説明

飽和およびトランス不飽和脂肪酸含量の低い食用製品

本発明は、構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品が、製品全重量を基に表すと、a)30重量%未満の飽和脂肪酸、b)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、c)0〜80%の間の充填剤、d)15重量%未満の水、このうちトリグリセリド組成がトリグリセリド組成の重量に対して、e)45重量%未満の飽和脂肪酸、f)10%未満のトランス不飽和脂肪酸、g)少なくとも8重量%のSUSトリグリセリドであって、SはC16〜18飽和脂肪酸、Uは少なくとも18個のC原子を有する不飽和脂肪酸、h)15重量%未満のS3、i)少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、j)少なくとも75重量%の飽和および不飽和脂肪酸を含むC18の脂肪酸を含み、k)20℃において5〜50%の間のSFCを有する、食用製品に関する。
本発明はまた、油脂が連続した製品および無脂の連続した製品の製造においての当該構造化された製品の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造化された、油脂が連続した食用製品に関する。本発明はまた、このような食用製品への使用に適したトリグリセリド組成物およびこのような食用製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.発明の背景
広く様々な食品において、油脂は主要成分としてその栄養上の重要性によるだけでなく、その広範な機能特性により使用されている。油脂は広く様々な乾燥原料、多くは粉末原料との混合に適しているであろう原料であることが見出されている。これらの用途において、油脂は主に液体状態またはショートニング化した状態で均質化した乾燥原料の生地に加えられることとなる。他の用途では、油脂は水およびいくつかの乾燥原料と混合される。油脂と水が乳化して、均質化した製品が得られる。
【0003】
油脂の最も重要な機能特性の一つはそれが配合された最終食品の構造へのその影響である。製品の構造はその配合、すなわち油脂および他の原料の量および性質、ならびにその製品の製造に関する工程によって決定される。例えば、乳化、加熱、テンパリング、といった加工工程が得られる製品の構造に影響を及ぼす。
【0004】
配合された油脂の性質が顕著な効果を有する食品の例はチョコレートである。チョコレートは固形油脂であるココアバターの配合により硬い構造を有し;やや硬いサンド用クリームのような製菓用クリームは半固形油脂を含み;例えばチョコレートスプレッドのようなスプレッドは特有のやわらかさおよび塗りやすさを最終製品に付与する多量の液体油を含む。これらの例のそれぞれにおいて、油脂は少なくとも1つの粉末原料と混合される(例えば、砂糖、粉乳、ココアパウダー等)。
【0005】
目的とする用途およびその用途により予想される最終的な構造によって、温度関数である特定の固体脂含有量(SFC)をもつ油脂が選ばれることとなる。異なる用途における典型的なSFC−プロファイルはEP−A−739.589 表22aにて説明されている。SFC−プロファイルは主にトリグリセリド組成において、油脂の(トリ)グリセリドを形成している脂肪酸の性質ならびに油脂を固化させるために使用する方法、具体的には結晶化の時間および温度、製品がテンパリングに供されるか否か、等によって決定する。ある温度において油脂が液体になるか固体になるかは、脂肪酸の鎖長だけでなく、具体的には脂肪酸の型すなわち飽和か不飽和かおよび不飽和脂肪酸の場合は異性体の型がシスかトランスかによっても決定される。製品により硬い構造が必要ならば、通常はより高いSFC−プロファイルをもつ油脂が選択され、このことは、油脂が相当多い量の飽和脂肪酸および/または不飽和脂肪酸のトランス異性体を含むであろうことを意味する。飽和脂肪酸(SAFA)は、ココアバター、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、牛脂等のような天然油脂中に豊富に存在する。天然由来のトランス脂肪酸(TFA)は主に反芻動物の油脂中に見出される。天然の植物油脂には当該トランス異性体は含まれない。TFAは不飽和脂肪酸であるけれども、それらの構造および融解プロファイルは対応するシス型のものよりも、飽和脂肪酸により近い。
【0006】
構造化された製品の製造に適した硬い構造の油脂が、広い範囲で当然に使用可能であるが、固体構造をもち、主要な脂肪酸鎖の範囲がC14〜C20である油脂にいまだ大きな需要がある。このような油脂を得るためには、大豆、菜種、ひまわり、落花生油のような液体油の水素添加により固形油脂を得ることが広く用いられている。水素添加はまた「硬化」とも呼ばれ、通常、触媒の存在下で実施される。しかしながら、水素添加は不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸(SAFA)への変換だけでなく、シス不飽和脂肪酸のトランス異性体への変換をも生じさせる。SAFAおよびTFAの量の増加の両方が、水素添加による液体油から固形油脂への変換に寄与している。しかしながら、機能の点からはSAFAおよび/またはTFAをより多量に含む油脂の使用は所望の構造を得るために推奨されるであろうけれども、栄養の点では、これらの脂肪酸の量を制限することがより強く推奨される。SAFAおよびTFAの摂取により心臓疾患の発生のリスクが高まることが示されている。それゆえ、WHOのような公的機関では、SAFAおよびTFAの一日あたり摂取量の推奨上限値を公表している。トランスフェアスタディとよばれる、ヨーロッパの多くの国で実施された食品中の油脂の消費傾向の調査では、SAFAおよびTFAの一日あたりの摂取が大多数の国ではるかに多すぎることを示す。
【0007】
このように、目的とする用途に適した所望の固形または半固形構造を示しているにも関わらず、SAFAおよび/またはTFAの量が制限されたトリグリセリドを含む食品系、食品および食用製品の必要性が存在する。十分な固形構造をもつ食用製品の製造に使用可能であるが、SAFAおよび/またはTFAの量が制限されているようなトリグリセリド組成物、ならびにそのような組成物の製造方法についての必要性も存在する。
【0008】
2.先行技術
EP−A−719.090によると、スプレッドまたはマーガリンに使用される飽和脂肪酸含量が35重量%未満の健康によい油脂が知られている。油脂はさらに5〜45重量%のS2U、0〜60重量%のSU2、5〜95重量%のU3および0〜8重量%のS3を含む。マーガリン油脂中のジグリセリドの存在が結晶化反応に悪い影響を与えると信じられていることから、ジグリセリド含量は5重量%未満である。EP−A−719.090で開示されている油脂は、マーガリンに典型的な平坦なSFC−プロファイルであり、N5およびN20がそれぞれ5および20℃でのSFCを意味するところの、(N5−N20)が10未満で表されることを特徴としている。EP−A−719.090の油脂組成によって提供される構造化の特性は、主に油脂中の1.5〜4重量%のベヘン酸の存在の結果によるものと考えられる。これらの油脂から調製された油中水型エマルジョンは良好な硬さを示す。スプレッドを製造する場合、油脂、水ならびにいくつかの他の原料および添加物を混合し、85℃で殺菌し、続いて冷却および結晶化工程を行う。
【0009】
EP−A−875.152は層状特性(lamination properties)を向上し、良好な構造化の特性、具体的には低飽和脂肪酸含量で良好な硬さとなる層状油脂(lamination fats)に関する。EP−A−875.152によると、このことは、トリグリセリド中に少量の長鎖脂肪酸が存在、具体的には少量のアラキジン酸およびベヘン酸が存在することによりもたらされる。油脂混合物はさらに70〜85重量%の液体油および少なくとも15重量%の(H2M+H3)トリグリセリドを含み、50重量%未満の飽和脂肪酸含量、35未満のN35、および15〜40重量%のN20を有する。上記において、Hは少なくとも16個の炭素原子をもつ飽和脂肪酸を意味し、Mは6〜14個のC原子をもつ飽和脂肪酸を意味する。混合品は、いくらかの最低限のスティーブンス硬度を有していることを特徴とし、それによりパフペストリーでの使用に適している。20℃においてスティーブンステクスチャーアナライザーで直径4.4mmの円筒プローブを用いて測定した、油脂混合品のスティーブンス硬度は少なくとも150g、好ましくは150〜800gの間である。実施例にて開示された油脂混合品のSAFA含量は29〜35.2%の範囲であり、35℃での固体脂含量は10.6〜23.3%の範囲である。
【0010】
EP−A−687.142は飽和脂肪酸含量が40重量%未満、トランス脂肪酸含量が5重量%未満、N20が少なくとも10%、S2U含量が5〜50重量%、(U2S+U3)含量が少なくとも35重量%、およびS3含量が0〜37重量%のベーカリー用油脂を開示する。ベーカリー製品の特性は、高い飽和脂肪酸含量を有するこれらの製品と、少なくとも同等であると説明される。これを得るために、ドウ油脂はSUS−トリグリセリドが豊富であり、好ましくは5〜30重量%のベヘン酸を含む成分Aを含む。実施例から、ドウの調製は融解した油脂成分を混合し、続いてドウの残りの乾燥原料および水と混合するのに適した可塑化した油脂を得るために、融解物を冷却して一晩冷蔵保管することにより行われることが見受けられる。
【0011】
EP−A−731.645は、砂糖と、通常よりSAFA含量が低い、すなわち45重量%未満のトリグリセリド成分の混合品を開示する。トリグリセリド成分は少なくとも40重量%のSU2および3〜50重量%のS2Uを含み、TFAが無く、少なくとも35のN20および10未満のN30を有する。トリグリセリド成分が少なくとも10重量%のベヘン酸を含むこと、トリグリセリド成分が25重量%未満のStUSt(U=不飽和脂肪酸;St=C18:0)を含むこと、および0.1〜10重量%のトリ飽和トリグリセリド、具体的にはパーム油のステアリン、の存在が良好な構造特性をもたらすことが説明される。混合品は、フィリング油脂およびアイスクリームコーティングでの使用に好適である。それらの限定されたSAFA−含量にかかわらず、混合品は、許容できるテクスチャー、満足できる高い硬度および良好な口どけ特性という意味の、良好な製品の性能を示す。フィリングおよびコーティングは、原料の混合、ロールリファイニングおよびコンチングに続いて、20℃より低い、好ましくは15℃より低い温度への冷却工程(「テンパリング」と呼ばれる)によって調製される。冷却工程の間に、作用量の油脂のシード、例えばココアバターのシードを添加してもよい。実施例では、フィリングの冷却および低温での長期間(例えば7℃16時間、続いて13℃1週間またはシード剤を用いる場合は13℃18時間)の貯蔵の後に許容できる硬度が発見されたと説明する。実施例4は、20℃でのスティーブンス硬度が158gであり、フィリングが50重量%の油脂を含み、油脂が41.7重量%のSAFAを含むフィリング油脂を開示する。
【0012】
EP−A−1.543.728より、油脂ベースの組成の増粘に適した、油脂を含む増粘組成が知られている。増粘組成は15〜45重量%の間の少なくとも1の硬化油脂および85〜55重量%の間の少なくとも1の液体油を含む。硬化油脂は好ましくは、少なくとも15重量%の18より多いC原子を有する脂肪酸、好ましくは最大で22個の炭素原子をもつ極度硬化油脂である。好ましい硬化油脂は硬化高エルカ酸菜種油である。実施例1によると、25部の極度硬化高エルカ酸菜種油と75部の菜種油の混合品の冷却が固体の最終製品を与える。
【0013】
上記の特許公報の全てが、SAFAが低く、許容される硬度を示し、最終製品での使用に好適な、構造化された油脂組成の提供という問題を扱う。しかしながら、この問題はいつでも構造化剤としてのベヘン酸および/またはアラキジン酸、すなわち長鎖脂肪酸を含む油脂成分の使用によって解決される。ベヘン酸は主に硬化によって得られる。1以上のこれらの脂肪酸を含むトリグリセリドは、35℃で高い固体脂含有量が見られるように、それらの高い融点によって食べたときにワキシー(waxy)な口当たりを生じる恐れがある。1以上のこれらの長鎖脂肪酸を含む高融点のトリグリセリドの存在を避けるために、化学的または酵素的エステル交換がしばしば利用され、続いて分別される。しかしながら、これは複雑で高価な製造方法である。加えて、ベヘン酸およびアラキジン酸の起源原料はそれらの入手がかなり限定されている通り、かなり高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
3.発明の目的
このように、飽和および/またはトランス脂肪酸の含量がわずかであり、硬度が十分に高く、目的とする用途に適した、構造化された油脂が連続した食用グリセリドを含む製品の必要性がある。このような食用製品に使用するトリグリセリド組成、およびこのような食用製品を製造する方法にも必要性がある。
【0015】
それゆえ、本発明の目的はこのような構造化された、油脂が連続した食用製品であり、加えて許容できるテクスチャー、良好な口当たりおよび良好な栄養的なプロファイルを有する食用製品を提供することである。特に、本発明の目的は本発明の食用製品に存在するトリグリセリド組成の存在に基づいて、具体的には飽和およびトランス脂肪酸含量に基づいて予期できるよりもより硬い構造をもつこのような食用製品の提供である。
【0016】
本発明のさらなる目的は、先行技術での教示から予期できるよりも有意に少ない飽和およびトランス脂肪酸の濃度において十分な硬度を示すこのような構造化された、油脂が連続した食用製品を製造する方法を提供することである。
【0017】
本発明の目的はまた、当該食用製品で使用するためのトリグリセリド組成物を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
