説明

飲料水及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、外観品質の安定性に優れた飲料水及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の飲料水は、カルシウム及びマグネシウムを主体とするミネラル成分を含み、溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmの範囲にある飲料水であって、全硬度が105〜300ppmの範囲内で、全硬度に対するカルシウム硬度が82%以上である。そして、その飲料水を60°Cに昇温後その温度を24時間維持した後に放冷して室温になったとき、その全硬度の低下率は10%以内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラル成分を含んだ飲料水及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、種々の飲料水が市販されているが、これらの飲料水の多くは、湧水や地下水等の自然水源から取得したものであって、濾過や殺菌処理等の簡単な処理を施した後に販売されている。そして、図3に領域Bで示すように、通常の自然飲料水は、全硬度が5〜90ppm,二酸化炭素濃度が5〜10ppm程度である。ところで、飲料水の味は、その飲料水に含まれるミネラル成分の含有割合や量によって決定されると言われている。一般に、日本で取得される自然水はミネラルの含有量が少ない軟水である場合が多く、味がほとんどない。これに対して、ヨーロッパ等で採取される自然水はミネラル成分を多量に含んだ硬水である場合が多く、日本産の軟水に比較してやや味が感じられる。
【0003】
一方、原水に二酸化炭素等を付与して飲料水を製造する方法が、従来から行われており、この一例として特許文献1に開示されるような方法が提案されている。この特許文献1の方法では、原水に二酸化炭素を吹き込んで得た炭酸水にミネラル成分を付与して飲料水を製造するにあたり、過剰にミネラル成分を付与した中間処理水を、所定濃度となるように原水で薄めるように調整している。そして、最終的に、図3に領域Cで示すように、ミネラル成分の含有量が10〜100ppmで、溶存二酸化炭素濃度の含有量が3〜100ppmの飲料水が製造される。
【0004】
また、特許文献2にいては硬度が154ppmの飲料水であり、硬度が上昇しすぎて「おいしさ」に問題があるとしている。
【特許文献1】特開平2−172592号公報(明細書4頁上段左欄及び右欄参照)
【特許文献2】特開平9−057278号公報([0011]〜[0015]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された飲料水の製造方法では、ミネラル成分供給部におけるミネラル石の種類や量を調整した上で、炭酸水の滞留時間を適宜設定することにより所定のカルシウム硬度及び溶存二酸化炭素濃度の原液を得て、その原液を原水で薄めることで所望の飲料水を得るようにしている。このため、特許文献1の製造方法においては、ミネラル成分の濃度や成分バランスの調整が行われ、美味な飲料水を提供することができるとされている。ところが、この特許文献1の製造方法においては、これらのミネラル成分の濃度と溶存二酸化炭素濃度とのバランスについては調整を行うことができない。
【0006】
ところが、近年の健康志向の一環として、一部にはミネラル水を常用する傾向が見られ、飲料水の「おいしさ」についても好みの問題となりつつあり一様には定義し難い状態になっており、特許文献2に開示されているおいしくない飲料水の硬度(154ppm)以上の硬度の飲料水の供給が望まれるようになっている。また、一般に中硬水と定義される硬度が100〜300ppmの飲料水については、比較的硬度の低いものは焼酎やウイスキーの水割りに適するといわれ、200ppm以上の硬度の高いものは肉料理のシチュー等に用いられれば肉がおいしくなり最適であるとされている。
【0007】
