説明

飲食品用金ナノコロイド水性分散液

【課題】飲食品の着色に極めて有効な飲食品用金ナノコロイド水性分散液を提供する
【解決手段】
金粒子、並びにゼラチン、コラーゲン及びコラーゲンペプチドからなる群から選ばれた少なくとも一種の保護剤を含有することを特徴とする飲食品用金ナノコロイド水性分散液、及び該飲食品用金ナノコロイド水性分散液の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品用金ナノコロイド分散液、該分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品の商品価値を高める目的として使用される着色剤としては、一般に、人体に無害な有機、無機の染料、顔料(以下、これらを色料という)等が使用されている。一方、これらの色料とは異なり、金のプラズモン吸収による発色を利用して、金粒子を含む溶液で飲食品を着色しようとする試みも見られる(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、金粒子は非常に凝集しやすく、溶液中の金の濃度が高くなると溶液中で金粒子が分散せずに沈殿してしまい、着色剤として使用することはできない。例えば、特許文献1に開示されている金コロイド溶液の金濃度は、0.0001〜0.1重量%と低濃度である。この様な低濃度の金コロイド溶液を使用して飲食品を充分に発色させるためには、多量の金コロイド溶液を飲食品に添加する必要がある。
【0004】
また、特許文献1の方法では、ポリオキシエチレン、水添硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤を使用しており、食品の味、食感を阻害することがある。
【0005】
この様な状況下において、高濃度の金粒子を有していても、溶液中で金粒子が安定に分散し、かつ、食品の味、食感を損なわない飲食品着色用金ナノコロイド水性分散液が求められている。
【特許文献1】特開平7−204493号公報
【特許文献2】特開平5−236907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、飲食品の着色に有効な飲食品用金ナノコロイド水性分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定の還元剤を用いて金化合物を還元し、さらに特定の保護剤(分散剤)を使用することにより、金粒子を溶液中に高濃度で含有させた場合にも、金粒子が水溶液中で凝集せず、安定に均一分散することを見出した。また、得られた金ナノコロイド水性分散液は、金粒子が高濃度で分散されているため、飲食品に少量添加するだけで飲食品を充分に着色することができ、飲食品の味、食感等を損なわないことを見出した。本発明は、この様な知見に基づき完成されたものである。
【0008】
本発明は、下記項1〜9に示す飲食品用金ナノコロイド水性分散液及び該分散液の製造方法に関する。
項1. 金粒子、並びにゼラチン、コラーゲン及びコラーゲンペプチドからなる群から選ばれた少なくとも一種の保護剤を含有することを特徴とする飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項2. 保護剤が分子量500〜10000のコラーゲンペプチドである項1に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項3. 金の含有量が0.1〜1.0重量%である項1又は2に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項4. 金粒子が、アルコール及び有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種の還元剤で金化合物を還元して得られる金粒子である項1〜3のいずれかに記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項5. 金化合物が、塩化金、塩化金酸及び塩化金酸の塩からなる群から選ばれた少なくとも一種である項4に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項6. 金粒子の粒子径が5〜50nmである項1〜5のいずれかに記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項7. 還元剤が、エタノール、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、ソルビン酸及び安息香酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である項4に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項8. pHが5〜11である項1〜7に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
