説明

食感のよいお好み焼きの製造方法

【課題】冷凍食品とした場合であっても食感が良好に保たれるお好み焼きの製造方法を提供する。
【解決手段】下記の工程を含む、機械的に連続実施可能なお好み焼きの製造方法を提供する:(a) 小麦粉、水、卵、牛脂を含む生地原料を混合して生地を調製するが、このとき牛脂が、生地原料の4〜11重量%であり;(b)生地と具材原料とを重量比5:5〜3:7でお好み焼き1枚適量毎に混合し;そして(c)具材入り1枚適量生地を直ちに160℃〜200℃で連続的に成形焼成してお好み焼きを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お好み焼きの工業的な製造方法に関する。本発明の製造方法は、冷凍お好み焼きの製造方法とすることができる。本発明は、食品製造の分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
お好み焼きやたこ焼きは、店や家庭で手作りされ、調理直後に食されることが多いが、最近では冷凍等された状態で流通することもある。冷凍した場合であっても、食感や味が良好であることが好ましく、このための検討がなされてきている。
【0003】
例えば、特許文献1は、柔らかく、内部がクリーミーで良好な食感を有し、冷凍保存して、解凍した場合も同様の食感を保持するような製品を得ることを目的に、小麦粉、油脂及び澱粉エーテルの混合物を主原料としたたこ焼き用ミックスを提供する。ここでは、材料中に澱粉エーテルを添加しているために、焼き上りが柔らかく、内部がクリーミーで良好な食感が奏されることが説明されている。
【0004】
また、特許文献2は、ソフトで口溶けが良く、トロミのある食感と小麦粉特有の風味を有し、保形性にも優れたたこ焼き等を焼成でき、焼成後の経時変化が少なく、さらに電子レンジ等による再加熱後も口溶け、トロミが良好となる小麦粉焼成食品用ミックス及び小麦粉焼成食品を提供することを目的に、小麦粉、及びゼラチンを必須成分とする小麦粉焼成食品用ミックスを提供する。この発明は、小麦粉を主原料とする小麦粉焼成食品において、ゼラチンを併用すると、食感(トロミ・口溶け)と保形性が向上するとの発見に基づき、なされたものである。
【0005】
さらに特許文献3は、流動性や粉体混合適性が良好で、たこ焼き及びお好み焼きの食味を損なうことなく、表面がカリッとして形崩れがなく、ふっくらとして口当たりが良く、中心はジューシィー感、ソフト感があり、軽い食感で、調理後すぐに食するものだけでなく、冷蔵または冷凍保管後にレンジ等で温め直しても前述の食感が維持できるたこ焼き及びお好み焼きを提供する。具体的には、平均粒子径が20μm以下の微粉末が、平均粒子径が20μm以上のコアとなる粉末に付着している粉末を含有する品質改良剤を提供している。ここでいうコアとなる粉末と微粉末の組成となる素材は、粉末状の蛋白素材及びその分解物、粉末状の糊料及びその分解物、粉末状の乳化剤、粉末状の澱粉及びその加工品及びその分解物、動物性粉末油脂、植物性粉末油脂より選ばれる1種又は2種以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-062813
【特許文献2】特開2002-186468
【特許文献3】特開2003-024019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷凍食品の場合、冷凍保存中に乾燥が進み、パサついた食感となる。その一方で、最近にはソフトで口解けが良く、トロミのある食感が好まれる。本発明者らは、機械的に連続生産可能で、かつ口溶け感のよいお好み焼きの開発を試みた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、特定の油脂類を適切に配合することにより、意図した食感の製品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、以下を提供する:
[1] お好み焼きの製造方法であって:(a)小麦粉、水、卵、牛脂を含む生地原料を混合して生地を調製するが、このとき牛脂が、生地原料の4〜11重量%であり;(b)生地と具材原料とを重量比5:5〜3:7でお好み焼き1枚適量毎に混合し;そして(c)具材入り1枚適量生地を直ちに160℃〜200℃で連続的に成形焼成してお好み焼きを得る工程を含み、各工程が機械的に連続実施される、製造方法。
[2] (d)得られたお好み焼きを冷凍する工程をさらに含む、[1]に記載の製造方法。
[3] 生地原料が、乳化剤(ただし卵由来のものは除く。)を含まない、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 具材が、40〜60mm×4.8〜5.2mmの千切りキャベツと7〜13mm角の角切りキャベツとの、重量比7:3〜3:7の混合物を含む、[1]〜[3]のいずれか一に記載の製造方法。