4.発明の記載
この目的は、請求項1の技術的特徴に示されている、構造化された、油脂が連続した食用製品という本発明によって達成される。
【0019】
それによると、食用製品が、製品全体を基として表すと、
a)30重量%未満の飽和脂肪酸、
b)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
c)0〜80重量%の間の充填剤、
d)15重量%未満の水、
このうちトリグリセリド組成がトリグリセリド組成の重量に対して、
e)45重量%未満の飽和脂肪酸、
f)10重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
g)SはC16〜18の飽和脂肪酸、Uは少なくとも18個のC原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも8重量%のSUSトリグリセリド、
h)15重量%未満のS3、
i)少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
j)少なくとも75重量%の飽和および不飽和脂肪酸を含むC18の脂肪酸を含み、
k)20℃において5〜50%の間のSFCを有する。
【0020】
上記の充填剤は非グリセリドの食用固体原料を意味し、好ましくは粉状で存在する。
【0021】
本発明の範囲内において、油脂が連続した製品とは連続相が油脂で形成されている製品を指すものと理解される。このような油脂が連続した製品の例はチョコレートフィリングおよびスプレッドである。ベーカリー製品またはフライドポテトはそこに含まれる油脂によってこれらの製品の連続相が形成されていないことから、本発明の範囲内の油脂が連続した製品とはみなされない。本発明の範囲内において、「構造化された製品」は室温での24時間未満の貯蔵後に自然におよび視覚的に2以上の相に分離することのない構造をもつ製品を意味する。
【0022】
本発明の食用製品には、例えばヘーゼルナッツペーストのようにそれ自身が油脂を含む原料が含まれてもよい。この場合、ヘーゼルナッツペースト中に存在するヘーゼルナッツ油はトリグリセリド組成の一部とみなされ、ヘーゼルナッツペーストの無脂部分は充填剤の一部とみなされる。本発明の範囲内において、存在するならば、充填剤は本発明の食用製品に意図的に添加される原料である。ゆえに、100%油料種子を粉砕したものからなる製品は、たとえそれが充填剤とみなされるようなペーストを形成する場合でも、これらの成分は意図的に混合されているものではないことから、油脂が連続した製品とはみなされても、本発明における食用製品とはみなされない。
【0023】
本発明者らは、本発明の食用製品がたとえ一部分のトリグリセリド組成しか結晶化形態でない場合でも、固体構造をとることを見出している。そのため所望ならば、本発明の食用製品は製造後に安定化のためにいくらかの時間放置してもよい。このことは、結晶化した油脂の安定化および食用製品の硬度の増加という結果をもたらす。
【0024】
本発明者らはまた、本発明の食用製品が製品に含まれる飽和脂肪酸含量から予期されるよりも硬く、類似の含量の飽和およびトランス脂肪酸もしくは類似の20℃での固体脂含有量(SFC)をもつ従来から知られた製品よりも硬いテクスチャーを特徴とすることも見出している。
【0025】
本発明者らはさらに、製品が高い油脂保持能を示し、たとえ本発明の食用製品が比較的やわらかいクリームの形態をとる場合でも、予期される室温における製品からの油脂の自然分離が起こらないことを見出している。組成のトリグリセリド部分が低い〜とても低い飽和脂肪酸(SAFA)含量および/または20℃での低いSFCを有しており、このことは驚くべきことである。この低いSAFAにより、当業者は、室温で自然な油分離が起こることのない、請求項1のトリグリセリド組成を有する油脂を基にした構造化された食用製品を得ることができるとは決して予期しないであろう。発明者が大変驚くことに、室温で油が分離する傾向、すなわち固体脂からの液体油の分離がなく、液体油が食用製品の母体中に保持された状態のままである。油を吸収する能力のある他の製品と接触した場合でも、本発明の食用製品からの油の損失は無視できる程度にとどまる。次の利点は本発明の食用製品がたとえ油を吸収する能力を有する、および/またはその傾向を示す他の製品と接触した場合でも、油の移行に対して高い抵抗性を示すことである。このような製品の例は、チョコレート外殻と接触している場合、またはビスケットに付けた場合でもそこに存在する液体油の大部分が失われないようなクリームである。不良な油保持能を示すクリームでは、速やかに、チョコレート外殻の軟化およびブルーミングならびに液体油部分の喪失によるクリームの硬化という結果になるであろう。
【0026】
本発明の食用製品において、脂肪酸の大部分は8〜18までの間の炭素原子の鎖長を有する。残りの部分は、より短いまたは長い鎖の脂肪酸となれる。より短鎖の脂肪酸は通常、食用製品が例えば乳脂肪を含む場合に存在し、より長鎖の脂肪酸は食用製品が例えば落花生油を含む場合に存在する。
【0027】
液体油または半液体油の水素添加は通常、固形油脂を製造する技術とみなされる。しかしながら、水素添加は油脂組成の飽和脂肪酸の量を増加する。部分的な水素添加の場合、健康に悪い影響を与えるトランス脂肪酸が形成される。この理由から、水素添加はむしろ悪い意味合いを得るに至っている。本発明の食用製品は油脂の水素添加を含んでいてもよいけれども、最小限か、さらには使用を避けることが好ましい。従って、本発明はトリグリセリド組成中の水素添加した製品の使用を最小限とする傾向であり、実質的に硬化油脂成分の無いトリグリセリド組成を使用する傾向である。
【0028】
好ましい実施形態によると、本発明の食用製品は製品の全重量に対して表すと28重量%未満、好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸を含む。好ましいトリグリセリド組成はその全重量に対して40重量%未満、好ましくは35重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸を含む。好ましいトリグリセリド組成は5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸を含む。好ましいトリグリセリド組成はさらに10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満のS3を含む。好ましいトリグリセリド組成はまた、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%の飽和および不飽和脂肪酸を含むC18の脂肪酸を含む。
【0029】
良好な硬度および低いSTFA含量に関して良好な性能をもつ食用製品はさらに、C18の脂肪酸が18個の炭素原子の鎖長をもつ飽和および不飽和の脂肪酸を含み、このようなものとしてステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸およびリノレン酸を含むところの、それらのグリセリド組成全重量に対して、C18の脂肪酸の濃度が少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%であることを特徴とする。C18の脂肪酸の高い濃度は、C18の脂肪酸は飽和またはシス−不飽和のどちらも総コレステロールおよびLDL−コレステロール低減作用を有することから、栄養の観点から関心がもたれている。
【0030】
従来、より硬い構造をもつ油脂組成または油脂を含む食用製品を得るために、トリ飽和トリグリセリド(S3)のような高い融点のトリグリセリドが油脂組成または食用製品に組み込まれていた。これらは油脂の極度硬化または天然油脂の分別によって得られる。これらのトリグリセリドはそれらの構造特性により使用されるけれども、それらは融点が高く、ワキシーな口当たりの原因となり得ることから、その量は大抵限定されている。現在驚くべきことに、本発明の食用製品において、高含量のS3トリグリセリドが製品の硬化に不利な効果を有することが見出されている。従って、グリセリド組成中のS3濃度を、グリセリド組成全重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満に限定することが好ましい。
【0031】
本発明の食用製品の第一の好ましい実施形態は、
a)95〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
b)0〜5重量%の間の充填剤、
c)8重量%未満の水、
d)5重量%未満の1以上の添加物、
を含む。本発明の食用製品の他の好ましい実施形態は、20〜95重量%の間、好ましくは25〜60重量%の間、より好ましくは30〜50重量%の間のトリグリセリド組成、および5〜80重量%の間、好ましくは75〜40重量%の間、より好ましくは70〜50重量%の間の充填剤を含む。
【0032】
本発明の第一の好ましい実施形態による食用製品は油脂のみまたは大部分が油脂のみからなる。これらの製品は主に、最終製品の工程での使用に好適な、および構造化させて硬いテクスチャーを得ることができる中間製品である。このような製品は、もしそれらが25重量%より多いSAFAを含むならば、固形または半固形のテクスチャーを有するであろう。もしこれらの製品をポンプ送り可能な固体または半固体のテクスチャーとするか、またはこれらを他の乾燥原料、例えば粉末状のフィリング原料と混合する意図があるならば、製品はよりやわらかい構造を有するか、可塑化する必要がある。このことは、固体脂の少なくとも一部を融解させるための、食用製品の加熱によって達成され得る。よりやわらかい油脂を提供することが目的とする用途ならば、他の選択肢は、食用製品全重量に対するSAFA含量を25重量%未満、好ましくは20重量%未満に下げることによって可塑性油脂を作り出すことである。このような製品はまだ均質な構造を有し、室温で油が分離しにくいものである。それらの高含量の不飽和脂肪酸のために、それらの酸化安定性を高めるため、多くの場合それらの製品に添加物が加えられるであろう。
【0033】
本発明の範囲内であり、食用製品はショートニングであってもよいけれども、好ましい本発明の食用製品はショートニングではない。本発明の食用製品は、可塑性ショートニングと比較してより硬いテクスチャーを有する構造化された油脂製品である。可塑性ショートニングは周知の構造化された油脂製品であり、またそのほとんどが油脂から成るものと言えるが、それらはよりやわらかいテクスチャーおよび、特に他の多孔性物質と接触の際に非常に弱い油保持能を有す。「Bailey’s Industrial Oil&Fat Products」(第5版、1996 第3巻、頁115および頁120)によると、「ショートニングは典型的な100%油脂製品である。」「・・・ショートニング、マーガリンおよびスプレッドは特有の物理的特性を有するよう調製されている。粘ちょうな液体のレオロジー的な流量特性のすべてを前提とした、恒久的な変形をもたらすのに十分な、強力なせん断力を加えた場合でも、これらの製品はまだ固体であるように見える。このような固体は可塑性固体と称される。これらの可塑体の本質として、これらを容易に塗り広げることができ、他の固体または液体と、ひび割れ、砕けまたは結晶状態の油脂からの液体油の分離無しに、十分に混合することができる。」。ショートニングは、グルテン繊維の結合を防ぐために油脂を使用するところのベーカリー商品において多数利用されていることがわかる。
【0034】
本発明の食用製品の第二の好ましい実施形態は、
a)20〜95重量%の間、好ましくは25〜60重量%の間、より好ましくは30〜50重量%の間のトリグリセリド組成物;
b)5〜80重量%の間、好ましくは75〜40重量%の間、より好ましくは70〜50重量%の間の充填剤、
を含む。この第二の実施形態による製品はある程度の量の油脂および充填剤を含む。この第二の実施形態による製品の典型例は、30〜50重量%の油脂、30〜50重量%の砂糖ならびに任意に全粉乳および/または脱脂粉乳、ココアパウダー等のような他の乾燥原料を含む製菓用クリームである。この第二の実施形態の製品はむしろ、構成された製品、例えば製菓用フィリングとして、またはその一部として使用できる最終製品である。これらの最終製品は大部分が最終消費者によって望まれる構造を有する。
【0035】
本発明の関心のある食用製品は好ましくは、食用製品全重量に対して8重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の制限された水分含量を有する。マーガリンのような多量の水の導入は、例えば、エマルジョンの安定化のために通常添加物または選択された原料および特別の加工技術を適用される、水中油型エマルジョンのような、異なる食品系をもたらす。
【0036】
本発明の食用製品はまた、エマルジョンでもなく、具体的にはW/Oエマルジョンでもない。マーガリンのようなW/Oエマルジョンは特別な乳化および固化技術ならびに乳化剤および増粘剤の使用によってそれらの構造を得て、このようにして本発明の食用製品の構造とは異なる構造を有する。本発明の製品はその構造を得るためにこのような技術に供することを必要としない。
【0037】
好ましくは、本発明の構造化された、油脂が連続した食用製品に存在するトリグリセリドの少なくとも一部分が結晶化状態である。結晶化した油脂は、油脂が連続した製品の構造の基盤を形成すること、および高い油保持能を提供することが見出されている。結晶化したトリグリセリドは油脂を吸収し、蓄える、またはより一般的には所定の温度において液体である油脂を吸収することのできる構造を提供することが見出されている。既知の製品において、構造の基盤は通常、乳化剤または非グリセリド構造化剤の混和によって、または製品を、例えば焼成や押出成形のような加工に供することによって提供される。食した際のザラザラした、滑らかでない口当たりの発生するリスクを低減するために、結晶化した油脂の90%より多い量における結晶の大きさは、100μmより小さい、好ましくは75μmより小さい、より好ましくは50μmより小さい、最も好ましくは25μmより小さい。より大きな油脂の結晶は、大抵貯蔵の際の再結晶化を通じて形成される。この減少はマーガリンの場合によく知られており、ベータプライムからベータ形の結晶に変わることで、「ザラザラした」製品をもたらす。より大きな結晶はまた、食用製品のより弱い構造を伴う。
