説明

飲料注出装置のディスペンスヘッド

【課題】メンテナンスの手間を軽減することが可能な飲料注出装置のディスペンスヘッドを提供する。
【解決手段】ビール樽100の口金部101に装着され、スピアバルブ102のメインシールパッキン105を操作して口金部101を開閉する飲料注出装置のディスペンスヘッド1において、メインシールパッキン105を覆うように口金部101に装着可能なヘッド本体2と、ヘッド本体2に着脱可能に取り付けられる挿入ディスク3と、を備え、挿入ディスク3には飲料を外部に案内する飲料通路40が設けられ、ヘッド本体2は、取り付けられた挿入ディスク3がメインシールパッキン105と対向するように口金部101に装着されるハウジング10と、ビール樽100内と飲料通路40とを連通させる開放位置とその連通を遮断する閉鎖位置との間で移動可能なプランジャ11と、プランジャ11を操作する操作ハンドル12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール樽等の飲料容器から飲料を取り出すための飲料注出装置に設けられるディスペンスヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ビール樽等の飲料容器内に加圧されたガスを導入してその飲料容器から飲料を取り出す飲料注出装置が知られている。このような飲料注出装置では、飲料容器に注出ヘッド(ディスペンスヘッドとも呼ばれる。)が取り付けられ、その注出ヘッドを介して飲料が取り出される。例えば、内部に冷蔵室が設けられるとともに上部に中空の注出ロッドが設けられ、冷蔵室に収容された飲料容器の注出ヘッドから延びる注出ラインを注出ロッド内を通してその注出ロッドの先端まで配置し、この注出ラインを介して飲料容器から飲料を取り出すものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特表2003−534999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に飲料注出装置に対しては、定期的にメンテナンスが行われる。この際、飲料が流れる部分の洗浄が行われる。特許文献1の装置では、注出ラインを洗浄することによりディスペンスヘッドの飲料の出口から飲料注出口までの洗浄を容易に行うことができるが、ディスペンスヘッド内の洗浄はそのヘッド内に洗浄液を導入する必要がある。そのため、メンテナンスに手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、メンテナンスの手間を軽減することが可能な飲料注出装置のディスペンスヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲料注出装置のディスペンスヘッドは、飲料容器(100)の口金部(101)に装着され、前記口金部に設けられたスピアバルブ(102)のメインシールパッキン(105)を操作して前記口金部を開閉する飲料注出装置のディスペンスヘッド(1)において、前記メインシールパッキンを覆うように前記口金部に装着可能なヘッド本体(2)と、前記ヘッド本体に着脱可能に取り付けられる弁操作部材(3)と、を備え、前記弁操作部材には、前記飲料容器から注出された飲料を外部に案内する飲料通路(40)が設けられ、前記ヘッド本体は、前記弁操作部材が取り付けられる装着部を有するとともに前記装着部に取り付けられた前記弁操作部材が前記メインシールパッキンと対向し、かつ前記メインシールパッキンを覆うように前記口金部に装着されるハウジング(10)と、前記弁操作部材が前記メインシールパッキンを下方に押し込むように前記装着部内に突出して前記飲料容器内と前記飲料通路とを連通させる開放位置と、前記弁操作部材が前記メインシールパッキンから離れるように前記開放位置よりも上方に移動して前記飲料容器内と前記飲料通路との連通を遮断する閉鎖位置との間で移動可能なように前記ハウジングに設けられたプランジャ(11)と、前記プランジャを前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するプランジャ操作手段(12)と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明のディスペンスヘッドによれば、飲料通路が設けられた弁操作部材がヘッド本体に対して着脱可能であるため、メンテナンス時にはその弁操作部材をヘッド本体から外して洗浄したり弁操作部材を交換したりすることができる。そのため、ディスペンスヘッドのメンテナンスの手間を軽減することができる。また、本発明のディスペンスヘッドでは、弁操作部材がヘッド本体に取り付けられるので、ヘッド本体に弁操作部材を取り付けた後は飲料通路がヘッド本体に設けられている従来のディスペンスヘッドと同様の装着方法で飲料容器に装着したり飲料容器から取り外したりすることができる。
