説明

飲料提供設備及び提供方法

【課題】 客の好みに応じて新鮮な飲料を効率よく経済的に提供することのできる飲料提供設備及び提供方法を提供する。
【解決手段】 飲料提供設備を高圧ガスボンベ(11)から低圧ガスボンベ(15)への圧力ガス移充填装置(10)と、該圧力ガス移充填装置(10)により圧力ガスが移充填された低圧ガスボンベ(15)を装着可能であり、かつディスペンサの操作により所望量のビールを抽出可能な卓上ビールサーバ(20)とを備えてなり、かつ、前記低圧ガスボンベ(15)をガス放出後再充填可能なものとして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビール、コーラ類、ジュース類あるいはウーロン茶などの飲料の提供設備及び提供方法、特にレストランやビヤホールなどで客の好みに応じて飲料を新鮮な状態で効率よく提供することのできる飲料提供設備及び提供方法、特に業務用の飲料提供設備及び提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランやビヤホールにおけるビールの提供は、図6に特許文献1の従来例(図5)として例示されているように、樽Tの口金に装着されたスピアバルブにディスペンスヘッド1が連結され、このディスペンスヘッド1に炭酸ガスボンベ2とディスペンサ3が接続され、炭酸ガスボンベ2から樽T内に炭酸ガスが注入されることによって行われる。すなわち、樽T内の飲料に、炭酸ガスボンベ2から樽T内の上部空間に注入される炭酸ガスにより下方向に圧力が加えられ、樽Tの口に装着されたスピアバルブのサイフォン管及びホース4を介してディスペンサ3に供給され、このディスペンサ3の冷却用コイル3Aを通過して冷却された後、タップ3Bからジョッキ等に注がれることによって行われる。このようなビール提供装置は、大掛かりであり、また、一般に、ウエイターやウエイトレス等のフロア要員を必要とし、ときに客の欲するとき新鮮なビールを提供できないという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、上記特許文献1には、炭酸ガスを樽内に導入しその圧力によって樽内の飲料を注出するディスペンサにおいて、機枠の下部に取り付けられた飲料注出口およびガス導入管を有するディスペンスヘッドと、機枠の上部に取り付けられたディスペンスヘッドの飲料注出口に接続されたタップと、このタップの後方に位置するように機枠の上部に取り付けられたディスペンスヘッドのガス導入管に接続された減圧弁と、この減圧弁に着脱自在に装着された炭酸ガスボンベとを備えている卓上型ディスペンサが提案されている。また、家庭等において、2〜3lの大型飲料缶から必要に応じてビール等の炭酸飲料抽出器として、例えば特許文献2に記載の提案がある。
【0004】
上記特許文献1、2に見られる提案では、いずれも、ビール抽出用の圧力源として小型の炭酸ガスボンベを利用している。しかしながら、この炭酸ガスボンベはガス圧が約6MPaの高圧の炭酸ガスが充填された圧力容器であり、そのため、かかる卓上型ビールサーバは、ガス漏れの発生を防止するため、ガス回路に高い気密性を確保する必要があり、装置全体のコストを上げる要因となっている。また、小型ガスボンベは高圧耐圧容器にガスが封入された構造をとっているため、一度使用を開始すると最後まで使い切る必要があるという問題もあった。そのため、特許文献1,2に記載のビールサーバをレストラン等で用いようとする場合には、ビールサーバの管理や小型ガスボンベの使用管理のためのコストが増大し、必ずしも実用的でないという問題があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、特許文献3には、圧力源として1MPa未満の圧力でガスを封入した低圧のボンベを用いる手段が提案されており、これにより、ガスボンベの取り付け時に高圧ガスが噴出したり、ガス漏れを起したりするおそれがなくなり、また、ガスボンベを適宜取り外し・取り付けることが可能になる。
【0006】
【特許文献1】特開8−230989号公報
【特許文献2】特開8−207997号公報
