養殖用水槽の水温制御システム
【課題】 太陽熱温水装置の有効利用を図ると共に、マイクロバブルの特筆される特性を利用して、養殖用水槽の水温調整を極めて効率的に行い、同時に水質維持も的確に成し得る養殖用水槽の水温制御システムを提供する。
【解決手段】 魚介類等の養殖用水槽1における水温制御システムAであって、太陽熱温水装置2と、太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3と、温水循環路3の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器4と、液−気熱交換器4により生成された暖気を導入して養殖用水槽1から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を養殖用水槽1へ還流する気−液熱交換器5とを含み、気−液熱交換器5内には、マイクロバブル発生器6が設置され、暖気は、マイクロバブル発生器6によってマイクロバブル化されて、養殖用水槽1から供給される水と接触するよう構成されている。
【解決手段】 魚介類等の養殖用水槽1における水温制御システムAであって、太陽熱温水装置2と、太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3と、温水循環路3の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器4と、液−気熱交換器4により生成された暖気を導入して養殖用水槽1から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を養殖用水槽1へ還流する気−液熱交換器5とを含み、気−液熱交換器5内には、マイクロバブル発生器6が設置され、暖気は、マイクロバブル発生器6によってマイクロバブル化されて、養殖用水槽1から供給される水と接触するよう構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の養殖用大型水槽内の水温を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
たい、まぐろ、はまち、さば、いか、貝およびかになどの魚介類を水槽内で養殖する場合、水槽内の水温の調整が、良質の魚介類を得る上で重要となる。また、水槽内では多くの魚介類が養殖されるため、その糞や残った餌が溜り、これによって様々な細菌も繁殖して水質が悪化する。そのため、水質の維持も良質の魚介類を得る上で重要となる。このような水温の調整や水質の維持のための装置は大変大掛かりであり、養殖業者にとっては、その設置のために大きなコスト的負担を強いられていた。
【0003】
ところで、太陽熱を熱源とする太陽熱温水装置が、省エネルギーの観点から注目され、一般家屋でも使用されていたが、最近では太陽光発電装置にとって代わられ、有効利用されていない場合がある。また、近年特許文献1に示されるように、直径3μm程度の微細気泡(マイクロバブル)を発生させる装置が開発され、養殖池や養殖場に応用して溶存酸素量を増加させる試みもなされるようになった。さらに、特許文献2に示されるように、風力発電装置や、太陽光発電装置で得た電力を駆動源として作動する給餌装置を魚介類の養殖場に設置し、自然エネルギーによって自動的に給餌し、省資源的に魚介類の養殖を行うことも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3682286号公報
【特許文献2】特許第3766414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給湯システムとして考えた場合に、太陽熱温水装置は、十分な性能を有しており、有効利用することが好ましい。設備としてこのまま放置することは極めて無駄である。また、養殖用水槽で魚介類の養殖をする場合には、水槽内の水温調整や水質維持が重要で、その為に大掛かりな設備を設置する必要がある。特許文献1及び特許文献2では、海や湖沼等を魚網で区画した養殖場での適用例が示されているが、このような養殖場の場合、自然状態の海や湖沼の一部に存在することになるため、水温や水質を制御する必要がない。仮に、この自然環境が魚介類にとって適切でなくなったとしても、これを制御することは極めて困難である。特に、細菌による汚染は、防ぐことが難しく、細菌で汚染された魚介類が市場に出回ると、消費者は多大な不利益を被ることになる。特許文献1や特許文献2が対象とする養殖場においては、養殖用水槽における水温や水質を制御する技術思想は導出されるものではない。
【0006】
本発明の目的は、太陽熱温水装置の有効利用を図ると共に、マイクロバブルの特筆される特性を利用して、養殖用水槽の水温調整を極めて効率的に行い、同時に水質維持も的確に成し得る養殖用水槽の水温制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る養殖用水槽の水温制御システムは、
魚介類等の養殖用水槽における水温の制御システムであって、
太陽熱温水装置と、
前記太陽熱温水装置で生成される温水を循環させる温水循環路と、
前記温水循環路の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器と、
前記液−気熱交換器により生成された暖気を導入して前記養殖用水槽から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を前記養殖用水槽へ還流する気−液熱交換器とを含み、
前記気−液熱交換器内には、マイクロバブル発生器が設置され、前記暖気は、前記マイクロバブル発生器によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽から供給される水と接触するよう構成されていることを特徴とする養殖用水槽の水温制御システムである。
【0008】
本発明に従えば、太陽熱温水装置によって省エネルギー的に温水が生成される。生成された温水の熱は、液−気熱交換器において、導入される外気に伝熱されて熱交換される。液−気熱交換器において生成された暖気は、気−液熱交換器に導入され、前記養殖用水槽から供給される水と接触し、養殖用水槽からの水は暖気から伝熱され温水として養殖用水槽に循環される。このとき、前記暖気は、前記気−液熱交換器内に設置されたマイクロバブル発生器によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽から供給される水と接触するように成されているから、水への熱交換が効率的に成される。すなわち、マイクロバブルの表面積は極めて大であり、かつ、水中での浮上速度が遅いから、水との接触面積が大きく、かつ、接触時間が長くなり、これによって暖気から水への熱交換が極めて効率的になされる。熱交換温水は、養殖用水槽に還流されるから、水槽内の水温がこれによって調整される。また、マイクロバブルの発生によって、水中への酸素の溶解が促進され、溶存酸素量が多くなる。さらに、マイクロバブルは、表面積が大であることにより付着力が強く、水中に浮遊する魚介類の糞、餌の残り等のゴミや雑菌を付着してそのまま浮上し、熱交換温水は、溶存酸素量が多く浄化もされた状態で養殖用水槽に還流されることになる。したがって、養殖用水槽には浄化水が逐次還流されて養殖用水槽内の水が浄化される。また、溶存酸素量が多い水が還流されることにより、魚介類の成育性も向上する。
【0009】
なお、ここに用いられるマイクロバブル発生器としては、たとえば、特許文献1に示されたマイクロバブル発生器が好ましく採用される。
【0010】
また本発明は、前記気−液熱交換器の上部に、オーバーフロー排出口が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、ゴミや雑菌を付着して浮上したマイクロバブルは、オーバーフロー排出口からオーバーフロー水と共に排出されるから、浮上したゴミや雑菌等が再び水中に沈降することがなく、養殖用水槽へはゴミや雑菌等を含まない浄化された熱交換温水が的確に還流される。
【0012】
また本発明は、前記液−気熱交換器から、前記養殖用水槽に直接暖気を供給する給気管路を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、液−気熱交換器から暖気が直接養殖用水槽に供給されるから、これによって養殖用水槽の温度調整機能が補完される。また、養殖用水槽に供給された暖気は気泡となって浮上するから、これによって気液攪拌作用も得られ、養殖用水槽内の水の溶存酸素量が増加する。
【0014】
また本発明は、前記養殖用水槽から前記気−液熱交換器への給水管路に、水浄化手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、養殖用水槽からの水が水浄化手段を経て気−液熱交換器に供給されるから、気−液熱交換器での浄化作用がより効果的に成される。
【0016】
この場合、前記水浄化手段が、フィルターからなるものであっても良い。フィルターを通過させることによって、ゴミ等が除去される。
【0017】
また、前記水浄化手段が、紫外線殺菌灯からなるものであっても良い。このような紫外線殺菌灯を採用することによって、フィルターを通過するような雑菌であっても、これによって死滅させることができる。雑菌の死骸は気−液熱交換器でマイクロバブルに付着して浮上するので、これが、養殖用水槽に還流することがない。
【0018】
さらに、前記水浄化手段が、光触媒を担持させた担持体と、前記担持体に向け紫外線を照射するよう設置された紫外線灯とからなるものであっても良い。このような光触媒と紫外線灯との組合せによって構成した場合、殺菌作用がより顕著となり、雑菌の死骸は同様に液−気熱交換器でマイクロバブルに付着して浮上するので、養殖用水槽内の水の浄化度は一層高くなる。
【0019】
また本発明は、前記液−気熱交換器への外気の導入部に、補助加熱手段により加熱された外気を導入するための導入管が接続されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、前記液−気熱交換器への外気の導入部から、補助加熱手段により加熱された外気が導入されるから、太陽熱温水装置による温水が充分な熱を保有しない場合でも、補助加熱手段により加熱された暖気によって温水の保有する不足熱が補完される。特に、太陽熱温水装置は夜間や、天候が悪いときには、その機能が低下するが、このような場合でもその機能が補完され、養殖用水槽内の水温調整機能が維持される。
【0021】
前記補助加熱手段が、前記導入管の外気取入口に設置される太陽熱の集熱および放熱手段からなるものとしても良い。
【0022】
このように、太陽熱の集熱および放熱手段を補助加熱手段とすれば、省エネルギー的に前記補完機能が得られる。また、導入管の外気取入口に補助加熱手段が設置されていることにより、外気取入口付近で暖められた外気は気流によって液−気熱交換器に効率よく導入される。
【0023】
また、前記補助加熱手段が、前記導入管内に設置され、少なくとも前記導入管の外気取入口に設置される風力発電手段または太陽光発電手段によって得た電力を電源として発光する赤外線灯からなるものとしても良い。
【0024】
この場合、導入管内を通過する外気は、赤外線灯によって暖められて液−気熱交換器に導入される。前記太陽熱の集熱および放熱手段と併用すれば、この暖気化がより効果的に成される。しかも、この赤外線灯は、少なくとも前記導入管の外気取入口に設置される風力発電手段または太陽光発電手段によって得た電力を電源とするものであるから、省エネルギー的である。そして、このような発電手段によって得た電力を蓄電池に蓄電するようにすれば、前記太陽熱温水装置が夜間等において機能が低下しても、前記水温調整機能が維持される。
【0025】
また本発明は、前記養殖用水槽の上に、風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を駆動源として作動する自動給餌装置が設置されていることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、養殖用水槽の上に自動給餌装置が設置されているので、魚介類の養殖に係る労力が大幅に軽減される。しかも、この自動給餌装置は、風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を駆動源として作動するから、省エネルギー的で、ランニングコストも抑えることができる。
【0027】
また本発明は、前記脱窒装置は、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれる複数の有機炭素源供給層と、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する複数の細菌生息層とが、交互に積層され、
各有機炭素源供給層は、
多糖類が、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記脱窒装置は、
(a)上方に開放した直方体形状の容器221と、
(b)積層体であって、
容器221の底部206から上方に向かって、交互に積層される複数の有機炭素源供給層203a〜203eと、複数の細菌生息層204a〜204dとを有し、
これらの積層された有機炭素源供給層203a〜203eと細菌生息層204a〜204dとのうち、最下層と最上層とは、有機炭素源供給層203a,203eであり、
各有機炭素源供給層203a〜203eは、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれ、この多糖類は、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させる炭素塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられ、
各細菌生息層204a〜204dは、
連続空隙の多孔質材料から成る担体225の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有し、
前記最下層である有機炭素源供給層203aの上に設けられた最下の細菌生息層204aと、前記最上層である有機炭素源供給層203eの下に設けられた最上の細菌生息層204dとの第1の前記担体(225、図9)の空隙率は、残余の細菌生息層204cの第2の前記担体(225、図10)の空隙率よりも高く、かつ、
第1の前記担体(225、図9)に比べて、第2の前記担体(225、図10)のほうが表面積が大きい積層体と、
(c)容器221の一側部に設けられ、前記最上層である有機炭素源供給層203eと、前記最上の細菌生息層204dとに開口し、脱窒されるべき硝酸を含む液体を供給する供給管路207と、
(d)容器221の前記一側部と反対側の他側部に設けられ、前記最下の細菌生息層204aに開口し、積層体を収容した容器221内を流下した液体を排出する排出管路208とを含むことを特徴とする。
【0029】
また本発明は、有機炭素源供給層における体積混合比は、
キチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂
=1〜2:4:4〜5
であることを特徴とする。
【0030】
また本発明は、前記脱窒装置は、
硝酸を含む液体中の前記硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる脱窒装置において、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源であるセルロースが含まれる有機炭素源供給層を備え、
有機炭素源供給層の下流に、複数のミネラル供給層と複数の細菌生息層とが、交互に積層されて配置され、
各ミネラル供給層は、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、セルロースをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とを有し、
各細菌生息層は、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有することを特徴とする。
【0031】
また本発明は、魚介類等の養殖用水槽1における水温の制御システムであって、
太陽熱によって水を加熱する太陽熱温水装置2と、
太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3,3a,3d,3eと、
温水循環路3,3a,3d,3eの途中に配設され、前記温水と養殖用水槽1のための水とを間接熱交換する養殖水用熱交換器4aと、
空気と養殖用水槽1からの水とによってマイクロバブルを発生するマイクロバブル発生手段6aと、
マイクロバブル発生手段6aからのマイクロバブルが発生された水を養殖水用熱交換器4aに導き、この養殖水用熱交換器4aからの前記温水によって加熱された水を養殖用水槽1に供給し、養殖用水槽1からの水をマイクロバブル発生手段6aに導いて、養殖用水槽1の水を循環する給水管路52,53a,53とを含むことを特徴とする養殖用水槽の水温制御システムである。
【0032】
また本発明は、温水循環路3,3a〜3eの途中に配設され、前記温水によって外気である空気を加熱して熱交換する空気用熱交換器4をさらに含み、