【0008】
本発明のディスペンスヘッドの一形態において、前記弁操作部材は、前記飲料通路が設けられ、前記メインシールパッキンを操作する操作部材(30)と、前記操作部材の外周に前記操作部材と同軸に設けられて前記操作部材を軸線方向に移動可能に支持し、かつ前記装着部に嵌る外筒部(31)と、を備えていてもよい。この場合、外筒部を装着部に嵌めることにより、操作部材を軸線方向に移動可能な状態で容易にヘッド本体に取り付けることができる。
【0009】
この形態において、前記プランジャの下端には、下方に突出する円筒状の挿入部(11a)が設けられ、前記操作部材の上面の中央には、下方に凹み、前記挿入部が挿入される嵌合穴(34)が設けられていてもよい。この場合、プランジャの挿入部が操作部材の嵌合穴に挿入されることにより、プランジャと操作部材とを容易に同軸にすることができる。
【0010】
本発明のディスペンスヘッドの一形態において、前記プランジャの内部には、上下方向に貫通するガス流路(16)が設けられ、前記ガス流路には、前記プランジャが前記閉鎖位置の場合に前記ガス流路の下端に嵌って前記ガス流路を閉塞させ、前記プランジャが前記開放位置の場合に前記操作部材と接触して前記ガス流路を開放する弁体(19)が設けられていてもよい。この場合、プランジャが閉鎖位置の場合は弁体がガス流路を閉塞させるので、このガス流路にガスが導入されてもガス流路から先にガスが導入されることを防止できる。一方、プランジャが開放位置の場合はガス流路が開放されるので、このガス流路を介してガスを所定の供給先に導入することができる。
【0011】
本発明のディスペンスヘッドの一形態において、前記操作部材は、前記飲料容器内に供給されるべきガスが一端から他端に向かって流れるとともに前記他端が前記操作部材の側面に開口するガス通路(41)と、前記ガス通路の前記他端を覆うように設けられ、上端のみが前記操作部材の側面に固定される筒状のパッキン部材(39)と、を備えていてもよい。パッキン部材は上端のみが操作部材の側面に固定されているので、ガス通路内からガスが流出する場合は外側に広がってガスの流出を許可する。一方、ガスが他端からガス通路内に流入しようとする場合はパッキン部材が操作部材の側面に密着するので、そのガスの進入を防止できる。そのため、このようにパッキン部材を設けることによりこのパッキン部材を逆止弁として機能させることができる。
【0012】
本発明のディスペンスヘッドの一形態において、前記飲料通路は、少なくとも出口側の一部の区間(40b)が斜め上方に向かって延びていてもよい。このように飲料通路の一部の区間を傾斜させることにより、飲料通路内に残留する飲料を低減することができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明のディスペンスヘッドによれば、飲料通路が設けられている弁操作部材がヘッド本体に対して着脱可能であるため、ディスペンスヘッドのメンテナンスの手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図3は、本発明の一形態に係るディスペンスヘッドを示している。なお、図1はディスペンスヘッド1の斜視図を示し、図2はディスペンスヘッド1を上から見た図を示している。また、図3は図2のIII−III線におけるディスペンスヘッド1の断面を示している。このディスペンスヘッド1は、飲料容器としてのビール樽100(図6参照)から飲料を注出する飲料注出装置に設けられるものであり、ビール樽100の口金部101に装着される。なお、ビール樽100は、製造工場で製造したビールや発泡酒などの飲料を料飲店などに流通させるための周知のものである。ビール樽100の口金部101には、スピアバルブ102が設けられている。以下では、まず図4及び図5を参照してスピアバルブ102について説明する。なお、図4は閉弁状態のスピアバルブ102を示し、図5は開弁状態のスピアバルブ102を示している。なお、一部の構成要素に関しては、中心線CLよりも右側において外観を、左側において断面をそれぞれ示している。
【0016】
