説明

飽和アンモニア貯蔵材料の製造

吸着または吸収によりアンモニアを結合することができ、最初はアンモニアを含まないか、またはアンモニアで部分的に飽和された固体材料を飽和する方法が、アンモニアの蒸気圧曲線に位置する圧力および関連温度で、この固体材料を飽和するのに十分な量の液体アンモニアおよび液体アンモニア、液体または固体CO2、アンモニアより高い蒸気圧を有するハイドロカーボンおよびハイドロハロカーボン、エチルエーテル、ギ酸メチル、メチルアミンおよびエチルアミンから選択される追加量の冷却剤により、この固体材料を処理することを含み、|Qabs|≦|Qevap|+Qext(式中、Qabsは、アンモニアで飽和される点までその液相からアンモニアを吸収するときこの固体材料から放出される熱量であり、Qevapは、冷却剤が蒸発するときこの冷却剤により吸収される熱量であり、Qextは、周囲と交換される熱量であり、熱が外部冷却によりこの方法から除去される場合は正であり、熱が周囲からこの方法へ添加される場合は負である)となるようにする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアと結合することのできる固体材料を飽和する方法、特に、一般式Ma(NH3rzの金属アンミン塩を含有するアンモニアの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、多くの用途で、広く化学的に用いられている。ある特定の用途は、燃焼プロセスからの、排気ガス中のNOxの選択的触媒還元(SCR)の還元剤としてである。
【0003】
たいていの用途について、特に、自動車用途において、容器中の加圧液体の形態でのアンモニアの貯蔵は危険過ぎる。尿素は安全であるが、アンモニア移動搬送の間接的で実用的でない方法である。というのは、熱分解および加水分解((NH22CO+H2O→2NH3+CO2)を含む方法により、アンモニアへ変形する必要があるためである。
【0004】
固体における吸着または吸収を含む貯蔵方法だと、無水液体アンモニアの安全上の問題および出発材料の分解を回避することができる。
【0005】
金属アンミン塩は、アンモニア吸収および脱着材料であり、アンモニアの固体貯蔵媒体として用いることができ(例えば、国際公開第2006/012903A2号参照)、同じく、上述したとおり、NOx排出を減じるための選択的触媒還元における還元剤として用いてよい。
【0006】
通常、アンモニアは、例えば、金属アンミン塩からの熱脱離により、貯蔵容器の外部加熱により放出される。例えば、国際公開1999/01205A1号を参照のこと。発熱体を、貯蔵容器の内側に配置してもよい。例えば、米国特許第5,161,389号明細書および国際公開第2006/012903A2号を参照のこと。
【0007】
国際公開第2007/000170A1号において、貯蔵材料からのアンモニアの放出は、気相中のアンモニア圧力を下げることにより促進されている。
【0008】
上述したアンモニア消費システムの性能は、濃厚アンモニア飽和材料を製造するやり方に依存していない。濃厚アンモニア飽和材料の製造方法は、欧州特許出願公開第1 868 941A2号明細書に開示されている。ここで、貯蔵材料はまず、非圧縮材料として気体アンモニアを用いて飽和されてから、最後に、機械的圧力を用いて濃密ブロックへと圧縮され、容器中に濃密ブロックが配置される。大量生産において有望となるこの圧縮方法については、飽和貯蔵材料の効率的な生産が必要とされる。先行技術に記載された飽和のやり方は次のとおりである。1.塩に気体アンモニアの圧力を加える。この方法は遅い(例えば、6バールの圧力のアンモニアで3kgのSrCl2を飽和するには3日かかる)。2.液体アンモニア中で塩を溶解した後、アンモニアを蒸発させる(J.Phys.C:Solid State Phys.,16(1983),2847−2859)。この方法は、液体アンモニアに容易に溶解可能な材料についてのみ作用し(例えば、有望な貯蔵材料SrCl2については当てはまらない)、大量の過剰なアンモニアを蒸発させなければならないため、非効率的である。3.アンモニアの枯渇した塩の液体アンモニアへの直接の露出(国際公開第2006/081824A1号)。この参考文献にはさらなる詳細はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
