説明

食品組成物

【課題】カレーソース、ホワイトソース、クリームシチュー等の、澱粉および食用油脂を含有する食品組成物であって、製造工程時の長時間の加熱攪拌やレトルト殺菌時の加熱などによる油脂の分離が抑制された食品組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、澱粉、油脂および脂肪酸エステルを含有する食品組成物であって、脂肪酸エステルとして、少なくとも、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとを含有し、かつ、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が18〜65%である食品組成物。本発明の食品組成物は、特に、カレーソース、ホワイトソース又はクリームシチューに好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物に関し、詳しくは、少なくとも、澱粉、油脂および脂肪酸エステルを含有する食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カレーソース、シチューソース、ホワイトソース等は、小麦粉由来の澱粉、食用油脂、食塩などの塩味料が配合された加工食品である。このような加工食品は、製造工程において、具材の調理や目的の粘度にするために長時間の加熱が必要である。また、このような加工食品を長期間保存可能とするために、高温で殺菌するレトルト処理などによる加熱工程も加わることがある。
【0003】
しかしながら、澱粉、食用油脂、塩味料が配合された加工食品に対し、上記の加熱調理や殺菌を行った場合、加工食品中に含まれる食用油脂が分離するという問題がある。その結果、加工食品中の油脂の分散が不均一となり、容器などへの充填時に組成が偏り、それに伴う歩留まりが低下し、また、喫食時においては外観を損ない、食感や食味にも影響を与えるといった、様々な弊害が生じることがある。
【0004】
これらの問題を解決するために、加熱時間の短縮、加熱温度の低下、攪拌力の向上などの改善策が知られている。しかしながら、加熱時間や温度は、前述の具材の調理や殺菌の観点から、必要以上に低減することが難しく、また、攪拌力の向上は、工業スケールでは設備上の限界がある。
【0005】
更に、加工食品中に食塩が存在する場合は、油脂の分離が促進される傾向にある。このため、乳化剤の添加によって油脂の分離を防止する場合も、適正な乳化剤を選択しないと、その効果を十分に発揮させることが出来ない。また、澱粉を含有する食品組成物においては、澱粉と乳化剤との反応性をも考慮し、適正な乳化剤を選択する必要がある。これらの問題に関しては、増粘安定剤などによる解決方法も考えられるが、粘度に変化が生じるため、最終製品の食感にも影響を及ぼすことが考えられる。
【0006】
前記のような問題を解決するために、これまで油脂の固体脂含量(SFC)が8重量%以上となる温度まで攪拌しながら冷却する方法(特許文献1)、低HLBと高HLBの乳化剤を、それぞれ油相と水相に別々に添加してから、油相と水相を混合加熱した後に冷却する方法(特許文献2)等が提案されている。しかしながら、これらの方法は、煩雑である上、使用する乳化剤によっては十分な効果が得られないことがある。
【0007】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することによって、クリームの褐変と乳化破壊に起因するホワイトソースの色調の変化を抑制することが出来、かつ、良好な風味と物性を付与することが出来る高粘性ホワイトソースを得る方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この方法の場合、使用するポリグリセリン脂肪酸エステルの種類によっては、乳化状態を改善する効果が十分でないことが判明した。
【0008】
【特許文献1】特開2002-125633号公報
【特許文献2】特開2002-125634号公報
【特許文献3】特開平9-222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、カレーソース、ホワイトソース、クリームシチュー等の、澱粉および食用油脂を含有する食品組成物であって、製造工程時の長時間の加熱攪拌やレトルト殺菌時の加熱などによる油脂の分離が抑制された食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとを併用し、かつ、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率を特定範囲とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
【0011】
本発明の第1の要旨は、少なくとも、澱粉、油脂および脂肪酸エステルを含有する食品組成物であって、脂肪酸エステルとして、少なくとも、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとを含有し、かつ、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が18〜65%であることを特徴とする食品組成物に存する。
【0012】
本発明の第2の要旨は、上記の食品組成物を含有することを特徴とするカレーソースに存する。
【0013】
本発明の第3の要旨は、上記の食品組成物を含有することを特徴とするホワイトソースに存する。
【0014】
