説明

飲料水及び飲料水製造装置

【課題】 青色光による飲料水の改質の効果を更に高め、健康増進効果を向上させることを目的とする。
【解決手段】 一例として、海洋深層水を原料とする水40を貯蔵する循環系20を備えた貯水タンク10と、貯水タンク10内に貯蔵され、水面41を形成する滞留状態にある飲料水40に435nm〜480nmの範囲の波長の青色光50を照射する、筐体部14aに内蔵された蛍光ランプ14bを有する発光部14とを備えた、飲料水製造装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水及び飲料水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、広告、美術、又は視認性向上等を目的として、工業用途、下水用途等に用いられる水を光により着色することは広く知られている。
一方で、光の効果を利用して水を改質し、健康増進作用を高める技術も提案されている。そのような技術の例として、特許文献1及び2においては、浴槽内に照明を配置して、人体に青色光を照射することにより皮膚の知覚神経を刺激する技術が公開されている。
更に、特許文献3においては、吐水装置において、水路内を流れる水に青色光を照射することにより、飲料水を改質する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−095548号公報
【特許文献2】特開2009−095549号公報
【特許文献3】特開2009−097269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような光による水の改質技術に関し、特に上記特許文献3による飲料水の改質には以下の問題があると考えられる。例えば、上記吐水装置においては青色光の照射に対して、飲料水は流路中を流れる状態にあるが、他の状態について省察を行ったものではなかった。また、改質前の原料となる水の性質等について省察を行ったものではなかった。
すなわち、本願発明者は、青色光による飲料水の改質において更なる改善の余地があることを見いだした。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、青色光による飲料水の改質の効果を更に高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、滞留状態において青色光が照射された飲料水であることを特徴とする。
ここでの青色とは、後述の第4の側面の場合とは異なり、正常な色覚を持つ者による実際の見え方に焦点を当てたものである。その限りにおいて、具体的に用いる光源の如何によってはおよそ400〜530nmの範囲の波長分布を採り得る。
【0006】
又、本発明の第2の側面は、前記飲料水は、海洋深層水を原料とする、本発明の第1の側面の飲料水であることを特徴とする。
後記本発明の第3の側面とは異なり、その製造工程において何らかの形で海洋深層水が含まれていればよい。
すなわち、一般に市販される飲料水としての海洋深層水は、原海水に水や脱塩透過水等を加えて希釈させることにより飲料水の状態とされるが、かような状態における飲料水に滞留状態において青色光を照射することによって得られる飲料水を対象とするものである。
【0007】
又、本発明の第3の側面は、青色光が照射された海洋深層水を原料とする飲料水であることを特徴とする。
ここでは、原海水たる海洋深層水に直接青色光を照射し、その後希釈して飲料水を得ることを企図したものである。
【0008】
又、本発明の第4の側面は、前記青色光は435nm〜480nmの範囲の波長の光である、本発明の第1から第3のいずれかの側面の飲料水であることを特徴とする。
ここでは前述の第1の側面の場合と異なり、個々人による実際の見え方が色彩学上の何色であるかを問わない。
【0009】
又、本発明の第5の側面は、飲料水を貯蔵する貯水タンクと、
前記貯水タンク内に貯蔵され、滞留状態にある前記飲料水に青色光を照射する発光手段とを備えた、飲料水製造装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明によれば、青色光による飲料水の改質の効果を更に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る飲料水製造装置の構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る飲料水製造装置の構成を示す模式的平面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る飲料水の、インシュリン様成長因子(IGF−I)の産出を促すカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出濃度を測定した結果を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2における実験内容、方法を示す模式図である。