[5] 牛脂を、小麦粉、水、卵、牛脂を含む生地原料の4〜11重量%用いることを特徴とする、お好み焼きの改良方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、冷凍食品とした場合であっても良好な食感のお好み焼きを工業的に製造することができる。また、本発明の製造方法により得られた冷凍お好み焼きにより、家庭においても手軽に専門店のおいしさを再現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、各工程が機械的に連続実施される。本発明で「機械的に連続実施」というときは、特に記載した場合を除き、工業生産におけるライン製造を指す趣旨である。
【0012】
本発明で「お好み焼き」というときは、特に記載した場合を除き、生地と具材とを混合して焼成する、いわゆる関西風のお好み焼きをいう。また、本発明で「お好み焼き」というときは、特に記載した場合を除き、焼成後のものを指しており、ソース及びトッピング(マヨネーズ、削りかつお節、粉末状又は細断状の青のり、等)を施す前の状態ものを指している場合がある。
【0013】
本発明のお好み焼きの製造方法を、以下説明する。
【0014】
[生地調製工程]
本発明のお好み焼きの製造方法においては、小麦粉、水、卵、牛脂を含む生地原料を混合することにより、お好み焼きのための生地が調製される。
【0015】
生地の主原料である小麦粉は、特に制限はなく、強力系、準強力系、中力系、薄力系の小麦粉のいずれも使用できる。卵は、生のものを用いてもよく、冷凍したものを用いてもよい。全卵を用いてもよく、卵黄のみを用いてもよい。
【0016】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、生地に牛脂が用いられる。
【0017】
本発明で「牛脂(Fett、フェット、ヘット、ということもある。)」というときは、特に記載した場合を除き、食品として許容される牛由来の脂肪分を指し、天然物そのものであってもよく、精製されたものであってもよい。牛脂は、常温では白色の固体であり、融点は35〜55℃である。牛脂には、一価不飽和脂肪酸 オレイン酸が約47%、飽和脂肪酸であるパルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸がそれぞれ、約26%、約14%、約3%含まれる。
【0018】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、精製された牛脂を用いることが好ましい。精製方法は特に問わないが、通常、切断機で細切れにした脂肪組織を高圧缶に入れ、加熱蒸気を送って溶出し採取する方法が採られる。牛脂は、脱臭工程を経たものでもよい。安全上の観点からは、高温処理(例えば約250℃において約60分間の処理)がされていてもよい。
【0019】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、牛脂として、融点41±2℃のものを特に好適に用いることができる。
【0020】
牛脂は、豚脂(ラード)より融点が高く、一般的には、豚脂に比較して扱いにくい。そのために、お好み焼きに牛脂を積極的に用いようとする試みはなかったと思われる。しかしながら、本発明者らの検討によると、お好み焼きの生地に約10%用いた場合に、ラードではねちゃつき感があるのに対し、牛脂ではそれがなく、適度な口溶け感を奏した。また、牛脂は、常温で液体の油を用いた場合に比較しても、口溶け感に優れており、かつ常温で液体の油では付与しえないうま味・こく味(甘味)をお好み焼きに与えうる点で、大変優れていた。
【0021】
本発明者らの検討によると、牛脂には、お好み焼き中において、口どけ感の向上、うま味・こく味の付与のほか、野菜等の具材からの離水によるねちゃつきを感じにくくするという、食感改善効果も奏しうる。
【0022】
本発明のお好み焼きの製造方法は、冷凍食品としてのお好み焼きの製造に適しているが、一般に、冷凍食品とする場合には、冷凍工程及び冷凍保存中の劣化や乾燥が進みやすい。牛脂の添加は、冷凍工程及び冷凍保存中の劣化や乾燥を防ぐためにも有効でありうる。
【0023】
牛脂の配合量は、生地全重量に対して、4〜11%、好ましくは5〜11%、より好ましくは6〜11%となるようにする。用いない場合又は4%未満で用いた場合、できあがったお好み焼きにおいて、油っぽさは感じられないものの口どけ感が悪く、特に冷凍食品とした場合は、ぱさつきが感じられるものとなる。一方、11%を越えると、口どけ感は良好であるが、油っぽさを感じるものとなる。
【0024】
なお、本発明において生地原料としての牛脂の量に言及するときは、特に記載した場合を除き、具材原料としての肉類等に由来する牛脂は含まない。
【0025】
牛脂は、予め加熱し、溶解させてから、他の生地原料と混合するとよい。
【0026】