しかし、比較的硬度の高い飲料水は、炭酸カルシウム等が析出しやすく、透明容器中の飲料水の中に析出した炭酸カルシウムが白濁浮遊物のように見えることから、消費者に嫌われる問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、カルシウムイオンを主体として比較的硬度が高いにも拘わらず炭酸カルシウムの析出量が少ない飲料水及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために飲料水に係る本発明は、カルシウム及びマグネシウムを主体とするミネラル成分を含み、全硬度に対するカルシウム硬度が82%以上である飲料水において、溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmの範囲にあるとともに、全硬度が105〜300ppmの範囲にあり、かつ60°Cに昇温後その温度を24時間維持された後に放冷されて室温になったときの全硬度の低下率が10%以内であることを特徴とするものである。なおここで用いられる「全硬度」とは、飲料水に含まれるカルシウム,マグネシウム及びその他の微量成分の溶存量を炭酸カルシウムに換算し、水1リットルあたりの重量(mg)としてppmで表したものを指し、水中に溶存しているカルシウム及びマグネシウムは、それぞれがカルシウムイオン及びマグネシウムイオンとして存在している。
【0010】
本発明において、全硬度の低下率が10%以内ということは、炭酸カルシウムが析出し難いものであり、白濁浮遊物としての析出を視認できないものとなる。
前記の構成において、溶存二酸化炭素濃度が20〜80ppmの範囲内にあることが好ましく、40〜60ppmの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0011】
また、全硬度が150〜350ppmの範囲内にあることが好ましく、200〜300ppmの範囲内にあることがさらに好ましい。
前記溶存二酸化炭素濃度が10〜100ppmの範囲にあり、全硬度が105〜205ppmの範囲内にあれば、炭酸カルシウムがさらに析出し難い飲料水を得ることができる。
【0012】
前記溶存二酸化炭素濃度が28〜100ppmの範囲にあり、全硬度が105〜273ppmの範囲内にあれば、炭酸カルシウムがさらに析出し難い飲料水を得ることができる。
【0013】
前記溶存二酸化炭素濃度が40〜100ppmの範囲にあり、全硬度が105〜300ppmの範囲内であれば、炭酸カルシウムがいっそう析出し難い飲料水を得ることができる。
【0014】
飲料水の製造方法に係る本発明は、原水に二酸化炭素を溶解させた後に、炭酸カルシウムを主体とする濾材と接触させることによりミネラル成分が付与された処理液とし、その処理液に再び二酸化炭素を溶解させることを特徴とするものである。
【0015】
従って、炭酸カルシウムが溶解してミネラル成分が付与された処理液は、原水に溶解された二酸化炭素が消費されているが、再び二酸化炭素が溶解されるので十分な溶存二酸化炭素濃度を有するものとなる。そのため、カルシウムイオンが消費され炭酸カルシウムとなって析出することが起きにくい状態を維持できる。
【0016】
前記の方法において、前記ミネラル成分は炭酸水素カルシウムを主体とされることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カルシウムイオンを主体として全硬度を82%以上の味の飲料水にすることが可能であるにもかかわらず、炭酸カルシウムの析出量が少ない外観品質の優れた飲料水を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した飲料水の実施形態を、図1〜3を用いて説明する。
本実施形態の飲料水は、原水に二酸化炭素を溶解させるとともに、炭酸水素カルシウムを主体とするミネラルを溶解させることにより、図3に領域Aで示すように、全硬度、すなわち、カルシウム及びマグネシウムの成分が105〜300ppmである。そして、全硬度のうちカルシウム硬度が全硬度の82%以上であり、マグネシウム硬度が18%未満である。また、本実施形態の飲料水は、カルシウム及びマグネシウムを除くミネラル成分の割合が、全ミネラル成分に対して全硬度で5%以下である。さらに、本実施形態の飲料水は、溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmとなるように調整されている。
【0019】
