説明

飲料容器用フィッティング

【課題】口金と取付部材との間隙をなくし、異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングを提供する。
【解決手段】弁座部と取付部が一体に設けられた飲料容器の口金と、取付部に支持されたダウンチューブと、ダウンチューブの上端部に嵌合されたガス弁と、ダウンチューブの上端部内部に設けられた飲料弁とを有する。ガス弁は、金属製の芯金31aと柔軟性の大きな弁部材とからなり、芯金の平面外周形状は、直径が一定の定径部311と、定径部より直径が小さい小径部312aを備える。前記平面外周形状は、芯金の中心および定径部を通る第1の直線Aと、中心で第1の直線と直交する第2の直線Bの両方に対して対称な図形であり、ガス弁は、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能であって、弁座部の中央孔を通して交換可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール樽等の飲料容器の口金として固定されて、ディスペンスヘッドと接続するための飲料容器用フィッティングに関するものであり、さらに詳しくは、口金と取付部材との間隙をなくし異物や雨水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビール樽等の飲料容器では、飲料容器に口金が溶接等によって固定されており、その口金にフィッティングがねじ込まれて取り付けられている。そして、そのフィッティングにディスペンスヘッドが接続される。このディスペンスヘッドを介して飲料容器内に二酸化炭素等の圧力ガスを供給し、飲料容器内の飲料を容器外に注出する。従来のフィッティングと口金の取り付け状態を、図17および図18を参照して説明する。
【0003】
図17は、従来のフィッティングを飲料容器に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。図18は、フィッティングおよび口金の部分を示す拡大断面図である。図17は、飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。ビール樽9の上部に設けられた口金91の内側には、フィッティングの取付部材2がねじ込まれて固定されている。また、取付部材2にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が取り付けられている。
【0004】
ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3およびビール弁4は、コイルばねによる付勢力によって閉状態となっている。口金91および取付部材2にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。ディスペンスヘッドと取付部材2とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。
【0005】
ディスペンスヘッドは、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールを容器外に注出させるための装置である。生ビールはダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に注出される。口金91と取付部材2との間からのガス漏れを封止するために、口金91の下部内面と取付部材2との間にはパッキン92が設けられている。
【0006】
飛び出し防止部材8は、取付部材2を口金91から取り外す際に、ビール樽9内のガス圧により取付部材2が飛び出してくるのを防止するものである。ストッパ81が口金91下面に当接することにより、飛び出しを防止する。取り外し工具によりガス弁3を下に押し下げた状態にすると、ビール樽9内から圧力ガスが抜け出るとともにストッパ81が内側に引っ込み、取付部材2が口金91から取り外し可能となる。
【0007】
このような構成のフィッティングは、口金91に取付部材2がねじ込み固定されているとはいえ、口金91と取付部材2との間に微少な隙間が存在する。その隙間から雨水や生ビールが侵入する。隙間から侵入したそれらの汚水は、パッキン92によりビール樽9内への侵入は阻止されるが、口金91と取付部材2との間に長くとどまり、衛生上好ましいものではない。ビール樽を洗浄し高温殺菌する際に、この隙間内の汚水が沸騰して噴出することから、この隙間内に汚水が溜まっていることを確認することができる。この隙間内の汚水は、ビール樽を炎天下に放置した場合などには、熱膨張して隙間からしみ出てくるおそれがあり、さらには口金内に侵入して生ビールを汚染するおそれもある。
【0008】
そこで、本出願の発明者により、下記の特許文献1に記載されたフィッティングが提案されている。特許文献1のフィッティングは、口金の下部内面と取付部材との間の間隙を封止する第1封止部材に加えて、フィッティングの最上部にも第2封止部材を設け、口金と取付部材との間隙に異物や雨水等が侵入しにくくしたものである。
【特許文献1】特開2000−79991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図17、図18に示すような従来のフィッティングでは、口金91と取付部材2との間に異物や汚水等が侵入して溜まってしまい衛生上好ましくない。さらに、パッキン92は、ゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。このように、従来はフィッティングのメインテナンスとして、殺菌・洗浄作業やパッキン92の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0010】
また、特許文献1のようなフィッティングでも異物や汚水等の侵入を完全に防止することは困難である。また、第1封止部材と第2封止部材もゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。したがって、特許文献1のフィッティングでも、メインテナンス作業の頻度を減少させることはできるが、殺菌・洗浄作業や第1封止部材と第2封止部材の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0011】