牛脂を用いた場合、生地に用いられる水と充分に混合されず、分離してしまう可能性がある。これを解決するために、乳化剤を添加することができる。しかしながら、本発明のお好み焼きの製造方法においては、乳化剤は、原料としての卵に由来するものを除き、添加しなくてもよい。後述するように、本発明においては、焼成する直前に具材原料と生地とが、一枚適量ごとに混合されるので、経時的に生地成分が分離することが少ないからである。乳化剤の無添加は、牛脂の本来の風味を生かすとの観点からも好ましい。
【0027】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、生地原料全において20〜40%となるように、水を加え、混合する。すべての材料を混合した後、必要に応じ、適切な大きさのメッシュを通して、生地中のダマを除くことができる。
【0028】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、生地は、上記成分の他に、山芋(すりおろしたもの、粉等)、調味料(塩、こしょう、醤油、味噌、砂糖、みりん、酒)、エキス類(例えば、鰹節エキス、昆布エキス、酵母エキス)、穀粉類、澱粉(例えば、生でん粉及び加工でん粉)、トレハロース、デキストリン、大豆蛋白質、えんどう蛋白質、小麦グルテン、乳製品(例えば、牛乳、脱脂粉乳)、食物繊維、膨脹剤、増粘剤(例えばキサンタンガム、タマリンドガム、グアガム、カードラン、ローカストビンガム、ジェランガム、サイリウムシードガム、カラギーナン、プルラン、CMC、アルギン酸ナトリウム等)、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類等を適宜含むことができる。
【0029】
[具材混合工程]
(原料具材)
本発明のお好み焼きの製造方法においては、具材としてキャベツを用いるが、少なくとも40〜60mm×4.8〜5.2mmの千切りキャベツと、7〜13mm角の角切りキャベツとを用いてもよい。
【0030】
本発明において「キャベツ」というときは、特に記載した場合を除き、野菜としてのキャベツの可食部を指す。本発明に用いるキャベツは、生キャベツであっても塩漬けなど加工処理がされた加工キャベツであってもよいが、生キャベツ用いることが好ましい。
【0031】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、千切りキャベツと角切りキャベツとを混合して用いることができる。本発明者らは、キャベツのカットサイズに関し、千切りについては、幅 2〜30mm、長さ 25〜100mmの範囲で、角切りについては、3〜20mm角の範囲で検討した結果、以下で述べるサイズが適することを見出した。
【0032】
本発明においては、千切りのサイズは、幅は、4.0〜6.0mm、好ましくは4.5〜5.5 mm、より好ましくは4.8〜5.2mmである。幅がいずれの場合であっても、長さは、30mm以上、好ましくは40mm以上、より好ましくは48mm以上である。長さは、いずれの場合においても、製造上の取り扱い性の観点からは、70mm以下であり、好ましくは65mm以下であり、より好ましくは60mm以下である。一般に、家庭や店で調理され、焼成直後に喫食される手作りのお好み焼においては、冷凍によりキャベツの食感(歯ごたえ)が弱まることを考慮する必要がないため、上述したものより細くカットしたキャベツを用いる。本発明のお好み焼きの製造方法は、冷凍食品としてのお好み焼きの製造に適しているが、上述したような千切りのサイズは、冷凍調理後のキャベツの食感が最良になる点で、特に優れている。
【0033】
本発明で「角切り(ダイス切りということもある。)」というときは、特に記載した場合を除き、四角形にカットされている状態をいう。本発明においては、角切りのサイズは、一辺5〜15mm、好ましくは6〜14mm、より好ましくは7〜13mmである。製造ラインにおける詰まりの発生が少ないとの観点からは、略正方形であることが好ましい。
【0034】
なお、キャベツの性質上、意図したサイズよりも小さい切れ端が生じることがあるが、カットされたキャベツにおいて、カット片の大部分が規定されたサイズに合致していれば、そのカットキャベツ全体を所定のサイズであるということができる。キャベツは、繊維方向に関係なく、ランダムな方向にカットすることができる。
【0035】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、混合される千切りキャベツと角切りキャベツとの重量比は、7:3〜3:7であり、好ましくは6:4〜4:6であり、より好ましくは5.5:4.5〜4.5:5.5である。
【0036】
千切りキャベツは生地に混合された際に生地内に空隙を形成することができ、そのためにお好み焼きにふわっとした食感を与えうる。また、ある程度の長さがあるために、キャベツの存在感を与えうる。しかしながら、本発明者らの検討によると、千切りキャベツは、製造ライン(連続製造工程)に詰まる場合が多いことが分かった。特に、冷凍後の食感に配慮したサイズにカットされたキャベツを含む具材と生地とを、1枚適量毎に混合した後、焼成板に充填(焼成板上に注ぐこと)しようとすると、キャベツが充填口に引っかかり、具材入りの生地が全量は充填されない。その結果、製品としては重量不足のものの比率が高まり、製造上のロスが増してしまう。