カルシウムは、飲料水の味に対して直接的に影響を与えるものではなく、その量の多寡は、主として飲料水のまろやかさを左右する。即ち、カルシウム割合が多ければ、まろやかな味になり、逆にカルシウム割合が少なければ、爽快感を伴う味になる。本実施形態においては、全硬度が105〜300ppmの範囲内であるため、まろやかさが過ぎて重い味に変化したり、爽快感が過ぎて単調な味に変化したりすることなく、カルシウムの量は飲料水として好適な範囲内である。そして、飲料水中に炭酸水素イオンが多く含まれれば、さわやかな味になって「水」の味が感じられる。そのため、本実施形態の飲料水のように、炭酸水素カルシウムの形でカルシウムを溶解させれば、カルシウム硬度を高めても、重い味は表出せず、さわやかさが保たれる。
【0020】
特に、本実施形態においては、全硬度のうちでカルシウム硬度が82%以上で、言い換えれば、マグネシウム成分が18%未満となっているため、従来にはない美味を感じることができる飲料水となる。マグネシウム成分が18%を越えれば、苦みが感じられ、場合によっては金属味が感じられて、飲料水の味が著しく低下するが、本実施形態における飲料水は味の低下を排除して、水本来の味を賞することができる。
【0021】
ちなみに、自然水は、カルシウムを含有しやすい環境にあるばかりでなくマグネシウムをも含有しやすい環境にある。従って、硬度が高い(100ppm以上)自然水を成分調整することなく、そのままミネラルウォータとして飲料水とした場合は、マグネシウム含有量が多く(通常、少なくとも本実施形態の飲料水の2倍〜数倍)、よい味ではない。また、自然水では、塩素イオンや硫酸イオンが高いものがあり、この場合もよい味ではない。
【0022】
なお、カルシウムイオンに対するマグネシウムイオンの相対的な濃度を低くするために、軟水に塩化カルシウムや乳酸カルシウム等を添加した調整水も存在するが、この調整水の場合には塩素イオンや乳酸イオン等のマイナスイオンの影響によって、やはり味が落ちる。
【0023】
加えて、溶存二酸化炭素濃度が100ppmを越えると、酸味のような異味を感じるようになるが、本実施形態の飲料水は100ppm以下であるため、そのようなおそれはない。
【0024】
一方、本実施形態のような成分割合の飲料水は、特に炭酸カルシウムを主とした白濁浮遊物が析出しやすい。そこで、二酸化炭素の注入により溶存二酸化炭素濃度を6ppm以上に調整すれば、溶存二酸化炭素が充分な量となり、白濁浮遊物が析出し難くなる。従って、このような飲料水は外観品質が安定化し、白濁浮遊物が存在しないため、長期間にわたって高い商品価値を維持できるものとなる。
【0025】
次に、前記のような飲料水を製造するための製造方法を、図1及び図2に示す製造装置に基づいて説明する。
さて、この飲料水の製造装置においては、図1に示すように、原水供給源11からフィルタ装置12に水道水等の原水が供給され、そのフィルタ装置12により原水が濾過されて、その原水に含まれる不要成分が除去される。続いて、濾過された原水は温度調節装置13に供給される。この温度調節装置13には熱源14から一定温度の湯または蒸気が供給されていて、原水が温度調節装置13を通過することにより、前記湯または蒸気の熱を利用して所定温度(例えば28°C程度)に温度調節される。なお、前記湯または蒸気は原水とは別経路を流れるため、原水と混じることはない。その後、原水は温度調節装置13から二酸化炭素供給装置15に供給され、そこで、ガスボンベ16からバルブ17を介して供給される二酸化炭素が原水に溶解される。
【0026】
図2に示すように、二酸化炭素供給装置15には、二酸化炭素を分配する分配バルブ18と、その分配バルブ18からの二酸化炭素を原水に供給して溶解させる第1チャンバー19と、分配バルブ18からの二酸化炭素をミネラル溶解後の原水に再び供給して溶解させる第2チャンバー20とが設けられている。
【0027】
次に、二酸化炭素溶解後の原水は、二酸化炭素供給装置15からカルシウム供給装置21に供給される。このカルシウム供給装置21には、炭酸カルシウムを主体とするカルシウム材を充填した複数の溶解槽21aが設けられている。そして、原水がこれらの溶解槽21aを通過することにより、カルシウム材と接触して、その原水に対してカルシウムが炭酸水素カルシウムとして溶解される。この場合、全硬度が105〜300ppmの範囲で、カルシウム硬度が全硬度の82%以上となるように調整される。炭酸水素カルシウム水溶液となった処理水は、複数の濾過器25aよりなる濾過装置25に送られて、各濾過器25aの濾材(例えば、活性炭)により、味を落とす原因となる鉄分、溶存塩素、微量有機物あるいは臭気原因物質等が除去される。