項9. 金化合物、アルコール及び有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種の還元剤、並びにゼラチン、コラーゲン及びコラーゲンペプチドからなる群から選ばれた少なくとも一種の保護剤を混合することを特徴とする飲食品用金ナノコロイド水性分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
一般に、溶液中の金粒子の濃度が高くなると、析出する金粒子が巨大化・凝集して、黒色ないし茶色の金粒子として沈殿してしまうので、金粒子をプラズモン吸収による赤色着色剤として使用することはできない。ところが、本発明の金コロイド水性分散液は、特定の還元剤及び特定の保護剤を使用することにより、金粒子を高濃度にした場合にも、金粒子が水溶液中で凝集せず、安定に均一分散する。従って、本発明によれば、高濃度、すなわち、濃い色を有する長期間安定な金ナノコロイド水性分散液(原液)を得ることができる。
【0010】
さらに、本発明の金ナノコロイド水性分散液は、水溶液中に金粒子が高濃度で分散されているため、金コロイド水性分散液を飲食品に少量添加するだけで、飲食品を着色することができる。また、飲食品への添加量を少量とすることができるので、飲食品の味、食感を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
金ナノコロイド水性分散液
本発明の金ナノコロイド水性分散液は、金粒子及び保護剤を含有する金ナノコロイド水性分散液である。金粒子は、金化合物を還元剤で還元することによって得られる。
【0012】
金化合物としては、例えば、塩化金、塩化金酸、塩化金酸の塩等を使用すればよい。塩化金酸の塩としては、例えば、塩化金酸ナトリウム、塩化金酸カリウムが挙げられる。これらの金化合物は、一種単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0013】
本発明の金ナノコロイド水性分散液(最終組成物)中の金の濃度は、例えば、0.1〜1.0重量%程度(5〜50mmol/l程度)、好ましくは0.1重量%を超えて0.6重量%以下程度(5mmol/lを超えて30mmol/l以下程度)、より好ましくは0.1重量%を超えて0.4重量%以下程度(5mmol/lを超えて20mmol/l以下程度)、更に好ましくは0.12〜0.4重量%以下程度(6〜20mmol/l程度)である。
【0014】
金化合物の使用量は、金ナノコロイド水性分散液(最終組成物)中の金の濃度が上記濃度範囲になるように適宜選択すれば良い。
【0015】
金ナノコロイド水性分散液中の金粒子の粒子径は、通常、5〜50nm程度、好ましくは5〜30nm程度、より好ましくは5〜25nm程度である。金ナノコロイド水性分散液中の金粒子の粒子径は、後述の実施例の欄に記載の方法で測定したものである。
【0016】
金化合物を還元する還元剤としては、金化合物を還元でき、かつ、飲食品用に使用できるものであればよく、例えば、エタノール等のアルコール;酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、ソルビン酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸及び酒石酸が好ましい。
【0017】
これらの還元剤は、1種単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
本発明の上記還元剤によれば、金化合物と還元剤との反応は急激に進行することなく、温和に進行するため、還元によって生じる金粒子は溶液中で凝集せずに均一に分散する。
【0019】
例えば、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の還元力が強い還元剤を使用すると、金化合物と還元剤とを混合したときに金化合物が急激に還元され、溶液中で金粒子が凝集しやすくなり、金を高濃度(例えば、0.1重量%超)で含有する水性分散体(着色剤)を得ることができない。
【0020】
還元剤の使用量は、通常、金ナノコロイド水性分散液(最終組成物)中の金の濃度の0.25〜100モル倍程度、好ましくは0.5〜20モル倍程度とすればよい。
【0021】
本発明の保護剤(分散剤)としては、天然由来の食品用ポリペプチド、例えば、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲンペプチド等が挙げられ、これらの中でもコラーゲンペプチドが好ましい。
