説明

飼料用添加剤

【課題】有価物の再利用の観点からも優れたリン酸カルシウムを有効成分として含有する飼料添加剤を提供すること。
【解決手段】次亜リン酸ナトリウムの製造の際に副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を加熱処理し、得られるリン酸カルシウムを有効成分とする加熱処理物を含有する飼料用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウムを有効成分として含有する飼料用添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜及び家禽は、栄養素やミネラルとして特に多量のリンおよびカルシウムを必要とし、この栄養素やミネラル補給剤としてリン酸カルシウムが用いられている。従来、飼料用のリン酸カルシウムとして、牛の骨や燐鉱石から得られるリン酸カルシウムが主に用いられてきたが、牛の骨はBSE(牛海綿状脳症)の問題もあり、現状、その使用が問題となっている。
【0003】
また、燐鉱石から飼料用リン酸カルシウムを製造する方法は古くから行われてきたが、一般に燐鉱石はフッ素燐灰石(3Ca(PO)・CaF)を大量に含み、また、重金属を含むので、飼料用リン酸カルシウムを製造する過程で、これらのフッ素や重金属を除去するため種々の工程を必要とし、このため飼料用リン酸カルシウムとしては高価なものとなり、ユーザーニーズに見合った安価な商品とは言い難い。
【0004】
また、溶融鉄合金をアルカリ金属化合物の存在のもと酸化することにより精製して得たスラグを、水もしくは水を主成分とする溶液に溶解して不溶性残さを除去した後、アルカリ土類金属酸化物及び/又は水酸化物を加え水溶液中に含有されるリン化合物をリン酸アルカリ土類金属として沈澱させ、これを飼料用添加剤として用いる方法(特許文献1参照。)や食品工場排水中のリンを活性汚泥法で処理した後、消石灰による凝集処理を併用して得られるリン酸カルシウム塩を主成分とするものを用いる方法(特許文献2参照。)が提案されているが、実用化に至ってないのが現状である。
【特許文献1】特開昭52−122577号公報。
【特許文献2】特開2001−190232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、有価物の再利用の観点からも優れたリン酸カルシウムを有効成分として含有する飼料添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる実情において、安価に製造することができるリン酸カルシウム系の飼料用添加剤について鋭意研究を重ねた結果、従来次亜リン酸ナトリウムを製造する際に副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物は、特別に再利用されることなく、そのまま廃棄されていたが、この副生物を原料として用いて、該副生物を加熱処理して生成されるリン酸カルシウムを有効成分として含有する加熱処理物には、フッ素と重金属の含有量が少なく飼料用添加剤として好適なものとなることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次亜リン酸ナトリウムの製造の際に副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を加熱処理し、得られるリン酸カルシウムを有効成分とする加熱処理物を含有することを特徴とする飼料用添加剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次亜リン酸ナトリウムの製造の際に副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を用いるため、有価物の再利用の観点からも優れた飼料用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0010】
本発明にかかる飼料添加剤は、リン酸カルシウムを有効成分として含有するものであるが、該リン酸カルシウム源として次亜リン酸ナトリウムから副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を用い、該副生物に含まれる亜リン酸カルシウムを加熱処理によりリン酸カルシウムに転化したものを用いることにその大きな特徴がある。
【0011】
本発明において、原料とする亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物は、黄燐、水酸化ナトリウム及び消石灰を原料として次亜リン酸ナトリウムを製造する際に副生するものを用いるが、該副生物中には亜リン酸カルシウム以外にその性質上、主な成分として消石灰、一部炭酸化された炭酸カルシウム等のカルシウム化合物が含有されていてもよい。この消石灰や炭酸カルシウムは次いで行う加熱処理により酸化カルシウムに転化されるので、家畜及び家禽のミネラル源となる利点も有する。このカルシウム化合物の副生物中の含有量は特に制限されるものではないが製造履歴上多くの場合、10〜30重量%である。
【0012】
更に前記副生物中には、前記亜リン酸カルシウムとカルシウム化合物以外の成分として、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム等の化合物が不可逆的に混入する場合があるが、次亜リン酸カルシウムは、次いで行う加熱処理によりリン酸カルシウムまで酸化され、一方、次亜リン酸ナトリウムや亜リン酸ナトリウム等のナトリウム化合物は、リン酸ナトリウムまで酸化されるので、この得られるリン酸ナトリウムは家畜及び家禽のミネラル源として利用することができる。
【0013】
従って、この次亜リン酸ナトリウムや亜リン酸ナトリウム等のナトリウム化合物の副生物中の含有量は、特に制限されるものではないが、多くの場合、1〜25重量%、好ましくは1〜10重量%であると加熱処理時に発生する燐酸ガスによる燃焼設備への被害を軽減できることから特に好ましい。
【0014】
