説明

飲料注出装置

【課題】スピアバルブの天面への飲料の残留を抑制し、飲料注出装置から取り外した飲料容器を衛生的に保管することが可能な飲料注出装置を提供する。
【解決手段】ビール樽101を飲料注出装置100から取り外す場合、シリンダ装置30にてディスペンスヘッド1Aのプランジャ20を飲料容器100の口金部を閉じる位置に移動させた後、ガス流路12を介してスピアバルブ102の天面102aに水が導かれるように洗浄液供給経路150の開閉弁V7が開けられ、その後開閉弁V7が閉じられるとともにスピアバルブ102の天面102aに導かれた水を除去すべくパージガス導入経路136の開閉弁V8が開けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール等の飲料を飲料容器から注出するために飲料容器に接続する飲料注出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール樽等の飲料容器から飲料を取り出すための飲料注出装置として、飲料容器の口金部にディスペンスヘッドを装着し、そのディスペンスヘッドから飲料容器内に注出用のガス(一例として炭酸ガス)を送り込み、そのガスによって押し出される飲料をディスペンスヘッドから取り出して冷却用のディスペンサに導入する装置が知られている。
【0003】
ディスペンスヘッドは、スピアバルブのメインシールパッキンを覆うようにして口金部に装着されるヘッド本体と、スピアバルブのメインシールパッキンを押し込めるようにしてヘッド本体に内蔵されたプランジャとを備えている。プランジャにてメインシールパッキンを押し込むと、そのメインシールパッキンがスピアバルブのシール面から離れ、それによりヘッド本体内のガス流路がスピアバルブ内のガス流路と連通し、そのガス流路に送り込まれた注出用のガスが飲料容器に流入する。プランジャの内部には飲料流路が設けられており、その飲料流路はプランジャのメインシールパッキンとの対向面に開口している。メインシールパッキンが押し込まれることにより、スピアバルブの中心部の飲料注出管がメインシールパッキンから突出し、その突出部分がプランジャの飲料流路の開口部と接続される。これにより、ガスの導入に伴って押し出される飲料が飲料注出管から飲料流路に導かれ、さらには飲料流路からディスペンサへ送られる。プランジャを引き上げるとメインシールパッキンがスピアバルブのシール面と接してヘッド本体のガス流路とスピアバルブ内のガス流路との接続が絶たれ、これにより飲料容器内へのガスの導入が阻止される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような飲料注出装置では、飲料の注出が終了した飲料容器を取り外すべくディスペンスヘッドのプランジャを引き上げるとプランジャの飲料流路内などに残留していた飲料がスピアバルブの天面に移動して溜まる。このようにスピアバルブの天面に飲料が残ったままで放置されると飲料容器に種々の不具合が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、スピアバルブの天面への飲料の残留を抑制し、飲料注出装置から取り外した飲料容器を衛生的に保管することが可能な飲料注出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲料注出装置(100)は、飲料容器(101)の口金部(101a)に設けられたスピアバルブ(102)のメインシールパッキン(105)を覆うようにして前記口金部に装着可能であり、内部には前記メインシールパッキンに向かって開口するヘッド内ガス流路(12)が設けられたヘッド本体(10)と、前記ヘッド内ガス流路を貫いて前記メインシールパッキンを押し込むように延びて前記ヘッド内ガス流路と前記スピアバルブのバルブ内ガス流路とを連通させる開放位置(図3の位置)と前記メインシールパッキンから離れて前記ヘッド内ガス流路と前記バルブ内ガス流路との連通を遮断する閉鎖位置(図2の位置)との間で移動可能な状態で前記ヘッド本体に装着されるプランジャ(20)とを含み、前記ヘッド本体には、前記ヘッド内ガス流路と連通するガス導入口(14A、14B;200)、及び前記ヘッド内ガス流路と連通する洗浄用導入口(14B;200)が設けられ、前記プランジャの内部には、前記開放位置にて前記メインシールパッキンの内側に配置された前記スピアバルブの飲料注出管(104)と連通し、前記閉鎖位置では前記ヘッド内ガス流路と連通するように前記メインシールパッキンとの対向面(20a)に開口する飲料流路(21)が設けられたディスペンスヘッド(1A;1B)と、前記プランジャを前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するプランジャ操作手段(30)と、洗浄液を供給する洗浄液供給装置(140)と、を備え、前記ディスペンスヘッドの前記ガス導入口にはガス供給源(130)から供給される注出用のガスを導くためのガス供給経路(131)が当該ガス供給経路を開閉するガス供給弁手段(V3,V4、V8)を介して接続され、前記洗浄用導入口には前記洗浄液供給装置から洗浄液を導くための洗浄液供給経路(150)が当該洗浄液供給経路を開閉する洗浄液供給弁手段(V7)を介して接続されている飲料注出装置において、前記飲料容器から前記ディスペンスヘッドを取り外す所定の取り外し条件が成立した場合、前記プランジャが前記閉鎖位置に切り換わるように前記プランジャ操作手段の動作を制御し、次に前記ヘッド内ガス流路を介して前記スピアバルブの天面(102a)に洗浄液が導かれるように前記洗浄液供給弁手段を開け、その後前記洗浄液供給弁手段を閉じるとともに前記ヘッド内ガス流路に導いたガスにて前記スピアバルブの天面に導かれた洗浄液を除去すべく前記ガス供給弁手段を開ける動作制御手段(193)を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の飲料注出装置によれば、飲料容器からディスペンスヘッドを取り外す場合、プランジャを閉鎖位置に切り替えてプランジャをメインシールパッキンから離した後、すなわちスピアバルブを閉状態にした後にスピアバルブの天面に洗浄液を導くので、プランジャの飲料流路内に残留してスピアバルブの天面に溜まった飲料を洗浄液で除去できるとともに洗浄液でスピアバルブの天面の洗浄できる。その後、洗浄液供給弁手段が閉じられて洗浄液の供給が停止され、ガスにて洗浄液が除去されるので、飲料が洗浄液とともにスピアバルブの天面に残留することを抑制できる。これによりスピアバルブの天面への飲料の残留を抑制できるので、飲料注出装置から取り外した飲料容器を衛生的に保管できる。