必要とされているのは、アンモニア貯蔵材料を飽和する迅速かつ効率的な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、吸着または吸収によりアンモニアを結合することができ、最初はアンモニアを含まないか、またはアンモニアで部分的に飽和された固体材料を飽和する方法であって、この方法が、アンモニアの蒸気圧曲線に位置する圧力および関連温度で、この固体材料を飽和するのに十分な量の液体アンモニアおよび液体アンモニア、液体または固体CO2、アンモニアより高い蒸気圧を有するハイドロカーボンおよびハイドロハロカーボン、エチルエーテル、ギ酸メチル、メチルアミンおよびエチルアミンから選択される追加量の冷却剤により、この固体材料を処理することを含み、|Qabs|≦|Qevap|+Qext(式中、Qabsは、アンモニアで飽和される点までその液相からアンモニアを吸収するときこの固体材料から放出される熱量であり、Qevapは、冷却剤が蒸発するときこの冷却剤により吸収される熱量であり、Qextは、周囲と交換される熱量であり、熱が外部冷却によりこの方法から除去される場合は正であり、熱がこの周囲からこの方法へ添加される場合は負である)となるようにすることを特徴とする方法に関する。
【0011】
他の特徴は、開示された方法に固有であるか、または当業者であれば、実施形態の以下の詳細な説明およびそれに付随する図面から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の方法の第1の実施形態によるプロセスフロー図を示す。
【図2】本発明の方法の第2の実施形態によるプロセスフロー図を示す。
【図3】本発明の方法の第3の実施形態によるプロセスフロー図である。
【図4】本発明の方法の第4の実施形態によるプロセスフロー図である。
【図5】本発明の方法の第5の実施形態によるプロセスフロー図である。
【図6】アンモニアの蒸発曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
吸着または吸収によりアンモニアを結合することができる固体材料(「アンモニア貯蔵材料」または単に「貯蔵材料」)を用いる理由は、液体アンモニアより揮発性の低いアンモニアを扱うことが可能だからである。液体アンモニアは、多くの用途、特に、自動車用途において有害かつ危険とみなされている。液体アンモニアの蒸発熱は、Ee=23.4kJ/モルであり、室温で8バールの平衡蒸気圧となる。
【0014】
アンモニア貯蔵材料の平衡蒸気圧を低くしようとする場合には、貯蔵材料中のアンモニアの結合エネルギーEaは、Eeより高くしなければならない。周囲条件で、ほぼ1バールの平衡圧力が望ましいことが多く、これは、約40kJ/モル(NH3)の結合エネルギーに対応する。
【0015】
気体アンモニアでアンモニア貯蔵材料を飽和するときは、Ea・モルアンモニア((モル結合エネルギー)・(モルアンモニア))に対応する熱量を、材料から除去しなければならない。液体アンモニアで飽和するときは、Qabs=(Ea−Ee)・モルアンモニアに対応する熱量のみを除去しなければならない。バルク量のアンモニアが、液体アンモニアとして常に搬送および分配されるので、液体アンモニアによる飽和が極めて望ましい。しかしながら、液体アンモニアでも、飽和中、材料から熱は除去しなければならない。
【0016】
本発明の要点は、飽和手順中に蒸発して熱を吸収し、反応温度を制御する計算された量の冷却剤を投与することにより、飽和中に放出されるこの熱を除去することである。
【0017】
冷却剤がアンモニアである場合には、アンモニア貯蔵材料を飽和するのに必要な量より大量の液体アンモニアを用いる。過剰のアンモニアは、他の冷却剤により置換することができる。かかる他の冷却剤は、液体または固体CO2、所定の温度でアンモニアより高い蒸気圧を有するハイドロカーボンおよびハイドロハロカーボン、エチルエーテル、ギ酸メチル、メチルアミンおよびエチルアミンから選択することができる。好適なハイドロカーボンは、例えば、メタン、エタンおよびプロパンであり、好適なハイドロハロカーボンは、例えば、テトラフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、トリフルオロメタン、クロロメタンおよびヘキサフルオロエタン等である。さらに好適なハイドロハロカーボン化合物は、規格ANSI/ASHRAE 34−2007、Designation and Safety Classification of Refrigerants(http://www.ashrae.org/technology/page/1933参照)に掲載されている。