【0028】
その後、ミネラル溶解後の原水はカルシウム供給装置21から二酸化炭素供給装置15の第2チャンバー20に供給され、その原水に対して二酸化炭素が再び供給されて溶解する。すなわち、原水に対するカルシウムの溶解に伴って消費された二酸化炭素が、ミネラルの溶解後の原水に補填される。この場合、分配バルブ18の開度を変更することにより、原水に対する二酸化炭素の供給量が調整される。そして、最終的に二酸化炭素の濃度が、6〜100ppmとなるように調整される。さらに、二酸化炭素溶解後の原水は中空糸膜等のフィルタ装置22を通して濾過された後、殺菌装置23を通して殺菌されて、飲料水が製造される。
【0029】
(試験方法及びその結果)
次に、水の安定性に係る加速度試験について説明する。この安定性は外観の安定性を指すものであって、カルシウム等のミネラル成分の析出による白濁浮遊物の有無を安定性の指標とし、白濁浮遊物が生じた状態を不可とする。この白濁浮遊物は、水中のカルシウム等が溶存二酸化炭素と結合して生じた炭酸カルシウム等である。そして、通常、白濁浮遊物の生成によって全硬度が10%以上低下する。言い換えれば、全硬度が10%以上低下すれば、白濁浮遊物が生じる可能性があり、10%以下ではその可能性はほとんどない。従って、溶存二酸化炭素濃度と全硬度の経時変化との関係を明らかにするために、以下の手順に従って実験を行った。
【0030】
1.全硬度が異なる複数種類の水を試料として用意した。
2.それらの試料に対してエアーを強制曝気して二酸化炭素濃度を十分に低下させた。
3.その後、硬度の異なる4種類の水について、それぞれを6個の容器に分配した上で二酸化炭素を強制注入して、溶存二酸化炭素濃度の目標値を5、10、30、50、80、110ppmとして調整し、気泡が視認できない状態になるまで静置し、その後その容器を密封した。なお、この目標値を試料名(試料1〜5)とした。
【0031】
4.各試料を60°Cに昇温させて、その温度を24時間維持した後、室温(25°C)になるまで放冷した。ミネラルウォータにおいて、白濁浮遊物が生じやすい環境は、例えば密封状態のミネラルウォータが夏季の高温下に長時間放置されるような場合である。従って、このような環境を模して、試験体を60°Cにして24時間維持する試験方法を採用したものである。
【0032】
5.試験終了後、各試験体をNO.5Cの濾紙で濾過し、それぞれの濾過後の試料の全硬度を測定した。
上記試験結果を表1〜4として示し、考察を加える。先ず、全硬度が100付近となるようにミネラル成分を調整した試料に係る試験結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

表1から明らかなように、試料5は、試験前の溶存二酸化炭素濃度が6ppmであり、全硬度が105ppmである。試験後の全硬度は106ppmとなっており、全硬度の変化率は+1%である。また、試料10〜110の結果においても、試料110が全硬度を試験前に比べて0.9%低下させているのみで、他の試料はわずかであるが全硬度が上昇しており、従って白濁浮遊物の生成のおそれはなく、品質安定性が極めて高いことが分かる。
【0034】
【表2】

表2によれば、試料5は、試験前の溶存二酸化炭素濃度が4ppmであり、全硬度が204ppmであって、試験後の全硬度は181ppmとなっており、全硬度の変化率は−11.3%である。従って、この試料5は白濁浮遊物が生じるおそれがある。試料10は、試験前の溶存二酸化炭素濃度が10ppmであり全硬度が205ppmであって、試験後の全硬度は192ppmとなっており、全硬度の変化率は−6.3%である。また、試料30〜110の結果においても、いずれも全硬度の低下が10%以内に留まっている。
【0035】
【表3】