スピアバルブ102は、ビール樽100の開口部100aにねじ込まれるバルブケース103と、上端部がバルブケース103の中心部に挿通された飲料注出管104と、飲料注出管104の上端外周に嵌め合わされるメインシールパッキン105と、そのメインシールパッキン105をバルブケース103のフランジ103aの内周の弁座103bに押し当てるコイルばね106とを有している。図4に示すように、メインシールパッキン105が弁座103bに押し付けられた閉弁状態ではバルブケース103内のガス流路107がビール樽100の外部に対して閉鎖され、かつ飲料注出管104の上端の開口104aもメインシールパッキン105にて閉鎖される。一方、図5に示すようにコイルばね106に抗してメインシールパッキン105が押し下げられた開弁状態の場合にはメインシールパッキン105が弁座103bから離れてガス流路107がビール樽100の外部に開放され、かつ飲料注出管104の開口104aもメインシールパッキン105の上方に露出する。なお、ガス流路107はバルブケース103の下端の開口103cを介してビール樽100の内部空間と連通している。
【0017】
次に、図1〜図3、図6及び図7を参照してディスペンスヘッド1について説明する。なお、図6は口金部101に装着した状態のディスペンスヘッド1の内部構成を示し、図7は飲料注出時におけるディスペンスヘッド1の内部構成を示している。なお、図6及び図7では、スピアバルブ102の一部の図示を省略している。図3に示したようにディスペンスヘッド1は、ヘッド本体2と、ヘッド本体2に着脱可能に取り付けられる弁操作部材としての挿入ディスク3とを備えている。ヘッド本体2は、ハウジング10と、ハウジング10に昇降可能に設けられるプランジャ11と、プランジャ11を操作するプランジャ操作手段としての操作ハンドル12とを備えている。
【0018】
ハウジング10の内部には、挿入ディスク3が取り付けられる装着部13と、プランジャ11が挿入される挿入孔14とが設けられている。装着部13は、ハウジング10の中心線CL上に形成される。挿入孔14は、その一端が装着部13の上面に開口し、かつ装着部13と同軸になるように形成されている。図3に示したように装着部13は、挿入ディスク3が取り付けられた場合に挿入ディスク3のカバー部31が嵌る嵌合部13aと、嵌合部13aの下方に設けられて挿入ディスク3のボディパッキン32が配置される大径部13bと、嵌合部13aの上方に設けられ、挿入孔14に近付くに伴って漸次内径が小さくなる傾斜部13cとを備えている。
【0019】
嵌合部13aと傾斜部13cとの境界には、段差部13dが設けられている。この段差部13dは、装着部13に挿入ディスク3が取り付けられたときにカバー部31の上端が接触し、かつボディパッキン32の下端が装着部13から若干下方に出る位置に設けられている。また、図2に示したように装着部13の側面には、外部に開口する複数(図2では2つ)の開口部13eが設けられている。これらの開口部13eは、挿入ディスク3から延びるビールホース36を通すためのものであり、互いに異なる方向を向くように設けられている。挿入孔14の下部には、挿入ディスク3の上端に設けられている係合爪33が噛み合う溝14aが全周に亘って設けられている。ハウジング10の下端外周にはバルブ嵌合部15が設けられている。そのバルブ嵌合部15をスピアバルブ102のフランジ103aの外周と噛み合わせることにより、図6に示したようにヘッド本体2がメインシールパッキン105を覆うように口金部101に装着される。
【0020】
図3に示したようにプランジャ11は、その中心線CLを貫くガス流路16が内部に設けられた中空部材として構成されている。プランジャ11は、例えば合成樹脂やフッ素樹脂などで形成される。プランジャ11の下端には挿入部11aが設けられ、挿入部11aの外周にはOリング17が設けられている。挿入部11aは、装着部13内に突出しており、挿入ディスク3の上面に設けられている嵌合穴34に嵌る。挿入部11aの下面には、ガス流路16と連通するようにガス流路16の周囲に形成されて内側に凹む凹部11bが設けられている。プランジャ11の外周面には、操作ハンドル12の作用部21と噛み合う係合溝11cが設けられている。ガス流路16の下端には絞り部16aが設けられ、ガス流路16の上端には不図示のガスホースを接続するための接続具18が設けられている。ガス流路16内には、外径がガス流路16の内径よりも若干小さい弁体19が設けられている。弁体19は、絞り部16a側の先端19aが絞り部16aの傾斜面と同じ角度で漸次細くなるように形成されている。そのため、弁体19が絞り部16aに嵌ることにより、弁体19にて絞り部16aを閉じてガス流路16を閉塞させることができる。また、この先端19aは、弁体19が絞り部16aに嵌っている場合にプランジャ11の下端から外に突出するように形成されている。
