説明

飲料容器用フィッティング

【課題】異物や汚水等の侵入を完全に防止してメインテナンス作業を軽減することができ、さらに飲料容器の内部が異常高圧状態になってもガス弁の飛び出しを防止できる飲料容器用フィッティングを提供する。
【解決手段】飲料容器の口金93と、口金の内周側に設けられた弁座部95と、口金と一体に設けられた取付部94と、上端部が取付部に支持された管状のダウンチューブ5と、ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁3と、ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁4とを有する。ガス弁は、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能である。弁座部は、中心線が共通の円錐内面の一部を組み合わせた形状であり、上部の円錐内面の第1の頂角が下部の円錐内面の第2の頂角よりも大きくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール樽等の飲料容器の口金として固定されて、ディスペンスヘッドと接続するための飲料容器用フィッティングに関するものであり、さらに詳しくは、口金と取付部材との間隙をなくし異物や雨水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することのできる飲料容器用フィッティングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビール樽等の飲料容器では、飲料容器に口金が溶接等によって固定されており、その口金にフィッティングがねじ込まれて取り付けられている。そして、そのフィッティングにディスペンスヘッドが接続される。このディスペンスヘッドを介して飲料容器内に二酸化炭素等の圧力ガスを供給し、飲料容器内の飲料を容器外に注出する。従来のフィッティングと口金の取り付け状態を、図21および図22を参照して説明する。
【0003】
図21は、従来のフィッティングを飲料容器に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。図22は、フィッティングおよび口金の部分を示す拡大断面図である。図21は、飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。ビール樽9の上部に設けられた口金91の内側には、フィッティングの取付部材2がねじ込まれて固定されている。また、取付部材2にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が取り付けられている。
【0004】
ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3およびビール弁4は、コイルばねによる付勢力によって閉状態となっている。口金91および取付部材2にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。ディスペンスヘッドと取付部材2とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。
【0005】
ディスペンスヘッドは、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールを容器外に注出させるための装置である。生ビールはダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に注出される。口金91と取付部材2との間からのガス漏れを封止するために、口金91の下部内面と取付部材2との間にはパッキン92が設けられている。
【0006】
飛び出し防止部材8は、取付部材2を口金91から取り外す際に、ビール樽9内のガス圧により取付部材2が飛び出してくるのを防止するものである。ストッパ81が口金91下面に当接することにより、飛び出しを防止する。取り外し工具によりガス弁3を下に押し下げた状態にすると、ビール樽9内から圧力ガスが抜け出るとともにストッパ81が内側に引っ込み、取付部材2が口金91から取り外し可能となる。
【0007】
このような構成のフィッティングは、口金91に取付部材2がねじ込み固定されているとはいえ、口金91と取付部材2との間に微少な隙間が存在する。その隙間から雨水や生ビールが侵入する。隙間から侵入したそれらの汚水は、パッキン92によりビール樽9内への侵入は阻止されるが、口金91と取付部材2との間に長くとどまり、衛生上好ましいものではない。ビール樽を洗浄し高温殺菌する際に、この隙間内の汚水が沸騰して噴出することから、この隙間内に汚水が溜まっていることを確認することができる。この隙間内の汚水は、ビール樽を炎天下に放置した場合などには、熱膨張して隙間からしみ出てくるおそれがあり、さらには口金内に侵入して生ビールを汚染するおそれもある。
【0008】
そこで、本出願の発明者により、下記の特許文献1に記載されたフィッティングが提案されている。特許文献1のフィッティングは、口金の下部内面と取付部材との間の間隙を封止する第1封止部材に加えて、フィッティングの最上部にも第2封止部材を設け、口金と取付部材との間隙に異物や雨水等が侵入しにくくしたものである。
【0009】
さらに、本出願の発明者により、特願2005−239334のような、飲料容器の口金に取付部と弁座部とを一体に形成したフィッティングが提案されている。この一体型フィッティングでは、ガス弁が、傾斜状態では弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では弁座部の中央孔を通過不能である。これにより、ガス弁をフィッティング上方から弁座部の中央孔を通して交換可能である
【特許文献1】特開2000−79991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図21、図22に示すような従来のフィッティングでは、口金91と取付部材2との間に異物や汚水等が侵入して溜まってしまい衛生上好ましくない。さらに、パッキン92は、ゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。このように、従来はフィッティングのメインテナンスとして、殺菌・洗浄作業やパッキン92の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0011】
