説明

飲料用コップの栓付き蓋

【課題】コーヒー等の飲料用コップに飲み口が設けられた蓋を被せた際、蓋の飲み口からコップの内容物がこぼれないように蓋の飲み口に栓を設けた構造とし、多数の蓋を整列状態にスタッキングする際にも好都合な構造とした飲料用コップの栓付き蓋を提供する。
【解決手段】飲料用コップの蓋の天井部の周部に、天井部の内部に形成された凹み部を囲繞する環状凸部が形成されると共に、環状凸部に飲み口用穴が形成された栓付き蓋において、環状凸部の飲み口用穴に挿着する栓部材は、飲み口用穴に挿着される挿着部と、挿着部の上部に飲み口用穴の周部に係止されるフランジ部が形成されると共に、フランジ部の上部に摘まみ部が形成されてなり、蓋の凹み部の面内には、栓部材を横臥した状態で嵌合する形状の内周壁が形成され、この内周壁の内側面には収納した栓部材の周部を係止する突起を形成した栓収納部が形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー等の飲料用コップに飲み口が設けられた蓋を被せた際、この飲み口からコップの内容物がこぼれないようにした飲料用コップの栓付き蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙コップや樹脂成形コップ等の飲料用コップに内容物を入れた状態で、自動販売機や販売店等から持ち運ぶ際、コップの内容物が外部にこぼれないように、コップに蓋を被せることが行われている。この蓋は、所謂「LID(リッド)」と呼ばれる合成樹脂製の成形蓋として周知である。
【0003】
また、このような蓋付きのコップにおいては、蓋の一部に飲み口用の穴を設け、コップに蓋を被せた状態で飲み口に口をつけて飲めるようにしたものが知られている。
【0004】
さらに、この蓋にストローを差し込んで飲めるように、蓋の一部にストロー用の穴を設けたものが周知である。
【0005】
また、コップに収容されたコーヒー等を飲料する場合、砂糖やミルクをコップの中に投入する際に撹拌するマドラーを別途設けたものもある。さらには、このマドラーでコップの蓋の飲み口を塞いで、内容物がこぼれ難くしているものもある。
【0006】
しかしながら、上記のようなマドラーで蓋の飲み口用の穴を塞いだ場合、コップの内容物を飲む際に、このマドラーを取り出してテーブル等の上に置くと、その置き場所がマドラーに付着した内容物で汚れてしまうという不都合が生じる。
【0007】
また、このマドラーの置き場所が汚れないようにするためには、マドラーを置くための専用の器等が必要となり、その準備や製造に面倒な手間が必要となるため、コスト的にも無駄が生じてしまう。
【0008】
なお、現在、自動販売機でコーヒー等を販売する際、コップの開口部に被せる蓋を供給し、キャッピングする機能を備えた自動販売機も存在する。このような自動販売機においては、その蓋に設けられた飲み口に閉塞用の栓を備えて欲しいという要望もあるが、自動販売機で各コップに1個ずつ栓を供給する構造とすることは、自動販売機の機構が複雑になり、コストの面でも不都合が生じる。
【0009】
一方、上記のようにコップの開口部に蓋を被せるようにした自動販売機では、各コップに蓋を1枚ずつ供給してキャッピングするようにしている。このような装置では、蓋を整列状態にスタッキングしてストックし、その列から蓋を1枚ずつ切り離す機構を設けることによって、自動販売機内に多量の蓋を効率よく設置し得るようにしたものがある。
【0010】
ところで、後述する特許文献1に記載されている「コップ蓋」は、上記のように、飲み口を設けたコップ用の蓋に関するものであり、このコップ蓋の密封性や、複数のコップ蓋を積み重ねたとき、任意に回転ができ、積み重ねた蓋の切り出しを行うことが可能である。
【0011】
しかしながら、この特許文献1のコップ蓋には、その蓋の飲み口を塞ぐ機能が備えられていない。