説明

食物からの成分の抽出のための分子インプリントポリマー

本発明は水又は水性媒体においてリボフラビン又はその類似体の如きターゲット分子を選択的に結合することができる新規な種類の水相溶性分子インプリントポリマー(水性MIP)、それらの合成、及び食品加工及び抽出又は分離プロセスにおけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水又は水性媒体においてリボフラビン又はその類似体の如きターゲット分子を選択的に結合できる新規な種類の水相溶性分子インプリントポリマー(水性MIP)、それらの合成、及び食品加工及び抽出又は分離工程におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、食餌、環境及び化学技術の分野では、関連物質の複合混合物から特定の物質の選択的分離に対する要求が増している。目的は様々である:それは一種以上の特定の化合物の分取、又はそれらの濃度の測定、又は多成分混合物からのターゲット化合物の選択的除去であることができる。
【0003】
水溶性ビタミンであるリボフラビン(ビタミンB)は人間の食事のために不可欠であり、これはフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)及びフラビンモノヌクレオチド(FMN)の主成分であり、これらはレドックス反応のための補酵素である。それは肝臓(3.5mg/100g)、チーズ(0.5mg/100g)、ミルク(0.15mg/100g)及びビール(約200μg/L)に見出される。リボフラビンは熱及び酸性pHに対して比較的安定であるが、それはアルカリ及び光の存在下でルミフラビン、即ちビタミンCの分解に寄与する強い酸化剤に分解する。リボフラビンの光還元は硫黄源の存在下で苦いイソアルファ酸の分解の役割を有し、それは太陽光にさらされた白ワイン、シャンパン、ミルク及びビールの良く知られた“太陽を照らされた(sun−struck)”味に導く。かかる望ましくない味の発達を防止するために、これらの製品はビール及びワインの場合には光に対して不透明でかつ暗いボトル中に、又はミルクの場合にはプラスチック/紙包装中に保存されることが好ましい。これらの手段はリボフラビンを持たない製品に対しては必要ないだろう。
【0004】
それゆえ組成物に影響を与えずに複合マトリックスからリボフラビンを選択的に除去する方法は重要である。親和性分離方式でのリボフラビン結合蛋白質の使用はM.G.Duyvisら、J.Agric.Food.Chem.2002,Vol.50,pp1548−1552によって及びC.Laaneら.,J.Inst.Brew.1999,Vol.105,p392によって示唆されている。しかしながら、提案された手法は安定性及びコストに関連した問題によって強く制限され、それはこれらの手法の実行可能性を強く低下した。
【0005】
代わりに組成物に影響を与えずに複合マトリックスからリボフラビンを除去できる安定したポリマー材料の使用はこの点に関してずっと有用であるかもしれない。かかる特性を示すことができる材料は関連する食品及び飲料の安定性及び品質を増強するのに重要な用途を見出しうる。さらに、かかる材料は分析定量化の前に複合マトリックスからフラビンを富化及び単離するために、又は化学センサーにおける認識要素として使用されてもよい。
【0006】
一つのかかる種類の材料は“分子インプリントポリマー(MIP)”として知られる種類であり、それは分子インプリントの技術を使用して作られてもよい。
【0007】
分子インプリントポリマー(MIP)の調製のための最も広く使用されるプロトコル(以下、“通常の技術又は方法”として言及)は下記の鍵となる工程を伴う:
(i)ターゲット又はテンプレート分子、又はその構造的類似体(“T”)は低い極性の非プロトン性溶剤において選択された官能モノマー(“M”)と接触して相互作用され、非共有結合されているテンプレート−モノマー集成体を形成する;
(ii)テンプレート−モノマー集成体は架橋剤又はモノマー(“M−M”)と共重合され、架橋多孔質ネットワークポリマー(ポリマーマトリックスとしても知られる)を生じる;
(iii)ターゲット又はテンプレート(“T”)はポリマーマトリックスから抽出され、対応する結合部位を持つMIPを残す。
【0008】
MIP上のこれらの結合部位は高い親和性及び選択性で、対応するターゲット又はテンプレート分子、又は近い構造的類似体を選択的に再結合することができる。しばしば、これらの部位の結合選択性は抗体−抗原相補性と比較されることができる。
【0009】
上記通常の技術では、MIPは典型的には所望の粒度画分の粒状材料を得るために工程(iii)(テンプレートの抽出)の前に破壊され篩分けされる。次いで、これらはクロマトグラフィカラム中に充填され、同様の構造又は機能性を有する混合物の他の成分からのテンプレートのクロマトグラフィ分離のために使用されることができる。分析並びに分取用途が可能である。分取用途では、目的は特定の化合物を単離又は除去することであってもよい。これは例えば親和性クロマトグラフィ法によって行なわれてもよく、そこではpH、イオン強度又は溶剤勾配、又は前記パラメータの組み合わせは静止相との相互作用の強度を制御するために使用されてもよい。粗混合物は典型的にはMIPの充填床を通過させられ、それによって除去又は単離される化合物はMIP上に選択的に保持される。続いて、化合物は再生工程においてMIPから放出される。状態調節工程の後、MIPは再使用の準備状態になる。
【0010】
膜方式におけるMIPの使用はなお代替策であり、それはより速い分離を可能とすることによる利益及び純粋化合物の連続製造のための可能性を提供するかもしれない。
【0011】
あるいは、分離はいわゆる“バッチ方式”で行なわれてもよく、そこではMIPは化合物の選択的吸収が行なわれるために十分であると考えられる時間、粗混合物中に懸濁される。その後、再生は上述のように行なわれることができる。
【0012】
MIPは例えばアミノ酸誘導体、ペプチド、ホスホネート、ベータブロッキング化合物を含むアミノアルコール、及び多数のキラル薬剤のキラル分離の見込みを示す。
【0013】