また、特許文献1のようなフィッティングでも異物や汚水等の侵入を完全に防止することは困難である。また、第1封止部材と第2封止部材もゴム等の柔軟性材料であるため摩耗や腐食等による劣化が避けられず、定期的な交換が必要である。したがって、特許文献1のフィッティングでも、メインテナンス作業の頻度を減少させることはできるが、殺菌・洗浄作業や第1封止部材と第2封止部材の交換作業を定期的に行う必要があった。
【0012】
さらに、特願2005−239334のようなフィッティングにおいては、通常の使用状態では全く問題がないのであるが、飲料容器が例えば火災などによって異常な高温状態にまで加熱され、内部の圧力が異常な高圧になった場合、ガス弁が異常高圧によって傾斜してフィッティング開口から飛び出してしまうおそれがあった。
【0013】
そこで、本発明は、口金と取付部材との間隙をなくし、異物や汚水等の侵入を完全に防止するとともにメインテナンス作業を軽減することができ、さらに飲料容器の内部が異常高圧状態になってもガス弁の飛び出しを防止できる飲料容器用フィッティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の飲料容器用フィッティングは、飲料容器の口金と、前記口金の内周側に設けられた弁座部と、前記口金と一体に設けられた取付部と、上端部が前記取付部に支持された管状のダウンチューブと、前記ダウンチューブの上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁と、前記ダウンチューブの上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁とを有する。前記ガス弁は、傾斜状態では前記弁座部の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部の中央孔を通過不能である。前記弁座部は、中心線が共通の円錐内面の一部を組み合わせた形状であり、上部の円錐内面の第1の頂角が下部の円錐内面の第2の頂角よりも大きくなるように形成されている。
【0015】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記第1の頂角は80〜110度であり、前記第2の頂角は30〜50度であることが好ましい。
【0016】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、金属製の芯金と、当該芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材とからなり、前記芯金の平面外周形状は、直径が一定の定径部と、前記定径部に対して直径が小さい小径部を備えたものであり、前記定径部および前記小径部からなる平面外周形状は、前記芯金の中心および前記定径部を通る第1の直線と、前記中心において前記第1の直線と直交する第2の直線の両方に対して対称な図形であるものとすることができる。
【0017】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、金属製の芯金と、金属製で前記芯金より弾性変形しやすい弾性芯金と、前記芯金および前記弾性芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材とからなるものとすることができる。前記ガス弁は、前記弾性芯金が弾性変形して前記弁座部の中央孔を通過可能なものである。
【0018】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記弾性芯金は、ばね材薄板により上方が広がる皿状に形成されたものであることが好ましい。
【0019】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記弾性芯金は、上面側と下面側とを連通する複数の連通孔が形成されたものであることが好ましい。
【0020】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記ガス弁は、金属製で弾性変形しやすい弾性芯金と、前記弾性芯金と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材と、前記弁部材および前記弾性芯金に一体的に接続された補強金具とからなるものとすることができる。前記ガス弁は、前記弾性芯金が弾性変形して前記弁座部の中央孔を通過可能なものである。
【0021】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記弾性芯金は、ばね材薄板により上方が広がる皿状に形成され、内周側を補強する内周補強部が一体的に固定されたものであることが好ましい。
【0022】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記弾性芯金は、上面側と下面側とを連通する複数の連通孔が形成されたものであることが好ましい。
【0023】
また、上記の飲料容器用フィッティングにおいて、前記弾性芯金は、外周部が波板状に形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0025】
飲料容器の口金に取付部と弁座部が一体に設けられているので、口金と取付部材の上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、ガス弁の交換作業も容易に行うことができるので、メインテナンス作業を大幅に軽減することができる。さらに、フィッティングの部品点数を減少させ、飲料容器の製造コストを低減させることができる。そして、飲料容器が異常高圧になったときにもガス弁の変位を小さく保ち、ガス弁の飛び出しを防止することができる。
【0026】
芯金が定径部と小径部を備えたものでは、異常高圧時にガス弁の小径部近傍の部分から高圧ガスの圧力が外部に開放され、ガス弁が安全弁の機能を果たし、異常高圧時に内部圧力を低減させて、ガス弁の飛び出しや飲料容器の破壊を防止することができる。
【0027】
ガス弁が弾性芯金を有するものでは、ほぼ回転対称な構造となっており、ガス弁の取り付け作業時にガス弁の方向性を考慮する必要がなく、取り付け作業が容易である。
【0028】
ガス弁に補強金具を一体的に接続するようにしたものでは、ガス弁の製造が簡単となり製造コストを低減することができる。
【0029】