【0018】
過剰量のアンモニアまたはその他冷却剤の総蒸発エネルギーQevapは、熱がプロセスから外部的に除去されない場合には、飽和中に放出される熱Qabsの総量に等しいか、またはそれより大きくすべきである。熱がまた、プロセスから外部的に除去される場合には(例えば、熱交換により)、冷却剤の蒸発により除去すべき熱は少ない。すなわち、|Qabs|−|Qext|≦|Qevap|。熱が、例えば、アンモニア/冷却剤/アンモニア貯蔵材料混合物を混合することにより、その外部的除去なしで、周囲からプロセスに導入されて、摩擦熱が生成されるか、またはプロセスが非常に低温で行われるため、熱が処理機器を通して導入される場合には、添加された熱はまた、冷却剤の蒸発により除去されなければならない。すなわち、|Qabs|+|Qext|≦|Qevap|。
【0019】
本出願でいう周囲とは、飽和手順に係る成分以外、すなわち、アンモニア貯蔵材料、液体アンモニアおよび冷却剤以外のあらゆる固体材料、液体または気体を意味する。このように、反応が生じる容器、反応成分が混合される混合機器、任意の熱交換器、絶縁体および反応が生じる機器の周囲雰囲気は全て周囲の一部である。
【0020】
アンモニアを冷却剤として用いる場合には、アンモニアは飽和剤および冷却剤として同時に作用する。
【0021】
液体アンモニアが、反応器中に存在するときは、プロセス温度は、アンモニアの気液平衡に従って、蒸発圧力により定義される(図6の蒸発曲線参照)。このように、反応圧力を制御することにより、反応温度は、一意的に定義される。反応圧力は、例えば、圧力傾斜またはその他の制御圧力曲線を用いることにより、プロセスの全過程について変えてもよく、またはプロセスの一部の間は一定であってもよい。
【0022】
固体材料は、吸着または吸収によりアンモニアを結合してよい。吸着によりアンモニアを結合する材料は、例えば、酸性炭素または特定のゼオライトである。吸収によりアンモニアを結合する固体材料は、例えば、特定の金属塩である。
【0023】
本発明の方法で用いる固体材料は、最初はアンモニアを含まない、すなわち、アンモニアがそれぞれ吸着も吸収もされていないか、またはアンモニアで部分的に飽和されている。アンモニアで部分飽和されているとは、ある量のアンモニアがそれぞれ吸着または吸収されているが、最大に吸着または吸収できるアンモニアの量でないことを意味する。
【0024】
アンモニアを結合する(そして、適切な条件下では再びそれを放出する)ことができる好ましい金属塩は、一般式:Ma(NH3rz(式中、Mは、Li、Na、KまたはCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、BaまたはSr等のアルカリ土類金属および/またはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZn等の遷移金属あるいはNaAl、KAl、K2Zn、CsCuまたはK2Fe等のそれらの組み合わせから選択される1つ以上のカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸塩イオンから選択される1つ以上のアニオンであり、aは、塩1分子当たりのカチオンの数であり、zは、塩1分子当たりのアニオンの数である)の金属(アンミン)塩である。rは、アンモニアの配位数である。r=ゼロのとき、金属(アンミン)塩は、アンモニアを含まず、式Mazを有する。金属(アンミン)塩が飽和すると、r=rmaxである。rmaxは、個々の各塩の特性数であり、通常、2〜12の範囲にある。Sr(NH3rCl2において、例えば、rmaxは8である。部分飽和金属(アンミン)塩においては、0<r<rmaxである。金属(アンミン)塩という用語はここでは、塩の全ての3つの飽和状態を示すのに用いられ、3つの状態を意味する「アンモニアを含まない」、「部分的に飽和した」または「飽和した」により表示される。
【0025】
SrCl2、CaCl2およびMgCl2は、アンモニアを含まない好ましい金属(アンミン)塩である。
【0026】
