説明

飲料抽出機

【課題】ケーシングに対して上下軸回りに開閉可能なバスケットの着脱を容易に行えるようにする。
【解決手段】上下軸となる上下の突端部13、14のうち上突端部13を上嵌合部22に対して昇降可能に設け、上突端部13を上嵌合部22から抜けるまで移動させる手動操作機構をバスケット10に設け、下突端部14をバスケット10に固定し、手動操作機構の操作部材31をバスケット10の前面から後方に向かって押すように設け、バスケット10を閉じ切った状態で操作部材31が動いたとき、上突端部13が上嵌合部22から抜ける前に操作部材31がケーシング20に対して突き当り、バスケット10が特定の開度以上のとき、前記の突き当りが生じないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家庭用コーヒーメーカーのような飲料抽出機に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料抽出機は、コーヒー粉末等の飲料抽出原料をバスケットに直接又はフィルタに入れた状態で収容し、抽出液を受けるための容器をバスケットの下方に位置する熱板上に載せ、スイッチを入れると、水タンクから供給される原水が電気ヒータに沿って流れる間に熱水となり、揚水管を上昇してバスケットの上方まで到達し、吐出口からバスケットに噴出するようになっている。電気ヒータ、スイッチ等の充電部や、水タンクから吐出口に至る管路は、ケーシングに内蔵されている。水タンクはケーシングと一体に、又は別体に設けられている。ケーシングは、熱板と水タンクの間に立ち上がり、該熱板の上方に突き出るように設けられている。吐出口は、ケーシングの熱板上方部分の下面に配置されている。従来、バスケットは、ケーシングに対して上下軸回りに開閉可能に設けられている。バスケットを開くと、バスケットの収容空間は、ケーシングの熱板上方部分の下方から外れ、飲料抽出原料を収容することができる。バスケットを閉じ切ると、バスケットは、ケーシングの立ち上がり部分及び熱板上方部分と閉じ合う。この状態では、吐出口から噴出した熱水がバスケット内の飲料抽出原料に供給され、その熱水が飲料抽出原料を通過する際に飲料として抽出され、容器に流下して貯留される。また、バスケットは、蒸気の外部漏洩を減らすと共に、抽出液を冷め難くする効果もある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前掲の特許文献1のバスケットは、丸洗いを可能にするため、ケーシングに対して着脱可能に設けられている。具体的には、バスケットに、前記上下軸となる上下の突端部が一体射出成形により設けられている。また、ケーシングに、前記上下の突端部を抜差しする上下の嵌合部が一体射出成形により設けられている。バスケットが全開位置にあるときのみ、バスケットを上方に持上げ可能となり、この持上げによって下突端部を下嵌合部から抜いた状態でバスケットの下側を水平方向にずらし、これにより、下嵌合部の上方から下突端部を外した後にバスケットを下降させ、上突端部を上嵌合部から抜くことが可能になっている。バスケットをケーシングに取り付けるときは、一連の取り外し操作の動かし方と逆に、バスケットを全開位置に合わせ、そのバスケットの上側をケーシング側に傾けて上突端部を上嵌合部に差し込み、バスケットを真直ぐに立てて下突端部を下嵌合部に差し込むようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−301293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前掲の特許文献1に開示された飲料抽出機は、バスケットのケーシングに対する着脱に際し、バスケットを全開位置に維持しながら持上げたり下側を傾けた後に起したりする必要があり、着脱作業を行い辛い点で改良の余地がある。
【0006】
上記の事情に鑑み、この発明は、ケーシングに対して上下軸回りに開閉可能なバスケットの着脱を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、この発明は、熱板と水タンクの間に立ち上がり該熱板の上方に突き出たケーシングと、このケーシングに対して上下軸回りに開閉可能なバスケットとを備え、前記バスケットに、前記上下軸となる上下の突端部を設け、前記ケーシングに、前記上下の突端部を抜差しする上下の嵌合部を設けた飲料抽出機において、前記上下の突端部の少なくとも一方を、対応する前記嵌合部に対して昇降可能に設け、前記バスケットに、前記少なくとも一方の突端部を前記対応する嵌合部から抜けるまで移動させる手動操作機構を設けた。