弾性芯金に内周補強部を一体的に固定したものでは、補強金具と弾性芯金との接続強度が向上し、ガス弁の強度が大きくなり耐久性が向上する。
【0030】
弾性芯金の上面側と下面側とを連通する複数の連通孔を形成しているので、弁部材を隙間なく均一に成形することができ、成形したガス弁の強度と耐久性が向上する。
【0031】
弾性芯金の外周部が波板状に形成されたものでは、弾性芯金が弾性変形しやすくなり、ガス弁が弁座部の中央孔を円滑に通過することができる。そして、ガス弁の取り付け作業および取り外し作業を円滑に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のフィッティングの断面図である。飲料は生ビールであり、飲料容器はビール樽の場合である。従来のフィッティングは、図21、図22に示すように口金91の内周にフィッティングの取付部材2をねじ込んで固定したものであったが、本発明のフィッティングでは口金と取付部材が一体となっている。その取付部材を一体とした口金93が、ビール樽9に溶接によって接続固定されて密封容器となっている。口金93には一体的に取付部94が形成されており、口金93の内周側には弁座部95が形成されている。弁座部95は図示のように2段階の傾斜面(円錐内面)により形成されているが、この点については後に詳しく説明する。
【0033】
取付部94にはばねで上方に付勢されたダウンチューブ5が支持されている。ダウンチューブ5の上端部にはガス弁3が固定されており、また、ダウンチューブ5の上端内部にはビール弁4が上方に付勢されて設けられている。ガス弁3はダウンチューブ5とともにコイルばね6によって上方に付勢されており、口金93内周側の弁座部95に押し付けられている。ビール弁4は、コイルばね7による付勢力によってガス弁3下部の弁座部分に押し付けられている。ガス弁3およびビール弁4は通常状態が閉状態である。
【0034】
口金93にはディスペンスヘッドが取り付け可能である。口金93の上部内周側には内方に突出する係合突起22が設けられており、ディスペンスヘッドと口金93とは、係合突起22によるバヨネット機構等の接続機構によってワンタッチで結合することができる。ディスペンスヘッドにより、ガス弁3およびビール弁4を操作し、二酸化炭素ガス等の圧力ガスをビール樽9内に供給し、ビール樽9の内圧を高めて生ビールをダウンチューブ5およびビール弁4を通して容器外に排出させることができる。
【0035】
ガス弁3は全体形状が環状に形成されており、使用状態では中心軸が垂直方向に向くように配置されている。このガス弁3は、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32がステンレス材等からなる芯金31と一体に成形されたものである。従来のガス弁では、この芯金の外周縁が円形であったが、本発明では、ガス弁3を弁座部95の中央孔を通して交換する必要があるため、芯金31の形状や構造を従来とは異なるものとしている。
【0036】
図2は、フィッティングの弁座部95の拡大断面図である。従来のフィッティングの弁座部は点線で示す弁座面99が単一の傾斜角度を有する円錐内面の一部により構成されていた。弁座面99の円錐面の頂角は60度である。すなわち、円錐面の中心線(ここでは鉛直方向)と円錐面の母線のなす角度(頂角の1/2)は30度である。本発明のフィッティングでは、図示のように弁座部95が上部の弁座面951と下部の規制面952とからなっている。弁座面951、規制面952の各面は、中心線を共通とする円錐内面であるが、その傾斜角度が異なっている。
【0037】
図3は、フィッティングの弁座部95の各面の角度を示す図である。弁座面951の頂角Pは80〜110度の範囲が好ましく、典型的には90度に設定される。すなわち、円錐面の中心線と母線のなす角度(P/2)は40〜55度の範囲が好ましく、典型的には45度に設定される。規制面952の頂角Qは30〜50度の範囲が好ましく、典型的には40度に設定される。すなわち、円錐面の中心線と母線のなす角度(Q/2)は15〜25度の範囲が好ましく、典型的には20度に設定される。
【0038】
このように、規制面952の傾斜方向が従来の弁座面99よりも鉛直方向に近いため、ガス弁3の水平面内での移動を規制する作用が強く働く。このため、飲料容器内部の圧力が異常な高圧になった場合でも、ガス弁3の中心位置からの変位量を小さく保つことができ、ガス弁3の飛び出しを防止することができる。
【0039】
図4は、ガス弁3を上方から見た平面図である。芯金31の外周縁には、中心に対して対称な2位置に互いに平行な平坦部が設けられている。このため平坦部が設けられた位置での芯金31の直径(短径=平坦部間の距離)は、これと直交する方向の直径(長径)に比較して小さくなっている。この平坦部が設けられた部分は、弁座部95の中央孔を通過可能な寸法となっている。すなわち、芯金31の短径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも小さく、芯金31の長径寸法は弁座部95中央孔の直径よりも大きくなっている。
【0040】
図5および図6を参照して芯金31の形状をさらに詳しく説明する。図5は、芯金31の形状を示す平面図である。図6は、芯金31の断面図である。この図6は、図5におけるX−X矢視断面を示す図である。芯金31は垂直方向の中心軸Oを有する環状に形成されている。従来の芯金では、上方から見た外周側の輪郭形状(以下、平面外周形状という)が完全に円形である。図5では従来の円形輪郭形状を点線で示している。
【0041】
この芯金31では、平面外周形状が円形の一部を切り取った形状とされており、長軸と短軸を有する形状とされている。ここで、平面外周形状の長軸方向を直線Aとして、短軸方向を直線Bとする。直線Aおよび直線Bは、中心軸Oと1点で交わり、互いに直交している。芯金31の平面外周形状は、円形から点線で示す部分を切り取って、小径部312が形成されている。小径部312は本来の輪郭形状(円形)から直線Aと平行な2つの直線M,Nよりも外側の部分を切り取った形状である。
【0042】
直線M,Nは直線Aと平行であり、両者とも直線Aとの距離はd/2である。したがって、互いに対向する小径部312間の距離(短径)は直線M,N間の距離dに等しい。芯金31の平面外周形状の小径部312以外の部分は直径が一定の定径部311となっている。定径部311の直径すなわち長径は図示の寸法Dとなる。定径部311は円弧形状である。芯金31の平面外周形状は、図5に示すように、直線Aに対して対称形であり、直線Bに対しても対称形である。芯金31の典型的な寸法例としては、長径Dが34mm、短径dは28mmである。弁座部95中央孔の直径は約31.8mmであるから、長径Dは中央孔の直径より大きく、短径dは中央孔の直径より小さくなっている。