【0037】
その一方で、特定の大きさの角切りキャベツは、製造ラインに詰まることが少なく、ほぼすべての工程に流れよく移送されうるが、角切りキャベツのみではお好み焼きにボリューム感がでない。本発明により製造されたお好み焼きは、千切りキャベツと角切りキャベツとを混合して用いることで、予想外にも、製造ラインに詰まりにくく、かつ適度なボリューム感を有し得る。
【0038】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、具材として、キャベツのほか、一般のお好み焼きに用いる具材を特に制限なく、用いることができる。具材の例は、肉類(例えば、豚肉、牛肉、鶏肉)、魚介類(例えば、いか、えび、たこ)、餅、麺類(例えば、うどん、中華麺、日本そば)、紅しょうが、天かす、野菜(例えば、葱、たまねぎ、ピーマン、にんじん、ごぼう)、乳製品(例えば、チーズ)を含むことができる。具材の大きさ(カットサイズ、形状)及び量は、通常のお好み焼きの場合を参考に、当業者であれば適宜設計することができるが、野菜の場合、上記で説明したキャベツの場合を参考にするとよい。
【0039】
本発明のお好み焼きの製造方法においては、生地と具材原料とを重量比5:5〜3:7、好ましくは4.5:5.5〜3.5:6.5、より好ましくは4.2:5.8〜3.8:6.2でお好み焼き1枚適量毎に混合される。一枚適量毎の混合は、例えば、従来技術の装置及び方法を適用して実施することができる。
【0040】
(生地と具材原料との混合)
本発明のお好み焼きの製造方法においては、生地、具材原料、それぞれが計量され、重量比5:5〜3:7、好ましくは4.5:5.5〜3.5:6.5、より好ましくは4.2:5.8〜3.8:6.2でお好み焼き1枚適量毎に混合される。1枚適量毎の混合は、例えば、特開平7-67592に開示された装置及び方法を適用して実施することができる。詳細には、移送可能な具材移送部材上に、キャベツ等の固形具材原料を、具材検知装置によってお好み焼き1枚適量毎に分け、移送する。その一方、調製された生地を、一定量生地送り手段によってお好み焼き1枚適量毎に順次移送する。そして、移送されてくる各1枚適量の具材原料と生地とを、混合することができる。
【0041】
大量製造に際して、予め生地と具材原料とを大量に混ぜ合わせておくと、時間の経過により具材から水分が出て、その水分が生地の物性を変えてしまう。また、牛脂が分離してしまう。その結果、安定的に同一の品質のものを製造することが困難となる。しかしながら、本発明のお好み焼きの製造方法においては、生地と具材原料との混合は、1枚適量毎に、かつ焼成直前に行われるため、牛脂を使用しているにもかかわらず、安定した品質で連続製造が可能である。混合は、牛脂が均一に分散する程度にまで十分に行うことが好ましい。
【0042】
[焼成工程]
本発明のお好み焼きの製造方法においては、具材入り1枚適量生地は、直ちに成形焼成される。焼成は、必要に応じ、コテ等で円形に形を整えながら、160℃〜260℃で5〜20分間行われる。
【0043】
通常お好み焼きを焼く鉄板の温度は、230℃〜250℃であるが、本発明のお好み焼きの製造方法においては、上火を使用することにより、鉄板温度を160℃〜200℃として、焼成することができる。
【0044】
[その他]
本発明の製造方法により得られたお好み焼きは、冷蔵又は冷凍して、冷蔵食品又は冷凍食品とするのに特に適している。
【0045】
冷蔵又は冷凍工程における条件は、当業者であれば、適宜設計できる。冷蔵又は冷凍のための手段は、従来技術を適用することができる。例えば、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザー、フレキシブルフリーザー、アルミフィンコイル式冷蔵庫、ユニットクーラ式冷蔵庫等が適用できる。冷凍は、例えば約−30℃で、スパイラルフリーザーを利用して急速に行うことができる。
【0046】
本発明により奏される良好な食感は、冷蔵又は冷凍されても変化することが少なく、また保存による経時的変化が少ない。そのため、本発明により、冷蔵・冷凍保存後に電子レンジなどで再加熱しても食感の変化の少ないお好み焼きを得ることができる。本発明により製造された冷凍お好み焼きは、約-18℃で、約1年間冷凍保存することができ、そのような条件で冷凍保存した場合であっても、良好な食感を奏しうる。
【0047】
本発明により製造された冷凍お好み焼きは、電子レンジで解凍調理するのに特に適している。
【0048】