【発明の効果】
【0008】
この発明の構成によれば、手動操作機構の操作を行うと、上下の突端部の少なくとも一方を、対応する嵌合部から抜けるまで移動させることができるので、バスケットを上下動させたり、傾けたりさせ易くなり、これにより、ケーシングに対して上下軸回りに開閉可能なバスケットの着脱を容易に行うことができる。
バスケットを取り外すのは、上述のように丸洗いするためである。手動操作機構を採用すれば、バスケットに電動部を設けることが無く、丸洗いが可能である。また、バスケットに手動操作機構を設ければ、その操作部材を外部から動かすための操作孔をケーシングに空けずに済む。この操作孔をケーシングに形成すると、水補給時の溢れ水や結露水がケーシング外面を伝って操作孔から内蔵充電部に達する恐れがあり、別途、シール構造を設けることを強いられる。充電部のない手動操作機構をバスケットに設ければ、シール構造の追加は不要であり、丸洗いに何の問題もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の各実施形態を説明する。
第1実施形態に係る飲料抽出機(以下、単に「第1実施形態」と略称する。他の実施形態においても同じく略称する。)は、前記下突端部を前記バスケットに固定し、前記上突端部を昇降可能に設けた機構としたものである。
【0010】
前記手動操作機構で上下の突端部の一方のみを移動させることが好ましい。上下の突端部を両方動かすようにすると、両方の突端部が同時に抜けるため、バスケットの着脱を行い易い。しかし、バスケットを一気に外し易くなるため、使用者がバスケットを確実に持った状態で取り外しを行なわない場合、不意に落し易くもなる。また、操作部材の操作が重くなり、機構も複雑になる。
一方の突端部のみを動かす場合、他方の突端部が固定のため、バスケットの取り外し時、一気に外すことができない。また、操作部材の操作も軽く、機構も単純化することができる。バスケットを取り付ける時は、他方の突端部を他方の嵌合部に先に入れた状態で行うことになる。
ここで、バスケットの取り付け時における上下の嵌合部の視認性を考えると、上嵌合部は、視点を上嵌合部よりも低くして下方から覗き見る必要があるのに対し、下嵌合部は上方から見下ろすことができる。
したがって、第1実施形態は、バスケットの取り外し時の落下を防ぎ、バスケットの取り付け時、視認性に優れた下嵌合部に下突端部を先入れし、そこを支点に上突端部を上嵌合部に位置合わせすることができ、比較的に取り付け作業を行い易い。
【0011】
前記バスケットは、開動操作を受けない限り、閉じ切った状態に維持されるようになっている。また、上下の突端部が上下の嵌合部に嵌っている状態では、バスケットの重量がケーシングに下から支えられるようになっている。仮に、飲料抽出中に手動操作機構が作動したとしても、前記の係合等と前記ケーシング支持があるため、バスケットがケーシングから落下するとは限らないが、安全上、飲料抽出中における手動操作機構の作動を確実に防止することが好ましい。
【0012】
そこで、第2実施形態は、前記バスケットを閉じ切った状態で前記手動操作機構の操作部材が動いたとき、前記上下の突端部の少なくとも一方が前記対応する嵌合部から抜ける前に前記操作部材が前記ケーシングに対して突き当り、前記バスケットが特定の開度以上のとき、前記の突き当りが生じないようにしたものである。
【0013】
バスケットを閉じ切った状態で操作部材が動いても、ケーシングに突き当たって上下の突端部が抜ける心配はない。
また、バスケットが特定の開度以上のときは前記の突き当りが生じない。このため、飲料抽出前後にバスケットを取り外すときは、バスケットを特定の開度以上にして操作部材を動かすことができる。このとき、バスケットは特定の開度以上にあればよく、従来のように全開位置という一開度に維持する必要がない。
バスケットを特定の開度以上に維持して操作部材を動かす必要があり、バスケットの把持と操作部材の操作を片手で同時に行い難い。このため、第2実施形態は、自ずと、片手でバスケットを把持し、もう一方の片手で操作部材を動かすように使用者を誘導することができる。このことは、バスケットの取り落としを防止するのに有利である。前記のような片手操作は、誤ってバスケットを取り落とし易く、好ましくない。
【0014】
第2実施形態のような安全構造を省略したり、不測の原因で操作部材の欠損が生じ、突き当りが甘くなったまま使用を継続されたりすることも有り得る。