そこで、本発明は、口金と取付部材との間隙をなくし、異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器用フィッティングは、飲料容器の口金と、前記口金の内周側に設けられた弁座部と、前記口金と一体に設けられた取付部と、上端部が前記取付部に支持された管状のダウンチューブと、前記ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁と、前記ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁とを有し、前記ガス弁は、金属製の芯金と、当該芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材とからなり、前記芯金の平面外周形状は、直径が一定の定径部と、前記定径部に対して直径が小さい小径部を備え、前記定径部および前記小径部からなる平面外周形状は、前記芯金の中心および前記定径部を通る第1の直線と、前記中心において前記第1の直線と直交する第2の直線の両方に対して対称な図形であり、前記ガス弁は、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能であって、前記弁座部の中央孔を通して交換可能なものである。
【0013】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記小径部は、前記第1の直線と平行でかつ前記中心との距離が前記弁座部の中央孔を通過可能な距離である線分を形成するものでもよい。
【0014】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記小径部は、前記定径部と滑らかに連続する曲線をなすものであり、前記小径部と前記第2の直線との2つの交点を結ぶ線分が、前記芯金の平面外周形状の最小の直径となるものであることが好ましい。
【0015】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記小径部をなす曲線は、前記芯金の平面外周形状の最小の直径の両端を通り前記第1の直線と平行な2本の直線の線上または外側に位置するものであることが好ましい。
【0016】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、前記第1の直線の方向を示す刻印が表示されたものであることが好ましい。
【0017】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁の前記刻印は、前記芯金に設けられた凹溝に、前記弁部材の材料が流入固化したものであることが好ましい。
【0018】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、前記芯金と補強金具とを接続して一体化した金具を、前記弁部材と一体成形したものとすることができる。
【0019】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、前記芯金を前記弁部材と一体成形し、さらに補強金具を一体的に接続したものとすることができる。
【0020】
また、本発明の飲料容器用フィッティングは、外周側に雄ねじが形成され、内周側に弁座部が形成されるとともに、飲料容器に直接接合された取付部材と、前記取付部材の雄ねじに螺合された後、前記取付部材と接合されて固定された保護リングと、上端部が前記取付部材に支持された管状のダウンチューブと、前記ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁と、前記ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁とを有し、前記ガス弁は、金属製の芯金と、当該芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材とからなり、前記芯金の平面外周形状は、直径が一定の定径部と、前記定径部に対して直径が小さい小径部を備え、前記定径部および前記小径部からなる平面外周形状は、前記芯金の中心および前記定径部を通る第1の直線と、前記中心において前記第1の直線と直交する第2の直線の両方に対して対称な図形であり、前記ガス弁は、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能であって、前記弁座部の中央孔を通して交換可能なものである。
【0021】
また、本発明の飲料容器用フィッティングのガス弁取付工具は、上記の飲料容器用フィッティングに前記ガス弁を組み付けるための工具であって、前記飲料容器用フィッティングの上面側に固定され、前記ガス弁を円滑に所定位置まで案内するための案内面を有するガイド部と、上下に移動可能な移動部材と、前記移動部材に取り付けられた取付具と、前記取付具の下端に設けられ、前記飲料弁を下方に押し下げるための押下部と、前記取付具の前記押下部より上部に設けられ、前記ガス弁を傾斜状態で支持する支持部とを有するものである。
【0022】
また、本発明の飲料容器用フィッティングのガス弁取外工具は、上記の飲料容器用フィッティングから前記ガス弁を取り外すための工具であって、前記飲料容器用フィッティングの上面側に固定される台座部と、上下に移動可能な移動部材と、前記移動部材に取り付けられた取外具と、前記取外具の下端に設けられ、前記飲料弁を下方に押し下げるための押下部と、前記押下部の直上位置に設けられ、前記ガス弁の内面下部に係合して前記ガス弁を傾斜状態で引き上げる爪部とを有するものである。
【0023】
また、本発明の飲料容器用フィッティング取付方法は、前記口金とは異なる第2の口金が既に取り付けられている飲料容器に、上記の飲料容器用フィッティングを取り付ける方法であって、前記第2の口金を、前記飲料容器との接続部から所定高さを残して切断する手順と、前記口金の飲料容器との接続部を、前記第2の口金の残部と接続可能な形状に形成する手順と、前記口金の接続部を前記第2の口金の残部に密着させて接合する手順とを有するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0025】
飲料容器の口金に取付部と弁座部が一体に設けられているので、口金と取付部材の上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、ガス弁の交換作業も容易に行うことができるので、メインテナンス作業を大幅に軽減することができる。さらに、フィッティングの部品点数を減少させ、飲料容器の製造コストを低減させることができる。それに加えて、従来のフィッティングとの互換性を維持しつつ、口金の外径寸法や重量を減少させることができ、飲料容器の小型軽量化が可能となる。
【0026】
芯金の小径部が線分で構成されているものでは、芯金の製造が簡単となり製造コストを低減することができる。
【0027】
芯金の小径部を定径部と滑らかに連続する曲線によって構成することにより、短径をそのままに小径部を外側に張り出すことができ、芯金の面積を増大させてガス弁の対称性や耐久性を向上させることができる。また、ガス弁を傾斜させて弁座部の中央孔を通過させる際に、通過させるための押し込み力が小径部の全体にわたってほぼ一定となり、ガス弁の組み立て作業や取り外し作業も円滑に行うことができる。
【0028】
芯金に第1の直線の方向を示す刻印を設けたので、ガス弁の傾斜方向を一目で判別でき、取付作業の作業性が大幅に向上する。