本発明の第4の要旨は、上記の食品組成物を含有することを特徴とするクリームシチューに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、澱粉および食用油脂を含有する食品組成物であって、製造工程時の長時間の加熱攪拌やレトルト殺菌時の加熱などによる油脂の分離が抑制された食品組成物が提供される。上記の油脂の分離抑制は、上記の食品組成物が塩味料を含有する場合においても達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
【0017】
[基本構成]
本発明の食品組成物は、少なくとも、澱粉、油脂および脂肪酸エステルを含有する。
【0018】
[形態]
本発明の食品組成物の形態は、特に限定されず、固体状、柔らかな固体状、粘性のある液状、液状、更には、これらの形態の共存状態などが挙げられる。本発明の食品組成物の水分含量は、特に制限されず、上記の形態に応じて適宜調節できる。なお、本発明において、固体状または柔らかな固体状の食品組成物(以下、「固形ルー」ということがある)は、水分量が食品組成物に対して通常10重量%以下のものをさす。
【0019】
[澱粉]
本発明に使用する澱粉は、食用に使用することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、タピオカスターチ、甘藷澱粉、ワキシースターチ、サゴスターチ、米澱粉などの澱粉や、小麦粉、とうもろこし粉、芋、米、その他の穀類や植物根などの澱粉含有物が挙げられる。また、様々な特性を持たせた化学修飾澱粉も使用できる。化学修飾澱粉の具体例としては、アセチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉などが挙げられる。更には、油脂加工澱粉、α化澱粉などの加工澱粉も使用できる。また、これらの加工澱粉を含んだ食品素材も、澱粉原料として同様に使用できる。これらの澱粉は2種以上を併用することも出来る。
【0020】
本発明において、澱粉の含有量は、特に限定されないが、食品組成物に対し、通常0.1〜30重量%、好ましくは3〜10重量%である。澱粉の含有量が前記範囲未満であると、乳化剤の効果が十分に得られない場合があり、一方、前記範囲を超過すると、ルーの粘性が極端に上昇し、製造工程上困難が生じ、また、最終製品の食感も好ましくない場合がある。なお、本発明の食品組成物が固形ルーの場合であっても、澱粉の含有量は上記範囲であればよい。
【0021】
[油脂]
本発明に使用する油脂は、食用に使用することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、バター、ラード、牛脂、乳脂などの動物性油脂の他、ナタネ油、大豆油、コーン油、ひまわり油、綿実油、サフラワー油、あまに油、胡麻油、ヤシ油、パーム油、ひまし油、カカオ脂、落花生油などの植物性油脂が挙げられる。これらの油脂は2種以上を併用することも出来る。
【0022】
本発明において、油脂の含有量は、特に限定されないが、食品組成物に対し、通常0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。本発明の食品組成物が固形ルーの場合の油脂含有量は、食品組成物に対し、更に好ましくは10〜40重量%である。本発明の食品組成物が固形ルー以外の場合の油脂含有量は、食品組成物に対し、更に好ましくは1〜30重量%である。油脂の含有量が前記範囲未満であると、食品組成物をカレーやシチューとした場合、所謂コクや旨味が低下する傾向にあり、一方、前記範囲を超過すると、高圧下や高速回転下でホモジナイズを行わないと、均質に乳化を保持することが難しい場合がある。
【0023】
[脂肪酸エステル(乳化剤)]
本発明では、脂肪酸エステルとして、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとを使用する。
【0024】
脂肪酸エステルの含有量(ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルの合計量)は、特に限定されないが、食品組成物に対し、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.6重量%である。脂肪酸エステルの含有量が前記範囲未満であると、油の分離を抑制する効果が十分でない場合があり、一方、前記範囲を超過すると、食品組成物の粘度などの物性を大きく変化させてしまう可能性がある上、コスト面でも好ましくない。
【0025】
なお、本発明の食品組成物が固形ルーの場合の脂肪酸エステル含有量は、上記範囲を超えていてもよく、油脂の量に対し、通常0.5〜25重量%、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0026】
[ポリグリセリン脂肪酸エステル]
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、特に限定されないが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸などが挙げられ、好ましくは、パルミチン酸とステアリン酸である。これらの脂肪酸は2種以上を併用することも出来る。
【0027】
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける「グリセリン部分」の平均重合度は、特に限定されないが、通常3〜10、好ましくは5〜10である。なお、本発明において、上記の平均重合度は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリン部分を加水分解などの方法で分解した後、ポリグリセリン部分を液体クロマトグラフィーで測定する。