さらに、MIPを含む開発の見込みは親和性クロマトグラフィに(例えばY.Yuら,Biotechnology and Bioengineering 2002,Vol.79,pp23−28参照)、化学的感知に(例えばK.Hauptら,Chem.Rev.2000,Vol.100,pp2495−2504参照)、及び小さなターゲットアナライトのイムノアッセイにおける抗体のための基質として(例えばL.Yeら,J.Am.Chem.Soc.2001,Vol.123,pp2901−2902)見られる。特許文献は材料がこれらの述べられた用途の全てに商業的な用途を見出しうることを示す。
【0014】
通常の方法の重合プロセスはポロゲンと称される細孔形成溶剤の存在下で行なわれる。官能モノマーとテンプレートの間の静電的相互作用を安定化するために、選択されたポロゲンは低度から中度の極性を持つ非プロトン性溶剤であることが多い。現在使用される大多数のテンプレートはかかる溶剤(以下、“通常の溶剤”として知られる)における中度から高度の溶解性を示し、それゆえこれらの又はそれらの構造的類似体は通常の方法を使用してインプリントされることができる。
【0015】
他方、上述の通常の方法は親水性ターゲット又はテンプレートに対して可能ではなく、それは大多数の生物学的に重要な分子を含む。この種のターゲット又はテンプレート分子に対して、本インプリント技術は二つの主要な問題と関連する。
【0016】
第一の問題は通常の溶剤におけるかかるターゲットの限定された溶解性に関する。
【0017】
リボフラビン、又はその類似体(例えばFAD,FMN)は水溶性ビタミンの種類に属し、分子インプリントの技術に典型的に使用される低度の極性から非極性の有機溶剤において最小からゼロの溶解性を示す。それゆえ通常のMIP合成技術においてテンプレートとしてリボフラビン自体を使用することができない。
【0018】
第二の問題は通常の技術を使用して製造されたMIPが水における吸着剤として使用されるときの非特異的疎水性結合の発生に関する。マトリックスモノマーの疎水性のため、ほとんどのターゲットは材料が純粋な水性媒体に使用されるときにポリマー表面に対して非特異的に吸着する。
【0019】
従って、この非特異的結合を抑制するための手段を見出さなければならない。水リッチ媒体から親水性生体分子、例えばリボフラビン又はその類似体を強くかつ特異的に吸着又は結合することができるMIP吸着剤を得るためには、(1)水においてターゲット又はテンプレート分子を結合できるインプリント部位及び(2)非特異的結合の抑制、に導くアプローチを見出さなければならない。
【0020】
水においてテンプレートを結合できるインプリント部位を達成するためには、次の条件、即ち(a)通常の溶剤に可溶であること、(b)重合条件下で安定であること、(c)リボフラビンと近い構造及び類似した形状を持ち、水性媒体においてリボフラビンを適応させることができるインプリント部位を生じること、を満足するリボフラビン類似体をテンプレートとして使用してもよい。
【発明の開示】
【0021】
従って、本発明は水又は水性媒体においてターゲット分子を選択的に結合することができる新規な水相溶性分子インプリントポリマー(“水性MIP”)に関する。
【0022】
さらに本発明は下記工程を含む方法によって得られる、水又は水性媒体においてターゲットを選択的に結合できる新規な水性MIPに関する:
(a)ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記ターゲット又はテンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学手段によって前記テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【0023】
特別な場合において、本発明はイミド、又はイミド含有化合物、例えばベンジルウラシル、リボフラビン又はその類似体の分子認識及び結合のための水性MIPを提供する。リボフラビンを結合するように設計されたかかる水性MIPは水性条件、例えば液体食品及び飲料、例えばビールにおいて一般的に行なわれている条件下でリボフラビンを選択的に結合することができる。
【0024】
また、特別な場合において、本発明は下記工程を含む方法によって得られる、水又は水性媒体においてイミド、又はイミド含有化合物、例えばベンジルウラシル、リボフラビン又はその類似体を結合することができる新規な分子インプリントポリマーを提供する:
(a)イミド又はイミド含有ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記イミド又はイミド含有テンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学的に前記イミド又はイミド含有テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【0025】
さらなる側面において、本発明はリボフラビンの構造的類似体を使用して得られる、水又は水性媒体においてリボフラビン及びその誘導体を結合することができる水性MIPを提供する。これらは例えばリボフラビンテトラカルボン酸エステルを含み、それはアルカノール酸無水物と糖ヒドロキシル基の単純な一工程エステル化反応によって合成されてもよい。
【0026】
本発明はまた、ドナー−アクセプター−ドナー(DAD)水素結合モチーフを含む官能モノマーを使用する水性MIPを提供し、それはここではピリジン及びピリミジンベースのモノマーを含むものとして規定される。例としては、2,6−ビス(アクリルアミド)−ピリジン(BAAPy)、又は2,4−ビス(アクリルアミド)ピリミジンの如きピリミジンベースのモノマーの種類があり、それらはイミドに対して強い結合を示す。これらのモノマーは図2c(A)に示された一般構造の6置換2,4−ビス(アミド)ピリミジンに基づく(式中、Rはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−NC10”であり、R及びRはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−CH=CH”である)。一つの例は図2c(B)に示された2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノ−ピリミジンである。別の例は2,4−ビス(メタクリルアミド)−6−ピペリジノ−ピリミジンである(式中、Rはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−NC10”であり、R及びRはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−C(CH)=CH”である)。