【0029】
芯金と補強金具とを接続して一体化した金具を弁部材と一体成形したので、ガス弁の弁部材が芯金および補強金具に強力に接着しており、ガス弁の強度が大きくなり耐久性が向上する。
【0030】
芯金を弁部材と一体成形しそれに補強金具を一体的に接続したので、ガス弁の強度が大きくなり耐久性が向上する。また、ガス弁の製造工程が簡単であり低コストで製造することができる。
【0031】
外周側に雄ねじが形成された取付部材に保護リングを接合したフィッティングでは、従来のフィッティングに使用されていた取付部材を利用して、安価に本発明のフィッティングを製造することができる。
【0032】
ガス弁取付工具を使用すれば、容易にガス弁をフィッティングに組み付けることができる。また、ガス弁取外工具を使用すれば、容易にガス弁をフィッティングから取り外すことができる。これにより、ガス弁の取り付け、取り外し、交換の作業を簡単に行うことができ、フィッティングの保守作業のためのコストを大幅に低減することができる。
【0033】
本発明の飲料容器用フィッティング取付方法によれば、従来の口金が既に取り付けられている飲料容器を改造して本発明のフィッティングを取り付けることができる。これにより、従来の飲料容器を有効に利用して、本発明のフィッティングの導入コストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のフィッティングの断面図である。飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。従来のフィッティングは、図17、図18に示すように口金91の内周にフィッティングの取付部材2をねじ込んで固定したものであったが、本発明のフィッティングでは口金と取付部材が一体となっている。その取付部材を一体とした口金93が、ビール樽9に溶接によって接続固定されて密封容器となっている。口金93には一体的に取付部94が形成されており、口金93の内周側には弁座部95が形成されている。
【0035】
取付部94にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が支持されている。ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3はダウンチューブ5とともにコイルばね6によって上方に付勢されており、口金93内周側の弁座部95に押し付けられている。ビール弁4は、コイルばね7による付勢力によってガス弁3下部の弁座部分に押し付けられている。ガス弁3およびビール弁4は通常状態が閉状態である。
【0036】
口金93にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。口金93の上部内周側には内方に突出する係合突起22が設けられており、ディスペンスヘッドと口金93とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。ディスペンスヘッドにより、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に排出させることができる。
【0037】
ガス弁3は全体形状が環状に形成されており、使用状態では中心軸が垂直方向に向くように配置されている。このガス弁3は、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32がステンレス材等からなる芯金31と一体に成形されたものである。従来のガス弁では、この芯金の外周縁が円形であったが、本発明では、ガス弁3を弁座部95の中央孔を通して交換する必要があるため、芯金31の形状を従来とは異なるものとしている。
【0038】
図2は、ガス弁3を上方から見た平面図である。芯金31の外周縁には、中心に対して対称な2位置に互いに平行な平坦部が設けられている。このため平坦部が設けられた位置での芯金31の直径(短径=平坦部間の距離)は、これと直交する方向の直径(長径)に比較して小さくなっている。この平坦部が設けられた部分は、弁座部95の中央孔を通過可能な寸法となっている。すなわち、芯金31の短径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも小さく、芯金31の長径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも大きくなっている。
【0039】
図3および図4を参照して芯金31の形状をさらに詳しく説明する。図3は、芯金31の形状を示す平面図である。図4は、芯金31の断面図である。この図4は、図3におけるX−X矢視断面を示す図である。芯金31は垂直方向の中心軸Oを有する環状に形成されている。従来の芯金では、上方から見た外周側の輪郭形状(以下、平面外周形状という)が完全に円形である。図3では従来の円形輪郭形状を点線で示している。
【0040】
本発明の芯金31では、平面外周形状が円形の一部を切り取った形状とされており、長軸と短軸を有する形状とされている。ここで、平面外周形状の長軸方向を直線Aとして、短軸方向を直線Bとする。直線Aおよび直線Bは、中心軸Oと1点で交わり、互いに直交している。芯金31の平面外周形状は、円形から点線で示す部分を切り取って、小径部312が形成されている。小径部312は本来の輪郭形状(円形)から直線Aと平行な2つの直線M,Nよりも外側の部分を切り取った形状である。
【0041】
直線M,Nは直線Aと平行であり、両者とも直線Aとの距離はd/2である。したがって、互いに対向する小径部312間の距離(短径)は直線M,N間の距離dに等しい。芯金31の平面外周形状の小径部312以外の部分は直径が一定の定径部311となっている。定径部311の直径すなわち長径は図示の寸法Dとなる。定径部311は円弧形状である。芯金31の平面外周形状は、図3に示すように、直線Aに対して対称形であり、直線Bに対しても対称形である。芯金31の典型的な寸法例としては、長径Dが33mm、短径dは28mmである。弁座部95中央孔の直径は約31.8mmであるから、長径Dは中央孔の直径より大きく、短径dは中央孔の直径より小さくなっている。
【0042】
芯金31の上面には、直線Aの方向(長軸方向)を示す刻印313が形成されている。刻印313は芯金31上面の頂部に直線A方向の浅い溝として形成される。芯金31と弁部材32が一体に成形されてガス弁3として完成したときにも、刻印313は弁部材32から露出した位置となる。ガス弁3として一体に成形する際に、刻印313の溝に弁部材32のゴム材料等が流れ込み、視認性のよい目印となる。
【0043】
後に詳しく説明するように、ガス弁3をダウンチューブ5の上端部に取り付ける際には、ガス弁3を直線Aの方向に傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる必要がある。刻印313を設けることによりガス弁3(芯金31)の直線A方向が一目で判別でき、取付作業の作業性が著しく向上する。刻印313がない場合は、ガス弁3の外側からは芯金31の直線A方向が目視により判別できないため、作業性が悪くなる。