このため、コーヒーやジュース等の内容物を収容したコップを持ち運ぶ際、内容物が蓋の飲み口からこぼれ出るという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−126174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、コーヒー等の飲料用コップに飲み口が設けられた蓋を被せた際、蓋の飲み口からコップの内容物がこぼれないように蓋の飲み口に栓を設けた構造とし、多数の蓋を整列状態にスタッキングする際にも好都合な構造とした飲料用コップの栓付き蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題を解決するために、本発明の請求項1における飲料用コップの栓付き蓋は、飲料用コップの開口部の外周に着脱自在に嵌合する環状周部と環状周部の内部を形成する天井部とから形成された飲料用コップの蓋であって、この蓋の天井部の周部には天井部の内部に形成された凹み部を囲繞する環状凸部が形成されると共に、環状凸部に飲み口用穴が形成された栓付き蓋において、環状凸部の飲み口用穴に挿着する栓部材は、飲み口用穴に挿着される挿着部と、挿着部の上部に飲み口用穴の周部に係止されるフランジ部が形成されると共に、フランジ部の上部に摘まみ部が形成されてなり、蓋の凹み部の面内には、栓部材を横臥した状態で嵌合する形状の内周壁が形成され、この内周壁の内側面には収納した栓部材の周部を係止する突起を形成した栓収納部が形成されたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項2における飲料用コップの栓付き蓋は、請求項1において、栓収納部の底面には、栓収納部に嵌合した栓部材の摘まみ部の先部以外の一部を支持する支持用突起が形成され、栓部材の摘まみ部が支持用突起の高さだけ栓収納部の底面から浮上した収納状態となり、この浮上した摘み部の先部の下方に差し込んだ手の指先で栓部材の摘まみ部の先部を持ち上げ可能としたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の請求項3における飲料用コップの栓付き蓋は、請求項1又は2において、栓部材のフランジ部の短幅が、栓部材の挿着部の短幅と同等の幅に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のように構成されているため、飲料用コップの開口部に栓付き蓋を嵌合した状態で、このコップを持ち運びする際に、蓋の飲み口用穴に栓部材を挿着すると、この飲み口用穴が閉塞されるため、コップの内容物が蓋の飲み口用穴からこぼれ出ることがない。
【0018】
また、上記の飲料用コップの内容物を飲むとき、蓋の飲み口用穴から栓部材を抜き出すと、この飲み口用穴が開口され、飲み口用穴に口をつけたり、ストローを差込むことが可能となる。また、このように蓋の飲み口用穴から抜き出した栓部材は、蓋の栓収納部に嵌合しておくことによって、栓部材は蓋と一体的にされる。従って、蓋の飲み口用穴から抜き出した栓部材の置き場所に困ることがなく、栓部材を机の上等に置くことによって周囲を汚したりすることがない。
【0019】
さらに、上記のように栓収納部に嵌合した栓部材を取り出すときは、栓収納部の延長部に差し込んだ手の指先で栓部材の摘まみ部の先部を持ち上げて容易に取り出すことが可能である。
【0020】
また、本発明の栓付き蓋を流通する際には、栓部材を蓋の栓収納部に嵌合しておくことによって、栓部材は蓋と一体的にされるため、従来の栓部材のない蓋と同様に扱うことが可能である。
【0021】
さらに、本発明の栓付き蓋のスタッキング状態においても、栓部材を蓋の栓収納部に嵌合しておくことによって、従来の蓋と同様に扱うことができるため、自動販売機での供給やキャッピング等に支障なく使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る栓付き蓋を飲料用コップに嵌合した状態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る栓付き蓋の栓部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【図3】本発明の実施例に係る栓付き蓋を飲料用コップに嵌合した状態を示す斜視図であり、(a)は蓋の栓収納部に栓部材を嵌合した状態、(b)は蓋の栓収納部から取り出した栓部材を蓋の飲み口用穴に挿着する前の状態、(c)は栓部材を蓋の飲み口用穴に挿着した状態を示す。
【図4】(a)は本発明の実施例に係る栓付き蓋の上面図であり、(b)は(a)のA−A線矢示断面図であり、(c)は栓付き蓋の側面図を透視的に図示した側面図である。
【図5】(a)は本発明の実施例に係る栓付き蓋を上下に2枚重ねる前の状態を示す側面図であり、(b)はそれらの2枚の栓付き蓋を重ね合わせた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0024】