【0022】
ポリペプチドの分子量は、例えば、500〜10000程度、好ましくは1000〜5000程度である。これらポリペプチドは、食品用に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、魚類、鳥類、ほ乳類等の動物類等から得られたものを使用すればよい。
【0023】
保護剤の使用量は、本発明の金ナノコロイド水性分散液(最終組成物)全量に対して、通常、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.1〜8.0重量%程度、より好ましくは0.2〜6.0重量%程度である。
【0024】
本発明においては、上記保護剤を使用することにより、金粒子が金ナノコロイド水性分散液中で、長期間、安定に均一分散できる。
【0025】
本発明の金ナノコロイド水性分散液は、上記の金粒子、還元剤、保護剤及び水を含む。
【0026】
本発明で使用する水は、特に限定されないが、例えば、脱イオン水、蒸留水等を使用すればよく、好ましくは、煮沸等により滅菌処理された水を用いる。
【0027】
水の使用量は、目的とする金濃度、各成分の必要量応じて適宜調節すればよい。
【0028】
本発明では、さらに、必要に応じて、一般的な食品添加剤に使用される各種添加剤を配合しても良い。
【0029】
そのような添加剤として代表的なものとしては、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、酸味料、香料、乳化剤、増粘剤、他の色素等が例示できる。
【0030】
pH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム等の弱酸の強アルカリ塩が挙げられ、これらの中でも炭酸ナトリウムが好ましい。
【0031】
pH調整剤の使用量は、金ナノコロイド水性分散液が目的とするpHとなるように適宜調節すれば良い。
【0032】
本発明の金ナノコロイド水性分散液のpHは、通常5〜11程度、好ましくは6〜9程度である。
【0033】
金化合物、還元剤、保護剤、必要に応じて添加剤を水に前記所定の使用量となるように配合した本発明の金ナノコロイド水性分散液を原液として飲食品用の着色剤として使用する。
【0034】
本発明の金ナノコロイド水性分散液(最終組成物、すなわち原液)の色は、金の濃度、各成分の種類、濃度等によって異なるが、通常、濃い赤色を有する。
【0035】
製造方法
本発明の金ナノコロイド水性分散液の製造方法においては、前記金化合物、還元剤、保護剤、必要に応じて添加される添加剤を水に混合し、金化合物と還元剤とを反応させて金粒子がコロイド状に均一分散した水溶液を得る。
【0036】
本発明の製造方法においては、金化合物と還元剤との反応を促進するために、必要に応じて、各成分の混合液を加熱、攪拌等しても良い。
【0037】
各成分の混合温度は、還元剤の還元力等に応じて適宜選択すればよいが、通常、常圧下で室温(5℃〜40℃程度)〜水の沸点(100℃)程度、好ましくは50℃〜水の沸点(100℃)程度の範囲とすればよい。また、混合液を加熱還流下に攪拌してもよい。
【0038】
金化合物と還元剤との反応時間は、通常5分〜6時間程度、好ましくは15分〜3時間程度、より好ましくは30分〜1.5時間程度である。
【0039】
これら各成分の添加順序は特に限定されず、どのような添加順序でもよい。
【0040】
本発明の製造方法においては、水溶液中で金化合物が還元剤によって還元され、0価の金ナノ微粒子のコロイド溶液となる。上記の通り、本発明の還元剤によれば、金化合物と還元剤との反応は急激に進行することなく、温和に進行するため、還元によって生じる金粒子は、金を高濃度とした場合にも水溶液中で金粒子が凝集せずに均一に分散する。
【0041】
さらに、本発明では、前記保護剤(分散剤)を使用することにより、金ナノコロイド水性分散液中の金の濃度を高濃度とした場合にも、金ナノ微粒子が水溶液中で安定に分散する。
【0042】
飲食品
金化合物、還元剤、保護剤、必要に応じて添加剤を水に前記所定の使用量となるように配合した本発明の金ナノコロイド水性分散液は、水溶性であり、これを原液として飲食品用の着色剤として使用する。
【0043】
かかる原液は、そのまま使用しても良いが、さらに水で希釈して使用しても良い。かかる原液を水で希釈する場合、一般には、容量比で1〜20倍程度、好ましくは1〜5倍程度に希釈し、使用目的に合わせた適当な組成で使用する。
【0044】
本発明の金ナノコロイド水性分散液は、飲食用、特に飲用の着色剤として有用である。
【0045】
本発明の金ナノコロイド水性分散液によって着色できる飲食品としては、幅広い飲食品が挙げられるが、例えば、清涼飲料水、アルコール飲料、アイスクリーム、ソフトクリーム、和菓子、ゼリー食品等が挙げられる。