【0008】
本発明の飲料注出装置の一形態において、前記動作制御手段は、前記ヘッド内ガス流路を介して前記スピアバルブの天面に洗浄液を導いている期間、前記ガス供給弁手段を閉状態に保持してもよい。この場合、ガス供給弁手段より上流のガス供給経路への洗浄液の流入を確実に防止できる。
【0009】
本発明の飲料注出装置の一形態において、前記ガス供給源からはガスとして二酸化炭素が供給され、前記動作制御手段は、前記飲料容器に前記ディスペンスヘッドが取り付けられて前記プランジャを前記開放位置に切り替える所定の開放条件が成立した場合、前記ヘッド内ガス流路に二酸化炭素が導かれるように前記ガス供給弁手段を開け、その後前記ガス供給弁手段を閉じるとともに前記プランジャが前記開放位置に切り替えられるように前記プランジャ操作手段の動作を制御してもよい。プランジャが閉鎖位置から開放位置に切り替えられる際、ヘッド内ガス流路内のガスがバルブ内ガス流路を介して飲料容器内に侵入する。この形態では、プランジャを開放位置に切り替える前にヘッド内ガス流路に二酸化炭素を導入することにより、ヘッド内ガス流路内の酸素濃度を低下させることができる。そのため、プランジャが閉鎖位置から開放位置に切り替えられてヘッド内ガス流路内のガスが飲料容器内に侵入してもそのガスの酸素濃度は低いので、酸素による飲料の品質低下を抑制することができる。
【0010】
この形態において、前記動作制御手段は、前記所定の開放条件が成立した場合、前記ヘッド内ガス流路内のガスを置換することが可能な量の二酸化炭素を前記ヘッド内ガス流路に導くべく設定された所定期間、前記ガス供給弁手段を開状態に保持してもよい。このようにヘッド内ガス流路内に二酸化炭素を導入することにより、ヘッド内ガス流路の酸素濃度をほぼ0にすることができる。そのため、プランジャを開放位置に切り替える際に飲料容器内への酸素の侵入をより確実に抑制できる。したがって飲料の品質低下をさらに抑制することができる。
【0011】
本発明の飲料注出装置の一形態において、前記ディスペンスヘッドには、前記ヘッド内ガス流路と連通し、予め設定した設定圧にて開弁するリリーフ弁手段(18)が設けられ、前記ガス供給経路からは前記設定圧よりも高圧のガスが前記ヘッド内ガス流路に導かれてもよい。この場合、ヘッド内ガス流路にガス供給経路からガスを導くことにより、リリーフ弁手段を介して飲料、洗浄液、及びガスをヘッド内ガス流路から速やかに排出させることができる。
【0012】
本発明の飲料注出装置の一形態において、前記ディスペンスヘッドは、前記飲料流路を介して液体が送り出されているか否か検出する液体検出手段(42)を備えていてもよい。この場合、飲料容器内に注出可能な飲料が残っているか否か容易に判定することができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明によれば、プランジャを閉鎖位置に切り替えてスピアバルブを閉状態にした後、まずヘッド内ガス流路に洗浄液を導き、次にガスを導入して洗浄液を除去するので、スピアバルブの天面から飲料を除去することができる。また、洗浄液にてスピアバルブの天面を洗浄することができる。これによりスピアバルブの天面への飲料の残留が抑制でき、また飲料注出装置から取り外した飲料容器を衛生的に保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一形態に係る飲料注出装置の概要を示している。飲料注出装置100は、飲料容器としてのビール樽101に装着されるディスペンスヘッド1Aと、飲料としてのビールを冷却するディスペンサ110と、ディスペンスヘッド1Aから取り出されたビールをディスペンサ110に導くビールホース120とを備えている。ディスペンスヘッド1Aには、ガス供給源(一例として炭酸ガスボンベ)130から供給される注出用のガスが二段減圧弁132にて減圧された上で、ガス供給経路131を介して供給される。ガス供給経路131には、この経路131を開閉する電磁式の開閉弁V4が設けられている。そのため、開閉弁V4が本発明のガス供給弁手段に相当する。二段減圧弁132はガス供給源130から供給されるガス圧を二段階に減圧して互いに異なる低圧ポート132a及び高圧ポート132bからそれぞれ出力する。低圧ポート132aからはビール樽101からのビールの注出に適した圧力P1が出力され、高圧ポート132bからはエアシリンダ等の流体機器の駆動に適した圧力P2(但し、P1<P2)が出力される。
【0016】
低圧ポート132aから出力される圧力P1のガスはディスペンスヘッド1Aを経由してビール樽101の内部に導入される。ガスの導入に伴ってビール樽101からビールが押し出され、そのビールはディスペンスヘッド1Aの内部の飲料流路21及びビールホース120を順次通過してディスペンサ110に導かれる。ディスペンサ110に導かれたビールは冷却コイル111を通過する間に冷却される。冷却コイル111の終端はディスペンサ110に付属するタップ112と接続されている。タップ112のレバー112aを注出位置に操作することにより、冷却コイル111にて冷却されたビールがタップ112の注出口112bから注出される。なお、タップ112のレバー112aはビールを注出する注出位置、及び注出口112bを閉じる閉位置に加えて、ビールの泡を絞り出す泡出し位置に切り替え可能であってもよい。
【0017】
次に、図2〜図4を参照してディスペンスヘッド1Aの詳細を説明する。図2はビール樽101の口金部101aに装着したディスペンスヘッド1Aの内部構成を示し、図3はディスペンスヘッド1Aのプランジャ20によりスピアバルブ102を開けた状態におけるディスペンスヘッド1Aの内部構成を示している。図4は、ディスペンスヘッド1Aの平面図を示している。なお、図2及び図3において一部の構成要素に関しては、中心線CLよりも右側において外観を、左側において断面をそれぞれ示している。ディスペンスヘッド1Aはビール樽101の口金部101aに装着される。口金部101aにはスピアバルブ102が設けられており、以下ではまずスピアバルブ102の構成を説明する。