以下、実施形態をQext=0で論じる。例えば、反応器が、最大配位数(最大モルアンモニア貯蔵能力)rmaxであり、アンモニアを含まない金属(アンミン)塩(「貯蔵材料」)nモルで充填される場合、可能な量の貯蔵アンモニアmsは、ms=rmax・nである。金属(アンミン)塩、例えば、Sr(NH3iCl2(i∈Nおよび1≦i≦rmax)中の異なる飽和段階のアンモニア分子は、通常、異なる吸収エネルギーEiを有する。Eiは、気体アンモニアからの吸収エネルギーである。気体アンモニアからの平均吸収エネルギーは、
【0027】
【数1】

であり、式中、r=rmaxである。そのアンモニア量(ms)を液体アンモニアから吸収する間に放出される熱量は、
【0028】
【数2】

で与えられ、液体アンモニアの蒸発エンタルピーは、吸収エネルギーから減算される。この熱量は、アンモニアの過剰量meを蒸発するのに対応し、
【0029】
【数3】

【0030】
で与えられる。
反応中、液体アンモニアの総量
【0031】
【数4】

【0032】
が、反応器に投与されると、貯蔵材料およびアンモニアの混合物が得られる。液体アンモニアを投与する間、反応成分は、受動的か能動的のいずれかで、適切に混合される。吸収プロセス開始直後に、熱が反応混合物へ放出され、液体アンモニアが蒸発されることにより消費または吸収され、それによって、気体アンモニアが生成される。圧力が閾値psに達するとすぐ、圧力制御デバイスが、反応器から気体アンモニアを放出するであろう。液体アンモニアが存在している限り、反応器中の温度および圧力は、アンモニアの相図に従ったレベルのままであろう(図6参照)。アンモニアの蒸発量は、飽和プロセスの進行を直接反映する。材料が完全に飽和すると、熱はもう生じず、蒸発が止まる。すると、飽和金属(アミン)塩を反応器から取り出すことができる。プロセス温度が周囲の温度と異なるように圧力psを選択する場合、熱が反応器から除去されたり、加わったりしないようにするために、反応器を場合により絶縁することができる。
【0033】
実施形態において、液体アンモニアの総量は、最大吸収速度より早い、例えば、10倍速い速度で投与される。液体アンモニアが、最大吸収速度より早い速度で投与されると、反応器中の液体アンモニアが一時的に過剰となるであろう。液体アンモニアはまた、最大吸収速度と同様の速度で投与してもよい。
【0034】
液体アンモニア(1)が、最大吸収速度より遅い速度で投与されると、吸収速度は制限され、投与速度に比例するであろう。
【0035】
一実施形態において、アンモニアおよび液体アンモニアを結合することのできる固体材料は、物理的攪拌、回転、振動または流動化(fluidization)により能動的(actively)に混合される。
【0036】
他の実施形態において、アンモニアおよび液体アンモニア1を結合することのできる固体材料は、能動的に混合されない。
【0037】
反応圧力が約8バールである場合、反応は、室温近くでなされるであろう。高い操作圧力では、温度は高く、低い圧力では、温度は低い。安全上の理由から、温度が周囲に近いか、またはそれより低くなるように圧力を制御すると有利である。しかしながら、温度が低すぎると、早い生産速度が望ましいときは、吸収反応が遅く不利である。例えば、SrCl2の飽和については、圧力範囲1〜15バールが、安全と反応速度との間の妥協点である。4〜10バールを用いるのがより好ましい。特に有望な操作圧力は、周囲温度と同じプロセス温度となるもの、例えば、8.5バールであり、対応の温度は約20℃である。この場合、熱は周囲と交換されず、外部熱交換剤も絶縁も必要性が排除される。
【0038】
本発明の方法は、バッチプロセスまたは連続プロセスとして実施してもよく、アンモニアを結合することができる固体材料およびアンモニアを含まないかまたは部分飽和の固体材料および液体アンモニアが、1つ以上の貯蔵容器から処理機器へ連続的に供給される。
【0039】
一実施形態において、冷却剤として作用する量の液体アンモニアからその蒸発により得られる気体アンモニアは液化されて、処理手順へと再利用される。
【0040】
まとめると、本発明は、固体アンモニア吸着または吸収材料(「アンモニア貯蔵材料」または単に「貯蔵材料」)の飽和を促進する方法であり、不飽和固体材料が、明確に定義された量の液体アンモニアまたは液体アンモニアと他の冷却剤の混合物と混合される。液体アンモニアまたは液体アンモニアプラス他の冷却剤の量は、貯蔵材料を飽和するのに必要な量プラス飽和中に蒸発によって放出された熱を補うのに必要な量として決まる。
