、着色した部品を取りつけたり、印刷するなど施す必要がなく、意匠性をアップすることができるように構成されているので、放出用の穴部36cが単なる機能的な穴部ではなく意匠として野菜の形にすればより一層の意匠性を向上させることができる。なお、抗酸化剤ケース36は内部の抗酸化剤を交換することで再利用が可能であり、環境配慮されている。特に内部の抗酸化剤成分を塩ビなどのダイオキシン発生がない、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)で構成すればより環境に良い。
【0037】
上記までの説明では、抗酸化剤ケース36を冷蔵庫の扉や野菜ケースのように開閉や引き出しを行う可動体に直接取りつけたりもしくは扉閉鎖時の衝撃を受ける冷蔵庫本体の内壁など可動体が可動する可動力を受ける可動体周囲部分に取り付けて粒状や粉末状の抗酸化剤をケース36のなかに直接あるいは揮発性成分を通過させる目を有する包装剤に包装してからケース内に収納する構造を説明をしている。粉末状など粒子のまとまった集団に衝撃や振動が伝えられるとケースや袋に詰められる際にわずかだが生ずる空間によって粒子間は隙間があり多くの方向にばらばらに粒子が動かされる。抗酸化剤が液体の場合はもっと激しい流動性を有する。但し、粒子は開口部には押し付けられる程度の充填もしくは図11のようなリブ36eによる固定が必要で、このリブによる固定により密閉された抗酸化剤ケース36の中からの揮発性成分の放出が開口部の存在し、且つ、リブで制限された範囲のみに流動する範囲が限られる。このリブにより固定されるため抗酸化剤成分36bが包装材料の袋の中を自由に移動して例えば全部が下方に溜まってしまい、開口36cに向かい合う放出面積が小さくなることは避けられ包装材の中の抗酸化剤は有効に利用される。
【0038】
このような構造にすることで可動体に取りつけるだけで特別に振動や衝撃を加える装置が存在しなくとも良いが,抗酸化剤ケース36に振動モーターを直接固定してケースにモーターが回転する時だけ振動を与えても良いし、冷蔵庫の中にも受けられている温度条件に応じて冷気を循環させる送風機のモーターから振動が伝わる構成で抗酸化剤ケース36を連結させても良い。すなわち抗酸化剤ケース36を取りつける取り付け部材を金属製としてモーターなど加振源に取りつける。振動モーターを固定する場合は間欠的に、すなわち間隔を置いてモーターを動作させる制御とすることにより例えば1時間に数十秒振動を与えることで寿命を確保できるし、送風機モーターに接続する場合は冷気を循環させる時だけ振動が加わることを考慮した開口面積にして揮発性成分の放出を抑え寿命を確保できる。このように容器内に内蔵され揮発性成分を放出する粒状もしくは粉末状の抗酸化剤に、粒状もしくは粉末状の抗酸化剤を容器内から流出しないように押さえるととも、容器に直接、間欠的に振動を与えるものであっても良い。
【0039】
以上は冷凍冷蔵庫1の野菜室に保存される野菜類の抗酸化を目的とした実施例であるが、冷凍保存や冷凍して流通のできない野菜等青果物の流通段階での酸化防止のためにも上記のような抗酸化剤を利用した抗酸化放出ユニット容器を使用することができる。特に輸送段階では運搬時の車両の振動または衝撃があるため、粒状や粉末、カプセル状に加工された抗酸化剤が振動や衝撃によって抗酸化成分の新放出面、すなわちユニットケースに設ける細穴に面する抗酸化剤が動かされやすく、徐放が確保されやすい。ユニットケースの設置場所は輸送の車両内に取り付けても良いし、野菜などの食品の包装材に取り付けても良い。車両内に取りつける場合は閉鎖された空間に開放された箱の中に青果物を入れておく。この場合車両内の上方に設置されたユニットケースを青果物をつんでいる時は細穴である開口を開き、荷物などを積まない空の場合はユニットケースの開口を閉じる蓋を設ける。更に、青果物などの食品を収納し、運搬可能な箱体本体内の上方に抗酸化剤を収納するユニットケースである抗酸化剤を収納する収納体を設けると、運搬時にこの箱本体に加えられる振動や衝撃などの外力が伝達される。このユニットケースである収納体には、包装されて内蔵される粒状もしくは粉末状の抗酸化剤から揮発性成分が放出され透過性を有する包装材を透過させてユニットケースの外に連通する細穴から収納箱の内部に揮発性成分が放出される。更に抗酸化剤とともにユニットケース内下部の細穴から離した部分にシリカゲルのような吸湿剤が内蔵され細穴から進入する湿気を吸収する。この吸湿材はこのユニットケース36を開閉して交換できるように抗酸化剤の包装剤とは独立して入れられている。又フレキシブルな袋状の抗酸化剤の包装材,すなわち容器を使用する場合はラップされた青果物や食肉などの上に載せておくだけで新鮮さを保つなど本発明の効果がある。