【0018】
スピアバルブ102はビール樽101の開口部101bにねじ込まれるバルブケース103と、上端部がバルブケース103の中心部に挿通された飲料注出管104と、飲料注出管104の上端外周に嵌め合わされるメインシールパッキン105と、そのメインシールパッキン105をバルブケース103のフランジ103aの内周の弁座103bに押し当てるコイルばね106とを有している。図2に示すように、メインシールパッキン105が弁座103bに押し付けられた状態ではバルブケース103内のガス流路(バルブ内ガス流路)107がビール樽101の外部に対して閉鎖され、かつ、飲料注出管104の上端の開口104aもメインシールパッキン105にて閉鎖される。一方、図3に示すようにコイルばね106に抗してメインシールパッキン105を押し下げた場合にはメインシールパッキン105が弁座103bから離れてガス流路107がビール樽101の外部に開放され、かつ飲料注出管104の開口104aもメインシールパッキン105の上方に露出する。なお、ガス流路107はバルブケース103の下端の開口103cを介してビール樽101の内部空間と連通している。
【0019】
次に、ディスペンスヘッド1Aの構成を説明する。ディスペンスヘッド1Aは、メインシールパッキン105を覆うハウジング状に形成されたヘッド本体10と、そのヘッド本体10に装着されたプランジャ20と、そのプランジャ20を操作するシリンダ装置(プランジャ操作手段)30とを備えている。ヘッド本体10の下端外周には嵌合部11が設けられている。その嵌合部11をスピアバルブ102のフランジ103aの外周と噛み合わせることにより、ヘッド本体10が口金部101aに装着される。ヘッド本体10の内部にはメインシールパッキン105に向かって開口するチャンバ状のガス流路(ヘッド内ガス流路)12が設けられている。ガス流路12にはシールリング13が取り付けられている。
【0020】
ヘッド本体10をスピアバルブ102に取り付けた状態でシールリング13はスピアバルブ102のフランジ103aと全周に亘って密着し、それによりガス流路12の外周が密封される。ヘッド本体10の外周にはガス流路12と連通するガス導入口14Aと、ガス流路12に洗浄液を導入するための洗浄用導入口14Bとが設けられている。図4に示したようにプランジャ20の軸線方向に関してガス導入口14Aと洗浄用導入口14Bとは同一位置にある。図4に示したように、ガス導入口14Aはその軸線AX1がプランジャ20の中心線CLに対して一方の側に偏心するように設けられ、洗浄用導入口14Bはその軸線AX2がプランジャ20の中心線CLに対して他方の側に偏心するように設けられている。なお、プランジャ20の中心線CLはスピアバルブ102の飲料注出管104の中心線と一致する。ガス導入口14Aは、ガス流路12にガス供給源130からのガスを送り込むためのものであり、ガス供給経路131と接続される。洗浄用導入口14Bはガス流路12に洗浄液を送り込むためのものであり、洗浄液供給経路150と接続される。
【0021】
ガス導入口14Aの内部にはガス導入口14Aからのガス又は洗浄液の排出を阻止するための逆止弁40Aを備えたホース接続具15Aが取り付けられ、洗浄用導入口14Bの内部には洗浄用導入口14Bからのガス又は洗浄液の排出を阻止するための逆止弁40Bを備えたホース接続具15Bが取り付けられている。さらに、ヘッド本体10の嵌合部11には、ヘッド本体11がスピアバルブ102のフランジ103aと噛み合っているか否かを検出するためのセンサ41が設けられている。センサ41としては例えば近接スイッチを用いることができる。また、図2及び図3に示したようにヘッド本体10の上部には、飲料流路21を通過してビールホース120に液体が送られているか否か検出するための液体検出手段としての液切れセンサ42が設けられている。
【0022】
また、ヘッド本体10には、ガス流路12へ連通する排出口17が設けられ、その排出口17にリリーフ弁18及びサイレンサ19が接続されている。なお、図3及び図4では、リリーフ弁18及びサイレンサ19の図示を省略した。排出口17は、プランジャ20が図2の閉鎖位置にあるときでもガス流路12と連通する位置に設けられる。リリーフ弁18はガス流路12の圧力が所定の設定圧を超えたときに排出口17を開いてガス流路12の圧力を外部に開放する。リリーフ弁18の設定圧は、ガス流路12に閉じ込められる圧力によってメインシールパッキン105が押し下げられるおそれが生じない範囲において、ビールの注出時にガス流路12に導かれる圧力P1より大きく、かつ圧力P2より小さくて設定されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、プランジャ20はヘッド本体10の上部隔壁10aを中心線CLの方向に貫くように、かつその中心線CLに沿って図2に示す閉鎖位置と図3に示す開放位置との間で移動できるようにしてヘッド本体10に装着されている。なお、ヘッド本体10の上部隔壁10aにはプランジャ20の貫通部分をシールするためのOリング16が設けられている。
【0024】
プランジャ20は、その中心線CLを貫く飲料流路21が内部に設けられた中空部材として構成されている。プランジャ20の下端部はガス流路12に突出し、その下端部にはメインシールパッキン105を操作するための円筒状の操作部22が形成されている。操作部22の外径は、メインシールパッキン105の内径よりも大きくかつメインシールパッキン105の外径よりも小さく設定されている。操作部22の内径は飲料注出管104の上端部の外径よりも大きく、その操作部22の内部空間は飲料流路21の一部を構成する。言い換えれば、操作部22の内周において、飲料流路21は飲料注出管104の上端部よりも大径の接続部21aを有し、その接続部21aは操作部22の下端面(メインシールパッキン105との対向面)20aに開口する。ヘッド本体10のガス導入口14A及び洗浄用導入口14Bはその操作部22の外周を取り囲むガス流路12の内壁にそれぞれ開口している。
【0025】