次いで、本発明では、前記の亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を加熱処理してリン酸カルシウムを有効成分として含有する加熱処理物を得る。本発明では、この加熱処理により前述したとおり亜リン酸カルシウムをリン酸カルシウムに転化し、その他含まれる次亜リン酸カルシウムをリン酸カルシウムへ、消石灰や炭酸カルシウム等のカルシウム化合物を酸化カルシウムへ、また次亜リン酸ナトリウムや亜リン酸ナトリウム等のナトリウム化合物をリン酸ナトリウムに転化することができる。
【0015】
加熱処理温度は、600℃以上、好ましくは700〜900℃であればよく、当該範囲で加熱処理を行うことにより主成分の亜燐酸カルシウムを効率よく燐酸カルシウムへ転換させることができる。
【0016】
また、加熱処理時間は副生物中の亜燐酸カルシウムを燐酸カルシウムへ十分転換できる時間であれば特に制限されるものではないが、多くの場合0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。
【0017】
加熱処理する雰囲気は、例えば、大気中又は酸素雰囲気中又は不活性雰囲気中のいずれで行ってもよく、特に制限されるものではない。また、これらの加熱処理は必要により何度でも行うことができる。
【0018】
加熱後、所望により、粉砕、分級等を行って製品とする。
【0019】
かくして得られる本発明の飼料用添加剤は、リン酸カルシウムを85〜95重量%、好ましくは90〜95重量%含有し、また、これ以外の成分として酸化カルシウムを1〜5重量%、好ましくは1〜2重量%含有する。また、本発明の飼料用添加剤において、必ずしも必須成分とはならないが、この他、加熱処理物中には不可逆的に混入するリン酸ナトリウムが1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%含有するものであってもよい。
【0020】
本発明においてこの酸化カルシウムや不可逆的に混入するリン酸ナトリウムは家畜及び家禽のミネラル源として有用な成分となる。
【0021】
本発明に係る飼料用添加物は、不純物的には、燐鉱石から得られるリン酸カルシウムに比べて砒素、鉛等の重金属とフッ素の含有量が少なく、多くの場合、砒素、鉛、カドミウムの重金属の含有量が総量で50ppm以下、好ましくは20ppm以下、フッ素の含有量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下で、更に白色度にも優れている点も特徴の一つで、従来にも増して食品衛生上安全な飼料用添加物として用いることができる。
【0022】
また、本発明の飼料用添加剤において、その他の好ましい物性として、粒径が100メッシュパスで80重量%以上、好ましくは85重量%以上であると他の飼料と混合して用いる場合に均一混合が容易となることから好ましい。
【0023】
本発明の飼料用添加剤は、それ単独で家畜及び家禽のミネラル補給剤として利用することができる他、他の公知の飼料用添加剤と併用して用いることができる。他の飼料用添加剤としては、特に制限はないが、例えば、アミノ酸、ビタミン、タンパク、ミネラル、生菌剤である乳酸菌、又は嗜好性を増加する化合物等の1種又は2種以上が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではなく、また、本発明の飼料用添加剤と粘結剤あるいはこれに必要により他の飼料用添加剤を混合し加工成形して用いてもよい。
【0024】
実施例
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
黄燐62kg及び消石灰44.3kgを含む水性スラリーを調製し、次いで反応系内を窒素ガス雰囲気として水酸化ナトリウム60kgを添加し反応させた。反応終了後、ベルトフィルターにて濾過し次亜リン酸ナトリウム1水塩を溶解した溶液から濾過ケーキを分離回収した。
【0026】
次いで、この濾過ケーキには、次亜リン酸ナトリウムや亜リン酸ナトリウムなどの可溶性塩類が付着しているので、リパルプして10%スラリーとした後、再び濾過して可溶性塩を洗浄除去した。次いで、この洗浄を行った濾過ケーキを一部採取し、80℃で乾燥後、その諸物性を表1に示した。
【0027】
なお、P含有量は吸光度法、Ca含有量はキレート滴定法、F含有量はアリザリンコンプレクソン法、As含有量は原子吸光法、Pb含有量はICPにより測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
次いで、前記洗浄を行った濾過ケーキをドラム成形機で成形しキルンで800℃で1.5時間加熱処理し、かるく粉砕処理して加熱処理物を得た。得られた加熱処理物の諸物性を表2に示す。
【0030】
なお、化学組成及び不純物含有量は上記と同様に求め、粒径は100メッシュを通過したものとした。また、その外観の色を目視により観察した。
【0031】
【表2】

【0032】
表2のとおり、次亜リン酸ナトリウムの製造の際に副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を加熱処理し、得られるリン酸カルシウムを有効成分とする加熱処理物にはAs、Pb、Cd等の重金属やフッ素子が実質的に含まれていないことが分かった。
【0033】
また、これを家畜の飼料としてカルシウム濃度で0.5%濃度となるように添加して牛に30日間与えたところ、健康状態に異常は認められなかった。また、成育状態も、通常のリン酸カルシウムを添加した飼料を食べさせた牛と比較して何ら遜色がなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜リン酸ナトリウムの製造の際に副生する亜リン酸カルシウムを主成分とする副生物を加熱処理し、得られるリン酸カルシウムを有効成分とする加熱処理物を含有することを特徴とする飼料用添加剤。
【請求項2】
リン含有量が18〜22重量%であり、且つカルシウム含有量が33〜41重量%である請求項1記載の飼料用添加剤。
【請求項3】
加熱処理が700〜900℃で行われることを特徴とする請求項1記載の飼料用添加剤。
【請求項4】
前記加熱処理物が、砒素、鉛、カドミウムの含有量が50ppm以下であり、フッ素の含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の飼料用添加剤。