【特許文献3】特開2002−264994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3の提案により、ビールサーバに装着されたガスボンベをその都度使い切る必要がなくなり、ガスボンベを取外した状態で保管して次回に再度利用することができるようになる。しかしながら、この提案において使用されている低圧ガスボンベもいわゆる使い捨て形式のものであって、再充填して利用することは考慮されていない。そのため、本形式のビールサーバを、例えば、レストランやビヤホールでの利用に供し、客にその望むときに必要な量のビールを抽出させるようにしようとすると、ガスボンベの充填残量の確認が常に必要になるなど、ボンベ管理が煩瑣になるなどの問題が生ずる。また、かかる低圧ガスボンベ自体の単価もビール提供業者にとって無視できないという問題もある。さらに使い捨てにより資源が無駄遣いされるという問題もある。このような問題は、ビール以外の各種飲料、例えば、コーラ類、ジュース類あるいはウーロン茶などを提供する場合にも発生する。
【0008】
本発明は、上記従来の飲料、例えば、ビール提供設備にかかる問題を解決することを目的とし、特に飲料提供業務において、客の好みに応じて新鮮な飲料を効率よく経済的に提供することのできる飲料提供設備及び提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る飲料提供設備は、高圧ガスボンベから低圧ガスボンベへの圧力ガス移充填装置と、該圧力ガス移充填装置により圧力ガスが移充填された低圧ガスボンベを装着可能であり、かつ、ディスペンサの操作により所望量の飲料を抽出可能な卓上飲料サーバとを備えてなり、かつ、前記低圧ガスボンベがガス放出後再充填可能なものとして構成されている。
【0010】
上記飲料提供設備において使用する低圧ガスボンベの移充填ガス圧力は、0.2〜0.95MPaであることが好ましい。また、その充填ガスの容量は、飲料用サーバに設置される飲料容器の全内容物を排出するに十分なものとすることが望ましい。
【0011】
本発明において利用する低圧ガスボンベは、ガス容器と、その口金部に取り付けた連結管を介して相互に連結された圧力計、安全装置、閉止弁とを有し、前記閉止弁は常時は閉弁状態にあるとともに、圧力ガス移充填装置に接続された状態で高圧ガスボンベから圧力ガスの移充填が可能であり、かつ、卓上飲料サーバに接続された状態で所定圧に調整された圧力ガスを該飲料用サーバに供給可能なものである。
【0012】
本発明に係る飲料提供方法は、高圧ガスボンベから低圧ガスボンベに圧力ガスを所定圧力に移充填する低圧ガスボンベを準備し、前記準備作業によって得られた低圧ガスボンベを卓上飲料サーバに設置して飲料の提供に供せしめた後、前記飲料の提供に供されて圧力が低下した低圧ガスボンベを回収して圧力ガスを所定圧力に再移充填せしめて飲料の提供のために供するようになっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、レストラン等における飲料提供システムを極めて合理的に設計することが可能になり、飲料提供業務において、客の好みに応じて新鮮な飲料を効率よく経済的に提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をビール提供設備に適用した場合について説明する。図1は、ビール提供設備の全体構成を示す説明図である。このビール提供設備は、圧力ガス移充填装置10と卓上ビールサーバ20とを備えている。圧力ガス移充填装置10は、高圧炭酸ガスボンベ11から低圧ガスボンベ15に炭酸ガスを移充填するための装置である。高圧炭酸ガスボンベ11には、減圧弁12を介して低圧ガスボンベ15に至るガス経路13が取り付けられている。また、ガス経路13の末端にはカプラ14が取り付けられていて、低圧ガスボンベ15に接続できるようになっている。なお、高圧炭酸ガスボンベ11は、一般にスチール製の2〜5l程度の高圧容器に炭酸ガスを6MPa程度の高圧に充填したものであって、ガスが空になったときには、専門の充填施設により再充填され繰返し使用されるものである。
【0015】