【0015】
そこで、第3実施形態は、前記手動操作機構の操作部材を前記バスケットの前面から後方に向かって押すように設けたものである。
ここで、前記バスケットの前面とは、バスケットを閉じ切った状態で手前側から正対したときに視える表面部分をいう。後方とは、バスケットが開いた状態で操作部材を押したときにバスケットを閉じる力が生じる向きのことをいう。
【0016】
第3実施形態は、バスケットが閉じ切った状態のとき、少なくとも一方の突端部が抜けたとしても、操作力を受けたバスケットが左右両側にずれ動き難く、前記ケーシングによるバスケットの支えが外れ難い。
また、バスケットが開いた状態で使用者がバスケットを持たずに操作部材を押したとしても、その操作力は、バスケットの前面から後方に向かって作用するため、バスケットを上下軸回りに閉動させる力となる。したがって、バスケットの閉動で操作力が逃がされ、操作部材を押すことができず、単にバスケットが閉じた状態になるだけである。このため、上述の片手操作を防止することができる。
このように、第3実施形態は、操作部材の配置と操作方向の設定のみで、飲料抽出時における不意のバスケット落下を防止することができる。
【0017】
また、バスケットを片手で把持するとき、バスケットの左右両側から掴むことになる。このとき、操作部材の押し操作が前後方向に沿った向きのため、把持方向と操作方向とが交差することになる。このため、第3実施形態は、上述の片手操作を行い難く、両手操作に誘導することもできる。
【0018】
上述のバスケットの左右両側へのずれ動きは、ケーシングを利用して防止することもできる。
【0019】
すなわち、第4実施形態は、前記バスケットと前記ケーシングとに、該バスケットを閉じ切った状態で該バスケットの該ケーシングに対した左右両側への位置ずれを規制する当り部を設け、前記バスケットの閉動により前記の規制状態になるようにしたものである。
ここで、規制とは、ケーシングによるバスケット支持が左右両側へのずれで外れないようにすることをいい、閉じ切った状態で常に当り部が接触する必要はない。
【0020】
バスケットを閉じ切った状態においては、バスケットのケーシングに対する左右両側への位置ずれは、ケーシング側とバスケット側の当り部の接触により規制される。バスケットの閉動により規制状態になるため、飲料抽出時に左右両側へのずれが確実に防止されている。バスケットの開動により規制を外すことができるので、バスケットの取り外しに支障はない。
このように、第4実施形態は、ケーシングとバスケットに当り部を設けるだけで、飲料抽出中における不意のバスケット落下を防止することができる。
【0021】
第4実施形態においては、ケーシングとバスケットの開閉動を利用するため、操作部材の操作方向によらずに安全構造を設けることができる。
【0022】
そこで、第5実施形態は、第4実施形態において、前記手動操作機構の操作部材を左右一側面から左右他方に向かって押すように設けたものである。
【0023】
この種の飲料抽出機は、スイッチを入れた後、最初に吐出されるのは揚水管に残っていた水であり、熱水が吐出されるまでに時間を要する。コーヒーの抽出を行なうとき、抽出温度は風味に大きく影響する。このため、味にこだわる使用者は、しばらくバスケットを開けた状態とし、熱水が出るようになってからバスケットを閉じ、抽出飲料を溜めるための容器を熱板上に載せる。この際、抽出飲料用の容器をもった使用者は、飲料抽出機の前に立ち、バスケットを閉じ切った後にバスケット前方から下方に差し入れることがある。
したがって、手動操作機構の操作部材を左右一側面から左右他方に向かって押すように設けた方が、抽出飲料用の容器を前方から載せる際に誤って操作部材にぶつけ難く、そのとき、操作部材が動き難くい利点がある。
第5実施形態は、係る容器の誤接触を起こり難くしつつ、上述のバスケット落下をも防止することができる。
【実施例】
【0024】
以下、添付図面に基いてこの発明に係る第1実施例に係る飲料抽出機を説明する(以下、単に「第1実施例」と略称する。他の実施形態においても同じく略称する。)。
図1〜図4に示すように、第1実施例は、コーヒー粉末等の飲料抽出原料をフィルタ(図示省略)に入れた状態でバスケット10に収容し、抽出液を受けるための専用容器1をバスケット10の下方に位置する熱板2上に載せられるようになっている。スイッチ(図示省略)を入れると、水タンク3から供給される原水が電気ヒータ4に沿って流れる間に熱水となり、揚水管5を上昇してバスケット10の上方まで到達し、吐出口6から噴出し、バスケット10内に供給される。