表3によれば、試料5及び試料10は、それぞれ試験前の溶存二酸化炭素濃度が4ppm,10ppmであり、全硬度が271ppm,273ppmであって、試験後の全硬度は204ppm,229ppmとなっており、全硬度の変化率は−24.7%,−16,1%である。従って、この試料5,10は白濁浮遊物が生じるおそれがある。試料30は、試験前の溶存二酸化炭素濃度が28ppmであり全硬度が273ppmであって、試験後の全硬度は252ppmとなっており、全硬度の変化率は−7.7%である。また、試料50〜110の結果においても、いずれも全硬度の低下が10%以内に留まっている。
【0036】
【表4】

表4によれば、試料5〜試料30は、それぞれ試験前の溶存二酸化炭素濃度が4ppm,10ppm,32ppmであり、全硬度が326ppm,329ppm,334ppmであって、試験後の全硬度は232ppm,236ppm,289ppmとなっており、全硬度の変化率は−28.8%,−28,3%,−15,5%である。従って、この試料5,10,30は白濁浮遊物が生じるおそれがある。試料50の試験前の溶存二酸化炭素濃度が48ppmであり、全硬度が335ppmであって、試験後の全硬度は317ppmとなっており、全硬度の変化率は−5.4%である。従って、試料30の結果から、試験前の溶存二酸化炭素濃度が40ppmの場合は、試験後の全硬度の変化率は−9.4%になると推定できる。また、試料50〜110の結果においても、いずれも全硬度の低下が10%以内に留まっている。
【0037】
(考察)
表1〜4の結果を見れば、全硬度が105〜300ppmの範囲内にある飲料水において、溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmの範囲で選択されれば、得られた飲料水は、炭酸カルシウム等が析出し難いものであることが分かる。
【0038】
そして、試験前の飲料水の溶存二酸化炭素濃度が10ppm以上であるとき、その飲料水の全硬度が205ppm以下であれば試験後の全硬度の低下が10%以内に留まることが分かる。同様にして、試験前の飲料水の溶存二酸化炭素濃度が28ppm以上であるとき、その飲料水の全硬度が273ppm以下であれば、試験後の全硬度の低下が10%以内に留まる。さらに、試験前の飲料水の溶存二酸化炭素濃度が40ppm以上であるとき、その飲料水の全硬度が300ppm以下であれば、試験後の全硬度の低下が10%以内に留まることが分かる。
【0039】
(味に関する官能評価)
溶存二酸化炭素濃度と飲料水の味との関係を官能評価するために、溶存二酸化炭素濃度が異なる7種類(80〜115ppm)の水を用意し、30人の試験者が味に対する評価を[酸味を感じる][酸味を感じない][どちらとも言えない]の3種類の中から選択するようにした。なお、溶存二酸化炭素濃度が80ppm未満の場合は、酸味の有無について影響をほとんど与えないことが経験的に明らかなので、試料として採用していない。試験の結果を表5に示す。
【0040】
【表5】

表5によれば、溶存二酸化炭素濃度が100ppm以下の場合は、大半の試験者が酸味を感じないことが明らかであり、溶存二酸化炭素濃度が105ppmの場合を境にして、110ppm以上になれば、酸味を感じる試験者が増えてい。従って、本実施形態のように、溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmの範囲にある飲料水の味は、酸味に関する問題はないことが分かる。
【0041】
上記実施形態の飲料水及びその製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ミネラル成分を含む飲料水において、全硬度が105〜300ppmの範囲内にあり、溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmの範囲で適宜選択されている。従って、このようにして得られた飲料水は、全硬度が比較的高いにも拘らず、炭酸カルシウム等が析出し難く、白濁浮遊物の出現を防止できる。従って、外観品質が安定した商品価値の高い飲料水を実現できる。
【0042】
(2)上記実施形態では、マグネシウム硬度が全硬度の18%未満であるようにしたので、マグネシウムによる苦味や金属臭を感じることがなく、カルシウムによるまろやかさが感じられる飲料水を提供できる。
【0043】
(3)上記実施形態では、溶存二酸化炭素濃度の範囲を6〜100ppmとしたので、溶存二酸化炭素の影響による酸味がでることはないため、酸味を好まない人にもおいしく飲むことができる飲料水を提供できる。