【0041】
本発明の利点は、
− 短い飽和時間、
− 高飽和レベル、
− 安全操作、
− 拡大のし易さ、
− バッチと連続生産の両方を実施できること、
− ロバスト(robust)な方法であること、
− プロセスと周囲との間の熱交換が制御されること
である。
【0042】
図面をみてみると、図1は、本発明の基本原理を示している。混合および飽和がなされる容器5(反応器)は、液体アンモニア1の入口、貯蔵材料(アンモニアを吸着または吸収することのできる材料)2の入口および気体アンモニア4を特定の圧力で放出することのできる圧力制御デバイス6を備えている。飽和から生成される熱は、液体アンモニア1を、気体アンモニア4まで、圧力制御デバイス6を通じて蒸発させることにより除去され、それによって、反応器5中の圧力を特定の圧力psに維持する。生成物3は、飽和貯蔵材料である。
【0043】
図2のプロセスによれば、液体アンモニア1および貯蔵材料2は、反応器5に分配され、そこで、混合および飽和がなされる。飽和から生成される熱は、液体アンモニア1を蒸発させることにより除去される。気体アンモニア4は、圧力制御デバイス6を通って、圧縮器および/または熱交換器7へ進み、そこで、液化および再循環される。圧力制御デバイス6は、圧縮器7と一体化した部分であってよい。次に、再循環液体アンモニアを、液体アンモニア1の入口ストリームと混合して、プロセスで再利用する。生成物3は、飽和貯蔵材料である。
【0044】
図3に示すプロセスは、連続プロセスであり、貯蔵材料2および液体アンモニア1は、1つ以上の貯蔵容器から処理機器へ連続的に供給される。連続プロセスにおいて、アンモニア1および貯蔵材料2のフローの全体の比率は、バッチプロセスで用いるアンモニアおよび貯蔵材料の質量の比と同じである。貯蔵材料は、容器5へ分配され、そこで、能動的な混合および飽和反応がなされる。貯蔵材料2が反応ゾーンを通して搬送されると、適切な量の液体アンモニア1と混合されるであろう。この量の液体アンモニア1は、飽和プロセスが進むのと同じ速度で投与される。反応器5の滞留時間は、貯蔵材料において高度のアンモニア飽和を達成する十分な長さである。飽和プロセスにより生成される熱は、液体アンモニア1を蒸発することにより除去される。反応混合物(生成物およびアンモニア)は、分離ユニット8へと運ばれ、そこで、アンモニアは飽和生成物から分離される。生成物3、すなわち、飽和貯蔵材料は、貯蔵容器(図示せず)へと運ばれ、気体アンモニア4は、圧力制御デバイス6を通って、圧縮器および/または熱交換器7へ進み、そこから、再循環され、液体アンモニア入口ストリーム1と混合される。
【0045】
図示しない実施形態において、分離ユニット8は、反応器5と一体化されている。
【0046】
図4に示すプロセスにおいて、液体アンモニア1の総量が、投与され、反応器5前の分離混合ユニット9において、貯蔵材料2と混合される。混合ユニット9において、混合は早く、滞留時間は短いであろう。反応器10において、混合のレベルは低減するが、滞留時間は貯蔵材料2の高度の飽和を確実とするのに十分な長さであろう。飽和から生成された熱は、液体アンモニア1を蒸発させることにより除去される。反応器10における反応後、混合物は、分離ユニット8へと導かれ、そこで、気体アンモニア4が生成物3である飽和貯蔵材料から分離される。気体アンモニア4は、圧力制御デバイス6を通過して、圧縮器および/または熱交換器7へと進み、そこで、液化および再循環される。
【0047】
図示しない実施形態において、混合ユニット9は、反応器10と一体化されている。
【0048】
図5のプロセスにおいて、貯蔵材料2を飽和するのに必要なアンモニアのみが、液体アンモニア入口ストリーム1から供給されるであろう。選択される(alternative)冷却剤8は、蒸発による反応を冷やすためのみに作用するであろう。ガスストリーム4の主要部は、このように、別の気体冷却剤からなり、圧力制御デバイス6を通って、圧縮器および/または熱交換器7へと導かれ、そこで、液化されて、反応器5へ再循環されるであろう。選択される冷却剤は、上述した冷却剤から選択される。
【0049】
図6に、アンモニアの相図および蒸発曲線を示す。
【実施例】
【0050】
実施例1