【0044】
図5は、他の実施の形態の芯金31aの構成を示す平面図である。芯金31aは、平面外周形状にさらに改良を加えたものである。芯金31aの平面外周形状も長軸方向の直線Aと短軸方向の直線Bの両者に対して線対称の図形となっている。そして、長径および短径の長さも図3のものと同じであり、長径Dが33mm、短径dは28mmである。短径dは、小径部312aの最小の直径であり、直線Bと小径部312a,312aの交点間の距離となっている。
【0045】
図3に示す芯金31では小径部312が線分で構成されていたが、図5の芯金31aでは小径部312aが滑らかな曲線で構成されている。また、小径部312aを構成する曲線は、円弧で構成される定径部311と滑らかに接続している。そして、小径部312aを構成する曲線は、短径位置を通り直線Aに平行な2直線M,Nよりも外側に張り出す曲線となっている。図5においては、直線M,Nが点線で示されている。曲線の張り出し量は、短径dが28mmに対して、最も張り出した部分の直線B方向の幅eが29mmとなっている。すなわち、小径部312aを構成する曲線は、直線M,Nの外側にそれぞれ最大0.5mm突出している。
【0046】
芯金31aの上面にも、直線Aの方向(長軸方向)を示す刻印313が形成されている。刻印313は、図3に示すものと同様の構成であり、芯金31a上面の頂部に直線A方向の浅い溝として形成される。ガス弁3として一体に成形する際に、刻印313の溝に弁部材32のゴム材料等が流れ込み、視認性のよい目印となる。
【0047】
芯金31aの小径部312aを曲線で構成するのは、以下のような理由である。まず、図3に示すような芯金31を使用したガス弁を傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる実験を繰り返した結果、小径部312の中央部が通過する際の押し込み力が極大となり、その前後では押し込み力がかなり小さくなることが分かった。これは、小径部312の短径部(直線Bとの交点部)以外では、芯金31をさらに外側に張り出すことが可能であることを示している。
【0048】
芯金の平面外周形状は、本来であれば従来のような円形が理想的である。本発明では、芯金に小径部を設けて弁座部95中央孔を通過可能としたものであるが、円形からの切除面積が小さい方が、ガス弁の対称性も向上し耐久性の点でも有利である。図5に示すように、芯金31aの小径部312aを曲線で構成することにより、芯金31aの平面外周形状がより円形に近くなり、ガス弁の対称性や耐久性が向上することになる。また、芯金31aを使用したガス弁を傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる場合は、通過させるための押し込み力が小径部312aの全体にわたってほぼ一定となり、ガス弁の組み立て作業や取り外し作業も円滑に行うことができる。
【0049】
なお、図3および図5に示す芯金を使用したガス弁の耐久試験を行った結果、従来からの耐久性基準を十分に満足することが確認された。具体的には、本発明のガス弁を組み込んだビール樽に対して以下の1〜3の耐久試験を行った。
【0050】
1.ビール樽の内圧を0.1〜3MPa(1〜30気圧)の範囲で変動加圧することを1000回繰り返した。
【0051】
2.ビール樽の内圧を450kPa(4.5気圧)とした後、ビール樽を130℃に加熱、20℃に冷却の加熱冷却を1000回繰り返した。
【0052】
3.ビール樽の内圧を200〜560kPa(2〜5.6気圧)の範囲で変動加圧することを5000回繰り返した。
【0053】
上記の1〜3の各耐久試験のいずれを行った後でも、本発明のガス弁の外観に異常は見られず、また、芯金と弁部材との接着状態にも異常は見られなかった。
【0054】
図6は、本発明のフィッティングにガス弁3を組み付けるための作業工具10の構成を示す図である。作業工具10の下部には、口金93の内面形状に合致して口金93内に嵌入し、口金93に対して固定可能なガイド部11が設けられている。ガイド部11の内面側は下方の内径が小さくなるようなほぼ円錐状の曲面を呈しており、この円錐状の内面によってガス弁3をダウンチューブ5上端の所定位置に円滑に案内するものである。
【0055】
ガイド部11の内面形状はほぼ円錐状の回転面であるが、その断面形状は傾斜角が一定の直線よりも曲線(上に凸の曲線)であることが望ましい。内面上部では傾斜角がほぼ一定で支障ないが、下方に行くに従って傾斜角を大きく(垂直に近く)し、最も下方の部分では傾きが垂直となるような上に凸の曲線が適している。このような内面形状により、弁部材32に傷などを生じることなく、ガス弁3を円滑に組み付けることが可能となる。
【0056】
また、ここでは図示していないが、ガイド部11の外周には、口金93内面の係合突起22と係合可能な係合溝または係合孔が設けられている。ガイド部11を口金93内に嵌入して、垂直な中心軸の回りに所定角度回転させることにより、ガイド部11を口金93に固定することができる。これはディスペンスヘッドを口金93に固定するのと同様の機構である。
【0057】
ガイド部11と基体13とは、枠体12によって互いに固定されている。基体13に対して上下動可能に移動部材14が設けられている。移動部材14の上端部には、L字状に曲がったハンドル15が回動可能に接続されている。ハンドル15のL字状の角部と基体13とが連結部材16によって接続されている。接続部は相対的に回動可能となるように軸支されている。移動部材14、ハンドル15、連結部材16は、リンク機構を構成しており、移動部材14を上下方向に移動させることができる。矢印に示すようにハンドル15を左右に回動させることにより、移動部材14を上下に移動させることができる。
【0058】
移動部材14の下端には、ガス弁3を組み付けるための取付具17が取り付けられている。取付具17は移動部材14から取り外すこともでき、他の工具と交換することができる。取付具17を取り外して、フィッティングからガス弁3を取り外すための取外具18を取り付ければ、作業工具10はガス弁3を取り外すための工具として使用できる。
【0059】
取付具17の下端側には、ビール弁4を下方に押し下げるための押下部171が設けられている。そして、押下部171の上方には、支持突起172と支持板173が設けられている。押下部171、支持突起172、支持板173がガス弁3を傾斜状態で支持する支持部を構成している。支持板173は、板状のばね材からなるものであり、ビール弁4を弾性的に支持する。
【0060】
なお、ここでは作業工具10の移動部材14を上下に移動させるための駆動機構をリンク機構として説明しているが、それ以外の駆動機構を使用することもできる。ラック・ピニオン機構、液圧シリンダその他の任意の駆動機構を使用することも可能である。