【0038】
安定した構造をもつ強固な製品は、結晶化した油脂の少なくとも50、好ましくは少なくとも70、より好ましくは少なくとも85重量%がベータ形で結晶化している場合に特に得られ得る。ベータ形はWilleおよびLutonによってVまたはVI型と定義される結晶状態である。
【0039】
本発明の製品は、製造後速やかに、具体的には固体脂部分の結晶化後速やかに、その後の硬化またはその後の軟化の傾向がほとんど無しで、強固な構造を形成することを特徴とする。このように、強固な構造を形成するために、本発明の食用製品を製造後に低温で貯蔵することまたは長期に貯蔵することは必要ない。発明者らは本発明の食用製品が貯蔵の間にその硬度がほとんど変わらないことを特徴とすることを見出している。具体的には、製造後1日間室温で安定化させた後の食用製品および製造後1週間貯蔵した後の食用製品の硬度が、25%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満の差である。このことは強固な構造を得るために特別な手段を適用しなければならない従来技術からの有利な点である。
【0040】
本発明の食用製品に含まれるトリグリセリドは好ましくは特有なDSC融解プロファイルを特徴とする。具体的には、本発明に従って製造し、製造後に少なくとも1日、安定化のために放置した製品のDSCプロファイルと、製品を油脂が溶けるのに十分な高い温度に加熱し、撹拌無しで室温まで冷却して、1週間室温で放置して安定化した後に測定した同じ製品のDSCプロファイルを比較したときに、食用製品に存在するトリグリセリド組成が、高融点トリグリセリドピークが低温へ、少なくとも2℃、好ましくは少なくとも3℃、より好ましくは少なくとも4℃のずれを示す、DSC溶解プロファイルを示す。DSC融解プロファイルは、製品温度を、20℃で3分間保持し、続いて20℃から−40℃まで冷却速度−5℃/分で温度を下げ、続いて製品温度−40℃で3分間保持し、続いて製品温度−40℃から+60℃まで加熱速度+5℃/分で温度を上げる温度−時間条件に製品を供することによって測定される。この測定の実施のために、メトラー・トレド製STARシステムを使用することが好ましいが、同等のシステムを同様に使用してもよい。油脂が融解する十分な高さの温度に加熱、少なくとも60℃への加熱を意味する、し、5分間当該温度で保持する。強固な構造をもつ製品では、高融点トリグリセリドに対応するピークは、純粋な高融点SUS−油脂の安定な状態での同じピークと比較した場合、低い温度のほうへずれる。弱い構造をもつ製品は、このような強いずれを示さない。本発明はそれゆえ、製品全体に基づいて表すと、
a)30重量%未満の飽和脂肪酸、
b)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
c)0〜80重量%の間の充填剤、
d)15重量%未満の水
を含み、このようなDSC融解プロファイルを示す構造化された、油脂が連続した食用製品にも関する。
【0041】
硬度、口当たりおよびワキシー感の発生する最小リスクに関する最良の結果は、グリセリド組成重量に対して好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97重量%の、14〜18の間の炭素原子鎖長をもつ脂肪酸を主に含むグリセリド組成によって得られることが見出されている。ラウリン酸油脂のようなC12の脂肪酸が豊富なグリセリドも硬い構造の形成に利用できるけれども、それらは飽和物を多く含む。加えて、ラウリン酸と非ラウリン酸油脂を混合した場合、油脂混合物が、硬度を失うことを意味する共融の影響、が現れる傾向がある。それゆえ、本発明の範囲内ではそれらの使用は最小限とすることが好ましい。
【0042】
低いSAFAおよびTFA−含量と組み合わせた硬度に関する最良の結果は、トリグリセリド組成全量に対して少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、最も好ましくは少なくとも18重量%のSUS−トリグリセリドを含むトリグリセリド組成によって得られる。ここにおいて、Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、具体的にはパルミチン酸およびステアリン酸を意味し、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を意味し、SUSは1−および3−位が飽和脂肪酸のトリグリセリドを意味する。ここにおいて、1および3位の脂肪酸は同じでも異なっていてもよい。結果として、StOStもPOStも本発明の枠内の好適なSUS−トリグリセリドとみなされる。SUS含量は通常45重量%未満、好ましくは40重量%未満であろう。トリグリセリド組成の残りの部分は主にトリ−不飽和トリグリセリドからなるであろう。
【0043】
食用製品の硬度および構造に関する最適な結果は、StUStおよび/またはPUStからなる当該SUSトリグリセリドが少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%であるトリグリセリド組成によって得られる。最適な構造および硬度はStOStからなる当該SUSトリグリセリドが少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%であり、Stがステアリン酸、Pがパルミチン酸、Oがオレイン酸、SがC16〜18の飽和脂肪酸およびUが少なくとも18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸である、トリグリセリド組成によって得られる。事実、BOB(B=ベヘン酸)のようなSUS−トリグリセリドは構造を形成するより弱い能力を有し、POPは限定された構造および硬度のみを形成することが見出された。本発明の範囲内において、トリグリセリド組成のStOStとPOStの比少なくとも2.5、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも6であることが好ましい。例えばシアステアリンのような高いStOSt/POSt比をもつトリグリセリドは、例えばココアバターのような低い比をもつ油脂に比べてより強固な構造を形成する能力があることが見出された。
【0044】
EP−A−731.645とは対照的に、多量のSU2の存在は食用製品の硬度に不利に作用することが見出された。それらを考慮して、本発明の構造化された製品でのグリセリド組成中のSU2トリグリセリド濃度は、トリグリセリド組成の全重量に対して、38重量%未満、好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満に限定されることが好ましい。
【0045】
油脂組成または食用製品で構造を得る他の従来法は、1以上のC22の脂肪酸を含むトリグリセリドを混合することである。先行技術文献では、この型のトリグリセリドが所望の硬い構造の形成において本質的な役割を果たしているものである、いくつかの組成が記載されている。現在ではC22の脂肪酸の使用は、本発明の食用製品の硬度に不利に作用することにより、最小限とされるべきことが本発明により見出されている。それゆえ、本発明の食用製品中のC22の脂肪酸濃度は、トリグリセリド組成の全重量に対して2.5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、最も好ましくは0.7重量%未満に限定されることが好ましい。現在では、本発明の構造化された食用製品に存在するトリグリセリドを慎重に選択することにより、長鎖脂肪酸と呼ばれる、すなわち20個より多い炭素原子を有する脂肪酸を含むトリグリセリドの存在を必要とせずに、その硬度を有利に増加できるであろうことが本発明により見出されている。
【0046】
本発明の構造化された食用製品およびトリグリセリド組成の室温での固体脂含有量(SFC)は好ましくは制限されている。それは、好ましい食用製品はN20が40%以下、好ましくは35%以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下であることを特徴とするトリグリセリド組成を含むことである。発明者らはこの少量の固体脂にも関わらず、室温で良好な構造をもつ製品が得られることを驚きを持って見出している。35℃での固体脂含有量もまた、この温度での高い値は悪い口どけ特性およびワキシー感の形成を示すため、制限されることが好ましい。それゆえ、N20およびN35はトリグリセリド部分の固体脂含有量であり、SFCはIUPAC2.150aの方法によって測定したものであるところの、N35が20%以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは5以下であることが好ましい。
【0047】
好ましくは、本発明の食用製品およびトリグリセリド組成は少なくとも1の固形または半固形油脂成分ならびに少なくとも1の液体成分、その液体成分は少なくとも1の液体油または2以上の液体油の混合品である、を含む。少なくとも1の固形または半固形油脂は、室温で固体または半固体脂であり、好ましくは融点が少なくとも25℃である油脂である。半固体脂は、室温で可視的な固体脂部分と可視的な液体油部分を含む油脂を意味する。少なくとも1の液体油は、室温で液体である油である。
【0048】
好ましくは、本発明のトリグリセリド組成および食用製品は、少なくとも1の固形または半固形油脂の量が、トリグリセリド組成重量に対して、10〜90重量%、好ましくは15〜60重量%、より好ましくは20〜45重量%の範囲であり、少なくとも1の液体油の量が、トリグリセリド組成重量に対して、10〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%であることを特徴とする。少なくとも1の固形または半固形油脂および液体油の量は、主に選択された固形または半固形油脂の硬度によって、また想定される最終食用製品の硬度によっても変化してもよい。
【0049】
もし液体油が液体成分または液体成分の一部から選択されるならば、好ましくは当該液体油は菜種油、コーン油、大豆油、ひまわり油、綿実油、メイズ油、オリーブ油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、パーム油もしくはシアバターの液体画分、2以上の上記油の混合品およびそれらの画分から選択される植物油であろう。ここにはまた、例えば高オレイン酸ひまわり油のような、上記油の派生品も含む。
【0050】
固形または半固形油脂の重量に対して少なくとも25重量%、35重量%、より好ましくは、少なくとも40重量%のSUS−トリグリセリドを含み、SUS−含量が85重量%未満、好ましくは75重量%未満、より好ましくは65重量%未満、最も好ましくは60重量%未満である油脂が、固形または半固形油脂として、好ましくは使用されるであろう。ここで、Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であり、SUS−濃度が固形または半固形油脂の全重量に対して表される。強い油保持能をもつ良好な構造は、最少量のSUS−トリグリセリドが存在するときに得られる。それゆえ、固形油脂は好ましくは、固形または半固形油脂に対して上記の最小量のSUS−トリグリセリドを含む。発明者らは、低含量の飽和脂肪酸を有する製品においてさえも、高いSUS−含量によってより強固な構造を得られること見出している。非常に高いSUS−含量をもつ油脂はシアバターまたは酵素的に調製した対称油脂の分別によって、またはイリッペ油脂やアランブラッキア油脂のような特殊な油脂を使用することによって得られるが、これらの油脂および処理は非常に高価であり、起源原料の入手がかなり限定されている。硬度および油保持能に関して非常に良好な結果は、SUS−トリグリセリドがより少ない濃度である油脂、例えばはるかに少ない分別または全く分別されていない、85重量%未満、好ましくは75重量%未満、好ましくは65重量%未満、最も好ましくは60重量%未満のSUS−含量を有する油脂によって得られる。
【0051】
非常に好適な固形油脂または半固形油脂はココアバター、シアバター、イリッペバターからの油脂、コクム油脂、サル油脂、アランブラッキア油脂、モーラバター、マンゴー核油脂、酵素的に調製された油脂もしくはこれらの画分、または上記の2以上の油脂の混合品もしくはそれらの画分を含む。シアバターは、強固な構造および低いSAFA−含量をもつ製品を、相応な費用で製造するための特に好適な原料として見出されている。それゆえ、本発明の構造化された製品に使用される固形油脂は、好ましくはシアバターが7重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは4重量%未満の不けん化物を含むところである量のシアバターを含むことが好ましい。固形油脂部分のシアバターの量は、5〜100重量%、好ましくは20〜80重量%の間の範囲とすることができる。この油脂のStOSt−含量は約30重量%だけであるが、この油脂を含む製品は、良好な構造、良好な摂食時の特性および制限されたSAFA含量、例えば油脂全量を基にして35未満またはわずか30重量%未満、での硬い構造を示す。必要ならばいくつかの分別を行ってもよいが、これは大部分は非分別の原料であろう。天然のシアバターは不けん化物を含み、その一部は高い融点を有している。その最終製品の構造への悪い影響から、使用前にこの物質を除去することが好ましい。本発明の範囲内において、固形油脂は少なくとも1の酵素的に調製された油脂またはその画分であり、当該油脂のSUS含量が30〜85重量%の間、好ましくは35〜75重量%の間であることを特徴とするものを、ある程度の量含んでいてもよい。酵素的油脂は、たとえ分別されていなくても、本発明の構造化された食用製品に使用した場合に良好な特性を与える。もし油脂のSUS−含量が乾式分別または溶媒分別で増加した時は、生じたSAFAの量により製品の硬度を増加することができる。85未満、好ましくは75重量%未満のSUS−量は、非常に低いSAFA−量で非常に硬い製品とするのに十分である。これらの量を超えると、利点を加えること無しに、製品の費用が上昇しすぎることとなるであろう。