【0025】
電気ヒータ4、スイッチ等の充電部や、水タンク3から吐出口6に至る管路は、ケーシング20に内蔵されている。水タンク3は、ケーシング20と別体に設けられている。ケーシング20は、熱板2と水タンク3の間に立ち上がり、熱板2の上方に突き出るように設けられている。吐出口6は、浄水フィルタを備え、ケーシング20の熱板上方部分の下面に配置されている。ケーシング20の立ち上がり部分21は水タンク3を支持する。
【0026】
バスケット10は、ケーシング20に対して上下軸回りに開閉可能に設けられている。バスケット10は、フィルタを収容するカップ11と、カップ11を保持するホルダ12とで構成されている。なお、カップ11とホルダ12を一体に設けることもできる。
【0027】
ホルダ12に、前記の上下軸となる突端部13、14が設けられている。ケーシング20に、上下の突端部13、14を抜差しする上下の嵌合部22、23が設けられている。
【0028】
また、図2、3、5に示すように、上下の突端部13、14が上下の嵌合部22、23に嵌った状態で、バスケット10のホルダ12は、ケーシング20の立ち上がり部分21に形成された支持面24で下から支えられる。また、バスケット10を閉じ切った状態では、立ち上がり部分21の支持面24、25がバスケット10の左右両側で下から支えるようになっている。
【0029】
バスケット10を閉動すると、図1、2、6に示すように、ホルダ12に設けられた係合突部15が弾性変形を生じてケーシング20の係合凹部26に強制的に押し込まれ、弾性回復した係合突部15の引っ掛かりにより、バスケット10が閉じ切った状態に維持されるようになっている。この状態では、ホルダ12がケーシング20の立ち上がり部分21及び熱板上方部分と閉じ合う。
【0030】
バスケット10の回転先端となる摘み16を用いてバスケット10を開動すると、係合突部15が弾性変形により係合凹部26から抜けるようになっている。バスケット10を開動することにより、ホルダ12のカップ収容空間がケーシング20の下方から外れ、飲料抽出原料を入れたフィルタを収容することができる。
【0031】
図2、図7に示すように、下突端部14は、ホルダ12に一体成形することによりバスケット10に固定されている。上突端部13は、上嵌合部22に対して昇降可能に設けられている。
【0032】
図1、図3、図7に示すように、バスケット10に、上突端部13を上嵌合部22から抜けるまで移動させる手動操作機構が設けられている。手動操作機構は、バスケット10の前面に空いた操作孔から露出する操作部材31と、操作部材31の押し操作を上突端部13が上嵌合部22から抜けるまで下降させる運動変換部とからなる。
【0033】
操作部材31は、バスケット10の前面から後方に向かって往復可能に設けられている。運動変換部は、操作部材31に設けられたテーパ面31aと、上突端部13に設けられたテーパ面13aと、操作部材31を待機位置に復帰させるばね32と、上突端部13を待機位置に復帰させるばね33とからなる。
【0034】
図7(b)に示すように、ホルダ12の前面から操作部材31をばね32に抗して後方に向かって押すと、操作部材31のテーパ面31aと上突端部13のテーパ面13aとの摺接により、上突端部13がばね33に抗して下降させられ、上嵌合部22から抜くことができる。操作部材31の押し操作を止めると、ばね32、33に蓄積された弾性反発力により、操作部材31及び上突端部13が待機位置に復帰させられる。
【0035】
図7(a)に示すように、操作部材31及び上突端部13が待機位置にあるとき、上突端部13を上嵌合部22に嵌めることができる。また、操作部材31及び上突端部13が待機位置にあるとき、上突端部13をばね33に抗して下方に向かって押すと、操作部材31は前後方向に動かず、上突端部13のみが下降する。その上突端部13の押し込みがなくなると、上突端部13がばね33の弾性反発力により待機位置に復帰させられる。
【0036】