【0040】
このような生鮮食品を収納し運搬する箱体は、先ず収穫された際に生産地でコンベアベルトなどで運ばれ倉庫などに積み上げて貯蔵される。次に冷蔵車などに人の手や機械を使用して積み込まれ卸売市場や消費地に運搬される。したがって先ず運搬に使用し青果物を収納する箱体に、生産地などで内蔵する粒状もしくは粉末状抗酸化剤の揮発性成分を生鮮食品に放出可能なユニットケースである容器を取り付けて置く。コンベアや車両、あるいはその他の機械で荷物を動かしたり運搬時に箱体に加えられる振動や衝撃などの外力が容器に伝達され容器に設けた開口より揮発性成分が徐々に放出される。運搬の手段や距離などの運搬条件に応じて開口の開放面積が異なるものを使用したり、この場合ノックアウト方式にして必要に応じて穴の数を開けることでも良いし、例えばテープを貼りつけたり外したりするように開度を調節する構造にしたりする。例えば青果物を搬送している時は細穴をあけておき、運搬後はユニットケース36のみを箱から両面テープなどの接着をはがして回収しテープで開口の蓋をしてサイド使用することができる。なお生産地や卸売市場で青果物などを貯蔵する食品の貯蔵倉庫については扉開閉での振動や衝撃が加わる部分に上記抗酸化剤を配置して同様の効果を有することが可能である。又運搬車両にあらかじめ粒状もしくは粉末状抗酸化剤の揮発性成分を生鮮食品に放出可能なユニットケースを取りつけておいても良い。
【0041】
以下、冷蔵庫を例として、抗酸化剤の必要量について説明する。約60Lの容量の野菜室として(全体容量400〜450Lクラスの冷蔵庫の場合)抗酸化剤濃度を約5ppm以上10年間保つための必要量は約5g以上必要となる。拡散スピードは温度を約5℃とした場合に約0.0013mg/min程度となる。よって抗酸化剤成分は最低でも5g以上入れる必要がある。この必要量は食品の保存量、扉開閉などにより異なるが一応の目安である。なお、野菜ケースなどがプラスチック材料で構成されているため、プラスチックへの抗酸化成分の吸着もあり、その吸脱着による効果も多少、影響する。冷蔵庫は、例えば約10年を寿命と考え、その期間抗酸化作用を確保することを前提として抗酸化材の必要量を上記に示したが、取替えを前提として寿命を10年以下とした場合はその必要量は当然、少なくて良い。また、食品の輸送に利用する貯蔵箱においては、環境配慮により抗酸化剤をくり返し利用する場合の利用回数や使い捨ての場合などはその必要量は、5g以下で良い。当然ながら抗酸化剤の放出容積に見合う開口面積との兼ね合いによってもこの寿命は左右される。すなわち抗酸化剤の揮発性成分の揮発を行わせるコントロールをユニットケースの外部に開放している開口面積によって行える。
【0042】
この発明に係わる冷蔵庫は、2分割以上に区画した野菜容器に対して揮発性抗酸化剤を区画した区分の上方に位置する区分室に設置したため、ユーカリ抽出物またはローズマリー抽出物を単独または混合した抗酸化剤を粒子状(マクロカプセル化・サイクロデキストリン包接・親水性多孔質体担時など)にしたものからの放出成分が全区分室に放出され、各区分室に保存されている野菜や果実の食品が本来持っているビタミンCなどの成分が保持される。複数の区画であるが複数区分室の上方区分室のみに抗酸化剤を配置し、野菜容器に穴を設けたので揮発性成分が穴部より他の区分室へ流入可能となり、安価に食品のビタミンCの保持が可能である。さらに、抗酸化剤の包装材料を着色したので安価にケースの意匠性をあげることができる。
【0043】
なお、上記は冷蔵庫の食品についてを主体に説明したが既に使用していた冷蔵庫に後から本発明のユニットケースを庫内に貼りつけたり、冷蔵庫の製氷室に取り付けて製氷皿に水を注ぎ冷気を循環させて製氷する場合においても抗酸化材の抗酸化作用がカルキを除去する効果があるため、製氷室に抗酸化成分を放出させることで水の塩素を除去しておいしい氷が製氷できる効果もある。又以上の説明では食品を冷凍、冷蔵などで保存する冷蔵庫や食品搬送時の使い方を説明したが本発明の抗酸化剤放出装置は何処にでも取り付けたり載せたりするだけで長時間その成分を徐々に放出させることができるので、又不使用時には開口を閉じておくだけで又後から使えるので、冷蔵をしない食品収納庫だけでなく、店舗などで積み上げられた食品の上に載せたり吊るすなど、自由な使い方が可能であるし、湿気を通すが液体としての水分をはじくので水がかかるようなところでも使用でき、屋外に剥き出しにしても揮発製麻成分を徐放できる使い勝手の良い装置が得られる。
