説明

飲料処理装置

【課題】エネルギーの使用効率を向上させ、また、装置全体の大型化を抑制することのできる飲料処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】この飲料処理装置1は、流路ユニット2と、ヒートポンプユニット3と、高温蒸気生成ユニット4とを備えている。流路ユニット2は、飲料を濃縮するための濃縮部21、飲料を殺菌する殺菌部22、及び飲料を冷却する冷却部23、を有している。また、ヒートポンプユニット3は、第1の圧縮機31と、濃縮部21内を流れる飲料を加熱するための凝縮器32と、膨張弁33と、冷却部23内を流れる飲料を冷却するための蒸発器23と、を有している。また、高温蒸気生成ユニット4は、濃縮部21において発生する蒸気を高温高圧にして殺菌部22へと送る第2の圧縮機41を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料を処理するための方法が例えば特許文献1に開示されている。この飲料処理方法は、まず、蒸気で加熱することによって飲料を濃縮し、この濃縮した飲料を超高温加熱処理法(UHT法)によって滅菌を行い、冷却して容器などに充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2930117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した飲料処理方法では、濃縮工程において、ボイラ等により生成した蒸気によって濃縮工程を流れる飲料を加熱している。しかしながら、このボイラによって蒸気を発生させる方法では、エネルギーの使用効率が非常に悪い。また、飲料の濃縮時に発生する高温蒸気は冷却塔などによって冷却させる必要があり、装置全体が大型化してしまう。このため、本発明は、エネルギーの使用効率を向上させ、また、装置全体の大型化を抑制することのできる飲料処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る飲料処理装置は、内部に飲料が流れる流路ユニットであって、飲料を濃縮するための濃縮部、前記濃縮部の下流側に配置され飲料を殺菌する殺菌部、及び前記殺菌部の下流側に配置され飲料を冷却する冷却部、を有する前記流路ユニットと、第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機の吐出側に接続され前記濃縮部内を流れる飲料を加熱するための凝縮器と、前記凝縮器の下流側に接続される膨張弁と、前記膨張弁の下流側に接続され前記冷却部内を流れる飲料を冷却するための蒸発器と、を有し、内部で冷媒が循環するヒートポンプユニットと、前記濃縮部に吸入側が接続されるとともに、前記殺菌部に吐出側が接続されている第2の圧縮機と、を備えている。
【0006】
この飲料処理装置によれば、ヒートポンプユニットの凝縮器によって濃縮部内を流れる飲料を加熱するとともに、蒸発器によって冷却部内を流れる飲料を冷却しているために、エネルギーの使用効率を向上させることができる。また、第2の圧縮機は吸入側が濃縮部に接続されており、吐出側が殺菌部に接続されているために、濃縮部において飲料を加熱することによって発生した蒸気を第2の圧縮機によって圧縮して高温高圧の蒸気とし、これを殺菌部において飲料を加熱するために必要な加熱源とすることができる。これにより、エネルギー効率をさらに向上させることができるとともに、蒸気の冷却を殺菌部での熱交換によって行うことができるために、冷却塔の設置が不要となり装置の大型化を抑制することができる。
【0007】
上記凝縮器は、濃縮部内に設置されていることが好ましい。
【0008】
また、上記冷却部及び蒸発器は、多管式熱交換器により構成することが好ましい。この場合、例えば、殺菌部から送られてくる飲料を多管式熱交換器のチューブ側に流し、膨張弁から送られてくる冷媒をシェル側に流すように構成することができる。
【0009】
また、上記殺菌部は、多管式熱交換器により構成することが好ましい。この場合は、例えば、第2の圧縮機から送られてくる高温蒸気をシェル側に流し、濃縮部から送られてくる飲料をチューブ側に流すように構成することができる。
【0010】
また、濃縮部内における飲料の加熱が凝縮器だけで十分でない場合は、これを補助的に加熱するための第1の補助加熱手段をさらに備えた構成とすることができる。
【0011】
また、殺菌部内における飲料の加熱が第2の圧縮機からの高温蒸気だけでは十分でない場合は、これを補助的に加熱するための第2の補助加熱手段をさらに備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る飲料処理装置によれば、エネルギーの使用効率を向上させ、また、装置全体の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本実施形態に係る飲料処理装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る飲料処理装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図中の各矢印は、飲料や、冷媒、蒸気の流れ方向を示しており、図1の左側を上流側、右側を下流側と称することとする。