図2、7に示すように、上述の手動操作機構は、ホルダ12の外壁とカップ収容部の内壁との間に形成された空間に後方から組み込み、その空間を後方から蓋部材34で閉じるようになっている。蓋部材34には、操作部材31を後方に突き出すための貫通孔が空いている。バスケット10を閉じ切った状態では、図5、図7(a)から明らかなように、操作部材31の後端突出部31bは、立ち上がり部分21に一体成形された突き当て面27に対向している。この状態で操作部材31を後方に向かって押したとき、上突端部13が上嵌合部22から抜ける前に操作部材31の後端突出部31bが突き当て面27に対して後方に向かって突き当り、手動操作機構が作動しない。図8に示すように、バスケット10が特定の開度以上のとき、操作部材31の後端突出部31bの後方延長線と突き当て面27とが交わらず、前記の突き当りが生じない。このため、バスケット10が特定の開度以上に維持する限り、図7(b)に示すように、操作部材31を後方に向かって押すと、手動操作機構を作動させることができる。
【0037】
操作部材31の押し操作により上突端部13が下降し、上嵌合部22から抜けるため、図8に示す開度以上にあるとき、バスケット10を持上げ、その上側を左右一方側に容易に傾け易くなる。このため、第1実施例は、図2に示す下嵌合部23から下突端部14を抜いてバスケット10を取り外すことが容易である。バスケット10は、電動部を内蔵せず、丸洗いが可能である。バスケット10に手動操作機構を設けたため、特にシールを設けておらず、電気ヒータ4等の充電部を内蔵するケーシング20に操作部材31を露出させるための孔が無い。
【0038】
バスケット10を取り付けるときは、ホルダ12の上側を右側に傾け、下突端部14を下嵌合部23に入れ、ここを支点として、ばね33により待機位置にある上突端部13を上嵌合部22の位置に合わせることができる。このとき、上突端部13が下降可能なため、ケーシング20側に引っ掛かり難い。このため、第1実施例は、バスケット10の取り付けも容易に行うことができる。
【0039】
なお、バスケット取り付け時における上突端部13は、手動操作機構の操作で下降させることは勿論、ケーシング20を利用して下降させることもできる。第1実施例は、図2、図7(a)に示すように、ケーシング20のテーパ面28に当てた状態とし、ホルダ12の傾きを起こしながらテーパ面28に上突端部13の上端を擦らせ、これにより、上突端部13をばね33に抗して下降させながら上嵌合部22に入れることができる。第1実施例は、操作部材31の押し操作を行いながら位置合せを行う必要がなく、テーパ面28の案内により位置合せを容易に行うこともできる。
【0040】
また、第1実施例は、視認性に優れた下嵌合部23に下突端部14を先に入れ、そこを支点に上突端部13を上嵌合部22に位置合わせすることができ、比較的に取り付け作業を行い易い。
【0041】
また、第1実施例は、バスケット10を閉じ切った状態で操作部材31が動いても、操作部材31の後端突出部31bがケーシング20の突き当て面27に突き当たるため、上下の突端部13、14が抜ける心配はない。バスケット10を特定の開度以上にすれば、前記の突き当りが生じず、操作部材31を動かすことができる。このとき、バスケット10を全開位置に留める必要がない。バスケット10を特定の開度以上に維持して操作部材31を動かす必要があり、バスケット10の把持と操作部材31の操作を片手で同時に行い難い。このため、第1実施例は、自ずと、片手でバスケット10を把持し、もう一方の片手で操作部材31を動かすように使用者を誘導することができる。
【0042】
また、図5に示すように、バスケット10が閉じ切った状態のとき、操作部材31の操作方向である前後方向は、ケーシング側の前後方向と一致している。このため、操作部材31の後端突出部31bが欠損したまま使用され、操作部材31がバスケット10を閉じ切った状態で後方に向かって押され、上突端部13が上嵌合部22から抜けたとしても、操作力を受けたバスケット10が左右両側にずれ動き難く、立ち上がり部分21の支持面24、25によるバスケットの支えが外れ難い。このため、第1実施例は、操作部材31の配置と操作方向の設定のみで、飲料抽出時における不意のバスケット落下を防止することができる。
【0043】
また、バスケット10の把持方向(左右両側からの把持)と操作部材31の操作方向(前後方向に沿った方向)とは、交差する向きに設定されている。このため、第1実施例は、上述の片手操作を行い難く、両手操作に誘導することもできる。
【0044】
上下の突端部の少なくとも一方を昇降可能にする構成、手動操作機構の構成は、他の機構に変更することもできる。以下に変更例を説明する。なお、以下では第1実施例との相違点のみを述べる。
【0045】
図9、図10に示すように、第2実施例は、上突端部41と下突端部42の両方を対応する嵌合部22、23から抜けるまで移動させる手動操作機構になっている。この手動操作機構の操作部材43は、図11(a)に示すように、ホルダ12の左右一側面から左右他方に向かって押すように設けられている。操作部材43は、蓋部材45により左右方向に案内される。