マイクロバブル発生手段6aは、空気用熱交換器4から供給される加熱された空気によってマイクロバブルを発生することを特徴とする。
【0033】
また本発明は、養殖用水槽1の水の温度を検出する手段401と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から養殖水用熱交換器4aに流れる温水の流路を開閉する第1開閉弁V1と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から空気用熱交換器4に流れる温水の流路を開閉する第2開閉弁V2と、
制御手段402であって、
水温検出手段401からの出力に応答し、
第1および第2温度T1,T2が予め設定され(ただしT1<T2)、
検出された温度Tが第2温度T2未満であるとき、第1および第2開閉弁V1,V2を開き、
こうして第1および第2開閉弁V1,V2を開くことによって、検出された温度Tの温度上昇の時間変化率αを演算し、
その演算された温度上昇の時間変化率αが、予め定める値α1未満(α<α1)である第1の場合、第1および第2開閉弁V1,V2を開く第1動作モードとし、
前記演算された温度上昇の時間変化率αが予め定める値α1以上(α1≦α)である第2の場合、第1開閉弁V1を閉じ、第2開閉弁V2を開く第2動作モードとし、
その後、検出された温度Tが第2温度T2以上に上昇したとき、第1および第2開閉弁V1,V2を閉じ、
検出された温度Tが第1温度T1未満にまで下降したとき、前記第1の場合には第1動作モードとし、第2の場合には第2動作モードとする制御手段402とを含むことを特徴とする。
【0034】
また本発明は、養殖用水槽1からの水を供給するサクションポンプ411と、
サクションポンプ411からの水と、空気用熱交換器4からの加熱された空気とを混合して気液混合流体を導出する空気混入部413とをさらに含み、
空気混入部413からの気液混合流体を、マイクロバブル発生手段6bへ導いてマイクロバブルを発生させることを特徴とする。
【0035】
また本発明は、マイクロバブル発生手段6bは、ハウジング418を有し、
このハウジング418は、
回転対称に形成され、回転対称軸416の軸線方向の双方に向かって縮径した中空部417を有し、
このハウジング418の周壁部に、気液導入孔419が接線方向に開口され、
ハウジング418の中空部の縮径部分に回転対称軸416の双方向にマイクロバブル噴出孔421,422が開口し、
マイクロバブル噴出孔421,422が、ハウジング418内に流入した気液混合流体の旋回流によって形成される負圧軸の位置に一致して形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、太陽熱温水装置をその特性を活かして有効活用することができる。また、液−気熱交換器において太陽熱温水装置からの温水によって熱交換されて生成された暖気は、気−液熱交換器においてマイクロバブル化されて養殖用水槽から供給される水に接するから、マイクロバブルの特性によって水への熱交換が極めて効率的に成される。この熱交換温水は養殖用水槽に還流されるから、養殖用水槽内の水温を魚介類の成育に適するよう簡易に制御することができる。そして、気−液熱交換器での熱交換の際には、水中に含まれるゴミや雑菌がマイクロバブルに付着して浮上するから、気−液熱交換器からはこれらゴミや雑菌が除去され、かつ溶存酸素量の多い水が養殖用水槽に還流され、養殖用水槽内の水を清潔で魚介類の成育に適した性状に維持することができる。このように、本発明の優れた効果は、廃棄物としてその処置が憂慮されていた太陽熱温水装置を有効活用し、これにマイクロバブルの特筆される特性を応用することによって成し得たものであり、その実益は極めて大である。
【0037】
本発明によれば、液体中に多糖類を設けることによって、脱窒細菌に、長期間に渡って有機炭素を与え続けることができるので、アルコール類を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる。したがって液体から窒素を除去するための脱窒細菌に与える有機炭素源の供給作業の効率を向上することができる。
【0038】
本発明によれば、液体中に容易に入手可能なキチンを設けることによって、脱窒細菌に、長期間に渡って有機炭素を与え続けることができるので、前述したアルコール類を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる効果を達成する脱窒装置を容易に実現することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0039】
また本発明によれば、液体と脱窒細菌との接触面積を大きくすることができるとともに、有機炭素源供給層の多糖類によって、細菌生息層の脱窒細菌に有機炭素を与えやすくすることができ、かつ脱窒細菌に可及的に均一に有機炭素を与えることができる。したがって脱窒細菌の繁殖を促進し、脱窒細菌を利用した窒素の除去効率を高くすることができる。
【0040】
また本発明によれば、粉末の状態のキチンと液体との接触面積を大きくすることによって、キチンが分解されやすくし、脱窒細菌に有機炭素を不足しないように与えることができる。しかも粉末のキチンを用いても、キチンの粉末は、袋体に収納されて取扱いが容易であり、メンテナンス性を良好にすることができる。
【0041】
また本発明によれば、液体にカルシウムなどのミネラル成分を溶解させることができるので、液体から窒素を除去しながら、ミネラル成分を与えて、液体を改質することに役立つ。
【0042】
また本発明によれば、液体中に細砂を設けるという簡単な構成で、多糖類を分解して脱窒細菌に有機炭素を与える構成を実現することができる。
【0043】
また本発明によれば、液体中に容易に入手可能なセルロースを設けることによって、脱窒細菌に、長期間に渡って有機炭素を与え続けることができるので、前述したアルコール類を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる効果を達成する脱窒装置を容易に実現することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0044】
また本発明によれば、養殖用水が汚損されて養殖槽における魚介類の養殖環境が悪化するが、前述のようにしてアンモニアを除去することによって、養殖槽に良好な養殖環境を確保し、維持することができる。したがって優れた養殖環境の養殖設備を実現することができる。
【0045】
本発明によれば、図12〜図23に示されるように、マイクロバブル発生手段6a,6dによって得られた空気と養殖用水槽からの水とによって発生されたマイクロバブルを含む水を、太陽熱温水装置2からの温水を用いて養殖水用熱交換器4aで間接熱交換するので、熱交換効率が向上され、さらにこのマイクロバブル発生手段6a,6dに供給される外気である空気を、太陽熱温水装置2からの温水で空気用熱交換器4を用いて予め加熱しておくことによって、養殖水の温度を効率良く加熱することもできる。
【0046】
さらに本発明によれば、冬などには、養殖水用熱交換器4aと空気用熱交換器4とを第1および第2開閉弁V1,V2の開閉動作によって効率良く養殖水の加熱を行ない、夏などでは、養殖水用熱交換器4aを、第1開閉弁V1を閉じておくことによって、休止し、空気用熱交換器4を、第2開閉弁V2の開閉動作によって動作させてマイクロバブルによって養殖水の加熱を行うようにしてもよく、これによって太陽熱温水器に精製される温水を他の用途、たとえば工場内の養殖以外の目的などに使用することが容易に可能になる。
【0047】
さらに本発明によれば、養殖水の温度上昇の時間変化率αが予め定められたα1未満であれば、冬などの第1の場合であると判断して、第1および第2開閉弁V1,V2を開閉動作する第1動作モードを行ない、前記時間変化率αが予め定められたα1以上であれば、夏などの第2の場合であるものと判断し、第1開閉弁V1を閉じたままで、第2開閉弁V2を開閉動作する第2動作モードを行う。このような時間変化率αは冬または夏などの運転開始時にそれぞれ演算して求めるようにし、第1および第2の場合の判断を行うことができる。
【0048】
さらに本発明によれば、マイクロバブル発生手段6dは、空気混入部413からの気液混合流体を用いてマイクロバブルを発生し、微細な気泡を発生させることができる。このようなマイクロバブル発生手段6dは、後述の図21〜図23に示されるように、養殖水が貯留された容器50内に浸漬されたマイクロバブル発生器6cを用いて実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1は、本発明の一形態の養殖用水槽1の水温制御システムAを示す概念的構成図である。本実施の形態の養殖用水槽1の水温制御システムAは、太陽熱温水装置2と、前記太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3と、前記温水循環路3の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器4と、前記液−気熱交換器4により生成された暖気を導入して前記養殖用水槽1から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を前記養殖用水槽1へ還流する気−液熱交換器5とを含む。前記気−液熱交換器5内には、マイクロバブル発生器6が設置され、前記暖気は、前記マイクロバブル発生器6によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽1から供給される水と接触するよう構成されている。
【0050】
前記太陽熱温水装置2は、多数の集熱パイプ21…を太陽光に向くよう並べて配置し、各集熱パイプ21には温水循環路3に配された循環ポンプ31によって水を循環供給し、集熱パイプ21内を流通中に太陽熱を吸収して温水を生成するものである。温水循環路3の途中には補水タンク32が設置され、図示しない検出手段によって、温水循環路3を循環する温水量が所定量より少なくなったことを検出すると、適宜補水がされるよう構成されている。また、この温水循環路3における液−気熱交換器4からの復路には貯温タンク33が配設され、循環する温水の保有熱を貯留させ、太陽熱温水装置2での太陽熱の熱吸収効率を高めるように成されている。
【0051】
液−気熱交換器4は、交換器ハウジング40と、該交換器ハウジング40の中に設置された銅パイプ製の蛇管41とからなる。該蛇管41には前記温水循環路3からの温水が流通循環し、交換器ハウジング40に設けられた外気の導入部7より導入される外気と接触して、温水から外気への液−気熱交換が成される。前記導入部7には、吸引ファン71を介して外気の導入管72が接続され、該導入管72の外気取入口73および導入管72内に設置された補助加熱手段8,9によって加熱された外気を、交換器ハウジング40内に導入し得るよう構成されている。補助加熱手段8は、太陽熱の集熱および放熱手段からなる。また、補助加熱手段9は、前記外気取入口73に設置される風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を電源として発光する赤外線灯からなる。補助加熱手段8,9の詳細については後述する。
【0052】
前記液−気熱交換器4によって生成された暖気は、暖気導入管42を経て前記気−液熱交換器5に導入され、該暖気導入管42の先端に接続されたマイクロバブル発生器6から、前記気−液熱交換器5内に養殖用水槽1から供給貯留されている水中に噴出される。また、前記液−気熱交換器4から給気管路43を経て、暖気が直接養殖用水槽1内に供給されるようにも成されている。気−液熱交換器5は、養殖用水槽1から供給される養殖水を貯留し得るハウジング容器50を備え、該ハウジング容器50の上部にはオーバーフロー排出口51が設けられている。また、該ハウジング容器50には、養殖用水槽1から養殖水を供給する養殖水の給水管路52と、該気−液熱交換器5による熱交換温水を養殖用水槽1に還流する還流管53とが接続されている。給水管路52には、第1および第2の水浄化手段10,11が設けられており、第1の水浄化手段10はフィルターからなり、第2の水浄化手段11は光触媒を担持させた担持体と、この担持体に向け紫外線を照射し得るよう設置された紫外線灯からなる。第1および第2の水浄化手段10,11は、いずれか単独でもよく、また、第2の水浄化手段11に代えて、これに用いられる紫外線灯のみを給水管路52内に設置しても良い。第2の水浄化手段11の詳細については後述する。
【0053】
養殖用水槽1は、たい、まぐろ、はまち等を遊泳させて養殖する大型水槽であるが、魚種に応じ、魚網等により適宜区画し、あるいは底部を魚網等で仕切って、貝やかに、えび等の養殖域としても良い。また、養殖用水槽1内には温度センサ10が投入されており、この温度センサ10はコントローラ101に接続されている。さらに、養殖用水槽1の上には、前記特許文献2に示されるような自動給餌装置12が設置されている。この自動給餌装置12は、本装置12自体が備える風力発電手段13および太陽光発電手段14によって得た電力を駆動源として作動する回転弁体駆動手段と、養殖用水槽1の上を走行させる走行駆動手段とを備える。自動給餌装置12の詳細については後述する。
【0054】
ここで、前記補助加熱手段8,9について、図2を参照してさらに詳細に説明する。図2は、前記外気の導入管72における外気取入口73付近を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。前記外気の導入管72は、吸引ファン71の設置部分から上流側部分が垂直に立ち上がる径大円筒部720とされ、その上端に内向鍔状の支持板730が設置され、該支持板730の開口部が外気の取入口73とされている。この支持板730の上には、風力発電手段91を構成する複数の羽根車910が回転自在に設置されている。各羽根車910の回転軸911は、支持板730の下方に突出して、支持板730の下面に設置された発電機912に連結されている。風力発電手段91の基本構成は特許文献2にしめされたものと同じであり、したがって、ここではこれ以上の説明を省略する。風力発電手段91の上端部には支持板80が設置され、その中央部にはアルミニウム等の比熱の小さな金属板8が組込まれ、該金属板8が集熱および放熱手段を構成する。さらに、支持板80の上には、ドーム形のレンズ支持板81が設置され、該レンズ支持板81には複数の凸レンズ82が組付けられている。これら凸レンズ82は、いずれも、その光軸が前記金属板8の表面に指向され、かつ、該金属板8の表面に焦点が位置するよう設定されている。従って、これら凸レンズ82に入射する太陽光線は、金属板8の表面に集光し、金属板8は太陽光エネルギーを吸収して集熱し、蓄熱する。
【0055】
前記円筒部720内の外気取入口73付近には、補助加熱手段9としての赤外線灯が設置されている。赤外線灯9は、円筒部720の外に設置される蓄電池92に電気的に接続されている。この蓄電池92は、前記発電機912および円筒部720の外に設置される太陽光発電手段93としてのソーラパネルと電気的に接続されている。したがって、この蓄電池92には、風力発電手段91および太陽光発電手段93により得た電力が蓄電され、蓄電池92に蓄電された電力は、赤外線灯9の電源として供される。筒部720の筒壁には、点検用開閉扉721が設けられ、赤外線灯9や前記発電機912の点検、あるいは交換等のメンテナンスが可能とされている。図2では、2つの補助加熱手段8,9を併用した例を示しているが、どちらか一方でも良い。また、風力発電手段91の電源として、風力発電手段91および太陽光発電手段93を用いているが、この場合も、どちらか一方でも良い。
【0056】
次に、前記第2の水浄化手段11について、図3および図4を参照してさらに詳細に説明する。図3は前記給水管路52における第2の水浄化手段11が設置された部分を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。図4は図3における切断面線IV−IVから見た断面図である。給水管路52の中には、その中心に軸線方向に沿った状態で紫外線灯111が設置され、その周りに4本のアルミニウム棒(担持体)112が軸線方向に沿った状態で、かつ周方向に等間隔で配設されている。アルミニウム棒112の周面には、光触媒としての酸化チタンを溶解した溶液をコーティングすることによって、酸化チタンが担持されている。酸化チタンは、紫外線光を照射すると、強い酸化作用を発揮する特性を備えている。したがって、給水管路52を流通する養殖水の中に含まれる魚介類の糞や餌の残り、あるいは雑菌等はこの酸化作用を受けて分解および死滅する。これによって、紫外線灯111とアルミニウム棒112とによって第2の水浄化手段11が構成される。また、紫外線光自体も雑菌のDNAを破壊する特性を有しているので、紫外線灯111のみで第2の水浄化手段11を構成することもできる。この場合、紫外線灯111の電力を、専用の電源から供給するようにしてもよいが、前記蓄電池92から供給することも可能であり、これによって省エネルギー化が図られる。
【0057】