【0021】
プランジャ11は、図7に示したように装着部13内に突出する開放位置と、図6に示したように開放位置よりも上方に移動した閉鎖位置との間で移動可能なようにハウジング10に設けられている。図7に示したようにプランジャ11は、開放位置において挿入ディスク3を下方に押し出し、これによりメインシールパッキン105を下方に押し込んでスピアバルブ102を開弁させる。一方、図6に示したようにプランジャ11は、閉鎖位置において挿入ディスク3がメインシールパッキン105から離れるように上方に移動し、これによりスピアバルブ102を閉弁させる。
【0022】
操作ハンドル12は、その一端に設けられた支軸20と、他端に設けられたハンドル部21と、支軸20とハンドル部21との間に設けられた作用部22とを備えている。支軸20はハウジング10に回転自在に支持されている。そのため、操作ハンドル12は、支軸20を中心として上下方向に揺動可能なようにハウジング10に支持される。操作ハンドル12は、ハンドル部21が支軸20とはプランジャ11を挟んで反対の側に位置し、かつ作用部22がプランジャ11の係合溝11cと噛み合うようにハウジング10に取り付けられる。このように作用部22とプランジャ11の係合溝11cとを噛み合わせることにより、操作ハンドル12の上下方向への揺動に伴ってプランジャ11を開放位置と閉鎖位置との間で操作することができる。操作ハンドル12が図6に示した位置に操作されるとプランジャ11が閉鎖位置に移動し、図7に示した位置に操作されるとプランジャ11が開放位置に移動するので、図6の操作ハンドル12の位置を閉鎖位置と称し、図7の操作ハンドル12の位置を開放位置と称することがある。
【0023】
図1に示したようにハンドル部21と対向するハウジング10の外面には、操作ハンドル12を開放位置に保持するための保持部10aが設けられている。また、ハンドル部21には、この保持部10aと噛み合う突出部21a(図6参照)が設けられている。この突出部21aはハンドル部21内に後退可能なように設けられており、ハンドル部21内には突出部21aをハンドル部21から突出させる方向に付勢する不図示のバネが設けられている。そのため、突出部21aは、ハンドル部21が操作されるとハウジング10の外面の形状に従ってハンドル部21内に後退したり、ハンドル部21から突出したりする。ハンドル部21が図6に示した閉鎖位置から下方に操作されると、突出部21aはハウジング10の外面の形状に従って一旦ハンドル部21内に後退し、その後不図示のバネにて付勢されて保持部10aに嵌る。このように突出部21aが保持部10aと噛み合うことにより、操作ハンドル12が開放位置に保持される。ハンドル部21を図7に示した開放位置から上方に操作した場合も、同様にハウジング10の外面の形状に従って突出部21aがハンドル部21内に後退するので、これにより突出部21aと保持部10aとの噛み合いを解除することができる。そのため、操作ハンドル12を開放位置から閉鎖位置に操作することができる。
【0024】
図3、図8及び図9を参照して挿入ディスク3について説明する。図8は挿入ディスク3の斜視図を示し、図9は挿入ディスク3の分解図を示している。なお、図8においては構成要素の一部を断面で示す。図9に示したように挿入ディスク3は、操作部材30と、操作部材30の外側に設けられる外筒部としての円筒状のカバー部31と、カバー部31の下端に取り付けられるボディパッキン32とを備えている。カバー部31は、操作部材30がカバー部31に対して中心線CL方向に移動可能なように操作部材30を支持している。ボディパッキン32は、ディスペンスヘッド1をスピアバルブ102に取り付けた状態でスピアバルブ102のフランジ103aと全周に亘って密着するようにカバー部31に取り付けられている。
【0025】