図2の閉鎖位置においてプランジャ20の下端面20aはメインシールパッキン105から離れており、これにより飲料流路21はガス流路12に連通する。操作部22の上端外周にはフランジ23が設けられている。図3に示すように、フランジ23はシールリング13の内周と接触し得る外径を有している。フランジ23にはガスを通過させるための複数の小孔23aが形成されている。シールリング13と操作部22との間には隙間が設けられ、また、フランジ23は閉鎖位置にてシールリング13の上方に離れている。従って、プランジャ20が閉鎖位置にあるときもガス導入口14A及び洗浄用導入口14Bとガス流路12との連通状態がそれぞれ維持される。換言すれば、プランジャ20はガス導入口14A及び洗浄用導入口14Bとガス流路12との間をそれぞれ遮断しないように設けられている。そのため、これらの導入口14A、14Bはプランジャ20が開放位置及び閉鎖位置のいずれにあってもガス流路12と連通する。一方、図3の開放位置において、プランジャ20はガス流路12を貫いてメインシールパッキン105を押し込むように延びる。この状態ではプランジャ20の操作部22が全周に亘ってメインシールパッキン105と連通し、操作部22の外周側においてガス流路12がスピアバルブ102のガス流路107と連通する。一方、操作部22の内周側では飲料流路21の接続部21aに飲料注出管104が入り込み、その飲料注出管104の開口104aを介して飲料流路21と飲料注出管104の内部とが連通する。
【0026】
プランジャ20の飲料流路21の途中には絞り部21bが設けられ、飲料流路21の上端には液切れセンサ42を介してビールホース120を接続するための接続具24が設けられている。絞り部21bと接続具24との間には球状の弁体25が設けられている。弁体25はその上下の圧力差に応じて飲料流路21内を移動可能することにより、飲料流路21を上昇する方向のビール等の流れを許容し、飲料流路21を下降する方向のビール等の流れを阻止する。図2は弁体25が絞り部21bを塞いだ状態を、図3は弁体25が絞り部21bから離れて接続具24まで上昇した状態をそれぞれ示している。なお、図3の状態では飲料流路21のビールが接続具24及び液切れセンサ42を介してビールホース120へ導かれる。
【0027】
シリンダ装置30は、シリンダ本体31とそのシリンダ本体31の内部のシリンダ室32に収容されるピストン33とを備えている。シリンダ本体31は、円筒状のハウジング31aと、エンドキャップ31bとを組み合わせて構成される。プランジャ20はシリンダ本体31を貫いて延びている。なお、シリンダ本体31の少なくとも一部がヘッド本体10と一体に形成されてもよい。
【0028】
ピストン33は、プランジャ20の外周に同軸的に嵌め合わされるスリーブ33aと、そのスリーブ33aの外周に設けられてシリンダ室32を中心線CLの方向に二つの作動室32a、32bに区分する円盤状のピストン本体33bとを有している。スリーブ33aはプランジャ20に対して圧入、焼き嵌め等の固定方法を利用してプランジャ20と一体に移動可能に設けられている。シリンダ本体31のハウジング31aには、シリンダ室32の作動室32a、32bのそれぞれに圧力を導入し、又は作動室32a、32bから圧力を排出するための接続口35a、35bが設けられている。これらの接続口35a、35bは、ヘッド本体10のガス導入口14からガス流路12に至る経路とは独立した経路を介して作動室32a、32bとそれぞれ連通する。
【0029】
シリンダ装置30において、下部の作動室32aに圧力を導入する一方で上部の作動室32bから圧力を排出することによりピストン33は図2に示す上死点まで移動し、これによりプランジャ20が閉鎖位置に保持される。反対に、上部の作動室32bに圧力を導入する一方で下部の作動室32aから圧力を排出することによりピストン33は図3に示す下死点まで移動し、これによりプランジャ20が開放位置に移動する。接続口35a、35bは、図1に示した減圧弁132の高圧ポート132bと接続されることにより、減圧弁132から出力されるガス圧P2で作動する。シリンダ室32の内径は、上部の作動室32bに導かれるガス圧P2により、メインシールパッキン105を押し込むために必要な力がプランジャ20に加えられるように定められている。なお、接続口35a、35bと減圧弁132との接続経路は、減圧弁132とガス導入口14とを結ぶガス供給経路131とは分けて設けられる。また、シリンダ室32を適宜にシールするため、シリンダ本体31及びピストン33にはOリング36a〜36dが設けられている。なお、シリンダ装置30に導くガス圧P2はヘッド本体10のガス導入口14に導くガスの圧力と一致させてもよい。また、シリンダ装置30には、プランジャ20の閉鎖位置(図2の位置)への移動を検出するためのセンサ37がブラケット38を介して取り付けられている。センサ37としては例えば近接スイッチを用いることができる。
【0030】
以上の構成のディスペンスヘッド1Aにおいては、シリンダ装置30の接続口35bにガス圧P2を導入してプランジャ20を開放位置に移動させることにより、プランジャ20の操作部22にてメインシールパッキン105を押し込み、それによりヘッド本体10のガス流路12とスピアバルブ102のガス流路107とを連通させるとともに、プランジャ20の飲料流路21をスピアバルブ102の飲料注出管104と連通させることができる。この状態でガス導入口14からガスを送り込むことによりビール樽101に収容されたビールを飲料注出管104から飲料流路21に押し出し、そのビールを飲料流路21からビールホース120を介してディスペンサ110に送り込むことができる。一方、シリンダ装置30の接続口35aにガス圧P2を導入してプランジャ20を閉鎖位置に移動させることにより、メインシールパッキン105の押し込みを解除してスピアバルブ102を閉じることができる。
【0031】
閉鎖位置においては、プランジャ20の下端面20aがメインシールパッキン105から離れて飲料流路21がガス流路12に連通し、かつガス導入口14A及び洗浄用導入口14Bとガス流路12との連通状態がそれぞれ維持されている。従って、洗浄用導入口14Bから洗浄液として水又は薬液を送り込むことにより、その洗浄液を飲料流路21に導入し、さらには飲料流路21からビールホース120及びディスペンサ110の冷却コイル111を経て注出口112bまで送ることができる。また、洗浄液の導入後にガス導入口14Aからガスを送り込むことにより、飲料注出経路内の洗浄液を押し出すことができる。