【0044】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、食品を保存する貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室に配置されもしくは貯蔵室に設けられ食品の出し入れの際に位置変化もしくは衝突可能に可動する扉や蓋体などの可動体と、可動体に取り付けられもしくは前記可動体が可動する可動力を受ける可動体周囲部分に取り付けられ内蔵する粒状もしくは粉末状などの流動可能な抗酸化剤の揮発性成分を放出する開口を有する容器と、を備え、可動体の可動により抗酸化剤が流動して食品に徐放するので、食品の栄養価を維持でき、かつ保守のほとんど不要な装置が得られる。
【0045】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、貯蔵室は生鮮食品を貯蔵する野菜室、冷蔵室、チルド・氷温室及びソフトフリージング室などの少なくともいずれかで、可動体は貯蔵室の扉体、貯蔵室に設けられた食品収納ケース、貯蔵室内の壁面に取り付けられた部品など可動可能な構造体であるので,特別な構造が不要な使い易い冷蔵庫が得られる。
【0046】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、貯蔵室もしくは貯蔵室内に配置された食品ケースは、その内部を零度以下にならない零度に近い低い温度と高い湿度の状態に設定可能なので、一層鮮度の維持が可能な冷蔵庫が得られる。
【0047】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、食品を貯蔵する貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室に配置されもしくは貯蔵室に設けられた食品収納ケースに配置されもしくは食品を覆うように設けられた食品の保湿を維持する保湿手段と、貯蔵室の蓋体内側もしくは食品収納ケース内であって、上方に設けられ内蔵する抗酸化剤の揮発性成分を放出する開口を有する容器と、を備え、揮発性抗酸化剤から食品に抗酸化剤を徐放可能とするので、食品の鮮度を維持できる冷蔵庫が簡単に得られる。
【0048】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、冷蔵庫本体内に設けられ野菜や果実を保存する野菜室と、野菜室に配置され上面を開口し1個もしくは個々に移動可能な区分室に複数に区分されるとともに、冷蔵庫扉と一緒に連動して移動し、且つ、この移動が所定位置にて制限される野菜室容器と、を備え、食品の保鮮効果を高める揮発性抗酸化剤を野菜室容器の上部に配置するので、収納される食品の種類や量、野菜室容器の構造によって左右されない保鮮効果が得られる。またこの発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、野菜容器の開口を揮発性抗酸化剤を収納する取付け部品にて塞ぐように配置し、隣接する区画へ揮発性抗酸化成分を流入させると共に開口を塞ぐので、使い易い冷蔵庫が得られる。
【0049】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫の食品は、ラップされて貯蔵されるので、新鮮さを長期間保つことができる。
【0050】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、粒状もしくは粉末状などの流動可能な状態の揮発性抗酸化剤は揮発性成分を透過するが液体を通さない包装材にて包装し、揮発性成分を放出する開口を有する容器内に収納したので、簡単な構造で安定した性能が得られる。
【0051】
この発明にかかわる冷凍冷蔵庫は、抗酸化剤の揮発性成分を透過させるが液体を通さない包装材に内蔵し、この包装材と吸湿材とを一緒に容器内に収納したので、湿度の高い状態でも性能を維持できる。
【0052】