【図5】海洋深層水の摂取によるマウスの学習能力向上効果を測定したグラフを示す図である。
【図6】青色光を照射した海洋深層水の摂取によるマウスの学習能力向上効果を測定したグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1に係る飲料水製造装置1の模式的断面図であり、図2は、同模式的平面図である。各図に示すように、本実施の形態1に係る飲料水製造装置1は、略円筒形の外形を有する金属製の貯水タンク10、貯水タンク10の外部に設けられたロータリーポンプ20a、循環パイプ20b、20c、循環パイプ20c上に設けられた三方弁20d、並びに三方弁20dから分岐した取水パイプ20eから構成される循環系20、及び貯水タンク10を直立した状態で地上に配置するための4本の脚部30を備える。
貯水タンク10は、その上部に点検用に作業員等が内部に出入りするためのマンホール11、内壁には作業員等が昇降するためのタラップ12、飲料水の原料となる水40を外部から注ぐための注水口13、及び天井には青色光50を発生させるための発光部14とを備える。なお、貯水タンク10の上部にはマンホール11及び注水口13の他、外部からタンク内部を観察するための小窓、照明等を設けてもよいが、これらは周知技術であり図示及び詳細な説明は省略する。又、本実施の形態1においては貯水タンク10の貯水能力は8000Lであるものとしたが、貯水タンク10の寸法、容積、更には形状が任意であってよいことは言うまでもない。
【0014】
循環系20において、循環パイプ20bは貯水タンク10の上部壁面に、循環パイプ20cは貯水タンク10の底面に対してそれぞれ開口しており、これらに接続されたロータリーポンプ20aの駆動によって、貯水タンク10内に貯えられた水40を図中矢印A及びBに沿った経路で循環させることができる。三方弁20dは、図中矢印Bに沿って貯水タンク10から排出された水の向きを切り替える手段であって、貯水タンク10内に水を循環させる場合はロータリーポンプ20に向かった開状態となり、図中矢印Cに沿って外部へ水を取り出す場合は取水パイプ20eに向かった開状態となるよう切り換えられる。
【0015】
又、図2を参照して、発光部14は、平面形状が円形状である貯水タンク10の天井に点対称をなすよう配置された一対の照明灯であり、それぞれ筐体部14a、及び筐体部14aに収納された、青色光を発光させる4本の蛍光ランプ14bを備えている。蛍光ランプ14bとしては、電圧75Vにおいて約23Wの出力を有し、1660〜1825lumenの光束を発生するものを用いた。従って発光部14全体で13280〜14600lumenの光束を得ることができる。なお、筐体部14aには外部からの電源電圧を蛍光ランプ14bで使用可能にするための安定器又はインバータ等の電気部品も含まれているが、これらは周知技術であり図示及び説明は省略する。
【0016】
ここで、詳細な波長分布図等は省略するも、蛍光ランプ14bは435nm〜480nmの範囲で、安定的に青色光を照射可能なものを用いる。
以上のような構成を有する本発明の実施の形態1に係る飲料水製造装置の動作を説明するとともに、本発明の飲料水の一実施の形態について説明を行う。
【0017】
はじめに、注水口13から水40を所定量(規定量8000L以下の量)注水した後、水面41が安定した状態、すなわち貯水タンク10内にて水40が滞留した状態において発光部14を発光させ、貯水タンク10内の水40に青色光50を照射する。
照射時間は90分以上、より好ましくは2時間以上とする。但し、詳細な実験データは省略するも、3時間を超えて照射しても健康増進作用の増大しないことが判明している。
これにより、図1に示すように、水40は発光部14からの青色光50の到達範囲内において、健康増進作用を有する飲料水に改質される。改質が完成した後の水40は、飲料水として取水パイプ20eから外部に取り出すことができる。
【0018】
ここで、貯水タンク10は略円筒形状を呈しているため、貯水された水量などの原因で、発光部14からの青色光50が十分に貯水タンク10の底面まで到達しない場合、貯水タンク10の下方に滞留した水40の改質が十分に行われない虞れがある。
このような場合、循環系20を動作させ、三方弁20dをロータリーポンプ20に向けた開状態とすることにより、図1におけるA、Bの向きに水40を循環させる。必要な時間だけ水40を循環させた後に循環系20の動作を停止し、水40が安定した水面41を形成して滞留した後に、再び発光部14の発光、及び放置を行う。
これにより、貯水タンク10内の水40をむら無く改質することが可能となる。なお、循環系20の動作回数は0回〜複数回と、必要に応じて任意であってよい。又、循環系20を動作させながら発光部14の発光を行わせるようにしてもよい。少なくとも1回、水40が安定した水面41を形成して滞留した状態で発光部14の発光により青色光を水40に照射する工程が含まれていれば、これにより本発明の青色光が照射された飲料水が製造されたことになる。