【0032】
図1に戻って、飲料注出装置100について説明を続ける。飲料注出装置100におけるビールの注出経路(飲料注出経路)2、すなわち、ディスペンスヘッド1Aの飲料流路21からビールホース120及び冷却コイル111を経てタップ112の注出口112bまで至る経路2の洗浄を可能とするため、飲料注出装置100は洗浄液供給装置140をさらに備えている。洗浄液供給装置140は、洗浄液タンク141、アルカリタンク142及び酸タンク143を備えている。洗浄液タンク141は飲料注出経路2の一回の洗浄に必要な体積の洗浄液を蓄え得る容積を有している。洗浄液タンク141は水道栓(不図示)と給水経路144を介して接続され、その給水経路144には洗浄液タンク141からの洗浄液の逆流を防ぐための逆止弁154及び電磁式の開閉弁V1が設けられている。開閉弁V1を開くことにより給水経路144から洗浄液タンク141内に水を導入して蓄えることができる。
【0033】
アルカリタンク142及び酸タンク143のそれぞれは、電磁式の開閉弁V5、V6を介して洗浄液タンク141の上部と接続されている。アルカリタンク142には洗浄効果を高めるためのアルカリ性の薬液(原液)が、酸タンク143には殺菌性を有する酸性の薬液(原液)がそれぞれ蓄えられる。開閉弁V5又は開閉弁V6を開くことにより、アルカリタンク142又は酸タンク143の薬液を洗浄液タンク141に導入し、これを給水経路144から供給される水で希釈することにより、アルカリ性又は酸性の洗浄液を生成して洗浄液タンク141に蓄えることができる。但し、洗浄液はアルカリ性又は酸性の薬液に限らず、水のみが洗浄液として使用されることがある。
【0034】
洗浄液供給装置140は、洗浄液タンク141からディスペンスヘッド1Aに向かって洗浄液を送り出すポンプ148を備えている。ポンプ148の吐出口には洗浄液供給経路150が接続され、その洗浄液供給経路150は電磁式の開閉弁V7を介して洗浄用導入口14Bに接続されている。そのため、開閉弁V7が本発明の洗浄液供給弁手段に相当する。
【0035】
洗浄液供給装置140は、洗浄液タンク141の底部に接続されて洗浄液の排出を可能とするドレン弁152をさらに備えている。洗浄液タンク141には、洗浄液の水位を検出するための水位計153が設けられている。
【0036】
ガス供給経路131には、ガス供給源130からのガスを蓄えるアキュームタンク133が減圧弁137及び電磁式の開閉弁V2を介して接続されている。減圧弁137から出力される圧力P3は注出用のガスの圧力P1よりも低い。つまりP1>P3である。アキュームタンク133の出口側はガス放出経路135及び電磁式の開閉弁V3を介して開閉弁V7よりも下流側の洗浄液供給経路150に接続されている。アキュームタンク133は、ディスペンスヘッド1Aのガス導入口14Aからガス流路12及び飲料注出経路2を経て注出口112bまで至る流路を流体(ビール又は洗浄液)にて満たしたとき、その流体を置換し得る体積(但し、大気圧下における体積)のガスを蓄え得るように設定されている。
【0037】
減圧弁132の高圧ポート132bには、開閉弁V7よりも下流側の洗浄液供給経路150に圧力P2のガスを導くためのパージガス導入経路136が接続されており、パージガス導入経路136にはこの経路136を開閉するための電磁式の開閉弁V8が設けられている。また、減圧弁132にはガス圧P2を検出する圧力スイッチ138が設けられている。このように洗浄液供給経路150にガス放出経路135及びパージガス導入経路136を接続することにより、洗浄用導入口14Bからもガス流路12内にガスを導入することができる。そのため、洗浄用導入口14Bも本発明のガス導入口として機能する。また、開閉弁V3、V8も本発明のガス供給弁手段として機能する。
【0038】
ディスペンサ110には、タップ112のレバー112aを操作するタップ操作シリンダ装置170、及び切替用シリンダ装置171が設けられている。タップ操作シリンダ装置170はレバー112aを操作するために設けられている。一方、切替用シリンダ装置171は、タップ操作シリンダ装置170のブラケット170aを、レバー112aと噛み合う操作位置と、レバー112aから上方に離れた待機位置との間で昇降駆動する。操作位置においてタップ操作シリンダ装置170はレバー112aを操作可能であり、待機位置においてはタップ操作シリンダ装置170によるレバー112aの操作が不可能となる。また、待機位置においてはレバー112aを手動にて切り替え操作することができる。さらに、飲料注出装置100には、タップ112の注出口112bから排出される洗浄液を受けるカップ180が設けられている。カップ180にはドレン経路181が接続され、そのドレン経路181はドレン弁152の下流に接続されている。また、カップ180を注出口112bの直下の位置と、注出口112bから離れた位置との間で水平に移動させるためのロータリアクチュエータ182が設けられている。
【0039】
ディスペンスヘッド1Aのシリンダ装置30には、電磁制御弁190を介して減圧弁132の二次圧P2が導かれる。また、タップ操作シリンダ装置170及び切替用シリンダ装置171のそれぞれには電磁制御弁191、192を介して減圧弁132からのガス圧P2が導かれる。電磁制御弁190〜192は、動作制御手段としてのコントローラ193から与えられる駆動信号に応じて内部流路を切り替えることにより、シリンダ装置30、170、171のそれぞれが駆動信号に応じた方向に動作するようにガスの流れる方向を制御する。コントローラ193は、電磁制御弁190〜192に加えて、その他の電磁弁、すなわち、給水経路144上の開閉弁V1、アキュームタンク133の入口側に設けられた開閉弁V2、ガス放出経路135に設けられた開閉弁V3、ガス供給経路131に設けられた開閉弁V4、洗浄液タンク141とアルカリタンク142及び酸タンク143との間の開閉弁V5、V6、洗浄液供給経路150に設けられた開閉弁V7、パージガス導入経路136に設けられた開閉弁V8のそれぞれを切り替え制御するとともに、ポンプ148の動作を制御することにより、ビールの注出、ビールの注出停止、洗浄作業等を実現する。コントローラ193にはオペレータがコントローラ193に指示を入力するための入力装置194が接続されている。