一方、卓上ビールサーバ20は、公知のように、ビール容器24の開口部に取り付けられるディスペンサ本体21と該ディスペンサ本体21を介してビール容器24内のビール面に炭酸ガスを送給することができる配管25を有している。ディスペンサ本体21には、操作ハンドル22とビール抽出口23が取り付けられており、操作ハンドル22を、例えば、客が操作することにより、ビール容器24から抽出口23を通して、ビールをジョッキ等に注ぎ込むことができるようになっている。上記目的を達するため、卓上ビールサーバ20には、低圧ガスボンベ15をセットできるようになっており、低圧ガスボンベ15の閉止弁18にカプラ26を接続することにより低圧ガスボンベ15からディスペンサ本体21内に内蔵された低圧減圧弁28を経て炭酸ガスが所定圧力に減圧されてビール容器内のビール液面に掛かり、所望量のビールが流出するようになっている。
【0016】
上記のように、本例のビール提供設備においては、高圧(約6MPa)の炭酸ガスボンベ11と低圧ガスボンベ15を備え、高圧の炭酸ガスボンベ11から低圧ガスボンベ15に炭酸ガスを減圧して移充填し、この移充填された低圧ガスボンベ15を卓上ビールサーバ20の圧力源として利用するようになっている。
【0017】
ここにおいて、本例においては、上記低圧ガスボンベ15は、客などによるビール抽出操作によりその内圧が減少したときには、いいかえれば、ガス放出後、炭酸ガスを再充填可能なものとして構成されている。その具体的構成は、図2、図3に示されているとおりであり、保護ケース31内にガス容器16A,16Bが収容されており、これらガス容器16の口金部17A,17Bは連結管34を介して圧力計32、安全装置33、閉止弁18に接続されている。これらは、閉止弁18にカプラ14,26を係合できるように、また、圧力計32により内部圧が外部から視認できるようにして、全体が保護ケース31内に収容されている。
【0018】
閉止弁18としては、図4、5に細部を示すように、常時は、弁体36がバネ37により付勢されることによりガス通路38を閉弁状態においているが、例えば、図1に示す使用状態においてカプラ26が接続されることにより、管状ピン35がカプラ26の先端ヘッド27により上方から押されて開弁状態となるものを使用すればよい。これにより、図1のカプラ14を接続したときには、図5に示すように閉止弁18が開弁状態となって、逆止弁39との協働作用により、ガスボンベ11から減圧弁12を経て低圧ガスボンベ15に炭酸ガスを移充填することができ、その後、カプラ14を取外すと再び閉弁状態となって所定圧力を保った状態のまま、ビールサーバ20側のカプラ26に接続してその圧力源とすることができる。また、ビールサーバ20側から取外された低圧ガスボンベ15を圧力ガス移充填装置10側にセットして炭酸ガスを再移充填することができる。
【0019】
本発明を適用したビール提供設備は上記のように構成されているので、高圧ガスボンベから炭酸ガスが移充填された低圧ガスボンベ15を繰返し使用することができる。これにより、従来の卓上ビールサーバの問題点であった小型ガスボンベが使い捨てであることにより、使用済ボンベが廃棄物として大量に出るという問題が解決され、また、ビールサーバ用の圧力源である炭酸ガスボンベは、高圧ガスボンベから炭酸ガスの移充填が可能である低圧ガスボンベを準備するだけでよいので、レストランやビヤホールで使い捨ての炭酸ガス容器を準備し、在庫管理するという手間から開放される。
【0020】
なお、低圧ガスボンベ15は、移充填されたときの内圧を0.2〜0.95MPaとするのが好ましい。内圧が0.2MPa未満では、飲料を取り出すときの安定性に欠ける場合があり、一方、0.95MPa超ではボンベ取扱い上の安全性に欠ける場合がある。また、上記の範囲で、法規上認められた低圧ガスボンベとして安全に使用することが可能である。さらに、その充填ガス容量を、卓上ビールサーバにセットされるビール容器、例えば、3l缶の内容物を完全に抽出し得るに足るものとしておけば、レストラン等に来訪した客が購入したビール容器に応じて卓上ビールサーバに低圧ガスガスボンベをセットすれば、ビール容器内のビールを飲み切るまで自己の好みに合わせて客がビール注ぎだすことができ、客の満足と、レストラン側の省力効果が同時に得られることになる。
【0021】