次いで、前記自動給餌装置12について、図5を参照してさらに詳細に説明する。図5は、自動給餌装置12を拡大して概念的に示す縦断正面図である。この自動給餌装置12は前記特許文献2に示されるものと基本的な構成は同じである。すなわち、ハウジングである餌収容筒120の下部に、餌収容筒120の軸心周りに回転可能に回転弁体121が設けられ、該回転弁体121の周囲にはギヤ121aが形成されている。餌収容筒120の壁部には、回転弁体121の回転駆動用のモータ15が設置され、該モータ15の出力軸に固着された出力ギヤ151と、回転弁体121のギヤ121aとが噛合し、モータ15の回転によって、回転弁体121が餌収容筒120の軸心周りに回転する。また、餌収容筒120の内部は、複数の仕切壁122によって複数の区画室123に区画され、各区画室123内には魚介類用の餌が投入充填されている。前記回転弁体121は扇形の開口部121bを備え、回転弁体121の回転に伴う開口部121bの移動によって、区画室123内の餌が開口部121bより落下し、餌収容筒120の下部に連なるコーン部124および直状管部125を経て養殖用水槽1に撒餌される。
【0058】
前記直状管部125の外壁部には、餌収容筒120の走行駆動用のモータ16が設置され、該モータ16の出力軸には2個のピニオンギヤ161,161が固着されている。養殖用水槽1の槽壁上端縁部には2本の平行なラック162,162が架設され、前記ピニオンギヤ161,161は、各ラック162,162に噛合している。餌収容筒120は、ラック162,162に平行な図示しない支持枠あるいはラック162,162自体に摺動可能に支持され、モータ16の回転によって、162,162の長手方向に沿って往復走行移動が可能とされている。したがって、前記回転弁体121の回転と、餌収容筒120の往復走行移動とによって、養殖用水槽1内への広範囲の撒餌が可能とされる。餌収容筒120の上部には、餌の投入口126が設けられ、この投入口126より、餌の補給がなされる。
【0059】
餌収容筒120の上端には、上下の支持板130,131を介して風力発電手段13が設置されている。この風力発電手段13は、前記予備加熱手段9に電力を供給するために採用される風力発電手段91と同様に構成されており、したがって、この風力発電手段13の詳細構成の説明は省略し、図面では概略的に示している。この風力発電手段13によって得られた電力は、前記モータ15、16の駆動電源に供せられる。また、前記支持板130の上部には、支持板130を貫通して支持板131に餌収容筒120の軸線に沿って立設された支柱140に太陽光発電手段14が設置されている。この太陽光発電手段14も特許文献2に示されたものと同様であり、支柱140に取付けられた皿形形状の反射鏡手段141と、該反射鏡手段141の凹部内に納まるよう前記支柱140の上端に上向きに湾曲した発電素子の保持部材142とよりなる。保持部材142の上下両面には多数の太陽光発電素子143…が配列固定されている。保持部材142の上面に固定される太陽光発電素子143は太陽光を直接受け、保持部材142の下面に固定される太陽光発電素子143は反射鏡手段141により反射された太陽光を受けて、これら太陽光のエネルギーによって発電機能を奏する。この太陽光発電手段14によって得られた電力は、風力発電手段13によって得られた電力と同様に、前記モータ15、16の駆動電源に供せられる。風力発電手段13および太陽光発電手段14によって得られた電力は、図示しない蓄電器に蓄電され、この蓄電器に電気的に接続することによって、モータ15、16に給電される。
【0060】
上述のような構成の養殖用水槽1の水温制御システムAの作用について説明する。太陽熱温水装置2の集熱パイプ21において、ポンプ31によって供給される水(温水)が太陽熱を受けて温められ、温水循環路3を経て液−気熱交換器4に導入され、液−気熱交換器4の蛇管41内を流通する。蛇管41を経た温水は、温水循環路3の復路に配設された貯温タンク33において保有する余熱が貯留され、再度ポンプ31によって太陽熱温水装置2に供給され、これが繰返される。温水循環路3を循環する温水が減ってくると、補水タンク32から水が補給される。
【0061】
液−気熱交換器4の交換器ハウジング40には外気の導入部7より外気が導入され、前記蛇管41の表面に接して熱交換されて暖気が生成される。外気の導入部7には、途中に吸引ファン71を配した外気の導入管72が接続されており、吸引ファン71の作動により、外気の取入口73から吸引された大気は強制的に前記交換器ハウジング40内に導入される。外気の取入口73およびこの取入口73の近傍の外気の導入管72内に、補助加熱手段8,9が設置されており、この補助加熱手段8,9によって加熱された暖気が導入管72を経て交換器ハウジング40内に導入される。補助加熱手段8は、前述のように集熱および放熱性に富んだ金属板からなり、前記凸レンズ82によって金属板8に集熱された太陽熱は、前記吸引ファン71の作動に伴い生じる気流によって放熱され、この放熱によって温められた気流は、外気の取入口73より導入管72に吸引される。
【0062】
前記金属板8によって温められ導入管72に吸引された外気は、導入管72内に設置されたもう一方の補助加熱手段としての赤外線灯9から発せられる赤外線の作用を受けてさらに温められて暖気として吸引ファン71に吸引される。赤外線灯9の電源は、前述のとおり風力発電手段91およびソーラーパネル(太陽熱発電手段)93からなる。風力発電手段91においては、前記吸引ファン71の作動に伴い生じる気流によって、羽根車910の回転が促進され、その発電が効率的になされる。風力発電手段91およびソーラーパネル93によって得た電力は、蓄電器92に蓄電される。
【0063】
前記補助加熱手段8,9は、前記太陽熱温水装置2によって生成される温水が充分な温度を保有しない場合に、液−気熱交換器4での液−気熱交換機能を補うべく位置付けられるものである。すなわち、夜間や、天候が悪いときには、太陽熱温水装置2の機能が低下するが、このような場合、液−気熱交換器4に導入される外気が事前に温められておれば、太陽熱温水装置2の機能の機能低下分がこれによって補完される。従って、前記温水循環路3における液−気熱交換器4の上流側部分に温度センサ(図示せず)を設けておき、この温度センサの検出温度が所定の温度を下回ったとき、前記赤外線灯9をオンすることにより、液−気熱交換器4によって生成される暖気が常時適正な温度に維持される。
【0064】
前記液−気熱交換器4によって生成された暖気は、暖気導入管42を経て前記気−液熱交換器5のハウジング容器50内に導入される。該暖気導入管42の先端にはマイクロバブル発生器6が接続されており、該マイクロバブル発生器6から、前記ハウジング容器50内に養殖用水槽1から供給貯留されている水中に噴出される。暖気は、マイクロバブル発生器6から噴出される結果、直径が数μmの多数のマイクロバブルとなって、ハウジング容器50内の水中を浮上する。このマイクロバブルの表面積は、通常の気泡の数千倍であり、また、水深3m以内での水中での浮上速度は約0.1mm/秒と極めて遅い。したがって、水との接触面積が非常に大きく、かつ、接触時間が極めて長くなるから、暖気から水への熱交換が極めて高効率で成される。また、マイクロバブルは付着力が強いから、水中に浮遊するゴミや雑菌、あるいは雑菌の死骸等を付着して浮上し、前記オーバーフロー排出口51よりオーバーフロー水と共に排出される。これによって、ハウジング容器50内の水が浄化される。特に、マイクロバブルの表面積が大きく、かつ、浮上速度が遅いことも相俟って、この浄化作用は極めて効果的になされる。ハウジング容器50内の水が浄化されることによって、ハウジング容器50の内壁が汚れることがなく、その清掃が不要とされる。このように浄化された熱交換温水は還流管53を経て養殖用水槽1に還流される。
【0065】
前記養殖用水槽1から気−液熱交換器5への給水管路52には、第1および第2の水浄化手段10,11が設けられている。したがって、養殖用水槽1中の魚介類の糞や、餌の残り等の有機物、あるいは雑菌は、前記のように構成された第2の水浄化手段11によって分解され、破壊され、あるいは殺菌される。この分解、破壊および殺菌による残渣、さらにはごみのうち比較的粗いものは、第2の水浄化手段11に続いて設置されたフィルターからなる第1の水浄化手段10によって捕捉される。これによって、養殖用水槽1からはある程度浄化された状態で気−液熱交換器5に供給されるが、雑菌の死骸や細かなゴミは、フィルター10を通り抜け気−液熱交換器5に流入する。しかし、気−液熱交換器5内では、前述のとおりマイクロバブルに付着して排出されるから、これらの細かなごみ等は、養殖用水槽1に再度還流されることがない。
【0066】
さらに、前記養殖用水槽1から気−液熱交換器5への給水管路52には、脱窒装置20を設けていてもよい。
【0067】
脱窒装置20は、養殖用水槽1から供給される水中に含まれる硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる。
【0068】
図6は、水温制御システムAに備えられる脱窒装置20を示す断面図である。図7は、脱窒装置20を示す斜視図である。脱窒装置20は、養殖用水槽1から給水管路52を通って供給される水202中に硝酸として存在する窒素を除去するための装置であって、脱窒細菌を利用して硝酸を、水202から自然放出可能な窒素ガスに変化させることによって、窒素ガスの放出を伴って窒素を除去する。脱窒細菌としては、硝酸を窒素ガスに変化させる脱窒に関与する細菌であり、たとえば通性嫌気性細菌、さらに具体的には、
Pseudomonas属、Achromobacter属の仲間、Micrococcus denitrificans、Thiobacillus
denitrificans、Bacillus subtilisなどの芽胞形成菌および土壌放線菌の仲間などを含み、これらの細菌を用いることができる。
【0069】
脱窒装置20は、周壁205と、周壁205の一端部を塞ぐ底部206とを有し、底部206と反対側の開放端部222で開放する略直方体形状の容器221を有している。容器221は、金属および合成樹脂などから成ってもよく、底部206を下部に配置し、上方へ開放するように配置されている。脱窒装置20は、容器221内に、水202が収容されるとともに、多糖類から成る有機炭素源が設けられる複数の有機炭素源供給層203と、連続空隙の多孔質材料からなる担体225が設けられる複数の細菌生息層204とが設けられる。
【0070】
本実施の形態では、5つの有機炭素源供給層(以下、特定の有機炭素源供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を付した符号を用い、不特定の有機炭素源供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を省略する。)203が設けられる。また4つの細菌生息層(以下、特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付した符号を用い、不特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付さない符号を用いる)204が設けられる。
【0071】
各有機炭素源供給層203と各細菌生息層204とは、容器221の底部206から開放端部222に向かう方向へ、したがって上下方向へ交互に積層されて積層体を構成する。具体的には、各有機炭素源供給層203と各細菌生息層204とは、上方へ向かって、第1有機炭素源供給層203a、第1細菌生息層204a、第2有機炭素源供給層203b、第2細菌生息層204b、第3有機炭素源供給層203c、第3細菌生息層204c、第4有機炭素源供給層203d、第4細菌生息層204d、第5有機炭素源供給層203eの順に、積層されており、したがってこの積層体の最下層と最上層とは、第1および第5有機炭素源供給層203a,203eである。
【0072】
細菌生息層204には、担体225に脱窒細菌が付着されている。したがって担体の表面に脱窒細菌が付着されており、このような担体225を設けることによって、細菌生息層204で脱窒細菌を生息させている。担体225は、多孔質材料から成るので、表面積を大きくし、脱窒細菌の生息場所を大きくすることができる。したがって多くの脱窒細菌を生息させること、換言すれば脱窒細菌を繁殖させることができる。
【0073】
各有機炭素源供給層203には、有機炭素源と、炭酸塩鉱物と、細砂とが設けられる。有機炭素源はキチンであり、キチンは粉末の状態で設けられる。キチンは、自然界に存在するキチンを用いてもよいし、人工的に精製したキチンを用いてもよい。キチンとして、本実施の形態では、たとえば蟹および海老などの甲殻類の殻を粉砕した粉末を用いられる。このキチンが、脱窒細菌に与える炭素の源となる有機炭素源である。
【0074】
炭酸塩鉱物は、粉末の状態で設けられる。炭酸塩鉱物は、自然界に存在する炭酸塩鉱物を用いてもよいし、人工的に生成した炭酸塩鉱物を用いてもよい。炭酸塩鉱物として、たとえばカルシウムの炭酸塩鉱物である霰石、貝化石などを粉砕した粉末を用いることができる。本実施の形態では、たとえば貝化石の粉末が用いられる。この炭酸塩鉱物は、液体2に、カルシウムなどのミネラル成分を溶解させて与えることができる。また炭酸塩鉱物によって、水202を改質することに役立つ。
【0075】
細砂には、キチンを分解するキチン分解細菌が付着されている。キチン分解細菌は、海洋低温細菌ビブリオ属に属するキチナーゼ生産菌などを含み、これらの細菌を用いることができる。このキチン分解細菌は、キチナーゼを生成してキチンを加水分解することができる。キチナーゼ生産菌としては、海洋低温細菌ビブリオ属などに属し、キチン資化能を有する微生物であれば、どのようなものでもよく、特に制限はない。細砂としては、キチン分解細菌が自然に付着している砂を用いてもよいし、キチン分解細菌を人工的に付着させた砂を用いてもよい。本実施の形態では、細砂として、たとえば海底から採取した砂、いわゆる海砂が用いられる。海底から採取した砂には、キチン分解細菌が自然に付着している。
【0076】
有機炭素源供給層203のキチンは、このように細砂に付着された状態で有機炭素源供給層3に生息させられるキチン分解細菌を利用して、グルコースに分解される。このようにキチンを分解してグルコースを生成することによって、このグルコースから、細菌生息層4に生息する脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0077】
また容器21の開放端部222には、独立空隙の発泡スチロールから成る蓋体220を装着することができる。蓋体220を開放端部222に装着する場合、開放端部222を介して外気が出入することが防がれ、嫌気性である脱窒細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。また蓋体220を開放端部222に装着しない場合、開放端部222を介して外気が出入りすることができ、好気性環境下を好むキチン分解細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。本実施の形態では、開放端部222に蓋体220を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0078】
周壁205の一部である容器221の一側部には、この一側部を挿通して供給管路207が接続されている。供給管路207は、給水管路52の養殖用水槽1側に接続され、容器221内において、第4細菌生息層204dおよび第5有機炭素源供給層203eで開口している。また、供給管路207が接続される一側部と反対側の他側部には、この他側部を挿通して排出管路208が接続されている。排出管路208は、給水管路52の気−液熱交換器5側に接続され、容器221内において、第1細菌生息層204aで開口している。
【0079】
図8は、有機炭素源供給層203に設けられる有機炭素源供給体226を示す斜視図である。図8には、一部を切り欠いて内部構造を示す。有機炭素源供給体226は、袋体227に、混合粉粒体228が収納されて構成される。袋体227は、不織布によって形成されている。具体的には、袋体227は、1枚の不織布から成るシートが折畳まれて、周縁部がヒートシーラによって溶着されて形成されてもよいし、2枚の不織布から成るシートが積重されて、周縁部がヒートシーラによって溶着されて形成されてもよい。本実施の形態では、1枚のシートによって形成される袋体227が用いられている。
【0080】
混合粉粒体228は、キチンの粉末、炭酸塩鉱物の粉末および細砂を混合した粉粒体である。キチンの粉末は、粒径が、たとえば2mm以下の粉末である。炭酸塩鉱物の粉末は、粒径が、たとえば2mm以下の粉末である。細砂は、粒径が、たとえば1mm以上3mm以下程度の砂である。混合粉粒体228における体積混合比は、たとえば、キチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂=2:4:4、またはキチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂=1:4:5である。
【0081】
有機炭素源供給体226は、袋体227に混合粉粒体228が収容された状態で、厚さが、たとえば2cm程度に成るように構成されている。このような有機炭素源供給体226を設けることによって、有機炭素源供給層203に、キチン、炭酸塩鉱物および細砂を設けることができる。
【0082】