【0027】
さらに別の側面では、本発明は非特異的結合を抑制するために使用される二つの異なる方法に関する。
【0028】
第一の方法は親水性コモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリセロール−1−アクリレート、又はグリセロール−1−メタクリレートのモノマー混合物への添加に基づく方法である。あるいは、その方法は重合/共重合反応の開始時においても、加水分解可能な架橋モノマー、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(PETRA)、メチレンジアクリルアミド又はエチレンジメタクリルアミドのモノマー混合物への添加を使用してもよい。これらの親水性モノマーは加水分解後に極性官能基を生じ、ポリマーマトリックスに親水性を付与し、非特異的に疎水性的に操られる結合の減少に導く。
【0029】
第二の方法は合成後のMIP表面の後変性及びそれによる“親水性化”のための方法である。これはエポキシド又はエステル基の如き加水分解可能な官能基を含む架橋又は官能モノマーの使用に基づく。通常の方法を使用してこれらの部分の重合後、ポリマーの表面はこれらの基を加水分解し親水性表面を与えることによって後処理されることができる。嵩高い加水分解剤を使用してこの方法は特に所定のサイズを越える細孔の選択的親水性化を可能とする。即ち、十分に大きなサイズの細孔内に位置される加水分解可能な官能基だけが加水分解される。これは図4に概略的に示される。その方法は結合部位が生物学的レセプターに見出される状況と類似した特定の疎水性を維持することを可能とする。
【0030】
本発明はまた、食物からのリボフラビン又はリボフラビン誘導体の抽出のための前記水性MIPの使用、及び食品加工における本発明の使用に関する。
【0031】
本発明はさらに、クロマトグラフィにおける分取のため、化学センサーにおける分析試料の前処理のため、及び生物活性化合物の合成のためのリアクターとしての前記水性MIPの使用に関する。
【0032】
図面の簡単な記述
図1は分子インプリントの背後にある原理を概略的に示す。
図2aは比較のために1−(ベンジル)ウラシル及びリボフラビンの構造を示す。
図2bは2,6−ビス(アクリルアミド)ピリジン(BAAPy)の構造を示す。
図2cは(a)6置換2,4−ビス(アミド)ピリミジンの一般構造、及び(b)2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジンの構造を示す。
図2dは官能モノマー(BAAPy)とリボフラビンの間の1:1錯体の構造を示す。
図3はテンプレートとしてリボフラビンテトラアセテートを、官能モノマーとしてBAAPyを使用する水性MIPの合成を示す。
図4は水相溶性MIP(水性MIP)の合成及び細孔サイズ選択的表面親水性化のための方策を示す。
図5はPETRAに基づく加水分解可能な架橋モノマーの構造を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
定義
ここで使用される“ターゲット”という用語は“テンプレート”と相互に交換可能に使用される。
【0034】
ここで使用される“通常の方法”という用語はMIPの調製のために最も広く使用されるプロトコルに関し、“非共有方法(non−covalent method)”という用語と相互に交換可能に使用される。
【0035】
“通常の溶剤”という用語は通常の方法に含まれる重合又は共重合プロセスに使用される溶剤に関し、それは細孔形成溶剤(ポロゲン)及び低度から中度の極性を持つ非極性溶剤を含む。
【0036】
ここで使用される“通常のMIP”という用語は通常の方法を使用して生成されたMIPに関する。
【0037】
ここで使用される“後変性”又は“親水性化”は相互に交換可能に使用され、非特異的結合の抑制のために記載された第二方法に関する。その方法は所定サイズにわたる細孔の選択的親水性化を可能とし、結合部位が生物学的レセプターに見出される状況と類似した特定の疎水性を維持することを可能とする。その方法は図4に概略的に示される。
【0038】
ここで使用される“イミド”という用語は“=NH”基の二つの自由な原子価が(“O=C−NH−C=O”のような)アシル基に結合される化合物に関し、例えばフタルイミドに見出される(H.Benett編、Concise Chemical and Technical Dictionary,Edward Arnold,Pub.,英国,1986)。
【0039】
ここで使用される“ドナー−アクセプター−ドナー(DAD)水素モチーフを含有する官能モノマー”という用語は明細書に記載されるように、ピリジン及びピリミジンベースのモノマーを含む一般的な用語として意図される。
【0040】
ここで使用される“親水性モノマー”という用語は“親水性コモノマー”という用語と相互に交換可能に使用され、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリセロール−1−アクリレート、又はグリセロール−1−メタクリレートの如きモノマーを含むことを意図される。
【0041】
ここで使用される“親水性架橋モノマー”という用語は架橋反応を可能とする三つ以上の官能基を有するモノマーに関する。例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETRA)、メチレンジアクリルアミド又はエチレンジメタクリルアミドの如き加水分解可能な架橋モノマーを含む。
【0042】