この発明にかかわる収納箱は、青果物などの食品を収納し、運搬可能な箱体本体と、本体内の上方に設けられ、運搬時に本体に加えられる振動や衝撃などの外力が伝達される収納体と、収納体に包装されて内蔵され揮発性成分を透過性を有する包装材を透過させて収納体の隙間から箱体内に放出する粒状もしくは粉末状などの流動可能な抗酸化剤と、を備えたので,食品の鮮度の低下を簡単に抑えられる装置が得られる。またこの発明にかかわる収納箱は、抗酸化剤とともに収納体内の隙間とは異なる位置に内蔵され隙間から進入する湿気を吸収する吸湿材と、を備え、収納に内蔵された吸湿材は収納体から出し入れ自在であるので、食品の鮮度の低下を安定して抑えられる装置が得られる。
【0053】
この発明にかかわる収納箱の運搬方法は、包装された生鮮食品を収納し運搬する箱体に、内蔵する揮発性抗酸化剤の揮発性成分を生鮮食品に放出可能な容器を取り付けるステップと、容器に設けた開口より揮発性成分が徐々に放出されるステップと、運搬時に箱体に加えられる振動や衝撃などの外力が容器に伝達されるステップと、を備え、揮発性成分は包装を透過して生鮮食品に作用するので鮮度を維持できる運搬方法が得られる。又、この発明にかかわる収納箱の運搬方法は、運搬の手段や距離などの運搬条件に応じて開口の開度を調節するステップと、を備えたので、生産から消費までの流通状態が変化しても必要な鮮度維持が可能になる。
【0054】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、容器内に包装されて内蔵され、この包装に使用される包装材を透過させて揮発性成分を放出する粒状もしくは粉末状などの流動可能な抗酸化剤と、抗酸化剤を容器内で押さえて流動する範囲を制限する制限手段と、制限手段にて制限される範囲に設けられ容器の外部と連通して抗酸化剤からの揮発性成分を外部に徐放可能な開口と、を備えたので、取り扱いが容易、簡単な構造で高い品質のものが得られる。
【0055】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、包装に使用され揮発性成分にたいし透過性を有する包装材は液体は通さないので、使用条件が過酷でも安定して使用できる。
【0056】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、揮発性抗酸化剤の包装材を着色し、容器に抗酸化剤の揮発成分を放出する開口を設け、その開口より包装材の着色部が見える様にしたので、見栄えの良い物が得られる。
【0057】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、容器内に内蔵され揮発性成分を放出する粒状もしくは粉末状などの流動可能な抗酸化剤と、容器の内部と外部と連通して抗酸化剤からの揮発性成分を内部から外部に徐放可能な隙間であって、抗酸化剤を容器内から流出しないように押さえ液体としての水分を流入させない隙間と、を備え、容器の外部から加わる外力に応じて容器が変形し抗酸化剤が連動して流動するので,使い勝手が良く確実に徐放が行えるものが得られる。
【0058】
この発明にかかわる抗酸化剤放出装置は、容器内に内蔵され揮発性成分を放出する粒状もしくは粉末状などの流動可能な抗酸化剤と、容器の内部と外部と連通して抗酸化剤からの揮発性成分を内部から外部に徐放可能な開口であって、抗酸化剤を容器内から流出しないように押さえる開口と、容器に係合され容器に間隔を置いて振動を与える加振手段と、を備えたので、取り扱いしやすく性能の良い装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる抗酸化放出ユニットの断面図。
【図2】本発明の実施の形態1に係わる野菜のビタミンC変化を示した図。
【図3】本発明の実施の形態1に係わるチルド室の断面図。
【図4】本発明の実施の形態1に係わる野菜室の断面図。
【図5】本発明の実施の形態1に係わる野菜室の上面図。
【図6】本発明の実施の形態1に係わる抗酸化放出ユニットの断面図。
【図7】本発明の実施の形態1に係わる冷凍冷蔵庫の断面図。
【図8】本発明の実施の形態1に係わる野菜容器の断面図。
【図9】本発明の実施の形態1に係わる抗酸化剤取り付け部のZ−Z断面図。
【図10】本発明の実施の形態1に係わる野菜容器の断面図。
【図11】本発明の実施の形態1に係わる抗酸化剤ケースの開放図。
【図12】本発明の実施の形態1に係わる抗酸化剤ケースの図。
【図13】本発明の実施の形態1に係わる冷凍冷蔵庫の断面図。
【図14】本発明の実施の形態1に係わる冷凍冷蔵庫の断面図。
【図15】本発明の実施の形態1に係わる特性説明図。
【符号の説明】
【0060】