図9は、細菌生息層204に設けられる担体225の一例を示す斜視図である。図9には、線状体230の厚みを省略して示す。この例では、担体225は、たとえば塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などの合成樹脂製の複数の線状体230が、湾曲されてスプリング状にカール加工された状態で、互いに近接配置される箇所において、接着または溶着によって結合されて構成される。このようにして担体225は、各線状体230間に、連続して連なる複数の空隙231を有する多孔質に形成される。このような担体225として、たとえばサランロック(登録商標)などを用いることができる。この線状体230を用いて構成される担体225は、厚さが、たとえば4cm程度となるように形成される。
【0083】
図10は、細菌生息層204に設けられる担体225の他の例を示す断面図である。この例では、担体225は、連続空隙の発泡合成樹脂、たとえば発泡ウレタンから成る。この担体225もまた、図9に示す担体225と同様に、連続して連なる複数の空隙232を有する多孔質に形成される。この発泡合成樹脂を用いて構成される担体225は、厚さが、たとえば3cm程度となるように形成される。
【0084】
各細菌生息層204には、このような多孔質の担体225が設けられる。すべての細菌生息層204に、図9に示す担体225が設けられてもよいし、すべての細菌生息層204に、図10に示す担体225が設けられてもよいし、図9に示す担体225と図10に示す担体225とを組合わせて用いてもよい。本実施の形態では、第1、第2および第4細菌生息層204a,204b,204dには、図9に示す担体225が設けられ、第3細菌生息層204cには、図10に示す担体225が設けられる。
【0085】
このような脱窒装置20によれば、容器221内に生息させる脱窒細菌の働きによって、水202中の硝酸が窒素ガスに変化され、窒素ガスは、液体から放出される。このようにして脱窒装置20では、水202中に硝酸として存在する窒素を、脱窒細菌の働きによって除去することができる。具体的には、脱窒装置20では、水202は、供給管路207を介して供給され、容器221内に一時的に収容される状態で容器221内を流下し、排出管路208を介して排出される。脱窒装置20は、容器221内に水202が一時的に収容されているときに、その水202中の硝酸を脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる。窒素ガスは、たとえば水202が大気に開放される状態となる場所で、水202から放出される。
【0086】
脱窒細菌を利用して窒素を除去するにあたっては、脱窒細菌に有機炭素を与えることが必要であり、キチン、セルロースの多糖類から成る有機炭素源が用いられる。本実施の形態では、水202中にキチンが設けられる。キチンは、容器221内に生息させるキチン分解細菌の働きによって、脱窒細菌が利用可能な糖類、具体的にはグルコースに分解され、分解された糖類は、脱窒細菌に利用される。このようにしてキチンを設けることによって、脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。さらにキチンは、短期間で分解されてしまわずに、長期間かけて、たとえば数年かけて徐々に分解されるので、たとえばアルコール類およびブドウ糖を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、1回の有機炭素源の供給作業によって、脱窒細菌に、長期間にわたって有機炭素を与え続けることができる。したがって脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0087】
また容器221内に、複数の有機炭素源供給層203と、複数の細菌生息層204とが、交互に積層されている。各細菌生息層204に設けられる担体225は、連続空隙の多孔質材料から成り、内部まで液体が浸透可能であるとともに、大きな表面積を有している。これによって大きな表面積を有する担体225に、脱窒細菌が付着しやすくして、脱窒細菌を生息しやすくすることができる。また硝酸を含む水202と脱窒細菌との接触面積を大きくすることができる。このような細菌生息層204と、有機炭素源供給層203とを、交互に積層することによって、細菌生息層204と有機炭素源供給層203との接触面積を大きくすることができるとともに、細菌生息層204内のすべての位置における有機炭素源供給層203からの距離を小さくすることができる。これによって有機炭素源供給層203のキチンによって、細菌生息層204の脱窒細菌に有機炭素を与えやすくすることができ、かつ脱窒細菌に可及的に均一に有機炭素を与えることができる。したがって脱窒細菌の繁殖を促進し、脱窒細菌を利用した窒素の除去効率を高くすることができる。
【0088】
またキチンは、粉末の状態で設けられており、キチンと水202との接触面積を大きくすることができる。これによってキチンを、キチン分解細菌によって分解されやすくし、脱窒細菌に有機炭素を不足しないように与えることができる。
【0089】
また有機炭素源供給層203には、キチンの粉末に加えて、炭酸塩鉱物の粉末が設けられる。炭酸塩鉱物は、たとえばカルシウムなどのミネラル成分を含んでおり、液体にカルシウムなどのミネラル成分を溶解させることができる。したがって液体から窒素を除去することに加えて、ミネラル成分を与えることができる。このように液体から窒素を除去しながら、ミネラル成分を与えて、水202を改質することに役立つ。
【0090】
また有機炭素源供給層203には、キチンの粉末に加えて、細砂が設けられる。細砂には、キチンを分解するキチン分解細菌が付着しており、細砂に付着しているキチン分解細菌によってキチンを分解させることができる。このように細砂を一緒に設けるという簡単な構成で、容器221内にキチン分解細菌を生息させ、液体中でのキチンを分解して脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0091】
混合粉粒体228は、不織布から成る袋体227に収容されて、有機炭素源供給層203に設けられる。これによって混合粉粒体228が、水202の流下に伴う流体力および重力などによって、有機炭素源供給層203から流出すること、さらには脱窒装置20から流出することを防ぐことができる。また混合粉粒体228を有機炭素源供給層203に設ける場合、また逆に有機炭素源供給層203から除去する場合に、袋体227に収納されていない状態に比べて、搬送を容易にすることができる。また排水管路208が詰まる、排出管路208から排出された水202の供給先などにおいて、混合粉粒体228を除去しなければならないなどの問題が生じることがない。したがって混合粉粒体228の取扱いを容易にすることができるとともに、メンテナンス性を良好にすることができる。
【0092】
また脱窒装置20では、第1、第2および第4細菌生息層204a,204b,204dには、図9に示す担体225が設けられ、第3細菌生息層204cには、図10に示す担体225が設けられる。図9に示す担体225は、図10に示す担体225に比べて、空隙率が高く、かつ空隙の寸法が大きいので、通水性に優れている。このような通水性に優れた担体225を、供給管路207および排水管路208が開口する第1細菌生息層204aおよび第4細菌生息層204dに設けることによって、脱窒細菌の生息(繁殖)が可能な状態で、水202の流下を容易にし、容器221全体にわたって、水202の淀みを無くし、水202を流下させることができる。
【0093】
図10に示す担体225は、図9に示す担体225に比べて、表面積が大きいので、脱窒細菌を繁殖させやくすることができる。このような図10に示す担体225を、供給管路207および排水管路208が開口する第1細菌生息層204aおよび第4細菌生息層204eの間に配置される第3細菌生息層204cに設けることによって、水202の容器221内における流下経路の如何に拘わらず、脱窒細菌の繁殖度が高い第3細菌生息層204cを流体202が通過するので、水202中の硝酸を窒素ガスに確実に変化させることができる。
【0094】
このように、水温制御システムAが脱窒装置20を備えることで、魚介類が養殖される養殖用水槽1の水202は、脱窒装置20を経て気−液熱交換器5の供給され、温水となって養殖用水槽1に戻される。これによって水202中のアンモニアを除去することができる。養殖用水槽1で魚介類を養殖すると、魚介類の排泄物などによって、必然的に水202にアンモニアが発生し、水202が汚損されて養殖用水槽1における魚介類の養殖環境が悪化するが、前述のようにしてアンモニアを除去することによって、養殖用水槽1に良好な養殖環境を確保し、維持することができる。
【0095】
図11は、脱窒装置20の他の例を示す断面図である。図11では、図6に示した脱窒装置20と同様の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。本例の脱窒装置20では、脱窒細菌に与える有機炭素源である多糖類としてセルロースを用いる。
【0096】
本例の脱窒装置20は、容器221内に、水202が収容されるとともに、有機炭素源としてセルロースが設けられる有機炭素源供給層241と、その有機炭素源供給層241の下流で、炭酸塩鉱物および細砂が含まれる複数のミネラル供給層240と、連続空隙の多孔質材料からなる担体225が設けられる複数の細菌生息層204とが設けられる。
【0097】
ここで、1つの有機炭素源供給層241と、5つのミネラル供給層(以下、特定のミネラル供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を付した符号を用い、不特定のミネラル供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を付さない符号を用いる)240と、4つの細菌生息層(以下、特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付した符号を用い、不特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付さない符号を用いる)204とが設けられる。
【0098】
各ミネラル供給層240と各細菌生息層204とは、容器221の底部206から開放端部222に向かう方向へ、したがって上下方向へ交互に積層されている。具体的には、各ミネラル供給層240と各細菌生息層4とは、上方へ向かって、第1ミネラル供給層240a、第1細菌生息層204a、第2ミネラル供給層240b、第2細菌生息層204b、第3ミネラル供給層240c、第3細菌生息層204c、第4ミネラル供給層240d、第4細菌生息層204dの順に積層されている。また第4細菌生息層204dの上方に有機炭素源供給層241が積層され、さらに有機炭素源供給層241の上方に第5ミネラル供給層240eが積層されている。
【0099】
各ミネラル供給層240には、炭酸塩鉱物と、細砂とが設けられる。細砂には、セルロースを分解するセルロース分解細菌が付着されている。セルロース分解細菌は、好気性セルロース分解細菌としてPseudomonas属、Cellvibrio属およびCytopghaga属など、ならび
に嫌気性セルロース分解細菌としてClostridium属などに属するセルラーゼ生産菌などを
含み、これらの細菌を用いることができる。このセルロース分解細菌は、セルラーゼを生成してセルロースを加水分解することができる。セルラーゼ生産菌としては、
Pseudomonas属、Cellvibrio属、Cytopghaga属およびClostridium属などに属し、セルロース資化能を有する微生物であれば、どのようなものでもよく、特に制限はない。また好気性セルロース分解細菌および嫌気性セルロース分解細菌のどちらの細菌が用いられてもよい。細砂としては、セルロース分解細菌が自然に付着している砂を用いてもよいし、セルロース分解細菌を人工的に付着させた砂を用いてもよい。本実施の形態では、細砂として、たとえば海底から採取した砂、いわゆる海砂が用いられる。海底から採取した砂には、セルロース分解細菌が自然に付着している。
【0100】
有機炭素源供給層241のセルロースは、このように細砂に付着された状態でミネラル供給層240に生息させられるセルロース分解細菌を利用して、グルコースに分解される。このようにセルロースを分解してグルコースを生成することによって、このグルコースから、細菌生息層4に生息する脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0101】
また容器221の開放端部222には、独立空隙の発泡スチロールから成る蓋体220を装着することができる。蓋体220を開放端部222に装着する場合、開放端部222を介して外気が出入することが防がれ、嫌気性である脱窒細菌および嫌気性セルロース分解細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。また蓋体220を開放端部222に装着しない場合、開放端部222を介して外気が出入りすることができ、好気性環境下を好むセルロース分解細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。したがって蓋体220を装着しない場合において、有機炭素源供給層241を外気が出入りしやすい場所、具体的には第4細菌生息層204dの上方に配置することによって、好気性セルロース分解細菌によって、セルロースを脱窒細菌が利用可能な糖類、具体的にはグルコースに分解することができる。また分解された糖類は、脱窒細菌に利用される。このようにしてセルロースを設けることによって、脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0102】
周壁205の一部である容器221の一側部には、この一側部を挿通して供給管路207が接続されている。供給管路207は、容器221内において、第4細菌生息層204d、有機炭素源供給層241および第5ミネラル供給層240eで開口している。また供給管路207が接続される一側部と反対側の他側部には、この他側部を挿通して排出管路208が接続されている。排出管路208は、容器221内において、第1細菌生息層204aで開口している。
【0103】
このような脱窒装置20によれば、容器221内に生息させる脱窒細菌の働きによって、水202中の硝酸が窒素ガスに変化され、窒素ガスは、液体から放出される。
【0104】
脱窒細菌を利用して窒素を除去するにあたっては、脱窒細菌に有機炭素を与えることが必要であり、水202中にセルロースが設けられる。セルロースは、容器221内に生息させるセルロース分解細菌の働きによって、脱窒細菌が利用可能な糖類、具体的にはグルコースに分解され、分解された糖類は、脱窒細菌に利用される。このようにしてセルロースを設けることによって、脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。さらにセルロースは、短期間で分解されてしまわずに、長期間かけて、たとえば数年かけて徐々に分解されるので、たとえばアルコール類およびブドウ糖を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、1回の有機炭素源の供給作業によって、脱窒細菌に、長期間にわたって有機炭素を与え続けることができる。したがって脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0105】
セルロースは、ろ紙および和紙などのセルロース繊維から成るシートを複数枚重ねて設けられる。またシートに代えて脱脂綿などのセルロース繊維塊として設けるようにしてもよい。したがってセルロース繊維から成るシートまたはセルロース繊維塊の状態で第4細菌生息層204dの上方に設けられるので、セルロースと水202との接触面積を大きくすることができる。これによってセルロースを、水202中のセルロース分解細菌によって分解されやすくし、脱窒細菌に有機炭素を不足しないように与えることができる。またセルロース繊維から成るシートおよび脱脂綿などのセルロース繊維塊で設けられたセルロースは、外観上、目で認識することができるので、セルロースが枯渇してしまう前に新たに供給することができ、効率的に脱窒細菌に有機炭素を与え続けることができる。
【0106】
またミネラル供給層241には、細砂が設けられる。細砂には、セルロースを分解するセルロース分解細菌が付着しており、細砂に付着しているセルロース分解細菌によってセルロースを分解させることができる。このように細砂を一緒に投入するという簡単な構成で、容器221内にセルロース分解細菌を生息させ、液体中でのセルロースを分解して脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0107】
以上のように脱窒装置20について説明したが、これは例示に過ぎず、構成を変更することができる。たとえば脱窒細菌の有機炭素源の材料である多糖類として、キチンとセルロースとの両方を一緒に用いてもよい。また多糖類としてセルロースを用いた場合、セルロースは、セルロース繊維から成るシートとして用けなくてもよく、粉末または脱脂綿のような繊維塊の状態で設けてもよい。この場合、袋体227に収納させて設けてもよい。さらに有機炭素源供給層241を、各細菌生息層204の上方に積層してもよい。
【0108】