【0043】
芯金31の上面には、直線Aの方向(長軸方向)を示す刻印313が形成されている。刻印313は芯金31上面の頂部に直線A方向の浅い溝として形成される。芯金31と弁部材32が一体に成形されてガス弁3として完成したときにも、刻印313は弁部材32から露出した位置となる。ガス弁3として一体に成形する際に、刻印313の溝に弁部材32のゴム材料等が流れ込み、視認性のよい目印となる。
【0044】
後に詳しく説明するように、ガス弁3をダウンチューブ5の上端部に取り付ける際には、ガス弁3を直線Aの方向に傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる必要がある。刻印313を設けることによりガス弁3(芯金31)の直線A方向が一目で判別でき、取付作業の作業性が著しく向上する。刻印313がない場合は、ガス弁3の外側からは芯金31の直線A方向が目視により判別できないため、作業性が悪くなる。
【0045】
図7は、他の実施の形態の芯金31aの構成を示す平面図である。芯金31aは、平面外周形状にさらに改良を加えたものである。芯金31aの平面外周形状も長軸方向の直線Aと短軸方向の直線Bの両者に対して線対称の図形となっている。そして、長径および短径の長さも図5のものと同じであり、長径Dが34mm、短径dは28mmである。短径dは、小径部312aの最小の直径であり、直線Bと小径部312a,312aの交点間の距離となっている。
【0046】
図5に示す芯金31では小径部312が線分で構成されていたが、図7の芯金31aでは小径部312aが滑らかな曲線で構成されている。また、小径部312aを構成する曲線は、円弧で構成される定径部311と滑らかに接続している。そして、小径部312aを構成する曲線は、短径位置を通り直線Aに平行な2直線M,Nよりも外側に張り出す曲線となっている。図7においては、直線M,Nが点線で示されている。曲線の張り出し量は、短径dが28mmに対して、最も張り出した部分の直線B方向の幅eが29mmとなっている。すなわち、小径部312aを構成する曲線は、直線M,Nの外側にそれぞれ最大0.5mm突出している。
【0047】
芯金31aの上面にも、直線Aの方向(長軸方向)を示す刻印313が形成されている。刻印313は、図5に示すものと同様の構成であり、芯金31a上面の頂部に直線A方向の浅い溝として形成される。ガス弁3として一体に成形する際に、刻印313の溝に弁部材32のゴム材料等が流れ込み、視認性のよい目印となる。
【0048】
芯金31aの小径部312aを曲線で構成するのは、以下のような理由である。まず、図5に示すような芯金31を使用したガス弁を傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる実験を繰り返した結果、小径部312の中央部が通過する際の押し込み力が極大となり、その前後では押し込み力がかなり小さくなることが分かった。これは、小径部312の短径部(直線Bとの交点部)以外では、芯金31をさらに外側に張り出すことが可能であることを示している。
【0049】
芯金の平面外周形状は、本来であれば従来のような円形が理想的である。本発明では、芯金に小径部を設けて弁座部95中央孔を通過可能としたものであるが、円形からの切除面積が小さい方が、ガス弁の対称性も向上し耐久性の点でも有利である。図7に示すように、芯金31aの小径部312aを曲線で構成することにより、芯金31aの平面外周形状がより円形に近くなり、ガス弁の対称性や耐久性が向上することになる。また、芯金31aを使用したガス弁を傾斜させて弁座部95中央孔を通過させる場合は、通過させるための押し込み力が小径部312aの全体にわたってほぼ一定となり、ガス弁の組み立て作業や取り外し作業も円滑に行うことができる。
【0050】
なお、図5および図7に示す芯金を使用したガス弁の耐久試験を行った結果、従来からの耐久性基準を十分に満足することが確認された。具体的には、本発明のガス弁を組み込んだビール樽に対して以下の1〜3の耐久試験を行った。
【0051】
1.ビール樽の内圧を0.1〜3MPa(1〜30気圧)の範囲で変動加圧することを1000回繰り返した。
2.ビール樽の内圧を450kPa(4.5気圧)とした後、ビール樽を130℃に加熱、20℃に冷却の加熱冷却を1000回繰り返した。
3.ビール樽の内圧を200〜560kPa(2〜5.6気圧)の範囲で変動加圧することを5000回繰り返した。
【0052】
上記の1〜3の各耐久試験のいずれを行った後でも、本発明のガス弁の外観に異常は見られず、また、芯金と弁部材との接着状態にも異常は見られなかった。
【0053】
芯金31や芯金31aを使用したガス弁は、図2において弁座面99が単一の傾斜角度を有するような従来のフィッティングに取り付けて使用することもできる。単一傾斜角度の弁座面を有するフィッティングに取り付けた場合、通常の使用状態では全く問題がないのであるが、飲料容器が例えば火災などによって異常な高温状態にまで加熱され、内部の圧力が異常な高圧になった場合、ガス弁が異常高圧によって変位傾斜してフィッティング開口から飛び出してしまうおそれがあることが実験の結果分かってきた。
【0054】
そこで、本発明ではガス弁3を傾斜角度の異なる弁座面951と規制面952とからなる弁座部95に組み合わせることにより、異常高圧時にもガス弁3の変位を小さく保ち、ガス弁3の飛び出しを防止するようにしたものである。また、芯金に小径部を形成したガス弁3では、異常高圧時に小径部近傍の部分から高圧ガスの圧力が外部に開放されることが確認された。これが安全弁の機能を果たし、異常高圧時に内部圧力を低減させて、ガス弁3の飛び出しや飲料容器の破壊を防止できる。なお、この圧力開放現象は、飲料容器の内部圧力が異常高圧になった場合のみ発生し、通常使用時の圧力程度ではガス漏れが生じることはない。
【0055】
図8は、本発明のフィッティングにガス弁3を組み付けるための作業工具10の構成を示す図である。作業工具10の下部には、口金93の内面形状に合致して口金93内に嵌入し、口金93に対して固定可能なガイド部11が設けられている。ガイド部11の内面側は下方の内径が小さくなるようなほぼ円錐状の曲面を呈しており、この円錐状の内面によってガス弁3をダウンチューブ5上端の所定位置に円滑に案内するものである。