【0046】
図9、図10に示すように、上下の突端部41、42のそれぞれに突軸41a、42aが設けられている。操作部材43に、突軸41a、42aに対応してテーパ面43a、43bが設けられている。図10(a)、(b)の状態から操作部材43をばね44に抗して押すと、図10(c)に示すように、突軸41aがテーパ面43aと摺接することにより上突端部41が上嵌合部22から抜けるまで下降させられる。同時に、突軸42aがテーパ面43bと摺接することにより下突端部42が下嵌合部23から抜けるまで上昇させられる。操作部材43の押し操作を止めると、ばね44の弾性回復力により、上下の突端部41、42は、図10(a)、(b)に示す待機位置に復帰させられる。このように、第2実施例は、上下の突端部41、42を対応する嵌合部22、23から抜くことができる。第2実施例は、操作部材43の操作感を軽くすることよりも、バスケット着脱時における上下の突端部41、42の引っ掛かり防止を優先する場合に好適である。
【0047】
図11に示すように、ケーシングの立ち上がり部分21に、開閉するホルダ12と干渉しないように突出する当り部46aが設けられている。一方、バスケットのホルダ12に、後端開放の箱状に当り部46bが設けられている。立ち上がり部分21側の当り部46aは、バスケットの開閉によりホルダ12側の当り部46bに抜差しされる。ケーシング側に凹状の当り部を設け、バスケット側に後方に突出する当り部を設けることもできるが、旋回するバスケットの後端に突出部を設けることは好ましくない。
【0048】
バスケットを閉じ切った状態で、当り部46a、46bは、該バスケットの該ケーシングに対した左右両側への位置ずれを規制する(図11(d)参照)。この規制は、上下の突端部41、42の少なくとも一方側が抜けたとしても、立ち上がり部分21の支持面によるバスケットの支えが外れないように行われる。バスケット開閉時の干渉を避けるためのクリアランスが設定されており、閉じ切った状態で当り部46a、46bが常時接触するとは限らない。
【0049】
第2実施例は、バスケットの閉動により当り部46a、46bが規制状態になるため、飲料抽出時にバスケットの左右両側へのずれが確実に防止されている。このため、第2実施例は、ケーシングの立ち上がり部分21とバスケットのホルダ12に当り部46a、46bを設けるだけで、飲料抽出中における不意のバスケット落下を防止することができる。
【0050】
図10(a)、図11(a)、に示すように、バスケットを閉じ切った状態で、ケーシングの立ち上がり部分21から突き出たリブ47が操作部材43の左右他方側への移動を規制する。バスケットを特定の角度以上にすると、リブ47の規制が外れるようになっている。第2実施例のように、バスケットが開いた状態で操作部材の規制が外れる構造は、上述の片手操作を防ぎ易い利点がある。なお、第2実施形態は、上下の突端部41、42を昇降可能なため、リブ47を省略し、バスケットを開動させることなく前方に抜いて取り外すように変更することもできる。
【0051】
また、第2実施例は、手動操作機構の操作部材43を左右一側面から左右他方に向かって押すため、図1に示す抽出飲料用の容器1を前方から熱板2上に載せる際に誤って図11(a)に示す操作部材43にぶつけ難く、そのとき、操作部材43が動き難くい。
【0052】
また、操作部材43は、ホルダ12の左右両側幅が最大の壁面部から露出している。すなわち、操作部材43は、ホルダ12を掴んだとき最も指が掛り難くい幅部に配置されている。このため、第2実施例は、上述の片手操作を行い難く、上述の両手操作に誘導することができる。
【0053】
第3実施例は、図12、13に示すように、上突端部51を昇降可能とし、操作部材52を上突端部51と一体成形した手動操作機構になっている。上突端部51は、ホルダ12に抜け止め部材53で昇降可能に抜け止めされている。操作部材52をばね54に抗して押し下げると、上突端部51を上嵌合部22から抜くことができる。操作部材52の押し下げを止めると、ばね54の弾性回復力により上突端部51が待機位置に復帰させられる。
【0054】
図13(a)、(c)に示すように、バスケットを閉じ切った状態で、ケーシングの立ち上がり部分21から突き出たリブ55が操作部材52の下降を規制する。このとき、リブ55と操作部材52の突出部52aがバスケットの上下軸から完全に外れた位置にあり、バスケットを特定の角度以上にすると、リブ55の規制が外れるようになっている。