【0061】
次に、図7から図10を参照して、ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を説明する。まず、図7に示すように、作業工具10のガイド部11をビール樽の口金93に固定する。固定はガイド部11を口金93に嵌入させて回動させるだけの簡単な作業である。そして、ハンドル15を左方水平位置まで回動させて移動部材14および取付具17を上方のストローク端まで上昇させ、取付具17にガス弁3を約45度の傾斜状態で支持する。
【0062】
ガス弁3は、図示のように押下部171の上面、支持突起172の先端、支持板173によって約45度の傾斜状態に支持される。このとき、ガス弁3の刻印313が支持突起172の方向と一致するように、ガス弁3をセットする。これによって、芯金の長軸方向(直線A方向、図3、図5参照)が水平面から約45度傾斜することとなり、ガス弁3が弁座部95の中央孔を通過することができるようになる。
【0063】
口金93と一体的に形成された取付部94には、弁座部95の中央孔を通してコイルばね6およびダウンチューブ5が挿入され、図示のように所定位置に配置されている。また、ダウンチューブ5の上端内部にはコイルばね7とビール弁4が配置されている。
【0064】
次に、図8に示すように、ハンドル15を右回り方向に回動させる。ハンドル15が上方垂直状態になると、取付具17に支持されたガス弁3は図示の位置まで下降する。このとき、ガス弁3はガイド部11の円錐面状内面に案内されて、ダウンチューブ5の上端位置まで円滑に移動する。また、取付具17下端の押下部171は、ビール弁4に当接し、ビール弁4をコイルばね7に抗して下方に押し下げる。
【0065】
さらにハンドル15を右回り方向に回動させ、右方水平位置になるようにすると、図9に示す状態となる。移動部材14および取付具17は下方のストローク端に達している。ガス弁3は弁座部95の中央孔を通過して、フィッティング内部に進入している。また、ガス弁3がダウンチューブ5の上端に当接して、ダウンチューブ5をコイルばね6に抗して下方に押し下げている。
【0066】
ダウンチューブ5は既に下方の限界位置まで押し下げられているので、ガス弁3を上方に押し返している。ガス弁3はダウンチューブ5上端と支持突起172からの力により、弾性部材である支持板173から外れて水平状態に近づくように回動する。そして、ガス弁3はダウンチューブ5の上端部に嵌入可能な状態となる。
【0067】
次に、ハンドル15を左回り方向に戻すように回動させる。ガス弁3は水平状態に近づいているので、上昇時に弁座部95に当接して水平状態となり、ガス弁3の下部小径部がダウンチューブ5の上端部に嵌入する。この状態が図10に示されている。ハンドル15は上方垂直状態まで戻され、ガス弁3はダウンチューブ5上端の正規位置に嵌入した状態である。水平状態のガス弁3は、弁座部95の中央孔を通過不能であり、弁座部95に当接して従来のガス弁と同等の機能を達成するものである。
【0068】
以上のように、作業工具10を使用して簡単にガス弁3をフィッティングに組み付けることができる。口金93、弁座部95および取付部94が一体的に形成されていても、芯金に小径部を設けることによりガス弁3を簡単に組み付けることができるのである。
【0069】
ガス弁3は長時間の使用によりゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32が劣化して弁としての機能が損なわれるようになる。そこで、3〜6年間使用するごとにガス弁3を取り外して、新しいものと交換することが望ましい。交換のためにガス弁3を取り外す作業も、作業工具10を使用して簡単に行うことができる。次に、図11から図12を参照して、ガス弁3をフィッティングから取り外す手順を説明する。
【0070】
まず、図11に示すように、作業工具10の移動部材14の下端に取外具18を取り付けておく。取外具18の下端にはビール弁4を下方に押し下げるための押下部181が設けられている。そして、押下部181の上部には横方向に突出した爪部182が設けられている。爪部182の下面側は図示のように傾斜面となっている。
【0071】
次に、作業工具10のガイド部11をビール樽の口金93に固定する。このとき、爪部182の突出方向がガス弁3の刻印313の方向と一致していることを確認する。取付具17の支持突起172の方向と取外具18の爪部182の方向は同方向となるようにしてあるので、通常、作業工具10で組み付けたガス弁3の刻印方向は爪部182の突出方向となる。ただし、ガス弁3を他の工具によって組み付けた場合のように刻印方向が一致しない可能性もあるため、爪部182の突出方向を変更可能としておくことが望ましい。
【0072】
それから、ハンドル15を右方水平位置まで回動させて移動部材14および取外具18を下方のストローク端まで下降させる。この下降の過程で取外具18の爪部182がガス弁3と当接するが、爪部182の下面が傾斜面となっているので、取外具18に横方向の力が作用して取外具18が横方向に弾性変形し、爪部182がガス弁3の下面に達するまで下降させることができる。
【0073】
次に、図12に示すように、ハンドル15を左方水平位置まで回動させて移動部材14および取外具18を上方のストローク端まで上昇させる。爪部182がガス弁3の下面に係合して、ガス弁3をダウンチューブ5の上端部から取り外し、さらにガス弁3を傾斜させて上方に引き上げる。爪部182が刻印313で示される長軸方向を引き上げて芯金の長軸を傾斜させるため、ガス弁3が弁座部95の中央孔を通過可能となる。そして、図示のようにガス弁3をフィッティングから完全に取り外すことができる。
【0074】
新しいガス弁3をフィッティングに組み付けるには、既に説明したように、図7から図10に示した手順に従って作業を行えばよい。以上に説明したように、作業工具10を使用することにより、ガス弁3の取り付け、取り外し、交換の作業を簡単に行うことができる。本発明のフィッティングでは、交換等の保守作業が必要な部品はガス弁3のみであり、ガス弁3の交換作業も簡単に行うことができるため、保守作業のためのコストを大幅に低減することができる。
【0075】
次に、図17、図18に示すような従来のフィッティングが設けられているビール樽9を改造して、本発明のフィッティングを取り付ける手順を説明する。図13および図14がその手順を示している。まず、図18に示すような従来のビール樽9の口金91から、取付部材2、ダウンチューブ5、ガス弁3、ビール弁4およびコイルばねを取り外し、パッキン92も除去する。その口金91をビール樽9との接続部から所定高さだけを残して途中で切断し、図13に示すような形状とする。
【0076】