【0040】
次に、図5及び図6を参照してコントローラ193による飲料注出装置100の各部の操作を説明する。図5はビールの注出に備える際に行われるビール導入作業の手順を示すタイムチャートであり、図6は、ディスペンスヘッド1Aからビール樽101を取り外す前に行われる取り外し準備作業の手順を示すタイムチャートである。
【0041】
まず、図5を参照してビール導入作業の手順について説明する。ビールの注出に備える場合、各開閉弁V1〜V8はそれぞれ閉じられ、ポンプ148は停止状態に保持される。また、プランジャ20が閉鎖位置に切り替えられ、タップ操作シリンダ装置170のブラケット170aが待機位置に切り替えられるようにシリンダ装置30及び切替用シリンダ装置171が操作される。なお、タップ操作シリンダ装置170は、ブラケット170aがレバー112aと噛み合った際にレバー112aが閉位置に切り替わる位置に操作される。この状態においてタップ112までビールを導入するべくオペレータが入力装置194を介してコントローラ193に指示を入力すると、コントローラ193はセンサ41の出力信号を参照してヘッド本体11とフランジ103aとが噛み合っているか否か判断する。ビール樽101の口金部101aにディスペンスヘッド1Aが装着されてセンサ41からヘッド本体11とフランジ103aとの噛み合いが検出されたことを示す信号がコントローラ193に入力されると、コントローラ193はプランジャ20を開放位置に切り替える所定の開放条件が成立したと判断し、時刻t1においてパージガス導入経路136の開閉弁V8を開ける。このように開閉弁V8を開けることにより、圧力P2のガスをガス流路12に導入する。この場合、ガス流路12からタップ112までの経路の圧力が上昇するため、リリーフ弁19の設定圧にてリリーフ弁19が開き、ガス流路12内のガスがリリーフ弁19から放出される。
【0042】
その後、時刻t1から予め設定した所定時間が経過した時刻t2にて開閉弁V8が閉じられる。なお、所定時間としては、導入した圧力P2の炭酸ガスでガス流路12内のガスを十分に置換可能な時間が設定される。なお、このような時間はガス流路12及び飲料注出経路2などの容量に応じて変化するため、これらに応じて適宜変更してよい。また、時刻t2においては、開閉弁V4が開けられる。これにより、ガス流路12に圧力P1の炭酸ガスが導入される。その後、時刻t3においてシリンダ装置30によりディスペンスヘッド1Aのプランジャ20が開放位置へ駆動される。これにより、減圧弁132から出力される圧力P1のガスがディスペンスヘッド1Aを介してビール樽101内に導入される。
【0043】
プランジャ20が開放位置に駆動された後、時刻t4において切替用シリンダ装置171によりタップ操作シリンダ装置170のブラケット170aが操作位置に駆動される。続いて、時刻t5でタップ装置シリンダ装置170によりタップ112のレバー112aが泡出し位置に切り替えられ、時刻t6でレバー112aが注出位置に切り替えられ、時刻t7でレバー112aが閉位置に切り替えられる。これらの操作によりディスペンスヘッド1Aから注出口112bまでビールが流れてビールの導入が行われる。その後、時刻t8でレバー112aが再度注出位置に切り替えられ、時刻t9でレバー112aが閉位置に切り替えられる。これらの操作により、注出口112bから飲料注出経路2内の泡を排出させる、いわゆる泡切りが行われる。泡切り後は、時刻t10で切替用シリンダ装置171によりタップ操作シリンダ装置170のブラケット170aが待機位置に駆動される。これにより、オペレータがタップ112のレバー112aを手動で操作することができる。なお、タップ112のレバー112aをタップ操作シリンダ装置170で操作する場合は、泡切り後もタップ操作シリンダ装置170のブラケット170aが操作位置に保持されてもよい。以上によりビール導入作業が終了する。
【0044】
このように飲料注出装置100では、ビール導入作業においてプランジャ20を開放位置に切り替える前にガス流路12内に圧力P2の炭酸ガスを導入してガス流路12内のガスを炭酸ガスで置換するので、ビール樽101内への酸素の侵入を抑制し、ビールの品質の劣化を抑制することができる。また、リリーフ弁19の設定圧より高い圧力P2の炭酸ガスをガス流路12に導入することにより、リリーフ弁19を開弁させてリリーフ弁19からガス流路12内のガスを速やかに排出することができる。
【0045】
次に、図6を参照してビール樽101からのビールの注出が終了した場合などに行われるビール樽101の取り外し準備作業の手順を説明する。この作業を行う前まではビール樽101からビールの注出を行っているため、開閉弁V4が開けられ、それ以外の開閉弁V1〜V3、V5〜V8が閉じられている。また、シリンダ装置30にてプランジャ20が開放位置に保持され、切替用シリンダ装置171にてタップ操作シリンダ装置170のブラケット170aが待機位置に保持され、ポンプ148は停止状態に保持されている。なお、タップ操作シリンダ装置170は、ブラケット170がレバー112aと噛み合った際にレバー112aが閉位置に切り替わる状態に保持されている。
【0046】
この状態においてオペレータがコントローラ193にビール樽101からディスペンスヘッド1Aを取り外す際の準備作業を行わせるべく入力装置194を介して指示を入力すると、コントローラ193はビール樽101からディスペンスヘッド1Aを取り外す所定の取り外し条件が成立したと判断し、時刻t11において液切れセンサ42から飲料流路21を介してビールホース120に液体が送られていないことを示すオンの信号が出力されると開閉弁V4を閉じる。これにより、ディスペンスヘッド1Aへの炭酸ガスの導入が停止される。また、この動作により飲料注出経路2内からのビールの無駄な廃棄を防止できる。続いて時刻t12でシリンダ装置30によりディスペンスヘッド1Aのプランジャ20が図2の閉鎖位置に駆動される。これにより、スピアバルブ102が閉じられる。
【0047】