“架橋剤”という用語はここでは“架橋モノマー”という用語と相互に交換可能に使用される。架橋剤の典型例はEDMA(エチレングリコールジメタクリレート)である。
【0043】
新規な水性MIP
本発明は水又は水性媒体においてターゲット分子を選択的に結合することができる新規な水相溶性分子インプリントポリマー(水性MIP)に関する。
【0044】
さらに本発明は下記工程を含む方法によって得られる、水又は水性媒体においてターゲットを選択的に結合することができる新規な水性MIPに関する:
(a)ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記ターゲット又はテンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学手段によって前記テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【0045】
この方法は実施例4〜8及び10〜12に示されている。
【0046】
一つの特別な場合において、本発明はイミド、又はイミド含有化合物、例えばベンジルウラシル、リボフラビン又はその類似体の分子認識及び結合のために水性MIPを提供する。
【0047】
例えばリボフラビンを結合するように設計された水性MIPは液体食品及び飲料、例えばビールで一般に行なわれる条件の如き水性条件下でリボフラビンを選択的に結合することができる。これらの水性MIPは水及び水性媒体においてリボフラビンに対して強い親和性及び選択性を示す。
【0048】
また、この特別な場合において、本発明はイミド又はイミド含有類似体が工程(a),(c),及び(d)においてテンプレートとして使用されることを除いて、テンプレート又はターゲットに対して上で与えられたような工程を含む方法によって得られる、水又は水性媒体においてベンジルウラシル、リボフラビン又はその類似体の如きイミド含有化合物又はイミドを結合することができる新規な分子インプリントポリマーを提供する。即ち、この方法のこれらの工程は下記の通りである:
(a)選択されたイミド又はイミド含有ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記イミド又はイミド含有ターゲット類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学的に前記イミド又はイミド含有ターゲット類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【0049】
イミド又はイミド含有ターゲットとしてのリボフラビンの場合に対して、その方法は実施例4及び5において詳細に例示され記載されている。
【0050】
水においてテンプレートを結合できるインプリント部位を達成するためには、次の条件、即ち(a)通常の重合媒体又は溶剤に可溶であること、(b)重合条件下で安定であること、(c)リボフラビンと近い構造及び類似した形状を持ち、水性媒体においてリボフラビンを適応させることができるインプリント部位を生じること、を満足するリボフラビン類似体をテンプレートとして使用してもよい。
【0051】
本発明では、使用されたリボフラビンの構造的類似体は例えばリボフラビンテトラカルボン酸エステルの形を有するものを含んでもよく、それはアルカノール酸無水物と糖ヒドロキシル基の単純な一工程のエステル化反応によって合成されてもよい。例としては、リボフラビン酢酸テトラエステル、リボフラビンプロピオン酸テトラエステル及びリボフラビン蟻酸テトラエステルがある。リボフラビン酢酸テトラエステル及びリボフラビンプロピオン酸テトラエステルの合成はそれぞれ実施例1及び2に詳細に記載されている。
【0052】
本発明はまた、ドナー−アクセプター−ドナー(DAD)水素結合モチーフを含む官能モノマーを使用する水性MIPを提供し、それはここではピリジン及びピリミジンベースのモノマーを含むものとして規定される。例としては、2,6−ビス(アクリルアミド)−ピリジン(BAAPy)、又は2,4−ビス(アクリルアミド)ピリミジンの如きピリミジンベースのモノマーの種類があり、それらはイミドに対して強い結合を示す。これらのモノマーは図2c(A)に示された一般構造の6置換2,4−ビス(アミド)ピリミジンに基づく(式中、Rはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−NC10”であり、R及びRはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−CH=CH”である)。一つの例は図2c(B)に示された2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノ−ピリミジンである。別の例は2,4−ビス(メタクリルアミド)−6−ピペリジノ−ピリミジンである(式中、Rはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−NC10”であり、R及びRはいかなる基であってもよいが、好ましくは“−C(CH)=CH”である)。官能モノマー2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジン及び2,4−ビス(アクリルアミド)−4−エトキシピリミジンの合成は実施例3に記載されている。
【0053】
共重合反応のために使用される典型的なフリーラジカル開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であるが、他の好適な開始剤を使用してもよい。
【0054】
共重合反応のために使用される典型的な架橋剤又はモノマーはエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)である。
【0055】
従って、上記のリボフラビン類似体及び官能モノマーの選択を使用して、新規な水性MIPは記載された方法に従って合成される。
【0056】
非特異的結合を抑制する方法
さらに別の側面では、本発明は非特異的結合を抑制するために使用される二つの異なる方法に関する。従って、本発明はインプリントポリマーへの非特異的な結合を抑制することができる水性MIPを提供する。