【0015】
飲料処理装置1は、処理対象物である飲料が流れる流路ユニット2と、流路ユニット2内を流れる飲料を加熱したり冷却したりするためのヒートポンプユニット3と、高温蒸気生成ユニット4と、から主に構成されている。
【0016】
[流路ユニット]
流路ユニット2は、飲料を濃縮するための濃縮部21と、その下流において飲料を殺菌するための殺菌部22と、さらにその下流において飲料を冷却するための冷却部23とから主に構成されている。
【0017】
濃縮部21は、飲料供給源(図示省略)から送られてきた飲料を、後述するヒートポンプユニット3の凝縮器32内を流れる冷媒によって加熱して濃縮する部分である。このように凝縮器32内を流れる冷媒で加熱されることによって飲料から発生する蒸気は、排気口211から排出されて高温蒸気生成ユニット4へと送られる。また、濃縮部21には、濃縮部21内を真空にするための真空ポンプ(図示省略)が接続されている。
【0018】
殺菌部22は、濃縮部21から送られてきた飲料を加熱することによって殺菌する部分であり、多管式熱交換器によって構成されている。この多管式熱交換器は公知の多管式熱交換器であって、複数のチューブ(伝熱管)がシェル(胴体)内に収容された構成となっている。そして、濃縮部21から送られてきた飲料がチューブ内を流れ、後述する高温蒸気生成ユニット4の第2の圧縮機41から送られてきた高温蒸気がシェル内を流れる。これにより、チューブ内を流れる飲料が、シェル内を流れる高温蒸気と熱交換することによって加熱されて殺菌される。なお、シェル内を流れる高温蒸気は、飲料に放熱することで凝縮して凝縮水となって排水される。
【0019】
冷却部23は、殺菌部22により加熱殺菌された飲料を冷却する部分であって、多管式熱交換器として構成されており、後述するヒートポンプユニット3の蒸発器を兼ねている。この多管式熱交換器も上述した殺菌部22を構成する多管式熱交換器と同様に複数のチューブがシェル内に収容された構成となっており、チューブ内には殺菌部22から送られてくる飲料が流れ、シェル内には膨張弁33から送られてくる冷媒が流れる。これにより、チューブ内を流れる飲料が、シェル内を流れる冷媒と熱交換することで冷却される。
【0020】
[ヒートポンプユニット]
ヒートポンプユニット3は、第1の圧縮機31,凝縮器32,膨張弁33,蒸発器23が環状に接続されており、この内部を冷媒が循環するように構成されている。なお、冷媒としては、例えば、R410Aや、R407C、R134aなどを挙げることができる。第1の圧縮機31は、駆動装置(図示省略)によって駆動され、吸引した冷媒を内部で圧縮して高圧・高温の気体とし、凝縮器32側へと吐出する。
【0021】
凝縮器32は、流路ユニット2の濃縮部21内に設置されており、内部を流れる冷媒を濃縮部21内の飲料と熱交換することで飲料を加熱する。凝縮器32内を流れる冷媒は、飲料に放熱することで凝縮される。なお、凝縮器32は、例えば伝熱性を有する材質でコイル状に形成されていることが好ましい。
【0022】
膨張弁33は、凝縮器32から送られてきた冷媒を減圧して低温低圧の液体とする。蒸発器23は、多管式熱交換器として冷却部23と一体的に構成されており、シェル内には膨張弁33から送られてきた冷媒が流れ、このシェル内を流れる冷媒がチューブ内を流れる飲料と熱交換することにより飲料を冷却する。
【0023】
[高温蒸気生成ユニット]
高温蒸気生成ユニット4は、第2の圧縮機41を有しており、第2の圧縮機41は、吸入側が濃縮部21の排気口211と配管を介して接続されており、吐出側が殺菌部22を構成する多管式熱交換器のシェル側に接続されている。このように構成された第2の圧縮機41は、濃縮部21で発生した蒸気を圧縮して高温の蒸気にしてから殺菌部22へと送る。
【0024】
[作動方法]
次に上述した飲料処理装置1の作動方法について説明する。まず、真空ポンプ(図示省略)を作動させて濃縮部21内の圧力を7〜70kPa程度とし、また、ヒートポンプユニット3を作動させて第1の圧縮機31により圧縮して約50〜90℃程度の高温高圧の気体となった冷媒を凝縮器32へと送る。この状態で、飲料供給源から濃縮部21へと飲料を送ると、濃縮部21において飲料は、凝縮器32内を流れる冷媒と熱交換することによって約40〜80℃程度に加熱され、水分が蒸発することで濃縮する。濃縮した飲料は殺菌部22へと送られ、また、濃縮部21で水分が蒸発することにより発生した蒸気は、排気口211から排出されて第2の圧縮機41へと送られ圧縮されることで約100〜150℃程度の高温の蒸気となり、殺菌部22へと送られる。なお、凝縮器32内を流れる冷媒は、濃縮部21内の飲料に放熱することで凝縮して液体となり膨張弁33へと送られる。