以上のように、養殖用水槽1には、適正な温度とされ、かつ、浄化された熱交換温水が常時供給され、循環されるから、養殖用水槽1内の水は、常に適正な温度で、かつ、清浄に保たれ、しかも、マイクロバブルの作用によって溶存酸素量が多く、魚介類の生育に適した状態に維持される。そして、自動給餌装置12から適宜餌が養殖用水槽1内に撒餌され、極めて省エネルギー的、かつ、効率的に魚介類の養殖を行うことができる。養殖用水槽1には、気−液熱交換器5から、給気管路43を経て暖気が直接供給されるように成されており、給気管路43から供給される暖気によっても、養殖用水槽1内の水の温度の低下が抑えられる。また、暖気の直接的供給によって、養殖用水槽1内の水の溶存酸素量を増やすことができる。養殖用水槽1内の水中には温度センサ10が投入されており、前記コントローラ101は、この温度センサ10の検出温度に基づき、前記補助加熱手段8,9を制御し、養殖用水槽1内の水温を、夏場あるいは冬場等の環境変化に応じて適正に維持させることができる。
【0109】
なお、補助加熱手段8,9や、自動給餌装置12は、実施形態のものに限定されるものではない。また、養殖用水槽1内の水は、気−液熱交換器5内に設置されたマイクロバブル発生器6による暖気の噴出作用によって、給水管路52および還流管53を介して、気−液熱交換器5との間で循環するが、給水管路52および還流管53に循環を促進させるためのポンプを配置しても良い。さらに、養殖用水槽1には、図示を省略したが、水の補給手段が設けられるべきことは言うまでもない。
【0110】
図12は、本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態では、空気用熱交換器4だけでなく、養殖水用熱交換器4aを設け、太陽熱温水装置2の集熱パイプ21からの太陽熱によって昇温されたたとえば70〜80℃の高温の温水が、温水循環路3の管路3aから管路3dを経て養殖水用熱交換器4aの間接熱交換する蛇管41aに供給され、さらに管路3eを経て温水循環路3から貯温タンク33に導かれ、循環ポンプ31によって温水が循環される。管路3aからの温水はまた、前述の実施の形態と同様に管路3bから空気用熱交換器4の蛇管41に供給され、外気である空気が間接熱交換され、管路3cから温水が温水循環路3に合流して貯温タンク33に導かれる。管路3d,3bには、第1および第2の電磁開閉弁V1,V2がそれぞれ介在される。
【0111】
マイクロバブル発生手段6aは、気−液熱交換器5とマイクロバブル発生器6とを含む。マイクロバブル発生手段6aの気−液熱交換器5であるハウジング容器50からの養殖水は、管路53aからポンプ31aによって圧送され、養殖水用熱交換器4aに供給され、蛇管41a内を通る温水と向流間接熱交換される。この養殖水用熱交換器4aで加熱された養殖水は、管路53から養殖用水槽1に供給される。養殖水は、この水槽1から管路52を経て脱窒装置20、水浄化手段11,10をこの順序で経て、容器50に戻って循環される。管路52には、水槽1からの養殖水の温度を検出する温度検出手段401が設けられる。
【0112】
図13は、図12に示される実施の形態の電気的構成を示すブロック図である。温度検出手段401からの養殖水の検出温度Tを表わす信号は、マイクロコンピュータによって実現される処理回路402に与えられる。処理回路402には、メモリ403が接続される。処理回路402は、第1および第2開閉弁V1,V2をオンして開き、オフして閉じる。
【0113】
図14〜図16は、処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。処理回路402は、電源投入によって、図14のステップs1からステップs2に移り、温度検出手段401によって検出された養殖水の温度Tを表わす信号を受信する。
【0114】
図17は、図12〜図16に示される実施の形態を説明するための動作を示す図である。図17(1)は、温度検出手段401によって検出される養殖水の検出温度Tを示す。図17(2)は、たとえば冬などの環境が低温であるときにおける第1開閉弁V1の開閉動作を示す図であり、図17(3)はその図17(2)の第1動作モードにおける第2開閉弁V2の動作を説明するための図である。図17(4)は夏などの環境温度が高温であるときにおける第2動作モードにおける第1開閉弁V1の動作を説明するための図であり、図17(5)は図17(4)の第2動作モードにおける第2開閉弁V2の動作を説明するための図である。
【0115】
再び図14を参照して、ステップs3では、処理回路402は検出温度Tが予め定める温度T2未満であるかどうかを判断し、そうであればステップs4に移り、処理回路402に備えられるタイマの限定時間W1を計時動作を図17の時刻t1から開始する。このタイマが計時動作を開始する時刻t1における検出温度Tの値T(0)をステップs5で検出し、次のステップs6では、第1および第2開閉弁V1,V2を開く。これによって熱交換器4,4aでは空気と養殖水との加熱が行われる。限定時間W1は、たとえば30分であってもよい。
【0116】
ステップs7でタイマの限定時間W1が経過したことが判断されると、ステップs8では、その時刻t2の検出温度T(W1)が検出される。
【0117】
ステップs3で電源投入時の検出温度Tが設定温度T2以上であれば、ステップs9ではエラーと判断し、ステップs10で一連の動作を終了する。予め定める温度T2は、たとえば25℃であってもよく、それよりも低い温度T1は、たとえば23℃であってもよい(T1<T2)。電源投入時では、水槽1内の養殖水は、たとえば冬または夏の環境に依存し、温度Tsを有する。この温度Tsは、たとえば3℃〜8℃であってもよいが18〜20℃であってもよい。
【0118】
図15を参照して、前述の図14のステップs8からステップs11に移り、検出温度Tの温度上昇の時間変化率αを演算する。
α = {T(W1)−T(0)}/W1 …(1)
【0119】
ステップs12では、前述の式1で得られた時間変化率αが、予め定める値α1未満であるかどうかを判断し、そうであれば、冬などの図17(1)の実線のとおりであり、ステップs13において第1の場合の条件であるものと判断して、メモリ403にストアし、第1条件、すなわちα<α1に対応する第1動作モードを、ステップs14で実行する。第1動作モードは、第1および第2開閉弁V1,V2がいずれもオン/オフして開閉する動作である。
【0120】
ステップs12において、演算して求められた時間変化率αが、予め定める値α1以上であれば(α1≦α)、夏などの図17(1)の仮想線のとおりであり、ステップs15で第2の場合の条件であるものと判断して、メモリ403にストアする。この第2条件では、第2動作モードとして、第1開閉弁V1をオフして閉じ、第2開閉弁V2をオン/オフして開閉する。これらの図14〜図15におけるステップs2〜s15の動作は、図17の時刻t1〜t2の直後で行われる。
【0121】
図16を参照して、前述の図15のステップs14からステップs17に移り、第1および第2開閉弁V1,V2が開いていることによって、温度検出手段401によって検出される温度Tが、予め定める温度T2以上に上昇したかどうか(T2≦T)が判断され、そうであればステップs18に移り、第1および第2開閉弁V1,V2をいずれも閉じる。これによって水槽1の水の温度が、熱放散によって低下し始める。
【0122】
ステップs19において、検出温度Tが下降して予め定める温度T1未満であるかどうかが判断され、そうであればステップs20では、メモリ403に第1または第2条件が前述のステップs13またはs15でストアされているかどうかが判断される。第1条件が設定されていれば、ステップs21において第1動作モードである第1および第2開閉弁V1,V2がいずれも開かれて、冬の環境温度が低い条件下で、養殖水の加熱昇温が行われる。このように第1動作モードにおいて養殖水の温度が予め定める温度T2に到達すると、図17の時刻t3ではステップs18が実行され、その後、予め定める温度T1に低下すると、時刻t4でステップs21が実行されることになる。
【0123】
ステップs20において、メモリ403に第1条件がストアされておらず、次のステップs22では、第2条件がストアされているものと判断されれば、次のステップs23において第2動作モードが実行されることになり、第1開閉弁V1が閉じられたままとなり、第2開閉弁V2が開かれ、こうして夏の環境温度が高い条件下でマイクロバブルによる温度の上昇が行われることになる。このように第2動作モードで養殖水の検出温度Tがステップs17で予め定める温度T2に到達する時刻t11では、ステップs18の動作が行われ、その後、温度が低下して予め定める温度T1に下降する時刻t2では、ステップs23の動作が行われることになる。
【0124】
ステップs21,s23の実行の後、再びステップs17に戻り、このような動作が繰返される。ステップs22において、第1および第2条件下ではないとき、前述の図14のステップs9に移り、エラー処理となる。
【0125】
図12〜図17の実施の形態では、2つの熱交換器4,4aによって太陽熱温水装置2からの温水の熱が、マイクロバブルのための空気も用いて養殖水を昇温することになり、太陽熱を効率よく利用することができるとともに、冬などでは第1動作モードによってこれら2つの熱交換器4,4aによって養殖水を短時間で加熱し、養殖水の温度を予め定める温度T1,T2でほぼ一定に安定に保つことが容易である。また夏の環境温度が高い条件下では第2動作モードとし、養殖水を熱交換器4aを休止しておき、空気を熱交換器4のみを運転し、養殖水1の温度を、前述のように予め定める温度T1,T2でほぼ一定に安定に保つことができ、この場合、太陽熱温水装置2からの温水の熱は、他の用途にも利用することができる。
【0126】
第1および第2開閉弁V1,V2が閉じているとき、ポンプ31は休止されていてもよいが、運転され続けて、温水を他の用途に利用することができるようにしてもよい。
【0127】
図18は、本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。この実施の形態は前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態では、前述の図12における空気用熱交換器4と第2開閉弁V2とが省略され、吸入ファン71からの空気は、管路42,43に供給される。この実施の形態でもまた、養殖水用熱交換器4aでは、温水と養殖水との水総合管で向流間接熱交換が行われ、熱効率が図1〜図11の実施の形態に比べて向上される。
【0128】
図18に示される実施の形態における電気的構成は、前述の図13に示される実施の形態と同様であり、第2開閉弁V2は用いられない。図12〜図18では、空気は第3開閉弁V3によって選択的に管路43に供給される。
【0129】
図19は図18の実施の形態における処理回路402の動作を説明するためのフローチャートであり、図20は図18および図19に示される実施の形態における動作を説明するための図である。
【0130】
処理回路402の電源が投入され、ステップr1からステップr2に移ると、温度検出手段401は、養殖水の温度Tを検出し、その検出温度Tが予め定める温度T2未満であれば、次のステップr4に移り開閉弁V1を開く。これによって常時動作しているポンプ31aによる養殖水が養殖水用熱交換器4aで昇温され、水槽1の養殖水の温度Tが上昇する。
【0131】
図20(1)は温度検出手段401によって検出される養殖水の温度を示す図であり、図20は開閉弁V1の動作を説明するための図である。時刻t21において前述のステップr4で開閉弁V1が開かれ、これによって養殖水の温度Tが上昇していく。
【0132】
ステップr5で検出温度Tが予め定める温度T2にまで上昇すると(T2≦T)、次のステップr6では、時刻t22において開閉弁V1を閉じる。これによって養殖水の温度Tが、熱放散によって下降していく。ステップr7において、予め定める温度T1にまで下降すると(T<T1)、時刻t23においてステップr8では開閉弁V1をオンにし、養殖水の温度が再び上昇し、ステップr5に戻り、時刻t24でT2に達する。こうしてステップr5〜ステップr8の動作が繰返される。
【0133】
ステップr3で、検出温度Tが予め定める温度T2以上であれば、ステップr10でエラー処理とし、ステップr10で一連の動作を終了する。
【0134】
図21は、本発明の実施のさらに他の形態の一部の系統図である。この実施の形態は、図1〜図20に示される前述のマイクロバブル発生手段6aに代えて、本発明の他の考え方によるマイクロバブル発生手段6b付近の構成を示す。水槽1の養殖水には、養殖水を吸引して上昇するサクションポンプ411が設けられる。このポンプ411からの養殖水は、管路412から空気混入部413に圧送される。空気混入部413には、空気用熱交換器4で昇温された空気が管路42から圧送される。空気混入部413は、養殖水に空気が混入された状態で、気液混合流体となって管路414からマイクロバブル発生手段6bのマイクロバブル発生器6cに圧送される。マイクロバブル発生器6cは、養殖水が貯留されている容器50内に浸漬される。空気混入部413は、たとえばケーシング内に管路42のノズルから噴射される空気によって、ポンプ411からの養殖水が負圧吸引されるエジェクタまたはインジェクタなどの構成によって実現されてもよい。
【0135】
図22は、マイクロバブル発生器6cの構造を示す断面図である。このマイクロバブル発生器6cは、回転対称に形成された回転対称軸416の図22における左右双方に向かって縮径した左右対称な形状を有する中空部417を有するケーシング418を有する。このケーシング418の周壁部に接線方向に開口された気液混合流体の導入孔419が、回転対称軸416の図22における左右中央に設けられ、中空部417の回転対称軸416の方向にはマイクロバブル噴出孔421,422が開口し、中空部417の縮径部分に形成されている。導入孔419からケーシング418内に流入した気液混合流体の旋回流423,424による負圧軸416の位置に合わせて一致してマイクロバブル噴出孔421,422が形成される。導入孔419からの気液混合流体の液体には遠心力が働き、気体には向心力が働き、中心軸416に負圧軸が形成され、マイクロバブル噴出孔421,422付近の液体には、外部の液体がこれらのマイクロバブル噴出孔421,422内に進入しようとする力が働き、負圧軸416に集まった気体は、旋回している気液混合流体と負圧液とによって形成された圧縮気体となって通過し、多量のマイクロバブルを含む液体となってマイクロバブル噴出孔421,422から容器50内の液体内に噴出され、マイクロバブルが多量に発生された液体となる。
【0136】
図23は、図21および図22に示される前述の実施の形態の全体の構成を示す系統図である。この図21〜図23の実施の形態は、前述の図12〜図17の実施の形態に類似し、空気用熱交換器4と養殖水用熱交換器4aとが設けられ、マイクロバブル発生手段6dのマイクロバブル発生器6cのために、前述の空気混入部413とそれに関連するサクションポンプ411などが設けられる。その他の構成と動作は、前述の図12〜図17の実施の形態と同様である。
【0137】
本発明においてマイクロバブルは、直径が50μm以下の微細気泡であってもよいが、さらに小さいナノバブルであってもよく、このナノバブルは、直径100〜200nmである。本発明の実施の他の形態では、マイクロバブルよりも径が大きい気泡を含む流体がマイクロバブル発生手段6,6a,6b,6c,6dから発生されるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の一形態の養殖用水槽1の水温制御システムAを示す概念的構成図である。
【図2】外気の導入管72における外気取入口73付近を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。
【図3】給水管路52における第2の水浄化手段11が設置された部分を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。
【図4】図3における切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】自動給餌装置12を拡大して概念的に示す縦断正面図である。
【図6】水温制御システムAの備えられる脱窒装置20を示す断面図である。
【図7】脱窒装置20を示す斜視図である。
【図8】有機炭素源供給層203に設けられる有機炭素源供給体226を示す斜視図である。
【図9】細菌生息層204に設けられる担体225の一例を示す斜視図である。
【図10】細菌生息層204に設けられる担体225の他の例を示す断面図である。
【図11】脱窒装置20の他の例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。
【図13】図12に示される実施の形態の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】図12〜図16に示される実施の形態を説明するための動作を示す図である。
【図18】本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。
【図19】図18の実施の形態における処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図20】図18および図19に示される実施の形態における動作を説明するための図である。