【0057】
第一の方法は親水性コモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリセロール−1−アクリレート、又はグリセロール−1−メタクリレートのモノマー混合物への添加に基づく方法である。あるいは、その方法は重合/共重合反応の開始時においても、加水分解可能な架橋モノマー、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(PETRA)、メチレンジアクリルアミド又はエチレンジメタクリルアミドのモノマー混合物への添加を使用してもよい。これらの親水性モノマーは加水分解後に極性官能基を生じ、ポリマーマトリックスに親水性を付与し、非特異的に疎水性的に操られる結合の減少に導く。
【0058】
低い非特異的結合を示すこれらの“特別な”水性MIPの合成は実施例10〜12に例示され詳細に記載される。
【0059】
第二の方法は合成後のMIP表面の後変性及びそれによる“親水性化”のための方法である。これはエポキシド又はエステル基の如き加水分解可能な官能基を含む架橋又は官能モノマーの使用に基づく。通常の方法を使用してこれらの部分の重合後、ポリマーの表面はこれらの基を加水分解し親水性表面を与えることによって後処理されることができる。嵩高い加水分解剤を使用してこの方法は特に所定のサイズを越える細孔の選択的親水性化を可能とする。即ち、十分に大きなサイズの細孔内に位置される加水分解可能な官能基だけが加水分解される。これは図4に概略的に示される。その方法は結合部位が生物学的レセプターに見出される状況と類似した特定の疎水性を維持することを可能とする。
【0060】
この方法をさらに説明するため、一連の新規な加水分解可能な架橋モノマーがまず合成され、それはアシル部分の残っている基の能力に関して異なる。これらは図5に示されるようにPETRAのモノ、ジ又はトリクロロアセテートであることができる。MIPは通常の方法によってかかる架橋剤を使用して作られ、その後MIPは細孔サイズ選択的加水分解工程を受ける。これはテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(QOH)を使用して行なわれ、そこでアルキル基のサイズはQOHが小さすぎて透過できない細孔から除外されるように選択される。このようにして大きな細孔と関連されたエステル基は付着され、対応する表面は親水性化される。この一般的な方法は通常の方法又は同種の方法を使用して作られたMIPの表面を親水性化するために適用されてもよい。
【0061】
本発明による水性MIPは食品からの親水性ターゲット又はテンプレート分子の抽出のために使用されてもよく、食品加工用途に使用されてもよい。一つの特別な場合は食品からのリボフラビン又はリボフラビン誘導体の抽出に対する用途である。実施例9は本発明による水性MIPがビールからリボフラビンをうまく抽出するために使用されうることを示す。MIPの別の成功した用途は実施例8に記載されたクロマトグラフィ抽出によって具体化され示されており、そこでは本発明による方法を使用して合成されたMIP上にリボフラビン類似体、1−(ベンジル)ウラシルがかなり長期間保持されている。
【0062】
本発明はさらに、分析試料前処理のため、分取のため、クロマトグラフィ技術、膜ベース分離、バッチ方式ベースの分離において、化学センサーにおいて、及び生物活性化合物の合成のためのリアクターとしての前記水性MIPの使用に関する。
【実施例】
【0063】
本発明は多数の限定されない実施例を参照してより詳細に記載されるだろう。
【0064】
A.リボフラビン類似体の合成(実施例1〜2)
実施例1:リボフラビン酢酸テトラエステルの合成
2.65g(7mmol)のリボフラビン、2.9g(35mmol)の酢酸ナトリウム及び50mLの酢酸無水物を100mlの丸底フラスコ中に秤量する。その混合物は明るいオレンジ色の懸濁液として出現する。フラスコを濃いオレンジ−赤色の溶液が得られるまで80〜90℃で油浴中で加熱する。次いでクリアな溶液を約200mlの氷を含む三角フラスコ中に注ぐ。次いで混合物を固体の炭酸ナトリウム(NaHCO)を使用して中和し、3×100mLのクロロホルム(CHCl)で抽出する。有機画分を組み合わせ、硫酸マグネシウム(MgSO)上で乾燥する。次いで溶剤を減圧下で蒸発させ、明るいオレンジ色の固体を得る。粗生成物を最小量のメタノール(MeOH)で再構成し、次いで水の添加によって沈澱させる。
【0065】
実施例2:リボフラビンプロピオン酸テトラエステルの合成
2.65g(7mmol)のリボフラビン、3.4g(35mmol)のプロピオン酸ナトリウム及び50mLのプロピオン酸無水物を100mlの丸底フラスコ中に秤量する。その混合物は明るいオレンジ色の懸濁液として出現する。フラスコを濃いオレンジ−赤色の溶液が得られるまで80〜90℃で油浴中で加熱する。次いでクリアな溶液を約200mlの氷を含む三角フラスコ中に注ぐ。次いで混合物を固体のNaHCOを使用して中和し、3×100mLのCHClで抽出する。有機画分を組み合わせ、MgSO上で乾燥する。次いで溶剤を減圧下で蒸発させ、明るいオレンジ色の固体を得る。粗生成物を最小量のMeOHで再構成し、次いで水の添加によって沈澱させる。
【0066】
B.官能モノマーの合成(実施例3)
実施例3:2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジン及び2,4−ビス(アクリルアミド)−4−エトキシピリミジンの合成
合成は2工程で行なわれる:
(1a)2,4−(ジアミノ)−6−ピペリジノピリミジンの合成
2,4−(ジアミノ)−6−ピペリジノピリミジンをRothらによって公開された方法(JACS,72,1924(1950)参照)に従って合成する。14.48gの4−クロロ−(2,6−ジアミノ)ピリミジン及び50mLのピペリジンを丸底フラスコで混合し、撹拌する。温度をゆっくりと100℃まで上昇する。この温度で2時間半後、20mLのエタノールをフラスコに加え、生じた混合物を濾過する。沈殿物を50mLのエタノールで洗浄する。濾液を減圧下で蒸発し、固体残留物を約200mLの水で再構成する。混合物を80℃に加熱し、次いで強い撹拌下で冷却する。2,4−(ジアミノ)−6−ピペリジノピリミジンはオフホワイトの固体の形で得られる。