【0044】
(4)上記実施形態では、全硬度の範囲を105〜300ppmとしたので、重苦しさや癖のある味は表れずに、まろやかな味を感じる飲料水を提供できる。
(5)上記実施形態では、飲料水を製造するに際し、原水に二酸化炭素を溶解させた後に、その原水を炭酸カルシウムを主体とする濾材に接触させてミネラル成分を付与した。そして、その処理液に再び二酸化炭素を溶解させるようにした。そのため、炭酸カルシウムが溶解してミネラル成分が付与された処理液は、原水に溶解した二酸化炭素が消費されているが、再び二酸化炭素を溶解させるので十分な溶存二酸化炭素濃度を有するものとなる。従って、カルシウムイオンが消費され炭酸カルシウムとなって析出することが起き難い飲料水を提供できる。なお、この場合、製造装置において一つの二酸化炭素供給装置15を用いて原水に二酸化炭素を二度溶解させるようになっているが、二つの二酸化炭素供給装置を用いて原水に二酸化炭素を別々に溶解させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明を具体化した飲料水の製造装置を示す構成図。
【図2】図1の製造装置における二酸化炭素供給装置の詳細を示す構成図。
【図3】通常の自然飲料水,特許文献1に記載の飲料水及び実施形態の飲料水の全硬度と二酸化炭素濃度とを示すグラフ。
【符号の説明】
【0046】
11…原水供給源、12…フィルタ装置、15…二酸化炭素供給装置、19…第1供給バルブ、20…第2チャンバー、21…カルシウム供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム及びマグネシウムを主体とするミネラル成分を含み、全硬度に対するカルシウム硬度が82%以上である飲料水において、
溶存二酸化炭素濃度が6〜100ppmの範囲にあるとともに、全硬度が105〜300ppmの範囲にあり、かつ60°Cに昇温後その温度を24時間維持された後に放冷されて室温になったときの全硬度の低下率が10%以内であることを特徴とする飲料水。
【請求項2】
溶存二酸化炭素濃度が20〜80ppmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の飲料水。
【請求項3】
溶存二酸化炭素濃度が40〜60ppmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の飲料水。
【請求項4】
全硬度が150〜350ppmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の飲料水。
【請求項5】
全硬度が200〜300ppmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の飲料水。
【請求項6】
前記溶存二酸化炭素濃度が10〜100ppmの範囲にあり、全硬度が105〜205ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の飲料水。
【請求項7】
前記溶存二酸化炭素濃度が28〜100ppmの範囲にあり、全硬度が105〜273ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の飲料水。
【請求項8】
前記溶存二酸化炭素濃度が40〜100ppmの範囲にあり、全硬度が105〜300ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の飲料水。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか一項に記載の飲料水を製造する方法であって、原水に二酸化炭素を溶解させた後に、炭酸カルシウムを主体とする濾材と接触させてミネラル成分が付与された処理液とし、その処理液に再び二酸化炭素を溶解させることを特徴とする飲料水の製造方法。
【請求項10】
前記ミネラル成分が炭酸水素カルシウムを主体としていることを特徴とする請求項5に記載の飲料水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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