【0056】
ガイド部11の内面形状はほぼ円錐状の回転面であるが、その断面形状は傾斜角が一定の直線よりも曲線(上に凸の曲線)であることが望ましい。内面上部では傾斜角がほぼ一定で支障ないが、下方に行くに従って傾斜角を大きく(垂直に近く)し、最も下方の部分では傾きが垂直となるような上に凸の曲線が適している。このような内面形状により、弁部材32に傷などを生じることなく、ガス弁3を円滑に組み付けることが可能となる。
【0057】
また、ここでは図示していないが、ガイド部11の外周には、口金93内面の係合突起22と係合可能な係合溝または係合孔が設けられている。ガイド部11を口金93内に嵌入して、垂直な中心軸の回りに所定角度回転させることにより、ガイド部11を口金93に固定することができる。これはディスペンスヘッドを口金93に固定するのと同様の機構である。
【0058】
ガイド部11と基体13とは、枠体12によって互いに固定されている。基体13に対して上下動可能に移動部材14が設けられている。移動部材14の上端部には、L字状に曲がったハンドル15が回動可能に接続されている。ハンドル15のL字状の角部と基体13とが連結部材16によって接続されている。接続部は相対的に回動可能となるように軸支されている。移動部材14、ハンドル15、連結部材16は、リンク機構を構成しており、移動部材14を上下方向に移動させることができる。矢印に示すようにハンドル15を左右に回動させることにより、移動部材14を上下に移動させることができる。
【0059】
移動部材14の下端には、ガス弁3を組み付けるための取付具17が取り付けられている。取付具17は移動部材14から取り外すこともでき、他の工具と交換することができる。取付具17を取り外して、フィッティングからガス弁3を取り外すための取外具18を取り付ければ、作業工具10はガス弁3を取り外すための工具として使用できる。
【0060】
取付具17の下端側には、ビール弁4を下方に押し下げるための押下部171が設けられている。そして、押下部171の上方には、支持突起172と支持板173が設けられている。押下部171、支持突起172、支持板173がガス弁3を傾斜状態で支持する支持部を構成している。支持板173は、板状のばね材からなるものであり、ビール弁4を弾性的に支持する。
【0061】
なお、ここでは作業工具10の移動部材14を上下に移動させるための駆動機構をリンク機構として説明しているが、それ以外の駆動機構を使用することもできる。ラック・ピニオン機構、液圧シリンダその他の任意の駆動機構を使用することも可能である。
【0062】
次に、図9から図12を参照して、ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を説明する。まず、図9に示すように、作業工具10のガイド部11をビール樽の口金93に固定する。固定はガイド部11を口金93に嵌入させて回動させるだけの簡単な作業である。そして、ハンドル15を左方水平位置まで回動させて移動部材14および取付具17を上方のストローク端まで上昇させ、取付具17にガス弁3を約45度の傾斜状態で支持する。
【0063】
ガス弁3は、図示のように押下部171の上面、支持突起172の先端、支持板173によって約45度の傾斜状態に支持される。このとき、ガス弁3の刻印313が支持突起172の方向と一致するように、ガス弁3をセットする。これによって、芯金の長軸方向(直線A方向、図5、図7参照)が水平面から約45度傾斜することとなり、ガス弁3が弁座部95の中央孔を通過することができるようになる。
【0064】
口金93と一体的に形成された取付部94には、弁座部95の中央孔を通してコイルばね6およびダウンチューブ5が挿入され、図示のように所定位置に配置されている。また、ダウンチューブ5の上端内部にはコイルばね7とビール弁4が配置されている。
【0065】
次に、図10に示すように、ハンドル15を右回り方向に回動させる。ハンドル15が上方垂直状態になると、取付具17に支持されたガス弁3は図示の位置まで下降する。このとき、ガス弁3はガイド部11の円錐面状内面に案内されて、ダウンチューブ5の上端位置まで円滑に移動する。また、取付具17下端の押下部171は、ビール弁4に当接し、ビール弁4をコイルばね7に抗して下方に押し下げる。
【0066】
さらにハンドル15を右回り方向に回動させ、右方水平位置になるようにすると、図11に示す状態となる。移動部材14および取付具17は下方のストローク端に達している。ガス弁3は弁座部95の中央孔を通過して、フィッティング内部に進入している。また、ガス弁3がダウンチューブ5の上端に当接して、ダウンチューブ5をコイルばね6に抗して下方に押し下げている。
【0067】
ダウンチューブ5は既に下方の限界位置まで押し下げられているので、ガス弁3を上方に押し返している。ガス弁3はダウンチューブ5上端と支持突起172からの力により、弾性部材である支持板173から外れて水平状態に近づくように回動する。そして、ガス弁3はダウンチューブ5の上端部に嵌入可能な状態となる。
【0068】
次に、ハンドル15を左回り方向に戻すように回動させる。ガス弁3は水平状態に近づいているので、上昇時に弁座部95に当接して水平状態となり、ガス弁3の下部小径部がダウンチューブ5の上端部に嵌入する。この状態が図12に示されている。ハンドル15は上方垂直状態まで戻され、ガス弁3はダウンチューブ5上端の正規位置に嵌入した状態である。水平状態のガス弁3は、弁座部95の中央孔を通過不能であり、弁座部95に当接して従来のガス弁と同等の機能を達成するものである。
【0069】
以上のように、作業工具10を使用して簡単にガス弁3をフィッティングに組み付けることができる。口金93、弁座部95および取付部94が一体的に形成されていても、芯金に小径部を設けることによりガス弁3を簡単に組み付けることができるのである。
【0070】
ガス弁3は長時間の使用によりゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32が劣化して弁としての機能が損なわれるようになる。そこで、3〜6年間使用するごとにガス弁3を取り外して、新しいものと交換することが望ましい。交換のためにガス弁3を取り外す作業も、作業工具10を使用して簡単に行うことができる。次に、図13から図14を参照して、ガス弁3をフィッティングから取り外す手順を説明する。