【0055】
第3実施例は、操作部材52の操作方向が上下方向のため、上述の片手操作を行うことができない利点がある。また、第3実施例は、上突端部51と操作部材52を一体成形したため、部品数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施例の全体斜視図
【図2】図1のバスケットの分解斜視図
【図3】図1の前面図
【図4】図3中に描いたIV−IV線の断面図
【図5】図4のバスケットの平面図
【図6】図1のバスケットの一部切り欠き拡大断面図
【図7】aは図3中の操作部材が待機位置にある状態のVII−VII線の断面図、bは上突端部を抜いた状態のVII−VII線の断面図
【図8】図7bの状態におけるバスケットの平面図
【図9】第2実施例の手動操作機構の分解斜視図
【図10】aは第2実施例の手動操作機構の操作部材が待機位置にある状態の要部を切り欠いて断面表示した部分後面図、bはaのb−b線の断面図、cはaの状態から上突端部を抜いた状態のときの後面図
【図11】aは第2実施例の要部を切り欠いて断面表示した部分平面図、bはaに示したケーシング側の当り部の斜視図、cはaに示したホルダ側の当り部の斜視図、dはaの当り部の拡大図
【図12】第3実施例の手動操作機構の分解斜視図
【図13】aは第3実施例の手動操作機構の操作部が待機位置にある状態の要部を切り欠いて断面表示した部分後面図、bはaの状態から上突端部を抜いた状態のときの後面図、cはaのc−c線の断面図
【符号の説明】
【0057】
1 容器
2 熱板
3 水タンク
4 電気ヒータ
5 揚水管
6 吐出口
10 バスケット
11 カップ
12 ホルダ
13、41、51 上突端部
13a、31a、43a、43b テーパ面
14、42 下突端部
15 係合突部
16 摘み
20 ケーシング
21 立ち上がり部分
22 上嵌合部
23 下嵌合部
24、25 支持面
26 係合凹部
27 突き当て面
28 テーパ面
31、43、52 操作部材
31b 後端突出部
32、33、44、54 ばね
34、45 蓋部材
41a、42a 突軸
46a、46b 当り部
47、55 リブ
52a 突出部
53 抜け止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱板と水タンクの間に立ち上がり該熱板の上方に突き出たケーシングと、このケーシングに対して上下軸回りに開閉可能なバスケットとを備え、前記バスケットに、前記上下軸となる上下の突端部を設け、前記ケーシングに、前記上下の突端部を抜差しする上下の嵌合部を設けた飲料抽出機において、前記上下の突端部の少なくとも一方を、対応する前記嵌合部に対して昇降可能に設け、前記バスケットに、前記少なくとも一方の突端部を前記対応する嵌合部から抜けるまで移動させる手動操作機構を設けたことを特徴とする飲料抽出機。
【請求項2】
前記下突端部を前記バスケットに固定し、前記上突端部を昇降可能に設けた請求項1に記載の飲料抽出機。
【請求項3】
前記バスケットを閉じ切った状態で前記手動操作機構の操作部材が動いたとき、前記上下の突端部の少なくとも一方が前記対応する嵌合部から抜ける前に前記操作部材が前記ケーシングに対して突き当り、前記バスケットが特定の開度以上のとき、前記の突き当りが生じないようにした請求項1又は2に記載の飲料抽出機。
【請求項4】
前記手動操作機構の操作部材を前記バスケットの前面から後方に向かって押すように設けた請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の飲料抽出機。
【請求項5】
前記バスケットと前記ケーシングとに、該バスケットを閉じ切った状態で該バスケットの該ケーシングに対した左右両側への位置ずれを規制する当り部を設け、前記バスケットの閉動により前記の規制状態になるようにした請求項1乃至3のいずれかひとつに記載の飲料抽出機。
【請求項6】
前記手動操作機構の操作部材を左右一側面から左右他方に向かって押すように設けた請求項5に記載の飲料抽出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−279139(P2009−279139A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133278(P2008−133278)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】