【0046】
本発明の金ナノコロイド水性分散液を、無色透明に近い飲食品又は白色に近い飲食品に添加すると、添加量等に応じて、赤色、ワイン色、ピンク色等に着色できる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の金ナノコロイド水性分散液の実施例及び比較例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、%とあるのは、重量%を意味する。
【0048】
実施例1
塩化金酸243mM水溶液を2.05ml、コラーゲンペプチド(イクオスHDL-50F、新田ゼラチン社製 分子量5000)120gを1Lの脱イオン水に溶解した液20mlと、エタノール0.03ml(金濃度と当モル量)とを混合し、脱イオン水(DIW)で約倍量に希釈後、さらに炭酸ナトリウム1.0M水溶液5.3mlでpH8.0に調整し、これに脱イオン水を加えて全量を100mlとした。
【0049】
得られた混合溶液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させて均一濃赤紫色の金ナノコロイド水性分散液(5mM濃度)を得た。得られた金ナノコロイド水性分散液には、金が0.1重量%含有されている。
【0050】
金ナノコロイド水性分散液を透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM-2000EX)で撮影したところ、金粒子は直径約5〜30nmの粒子径を有していた。
【0051】
また、得られた金ナノコロイド水性分散液(原液)を市販の日本酒に5%加えたところ、美麗なワイン色を示した。
【0052】
実施例2
塩化金酸243mM水溶液を2.05ml、コラーゲンペプチド(イクオスHDL-50F、新田ゼラチン社製 分子量5000)120gを1Lの脱イオン水に溶解した液20mlと、乳酸0.45g(金濃度の10倍モル量)とを混合溶解し、これを脱イオン水(DIW)で希釈して、全量を100mlとした。
【0053】
得られた混合液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させて均一濃赤紫色の金ナノコロイド水性分散液(5mM濃度)を得た。得られた金ナノコロイド水性分散液には、金が0.1重量%含有されている。
【0054】
金ナノコロイド水性分散液を透過型電子顕微鏡で撮影したところ、金粒子は直径約5〜25nmの粒子径を有していた。
【0055】
また、得られた金ナノコロイド水性分散液(原液)を市販のアルカリイオン水に0.5%加えたところ、美麗な淡ピンク色を示した。
【0056】
実施例3
塩化金酸243mM水溶液を8.198ml、マリンコラーゲンオリゴCF(チッソ社製 分子量1000)120gを1Lの脱イオン水に溶解した液60mlと、酒石酸0.6g(金濃度の2倍モル量)とを混合し、脱イオン水(DIW)20mlで希釈し、さらに炭酸ナトリウム1.0M水溶液9.4mlでpHを8.0に調整し、これに脱イオン水を加えて全量を100mlとした。
【0057】
得られた混合液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させて均一濃赤紫色の金コロイド液(金濃度20mM)を得た。得られた金ナノコロイド水性分散液には、金が0.4重量%含有されている。
【0058】
金ナノコロイド水性分散液を透過型電子顕微鏡で撮影したところ、金粒子は直径約10〜30nmの粒子径を有していた。
【0059】
また、得られた金ナノコロイド水性分散液(原液)を、市販の清酒に0.5%加えたところ、美麗なワイン色を示した。
【0060】
実施例4
塩化金酸486mM水溶液を2.06ml、イクオスHDL-50F(新田ゼラチン社製 分子量5000)120gを1Lの脱イオン水に溶解した液20mlと、酢酸500mM水溶液2.0ml(金濃度の等モル量の酢酸)とを混合し、脱イオン水(DIW)20mlで希釈し、さらに炭酸ナトリウム1.0M水溶液5.3mlでpHを7.0に調整し、これに脱イオン水を加えて全量を100mlとした。
【0061】
得られた混合液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させて均一濃赤紫色の金コロイド液(金濃度10mM)を得た。得られた金ナノコロイド水性分散液には、金が0.2重量%含有されている。
【0062】
金ナノコロイド水性分散液を透過型電子顕微鏡で撮影したところ、金粒子は直径約10〜30nmの粒子径を有していた。
【0063】
また、得られた金ナノコロイド水性分散液(原液)を、市販の清酒に1.0%加えたところ、美麗なワイン色を示した。
【0064】
比較例1