【0052】
本発明の食用製品に使用される充填剤は、通常非グリセリドの食用の固体物質であろう。一般的な充填剤は、砂糖、小麦粉、澱粉、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダー、ココアパウダー、コーヒーパウダー、食品グレードの有機および無機固形粉末またはこれらの2以上の混合品からなる群より選択される少なくとも1の成分を含む。主に、充填剤は500μmより小さく、好ましくは250μmより小さく、最も好ましくは100μmより小さい平均粒径をもつ粉末製品である。この小さな粒径は油脂と混合して均質な製品とすることを容易にし、摂食時にざらざら感を感じさせる恐れが最小限で、最終製品の構造を改善する。しかしながら、当業者が好適とみなす他の充填剤を同様に使用してもよい。
【0053】
本発明はまた、許容できるテクスチャー、良好な口当たりおよび良好な栄養的なプロファイルをもつ構造化された、油脂が連続した食用製品、およびそこに存在するトリグリセリド組成に基づいて、具体的には飽和およびトランス脂肪酸含量に基づいて予期できるよりもより硬い構造にも関する。このような食用製品は、少なくとも200、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも550、最も好ましくは少なくとも700のR−値を特徴とする硬度を特徴とする。
【0054】
請求項31で主張されたように、本発明の、食用の構造化された油脂が連続した製品の好ましい実施形態は、少なくとも200、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも550、最も好ましくは少なくとも700のR値を特徴とする硬度を特徴とするものであって、R値はグリセリド含量およびグリセリド組成のSTFA含量に関する硬度であって、
R=T/(S×STFA×F)×10000
式中:
− Tはグラムで表される食品の硬度であり、テクスチャーメーターで20℃、直径2.5mmから4.5mmの間の金属円筒プローブを用いて貫入深さ10mmで測定したものである。このような深さで測定できないときは、到達できる最大貫入深さでの測定中に得られた最大値を採用する。
− Sはmmで表される円筒プローブの底面であり、STFAはグリセリド組成の全重量に対する重量%で表される、グリセリド組成中の飽和およびトランス脂肪酸の合計である。
− Fは重量%で表される、食品の全重量に対するグリセリド組成の量である、
式で定義されるものである。
【0055】
文中、「テクスチャーメーターで測定した硬度」の語は、製品に特定の直径の円筒プローブを特定の深さに貫入する際に、機器が加える最大力(グラムで表される)を意味する。この方法は食品産業において広く使用されている。この方法に用いる機器は、テクスチャーメーターとしての使用に好適なもので、例えばStable Micro Systems(SMS)社製TA−TX2テクスチャーアナライザーまたはStevens−LFRAテクスチャーアナライザーである。好ましい使用は直径3mmのステンレス円筒プローブを備えたSMS製テクスチャーアナライザーで、プローブ速度0.5mm/秒、貫入深さ10mmでの操作である。他のプローブおよび測定条件も検討している。しかしながら、最終のR−値測定への影響はわずかであった。テクスチャーははっきりと食用製品の油脂含量およびそのSTFA−量、すなわちその飽和およびトランス脂肪酸の含量に左右される。R−値に基づいた、異なる油脂含量およびSTFA−量を有する異なる製品間の相対比較を実施できる。
【0056】
本発明の食用製品のR−値は、通常10000未満、大抵は6000未満となるであろう。
【0057】
これらの食用製品はさらに上記に記載された技術的な特徴を示すであろう。これらの食用製品において、
(1)好ましくはトリグリセリド組成は、35重量%未満、好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満のSTFA−含量、STFA−含量は飽和およびトランス脂肪酸の合計量を意味する、を有する。
(2)8個以上18個以下の炭素原子を含む、全ての飽和および不飽和脂肪酸の総量は、グリセリド組成の重量に対して少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97重量%である。
【0058】
本発明の油脂が連続した、構造化された食用製品は、当業者が好適とみなすいずれの形態をとってもよく、例えば菓子類、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、または他の当業者に周知な食用製品であってもよい。
【0059】
本発明の食用製品は、さらに食品、例えば、充填されたチョコレート製品、クリーム層がそれ自体が更にコーティング用生地でコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、充填されたもしくはトッピングされた菓子製品、充填されたもしくはトッピングされた調理製品または当業者に周知なその他の食品から成る群、の製造に用いてもよい。
【0060】
本発明はまた、トリグリセリド組成を上記の構造化された、油脂が連続した食用製品の製造に使用することにも関する。好ましい、このようなトリグリセリド組成は、45重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸を含む。さらに、好ましいトリグリセリド組成は、10未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸を含む。さらに、好ましいC8〜18の脂肪酸含量が、少なくとも90重量%であり、C18の脂肪酸含量が、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%以上であり、SがC16〜18を含む飽和脂肪酸、Uが少なくとも18個のC原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、好ましいSUS含量は、トリグリセリド組成の重量に対して少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも18重量%であり、U3+SU2トリグリセリドの合計含量は好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは50から90重量%の間であり、トリグリセリド組成のS3含量は、好ましくは15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満である。好ましくは、トリグリセリド組成は20℃において、5%より大きく、50%未満のSFCを有する。本発明はそれゆえ、上記のトリグリセリド組成および、上記の構造化された、油脂が連続した食用製品の製造のためのこれらの使用にも関する。
【0061】
本発明はさらに、このようなトリグリセリド組成を、菓子類、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、クリーム層がそれ自体がコーティング用生地で更にコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、からなる群からの食品の製造のための使用に関する。事実として、上記の食用組成およびトリグリセリド組成を含む食品が存在する。
【0062】
本発明の食用製品の製造のために、いくつかの工程が適切に使用されてもよい。しかしながら、上記の構造化された油脂が連続した製品の製造工程において、好ましくは
− 20〜100重量%のトリグリセリド組成
− 0〜80重量%の充填剤
− 15重量%未満の水
を混合する工程、およびトリグリセリド組成を安定した結晶化状態にする結晶化への導入、および固体構造の構築の工程を含む。後の段階での充填剤の添加は、塊の形成を誘発するため、好ましくは、全ての充填剤が1回で加えられる。それによって、食用製品およびトリグリセリド組成は上記で記述した技術的特徴を示す。
【0063】
本発明の食用製品の製造のための方法についての第一の好ましい実施形態によると、その方法は、
(1)食品全重量に対して20〜100重量%の間の、少なくとも一部、好ましくは全てが融解状態のトリグリセリド組成と、
(2)食品全重量に対して0〜80重量%の間の充填剤、
(3)食品全重量に対して0〜10重量%の間の水、
を混合する工程、続いて混合および均質化を停止した後に混合物を17〜35℃の間、好ましくは20〜30℃の間、最も好ましくは22〜28℃の間に冷却することを含む第二の工程、続いて製品が更なる冷却と安定化によって構造を形成する間の硬化工程を含む。
【0064】
第二工程の冷却は混合および均質化と同時に実施することが、より早く最終構造を形成することを助けるので、好ましい。混合後の最終冷却は強制的なまたはそうではない冷却で、好ましくは穏やかな冷却条件下で実施することが好ましい。下記に記載する第三の好ましい方法と比較して、製品はその最終硬度を得るまでより時間が必要となるかもしれないが、硬度および良好な口どけ特性に関して類似の製品を得ることができる。
【0065】
少なくとも一部のトリグリセリド組成の結晶化により固体構造が得られた後で、食用製品の硬度を増加する目的で、結晶化した油脂の安定化のために、油脂が連続した食用製品を放置することがさらに好ましい。
【0066】
本発明の方法の第二の好ましい実施形態によると、
上記で記述された融解状態のトリグリセリド組成との混合物を最初に冷却し、その食用製品を不安定な結晶を融解するために再加熱した後、続いて第二の冷却工程が行われるものであるテンパリング工程を使用する。この場合、テンパリングマシンで製造されたものの使用が好ましい。
【0067】
本発明の方法の第三の好ましい実施形態によると、ある程度の量のテンパリング添加物を食用製品に添加する。テンパリング添加物は最小作用量のベータ形に結晶化した油脂を含む。このようなテンパリング添加物の例は、EP 294974およびEP 276548に記載される。使用されるテンパリング添加物の量は、食用製品全体について表すと、通常10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満であろう。当該方法によると、主要なグリセリド部分が融解状態である食用製品は、最初に均質化し、すべての原料と混合する。その後、混合品はテンパリング添加物の存在する中で、ベータ形に結晶化した油脂の融点よりも低い温度まで冷却される。テンパリング添加物は塊の中に混合される。発明者らは、添加後速やかに製品が固化し始めることを見出している。添加の後、製品はさらに強制冷却工程により冷却してもよいし、さらに放置して室温まで冷却することもできる。
【0068】
3種類の既出の工程のうちの1つを適用する場合、食用製品を所望の硬度に形成するために必要な時間は、硬化工程を開始してから大抵は12時間未満、通常は6時間未満、好ましくは2時間未満であろう。
【0069】
本発明の構造化された、油脂が連続した食用製品の製造方法の第四の好ましい実施形態は、食用製品の重量に対して、高い含量、好ましくは70〜100重量%の油脂を含む食用製品の製造に特に好適であることが見出されている。当該方法によると、完全に、またはほぼ完全に融解したグリセリド混合物は、同時に冷却および撹拌しながら、食用製品の重量に対して最大で30重量%の少なくとも1の充填剤と混合される。冷却時、高い融点のグリセリドが結晶化を開始し、粘性の増加をもたらす。発明者らは、撹拌を停止した時に、原料はすぐに、その液体、自由に流動する状態を失うことを意味する固体または半固体のテクスチャーを形成することを観察している。撹拌速度は、ざらざらしたテクスチャーおよび口当たりの原因となり得る大きなグリセリド結晶または結晶塊の形成の恐れを最低限にするために十分に高くするべきである。この方法では、この方法では、製品は好ましくは撹拌と同時に12〜28℃の間、好ましくは15〜25℃の間、最も好ましくは17〜23℃の間まで冷却される。この方法の第四の実施形態により、撹拌を停止した後、60分未満、好ましくは30未満、最も好ましくは15分未満の後に固体のテクスチャーを形成する製品を得ることが可能である。
【0070】
本発明の食用製品の製造方法の好ましい実施形態により得られた食用製品は、既に混合物中のトリグリセリド組成が部分的に結晶化している構造を得ている。そして、少なくとも一部の充填剤、好ましくは全ての充填剤が、混合の時に存在している。
【0071】
硬い、構造化された食用製品の調製において、調理、焼成、焙煎、押出成形のような加熱工程を含む、食用製品が硬い構造を得る多くの方法が知られている。本発明による食用製品は、しかしながら固体の構造を少なくとも一部のグリセリド組成の結晶化によって得る。このことは、融解状態からの冷却または/およびテンパリング添加物の使用によって起こる。結晶化は、食用製品の硬度の更なる増加を導く、結晶化した油脂の安定化をもたらす可能性がある。
【0072】
本発明を以下に示す実施例および比較例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0073】
実施例
実施例1
フィリング組成をEP−A−731645の実施例3のフィリングDに従って製造した。フィリングの配合を以下に示した。
【0074】
【表1】