本発明の栓付き蓋(以下、単に「蓋」と云う)1は、図1に示すように、飲料用コップ2の開口部の外周に着脱自在に嵌合するものであり、本実施例のように、外形が円形に形成された飲料用コップ2の開口部には、環状周部3の外形が円形に形成された蓋1が適用される。
【0025】
本実施例において、蓋1は、飲料用コップ2の開口部の外周に嵌合する環状周部3とこの環状周部3の内部を形成する天井部4とから形成されている。
【0026】
また、上記のように形成された蓋1の天井部4の周部には、天井部4の面内に形成された凹み部5を囲繞する環状凸部6が形成されている。この環状凸部6には、例えば長円形状に形成された飲み口用穴7が形成されている。なお、この飲み口用穴7の形状は、長円形のほかに、円形や楕円形としてもよい。また、本実施例において、飲み口用穴7の内径は、口を付けて飲みやすく、ストローを挿入することができるように、例えば短幅5mm、長幅10mmとしている。
【0027】
このような構成において、図1又は図4(c)に示すように、環状凸部6の飲み口用穴7が形成された部位を他の部位よりもやや上方に隆起した形状8とすることによって、飲み口用穴7に口を付けてコップ2の内容物を飲み易くしている。
【0028】
また、上記の環状凸部6の飲み口用穴7に挿着する栓部材9は、図2(a)〜(c)に示すように、図1の飲み口用穴7に挿着される挿着部9aの上部に飲み口用穴7の周部に係止されるフランジ部9bが形成されると共に、フランジ部9bの上部に挿着部9aの厚さよりも薄い平状の摘まみ部9cが形成された構成とされている。なお、上記の構成において、摘まみ部9cは円形に図示してあるが、他の形状や何らかの意匠性を有する形状としてもよい。また、摘まみ部9cの面内に文字や絵柄を形成したり、印刷等で表示してもよい。さらに、栓部材9の挿着部9aは、飲み口用穴7に挿入し易いように先部がテーパ状に形成されている。
【0029】
上記の栓部材9は、図2(b)に示すように、この栓部材9のフランジ部9bの短幅L3が、栓部材9の挿着部9aの短幅L4と同等の幅に形成されている。このような構成により、栓部材9のフランジ部9bの短幅を最小限度縮小した構成とすることが可能となる。また、この栓部材9において、図2(c)に示すように、栓部材9の挿着部9aの厚さT1よりも摘まみ部9cの厚さT2が薄く形成されている。
【0030】
また、このような構成においては、図2(a)に示すように、栓部材9のフランジ部9bの長幅L1が、栓部材9の挿着部9aの長幅L2よりも長く形成されている。このような構成においては、図2(a)に示すように、栓部材9のフランジ部9bの両側に左右の突出部11a、11bが形成されている。また、図3(b)、(c)に示すように、栓部材9の挿着部9aを蓋1の飲み口用穴7に挿着すると共に、フランジ部9bの両側に左右の突出部11a、11bが蓋1の飲み口用穴7の周部に係止された状態となって飲み口用穴7が閉塞される。
【0031】
さらに、本実施例において、図1に示すように、蓋1の凹み部5の面内には溝状の栓収納部12が形成されている。この栓収納部12は、図1又は図4(a)に示すように栓部材9を横臥した状態で嵌合する形状の内周壁12aが形成され、この内周壁12aは栓部材9の外周形状に倣った内周形状に形成されている。
【0032】
また、図4(b)に示すように、内周壁12aの内側面の両側部には栓収納部12に収納した栓部材9の周部を嵌合する突起12b、12bが形成されている。さらに、図1又は図4(b)に示すように、この栓収納部12には、その内周壁12a及び底面12dを延長した延長部12cが形成されている。
【0033】
また、図3(a)に示すように、上記の栓収納部12の底面12dには、栓収納部12に嵌合した栓部材9の摘まみ部9cの先部以外の一部を支持する支持用突起12eが形成され、栓部材9の摘まみ部9cが支持用突起12eの高さだけ栓収納部12の底面12dから浮上した収納状態となる。従って、図3(a)の一点鎖線で示すように、この浮上した摘まみ部9cの先部の下方の隙間に差し込んだ手の指先で栓部材9の摘まみ部9cを容易に持ち上げることが可能となる。
【0034】
また、図3(b)、(c)に示すように、栓部材9の挿着部9aを蓋1の飲み口用穴7に挿入すると、飲み口用穴7が閉塞されることにより、飲料用コップ2を持ち運ぶ際でも、このコップの内容物が飲み口用穴7から飛び出ることがない。
【0035】