その後、時刻t13で給水経路144の開閉弁V1が開けられて洗浄液タンク141に水が蓄えられ、時刻t14で開閉弁V1が閉じられる。続いて、時刻t15でポンプ148が起動され、時刻t16で洗浄液供給経路150の開閉弁V7が開けられ、時刻t17でポンプ148が停止され、時刻t18で開閉弁V7が閉じられる。これらの操作により、ガス流路12に水を導入し、スピアバルブ102の天面102aに溜まっているビールを除去するとともにスピアバルブ102の天面102aを洗浄できる。ガス流路12に水を導入する期間(時刻t16〜t18)には、スピアバルブ102の天面102aからのビールを除去可能、かつ天面102aを洗浄可能な量の水を導入できる時間が設定される。このような時間は、ガス流路12の容量などに応じて変化するため、ディスペンスヘッド1Aに応じて適宜設定される。飲料注出装置100では、例えば給水経路144の開閉弁V1が閉じられる時刻t14から所定時間(例えば15秒)が経過するとポンプ148が停止され、開閉弁V7が閉じられるように設定されている。
【0048】
ガス流路12への水導入後、パージガス導入経路136の開閉弁V8が所定期間(時刻t19〜t20)開けられる。この操作により、ガス流路12に圧力P2のガスを導入してリリーフ弁19を開け、導入したガスによってリリーフ弁19からスピアバルブ102の天面102aに残留していたビール及び水を排出させることができる。なお、この際の所定期間としては、リリーフ弁19からスピアバルブ102の天面102aに残留していたビール及び水を排出させることが可能な量のガスをガス流路12に導入できる時間が設定される。以上により取り外し準備作業が終了する。この取り外し準備作業の終了後、オペレータによりビール樽101からディスペンスヘッド1Aが取り外される。その後、飲料注出装置100を継続して使用する場合は、オペレータによりビールの充填されている別のビール樽101にディスペンスヘッド1Aが取り付けられる。
【0049】
この取り外し準備作業では、まずガス流路12に水が導入されてスピアバルブ102の天面102aに残留していたビールが除去されるとともにスピアバルブ102の天面102aが洗浄される。そのため、スピアバルブ102の天面102aにビールが残留することを抑制でき、飲料注出装置100から取り外したビール樽101を衛生的に保管できる。また、このようにスピアバルブ102の天面102aへのビールの残留を抑制することにより、天面102aへのビール成分の付着を抑制できるので、ビール樽101を再使用する際に行われるビール樽101の洗浄の手間を軽減することができる。
【0050】
本発明は上述した形態に限定されることなく種々の形態にて実施してよい。例えば、シリンダ装置30は、ピストン33の両側の作動室32a、32bにガス圧が選択的に導入される構成に限らず、いずれか一方の作動室32a又は32bのみにガス圧が導入され、他方の作動室32b又は32aには、ピストン33を付勢するばね等の弾性体が配置されたものでもよい。プランジャ操作手段はディスペンスヘッドの一部として設けられるものに限らず、ディスペンスヘッドから分離されたものでもよい。プランジャ操作手段はガス圧によって動作するシリンダ装置に限らず、油圧その他の液圧によって動作するシリンダ装置でもよい。さらに、ソレノイドコイルが発生する電磁力を利用してプランジャを駆動するようにプランジャ操作手段が構成されてもよいし、その他、各種のアクチュエータをプランジャ操作手段として利用してよい。また、オペレータによるプランジャの手動操作が許容される場合には、プランジャ操作手段としてハンドルその他の操作部材を利用した駆動機構を設けてもよい。
【0051】
本発明の飲料注出装置にて使用されるディスペンスヘッドは、上述した構成のディスペンスヘッドに限定されない。例えば図7に内部構成を示し、図8に平面図を示したディスペンスヘッド1Bを使用してもよい。なお、図7及び図8において、図2〜図4と同様の部分には同一の参照符号を付すことにより、それらの説明は省略又は簡略化する。なお、図7及び図8に示したディスペンスヘッド1Bにおいても、シリンダ装置30にプランジャ20の閉鎖位置への移動を検出するためのセンサ37及びブラケット38が取り付けられ、接続具24の出口側に液切れセンサ42が設けられるが、それらの図示は省略した。
【0052】
図7及び図8に示したようにディスペンスヘッド1Bは、ガス流路12と連通する導入口200を備え、この導入口200からガス及び洗浄液が導入される。図8に示したように導入口200は、その軸線AXがプランジャ20の中心線CLに対して所定量δだけ偏心している。導入口200の内部には導入口200からのガス又は洗浄液の排出を阻止するための逆止弁201を備えたホース接続具202が取り付けられ、導入口200にはホース接続具202を介してガス供給経路131が接続される。このディスペンスヘッド1Bを使用する場合は、ガス供給経路131に洗浄液供給経路150と導入口200とを連通する洗浄液導入位置とガス供給経路131と導入口200とを連通するガス導入位置とに切り替え可能な三方弁が設けられ、この三方弁の位置を切り替えることによって導入口200に炭酸ガス又は洗浄液を選択的に導く。そのため、ディスペンスヘッド1Bでは導入口200が本発明のガス導入口及び洗浄用導入口に相当する。
【0053】
このディスペンスヘッド1Bでは、ビール導入作業時にまず三方弁をガス導入位置に切り替えてガス流路12のガスを炭酸ガスで置換し、その後プランジャ20を開放位置に駆動する。このようにビール導入作業を行うことにより、ビール樽101内への酸素の侵入を抑制できるので、上述した形態と同様にビールの品質劣化を抑制できる。
【0054】
また、ビール樽101からディスペンスヘッド1Bを取り外す際の準備作業のときは、プランジャ20が閉鎖位置に駆動された後、まず三方弁が洗浄液導入位置に切り替えられてガス流路12に水が導入され、次に三方弁がガス導入位置に切り替えられてガス流路12に圧力P2の炭酸ガスが導入される。この順番で、水及び炭酸ガスをガス流路12に導入することにより、スピアバルブ102の天面102aへのビールの残留を抑制できるので、上述した形態と同様に飲料注出装置100から取り外したビール樽101を衛生的に保管し、再使用する際のビール樽101の洗浄の手間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一形態に係る飲料注出装置を示す図。
【図2】ビール樽の口金部に装着したディスペンスヘッドの内部構造を示す図。
【図3】ディスペンスヘッドのプランジャによりスピアバルブが開けられて飲料が注出されているときのディスペンスヘッドの内部構造を示す図。