【0075】
低SAFA油脂(油脂I)は、油脂Iの重量に対して30重量%の、酵素的なエステル交換および分別を通して得られた、33.7のヨウ素価(IV)をもつSOS−油脂と、70%の高オレイン酸ひまわり油からなるものを使用した。この油脂のSAFA−含量は24.3重量%、TFA−含量は0.1重量%であった。フィリングの50重量%に相当する油脂相は、90重量%の油脂Iおよび10重量%のヘーゼルナッツ油からなった。油脂相の特性は表2にLS油脂Aとして記載する。
【0076】
【表2】

※参照油脂DのTFA−含量は無視できると考えられるため言及しなかった。
【0077】
フィリングを、原料の混合、混合物の3段ロールリファイナーによるリファイニング、57.6℃でのコンチングにより作成した。フィリングをその後、29℃に冷却し、組成の重量に対して0.2重量%のチョコシードAを添加した。チョコシードAは、ベータ形で結晶化した、最小作用量のSUS−トリグリセリドを含む不二製油の製品である。フィリングとチョコシードをよく混合した。アルミニウム容器に充填し、20℃の恒温器で24時間おいた。フィリングのテクスチャーを当該温度で、直径3mmのプローブを用い、速度0.5mm/秒、深さ10mmでSMS−テクスチャーメーターにて測定した。
【0078】
実施例1との比較のため、プローブ速度1mm/秒での測定、および直径6mmのプローブでの測定も行った。このことは、R−値を有意に変化させなかった。20℃において、3mmプローブにて、276.9のR−値を得る224gのテクスチャーを検出した。6mmプローブでは、3mmプローブでのR−値と全く類似である、259.3のR−値に一致するTは839gであった。EP−A−731.645では、参照例Dは4.4mmのプローブで測定し、49.9のR−値を意味する158gのテクスチャーが検出された。
【0079】
LS油脂Aで作られたフィリングを風味パネルで評価したところ、良好で、クリーミーな口当たりと良好な融解特性を有しているとの結論だった。
【0080】
この試験から、LS油脂AはEP−A−731.645の参照油脂Dより有意に低いSAFA−含量(22.9重量%対41.7重量%)を有するけれども、LS油脂Aから得られるフィリングの構造は、参照油脂Dから得られる硬度よりも、R−値で5.5倍よりも高い、優位に硬いことが明らかとなった。EP−A−731.645に記載された油脂は低いSAFA−量と最終製品の良好な硬度を兼ね備えると主張するけれども、本発明による油脂においてより高い硬度が得られた。本発明のLS油脂Aは、BOO−トリグリセリドのような特別に長鎖の原料を使用せず、硬い構造を得るために長期の冷却および保持工程に供する必要が無いという、EP−A−731.645を超える利点を示す。さらに、20℃でのLS油脂Aの固体脂含有率が参照例Dの68%に比較してわずか15.6%であることが知られているところ、LS油脂Aによって、参照例Dよりもより硬い構造が20℃で得られたことは注目すべきである。
【実施例2】
【0081】
実施例2
製菓用クリームを下記の配合に従って作成した。
【0082】
【表3】