なお、上記の構成において、本実施例では、図5(a)、(b)に示すように、蓋1のスタッキングハイト、即ち、蓋1を積み重ねたときの実質的な上下方向の蓋1の厚さHは、例えば、5.4mmで設計されている。また、各蓋1の環状凸部6の下部を裾広がり形状に形成することにより、上下の蓋1の裾広がり部13、13の間に隙間14が存在することによって、蓋1を1個ずつ切り離すドロップリング装置により切り離し易く設計されている。
【0036】
また、自動販売機ではなく、人が手作業でコップに蓋をする場合において、流通の際の利便性を考慮し、また蓋をバラ入れの状態にすると変形し易いことを考慮して、図5(a)に示すように、栓収納部12の底面12dと蓋1の最底面との間に隙間Gを形成することにより、蓋1を上下方向に整列状態でスタッキングすることを可能としている。このように蓋1を整列状態でスタッキングしてポリ袋等に入れて流通させることにより、使用時においては蓋を1枚ずつ取り外して供給することが可能となる。
【0037】
なお、図1に示すように、蓋1の凹み部5の内周壁の所定箇所に支持部10が形成され、上記のようなスタッキングにおいては、図5(b)に示すように、下方の蓋1の支持部10の上端で上方の蓋1の凹み部5の底面の周部を支持する構成とされている。
【0038】
また、本実例において、蓋1のスタッキング高さを高くすることにより、例えば、図1の凹み部5に砂糖等の甘味料等も併せてセットすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の飲料用コップの栓付き蓋は、コーヒー等の飲料用コップに飲み口が設けられた蓋を被せた際、蓋の飲み口からコップの内容物がこぼれないように蓋の飲み口に栓を設けた構造とし、多数の蓋を整列状態にスタッキングする際にも好都合な構造とした飲料用コップの栓付き蓋として利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 蓋(栓付き蓋)
2 飲料用コップ
3 環状周部
4 天井部
5 凹み部
6 環状凸部
7 飲み口用穴
8 隆起した形状
9 栓部材
9a 挿着部
9b フランジ部
9c 摘まみ部
10 支持部
11a、11b 左右の突出部
12 栓収納部
12a 内周壁
12b 突起
12c 延長部
12d 底面
12e 支持用突起
13 裾広がり部
14 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用コップの開口部の外周に着脱自在に嵌合する環状周部と環状周部の内部を形成する天井部とから形成された飲料用コップの蓋であって、この蓋の天井部の周部には天井部の内部に形成された凹み部を囲繞する環状凸部が形成されると共に、環状凸部に飲み口用穴が形成された栓付き蓋において、
環状凸部の飲み口用穴に挿着する栓部材は、飲み口用穴に挿着される挿着部と、挿着部の上部に飲み口用穴の周部に係止されるフランジ部が形成されると共に、フランジ部の上部に摘まみ部が形成されてなり、
蓋の凹み部の面内には、栓部材を横臥した状態で嵌合する形状の内周壁が形成され、この内周壁の内側面には収納した栓部材の周部を係止する突起を形成した栓収納部が形成されたことを特徴とする飲料用コップの栓付き蓋。
【請求項2】
栓収納部の底面には、栓収納部に嵌合した栓部材の摘まみ部の先部以外の一部を支持する支持用突起が形成され、栓部材の摘まみ部が支持用突起の高さだけ栓収納部の底面から浮上した収納状態となり、この浮上した摘み部の先部の下方に差し込んだ手の指先で栓部材の摘まみ部の先部を持ち上げ可能としたことを特徴とする請求項1記載の飲料用コップの栓付き蓋。
【請求項3】
栓部材のフランジ部の短幅が、栓部材の挿着部の短幅と同等の幅に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の飲料用コップの栓付き蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232792(P2012−232792A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104437(P2011−104437)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【出願人】(500302404)トーヨーベンディング株式会社 (25)
【Fターム(参考)】