まず、操作部材30について説明する。操作部材30の上面からは上方に向かって円筒状の係合爪33が延びている。係合爪33は、その外径がヘッド本体2の挿入孔14の内径とほぼ同じになるように形成されている。また、係合爪33は、挿入ディスク3がヘッド本体2の装着部13に装着された場合に挿入孔14の溝14aと噛み合う。これによりヘッド本体2に挿入ディスク3を同軸に取り付けることができる。係合爪33の内側には、下方に凹む嵌合穴34が設けられている。嵌合穴34は、その直径がプランジャ11の挿入部11aの直径よりも大きく、かつOリング17の外径よりも小さくなるように形成されている。嵌合穴34の深さは、操作ハンドル12が閉鎖位置の場合にプランジャ11に設けられている弁体19の先端19aが嵌合穴34の底面34aと接触せず、かつ操作ハンドル12が開放位置に切り替えられるとプランジャ11の下端が底面34aと接触するように設定される。
【0026】
操作部材30の下端には、円筒状の操作部35が設けられている。操作部材30の側面には、ビールホース36が接続される接続具37及びフランジ38(図8参照)が設けられている。接続具37は、その出口が操作部材30の側面から斜め上方を向くように傾いて設けられている。ビールホース36の他端は、所定の飲料注出先、例えばディスペンサーなどに接続される。フランジ38は、接続具37よりも下方にリング状に設けられ、側面から全周に亘って外側に突出している。フランジ38には、パッキン部材としてのサイドパッキン39が取り付けられている。
【0027】
サイドパッキン39は、フランジ38に嵌め込まれるリング部39aと、リング部39aから下方に延びる円筒状の円筒部39bと、リング部39aから下方に向かって外側に漸次広がるスカート部39cとを備えている。サイドパッキン39は、リング部39aにてフランジ38に取り付けられている。そのため、円筒部39bは内側から力が作用すると外側に広がる。操作部35の内径は飲料注出管104の上端部の外径よりも大きく設定されている。操作部35の外径は、メインシールパッキン105の内径よりも大きくかつメインシールパッキン105の外径よりも小さく設定されている。より詳しくは、図7に示したように操作部35がメインシールパッキン105を押し下げた状態において操作部35とバルブケース103との間にサイドパッキン39が挿入され、かつサイドパッキン39の円筒部39bが外側に広がって操作部35から離れることが可能な程度の隙間が操作部35とバルブケース103との間に設けられるように操作部35の外径が設定される。スカート部39cは、カバー部31の内面と接触し、操作部材30とカバー部31との間に形成される空間のうちフランジ38より上側の空間とフランジ38より下側の空間とを区切る。
【0028】
図3に示したように操作部材30の内部には、飲料通路40及びガス通路41が設けられている。飲料通路40は、一端が操作部35の内部空間に開口している。一方、飲料通路40の他端には接続具37が設けられている。飲料通路40は、操作部35の内部空間から中心線CL上を上方に延びる第1区間40aと、その第1区間40aから接続具37に向かって延びる第2区間40bとを備えている。第1区間40aは、内部容積が小さくなるように上方に向かうほど直径が漸次小さくなるように形成されている。第1区間40aと第2区間40bとは、接続具37が設けられている高さよりも低い位置で接続されている。そのため、第2区間40bは、斜め上方に延びるように形成される。
【0029】
ガス通路41は、一端41aが嵌合穴34の底面34aに開口し、他端41bが操作部材30の側面に開口するように形成されている。ガス通路41の一端41aは、挿入ディスク3がヘッド本体2に装着されたときに中心軸CLから外れた位置であり、かつプランジャ11の下端に設けられた凹部11bと対向するように設けられている。ガス通路41の他端41bは、フランジ38よりも下方において操作部材30の側面に開口している。サイドパッキン39の円筒部39bはその他端41bを覆うように設けられている。上述したように円筒部39bは内側から力が作用すると外側に広がる。一方、外側から力が作用すると操作部材30の側面に密着する。すなわち、円筒部39bは、ガス通路41の他端41bから外部へのガスの流出は許容し、外部から他端41bを介してガス通路41にガスや飲料が流入することは阻止する逆止弁として機能する。
【0030】
カバー部31は操作部材30と同軸になるように操作部材30に取り付けられている。カバー部31の外径は、装着部13の嵌合部13aにゆるみばめで嵌るように設定されている。カバー部31の側面には、外部に開口する開口部31aが設けられている。この開口部31aは、操作部材30の接続具37をカバー部31の外に出すためのものである。開口部31aの両側には、外側に向かって突出する一対のガイド部42が設けられている。これらガイド部42は、外側の幅がハウジング10に設けられている開口部13eの幅と同じになるように設けられている。そのため、これら一対のガイド部42がヘッド本体2の開口部13eに挿入されるように挿入ディスク3をヘッド本体2に取り付けることにより、ヘッド本体2に対する挿入ディスク3の位置合わせを容易に行うことができる。