以上、本発明をビール提供装置に適用するときの典型例にしたがって説明したが、上記装置は、例えば、従来の大型ビールサーバと並列して設置することができる。例えば、図1において、高圧ガスボンベ11の口金の一方に本発明に用いる圧力ガス移充填装置10を取り付け、他方に従来の大型ビールサーバ用のガス供給路を設けることができる。また、高圧ガスボンベ11に取り付ける圧力ガス移充填装置10の数は特に制限されず、例えば図1に示すように、ガス経路13を分岐させて複数設けることもできる。また、上記説明例においては、低圧ガスボンベは、保護ケース31内に2個のガス容器16A,16Bを内蔵しているが、その数は任意であり、1個あるいは3個以上としてもよい。
【0022】
また、上記ビール提供装置は、その基本構成を維持して、他の飲料、例えば、コーラ類、ジュース類等の提供に利用することができる。この場合において、炭酸ガスを含有する飲料の提供する場合には、圧力ガスを炭酸ガスとすることが望ましく、一方、ジュース類などの非炭酸ガス系の飲料を提供する場合には、圧力ガスを、窒素ガスなど不活性ガスとすることが望ましい。なお、本発明に係る飲料提供設備は、業務用として好適に使用できるが、これに限らず、家庭用あるいは集会場やキャンプ地等においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したビール提供設備の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明に用いる低圧ガスボンベの一部切欠き正面図である。
【図3】本発明に用いる低圧ガスボンベの一部破断の平面図である。
【図4】本発明に用いる閉止弁の断面図である。
【図5】閉止弁にカプラを接続したときの接続部の断面図である。
【図6】従来の大型ビールサーバの構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0024】
1:ディスペンスヘッド
2:炭酸ガスボンベ
3:ディスペンサ
4:ホース
10:圧力ガス移充填装置
11:高圧炭酸ガスボンベ
12:減圧弁
13:ガス経路
14:カプラ
15:低圧ガスボンベ
16:ガス容器
17:口金部
18:閉止弁
20:卓上ビールサーバ
21:ディスペンサ本体
22:操作ハンドル
23:ビール抽出口
24:ビール容器
25:炭酸ガス送給管
26:カプラ
27:(カプラの)先端ヘッド
28:低圧減圧弁
31:保護ケース
32:圧力計
33:安全装置
34:連結管
35:管状ピン
36:弁体
37:バネ
38:ガス通路
39:逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスボンベから低圧ガスボンベへの圧力ガス移充填装置と、該圧力ガス移充填装置により圧力ガスが移充填された低圧ガスボンベを装着可能であり、かつ、ディスペンサの操作により所望量の飲料を抽出可能な卓上飲料サーバとを備えてなり、かつ、前記低圧ガスボンベがガス放出後再充填可能なものであることを特徴とする飲料提供設備。
【請求項2】
低圧ガスボンベの移充填ガス圧力は、0.2〜0.95MPaであることを特徴とする請求項1記載の飲料提供設備。
【請求項3】
低圧ガスボンベは、卓上飲料サーバに設置される飲料容器の全内容物を排出するに十分な量のガスを充填してなるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の飲料提供設備。
【請求項4】
圧力ガスが炭酸ガスであり、卓上飲料サーバが卓上ビールサーバである請求項1〜3のいずれかに記載の飲料提供設備。
【請求項5】
ガス容器と、その口金部に取り付けた連結管を介して相互に接続された圧力計、安全装置、閉止弁とを有し、前記閉止弁は常時は閉弁状態にあるとともに、圧力ガス移充填装置に接続された状態で高圧ガスボンベから圧力ガスの移充填が可能であり、かつ、卓上飲料サーバに接続された状態で所定圧に調整された圧力ガスを該飲料サーバに供給可能である低圧ガスボンベ。
【請求項6】
高圧ガスボンベから低圧ガスボンベに圧力ガスを所定圧力に移充填する低圧ガスボンベを準備し、前記作業によって準備された低圧ガスボンベを卓上飲料サーバに設置して飲料の提供に供せしめた後、前記飲料の提供に供されて圧力が低下した低圧ガスボンベを回収して圧力ガスを所定圧力に再移充填せしめて飲料提供のために供することを特徴とする飲料提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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