本発明の製造方法は、上述の冷蔵又は冷凍工程のほか、具材原料下処理工程(例えば、具材として含まれる魚介類、肉類を、予め加熱調理し、調味する工程)、検査工程、包装工程が含まれていてもよい。包装工程は、冷凍工程の後に行うことができる。包装に際しては、お好み焼き自体を包装し、別途個別に包装されたソース及びトッピング類(例えば、マヨネーズ、削りかつお節、粉末状又は細断状の青のり)を添え、お好み焼き製品とすることができる。
【0049】
本発明により製造されたお好み焼きは、牛脂を用いることで、牛脂を用いていない点でのみ異なるお好み焼きに比べて、粉っぽさが少なく、適度な口溶け感を有しうる。また、本発明により製造されたお好み焼きは、牛脂を用いることで、牛脂の代わりに常温で液体の油を用いた点でのみ異なるお好み焼きに比べて、油っぽさが少ない。対象となるお好み焼きについての粉っぽさ、口溶け感、油っぽさの評価は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、訓練されたパネラー1名以上(例えば5名)に、必要であれば、対照として牛脂を用いないか、または牛脂の代わりに常温で液体の油を用いたお好み焼きを準備し、対象お好み焼きを実際に喫食させ、数段階で比較評価させることにより、判断することができる。より詳しい評価のための手法及び基準は、本明細書の実施例を参考にすることができる。
【実施例】
【0050】
下表に示す配合で、お好み焼きを製造した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
具材及び生地をそれぞれ調製し、具材:生地を重量比40:60で、焼成する直前に空気を含ませるように一枚適量毎に混合した。混合後、200℃の鉄板で、上火を使いながらコテで形を整えつつ、9〜10分間かけて焼成した。途中、一度上下を返した。次いで、スパイラルフリーザーで、約-30℃で急速凍結した後、約-20℃、約1ヶ月冷凍保存した。
【0054】
冷凍品は、凍ったまま皿にのせ、ラップをかけずに、電子レンジで1枚当たり、500W約7分10秒、又は600Wで約6分40秒解凍調理した。また、牛脂の代わりに他の油脂類を用いた以外は同じ条件で、種々のお好み焼きを調製した。牛脂については、配合量を変えたものも調製した。
【0055】
解凍調理したお好み焼きは、しばらく放冷した後、訓練されたパネラー5名 に試食させ、評価させた。
【0056】
パネラーによる評価は、食感が非常に良いものを◎とし、食感が好ましいといえる場合に○、食感はやや不満足なものであるが、お好み焼き製品として一応許容できる程度であるものを△、製品としては許容できない食感のものを×とした。
【0057】
結果を下表に示した。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
10%牛脂を用いることにより、良好な口どけ感とコク味のある良好な食感が得られることが分かった。牛脂の量を変化させた場合では、5%にまで減じると若干の粉っぽさが表れ、逆に15%を超えると油っぽさが感じされるようになった。
【0061】
また、電子レンジで調理した後の硬さは、牛脂配合量が15%以上では、柔らかすぎることが分かった。
【0062】
牛脂の配合量は、総合的にみて、4〜11%、好ましくは5〜11%、より好ましくは6〜11%であると考えられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
お好み焼きの製造方法であって:
(a) 小麦粉、水、卵、牛脂を含む生地原料を混合して生地を調製するが、このとき牛脂が、生地原料の4〜11重量%であり;
(b)生地と具材原料とを重量比5:5〜3:7でお好み焼き1枚適量毎に混合し;そして
(c)具材入り1枚適量生地を直ちに160℃〜200℃で連続的に成形焼成してお好み焼きを得る
工程を含み、各工程が機械的に連続実施される、製造方法。
【請求項2】
(d)得られたお好み焼きを冷凍する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
生地原料が、乳化剤(ただし卵由来のものは除く。)を含まない、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
具材が、40〜60mm×4.8〜5.2mmの千切りキャベツと7〜13mm角の角切りキャベツとの、重量比7:3〜3:7の混合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
牛脂を、小麦粉、水、卵、牛脂を含む生地原料の4〜11重量%用いることを特徴とする、お好み焼きの改良方法。

【公開番号】特開2012−231693(P2012−231693A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100796(P2011−100796)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年10月30日に「NHK ドラマ・ガイド 連続テレビ小説 てっぱん」にて発表
【出願人】(000140650)テーブルマーク株式会社 (55)
【Fターム(参考)】