【0031】
カバー部31の上端には、全周に亘って径方向内側に突出するガイドカラー43が設けられている。ガイドカラー43の内径は、フランジ38より上方の操作部材30がガイドカラー43の内側にゆるみばめで嵌るように設定されている。操作部材30は、このガイドカラー43及びサイドパッキン39のスカート部39cによって中心線CL方向に沿って移動可能なようにカバー部31に支持される。カバー部31は、その高さが操作部材30の高さより低く設定されている。この高さの差は、挿入ディスク3を装着部13に装着した場合に操作部材30の下端とカバー部31の下端とをほぼ揃えた状態でカバー部31の上端が装着部13の段差部13dと接触し、かつ操作部材30の係合爪33が挿入孔14の溝14aに噛み合うように設定される。カバー部31の下端には径方向外側に突出するフランジ44が設けられており、ボディパッキン32はこのフランジ44に取り付けられている。カバー部31の内部には、操作部材30が操作部材30の下端とカバー部31の下端とがほぼ揃う位置から上に移動することを防止するための段差45(図8参照)が設けられている。そして、この段差45及びボディパッキン32によって操作部材30がカバー部31から脱落することを防止している。
【0032】
図3、図6及び図7を参照してビール樽100へのディスペンスヘッド1の装着方法について説明する。ディスペンスヘッド1は、図3に示した状態で口金部101に装着される。そのため、まず挿入ディスク3がヘッド本体2に取り付けられる。挿入ディスク3の取り付けを行う場合、ヘッド本体2においてはプランジャ11が閉鎖位置に移動するように操作ハンドル12が上方に操作される。この操作により、挿入ディスク3の取り付け時に挿入ディスク3がプランジャ11の下端と当たることを防止できる。挿入ディスク3は、係合爪33を上にしてヘッド本体2の下方から装着部13に取り付けられる。この取り付け時、挿入ディスク3の一対のガイド部42は、ヘッド本体2の開口部13eに挿入される。なお、2つの開口部13eのうちのいずれに挿入するかはビール樽100が置かれている場所などに応じて適宜決めればよい。その後、挿入ディスク3は、係合爪33が挿入孔14の溝14aと噛み合うまでヘッド本体2内に押し込まれる。そして、係合爪33が溝14aに噛み合うことにより、ヘッド本体2への挿入ディスク3の取り付けが完了する。
【0033】
その後、ディスペンスヘッド1は口金部101に装着される。この際、まず図6に示したようにディスペンスヘッド1のバルブ嵌合部15がスペアバルブ102のフランジ103aに噛み合わされる。次に、図7に示したようにプランジャ11が開放位置に移動するように操作ハンドル12が下方に押し込まれる。操作ハンドル12のこの操作によってプランジャ11が操作部材30を下方に押し、係合爪33と溝14aとの噛み合いが解除されて操作部材30がヘッド本体2よりも下方に押し出される。これにより、スピアバルブ102のメインシールパッキン105が操作部材30の操作部35によって内部に押し込まれる。そのため、飲料注出管104の開口104aがメインシールパッキン105の上方に露出し、飲料注出管104と操作部35の内部空間とが連通される。また、このように操作ハンドル12が開放位置に操作されるとプランジャ11の下端が嵌合穴34の底面34aと接触し、これにより弁体19が上方に押し上げられてガス流路16の下端が開放される。そのため、プランジャ11のガス流路16と操作部材30のガス通路41とが連通される。また、操作部35がメインシールパッキン105を押し込んだことにより、操作部材30とカバー部31との間の空間のうちフランジ38より下側の空間とスピアバルブ102のガス流路107とが連通される。
【0034】
この状態においてガス流路16にガスが導入されると、そのガスはガス流路16を介してガス通路41に導かれる。ガス通路41のガスは、サイドパッキン39を外側に押し広げて操作部材30とカバー部31との間の空間に流入し、その後ガス流路107を介してビール樽100の内部に流入する。そして、このガスによってビール樽100内の飲料が飲料注出管104から押し出される。上述したように図7の状態では、飲料注出管104と操作部35の内部空間とが連通しているので、飲料注出管104から押し出された飲料を操作部35の内部空間から飲料通路40及びビールホース36を介してディスペンサーなどの所定の飲料注出先に送り込むことができる。