【0025】
殺菌部22へと送られてきた飲料は、高温蒸気生成ユニット4の第2の圧縮機41から送られてくる高温蒸気によって加熱殺菌される。より詳細には、濃縮部21から送られてきた飲料は、殺菌部22を構成する多管式熱交換器のチューブ内を流れており、また、第2の圧縮機41から送られてきた高温の蒸気が多管式熱交換器のシェル内を流れている。このため、殺菌部22においてチューブ内を流れる飲料は、シェル内を流れる高温の蒸気と熱交換して約90〜140℃程度に加熱されて殺菌される。なお、90℃程度であれば120秒程度以内、140℃なら10秒程度以内、加熱することが好ましい。また、シェル内を流れる蒸気は、チューブ内を流れる飲料と熱交換することで冷却され、最終的には凝縮水となって外部へと排水される。
【0026】
殺菌部22において加熱殺菌された飲料は、最終的に冷却部23へと送られて、ヒートポンプユニット3の膨張弁33から冷却部23へと送られてくる冷媒によって冷却される。より詳細には、殺菌部22から送られてくる飲料が、冷却部23を構成する多管式熱交換器のチューブ内を流れ、膨張弁33から送られてくる冷媒が多管式熱交換器のシェル内を流れる。これにより、チューブ内を流れる飲料が、シェル内を流れる冷媒と熱交換することによって冷却される。なお、シェル内を流れる冷媒は、約5〜20℃程度であり、この冷媒によって冷却されることで、飲料は約10〜25℃程度にまで冷却される。シェル内を流れる冷媒は、チューブ内を流れる飲料から受熱することによって蒸発して気体となり、圧縮機31へと送られる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ヒートポンプユニット3の蒸発器は、冷却部23を構成する多管式熱交換器のシェルによって構成されていたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、凝縮器32と同様に、冷却部23に飲料を流し、この冷却部23内に伝熱性の材質を有するコイル状に形成された蒸発器を設置することもできる。
【0028】
また、濃縮部21内における飲料の加熱が凝縮器32だけでは不十分である場合は、濃縮部21内の飲料を補助的に加熱するために、ヒータなどの第1の補助加熱手段を濃縮部21に設けることができる。また、同様に、殺菌部22における飲料の加熱が第2の圧縮機41から送られてくる高温の蒸気だけでは不十分である場合は、殺菌部22内の飲料を補助的に加熱するために、ヒータなどの第2の補助加熱手段を殺菌部22に設けることができる。またさらには、冷却部23より下流側に、過冷却水を用いたさらなる冷却装置を設けて、飲料をより低温まで冷却することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 飲料処理装置
2 流路ユニット
21 濃縮部
22 殺菌部(多管式熱交換器)
23 冷却部及び蒸発器(多管式熱交換器)
3 ヒートポンプユニット
31 第1の圧縮機
32 凝縮器
33 膨張弁
4 高温蒸気生成ユニット
41 第2の圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に飲料が流れる流路ユニットであって、飲料を濃縮するための濃縮部、前記濃縮部の下流側に配置され飲料を殺菌する殺菌部、及び前記殺菌部の下流側に配置され飲料を冷却する冷却部、を有する前記流路ユニットと、
第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機の吐出側に接続され前記濃縮部内を流れる飲料を加熱するための凝縮器と、前記凝縮器の下流側に接続される膨張弁と、前記膨張弁の下流側に接続され前記冷却部内を流れる飲料を冷却するための蒸発器と、を有し、内部で冷媒が循環するヒートポンプユニットと、
前記濃縮部に吸入側が接続されるとともに、前記殺菌部に吐出側が接続されている第2の圧縮機と、
を備えた、飲料処理装置。
【請求項2】
前記凝縮器は、前記濃縮部内に設置されている、請求項1に記載の飲料処理装置。
【請求項3】
前記冷却部及び蒸発器は、多管式熱交換器により構成されている、請求項1または2に記載の飲料処理装置。
【請求項4】
前記殺菌部は、多管式熱交換器により構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の飲料処理装置。
【請求項5】
前記濃縮部内の飲料を加熱するための第1の補助加熱手段をさらに備えた、請求項1から4のいずれかに記載の飲料処理装置。
【請求項6】
前記殺菌部内の飲料を加熱するための第2の補助加熱手段をさらに備えた、請求項1から5のいずれかに記載の飲料処理装置。

【図1】
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