【0028】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは2種以上を併用することも出来る。2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用する場合、「グリセリン部分」の重合度は平均値を意味するものとする。
【0029】
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されないが、食品組成物に対し、通常0.007〜3.5重量%、好ましくは0.035〜0.7重量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が前記範囲未満であると、油の分離を抑制する効果が十分に発揮されない場合があり、一方、前記範囲を超過すると、食品組成物の風味や香味に影響を与える懸念があり、またコスト面でも好ましくない。
【0030】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、通常18〜65%、好ましくは19〜60%、更に好ましくは22〜56%である。斯かる特定のエステル化率のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、製造工程時の長時間の加熱攪拌、レトルト殺菌時の加熱などによっても油脂の分離を抑制することが出来る。このような効果を発現する機構は明らかではないが、特定のエステル化率をもつポリグリセリン脂肪酸エステルが球状になった油脂の表面を覆うことにより、親水性が付与され、その結果、水相から油脂が分離することを抑制していると考えられる。なお、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、平均エステル化率を意味する。
【0031】
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は下記の計算式で表される。なお、2種以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用する場合のエステル化率は、混合物の平均値を意味するものとする。ただし、下記の計算式におけるケン化価、酸価、水酸基化の測定は、JIS K 0070(1992)によるものとする。
【0032】
[数1]
エステル化率(%)=〔(ケン化価 酸価)/(水酸基価+ケン化価 酸価)〕×100
【0033】
[モノグリセリン脂肪酸エステル]
本発明におけるモノグリセリン脂肪酸エステルは、特に限定されないが、例えば、蒸留グリセリン脂肪酸エステル、未蒸留グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられる。脂肪酸の種類は、特に限定されないが、一般的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、及びそれらの混合脂肪酸が使用可能である。これらの中では、好ましくは、パルミチン酸とステアリン酸である。これらのモノグリセリン脂肪酸エステルは2種以上を併用することも出来る。
【0034】
本発明において、モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されないが、食品組成物に対し、通常0.007〜3.5重量%、好ましくは0.035〜0.7重量%である。モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量が前記範囲未満であると、油の分離を抑制する効果が十分に発揮されない場合があり、一方、前記範囲を超過すると、食品組成物の風味や香味に影響を与える懸念があり、またコスト面でも好ましくない。
【0035】
[配合比]
本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとの配合割合は、特に制限されないが、重量比として、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、更に好ましくは50:50〜80:20、特に好ましくは60:40〜70:30である。前記範囲よりもポリグリセリン脂肪酸エステルが過剰であっても、また、前記範囲よりもモノグリセリン脂肪酸エステルが過剰であっても、油の分離を抑制する効果が十分に発揮されない場合がある。
【0036】
なお、本発明では、上記の脂肪酸エステル以外の各種乳化剤を併用してもよい。具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。
【0037】
[塩味料]
本発明の食品組成物は塩味料を含有していてもよい。ここで、塩味料とは、食品の調味のために、塩味を付与する成分を意味し、具体的には、食塩(塩化ナトリウム)、塩化カリウム、塩化マグネシウム等を挙げることが出来る。
【0038】
本発明において、塩味料の含有量は、特に限定されないが、食品組成物に対し、通常0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。塩味料の含有量が前記範囲未満であると、食した際に塩味が感じられない場合があり、一方、前記範囲を超過すると、油の分離を促進し、乳化剤の効果が発揮されない場合がある。なお、本発明の食品組成物が固形ルーの場合であっても、塩味料の含有量は上記範囲であればよい。
【0039】