【0035】
ディスペンスヘッド1を口金部101から取り外す場合は、まず操作ハンドル12を閉鎖位置に戻し、その後ディスペンスヘッド1を口金部101から外せばよい。操作ハンドル12を上方に操作することにより、プランジャ11が閉鎖位置に移動するので、操作部材30がスペアバルブ102のコイルバネ106によって上方に押し上げられる。これにより、挿入ディスク3の係合爪33がヘッド本体2の溝14aと再度噛み合う。そのため、口金部101からヘッド本体2と挿入ディスク3とを一体に取り外すことができる。なお、ヘッド本体2から挿入ディスク3を取り外すには、例えば図10に示したようにディスペンスヘッド1を口金部101に装着していない状態で操作ハンドル12を開放位置に操作すればよい。この操作により挿入ディスク3の係合爪33とヘッド本体2の溝14aとの噛み合いが解除されるので、挿入ディスク3をヘッド本体2から容易に取り外すことができる。
【0036】
以上に説明したように、本発明のディスペンスヘッド1によれば、飲料通路40が設けられている挿入ディスク3がヘッド本体2に着脱可能であるため、メンテナンス時には挿入ディスク3をヘッド本体2から外して洗浄したり挿入ディスク3を交換したりすることができる。そのため、ディスペンスヘッド1のメンテナンスの手間を軽減できる。また、このディスペンスヘッド1では、挿入ディスク3をヘッド本体2に取り付けた後は口金部101への装着時及び口金部101からの取り外し時にこれらを一体に扱うことができる。そのため、ヘッド本体に飲料通路が設けられている従来のディスペンスヘッドと同様の装着方法でビール樽100に装着したりビール樽100から取り外したりできる。
【0037】
図3に示したように挿入ディスク3は、カバー部31が装着部14に嵌り、係合爪33が溝14aと噛み合い、かつ嵌合穴34にプランジャ11の挿入部11aが挿入された状態でヘッド本体2に取り付けられる。そのため、係合爪33と溝14aとの噛み合い及び嵌合穴34への挿入部11aの挿入により、挿入ディスク3をヘッド本体2に対して容易に同軸に取り付けることができる。また、カバー部31が装着部14に嵌ることにより、操作部材30を軸線方向に移動可能な状態で容易にヘッド本体2に取り付けることができる。
【0038】
プランジャ11のガス流路16内に設けられている弁体19は、プランジャ11が閉鎖位置の場合にガス流路16を閉塞させ、プランジャ11が開放位置に移動すると操作部材30と接触してガス流路16を開放する。そのため、このような弁体19を設けることにより、プランジャ11が閉鎖位置の場合にはガス流路16から先への無駄なガスの導入を防止することができる。
【0039】
上述したようにサイドパッキン39の円筒部39bは逆止弁として機能するため、このサイドパッキン39でビール樽100からガス通路41内へのガスの逆流を防止できる。そのため、ガスが流れる部分に逆止弁を設けることなく、簡素な構成でガス通路41及びガス流路16が飲料のミストで汚れることを防止できる。
【0040】
飲料通路40は、接続具37が設けられる出口側の第2区間40bが斜め上方に延びるように形成されているので、少なくともこの第2区間40bに飲料が残留することを防止できる。そのため、飲料通路40内に残留する飲料を低減することができる。
【0041】
本発明は上述した形態に限定されることなく種々の形態にて実施してよい。例えば、挿入ディスクの操作部材とカバー部とは一体であってもよい。この場合、プランジャにより挿入ディスク全体が装着部の内面に沿って上下方向に移動することにより、スピアバルブの開閉が行われる。プランジャを操作するプランジャ操作手段は操作ハンドルに限定されず、例えばガス圧を利用してプランジャを駆動する駆動機構がヘッド本体に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一形態に係るディスペンスヘッドの斜視図。
【図2】本発明のディスペンスヘッドを上から見た図。
【図3】図2のIII−III線におけるディスペンスヘッドの断面を示す図。
【図4】閉弁状態のスピアバルブを示す図。
【図5】開弁状態のスピアバルブを示す図。
【図6】ビール樽の口金部に装着した状態のディスペンスヘッドの内部構成を示す図。