【0071】
まず、図13に示すように、作業工具10の移動部材14の下端に取外具18を取り付けておく。取外具18の下端にはビール弁4を下方に押し下げるための押下部181が設けられている。そして、押下部181の上部には横方向に突出した爪部182が設けられている。爪部182の下面側は図示のように傾斜面となっている。
【0072】
次に、作業工具10のガイド部11をビール樽の口金93に固定する。このとき、爪部182の突出方向がガス弁3の刻印313の方向と一致していることを確認する。取付具17の支持突起172の方向と取外具18の爪部182の方向は同方向となるようにしてあるので、通常、作業工具10で組み付けたガス弁3の刻印方向は爪部182の突出方向となる。ただし、ガス弁3を他の工具によって組み付けた場合のように刻印方向が一致しない可能性もあるため、爪部182の突出方向を変更可能としておくことが望ましい。
【0073】
それから、ハンドル15を右方水平位置まで回動させて移動部材14および取外具18を下方のストローク端まで下降させる。この下降の過程で取外具18の爪部182がガス弁3と当接するが、爪部182の下面が傾斜面となっているので、取外具18に横方向の力が作用して取外具18が横方向に弾性変形し、爪部182がガス弁3の下面に達するまで下降させることができる。
【0074】
次に、図14に示すように、ハンドル15を左方水平位置まで回動させて移動部材14および取外具18を上方のストローク端まで上昇させる。爪部182がガス弁3の下面に係合して、ガス弁3をダウンチューブ5の上端部から取り外し、さらにガス弁3を傾斜させて上方に引き上げる。爪部182が刻印313で示される長軸方向を引き上げて芯金の長軸を傾斜させるため、ガス弁3が弁座部95の中央孔を通過可能となる。そして、図示のようにガス弁3をフィッティングから完全に取り外すことができる。
【0075】
新しいガス弁3をフィッティングに組み付けるには、既に説明したように、図9から図12に示した手順に従って作業を行えばよい。以上に説明したように、作業工具10を使用することにより、ガス弁3の取り付け、取り外し、交換の作業を簡単に行うことができる。本発明のフィッティングでは、交換等の保守作業が必要な部品はガス弁3のみであり、ガス弁3の交換作業も簡単に行うことができるため、保守作業のためのコストを大幅に低減することができる。
【0076】
次に、他の実施の形態のガス弁について説明する。図15は、他の実施の形態のガス弁3aの構成を示す断面図である。このガス弁3aは、図4に示すガス弁3とは芯金の構成が異なっている。ガス弁3の芯金31,31a(図5から図7参照)は単一の部材によって形成されていたが、このガス弁3aでは芯金34に加えて弾性芯金33が弁部材32と一体に成形されている。芯金34は断面形状が図示のように形成され、中心線(ここでは鉛直方向)に対して回転対称の環状に形成されている。芯金34には、芯金31,31aのような直径の異なる部分はない。
【0077】
図16は、弾性芯金33を上方から見た平面図である。弾性芯金33は断面形状が図15のように形成され、中心線に対して回転対称の環状に形成されている。ただし、弾性芯金33には、図16に示すように上面側と下面側とを連通する複数の連通孔331が形成されている。連通孔331はここでは同一円周上に均等に8個形成されている。弾性芯金33は、硬質ステンレス材の薄板を上方が広がる皿状に形成し、連通孔331を形成したものである。薄板はばね材として使用できるものが好ましい。
【0078】
弾性芯金33と芯金34の寸法の実例は次のようなものである。弾性芯金33は硬質ステンレス材の薄板(厚さ0.2mm)からなり、外径(直径):34.5mm、内径(直径):16.4mmとする。芯金34はステンレス板材(厚さ1.2mm)からなり、外径(直径):27.5mm、内径(直径):14.0mmとする。連通孔331は、直径2.5mmのものが同一円周上に均等に8個形成されている。
【0079】
以上のような形状の弾性芯金33および芯金34を、図15に示すように組み合わせて配置し、ゴム等の柔軟性部材からなる弁部材32とインサート成形等により一体的に成形する。このとき、弾性芯金33に連通孔331が設けられているので、弁部材32が連通孔331を通って流れ込み、弾性芯金33と芯金34に挟まれた空間部にも隙間なく弁部材32が充填される。
【0080】
以上のような構成のガス弁3aも、作業工具10を使用して、図4に示すガス弁3と全く同様にフィッティングに組み付けることができ、取り外しや交換も全く同様に行うことができる。ガス弁3aは、傾斜させて弁座部95の中央孔に押し込むと、皿状の弾性芯金33が弾性変形して中央孔を通過することができる。そして、ダウンチューブ5上端に設置され水平状態となったガス弁3aは、弁座部95の中央孔を通過不能となり、ガス弁3aとしての機能を果たすのである。
【0081】
ガス弁3aは、ほぼ回転対称な構造となっており、図4に示すガス弁3とは異なって方向性がない。したがって、ガス弁3aには長軸方向を示す刻印は必要なく、作業工具10に傾斜状態でセットする場合も方向を考慮せずにセットすることができる。このため、ガス弁3aの取り付け作業はガス弁3よりさらに容易である。また、ガス弁3aの取り外し作業も方向を考慮せずに作業を容易に行うことができる。
【0082】
図17は、さらに他の実施の形態のガス弁3bの構成を示す断面図である。このガス弁3bは、ガス弁3aと類似した構成であるが、製造方法がガス弁3aとは異なっている。ガス弁3bは、まず弾性芯金35と弁部材32を一体的に成形する。そして、芯金35と弁部材32とを一体成形した成形品の中央孔に、上方から補強金具36を挿入して、図示のように一体に接続する。
【0083】
補強金具36は図示のようにガス弁3bの内周面から上面内周側部分を覆う形状とされている。補強金具36の内周側の下端部は、接続前は鉛直方向に形成されているが、補強金具36の内周側の下端部を図示のように外側に押し広げる。このように補強金具36の内周側下端部を拡径することにより、補強金具36が弾性芯金35の内周部と一体的に接続され、弁部材32、弾性芯金35および補強金具36が一体のガス弁3bとなる。
【0084】