そして、本発明のフィッティングの口金93のビール樽9との接続部近傍を階段状に切除して、図13の口金91残部と適合する形状とする。なお、この改造用の口金93は、接続部を最初から階段状に形成したものでもよい。その口金93を図14に示すように、口金91残部の上に密着させて嵌合し、接合部の外周を溶接部93aで示すように溶接によって密封固定する。この口金93にフィッティングの各部品を組み付ければよい。
【0077】
このように、従来のフィッティングが取り付けられていたビール樽を有効に利用して本発明のフィッティングを取り付けることができるので、本発明のフィッティング導入のコストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。
【0078】
次に、本発明のフィッティングの第2の形態について説明する。図15は、第2の形態のフィッティングのための口金96の構成を示す図である。口金96は溶接等によりビール樽9に接合されている。接合部は気密・液密状態となるようにされている。この口金96は、内面側の構造が図1の口金93と同等であり、係合突起や弁座部の寸法、配置も同じである。取付部94も窓の形状が異なっているが機能的には同等である。口金96では外周側の形状が全体に小径に形成されており、口金93よりも小型で軽量なものとなっている。
【0079】
口金96の内面側の構造は口金93と同等であるから、フィッティングの他の部品(ダウンチューブ5、ガス弁3、ビール弁4等)は口金93と全く同様に組み付けることができる。また、図18に示すビール樽に使用していたビール充填機、樽洗浄機、ビール注出用器具(ディスペンスヘッド等)なども、口金96を備えたビール樽にそのまま使用することができる。
【0080】
この口金96を使用したフィッティングは、小型軽量となり、比較的小容量のビール樽に適している。この第2の形態のフィッティングを使用した場合、ビール樽全体も小型軽量とすることができ、運搬コストを低減させるとともに保管スペースも低減させることができる。また、ビール樽を小型化して、ビール樽ごと冷蔵庫内に収納して冷却することも可能となる。
【0081】
次に、従来のフィッティングの取付部材2を利用して、上記第2の形態のフィッティングと同等のものを製造する手順を説明する。図18に示すような従来のフィッティングの取付部材2は、前述の口金96と構造が類似しているため、口金96と同等品として使用することができる。取付部材2の内面側の構造は、口金96と同等であり、係合突起や弁座部の寸法、配置も同じである。図16に示すように、取付部材2をビール樽9に溶接等により直接接合する。接合部2aは気密・液密状態となるようにする。
【0082】
ただし、取付部材2の上部外周には雄ねじ部が形成されているので、その雄ねじ部には保護リング21を螺合して外周面を平坦な状態とする。保護リング21と取付部材2との接続部にはスポット溶接等による溶接部21aを形成し、保護リング21が外れないように接合固定する。このようにして、取付部材2を口金96とほぼ同等に使用することができる。フィッティングの他の部品(ダウンチューブ5、ガス弁3、ビール弁4等)は口金93と同様に組み付けることができる。
【0083】
このように、従来のフィッティングの取付部材2を有効に利用して本発明のフィッティングとすることができるので、本発明のフィッティング導入のコストを大幅に低減できるとともに、資源の有効利用が可能となる。
【0084】
次に、他の実施の形態のガス弁について説明する。図19は、他の実施の形態のガス弁3aの構成を示す平面図である。また、図20は、ガス弁3aの図19におけるY−Y矢視断面図である。そして、図21は、ガス弁3aの図19におけるZ−Z矢視断面図である。すなわち、図20は芯金33aの長軸を含む平面で切った断面図であり、図21は芯金33aの短軸を含む平面で切った断面図である。
【0085】
このガス弁3aは、図2に示すガス弁3とは芯金の構成が異なっている。ガス弁3の芯金31,31a(図3から図5参照)は単一の部材によって形成されていたが、このガス弁3aでは芯金33aに加えて補強金具34aが一体に成形されている。
【0086】
芯金33aの平面外周形状(外周側の輪郭形状)は、図5に示す芯金31aの平面外周形状と同様である。芯金33aの平面外周形状は、芯金31aの平面外周形状と同様の対称軸を有し、同様の定径部と小径部を有している。小径部は滑らかな曲線で構成されている。芯金33aの内周側は円形に形成されている。芯金33aは、芯金31aよりも上下に凹凸が少なく、より平面に近い形状に形成されている。また、芯金33aには上面側と下面側を貫通する小径の連通孔331が複数個設けられている。
【0087】
補強金具34aは外周側の輪郭形状も図示のように円形に形成され、回転対称の環状形状に構成されている。ただし、補強金具34aの上面頂部には、芯金33aの長軸方向を示す刻印341が形成されている。刻印341は浅い溝として形成され、ガス弁3aとして一体に成形する際に、刻印341の溝に弁部材32のゴム材料等が流れ込み、視認性のよい目印となる。
【0088】
芯金33aと補強金具34aは図20、図21に示すように組み合わされて、一体的に接続される。この際、補強金具34aの刻印341が芯金33aの長軸方向となるように組み合わされる。補強金具34aの内周側の下端部は、接続前は鉛直方向に形成されているが、芯金33aと補強金具34aを組み合わせ、補強金具34aの内周側の下端部を図示のように外側に押し広げる。このように補強金具34aの内周側下端部を拡径することにより、補強金具34aが芯金33aの内周部と一体的に接続される。
【0089】
互いに一体的に接続された芯金33aと補強金具34aを、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32と一体的に成形してガス弁3aが製造される。なお、芯金33aと補強金具34aはステンレス材等からなるものである。例えば、芯金33aとしては板厚1.5mmのステンレス板材からなるプレス成形品が使用でき、補強金具34aは板厚1.0mmのステンレス板材からなるプレス成形品が使用できる。芯金33aおよび補強金具34aを弁部材32と一体成形する際には、ゴム材料等の弁部材32が連通孔331を通って流れ込むので、芯金33aと補強金具34aに挟まれた空間部にも隙間なく弁部材32が充填される。
【0090】
このようなガス弁3aは、作業工具10を使用して、図2に示すガス弁3と全く同様にフィッティングに組み付けることができ、取り外しや交換も全く同様に行うことができる。ガス弁3aは、芯金33aおよび補強金具34aが弁部材32と一体的に成形されており、弁部材32が芯金33aおよび補強金具34aに強力に接着しているので、ガス弁の強度が大きくなり耐久性が向上する。
【0091】
図22は、他の実施の形態のガス弁3bの構成を示す断面図である。このガス弁3bは、ガス弁3aと類似した構成であるが、補強金具34bの形状が異なっており、また製造方法がガス弁3aとは異なっている。ガス弁3bでは、まず芯金33bと弁部材32を一体的に成形する。芯金33bの構成は、芯金33aとほぼ同じである。ただし、芯金33bには連通孔は設けられていない。芯金33bの平面外周形状は、芯金31aの平面外周形状と同様の対称軸を有し、同様の定径部と小径部を有している。小径部は滑らかな曲線で構成されている。