【0139】
【図21】本発明の実施のさらに他の形態の一部の系統図である。
【図22】マイクロバブル発生器6cの構造を示す断面図である。
【図23】図21および図22に示される実施の形態の全体の構成を示す系統図である。
【符号の説明】
【0140】
1 養殖用水槽
2 太陽熱温水装置
3 温水循環路
4 液−気熱交換器
4a 養殖水用熱交換器
5 気−液熱交換器
6 マイクロバブル発生器
6a,6b マイクロバブル発生手段
7 外気の導入部
8 補助加熱手段
9 補助加熱手段
10 水浄化手段
11 水浄化手段
12 自動給餌装置
13 風力発電手段
14 太陽光発電手段
20 脱窒装置
43 給気管路
51 オーバーフロー排出口
52 給水管路
73 外気の取入口
A 養殖用水槽の水温制御システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の養殖用大型水槽内の水温を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
たい、まぐろ、はまち、さば、いか、貝およびかになどの魚介類を水槽内で養殖する場合、水槽内の水温の調整が、良質の魚介類を得る上で重要となる。また、水槽内では多くの魚介類が養殖されるため、その糞や残った餌が溜り、これによって様々な細菌も繁殖して水質が悪化する。そのため、水質の維持も良質の魚介類を得る上で重要となる。このような水温の調整や水質の維持のための装置は大変大掛かりであり、養殖業者にとっては、その設置のために大きなコスト的負担を強いられていた。
【0003】
ところで、太陽熱を熱源とする太陽熱温水装置が、省エネルギーの観点から注目され、一般家屋でも使用されていたが、最近では太陽光発電装置にとって代わられ、有効利用されていない場合がある。また、近年特許文献1に示されるように、直径3μm程度の微細気泡(マイクロバブル)を発生させる装置が開発され、養殖池や養殖場に応用して溶存酸素量を増加させる試みもなされるようになった。さらに、特許文献2に示されるように、風力発電装置や、太陽光発電装置で得た電力を駆動源として作動する給餌装置を魚介類の養殖場に設置し、自然エネルギーによって自動的に給餌し、省資源的に魚介類の養殖を行うことも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3682286号公報
【特許文献2】特許第3766414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給湯システムとして考えた場合に、太陽熱温水装置は、十分な性能を有しており、有効利用することが好ましい。設備としてこのまま放置することは極めて無駄である。また、養殖用水槽で魚介類の養殖をする場合には、水槽内の水温調整や水質維持が重要で、その為に大掛かりな設備を設置する必要がある。特許文献1及び特許文献2では、海や湖沼等を魚網で区画した養殖場での適用例が示されているが、このような養殖場の場合、自然状態の海や湖沼の一部に存在することになるため、水温や水質を制御する必要がない。仮に、この自然環境が魚介類にとって適切でなくなったとしても、これを制御することは極めて困難である。特に、細菌による汚染は、防ぐことが難しく、細菌で汚染された魚介類が市場に出回ると、消費者は多大な不利益を被ることになる。特許文献1や特許文献2が対象とする養殖場においては、養殖用水槽における水温や水質を制御する技術思想は導出されるものではない。
【0006】
本発明の目的は、太陽熱温水装置の有効利用を図ると共に、マイクロバブルの特筆される特性を利用して、養殖用水槽の水温調整を極めて効率的に行い、同時に水質維持も的確に成し得る養殖用水槽の水温制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る養殖用水槽の水温制御システムは、
魚介類等の養殖用水槽における水温の制御システムであって、
太陽熱温水装置と、
前記太陽熱温水装置で生成される温水を循環させる温水循環路と、
前記温水循環路の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器と、
前記液−気熱交換器により生成された暖気を導入して前記養殖用水槽から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を前記養殖用水槽へ還流する気−液熱交換器とを含み、
前記気−液熱交換器内には、マイクロバブル発生器が設置され、前記暖気は、前記マイクロバブル発生器によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽から供給される水と接触するよう構成されていることを特徴とする養殖用水槽の水温制御システムである。
【0008】
本発明に従えば、太陽熱温水装置によって省エネルギー的に温水が生成される。生成された温水の熱は、液−気熱交換器において、導入される外気に伝熱されて熱交換される。液−気熱交換器において生成された暖気は、気−液熱交換器に導入され、前記養殖用水槽から供給される水と接触し、養殖用水槽からの水は暖気から伝熱され温水として養殖用水槽に循環される。このとき、前記暖気は、前記気−液熱交換器内に設置されたマイクロバブル発生器によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽から供給される水と接触するように成されているから、水への熱交換が効率的に成される。すなわち、マイクロバブルの表面積は極めて大であり、かつ、水中での浮上速度が遅いから、水との接触面積が大きく、かつ、接触時間が長くなり、これによって暖気から水への熱交換が極めて効率的になされる。熱交換温水は、養殖用水槽に還流されるから、水槽内の水温がこれによって調整される。また、マイクロバブルの発生によって、水中への酸素の溶解が促進され、溶存酸素量が多くなる。さらに、マイクロバブルは、表面積が大であることにより付着力が強く、水中に浮遊する魚介類の糞、餌の残り等のゴミや雑菌を付着してそのまま浮上し、熱交換温水は、溶存酸素量が多く浄化もされた状態で養殖用水槽に還流されることになる。したがって、養殖用水槽には浄化水が逐次還流されて養殖用水槽内の水が浄化される。また、溶存酸素量が多い水が還流されることにより、魚介類の成育性も向上する。
【0009】
なお、ここに用いられるマイクロバブル発生器としては、たとえば、特許文献1に示されたマイクロバブル発生器が好ましく採用される。
【0010】
また本発明は、前記気−液熱交換器の上部に、オーバーフロー排出口が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、ゴミや雑菌を付着して浮上したマイクロバブルは、オーバーフロー排出口からオーバーフロー水と共に排出されるから、浮上したゴミや雑菌等が再び水中に沈降することがなく、養殖用水槽へはゴミや雑菌等を含まない浄化された熱交換温水が的確に還流される。
【0012】
また本発明は、前記液−気熱交換器から、前記養殖用水槽に直接暖気を供給する給気管路を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、液−気熱交換器から暖気が直接養殖用水槽に供給されるから、これによって養殖用水槽の温度調整機能が補完される。また、養殖用水槽に供給された暖気は気泡となって浮上するから、これによって気液攪拌作用も得られ、養殖用水槽内の水の溶存酸素量が増加する。
【0014】
また本発明は、前記養殖用水槽から前記気−液熱交換器への給水管路に、水浄化手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、養殖用水槽からの水が水浄化手段を経て気−液熱交換器に供給されるから、気−液熱交換器での浄化作用がより効果的に成される。
【0016】
この場合、前記水浄化手段が、フィルターからなるものであっても良い。フィルターを通過させることによって、ゴミ等が除去される。
【0017】
また、前記水浄化手段が、紫外線殺菌灯からなるものであっても良い。このような紫外線殺菌灯を採用することによって、フィルターを通過するような雑菌であっても、これによって死滅させることができる。雑菌の死骸は気−液熱交換器でマイクロバブルに付着して浮上するので、これが、養殖用水槽に還流することがない。
【0018】
さらに、前記水浄化手段が、光触媒を担持させた担持体と、前記担持体に向け紫外線を照射するよう設置された紫外線灯とからなるものであっても良い。このような光触媒と紫外線灯との組合せによって構成した場合、殺菌作用がより顕著となり、雑菌の死骸は同様に液−気熱交換器でマイクロバブルに付着して浮上するので、養殖用水槽内の水の浄化度は一層高くなる。
【0019】
また本発明は、前記液−気熱交換器への外気の導入部に、補助加熱手段により加熱された外気を導入するための導入管が接続されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、前記液−気熱交換器への外気の導入部から、補助加熱手段により加熱された外気が導入されるから、太陽熱温水装置による温水が充分な熱を保有しない場合でも、補助加熱手段により加熱された暖気によって温水の保有する不足熱が補完される。特に、太陽熱温水装置は夜間や、天候が悪いときには、その機能が低下するが、このような場合でもその機能が補完され、養殖用水槽内の水温調整機能が維持される。
【0021】
前記補助加熱手段が、前記導入管の外気取入口に設置される太陽熱の集熱および放熱手段からなるものとしても良い。
【0022】
このように、太陽熱の集熱および放熱手段を補助加熱手段とすれば、省エネルギー的に前記補完機能が得られる。また、導入管の外気取入口に補助加熱手段が設置されていることにより、外気取入口付近で暖められた外気は気流によって液−気熱交換器に効率よく導入される。
【0023】
また、前記補助加熱手段が、前記導入管内に設置され、少なくとも前記導入管の外気取入口に設置される風力発電手段または太陽光発電手段によって得た電力を電源として発光する赤外線灯からなるものとしても良い。
【0024】
この場合、導入管内を通過する外気は、赤外線灯によって暖められて液−気熱交換器に導入される。前記太陽熱の集熱および放熱手段と併用すれば、この暖気化がより効果的に成される。しかも、この赤外線灯は、少なくとも前記導入管の外気取入口に設置される風力発電手段または太陽光発電手段によって得た電力を電源とするものであるから、省エネルギー的である。そして、このような発電手段によって得た電力を蓄電池に蓄電するようにすれば、前記太陽熱温水装置が夜間等において機能が低下しても、前記水温調整機能が維持される。
【0025】
また本発明は、前記養殖用水槽の上に、風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を駆動源として作動する自動給餌装置が設置されていることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、養殖用水槽の上に自動給餌装置が設置されているので、魚介類の養殖に係る労力が大幅に軽減される。しかも、この自動給餌装置は、風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を駆動源として作動するから、省エネルギー的で、ランニングコストも抑えることができる。
【0027】
また本発明は、前記脱窒装置は、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれる複数の有機炭素源供給層と、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する複数の細菌生息層とが、交互に積層され、
各有機炭素源供給層は、
多糖類が、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記脱窒装置は、
(a)上方に開放した直方体形状の容器221と、
(b)積層体であって、
容器221の底部206から上方に向かって、交互に積層される複数の有機炭素源供給層203a〜203eと、複数の細菌生息層204a〜204dとを有し、
これらの積層された有機炭素源供給層203a〜203eと細菌生息層204a〜204dとのうち、最下層と最上層とは、有機炭素源供給層203a,203eであり、
各有機炭素源供給層203a〜203eは、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれ、この多糖類は、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させる炭素塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられ、
各細菌生息層204a〜204dは、
連続空隙の多孔質材料から成る担体225の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有し、
前記最下層である有機炭素源供給層203aの上に設けられた最下の細菌生息層204aと、前記最上層である有機炭素源供給層203eの下に設けられた最上の細菌生息層204dとの第1の前記担体(225、図9)の空隙率は、残余の細菌生息層204cの第2の前記担体(225、図10)の空隙率よりも高く、かつ、
第1の前記担体(225、図9)に比べて、第2の前記担体(225、図10)のほうが表面積が大きい積層体と、
(c)容器221の一側部に設けられ、前記最上層である有機炭素源供給層203eと、前記最上の細菌生息層204dとに開口し、脱窒されるべき硝酸を含む液体を供給する供給管路207と、
(d)容器221の前記一側部と反対側の他側部に設けられ、前記最下の細菌生息層204aに開口し、積層体を収容した容器221内を流下した液体を排出する排出管路208とを含むことを特徴とする。
【0029】
また本発明は、有機炭素源供給層における体積混合比は、
キチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂
=1〜2:4:4〜5
であることを特徴とする。
【0030】
また本発明は、前記脱窒装置は、
硝酸を含む液体中の前記硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる脱窒装置において、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源であるセルロースが含まれる有機炭素源供給層を備え、
有機炭素源供給層の下流に、複数のミネラル供給層と複数の細菌生息層とが、交互に積層されて配置され、
各ミネラル供給層は、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、セルロースをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とを有し、
各細菌生息層は、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有することを特徴とする。
【0031】
また本発明は、魚介類等の養殖用水槽1における水温の制御システムであって、
太陽熱によって水を加熱する太陽熱温水装置2と、
太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3,3a,3d,3eと、
温水循環路3,3a,3d,3eの途中に配設され、前記温水と養殖用水槽1のための水とを間接熱交換する養殖水用熱交換器4aと、
空気と養殖用水槽1からの水とによってマイクロバブルを発生するマイクロバブル発生手段6aと、
マイクロバブル発生手段6aからのマイクロバブルが発生された水を養殖水用熱交換器4aに導き、この養殖水用熱交換器4aからの前記温水によって加熱された水を養殖用水槽1に供給し、養殖用水槽1からの水をマイクロバブル発生手段6aに導いて、養殖用水槽1の水を循環する給水管路52,53a,53とを含むことを特徴とする養殖用水槽の水温制御システムである。
【0032】
また本発明は、温水循環路3,3a〜3eの途中に配設され、前記温水によって外気である空気を加熱して熱交換する空気用熱交換器4をさらに含み、
マイクロバブル発生手段6aは、空気用熱交換器4から供給される加熱された空気によってマイクロバブルを発生することを特徴とする。
【0033】
また本発明は、養殖用水槽1の水の温度を検出する手段401と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から養殖水用熱交換器4aに流れる温水の流路を開閉する第1開閉弁V1と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から空気用熱交換器4に流れる温水の流路を開閉する第2開閉弁V2と、
制御手段402であって、
水温検出手段401からの出力に応答し、
第1および第2温度T1,T2が予め設定され(ただしT1<T2)、
検出された温度Tが第2温度T2未満であるとき、第1および第2開閉弁V1,V2を開き、
こうして第1および第2開閉弁V1,V2を開くことによって、検出された温度Tの温度上昇の時間変化率αを演算し、
その演算された温度上昇の時間変化率αが、予め定める値α1未満(α<α1)である第1の場合、第1および第2開閉弁V1,V2を開く第1動作モードとし、