【0067】
(1b)2,4−ジアミノ−6−エトキシピリミジンの合成
1.8gのナトリウムを250mLの丸底フラスコ中で200mLのエタノールに溶解してナトリウムエトキシドを形成する。次いで7.2gの4−クロロ−(2,6−ジアミノ)ピリミジンを丸底フラスコ中に秤量する。その混合物を7日間還流する。この期間後、溶剤を減圧下で蒸発し、オフホワイトの固体の形の2,4−ジアミノ−6−エトキシピリミジンを得る。さらなる精製は全く必要でない。
【0068】
(2a)2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジンの合成
(1a)に記載された方法によって得られた2.05g(10mmol)の生成物を100mLのクロロホルム中に4.2mLのトリエチルアミンの存在下で1.8mL(2当量)の塩化アクリロイルと反応させる。添加は液滴状でかつ氷浴での冷却下で実施される。添加を完了した後、反応混合物を数時間室温で撹拌する。溶剤を減圧下で蒸発し、次いで100mLの水を固体残留物に添加してトリエチルアミンの塩酸塩(TEA.HCl)を溶解する。次いで混合物を3×100mLのCHClで抽出し、有機相を組み合わせ、MgSO上で乾燥し、溶剤を最終的に減圧下で蒸発する。得られた固体化合物はエタノールから再結晶化された。
【0069】
(2b)2,4−ビス(アクリルアミド)−6−エトキシピリミジンの合成
(1b)に記載された方法によって得られた1.54g(10mmol)の生成物を100mLのクロロホルム中に4.2mLのトリエチルアミンの存在下で1.8mLの塩化アクリロイルと反応させる。添加は液滴状でかつ氷浴での冷却下で実施される。添加を完了した後、反応混合物を数時間室温で撹拌する。溶剤を減圧下で蒸発し、次いで100mLの水を固体残留物に添加してTEA.HCl塩を溶解する。次いで混合物を3×100mLのCHClで抽出し、有機相を組み合わせ、MgSO上で乾燥し、溶剤を最終的に減圧下で蒸発する。最終的に白色固体が得られ、さらなる精製のための必要が全くない。
【0070】
C.水性MIPの合成(実施例4〜7)
実施例4:リボフラビン類似体としてのリボフラビンテトラアセテート及び官能モノマーとしてのBAAPyを使用する水性MIPの製造
0.22g(1mol)のBAAPyを5.6mLのCHClにおいて0.55g(1mmol)のリボフラビンテトラアセテートと混合する。次いで3.8mL(20mmol)のEDMAを溶液に加え、最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加える。混合物を重合管に移し、10分間Nでパージし、最後に火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応は熱的に開始され、温度調節された水浴で24時間60℃で重合される。
【0071】
実施例5:リボフラビン類似体としてのリボフラビンテトラアセテート及び官能モノマーとしての2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジンを使用する水性MIPの製造
0.3g(1mmol)の2,6−ビスアクリルアミド−4−(ピペリジノ)ピリミジンを5.6mLのCHClにおいて0.55g(1mmol)のリボフラビンテトラアセテートと混合する。次いで3.8mL(20mmol)のEDMAを溶液に加え、最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータAIBNを加える。混合物を重合管に移し、10分間Nでパージし、最後に火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応は熱的に開始され、温度調節された水浴で24時間60℃で重合される。
【0072】
実施例6:ターゲットとしての1−(ベンジル)ウラシル及び官能モノマーとしてのBAAPyを使用する水性MIPの製造
0.22g(1mmol)のBAAPyを5.6mLのCHClにおいて0.2g(1mmol)の1−(ベンジル)ウラシルと混合する。次いで3.8mL(20mmol)のEDMAを溶液に加え、最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータAIBNを加える。混合物を重合管に移し、10分間Nでパージし、最後に火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応は熱的に開始され、温度調節された水浴で24時間60℃で重合される。
【0073】
実施例7:ターゲットとしての1−(ベンジル)ウラシル及び官能モノマーとしての2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジンを使用する水性MIPの製造
0.3g(1mmol)の2,6−ビスアクリルアミド−4−(ピペリジノ)ピリミジンを5.6mLのCHClにおいて0.2g(1mmol)の1−(ベンジル)ウラシルと混合する。次いで3.8mL(20mmol)のEDMAを溶液に加え、最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータAIBNを加える。混合物を重合管に移し、次いで火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応は熱的に開始され、温度調節された水浴で24時間60℃で重合させる。
【0074】
実施例8:選択的吸着剤として使用するための実施例4〜7に記載されたMIPのクロマトグラフィ評価