【0092】
補強金具34aと同様に、補強金具34bの上面頂部にも芯金33bの長軸方向を示す刻印が形成されているが、この刻印は図22には示されていない。芯金33bと弁部材32とを一体成形した成形品の中央孔に、上方から補強金具34bを挿入して、図示のように一体に接続する。この際、補強金具34bの刻印の方向が芯金33bの長軸方向となるように挿入される。
【0093】
補強金具34bは図示のようにガス弁3bの内周面から上面内周側部分を覆う形状とされている。補強金具34bの内周側の下端部は、接続前は鉛直方向に形成されているが、補強金具34bの内周側の下端部を図示のように外側に押し広げる。このように補強金具34bの内周側下端部を拡径することにより、補強金具34bが芯金33bの内周部と一体的に接続され、弁部材32、芯金33bおよび補強金具34bが一体のガス弁3bとなる。
【0094】
このようなガス弁3bは、作業工具10を使用して、図2に示すガス弁3と全く同様にフィッティングに組み付けることができ、取り外しや交換も全く同様に行うことができる。ガス弁3bは、芯金33bおよび補強金具34bが弁部材32と一体的に形成され、ガス弁の強度が大きくなり耐久性が向上する。このガス弁3bは、製造工程がガス弁3aよりも簡単であり低コストで製造することができる。ただし、ガス弁の強度および耐久性の点では、ガス弁3bよりもガス弁3aの方が優れている。
【0095】
以上のように、本発明によれば、ビール樽の口金に取付部と弁座部が一体に設けられているので、口金と取付部材の上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、ガス弁の交換作業も容易に行うことができるので、メインテナンス作業を大幅に軽減することができる。さらに、フィッティングの部品点数を減少させ、ビール樽の製造コストを低減させることができる。それに加えて、従来のフィッティングとの互換性を維持しつつ、口金の外径寸法や重量を減少させることができ、ビール樽の小型軽量化が可能となる。
【0096】
なお、以上の実施の形態では、飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例に挙げて説明したが、それ以外の任意の飲料と飲料容器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、口金と取付部材との間隙が存在しないので異物や汚水等の侵入も発生せず衛生的に優れた飲料容器用フィッティングを低コストで提供することができる。また、飲料容器用フィッティングのメインテナンス作業を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のフィッティングの断面図である。
【図2】ガス弁3を上方から見た平面図である。
【図3】芯金31の形状を示す平面図である。
【図4】芯金31の断面図である。
【図5】他の実施の形態の芯金31aの構成を示す平面図である。
【図6】本発明のフィッティングにガス弁3を組み付けるための作業工具10の構成を示す図である。
【図7】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図8】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図9】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図10】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図11】ガス弁3をフィッティングから取り外す手順を示す図である。
【図12】ガス弁3をフィッティングから取り外す手順を示す図である。
【図13】従来のフィッティングを備えたビール樽を改造して、本発明のフィッティングを取り付ける手順を示す図である。
【図14】従来のフィッティングを備えたビール樽を改造して、本発明のフィッティングを取り付ける手順を示す図である。
【図15】本発明のフィッティングの第2の形態を示す図である。
【図16】従来のフィッティングの取付部材2を利用して、第2の形態のフィッティングと同等のものを製造する手順を示す図である。
【図17】従来のフィッティングをビール樽に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。
【図18】従来のフィッティングを示す拡大断面図である。
【図19】他の実施の形態のガス弁3aの構成を示す平面図である。
【図20】ガス弁3aのY−Y矢視断面図である。
【図21】ガス弁3aのZ−Z矢視断面図である。
【図22】他の実施の形態のガス弁3bの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
2 取付部材
2a 接合部
3,3a,3b ガス弁
4 ビール弁
5 ダウンチューブ
6,7 コイルばね
8 飛び出し防止部材
9 ビール樽
10 作業工具
11 ガイド部
12 枠体
13 基体
14 移動部材
15 ハンドル
16 連結部材
17 取付具
18 取外具
21 保護リング
21a 溶接部
22 係合突起
31,31a 芯金
32 弁部材
33a,33b 芯金
34a,34b 補強金具
81 ストッパ
91,93,96 口金
92 パッキン
93a 溶接部
94 取付部
95 弁座部
171,181 押下部
172 支持突起
173 支持板
182 爪部
311 定径部
312,312a 小径部
313,341 刻印
331 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器(9)の口金(93)と、
前記口金(93)の内周側に設けられた弁座部(95)と、
前記口金(93)と一体に設けられた取付部(94)と、
上端部が前記取付部(94)に支持された管状のダウンチューブ(5)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁(3)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁(4)とを有し、
前記ガス弁(3)は、金属製の芯金(31,31a)と、当該芯金(31,31a)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)とからなり、
前記芯金(31,31a)の平面外周形状は、直径が一定の定径部(311)と、前記定径部(311)に対して直径が小さい小径部(312,312a)を備え、