【0083】
配合中の全油脂のSAFA含量が24.4重量%であることを意味する、実施例1(油脂I)と同じ低STFA油脂を使用した。
【0084】
クリームを異なる4種類の方法で調製した。全ての方法は、コンチェで融解した油脂を乾燥原料と58℃で混合することから開始した。
【0085】
実施例2.1:方法1
生成物の一部を、底を15℃の水浴中に置いた金属製の深型容器に移した。生成物を継続的な撹拌下、29℃まで冷却した。その後、0.2%のチョコシードAを加え、混合物中に混合した。その後、生成物を試料容器に移し、強制的な冷却を加えること無しに、さらに室温まで冷却した。
【0086】
実施例2.2:方法2
生成物の一部を、底を15℃の水浴中に置いた金属製の深型容器に移した。生成物を継続的な撹拌下、28度まで冷却した。その後、生成物を試料容器に移し、強制的な冷却を加えること無しに、さらに室温まで冷却した。
【0087】
実施例2.3:方法3
生成物の一部を、Aasted AMK 50型のテンパリングマシンに移した。チョコレートの温度領域1、2および3を30.1、25.5および27℃とした。テンパリングされた生成物の一部を試料容器に移し、強制的な冷却を加えること無しに、さらに室温まで冷却した。
【0088】
比較例1
ある程度の量の生成物をコンチェから取り出し、直接試料容器に移した。強制的な冷却および撹拌には一切供しなかった。容器を室温で放置し、冷却した。
【0089】
20℃の恒温器に1時間置いた製品のテクスチャーを、それらを調製した1日後に、直径3mmのプローブ、速度0.5mm/秒、深さ10mmでSMS−テクスチャーメーターに供して測定した。異なる方法で調製したクリームのテクスチャーについて、下記の結果を検出した。
【0090】
【表4】

【0091】
これらの結果から見つけられることとして、方法1、2、3は最終製品の硬度に関して良好〜非常に良好な結果を生じたが、一方で、冷却の間に全く冷却工程または混合に供しなかった方法4は弱い構造を生じた。
【0092】
製品を室温で1週間貯蔵した後に試食した。方法1、2および3によって作成した製品は非常にクリーミーで良好な口どけであったが、一方で方法4による製品はやわらかく、非常にざらざらしていた。
【実施例3】
【0093】
10種の異なるグリセリド組成を、液体グリセリドと固形油脂の混合によって調製した。液体グリセリド/固形油脂の重量比は、全ての混合品のSTFA−含量が油脂番号I(24.8重量%)と同程度の量になるように選択した。
【0094】
グリセリド混合品は下記の油脂および固形油脂を混合して作られた。
【0095】
【表5】

【0096】
これらの油脂混合品の特性を表6にまとめる。
【0097】
【表6】

【0098】
表6で言及した全ての油脂組成を試験して、硬い構造および低STFA−含量をもつ100%グリセリドを含む食用製品の製造に対するそれらの適性を評価した。試験方法は以下の通り。
− 固形油脂をまず溶解し、液体部分に60℃で混合した
− その後、グリセリド組成を直径11cmの円筒形の金属製ビーカーに移した
− ビーカーを10℃の温度の冷却水浴中に放置して冷却した
− その間、グリセリド組成をT25ベーシック型IKAミキサーで、速度13500rpmにて撹拌した
− 撹拌を、混合物が濁り、増粘が開始されるまで続けた
− 撹拌を停止し、撹拌機を除いたときに、本発明の油脂はほぼすぐに構造を形成し始めた
− ビーカーを水浴から除き、室温に置いた
− 1日後に実施例2に記載した方法により、3mmプローブを用いてテクスチャーを測定した
油脂番号IXには、BOB−油脂の高い融点により、開始温度が80℃である点で異なっている方法を適用した。撹拌を停止したときに達した温度、および撹拌時間、1日後に測定したテクスチャーおよび対応するR−値を表7に示す。
【0099】
表7で言及している全ての食用製品は100%グリセリドからなる。組成I〜IIIおよびVで作られる食用製品が本発明の食用製品であり、他の全ての製品が比較例である。表7に見られるように、テクスチャーおよびR−値に関して、高いStOSt/POSt比を有する製品が良好な結果を示す傾向にあり、最良の結果は高含量のStOStおよび/またはPOStを含む製品によって得られる。表7からはまた、先行技術から知られている低SAFAグリセリド組成、これらもまた良好な構造特性を主張しているが、よりも本発明の食用製品は、それらのR−値によって表される、より硬い構造を有するように見える。EP−A−875.152は例えば、最少量の長鎖脂肪酸を含み、50重量%未満のSAFA−含量で、少なくとも150gのスティーブンス硬度である油脂混合品を開示する。EP−A−875.152では、実施例I〜XIIIがこのような特性を持つと主張する油脂組成を開示する。
【0100】
【表7】

【0101】
比較のために、表8には、SAFA−含量に対する硬度に関して、EP−A−875.152で最も機能する油脂混合品の選択を示す。これらの製品のR−値はTFA−含量がゼロであるとみなして計算している。この場合、この仮定が完全に正しくはない場合、過大評価されたR−値のみを導き出せる
【0102】
【表8】

【0103】
表8より、既知の油脂混合品が、それらがワキシーな食感を形成するであろうことを意味する、35℃で高いSFCを有するように見える。35℃での高いSFCはトリ飽和トリグリセリド中にベヘン酸のような長鎖脂肪酸が存在することによって説明することができる。このことにも関わらず、我々は、上記の試験で得られる結果より数倍低いR−値を経験する。表7中の、ベヘン酸を含む油脂である油脂組成IXを使用した比較例は、EP−A−875.152の油脂と同等の結果を生じた。
【0104】
油脂VIII’’’’はテクスチャーおよびRに関して最も高い値を有すが、これは20℃で5週間の貯蔵の後のみ得ることができるものである。貯蔵により、油脂VIIIの硬度がほぼ倍になった。油脂XIIのみが、許容される量の35℃での固体脂および我々が上記で試験した油脂とおおよそ同等のSAFA−量をしめす油脂であるが、本油脂は本発明の構造化された油脂より20〜50倍低い、非常に弱いR−値を特徴とする。
【0105】
この実施例および比較例より、EP−875152によれば、適当な硬度は、高融点の油脂の形成、しかしながらそれは悪い官能特性を生じる、によってのみ得られるように見える。本発明によれば、良好な融解特性および既知の食用製品よりも数倍硬いテクスチャーを示す食用製品を得ることができる。
【0106】
比較例II
実施例3の油脂組成1、ただし、短期間の冷却の間の高速撹拌の代わりに、長期間低速撹拌に供したものを使用してショートニングを調製した。油脂混合品を64℃で調製し、ねばねばした塊が得られるまで2.6℃の冷蔵庫中、連続撹拌下で100分冷却した。混合品を冷蔵庫中で一晩保持した。このようにして得られたショートニングは、その低いSAFA−含量と比較して非常に硬いものであった実施例3の混合品1と対照的に可塑性構造を有する。液体油の分離の無い可塑化油脂が得られた。
【0107】
実施例2に記載した方法により、1日後のテクスチャーを3mmプローブを使用して測定した。測定した硬度は22.4g、対応するR−値は12.8であり、この油脂から、その低いSAFA−含量に基づいて予期できるものと一致していた。しかしながら、この硬度およびR−値は、実施例3に記載された本発明の方法を適用した同じ混合物で得られる863.5のR−値よりはるかに低い。可塑化油脂の構造は、容易に粉体、例えば小麦粉と混合できるようなものであった。これは、ショートニングの基本的な利用に重要な特徴である。
【0108】
本比較例は伝統的なショートニングが、本発明の、それらのSAFA−含量またはそれらの20℃でのSFCから予期できるよりさらに硬い構造を有する、構造化された食用製品と比べて異なる型の構造化された油脂であることを示す。
【実施例4】
【0109】
製菓用クリームを表9の配合により作成した。
【0110】
【表9】