更に、貯水タンク10の寸法が小さい等の理由により、発光部14からの青色光50が貯水タンク10の底面にまで十分届くような場合は、循環系20を省略した構成としてもよい。又、貯水タンク10の内壁は、青色光50を反射可能なように鏡面状の表面加工を施してもよい。
【0019】
上記特許文献3の技術についてすでに説明したように、従来の青色光による飲料水の改質は、あくまで水路上を流れる水に対して光を照射するものであるが、水の状態についての省察を欠いていた。具体的には、流路内の水を十分に改質するためには、流路自体を長くする必要があり、又、流路内をまんべんなく青色光で照明することの技術的困難性を伴うが、このような問題に対する省察を欠いていた。
これに対し、本実施の形態1の飲料水製造装置1においては、あくまで水40を滞留状態にした上で青色光50が照射されることで、飲料水としての十分な改質を実現することができる。
【0020】
なお、ここで本発明の滞留状態とは、水40が安定した水面41を形成する状態であると説明したが、水40が一定の又は無指向性の方向に流れる(位置を変える)ことのない状態であれば、本発明の滞留状態に含まれる。例えば、水面41が波打った状態であっても、波の媒体である水40自体の位置が移動していなければ、本発明の滞留状態は実現されている。
【0021】
なお、上記の構成において、飲料水製造装置1は本発明の飲料水製造装置に相当し、貯水タンク10は本発明の貯水タンクに相当し、発光部14は本発明の青色光を照射する発光手段に相当する。
【0022】
しかしながら本発明は上記の構成に限定されるものではない。発光部14は4本の蛍光ランプ14bにより構成されるものとしたが、蛍光ランプ14bの定格、本数等は上記実施の形態に限定されず、任意であってよい。LED光源、有機EL素子光源等を用いてもよい。要するに、本発明の、青色光を照射する発光手段は、青色光に相当する波長領域の光を照射可能な光源であれば、任意の技術的手段を用いてもよい。又、発光部14の配置は貯水タンク10の天井部分であるとしたが、側面であっても、底面であってもよく、貯水タンク10内の水40に対して青色光50を照射することが可能であれば、任意の場所であってよい。
さらには、貯水タンク10の外部に発光部14を配置してもよく、この場合、発光部14の万一の破損に備えて、水面41との間に強化ガラス等を介在させて飲料水を保護する構成も有効である。あるいは光ファイバ等の導光手段を用いて貯水タンク10と接続し、貯水タンク10の内部を青色光50により照射する構成としてもよい。これらも本発明の青色光を照射する発光手段に含まれる。
なお、上記の説明では青色光の波長として435nm〜480nmに亘る波長分布を例としているが、具体的に用いる光源や見る人の色覚の如何によっては実際の見え方が必ずしも青色である必要はない。すなわち、本発明の実施形態における青色とは、あくまでも435〜480nmの範囲内にある波長の光を言うのであり、そうである限り実際の見え方が緑又は紫に近いものであっても何らその健康増進作用に影響するものではない。
(実施の形態2)
【0023】
さらに、本願発明者は、青色光を用いて改質した飲料水においては、水として一般の水道水に換えて、海洋深層水を用いることで、さらなる健康増進作用が得られることを見いだした。
以下、原料として海洋深層水を用いて製造した本発明の飲料水等の効果について、マウスを用いた実験結果を実施例として、図3ないし図6を参照して説明を行う。
【0024】
図3は、マウスを被検体として、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の濃度(放出量)を測定した結果をグラフとして示した図である。ここでカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)とは、健康増進作用を有するインスリン様成長因子−I(IGF−I)の産生を促す物質である。
なお、CGRP濃度の測定は、上記マウスの培養脊髄後根神経節細胞を分離し、コラーゲンコートした35mmディッシュに入れ、5日間COインキュベーター(37℃)で培養するものであり、培養液1.8ml中には、減菌精製水を200マイクロリットル添加したものであり、これを37℃で30分間放置した後、培養液中のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の濃度(放出量)を測定することにより行った。なお、図3中においてnはサンプル数を示す。
減菌精製水としては、本発明の青色光を照射して改質した海洋深層水、比較例としての改質しない通常の海洋深層水、本発明の青色光を照射して改質した水道水、及び比較例としての改質しない水道水をそれぞれ添加したものを用い、比較を行った。
【0025】
図3に示すように、青色光を照射した場合は、青色光を照射しない例と比較して、CGRPの放出増加が観測されていることが分かる。さらに、海洋深層水を添加した減菌精製水においてもCGRPの放出増加が観測されているが、青色光を照射した場合は、水道水よりも大きな程度の放出増加を観測することができた。