前記定径部(311)および前記小径部(312,312a)からなる平面外周形状は、前記芯金(31,31a)の中心(O)および前記定径部(311)を通る第1の直線(A)と、前記中心(O)において前記第1の直線(A)と直交する第2の直線(B)の両方に対して対称な図形であり、
前記ガス弁(3)は、傾斜状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過不能であって、前記弁座部(95)の中央孔を通して交換可能なものである飲料容器用フィッティング。
【請求項2】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記小径部(312)は、前記第1の直線(A)と平行でかつ前記中心(O)との距離が前記弁座部(95)の中央孔を通過可能な距離である線分を形成するものである飲料容器用フィッティング。
【請求項3】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記小径部(312a)は、前記定径部(311)と滑らかに連続する曲線をなすものであり、
前記小径部(312a)と前記第2の直線(B)との2つの交点を結ぶ線分が、前記芯金(31)の平面外周形状の最小の直径となるものである飲料容器用フィッティング。
【請求項4】
請求項3に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記小径部(312a)をなす曲線は、前記芯金(31)の平面外周形状の最小の直径の両端を通り前記第1の直線(A)と平行な2本の直線(M,N)の線上または外側に位置するものである飲料容器用フィッティング。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)は、前記第1の直線(A)の方向を示す刻印(313)が表示されたものである飲料容器用フィッティング。
【請求項6】
請求項5に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)の前記刻印(313)は、前記芯金(31)に設けられた凹溝に、前記弁部材(32)の材料が流入固化したものである飲料容器用フィッティング。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3a)は、前記芯金(33a)と補強金具(34a)とを接続して一体化した金具を、前記弁部材(32)と一体成形したものである飲料容器用フィッティング。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3b)は、前記芯金(33b)を前記弁部材(32)と一体成形し、さらに補強金具(34b)を一体的に接続したものである飲料容器用フィッティング。
【請求項9】
外周側に雄ねじが形成され、内周側に弁座部が形成されるとともに、飲料容器(9)に直接接合された取付部材(2)と、
前記取付部材(2)の雄ねじに螺合された後、前記取付部材(2)と接合されて固定された保護リング(21)と、
上端部が前記取付部材(2)に支持された管状のダウンチューブ(5)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁(3)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁(4)とを有し、
前記ガス弁(3)は、金属製の芯金(31,31a)と、当該芯金(31,31a)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)とからなり、
前記芯金(31,31a)の平面外周形状は、直径が一定の定径部(311)と、前記定径部(311)に対して直径が小さい小径部(312,312a)を備え、
前記定径部(311)および前記小径部(312,312a)からなる平面外周形状は、前記芯金(31,31a)の中心(O)および前記定径部(311)を通る第1の直線(A)と、前記中心(O)において前記第1の直線(A)と直交する第2の直線(B)の両方に対して対称な図形であり、
前記ガス弁(3)は、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能であって、前記弁座部の中央孔を通して交換可能なものである飲料容器用フィッティング。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングに前記ガス弁(3)を組み付けるための工具(10)であって、
前記飲料容器用フィッティングの上面側に固定され、前記ガス弁(3)を円滑に所定位置まで案内するための案内面を有するガイド部(11)と、
上下に移動可能な移動部材(14)と、
前記移動部材(14)に取り付けられた取付具(17)と、
前記取付具(17)の下端に設けられ、前記飲料弁(4)を下方に押し下げるための押下部(171)と、
前記取付具(17)の前記押下部(171)より上部に設けられ、前記ガス弁(3)を傾斜状態で支持する支持部(172,173)とを有する飲料容器用フィッティングのガス弁取付工具。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングから前記ガス弁(3)を取り外すための工具(10)であって、
前記飲料容器用フィッティングの上面側に固定される台座部(11)と、
上下に移動可能な移動部材(14)と、
前記移動部材(14)に取り付けられた取外具(18)と、
前記取外具(18)の下端に設けられ、前記飲料弁(4)を下方に押し下げるための押下部(181)と、
前記押下部(181)の直上位置に設けられ、前記ガス弁(3)の内面下部に係合して前記ガス弁(3)を傾斜状態で引き上げる爪部(182)とを有する飲料容器用フィッティングのガス弁取外工具。
【請求項12】
前記口金(93)とは異なる第2の口金(91)が既に取り付けられている飲料容器(9)に、請求項1〜8のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングを取り付ける方法であって、
前記第2の口金(91)を、前記飲料容器(9)との接続部から所定高さを残して切断する手順と、
前記口金(93)の飲料容器との接続部を、前記第2の口金(91)の残部と接続可能な形状に形成する手順と、
前記口金(93)の接続部を前記第2の口金(91)の残部に密着させて接合する手順とを有する飲料容器用フィッティング取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−246162(P2007−246162A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77632(P2006−77632)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(591036996)フジテクノ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】