1 抗酸化放出ユニット容器、 2 細穴、 3 抗酸化剤、 4 チルド室、 5 引き出し式の容器、 6 開閉扉、 7 抗酸化放出ユニット、 8 引き出し方向矢印、 9 野菜室内箱、 10 野菜室上ケース、 11 野菜ケース凸部、 12 上ケース凸部、 13 抗酸化放出ユニット、 14 野菜室外箱、 15 野菜ケース、 16 磁石、 17 抗酸化放出ユニット、 18 抗酸化放出ユニット容器、 19 細穴、 20 金属性の棒、 21 上面に設けられたガイドバー、 22 上面に設けられたガイドバー、 23 抗酸化剤、 31 冷凍冷蔵庫、 32 冷蔵室、 33 野菜室、 34 冷凍室、 35 野菜容器、 35a 上段ケース、 35b 下段ケース、 36 抗酸化剤ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に包装されて内蔵され、この包装に使用される包装材を透過させて引火性のない揮発性成分を放出する抗酸化剤と、前記容器外部から加えられた外力により前記抗酸化剤が動かされる際、前記抗酸化剤が動く範囲を制限する前記抗酸化剤を前記容器内で押さえる制限手段と、前記制限手段にて制限される前記抗酸化剤が動く範囲に設けられ前記容器の外部と連通して前記抗酸化剤から前記引火性のない揮発性成分を外部に徐放する前記容器の開口と、を備えたことを特徴とする食品用抗酸化剤放出装置。
【請求項2】
前記包装材を着色し、前記容器に抗酸化剤の揮発成分を放出する前記開口より包装材の着色部が見える様にしたことを特徴とする請求項1記載の食品用抗酸化剤放出装置。
【請求項3】
容器内に内蔵され揮発性成分を放出する流動可能な抗酸化剤と、前記容器の内部と外部と連通して前記抗酸化剤からの揮発性成分を内部から外部に徐放する隙間であって、前記抗酸化剤を前記容器内から流出しないように押さえ、且つ、液体としての水分を内部に流入させない不織布でふさがれた隙間と、前記容器の外部から加わる外力により前記容器内の前記隙間に対向する位置の前記抗酸化剤が動かされて入れ替わり徐放が行われる前記抗酸化剤の表面部と、を備え、前記抗酸化剤の揮発性成分は引火性が無いことを特徴とする食品用抗酸化剤放出装置。
【請求項4】
前記容器内に前記包装材とともに乾燥剤を前記開口又は隙間の位置から離して同封することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の食品用抗酸化剤放出装置。
【請求項5】
前記抗酸化剤の放出成分は食品添加物として認定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の食品用抗酸化剤放出装置。
【請求項6】
前記容器に係合され前記容器に間隔を置いて振動を与える加振手段、を備えたことを特徴とする請求項1又は3に記載の食品用抗酸化剤放出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の食品用抗酸化剤放出装置を、青果物などの食品を収納し運搬可能な箱体本体内の上方に設けたことを特徴とする収納箱。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の食品用抗酸化剤放出装置を、生鮮食品を収納し運搬する収納箱本体に取り付けるステップと、運搬時に前記収納箱本体に加えられる振動や衝撃などの外力が前記容器に伝達されるステップと、前記食品用抗酸化剤放出装置の容器に内蔵する抗酸化剤の揮発性成分を前記容器に設けた開口より前記収納箱本体内の前記生鮮食品に徐々に放出するステップと、前記抗酸化剤から放出される前記揮発性成分を前記生鮮食品に作用させるステップと、を備えたことを特徴とする収納箱の運搬方法。
【請求項9】
前記運搬の手段や距離などの運搬条件に応じて前記開口の開度を調節するステップと、を備えた事を特徴とする請求項8記載の収納箱の運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−64620(P2007−64620A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258725(P2006−258725)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【分割の表示】特願2002−203634(P2002−203634)の分割
【原出願日】平成14年7月12日(2002.7.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】