【図7】飲料注出時におけるディスペンスヘッドの内部構成を示す図。
【図8】挿入ディスクの斜視図。
【図9】挿入ディスクを分解して示す図。
【図10】挿入ディスクの取り外しを行っているときのディスペンスヘッドの内部構成を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1 ディスペンスヘッド
2 ヘッド本体
3 挿入ディスク(弁操作部材)
10 ハウジング
11 プランジャ
11a 挿入部
12 操作ハンドル(プランジャ操作手段)
14 装着部
16 ガス流路
19 弁体
30 操作部材
31 カバー部(外筒部)
34 嵌合穴
39 サイドパッキン(パッキン部材)
40 飲料通路
40b 第2区間
41 ガス通路
100 ビール樽(飲料容器)
101 口金部
102 スピアバルブ
105 メインシールパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の口金部に装着され、前記口金部に設けられたスピアバルブのメインシールパッキンを操作して前記口金部を開閉する飲料注出装置のディスペンスヘッドにおいて、
前記メインシールパッキンを覆うように前記口金部に装着可能なヘッド本体と、前記ヘッド本体に着脱可能に取り付けられる弁操作部材と、を備え、
前記弁操作部材には、前記飲料容器から注出された飲料を外部に案内する飲料通路が設けられ、
前記ヘッド本体は、前記弁操作部材が取り付けられる装着部を有するとともに前記装着部に取り付けられた前記弁操作部材が前記メインシールパッキンと対向し、かつ前記メインシールパッキンを覆うように前記口金部に装着されるハウジングと、前記弁操作部材が前記メインシールパッキンを下方に押し込むように前記装着部内に突出して前記飲料容器内と前記飲料通路とを連通させる開放位置と、前記弁操作部材が前記メインシールパッキンから離れるように前記開放位置よりも上方に移動して前記飲料容器内と前記飲料通路との連通を遮断する閉鎖位置との間で移動可能なように前記ハウジングに設けられたプランジャと、前記プランジャを前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するプランジャ操作手段と、を備えていることを特徴とする飲料注出装置のディスペンスヘッド。
【請求項2】
前記弁操作部材は、前記飲料通路が設けられ、前記メインシールパッキンを操作する操作部材と、前記操作部材の外周に前記操作部材と同軸に設けられて前記操作部材を軸線方向に移動可能に支持し、かつ前記装着部に嵌る外筒部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の飲料注出装置のディスペンスヘッド。
【請求項3】
前記プランジャの下端には、下方に突出する円筒状の挿入部が設けられ、
前記操作部材の上面の中央には、下方に凹み、前記挿入部が挿入される嵌合穴が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の飲料注出装置のディスペンスヘッド。
【請求項4】
前記プランジャの内部には、上下方向に貫通するガス流路が設けられ、
前記ガス流路には、前記プランジャが前記閉鎖位置の場合に前記ガス流路の下端に嵌って前記ガス流路を閉塞させ、前記プランジャが前記開放位置の場合に前記操作部材と接触して前記ガス流路を開放する弁体が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の飲料注出装置のディスペンスヘッド。
【請求項5】
前記操作部材は、前記飲料容器内に供給されるべきガスが一端から他端に向かって流れるとともに前記他端が前記操作部材の側面に開口するガス通路と、前記ガス通路の前記他端を覆うように設けられ、上端のみが前記操作部材の側面に固定される筒状のパッキン部材と、を備えていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の飲料注出装置のディスペンスヘッド。
【請求項6】
前記飲料通路は、少なくとも出口側の一部の区間が斜め上方に向かって延びていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の飲料注出装置のディスペンスヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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