温度調節された浴で24時間後、重合管でモノリスが得られる。管は打ちこわされ、モノリスは小さな粒子に破壊される。次いでこれらを円筒濾紙に移し、ソックスレー抽出装置に置く。抽出は抽出溶媒としてメタノールを使用して行なわれ、48時間続けられる。次いで材料は実験室用乳針及び乳棒を使用して粉砕され、生じた不規則な形状の粒子を25μm〜50μmに篩分けする。25〜50μm画分に含まれる微粒子(<25μm)を除去するために、材料は次いで上澄みがクリアになるまでメタノール(80%)と水(20%)の混合物を使用して沈降される。次いで粒子はHPLCカラム(125mm×4mm内径)中に充填される。実施例4に記載されたポリマーは90%水(5%エタノール含有)及び10%アセトニトリルにおけるリボフラビンの54分の保持を示し、一方非インプリントポリマーは6.4分の保持時間を示した。実施例6に記載されたポリマーは100%アセトニトリルにおける1−(ベンジル)ウラシルに対する34分の保持を示し、一方非インプリントポリマーは1−(ベンジル)ウラシルを2.7分間保持した。さらに、実施例7に記載されたポリマーは同じ条件下で1−(ベンジル)ウラシルを54分間保持し、一方非インプリントポリマーは1−(ベンジル)ウラシルを3.2分間保持した。
【0075】
実施例9:ビールからのリボフラビンの抽出のための水性MIPの使用
実施例4に記載された水性MIPはビールからリボフラビンを選択的に結合することができる。即ち、10mLビール試料を50mgのポリマーと平衡にすることによって約40%のリボフラビンが水性MIPによって吸着され、一方約20%が非インプリント対照ポリマーに吸着された。
【0076】
C.低下した非特異的結合を示す分子インプリントポリマーの合成(実施例10〜12)
実施例10:実施例4〜7からであるが親水性コモノマーの添加によって製造されたMIP
0.22g(1mmol)のBAAPyを5.6mLのCHClにおいて0.55g(1mmol)のリボフラビンテトラアセテートと混合する。次いで3.8mL(20mmol)のEDMA及び2mLの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を溶液に加える。最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータAIBNを上の混合物に溶解する。溶液を重合管に移し、10分間Nでパージし、最後に火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応を熱的に開始し、温度調節された水浴で24時間60℃で重合させる。
【0077】
実施例11:リボフラビン類似体としてのリボフラビンテトラアセテート及び官能モノマーとしてのBAAPyを親水性架橋モノマーとともに使用するMIPの製造
0.22g(1mmol)のBAAPyを5.6mLのCHClにおいて0.55g(1mmol)のリボフラビンテトラアセテートと混合する。次いで20mmolのペンタエリスリトールトリアクリレートを溶液に加え、最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータAIBNを加える。混合物を重合管に移し、10分間Nでパージし、最後に火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応を熱的に開始し、温度調節された水浴で24時間60℃で重合させる。重合後、ポリマーは実施例8に記載のように加工される。生じたポリマーは実施例4及び5に記載されたポリマーと比較して大きく低下した非特異的結合を示す。
【0078】
実施例12:リボフラビン類似体としてのリボフラビンテトラアセテート及び官能モノマーとしてのBAAPyを加水分解可能な架橋モノマーとともに使用するインプリントポリマーの製造及び塩基加水分解による後変性
0.22g(1mmol)のBAAPyを5.6mLのCHClにおいて0.55g(1mmol)のリボフラビンテトラアセテートと混合する。次いで20mmolのペンタエリスリトールトリアクリレートモノ(2−クロロアセテート)を溶液に加え、最後に40mg(モノマーの1重量%)のアゾイニシエータAIBNを加える。混合物を重合管に移し、10分間Nでパージし、最後に火炎バーナを使用して管を封止する。重合反応を熱的に開始し、温度調節された水浴で24時間60℃で重合させる。重合及び実施例8に記載のような加工後、ポリマー粒子は高温で24時間メタノールにおいてテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(又はより長い鎖の4級アンモニウムヒドロキシド)の溶液において懸濁され撹拌される。生じたポリマーは実施例4及び5に記載されたポリマーと比較して大きく低下した非特異的結合を示す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】分子インプリントの背後にある原理を概略的に示す。
【図2a】比較のために1−(ベンジル)ウラシル及びリボフラビンの構造を示す。
【図2b】2,6−ビス(アクリルアミド)ピリジン(BAAPy)の構造を示す。
【図2c】(a)6置換2,4−ビス(アミド)ピリミジンの一般構造、及び(b)2,4−ビス(アクリルアミド)−6−ピペリジノピリミジンの構造を示す。
【図2d】官能モノマー(BAAPy)とリボフラビンの間の1:1錯体の構造を示す。
【図3】テンプレートとしてリボフラビンテトラアセテートを、官能モノマーとしてBAAPyを使用する水性MIPの合成を示す。
【図4】水相溶性MIP(水性MIP)の合成及び細孔サイズ選択的表面親水性化のための方策を示す。
【図5】PETRAに基づく加水分解可能な架橋モノマーの構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又は水性媒体においてターゲット又はテンプレートを結合することができるインプリントされた部位を持つ水相溶性分子インプリントポリマー(水性MIP)。
【請求項2】
下記工程を含む方法によって得られる、水又は水性媒体においてターゲットを選択的に結合することができる水性MIP:
(a)ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記テンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学手段によって前記テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【請求項3】