塩化金酸243mM水溶液を2.05ml、エタノール0.03ml(金濃度と当モル量)を混合し、脱イオン水(DIW)で約倍量に希釈後、炭酸ナトリウム1.0M水溶液5.3mlを加え、pHを8.0に調整し、これに脱イオン水を加えて全量を100mlとした。
【0065】
得られた混合液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させたが、上澄み液は無色透明で砂金状の金色粗大粒子の沈殿を得たのみであった。沈殿を実体顕微鏡(カートンズーム式双眼実体顕微鏡NSZ-70PFL)で観察したところ、金の粒子径は数十〜100μm程度であった。得られた液には、金が0.1重量%含有されている。
【0066】
比較例2
塩化金酸243mM水溶液を2.05ml、乳酸0.45g(金濃度の10倍モル量)を混合溶解し、脱イオン水(DIW)で約倍量に希釈後、これに脱イオン水を加えて全量を100mlとした。
【0067】
得られた混合液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させたが、上澄み液は無色透明で砂金状の金色粗大粒子の沈殿を得たのみであった。沈殿を実体顕微鏡で観察したところ、金の粒子径は数十〜100μm程度であった。得られた液には、金が0.1重量%含有されている。
【0068】
比較例3
塩化金酸243mM水溶液を8.198ml、酒石酸0.6g(金濃度の2倍モル量)を混合し、脱イオン水(DIW)で約倍量に希釈後、炭酸ナトリウム1.0M水溶液9.5mlでpHを8.0に調整し、これに脱イオン水を加えて全量を100mlとした。
【0069】
得られた混合液を、冷却器をつけた反応フラスコに移し、沸点下還流しながら、2時間反応させたが、上澄み液は無色透明で砂金状の金色粗大粒子の沈殿を得たのみであった。沈殿を実体顕微鏡で観察したところ、金の粒子径は数十〜100ミクロンであった。得られた液には、金が0.4重量%含有されている。
【0070】
比較例4
塩化金酸・4水和物205.9mgをイオン交換水68.88gに溶解し、エタノール25g、ポリオキシエチレン20mol、ソルビタンモノラウレート0.1gを加えて沸点下で1時間加熱還流した。この時点で、フラスコ内壁に金が析出・付着したが、液中には析出しなかった。これにクエン酸カリウム・1水和物811mgを水5gに溶解したものを滴々と加えて攪拌下10分間加熱還流した。この時、反応液はクエン酸カリウム液を滴下するとすぐに黒変した。そして、10分後には黒い巨大粒子が沈殿し、上澄液は殆ど無色透明であった。得られた液には、金が0.4重量%含有されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金粒子、並びにゼラチン、コラーゲン及びコラーゲンペプチドからなる群から選ばれた少なくとも一種の保護剤を含有することを特徴とする飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項2】
保護剤が分子量500〜10000のコラーゲンペプチドである請求項1に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項3】
金の含有量が0.1〜1.0重量%である請求項1又は2に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項4】
金粒子が、アルコール及び有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種の還元剤で金化合物を還元して得られる金粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項5】
金化合物が、塩化金、塩化金酸及び塩化金酸の塩からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項6】
金粒子の粒子径が5〜50nmである請求項1〜5のいずれかに記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項7】
還元剤が、エタノール、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、ソルビン酸及び安息香酸からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項8】
pHが5〜11である請求項1〜7に記載の飲食品用金ナノコロイド水性分散液。
【請求項9】
金化合物、アルコール及び有機酸からなる群から選ばれた少なくとも一種の還元剤、並びにゼラチン、コラーゲン及びコラーゲンペプチドからなる群から選ばれた少なくとも一種の保護剤を混合することを特徴とする飲食品用金ナノコロイド水性分散液の製造方法。