1モルのSrCl2は、Sr(NH38Cl2としてr=8モルのNH3を結合することができる。SrCl2中のアンモニアの平均吸収エネルギーは、
【0051】
【数5】

である。モル質量158.5g/モルの1000kgのSrCl2は、ms=50.5×103モルのNH3を結合することのできるn=6.4×103モルに対応する。過剰の熱を除去するのに必要なNH3の量は、
【0052】
【数6】

モルのNH3である。プロセスに必要なアンモニアの最低総量は、mtot=91×103モルまたは1550kgである。
【0053】
同じ計算をCaCl2について行った場合、結果は同じ範囲であろう。というのは、アンモニアのCaCl2への結合エネルギーは、SrCl2と同様であるからである。MgCl2については、平均吸収エネルギーは、約Eb=65kJ/モルであり、これは、Sr(NH38Cl2に比べて、Mg(NH36Cl2の形成から、アンモニア1分子当たりの高い熱放出のつり合いをとるために、飽和プロセスに供給するのに、かなり高質量のアンモニアを必要とする。
【0054】
実施例2
ある実験において、3kgのSrCl2を、回転容器中で、アンモニアで飽和させる。アンモニア合計量4.65kgを、系(system)に、150g/分の速度、8バールの容器圧力で投与する。塩は、35分以内に、95%を超えるまで飽和される。反応温度は、常に、室温に近い。
【0055】
実施例3
実施例3は、アンモニアの総量をはじめの2分以内に投与する以外は実施例2と同様である。25分後、過剰のアンモニアの放出が停止し、材料が95%を超える程度まで飽和される。
【0056】
実施例4
システム圧力が6バールである以外は実施例2と同じである。プロセス温度は、約10℃低く、プロセス時間は40分まで増加する。あるいは、高圧、例えば、15バールでプロセスを行うことにより、プロセス温度が高く、反応速度が速くなり、飽和速度を上げる。
【0057】
実施例5
実施例5は、水分量を0.05〜4%の範囲で変え、かつ、不飽和貯蔵材料の処方(粉末、顆粒)を変える以外は、実施例2と同様である。これは、プロセスに影響しない。
【0058】
引用した全ての特許、特許出願およびその他文献は、参照により本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着または吸収によりアンモニアを結合することができ、最初はアンモニアを含まないか、またはアンモニアで部分的に飽和された固体材料を飽和する方法であって、
前記方法が、アンモニアの蒸気圧曲線に位置する圧力および関連温度で、前記固体材料を飽和するのに十分な量の液体アンモニアおよび液体アンモニア、液体または固体CO2、アンモニアより高い蒸気圧を有するハイドロカーボンおよびハイドロハロカーボン、エチルエーテル、ギ酸メチル、メチルアミンおよびエチルアミンから選択される追加量の冷却剤により、前記固体材料を処理することを含み、|Qabs|≦|Qevap|+Qext(式中、Qabsは、アンモニアで飽和される点までその液相からアンモニアを吸収するとき前記固体材料から放出される熱量であり、Qevapは、前記冷却剤が蒸発するとき前記冷却剤により吸収される熱量であり、Qextは、周囲と交換される熱量であり、熱が外部冷却により前記方法から除去される場合は正であり、熱が前記周囲から前記方法へ添加される場合は負である)となるようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
吸収によりアンモニアを結合することができ、最初はアンモニアを含まないか、またはアンモニアで部分的に飽和された前記固体材料が、一般式:Ma(NH3rz(式中、Mは、Li、Na、KまたはCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、BaまたはSr等のアルカリ土類金属および/またはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZn等の遷移金属あるいはNaAl、KAl、K2Zn、CsCuまたはK2Fe等のそれらの組み合わせから選択される1つ以上のカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸塩イオンから選択される1つ以上のアニオンであり、aは、塩1分子当たりのカチオンの数であり、zは、塩1分子当たりのアニオンの数であり、rは、アンモニアを含まないか、またはアンモニアで部分的に飽和された特定の金属(アンミン)塩について、ゼロまたはrの最大可能な値より低く、ここで、rは、前記金属(アンミン)塩がアンモニアで飽和された点での特定の金属(アンミン)塩についてのrの最大可能な値rmaxである)を有する金属(アンミン)塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ext=0である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却剤が、アンモニアである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属(アンミン)塩が処理される(ここでrは0である)アンモニアの総量mtotが、
【数1】

(式中、msは、rmax・nであり、式中、nは、存在する塩のモルであり、
eは、アンモニアの蒸発エンタルピーであり、
【数2】

式中、
【数3】

は、金属(アンミン)塩中のアンモニアの平均モル結合エネルギーであり、式中、r=rmaxであり、Eiは、金属(アンミン)塩中のアンモニアのモル結合エネルギーであり、式中、金属(アンミン)塩中の個々のアンモニア分子のr=rmaxであり、式中、r=rmax、i∈N、1≦i≦rおよびr=rmaxである)を満たす、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
アンモニアを含まない金属(アンミン)塩が、SrCl2、CaCl2、MgCl2またはこれらの混合物である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体アンモニア量が、最大吸収速度より早い速度で投与される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記液体アンモニアが、前記最大吸収速度より少なくとも10倍速い速度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体アンモニアが、前記最大吸収速度と同様の速度で投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンモニアを結合することのできる固体材料と、前記液体アンモニアが能動的に混合される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法の少なくとも一部が、定圧で実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力が、1〜15バールである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧力が、4〜10バールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧力が、周囲温度である操作温度に対応している、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
バッチプロセスとして行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
連続プロセスとして行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
その蒸発により冷却剤として作用する量の液体アンモニアから得られる前記気体アンモニアが、液化され、前記処理手順へ再利用される、請求項4〜16のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524011(P2012−524011A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505084(P2012−505084)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002266
【国際公開番号】WO2010/118853
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511250518)
【氏名又は名称原語表記】AMMINEX A/S
【住所又は居所原語表記】Gladsaxevej 363, DK−2860 Soborg, Denmark
【Fターム(参考)】