前記演算された温度上昇の時間変化率αが予め定める値α1以上(α1≦α)である第2の場合、第1開閉弁V1を閉じ、第2開閉弁V2を開く第2動作モードとし、
その後、検出された温度Tが第2温度T2以上に上昇したとき、第1および第2開閉弁V1,V2を閉じ、
検出された温度Tが第1温度T1未満にまで下降したとき、前記第1の場合には第1動作モードとし、第2の場合には第2動作モードとする制御手段402とを含むことを特徴とする。
【0034】
また本発明は、養殖用水槽1からの水を供給するサクションポンプ411と、
サクションポンプ411からの水と、空気用熱交換器4からの加熱された空気とを混合して気液混合流体を導出する空気混入部413とをさらに含み、
空気混入部413からの気液混合流体を、マイクロバブル発生手段6bへ導いてマイクロバブルを発生させることを特徴とする。
【0035】
また本発明は、マイクロバブル発生手段6bは、ハウジング418を有し、
このハウジング418は、
回転対称に形成され、回転対称軸416の軸線方向の双方に向かって縮径した中空部417を有し、
このハウジング418の周壁部に、気液導入孔419が接線方向に開口され、
ハウジング418の中空部の縮径部分に回転対称軸416の双方向にマイクロバブル噴出孔421,422が開口し、
マイクロバブル噴出孔421,422が、ハウジング418内に流入した気液混合流体の旋回流によって形成される負圧軸の位置に一致して形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、太陽熱温水装置をその特性を活かして有効活用することができる。また、液−気熱交換器において太陽熱温水装置からの温水によって熱交換されて生成された暖気は、気−液熱交換器においてマイクロバブル化されて養殖用水槽から供給される水に接するから、マイクロバブルの特性によって水への熱交換が極めて効率的に成される。この熱交換温水は養殖用水槽に還流されるから、養殖用水槽内の水温を魚介類の成育に適するよう簡易に制御することができる。そして、気−液熱交換器での熱交換の際には、水中に含まれるゴミや雑菌がマイクロバブルに付着して浮上するから、気−液熱交換器からはこれらゴミや雑菌が除去され、かつ溶存酸素量の多い水が養殖用水槽に還流され、養殖用水槽内の水を清潔で魚介類の成育に適した性状に維持することができる。このように、本発明の優れた効果は、廃棄物としてその処置が憂慮されていた太陽熱温水装置を有効活用し、これにマイクロバブルの特筆される特性を応用することによって成し得たものであり、その実益は極めて大である。
【0037】
本発明によれば、液体中に多糖類を設けることによって、脱窒細菌に、長期間に渡って有機炭素を与え続けることができるので、アルコール類を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる。したがって液体から窒素を除去するための脱窒細菌に与える有機炭素源の供給作業の効率を向上することができる。
【0038】
本発明によれば、液体中に容易に入手可能なキチンを設けることによって、脱窒細菌に、長期間に渡って有機炭素を与え続けることができるので、前述したアルコール類を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる効果を達成する脱窒装置を容易に実現することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0039】
また本発明によれば、液体と脱窒細菌との接触面積を大きくすることができるとともに、有機炭素源供給層の多糖類によって、細菌生息層の脱窒細菌に有機炭素を与えやすくすることができ、かつ脱窒細菌に可及的に均一に有機炭素を与えることができる。したがって脱窒細菌の繁殖を促進し、脱窒細菌を利用した窒素の除去効率を高くすることができる。
【0040】
また本発明によれば、粉末の状態のキチンと液体との接触面積を大きくすることによって、キチンが分解されやすくし、脱窒細菌に有機炭素を不足しないように与えることができる。しかも粉末のキチンを用いても、キチンの粉末は、袋体に収納されて取扱いが容易であり、メンテナンス性を良好にすることができる。
【0041】
また本発明によれば、液体にカルシウムなどのミネラル成分を溶解させることができるので、液体から窒素を除去しながら、ミネラル成分を与えて、液体を改質することに役立つ。
【0042】
また本発明によれば、液体中に細砂を設けるという簡単な構成で、多糖類を分解して脱窒細菌に有機炭素を与える構成を実現することができる。
【0043】
また本発明によれば、液体中に容易に入手可能なセルロースを設けることによって、脱窒細菌に、長期間に渡って有機炭素を与え続けることができるので、前述したアルコール類を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる効果を達成する脱窒装置を容易に実現することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0044】
また本発明によれば、養殖用水が汚損されて養殖槽における魚介類の養殖環境が悪化するが、前述のようにしてアンモニアを除去することによって、養殖槽に良好な養殖環境を確保し、維持することができる。したがって優れた養殖環境の養殖設備を実現することができる。
【0045】
本発明によれば、図12〜図23に示されるように、マイクロバブル発生手段6a,6dによって得られた空気と養殖用水槽からの水とによって発生されたマイクロバブルを含む水を、太陽熱温水装置2からの温水を用いて養殖水用熱交換器4aで間接熱交換するので、熱交換効率が向上され、さらにこのマイクロバブル発生手段6a,6dに供給される外気である空気を、太陽熱温水装置2からの温水で空気用熱交換器4を用いて予め加熱しておくことによって、養殖水の温度を効率良く加熱することもできる。
【0046】
さらに本発明によれば、冬などには、養殖水用熱交換器4aと空気用熱交換器4とを第1および第2開閉弁V1,V2の開閉動作によって効率良く養殖水の加熱を行ない、夏などでは、養殖水用熱交換器4aを、第1開閉弁V1を閉じておくことによって、休止し、空気用熱交換器4を、第2開閉弁V2の開閉動作によって動作させてマイクロバブルによって養殖水の加熱を行うようにしてもよく、これによって太陽熱温水器に精製される温水を他の用途、たとえば工場内の養殖以外の目的などに使用することが容易に可能になる。
【0047】
さらに本発明によれば、養殖水の温度上昇の時間変化率αが予め定められたα1未満であれば、冬などの第1の場合であると判断して、第1および第2開閉弁V1,V2を開閉動作する第1動作モードを行ない、前記時間変化率αが予め定められたα1以上であれば、夏などの第2の場合であるものと判断し、第1開閉弁V1を閉じたままで、第2開閉弁V2を開閉動作する第2動作モードを行う。このような時間変化率αは冬または夏などの運転開始時にそれぞれ演算して求めるようにし、第1および第2の場合の判断を行うことができる。
【0048】
さらに本発明によれば、マイクロバブル発生手段6dは、空気混入部413からの気液混合流体を用いてマイクロバブルを発生し、微細な気泡を発生させることができる。このようなマイクロバブル発生手段6dは、後述の図21〜図23に示されるように、養殖水が貯留された容器50内に浸漬されたマイクロバブル発生器6cを用いて実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1は、本発明の一形態の養殖用水槽1の水温制御システムAを示す概念的構成図である。本実施の形態の養殖用水槽1の水温制御システムAは、太陽熱温水装置2と、前記太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3と、前記温水循環路3の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器4と、前記液−気熱交換器4により生成された暖気を導入して前記養殖用水槽1から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を前記養殖用水槽1へ還流する気−液熱交換器5とを含む。前記気−液熱交換器5内には、マイクロバブル発生器6が設置され、前記暖気は、前記マイクロバブル発生器6によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽1から供給される水と接触するよう構成されている。
【0050】
前記太陽熱温水装置2は、多数の集熱パイプ21…を太陽光に向くよう並べて配置し、各集熱パイプ21には温水循環路3に配された循環ポンプ31によって水を循環供給し、集熱パイプ21内を流通中に太陽熱を吸収して温水を生成するものである。温水循環路3の途中には補水タンク32が設置され、図示しない検出手段によって、温水循環路3を循環する温水量が所定量より少なくなったことを検出すると、適宜補水がされるよう構成されている。また、この温水循環路3における液−気熱交換器4からの復路には貯温タンク33が配設され、循環する温水の保有熱を貯留させ、太陽熱温水装置2での太陽熱の熱吸収効率を高めるように成されている。
【0051】
液−気熱交換器4は、交換器ハウジング40と、該交換器ハウジング40の中に設置された銅パイプ製の蛇管41とからなる。該蛇管41には前記温水循環路3からの温水が流通循環し、交換器ハウジング40に設けられた外気の導入部7より導入される外気と接触して、温水から外気への液−気熱交換が成される。前記導入部7には、吸引ファン71を介して外気の導入管72が接続され、該導入管72の外気取入口73および導入管72内に設置された補助加熱手段8,9によって加熱された外気を、交換器ハウジング40内に導入し得るよう構成されている。補助加熱手段8は、太陽熱の集熱および放熱手段からなる。また、補助加熱手段9は、前記外気取入口73に設置される風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を電源として発光する赤外線灯からなる。補助加熱手段8,9の詳細については後述する。
【0052】
前記液−気熱交換器4によって生成された暖気は、暖気導入管42を経て前記気−液熱交換器5に導入され、該暖気導入管42の先端に接続されたマイクロバブル発生器6から、前記気−液熱交換器5内に養殖用水槽1から供給貯留されている水中に噴出される。また、前記液−気熱交換器4から給気管路43を経て、暖気が直接養殖用水槽1内に供給されるようにも成されている。気−液熱交換器5は、養殖用水槽1から供給される養殖水を貯留し得るハウジング容器50を備え、該ハウジング容器50の上部にはオーバーフロー排出口51が設けられている。また、該ハウジング容器50には、養殖用水槽1から養殖水を供給する養殖水の給水管路52と、該気−液熱交換器5による熱交換温水を養殖用水槽1に還流する還流管53とが接続されている。給水管路52には、第1および第2の水浄化手段10,11が設けられており、第1の水浄化手段10はフィルターからなり、第2の水浄化手段11は光触媒を担持させた担持体と、この担持体に向け紫外線を照射し得るよう設置された紫外線灯からなる。第1および第2の水浄化手段10,11は、いずれか単独でもよく、また、第2の水浄化手段11に代えて、これに用いられる紫外線灯のみを給水管路52内に設置しても良い。第2の水浄化手段11の詳細については後述する。
【0053】
養殖用水槽1は、たい、まぐろ、はまち等を遊泳させて養殖する大型水槽であるが、魚種に応じ、魚網等により適宜区画し、あるいは底部を魚網等で仕切って、貝やかに、えび等の養殖域としても良い。また、養殖用水槽1内には温度センサ10が投入されており、この温度センサ10はコントローラ101に接続されている。さらに、養殖用水槽1の上には、前記特許文献2に示されるような自動給餌装置12が設置されている。この自動給餌装置12は、本装置12自体が備える風力発電手段13および太陽光発電手段14によって得た電力を駆動源として作動する回転弁体駆動手段と、養殖用水槽1の上を走行させる走行駆動手段とを備える。自動給餌装置12の詳細については後述する。
【0054】
ここで、前記補助加熱手段8,9について、図2を参照してさらに詳細に説明する。図2は、前記外気の導入管72における外気取入口73付近を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。前記外気の導入管72は、吸引ファン71の設置部分から上流側部分が垂直に立ち上がる径大円筒部720とされ、その上端に内向鍔状の支持板730が設置され、該支持板730の開口部が外気の取入口73とされている。この支持板730の上には、風力発電手段91を構成する複数の羽根車910が回転自在に設置されている。各羽根車910の回転軸911は、支持板730の下方に突出して、支持板730の下面に設置された発電機912に連結されている。風力発電手段91の基本構成は特許文献2にしめされたものと同じであり、したがって、ここではこれ以上の説明を省略する。風力発電手段91の上端部には支持板80が設置され、その中央部にはアルミニウム等の比熱の小さな金属板8が組込まれ、該金属板8が集熱および放熱手段を構成する。さらに、支持板80の上には、ドーム形のレンズ支持板81が設置され、該レンズ支持板81には複数の凸レンズ82が組付けられている。これら凸レンズ82は、いずれも、その光軸が前記金属板8の表面に指向され、かつ、該金属板8の表面に焦点が位置するよう設定されている。従って、これら凸レンズ82に入射する太陽光線は、金属板8の表面に集光し、金属板8は太陽光エネルギーを吸収して集熱し、蓄熱する。
【0055】
前記円筒部720内の外気取入口73付近には、補助加熱手段9としての赤外線灯が設置されている。赤外線灯9は、円筒部720の外に設置される蓄電池92に電気的に接続されている。この蓄電池92は、前記発電機912および円筒部720の外に設置される太陽光発電手段93としてのソーラパネルと電気的に接続されている。したがって、この蓄電池92には、風力発電手段91および太陽光発電手段93により得た電力が蓄電され、蓄電池92に蓄電された電力は、赤外線灯9の電源として供される。筒部720の筒壁には、点検用開閉扉721が設けられ、赤外線灯9や前記発電機912の点検、あるいは交換等のメンテナンスが可能とされている。図2では、2つの補助加熱手段8,9を併用した例を示しているが、どちらか一方でも良い。また、風力発電手段91の電源として、風力発電手段91および太陽光発電手段93を用いているが、この場合も、どちらか一方でも良い。
【0056】
次に、前記第2の水浄化手段11について、図3および図4を参照してさらに詳細に説明する。図3は前記給水管路52における第2の水浄化手段11が設置された部分を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。図4は図3における切断面線IV−IVから見た断面図である。給水管路52の中には、その中心に軸線方向に沿った状態で紫外線灯111が設置され、その周りに4本のアルミニウム棒(担持体)112が軸線方向に沿った状態で、かつ周方向に等間隔で配設されている。アルミニウム棒112の周面には、光触媒としての酸化チタンを溶解した溶液をコーティングすることによって、酸化チタンが担持されている。酸化チタンは、紫外線光を照射すると、強い酸化作用を発揮する特性を備えている。したがって、給水管路52を流通する養殖水の中に含まれる魚介類の糞や餌の残り、あるいは雑菌等はこの酸化作用を受けて分解および死滅する。これによって、紫外線灯111とアルミニウム棒112とによって第2の水浄化手段11が構成される。また、紫外線光自体も雑菌のDNAを破壊する特性を有しているので、紫外線灯111のみで第2の水浄化手段11を構成することもできる。この場合、紫外線灯111の電力を、専用の電源から供給するようにしてもよいが、前記蓄電池92から供給することも可能であり、これによって省エネルギー化が図られる。
【0057】
次いで、前記自動給餌装置12について、図5を参照してさらに詳細に説明する。図5は、自動給餌装置12を拡大して概念的に示す縦断正面図である。この自動給餌装置12は前記特許文献2に示されるものと基本的な構成は同じである。すなわち、ハウジングである餌収容筒120の下部に、餌収容筒120の軸心周りに回転可能に回転弁体121が設けられ、該回転弁体121の周囲にはギヤ121aが形成されている。餌収容筒120の壁部には、回転弁体121の回転駆動用のモータ15が設置され、該モータ15の出力軸に固着された出力ギヤ151と、回転弁体121のギヤ121aとが噛合し、モータ15の回転によって、回転弁体121が餌収容筒120の軸心周りに回転する。また、餌収容筒120の内部は、複数の仕切壁122によって複数の区画室123に区画され、各区画室123内には魚介類用の餌が投入充填されている。前記回転弁体121は扇形の開口部121bを備え、回転弁体121の回転に伴う開口部121bの移動によって、区画室123内の餌が開口部121bより落下し、餌収容筒120の下部に連なるコーン部124および直状管部125を経て養殖用水槽1に撒餌される。
【0058】