【0111】
低SAFA含量の油脂IIを、高オレイン酸ひまわり油とIVが33.7のSOS−油脂を、そのトランスおよび飽和脂肪酸の量が34.8重量%となるような比率で混合して調製した。クリームを、表9に開示した原料の混合、混合物の3段ロールリファイナーによるリファイニング、55℃でのコンチングにより作成した。クリームを29℃に冷却し、0.2重量%のチョコシードAを添加した。クリームを、直径8cmのプラスチック容器に製品層の厚さで3.5cmの厚さが得られるまで移した。生成物を放置し、室温で冷却した。
【0112】
製品を20℃で1日放置した後に、中身のテクスチャーを、直径3mmのステンレスプローブを用い、速度0.5mm/秒、深さ10mmでSMS−テクスチャーメーターにて測定した。本測定の結果を以下の表9aに示す。
【0113】
【表9a】

【0114】
表9aより、食用製品は、その低いSTFA−含量にも関わらず、硬い構造に形成できたように思われる。製品を試食して、ワキシー感の全く無い、良好な口どけ特性を有することが見出された。
【実施例5】
【0115】
シアバターを含む油脂組成を調製した。シアバターは48.2%のSAFAおよび42.1%のSUS−トリグリセリドを含有した。
【0116】
このシアバターを、飽和脂肪酸含量が30重量%の油脂混合品を形成するように、高オレイン酸ひまわり油と55/45の比率で混合した。飽和およびトランス脂肪酸の含量は30.7重量%であった。この油脂混合品を表10の配合による、クリームの作成に使用した。そこへ、29℃でチョコシードAを添加して利用し、続いて混合した。クリームを試料容器に移し、さらに通気式冷却装置中で15℃、30分間冷却した。その後、クリームを入れた試料容器を室温(23℃±1℃)で貯蔵した。異なる時間間隔でテクスチャーを測定した結果を表11に記載する。
【0117】
【表10】

【0118】
【表11】

【0119】
表11より、制限されたSUS−含量を有するシアバターによってでさえも、強固で安定したテクスチャーおよび制限されたSAFA−含量の製品を作成できるように見える。1日後および1週間後に測定したテクスチャーは、まったく同等である。
【実施例6】
【0120】
異なる型の油脂を使用して3種類のクリームを作成した。
1.24.5%のSTFA含量を有する、酵素的StOSt油脂と高オレイン酸ひまわり油の組み合わせを基とした、実施例1の油脂Iと同様の、低SAFA油脂
2.91.6%のSTFA含量の、ココナッツ油、硬化ココナッツ油および硬化パーム核油の組み合わせである高飽和ラウリン酸油脂(比較油脂II)
3.56.7%のSTFA含量を有する、パーム油と組み合わせられた、菜種油およびパームオレインを基とした硬化油脂(比較油脂III)
3種の油脂の特性を表12に示す。
【0121】
【表12】

【0122】
これらの油脂で、表10の配合によりクリームを作成した。油脂Iのクリームを、29℃で0.2%のチョコシードAを加えてテンパリングし、続けてさらに冷却した。他の試料はテンパリングは必要なかった。試料容器を満たし、15℃で30分間冷却した。容器をその後20℃で1週間貯蔵して安定化した。3種のクリームそれぞれに、サンプル容器の上部に、上面全体を覆うチョコレートディスクを置いた。ディスクは、クリームの温度が約28℃の時に容器上部に置いた。チョコレートディスクはテンパリングしたダークチョコレートから作成し、2.6mmの厚さを有した。安定化の後、クリーム試料を3種の異なる温度(20、25および28℃)に置き、安定性およびチョコレートディスクへの油の移行を調べた。
【0123】
1ヶ月の貯蔵の後、直径3mmのプローブのSMS−テクスチャーメーターを使用して、クリームのテクスチャーを覆われていない試料で測定し、同様に、容器の上部に置いたチョコレートディスクの硬度を測定した。20℃でブルーミングを追跡試験した。ブルーミングの評点は全くブルーミングを示さない「−」から、非常に強いブルーミングを示す「++++」までで示した。結果を表13および14に示す。
【0124】
【表13】

【0125】
表13から見受けられるように、20℃でのチョコレートの軟化の可能性に関しては3種の油脂はほぼ同様の性質を有した一方で、高温においては、油脂Iが、その高い液体油含量にも関わらず、明らかに最良に機能していた。28℃において、両比較油脂のチョコレートディスクは、油脂Iの場合はなかった、強い変形を生じた。
【0126】
【表14】

【0127】
表14から見受けられるように、油脂Iおよび比較油脂IIIは20℃でのブルーミングに関してほぼ同様の傾向を有し、一方比較油脂IIはより早くおよび強くブルーミングし始める。
【0128】
油脂Iはこのように、高いSTFA−含量を有する既知の油脂と比較して、良好なチョコレートとの適合性および高い油保持能を有する。
【実施例7】
【0129】
実施例5のシアバターを油脂基準で24.8重量%のSTFAを含む2種のクリームの作成のために使用した。まず、シアバター中の不けん化物質の量を、35℃でアセトン中で溶解、ろ過することによって4.0%まで減らした。表3の配合を使用した。
【0130】
油脂を溶解し、55℃で乾燥原料と混合し、続けて2種の異なる処理を行った。
− 方法A、本発明による:試料を取り、底面を15℃の水浴につけた金属製の容器中で29℃まで撹拌下で冷却し、その後0.2%のチョコシードAを加え、混合品に混合した。製品をその後試料容器に移し、強制的な冷却を加えずに室温まで冷却した。
− 方法B:試料を取り、撹拌無しで放置して室温まで冷却した。28℃にて、生成物の一部を試料容器に移し、さらに放置して室温まで冷却した。方法Bは比較例である。
【0131】
試料容器に移すときに、それぞれのクリームの試料をとり、すぐに下記のような温度条件のメトラー・トレドSTARシステムを用いたDSCにより測定した:クリームを、20℃で3分間保持し、続いて20℃から−40℃まで冷却速度−5℃/分でクリームの温度を下げ、続いてクリームを−40℃で3分間保持し、その後、−40℃から+60℃まで加熱速度+5℃/分で温度を上げる。試料AおよびBをこの温度−時間条件に供して得られた融解プロファイルを図1に示す。図1中、A−1は調製方法Aのことであり、B−1は調製方法Bのことである。これらのグラフからわかるように、テンパリング用シード剤を含む試料Aは、21.5℃で発生する試料Bの最高融解ピークよりも明らかに高い温度で発生するものである、28.6℃にて高融点トリグリセリド部分の顕著な融解ピークを示す。
【0132】
20時間後、再度両方のクリーム試料をそれらの試料容器から取り、同様の方法でDSCにより測定した。融解プロファイルをA−2およびB−2で示す。試料A−2は32℃ではっきりしたピークを示す一方で、試料B−2はあまりはっきりしないプロファイルを示す。同様に20時間後のテクスチャーを、直径3mmのプローブ、速度0.5mm/秒、深さ10mmでSMS−テクスチャーメーターに供して測定した。試料について、試験も行った。得られた結果を表15にまとめる。
【0133】
1週間後、再度両方のクリーム試料をそれらの試料容器から取り、同様の方法でDSCにより測定した。融解プロファイルをA−3およびB−3で示す。試料A−3のグラフは32℃ではっきりしたピークを示す試料A−2と一致する一方で、今回は試料B−3もはっきりしたピークを示すが、より高いほうの温度である、37℃にてである。
【0134】
このように、試料A−2およびA−3について、製造してから20時間の安定化の後に測定した時の高融点トリグリセリドピークと、製品を製造してから1週間放置して安定した製品の高融解ピークを比較して、0℃のずれを得た。
【0135】
【表15】