本発明では、上記の含有量で塩味料を含有している場合でも、製造工程時の長時間の加熱攪拌やレトルト殺菌時の加熱などによっても油脂の分離を抑制することが出来る。
【0040】
[その他成分]
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の任意成分を含有することが出来る。具体的には、例えば、各種具材の他、安定剤、蛋白質、砂糖や液糖などの糖類、調味料、着香料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調節剤、日本酒やワイン等の酒類、香辛料などが挙げられる。
【0041】
[用途]
本発明の食品組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、カレールー、ホワイトルー、シチュールー、カレーソース、ホワイトソース、ベシャメルソース、ドミグラスソース、クリームソース、更にはコーンスープ、クラムチャウダー、ミネストローネ、お汁粉などに適用すると好適である。特に、カレーソース、ホワイトソース、クリームシチューに本発明の食品組成物を含有させるならば、本発明の効果は顕著である。
【0042】
[製造方法]
本発明の食品組成物の製造方法を以下に示す。
【0043】
先ず、ラードやその他植物油などの油脂を熱し、そこへ小麦粉などの澱粉含有物を加え、そのまま炒めながらルーを作成する。別途、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとを温水に分散させて分散液を作成する。このときの温度は65℃以上であることが好ましい。前記のルーに上記の分散液を加えて溶きのばし、そこへ食塩などの塩味料を加え、目的の食品組成物を作成する。このときの温度は、通常60〜100℃である。
【0044】
他の製造方法(粉体の脂肪酸エステルを使用する方法)としては、小麦粉などの澱粉含有物の粉末と脂肪酸エステルとを先に混合してからルーを作成する方法が挙げられる。また、澱粉、油、脂肪酸エステルを一度に投入してルーを作成し、そこへ温水を加える方法も挙げられる。
【0045】
固形ルーの製造方法としては、通常、澱粉、油脂、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、水、その他成分を加熱混合した後、冷やして固める方法が挙げられる。他の方法としては、水の含有量が低い場合または水を含まない場合は、油脂に他の成分を直接分散させてもよく、逆に、水を多量に含有した食品組成物から水を除去してもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した乳化剤の種類および油脂の分離特性の評価方法は以下の通りである。
【0047】
【表1】

【0048】
[油脂の分離特性の評価方法]
食品組成物200gを300ccのビーカーに入れ、85℃の湯浴中で50rpmのプロペラ攪拌を1時間継続した後、撹拌を停止して静置状態の食品組成物を観察し、油脂の分離状態を確認する。そして、以下の表2に示す4段階の基準で評価する。なお、層状となった油脂の量は油脂層の厚さにより算出する。
【0049】
【表2】

【0050】
(実施例1〜7及び比較例1〜9)
予め、ラード(雪印乳業社製、商品名:雪印ラード)を熱して溶解させた後、強力粉(日清フーズ社製、商品名:日清カメリア強力小麦粉)を加え、数分間炒めてルーを作成した。なお、このルーは50〜60℃で保温して使用した。
【0051】
そして、次の要領に従って、表3〜表5に示す組成の食品組成物を調製した。先ず、70℃の温水に所定量の脂肪酸エステルを分散させて乳化剤分散液を作成した。一方、前記のルー100重量部に対して40℃の温水700重量部を加え、200rpmでプロペラ攪拌を行いながら85℃の湯浴中で5分間攪拌を継続し、小麦粉中の澱粉を十分に膨潤させた。その後、表3〜表5に示す配合比となるように食塩と乳化剤分散液を投入した。最後に水を添加することによって配合量の補正を行った。得られた各食品組成物に対する油脂の分離特性を評価し、結果を表4及び表5に示した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、澱粉、油脂および脂肪酸エステルを含有する食品組成物であって、脂肪酸エステルとして、少なくとも、ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとを含有し、かつ、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が18〜65%であることを特徴とする食品組成物。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリン平均重合度が3〜10である請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルとの重量比が5:95〜95:5である請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
塩味料を含有する請求項1〜3の何れかに記載の食品組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の食品組成物を含有することを特徴とするカレーソース。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の食品組成物を含有することを特徴とするホワイトソース。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載の食品組成物を含有することを特徴とするクリームシチュー。