図18は、弾性芯金35を上方から見た平面図である。弾性芯金35は断面形状が図17のように形成され、中心線に対して回転対称の環状に形成されている。ただし、弾性芯金35には、内周側下面に内周補強部351が固着されている。また、図18に示すように、弾性芯金35には上面側と下面側とを連通する複数の連通孔352が形成されている。連通孔352はここでは同一円周上に均等に8個形成されている。弾性芯金35は、硬質ステンレス材の薄板を上方が広がる皿状に形成したものである。薄板はばね材として使用できるものが好ましい。
【0085】
弾性芯金35と内周補強部351とは、溶接部353においてスポット溶接等により互いに固着されている。ここでは溶接部353が同一円周上に均等に4個所設けられている。弾性芯金35の内周側が内周補強部351で補強されているので、補強金具36と弾性芯金35との接続強度が向上し、ガス弁3bの強度が大きくなり耐久性が向上する。連通孔352は、弾性芯金35と内周補強部351の両方を貫通し、上面側と下面側とを連通している。弾性芯金35と弁部材32とは、インサート成形等により一体的に成形される。このとき、弾性芯金35に連通孔352が設けられているので、弁部材32の上部および下部が連通孔352を通して接続され、成形体の強度が向上する。
【0086】
弾性芯金35と補強金具36の寸法の実例は次のようなものである。弾性芯金35は硬質ステンレス材の薄板(厚さ0.2mm)からなり、外径(直径):34.5mm、内径(直径):16.4mmとする。内周補強部351はステンレス板材(厚さ1.2mm)からなり、外径(直径):28.0mm、内径(直径):16.4mmとする。補強金具36はステンレス板材(厚さ1.2mm)からなり、外径(直径):29.0mm、内径(直径):14.0mmとする。連通孔352は、直径2.5mmのものが同一円周上に均等に8個形成されている。
【0087】
以上のような構成のガス弁3bも、作業工具10を使用して、図4に示すガス弁3と全く同様にフィッティングに組み付けることができ、取り外しや交換も全く同様に行うことができる。ガス弁3bは、傾斜させて弁座部95の中央孔に押し込むと、皿状の弾性芯金35が弾性変形して中央孔を通過することができる。そして、ダウンチューブ5上端に設置され水平状態となったガス弁3bは、弁座部95の中央孔を通過不能となり、ガス弁3bとしての機能を果たすのである。
【0088】
ガス弁3bも、ガス弁3aと同様にほぼ回転対称な構造となっており、図4に示すガス弁3とは異なって方向性がない。したがって、ガス弁3bには長軸方向を示す刻印は必要なく、作業工具10に傾斜状態でセットする場合も方向を考慮せずにセットすることができる。このため、ガス弁3bの取り付け作業はガス弁3より容易である。また、ガス弁3bの取り外し作業も方向を考慮せずに作業を容易に行うことができる。このガス弁3bは、製造工程が簡単であり低コストで製造することができる。また、ガス弁の強度および耐久性の点でも、ガス弁3bはガス弁3aと同等である。
【0089】
図19は、弾性芯金35の変形例としての弾性芯金35aを示す平面図である。弾性芯金35aは、外周部を波板状に形成した点が弾性芯金35と異なっており、その他の点は弾性芯金35と同様の構成である。弾性芯金35aの外周部には、全周にわたって均一に波状凸部354が形成され、弾性芯金35a外周部が波板状になっている。なお、図19では一部の波状凸部354のみを表示しているが、実際には弾性芯金35aの外周全周にわたって波状凸部354が形成されている。
【0090】
図20は、弾性芯金35aの波状凸部354の形状を示す図であり、図19におけるY−Y矢視図である。弾性芯金35aの外周全周に図示のような山形の波状凸部354が形成されている。このように、弾性芯金35aの外周部が波板状に形成されているので、弾性芯金35aが弾性変形しやすくなり、ガス弁が弁座部95の中央孔を円滑に通過することができる。そして、ガス弁の取り付け作業および取り外し作業を円滑に行えるようになる。なお、ここでは弾性芯金35の変形例として外周部を波板状に形成した弾性芯金35aを示したが、同様に、図16の弾性芯金33の外周部を波板状に形成するようにしてもよい。
【0091】
以上のように、本発明によれば、ビール樽の口金に取付部と弁座部が一体に設けられているので、口金と取付部材の上面の間隙がなく、その間隙への異物や汚水等の侵入は発生しない。これによって、口金部の殺菌処理や異物の除去作業等を軽減することができる。また、パッキンの交換作業をなくし、ガス弁の交換作業も容易に行うことができるので、メインテナンス作業を大幅に軽減することができる。
【0092】
そして、飲料容器の内部が異常高圧状態になってもガス弁の飛び出しを防止できる。さらに、フィッティングの部品点数を減少させ、ビール樽の製造コストを低減させることができる。それに加えて、従来のフィッティングとの互換性を維持しているので、接続器具やビール充填機は従来のものをそのまま使用することができる。
【0093】
なお、以上の実施の形態では、飲料として生ビール、飲料容器としてビール樽を例に挙げて説明したが、それ以外の任意の飲料と飲料容器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、口金と取付部材との間隙が存在しないので異物や汚水等の侵入も発生せず衛生的に優れた飲料容器用フィッティングを低コストで提供することができる。また、飲料容器用フィッティングのメインテナンス作業を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明のフィッティングの断面図である。
【図2】フィッティングの弁座部95の拡大断面図である。
【図3】フィッティングの弁座部95の各面の角度を示す図である。
【図4】ガス弁3を上方から見た平面図である。
【図5】芯金31の形状を示す平面図である。
【図6】芯金31の断面図である。
【図7】他の実施の形態の芯金31aの構成を示す平面図である。
【図8】本発明のフィッティングにガス弁3を組み付けるための作業工具10の構成を示す図である。
【図9】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図10】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図11】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図12】ガス弁3をフィッティングに組み付ける手順を示す図である。
【図13】ガス弁3をフィッティングから取り外す手順を示す図である。
【図14】ガス弁3をフィッティングから取り外す手順を示す図である。
【図15】他の実施の形態のガス弁3aの構成を示す平面図である。