【0136】
これらの結果から、試料Aは強固な構造を得たように見える。DSCにおいて、試料Bの同じピークと比較すると、後者がいったん安定化した時のものと、高融点SUS−含有部分の融解温度が5℃のずれを示す。試料Bは弱いテクスチャーと、大きな油脂の結晶または結晶塊の存在を示す、ざらざらした口当たりを有した。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】実施例7の温度−時間条件に試料AおよびBを供して得られた融解プロファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品が、製品全体を基として表すと、
l)30重量%未満の飽和脂肪酸、
m)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
n)0〜80重量%の間の充填剤、
o)15重量%未満の水、
このうちトリグリセリド組成がトリグリセリド組成の重量に対して、
p)45重量%未満の飽和脂肪酸、
q)10重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
r)SはC16〜18の飽和脂肪酸、Uは少なくとも18個のC原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも8重量%のSUSトリグリセリド、
s)15重量%未満のS3、
t)少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
u)少なくとも75重量%の飽和および不飽和脂肪酸を含むC18の脂肪酸を含み、
v)20℃において5〜50%の間のSFCを有する、
食用製品。
【請求項2】
請求項1記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、製品が、製品全重量に対して表すと、28重量%未満、好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸を含むものであり、トリグリセリド組成重量に対して、
e)40重量%未満、好ましくは35重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸、
f)5重量%未満、好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
g)10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満のS3、
h)少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%の飽和および不飽和脂肪酸を含むC18の脂肪酸、
のトリグリセリド組成を含むことを特徴とする、食用製品。
【請求項3】
請求項1または2記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、当該食用製品が、
− 95〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
− 0〜5重量%の間の充填剤、
− 8重量%未満の水、
− 5重量%未満の1以上の添加物、
を含むことを特徴とする食用製品。
【請求項4】
製品がショートニングでないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項5】
請求項1または2記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品が、
− 20〜95重量%の間、好ましくは25〜60重量%の間、より好ましくは30〜50重量%の間のトリグリセリド組成物、
− 5〜80重量%の間、好ましくは75〜40重量%の間、より好ましくは70〜50重量%の間の充填剤、
を含むことを特徴とする食用製品。
【請求項6】
食品が、食品の全重量に対して5重量%未満、好ましくは2重量%未満の水を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項7】
製品がエマルジョンでない、特にW/Oエマルジョンでないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項8】
少なくとも一部のトリグリセリドが油の保持のために結晶化状態にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項9】
結晶化した油脂のうち少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも85重量%が、ベータ形で結晶化していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項10】
製造後室温で1日かけて安定化した後の製品の硬度と、室温で1週間貯蔵した後の硬度の違いが25%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、製品温度を、20℃で3分間保持し、続いて20℃から−40℃まで冷却速度−5℃/分で温度を下げ、続いて製品温度−40℃で3分間保持し、続いて製品温度−40℃から+60℃まで加熱速度+5℃/分で温度を上げる温度−時間条件に製品を供することによって測定されるDSC溶解プロファイルによると、製造後に少なくとも1日、安定化のために放置した製品を用いて測定し、製品を油脂が溶けるのに十分な高い温度に加熱し、撹拌無しで室温まで冷却して、1週間室温で放置して安定化した後に測定した同じ製品のDSCプロファイルを比較したときに、食用製品に存在するトリグリセリド組成が、高融点トリグリセリドピークが低温へ、少なくとも2℃、好ましくは少なくとも3℃、より好ましくは少なくとも4℃のずれを示す、DSC溶解プロファイルを示すことを特徴とする、食用製品。
【請求項12】
トリグリセリド組成が、トリグリセリド組成重量に対して少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97重量%の、少なくとも14個、最大で18個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項13】
Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、トリグリセリド組成が、トリグリセリド組成重量に対して少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、最も好ましくは少なくとも18重量%の、SUS−トリグリセリドを含むものであり、トリグリセリド組成重量に対して45重量%未満、好ましくは40重量%未満のSUS含量であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項14】
Stがステアリン酸、Pがパルミチン酸、SがC16〜18の飽和脂肪酸、Uが少なくとも18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、SUSトリグリセリドの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%がStUStおよび/またはPUStから成るものであることを特徴とする、請求項13記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項15】
Stがステアリン酸、Oがオレイン酸であるところの、SUSトリグリセリドの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%がStOStから成ることを特徴とする、請求項13または14記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項16】
トリグリセリド組成のStOStとPOStの比が少なくとも2.5、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも6であることを特徴とする、請求項15記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項17】
トリグリセリド組成が、トリグリセリド組成全重量に対して38重量%未満、好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満のSU2トリグリセリドを含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項18】
トリグリセリド組成が、トリグリセリド組成全重量に対して2.5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、最も好ましくは0.7重量%未満のC22の脂肪酸を含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項19】
N20およびN35がIUPAC2.150aの方法に従って測定されたトリグリセリド部分の固体脂含有量であるところの、トリグリセリド組成が40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは25%以下、最も好ましくは20%以下のN20、および20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下のN35を有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項20】
トリグリセリド組成が、少なくとも1の固形または半固形油脂成分および少なくとも1の液体油または2以上の液体油の混合品、少なくとも1の室温で固体または半固体を示す油脂である固形または半固形油脂、ならびに少なくとも1の室温で液体になる液体油を含むことを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項21】
トリグリセリド組成重量に対する、少なくとも1の固形または半固形油脂の量が10〜90重量%、好ましくは15〜60重量%、より好ましくは20〜45重量%の範囲であり、トリグリセリド組成重量に対する、少なくとも1の液体油の量が10〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%の範囲であることを特徴とする、請求項20記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項22】
少なくとも1の液体油が菜種油、コーン油、大豆油、ひまわり油、綿実油、メイズ油、オリーブ油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、パーム油もしくはシアバターの液体画分、これらのうちの1の液体油の画分または2以上の上記油脂および/もしくはこれらの画分の混合品から選択される少なくとも1の植物油を含むことを特徴とする、請求項20または21記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、固形または半固形油脂が、固形または半固形油脂の重量に対して少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは、少なくとも40重量%のSUS−トリグリセリドを含み、SUS−含量が85重量%未満、好ましくは75重量%未満、より好ましくは65重量%未満、最も好ましくは60重量%未満であることを特徴とする、食用製品。
【請求項24】
固形または半固形油脂がココアバター、シアバター、イリッペバター、コクム油脂、サル油脂、アランブラッキア油脂、モーラバター、マンゴー核油脂、酵素的に調製された油脂またはこれらの画分、または上記の2以上の油脂の混合品もしくはそれらの画分からなる群から選択されることを特徴とする、請求項20〜23のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項25】
固形油脂が、好ましくはシアバターが7重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは4重量%未満の不けん化物を含むところである量のシアバターを含むことを特徴とする、請求項20〜23のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項26】
固形油脂が少なくとも1の酵素的に調製された油脂またはそれらの画分であって、該油脂が30から85重量%の間、好ましくは35から75重量%の間のSUS含量であることを特徴としているものを含むことを特徴とする、請求項20〜25のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項27】
トリグリセリド組成が実質的に水素添加された油脂成分の無いものであることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか1項記載の食品。
【請求項28】
充填剤が砂糖、小麦粉、澱粉、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダー、ココアパウダー、コーヒーパウダー、食品グレードの有機固形粉末、食品グレードの無機固形粉末またはこれらの2以上の混合品からなる群より選択される少なくとも1の成分を含むことを特徴とする、請求項1〜27のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項29】
充填剤が500μmより小さく、好ましくは250μmより小さく、最も好ましくは100μmより小さい平均粒径を有することを特徴とする、請求項1〜28のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品の硬度が少なくとも200、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも550、最も好ましくは少なくとも700のR値を特徴とするものであって、R値はグリセリド含量およびグリセリド組成のSTFA含量に関する硬度であって、
R=T/(S×STFA×F)×10000
式中:
− Tはグラムで表される食品の硬度であり、テクスチャーメーターで20℃、直径2.5mmから4.5mmの間の金属円筒プローブを用いて貫入深さ10mmで測定したものであり、
− Sはmmで表される円筒プローブの底面であり、STFAはグリセリド組成の全重量に対する重量%で表される、グリセリド組成中の飽和およびトランス脂肪酸の合計であり、
− Fは重量%で表される、食品の全重量に対するグリセリド組成の量である、
で定義されるものであることを特徴とする、食用製品。
【請求項31】
食用製品が菓子類の群、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズから選択される食用製品であることを特徴とする、請求項1〜30のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品を含む食品であって、食品が、充填されたチョコレート製品、クリーム層がそれ自体が更にコーティング用生地でコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、充填されたもしくはトッピングされた菓子製品、充填されたもしくはトッピングされた調理製品から成る群から選択されることを特徴とする、食品。
【請求項33】
請求項1〜31のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品を製造するためのトリグリセリド組成の使用であって、トリグリセリド組成が、
− 45重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、より好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸
− 10未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
− 少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
− 少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%以上のC18の脂肪酸、
− SがC16〜18を含む飽和脂肪酸、Uが少なくとも18個のC原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも18重量%の、トリグリセリド組成の重量に対するSUS、
− 少なくとも45重量%、好ましくは50から90重量%の間のU3およびSU2、
− 15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満のS3、
を含み、トリグリセリド組成が20℃において5%より多く、50%未満のSFCを有することを特徴とする、使用。
【請求項34】
請求項1〜31のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品を製造する方法であって、製造工程が、
− 20〜100重量%の、少なくとも一部が融解状態のトリグリセリド組成、
− 0〜80重量%の充填剤、
− 15重量%未満の水、
を混合する工程、およびトリグリセリド組成を安定した結晶化状態にする結晶化への導入および固体構造の構築の工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法であって、製造工程が、食品全重量に対して20〜100重量%の間の、少なくとも一部、好ましくは全てが融解状態のトリグリセリド組成と、食品全重量に対して0〜80重量%の間の充填剤、食品全重量に対して0〜10重量%の間の水を混合し、続いてこのようにして得られた混合物を17〜35℃の間、好ましくは20〜30℃の間、最も好ましくは22〜28℃の間に冷却し、続いて食品を硬化して、固体構造を構築させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項36】
工程が、融解グリセリド組成を含む混合物を、混合物が冷却される第一の冷却工程、続いて不安定な結晶を融解する組成の再加熱および混合物を冷却する第二の冷却工程に供するものであるテンパリング工程を含むことを特徴とする、請求項34記載の方法。
【請求項37】
食品全重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の、テンパリングのための添加物として最小作用量のベータ形に結晶化した油脂を含む添加物、を添加することを特徴とする、請求項34記載の方法。
【請求項38】
食品全重量に対して70〜100重量%のトリグリセリドを少なくとも一部が融解するまで加熱し、最大で30重量%の充填剤と混合し、その間、冷却および大きなグリセリド結晶または結晶塊の形成を抑制する程度の撹拌速度での撹拌を同時に行うことを特徴とする、請求項34記載の方法。
【請求項39】
組成を12〜28℃の間、好ましくは15〜25℃の間、最も好ましくは17〜23℃の間の温度に、撹拌と同時に冷却することを特徴とする、請求項38記載の方法。
【請求項40】
少なくとも一部のグリセリド組成の結晶化により固体構造が得られた後で、硬度が改良された食品を得るため、結晶化した油脂の安定化のために製品を放置することを特徴とする、請求項34〜39いずれか1項記載の方法。
【請求項41】
製品を、硬化工程開始から12時間未満、好ましくは6時間未満、最も好ましくは2時間未満放置し、混合後の固体のテクスチャーの形成が完了することを特徴とする、請求項40記載の工程。
【請求項42】
菓子類の群、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、クリーム層がそれ自体がコーティング用生地で更にコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、から選択される食品の製造のための、請求項33記載のトリグリセリド組成の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−525735(P2009−525735A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553638(P2008−553638)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068709
【国際公開番号】WO2007/090477
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(504355468)
【氏名又は名称原語表記】FUJI OIL EUROPE
【Fターム(参考)】