この結果から、青色光照射による水の特性の改質において、海洋深層水を原料として用いることは、健康増進作用を付与するのに更に有効な方法であると言える。
【0026】
次に、図4ないし図6では、マウスを被検体とした学習能力向上効果についての実験方法及びその結果を示す。日を追う毎にマウスの遊泳時間の短縮が実現されたかを目安として、その学習効果を測定したものである。
図5中、白丸(Control)は通常の蒸留水の場合を、黒丸は蒸留海洋深層水(Deep−sea water)の場合を、nは個体数(サンプル数)をそれぞれ示す。
図4は図5及び図6の実験結果に対する実験方法を模式的に表したものであり、1日1回同時刻に、同量(約5cc)の蒸留水及び蒸留海洋深層水(ミネラルを含まない海洋深層水をいう。)をそれぞれ別のマウス5匹ずつ(計10匹)に4週間、予め経口投与する。4週間経過後、水温30℃、直径150cmのプールの一端にマウスを投入し、もう一方端にある直径10cmのプラットフォームをゴール地点としてマウスを遊泳させてそのタイムを計測することを、1日1回、5日間連続で実施した。遊泳時間は、90秒で打ち切りとしている。
なお、実験を行う5日間も、それまでと同一の条件で蒸留水又は蒸留海洋深層水をそれぞれマウスに経口投与している。
【0027】
その結果、図5に示すように、海洋深層水を飲用させたマウスでは通常の水を飲用させたマウスに比べて、3日目以降から時間が短縮され、次第に学習能力が向上していく傾向が見られた。これは、海洋深層水の摂取によってCGRPが増加することで産生が促されたIGF−Iが海馬に作用することで、認知機能の維持力が向上(最短距離を理解)したためと考えられる。
これにより、海洋深層水これ自体にも認知機能を向上させる効果のあることが分かる。
【0028】
次に、青色光を照射した蒸留海洋深層水を投与した場合を加えた実験結果を図6に示す。事前の経口投与を4週間から2週間に変更した点以外は、図5の場合と測定条件は同じである。
図6中、白丸は通常の蒸留水を飲用させた場合、黒い四角は蒸留海洋深層水を飲用させた場合、白い四角は青色光を照射させた蒸留海洋深層水を飲用させた場合をそれぞれ示す。
【0029】
図6から明らかなとおり、実験開始から3日目まではいずれの飲料水を摂取した場合にも有意な差は見られない。しかし、2週間しか経口投与を行っていないにもかかわらず、青色光を照射させた蒸留海洋深層水を与えた場合には実験4日目にして早くもマウスの学習能力が向上していることが分かる。
すなわち、青色光を照射させた蒸留海洋深層水を飲用した場合には、その他の飲料数を摂取した場合と比較して、より早い段階で短期記憶から長期記憶への転換が起こり、記憶が安定することが言える。
【0030】
なお、上記の実施の形態2においては、原料である海洋深層水は従来例と同様、任意の状態で青色光を照射するものとしたが、実施の形態1の飲料水製造装置1において水40として海洋深層水を用いれば、更なる健康増進効果が得られることは言うまでもない。
要するに、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内であれば、上記実施の形態に種々の変更を加えてもよい。
【0031】
以上説明したように、本発明の飲料水及び飲料水製造装置は、青色光による水の改質効果を更に高めることを実現している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のような本発明によれば、青色光による飲料水の改質の効果を更に高める効果を有し、一例としては、飲料水、健康食品等に用いて好適である。
【符号の説明】
【0033】
1 飲料水製造装置
10 貯水タンク
11 マンホール
12 タラップ
13 注水口
14 発光部
14a 筐体部
14b 蛍光ランプ
20 循環系
20a ロータリーポンプ
20b、20c 循環パイプ
20d 三方弁
20e 取水パイプ
30 脚部
40 水
41 水面
50 青色光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滞留状態において青色光が照射された飲料水。
【請求項2】
前記飲料水は、海洋深層水を原料とする、請求項1に記載の飲料水。
【請求項3】
青色光が照射された海洋深層水を原料とする飲料水。
【請求項4】
前記青色光は435nm〜480nmの範囲の波長の光である、請求項1から3のいずれかに記載の飲料水。
【請求項5】
飲料水を貯蔵する貯水タンクと、
前記貯水タンク内に貯蔵され、滞留状態にある前記飲料水に青色光を照射する発光手段とを備えた、飲料水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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