テンプレートがイミド、又はイミド含有化合物、例えばベンジルウラシル、リボフラビン又はその類似体である請求項1又は2に記載の水性MIP。
【請求項4】
下記工程を含む方法によって得られる請求項3に記載の水性MIP:
(a)イミド又はイミド含有ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記イミド又はイミド含有テンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学的に前記イミド又はイミド含有テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【請求項5】
イミド又はイミド含有テンプレートがリボフラビン又はその類似体である請求項3又は4に記載の水性MIP。
【請求項6】
使用されたリボフラビンの構造的類似体がリボフラビンテトラカルボン酸エステル、例えばリボフラビン酢酸テトラエステル、リボフラビンプロピオン酸テトラエステル及びリボフラビン蟻酸テトラエステルの群から選択される請求項5に記載の水性MIP。
【請求項7】
選択された官能モノマーがドナー−アクセプター−ドナー(DAD)水素結合モチーフを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の水性MIP。
【請求項8】
さらにインプリントポリマーに対する非特異的結合を抑制することができる請求項1〜7のいずれかに記載の水性MIP。
【請求項9】
非特異的結合の抑制がモノマー混合物への親水性コモノマーの添加によって得られる請求項8に記載の水性MIP。
【請求項10】
親水性コモノマーが2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリセロール−1−メタクリレート、及びグリセロール−1−アクリレートからなる群から選択される請求項9に記載の水性MIP。
【請求項11】
非特異的結合の抑制がモノマー混合物への親水性架橋モノマーの添加によって得られる請求項8に記載の水性MIP。
【請求項12】
親水性架橋モノマーがペンタエリスリトールトリアクリレート(PETRA)、メチレンジアクリルアミド又はエチレンジメタクリルアミドからなる群から選択される請求項11に記載の水性MIP。
【請求項13】
下記工程を含む請求項1又は2に記載の水性MIPの製造方法:
(a)ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記ターゲット又はテンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学的に前記テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【請求項14】
下記工程を含む請求項3〜12のいずれかに記載の水性MIPの製造方法:
(a)イミド又はイミド含有ターゲット又はテンプレートの選択された構造的類似体を与える;
(b)選択されたフリーラジカル開始剤を含有する好適な重合媒体又は溶剤において一種以上の選択された官能モノマー及び一種以上の選択された架橋剤を与える;
(c)前記重合媒体において前記イミド又はイミド含有テンプレート類似体の存在下で前記官能モノマー及び前記架橋剤を共重合する;
(d)溶剤抽出によって又は光化学的に前記イミド又はイミド含有テンプレート類似体を除去する;
(e)分子インプリントポリマー(水性MIP)を得る;
(f)所望により前記水性MIPを後変性(“親水性化”)して非特異的疎水性結合を減らす。
【請求項15】
選択されたイミド又はイミド含有ターゲット又はテンプレートがベンジルウラシル、リボフラビン、又はその類似体である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
使用されたリボフラビンの類似体がリボフラビンテトラカルボン酸エステル、例えばリボフラビン酢酸テトラエステル、リボフラビンプロピオン酸テトラエステル及びリボフラビン蟻酸テトラエステルの群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
選択された官能モノマーがドナー−アクセプター−ドナー(DAD)水素結合モチーフを含有する請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
水性MIP又は通常のMIPへの非特異的結合の抑制方法であって、親水性コモノマー又は親水性架橋モノマーが工程(b)においてモノマー混合物に添加される方法。
【請求項19】
水性MIP又は通常のMIPへの非特異的結合の抑制方法であって、結合部位が特定の疎水性を維持できる所定サイズを越える細孔の選択的親水性化が工程(f)で行なわれる方法。
【請求項20】
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(QOH)が親水性化工程で使用される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固体及び液体の食品、例えばビールからのリボフラビン又はその類似体の抽出のための請求項1〜12のいずれかに記載の水性MIPの使用。
【請求項22】
分析試料前処理のため、分取のため、クロマトグラフィ技術、膜ベースの分離、バッチ方式ベースの分離において、化学センサーにおいて、及び生物活性化合物の合成のためのリアクターとしての請求項1〜12のいずれかに記載の水性MIPの使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519892(P2006−519892A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502783(P2006−502783)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000114
【国際公開番号】WO2004/067578
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505271976)エムアイピー テクノロジーズ アーベー (2)
【Fターム(参考)】