【図4】図2のディスペンスヘッドの平面図。
【図5】ビール導入手順を示すタイムチャート。
【図6】ビール樽の取り外し準備手順を示すタイムチャート。
【図7】本発明の飲料注出装置に使用される他のディスペンスヘッドの内部構造を示す図。
【図8】図7のディスペンスヘッドの平面図。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B ディスペンスヘッド
2 飲料注出経路
10 ヘッド本体
12 ガス流路(ヘッド内ガス流路)
13 シールリング
14A ガス導入口
14B 洗浄用導入口(ガス導入口)
17 排出口
18 リリーフ弁(リリーフ弁手段)
20 プランジャ
20a プランジャの下端面
21 飲料流路
21a 接続部
22 操作部
30 シリンダ装置(プランジャ操作手段)
31 シリンダ本体
32 シリンダ室
32a、32b 作動室
33 ピストン
35a、35b 接続口
42 液切れセンサ(液体検出手段)
100 飲料注出装置
101 ビール樽(飲料容器)
101a 口金部
102 スピアバルブ
102a 天面
103 バルブケース
104 飲料注出管
105 メインシールパッキン
106 コイルばね
107 ガス流路(バルブ内ガス流路)
110 ディスペンサ
112 タップ
112a レバー
112b 注出口
120 ビールホース
130 ガス供給源
131 ガス供給経路
132 二段減圧弁(圧力調整手段)
133 アキュームタンク
135 ガス放出経路
136 パージガス導入経路
137 減圧弁(減圧手段)
140 洗浄液供給装置
141 洗浄液タンク
142 アルカリタンク
143 酸タンク
148 ポンプ
150 洗浄液供給経路
170 タップ操作シリンダ装置
171 昇降用シリンダ装置
180 カップ
193 コントローラ(動作制御手段)
200 導入口(ガス導入口、洗浄用導入口)
V3 開閉弁(ガス供給弁手段)
V4 開閉弁(ガス供給弁手段)
V7 開閉弁(洗浄液供給弁手段)
V8 開閉弁(ガス供給弁手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の口金部に設けられたスピアバルブのメインシールパッキンを覆うようにして前記口金部に装着可能であり、内部には前記メインシールパッキンに向かって開口するヘッド内ガス流路が設けられたヘッド本体と、前記ヘッド内ガス流路を貫いて前記メインシールパッキンを押し込むように延びて前記ヘッド内ガス流路と前記スピアバルブのバルブ内ガス流路とを連通させる開放位置と前記メインシールパッキンから離れて前記ヘッド内ガス流路と前記バルブ内ガス流路との連通を遮断する閉鎖位置との間で移動可能な状態で前記ヘッド本体に装着されるプランジャとを含み、前記ヘッド本体には、前記ヘッド内ガス流路と連通するガス導入口、及び前記ヘッド内ガス流路と連通する洗浄用導入口が設けられ、前記プランジャの内部には、前記開放位置にて前記メインシールパッキンの内側に配置された前記スピアバルブの飲料注出管と連通し、前記閉鎖位置では前記ヘッド内ガス流路と連通するように前記メインシールパッキンとの対向面に開口する飲料流路が設けられたディスペンスヘッドと、
前記プランジャを前記開放位置と前記閉鎖位置との間で操作するプランジャ操作手段と、
洗浄液を供給する洗浄液供給装置と、を備え、
前記ディスペンスヘッドの前記ガス導入口にはガス供給源から供給される注出用のガスを導くためのガス供給経路が当該ガス供給経路を開閉するガス供給弁手段を介して接続され、前記洗浄用導入口には前記洗浄液供給装置から洗浄液を導くための洗浄液供給経路が当該洗浄液供給経路を開閉する洗浄液供給弁手段を介して接続されている飲料注出装置において、
前記飲料容器から前記ディスペンスヘッドを取り外す所定の取り外し条件が成立した場合、前記プランジャが前記閉鎖位置に切り換わるように前記プランジャ操作手段の動作を制御し、次に前記ヘッド内ガス流路を介して前記スピアバルブの天面に洗浄液が導かれるように前記洗浄液供給弁手段を開け、その後前記洗浄液供給弁手段を閉じるとともに前記ヘッド内ガス流路に導いたガスにて前記スピアバルブの天面に導かれた洗浄液を除去すべく前記ガス供給弁手段を開ける動作制御手段を備えていることを特徴とする飲料注出装置。
【請求項2】
前記動作制御手段は、前記ヘッド内ガス流路を介して前記スピアバルブの天面に洗浄液を導いている期間、前記ガス供給弁手段を閉状態に保持することを特徴とする請求項1に記載の飲料注出装置。
【請求項3】
前記ガス供給源からはガスとして二酸化炭素が供給され、
前記動作制御手段は、前記飲料容器に前記ディスペンスヘッドが取り付けられて前記プランジャを前記開放位置に切り替える所定の開放条件が成立した場合、前記ヘッド内ガス流路に二酸化炭素が導かれるように前記ガス供給弁手段を開け、その後前記ガス供給弁手段を閉じるとともに前記プランジャが前記開放位置に切り替えられるように前記プランジャ操作手段の動作を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料注出装置。
【請求項4】
前記動作制御手段は、前記所定の開放条件が成立した場合、前記ヘッド内ガス流路内のガスを置換することが可能な量の二酸化炭素を前記ヘッド内ガス流路に導くべく設定された所定期間、前記ガス供給弁手段を開状態に保持することを特徴とする請求項3に記載の飲料注出装置。
【請求項5】
前記ディスペンスヘッドには、前記ヘッド内ガス流路と連通し、予め設定した設定圧にて開弁するリリーフ弁手段が設けられ、
前記ガス供給経路からは前記設定圧よりも高圧のガスが前記ヘッド内ガス流路に導かれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料注出装置。
【請求項6】
前記ディスペンスヘッドは、前記飲料流路を介して液体が送り出されているか否か検出する液切れ検出手段を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の飲料注出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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