【図16】弾性芯金33を上方から見た平面図である。
【図17】他の実施の形態のガス弁3bの構成を示す平面図である。
【図18】弾性芯金35を上方から見た平面図である。
【図19】弾性芯金の変形例を示す平面図である。
【図20】弾性芯金35aの波状凸部354の形状を示すY−Y矢視図である。
【図21】従来のフィッティングをビール樽に取り付けた状態を示す正面からの断面図である。
【図22】従来のフィッティングを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0096】
2 取付部材
3,3a,3b ガス弁
4 ビール弁
5 ダウンチューブ
6,7 コイルばね
8 飛び出し防止部材
9 ビール樽
10 作業工具
11 ガイド部
12 枠体
13 基体
14 移動部材
15 ハンドル
16 連結部材
17 取付具
18 取外具
21 保護リング
21a 溶接部
22 係合突起
31,31a 芯金
32 弁部材
33,35 弾性芯金
34 芯金
36 補強金具
81 ストッパ
91,93 口金
92 パッキン
94 取付部
95 弁座部
99 従来の弁座面
171,181 押下部
172 支持突起
173 支持板
182 爪部
311 定径部
312,312a 小径部
313 刻印
331 連通孔
351 内周補強部
352 連通孔
353 溶接部
951 弁座面
952 規制面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器(9)の口金(93)と、
前記口金(93)の内周側に設けられた弁座部(95)と、
前記口金(93)と一体に設けられた取付部(94)と、
上端部が前記取付部(94)に支持された管状のダウンチューブ(5)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部に嵌合され、加圧ガスを容器内部に供給するためのガス弁(3,3a,3b)と、
前記ダウンチューブ(5)の上端部内部に設けられ、飲料を容器外に注出するための飲料弁(4)とを有し、
前記ガス弁(3,3a,3b)は、傾斜状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過可能であるが、水平状態では前記弁座部(95)の中央孔を通過不能であり、
前記弁座部(95)は、中心線が共通の円錐内面の一部を組み合わせた形状であり、上部の円錐内面の第1の頂角(P)が下部の円錐内面の第2の頂角(Q)よりも大きくなるように形成されている飲料容器用フィッティング。
【請求項2】
請求項1に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記第1の頂角(P)は80〜110度であり、前記第2の頂角(Q)は30〜50度である飲料容器用フィッティング。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3)は、金属製の芯金(31,31a)と、当該芯金(31,31a)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)とからなり、
前記芯金(31,31a)の平面外周形状は、直径が一定の定径部(311)と、前記定径部(311)に対して直径が小さい小径部(312,312a)を備えたものであり、
前記定径部(311)および前記小径部(312,312a)からなる平面外周形状は、前記芯金(31,31a)の中心(O)および前記定径部(311)を通る第1の直線(A)と、前記中心(O)において前記第1の直線(A)と直交する第2の直線(B)の両方に対して対称な図形である飲料容器用フィッティング。
【請求項4】
請求項1,2のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3a)は、金属製の芯金(34)と、金属製で前記芯金(34)より弾性変形しやすい弾性芯金(33)と、前記芯金(34)および前記弾性芯金(33)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)とからなり、
前記ガス弁(3a)は、前記弾性芯金(33)が弾性変形して前記弁座部(95)の中央孔を通過可能なものである飲料容器用フィッティング。
【請求項5】
請求項4に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記弾性芯金(33)は、ばね材薄板により上方が広がる皿状に形成されたものである飲料容器用フィッティング。
【請求項6】
請求項5に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記弾性芯金(33)は、上面側と下面側とを連通する複数の連通孔(331)が形成されたものである飲料容器用フィッティング。
【請求項7】
請求項1,2のいずれか1項に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記ガス弁(3b)は、金属製で弾性変形しやすい弾性芯金(35)と、前記弾性芯金(35)と一体的に成形された柔軟性の大きな弁部材(32)と、前記弁部材(32)および前記弾性芯金(35)に一体的に接続された補強金具(36)とからなり、
前記ガス弁(3b)は、前記弾性芯金(35)が弾性変形して前記弁座部(95)の中央孔を通過可能なものである飲料容器用フィッティング。
【請求項8】
請求項7に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記弾性芯金(35)は、ばね材薄板により上方が広がる皿状に形成され、内周側を補強する内周補強部(351)が一体的に固定されたものである飲料容器用フィッティング。
【請求項9】
請求項8に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記弾性芯金(35)は、上面側と下面側とを連通する複数の連通孔(352)が形成されたものである飲料容器用フィッティング。
【請求項10】
請求項9に記載した飲料容器用フィッティングであって、
前記弾性芯金(35a)は、外周部が波板状に形成されたものである飲料容器用フィッティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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