前記直状管部125の外壁部には、餌収容筒120の走行駆動用のモータ16が設置され、該モータ16の出力軸には2個のピニオンギヤ161,161が固着されている。養殖用水槽1の槽壁上端縁部には2本の平行なラック162,162が架設され、前記ピニオンギヤ161,161は、各ラック162,162に噛合している。餌収容筒120は、ラック162,162に平行な図示しない支持枠あるいはラック162,162自体に摺動可能に支持され、モータ16の回転によって、162,162の長手方向に沿って往復走行移動が可能とされている。したがって、前記回転弁体121の回転と、餌収容筒120の往復走行移動とによって、養殖用水槽1内への広範囲の撒餌が可能とされる。餌収容筒120の上部には、餌の投入口126が設けられ、この投入口126より、餌の補給がなされる。
【0059】
餌収容筒120の上端には、上下の支持板130,131を介して風力発電手段13が設置されている。この風力発電手段13は、前記予備加熱手段9に電力を供給するために採用される風力発電手段91と同様に構成されており、したがって、この風力発電手段13の詳細構成の説明は省略し、図面では概略的に示している。この風力発電手段13によって得られた電力は、前記モータ15、16の駆動電源に供せられる。また、前記支持板130の上部には、支持板130を貫通して支持板131に餌収容筒120の軸線に沿って立設された支柱140に太陽光発電手段14が設置されている。この太陽光発電手段14も特許文献2に示されたものと同様であり、支柱140に取付けられた皿形形状の反射鏡手段141と、該反射鏡手段141の凹部内に納まるよう前記支柱140の上端に上向きに湾曲した発電素子の保持部材142とよりなる。保持部材142の上下両面には多数の太陽光発電素子143…が配列固定されている。保持部材142の上面に固定される太陽光発電素子143は太陽光を直接受け、保持部材142の下面に固定される太陽光発電素子143は反射鏡手段141により反射された太陽光を受けて、これら太陽光のエネルギーによって発電機能を奏する。この太陽光発電手段14によって得られた電力は、風力発電手段13によって得られた電力と同様に、前記モータ15、16の駆動電源に供せられる。風力発電手段13および太陽光発電手段14によって得られた電力は、図示しない蓄電器に蓄電され、この蓄電器に電気的に接続することによって、モータ15、16に給電される。
【0060】
上述のような構成の養殖用水槽1の水温制御システムAの作用について説明する。太陽熱温水装置2の集熱パイプ21において、ポンプ31によって供給される水(温水)が太陽熱を受けて温められ、温水循環路3を経て液−気熱交換器4に導入され、液−気熱交換器4の蛇管41内を流通する。蛇管41を経た温水は、温水循環路3の復路に配設された貯温タンク33において保有する余熱が貯留され、再度ポンプ31によって太陽熱温水装置2に供給され、これが繰返される。温水循環路3を循環する温水が減ってくると、補水タンク32から水が補給される。
【0061】
液−気熱交換器4の交換器ハウジング40には外気の導入部7より外気が導入され、前記蛇管41の表面に接して熱交換されて暖気が生成される。外気の導入部7には、途中に吸引ファン71を配した外気の導入管72が接続されており、吸引ファン71の作動により、外気の取入口73から吸引された大気は強制的に前記交換器ハウジング40内に導入される。外気の取入口73およびこの取入口73の近傍の外気の導入管72内に、補助加熱手段8,9が設置されており、この補助加熱手段8,9によって加熱された暖気が導入管72を経て交換器ハウジング40内に導入される。補助加熱手段8は、前述のように集熱および放熱性に富んだ金属板からなり、前記凸レンズ82によって金属板8に集熱された太陽熱は、前記吸引ファン71の作動に伴い生じる気流によって放熱され、この放熱によって温められた気流は、外気の取入口73より導入管72に吸引される。
【0062】
前記金属板8によって温められ導入管72に吸引された外気は、導入管72内に設置されたもう一方の補助加熱手段としての赤外線灯9から発せられる赤外線の作用を受けてさらに温められて暖気として吸引ファン71に吸引される。赤外線灯9の電源は、前述のとおり風力発電手段91およびソーラーパネル(太陽熱発電手段)93からなる。風力発電手段91においては、前記吸引ファン71の作動に伴い生じる気流によって、羽根車910の回転が促進され、その発電が効率的になされる。風力発電手段91およびソーラーパネル93によって得た電力は、蓄電器92に蓄電される。
【0063】
前記補助加熱手段8,9は、前記太陽熱温水装置2によって生成される温水が充分な温度を保有しない場合に、液−気熱交換器4での液−気熱交換機能を補うべく位置付けられるものである。すなわち、夜間や、天候が悪いときには、太陽熱温水装置2の機能が低下するが、このような場合、液−気熱交換器4に導入される外気が事前に温められておれば、太陽熱温水装置2の機能の機能低下分がこれによって補完される。従って、前記温水循環路3における液−気熱交換器4の上流側部分に温度センサ(図示せず)を設けておき、この温度センサの検出温度が所定の温度を下回ったとき、前記赤外線灯9をオンすることにより、液−気熱交換器4によって生成される暖気が常時適正な温度に維持される。
【0064】
前記液−気熱交換器4によって生成された暖気は、暖気導入管42を経て前記気−液熱交換器5のハウジング容器50内に導入される。該暖気導入管42の先端にはマイクロバブル発生器6が接続されており、該マイクロバブル発生器6から、前記ハウジング容器50内に養殖用水槽1から供給貯留されている水中に噴出される。暖気は、マイクロバブル発生器6から噴出される結果、直径が数μmの多数のマイクロバブルとなって、ハウジング容器50内の水中を浮上する。このマイクロバブルの表面積は、通常の気泡の数千倍であり、また、水深3m以内での水中での浮上速度は約0.1mm/秒と極めて遅い。したがって、水との接触面積が非常に大きく、かつ、接触時間が極めて長くなるから、暖気から水への熱交換が極めて高効率で成される。また、マイクロバブルは付着力が強いから、水中に浮遊するゴミや雑菌、あるいは雑菌の死骸等を付着して浮上し、前記オーバーフロー排出口51よりオーバーフロー水と共に排出される。これによって、ハウジング容器50内の水が浄化される。特に、マイクロバブルの表面積が大きく、かつ、浮上速度が遅いことも相俟って、この浄化作用は極めて効果的になされる。ハウジング容器50内の水が浄化されることによって、ハウジング容器50の内壁が汚れることがなく、その清掃が不要とされる。このように浄化された熱交換温水は還流管53を経て養殖用水槽1に還流される。
【0065】
前記養殖用水槽1から気−液熱交換器5への給水管路52には、第1および第2の水浄化手段10,11が設けられている。したがって、養殖用水槽1中の魚介類の糞や、餌の残り等の有機物、あるいは雑菌は、前記のように構成された第2の水浄化手段11によって分解され、破壊され、あるいは殺菌される。この分解、破壊および殺菌による残渣、さらにはごみのうち比較的粗いものは、第2の水浄化手段11に続いて設置されたフィルターからなる第1の水浄化手段10によって捕捉される。これによって、養殖用水槽1からはある程度浄化された状態で気−液熱交換器5に供給されるが、雑菌の死骸や細かなゴミは、フィルター10を通り抜け気−液熱交換器5に流入する。しかし、気−液熱交換器5内では、前述のとおりマイクロバブルに付着して排出されるから、これらの細かなごみ等は、養殖用水槽1に再度還流されることがない。
【0066】
さらに、前記養殖用水槽1から気−液熱交換器5への給水管路52には、脱窒装置20を設けていてもよい。
【0067】
脱窒装置20は、養殖用水槽1から供給される水中に含まれる硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる。
【0068】
図6は、水温制御システムAに備えられる脱窒装置20を示す断面図である。図7は、脱窒装置20を示す斜視図である。脱窒装置20は、養殖用水槽1から給水管路52を通って供給される水202中に硝酸として存在する窒素を除去するための装置であって、脱窒細菌を利用して硝酸を、水202から自然放出可能な窒素ガスに変化させることによって、窒素ガスの放出を伴って窒素を除去する。脱窒細菌としては、硝酸を窒素ガスに変化させる脱窒に関与する細菌であり、たとえば通性嫌気性細菌、さらに具体的には、
Pseudomonas属、Achromobacter属の仲間、Micrococcus denitrificans、Thiobacillus
denitrificans、Bacillus subtilisなどの芽胞形成菌および土壌放線菌の仲間などを含み、これらの細菌を用いることができる。
【0069】
脱窒装置20は、周壁205と、周壁205の一端部を塞ぐ底部206とを有し、底部206と反対側の開放端部222で開放する略直方体形状の容器221を有している。容器221は、金属および合成樹脂などから成ってもよく、底部206を下部に配置し、上方へ開放するように配置されている。脱窒装置20は、容器221内に、水202が収容されるとともに、多糖類から成る有機炭素源が設けられる複数の有機炭素源供給層203と、連続空隙の多孔質材料からなる担体225が設けられる複数の細菌生息層204とが設けられる。
【0070】
本実施の形態では、5つの有機炭素源供給層(以下、特定の有機炭素源供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を付した符号を用い、不特定の有機炭素源供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を省略する。)203が設けられる。また4つの細菌生息層(以下、特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付した符号を用い、不特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付さない符号を用いる)204が設けられる。
【0071】
各有機炭素源供給層203と各細菌生息層204とは、容器221の底部206から開放端部222に向かう方向へ、したがって上下方向へ交互に積層されて積層体を構成する。具体的には、各有機炭素源供給層203と各細菌生息層204とは、上方へ向かって、第1有機炭素源供給層203a、第1細菌生息層204a、第2有機炭素源供給層203b、第2細菌生息層204b、第3有機炭素源供給層203c、第3細菌生息層204c、第4有機炭素源供給層203d、第4細菌生息層204d、第5有機炭素源供給層203eの順に、積層されており、したがってこの積層体の最下層と最上層とは、第1および第5有機炭素源供給層203a,203eである。
【0072】
細菌生息層204には、担体225に脱窒細菌が付着されている。したがって担体の表面に脱窒細菌が付着されており、このような担体225を設けることによって、細菌生息層204で脱窒細菌を生息させている。担体225は、多孔質材料から成るので、表面積を大きくし、脱窒細菌の生息場所を大きくすることができる。したがって多くの脱窒細菌を生息させること、換言すれば脱窒細菌を繁殖させることができる。
【0073】
各有機炭素源供給層203には、有機炭素源と、炭酸塩鉱物と、細砂とが設けられる。有機炭素源はキチンであり、キチンは粉末の状態で設けられる。キチンは、自然界に存在するキチンを用いてもよいし、人工的に精製したキチンを用いてもよい。キチンとして、本実施の形態では、たとえば蟹および海老などの甲殻類の殻を粉砕した粉末を用いられる。このキチンが、脱窒細菌に与える炭素の源となる有機炭素源である。
【0074】
炭酸塩鉱物は、粉末の状態で設けられる。炭酸塩鉱物は、自然界に存在する炭酸塩鉱物を用いてもよいし、人工的に生成した炭酸塩鉱物を用いてもよい。炭酸塩鉱物として、たとえばカルシウムの炭酸塩鉱物である霰石、貝化石などを粉砕した粉末を用いることができる。本実施の形態では、たとえば貝化石の粉末が用いられる。この炭酸塩鉱物は、液体2に、カルシウムなどのミネラル成分を溶解させて与えることができる。また炭酸塩鉱物によって、水202を改質することに役立つ。
【0075】
細砂には、キチンを分解するキチン分解細菌が付着されている。キチン分解細菌は、海洋低温細菌ビブリオ属に属するキチナーゼ生産菌などを含み、これらの細菌を用いることができる。このキチン分解細菌は、キチナーゼを生成してキチンを加水分解することができる。キチナーゼ生産菌としては、海洋低温細菌ビブリオ属などに属し、キチン資化能を有する微生物であれば、どのようなものでもよく、特に制限はない。細砂としては、キチン分解細菌が自然に付着している砂を用いてもよいし、キチン分解細菌を人工的に付着させた砂を用いてもよい。本実施の形態では、細砂として、たとえば海底から採取した砂、いわゆる海砂が用いられる。海底から採取した砂には、キチン分解細菌が自然に付着している。
【0076】
有機炭素源供給層203のキチンは、このように細砂に付着された状態で有機炭素源供給層3に生息させられるキチン分解細菌を利用して、グルコースに分解される。このようにキチンを分解してグルコースを生成することによって、このグルコースから、細菌生息層4に生息する脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0077】
また容器21の開放端部222には、独立空隙の発泡スチロールから成る蓋体220を装着することができる。蓋体220を開放端部222に装着する場合、開放端部222を介して外気が出入することが防がれ、嫌気性である脱窒細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。また蓋体220を開放端部222に装着しない場合、開放端部222を介して外気が出入りすることができ、好気性環境下を好むキチン分解細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。本実施の形態では、開放端部222に蓋体220を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0078】
周壁205の一部である容器221の一側部には、この一側部を挿通して供給管路207が接続されている。供給管路207は、給水管路52の養殖用水槽1側に接続され、容器221内において、第4細菌生息層204dおよび第5有機炭素源供給層203eで開口している。また、供給管路207が接続される一側部と反対側の他側部には、この他側部を挿通して排出管路208が接続されている。排出管路208は、給水管路52の気−液熱交換器5側に接続され、容器221内において、第1細菌生息層204aで開口している。
【0079】
図8は、有機炭素源供給層203に設けられる有機炭素源供給体226を示す斜視図である。図8には、一部を切り欠いて内部構造を示す。有機炭素源供給体226は、袋体227に、混合粉粒体228が収納されて構成される。袋体227は、不織布によって形成されている。具体的には、袋体227は、1枚の不織布から成るシートが折畳まれて、周縁部がヒートシーラによって溶着されて形成されてもよいし、2枚の不織布から成るシートが積重されて、周縁部がヒートシーラによって溶着されて形成されてもよい。本実施の形態では、1枚のシートによって形成される袋体227が用いられている。
【0080】
混合粉粒体228は、キチンの粉末、炭酸塩鉱物の粉末および細砂を混合した粉粒体である。キチンの粉末は、粒径が、たとえば2mm以下の粉末である。炭酸塩鉱物の粉末は、粒径が、たとえば2mm以下の粉末である。細砂は、粒径が、たとえば1mm以上3mm以下程度の砂である。混合粉粒体228における体積混合比は、たとえば、キチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂=2:4:4、またはキチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂=1:4:5である。
【0081】
有機炭素源供給体226は、袋体227に混合粉粒体228が収容された状態で、厚さが、たとえば2cm程度に成るように構成されている。このような有機炭素源供給体226を設けることによって、有機炭素源供給層203に、キチン、炭酸塩鉱物および細砂を設けることができる。
【0082】
図9は、細菌生息層204に設けられる担体225の一例を示す斜視図である。図9には、線状体230の厚みを省略して示す。この例では、担体225は、たとえば塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などの合成樹脂製の複数の線状体230が、湾曲されてスプリング状にカール加工された状態で、互いに近接配置される箇所において、接着または溶着によって結合されて構成される。このようにして担体225は、各線状体230間に、連続して連なる複数の空隙231を有する多孔質に形成される。このような担体225として、たとえばサランロック(登録商標)などを用いることができる。この線状体230を用いて構成される担体225は、厚さが、たとえば4cm程度となるように形成される。
【0083】
図10は、細菌生息層204に設けられる担体225の他の例を示す断面図である。この例では、担体225は、連続空隙の発泡合成樹脂、たとえば発泡ウレタンから成る。この担体225もまた、図9に示す担体225と同様に、連続して連なる複数の空隙232を有する多孔質に形成される。この発泡合成樹脂を用いて構成される担体225は、厚さが、たとえば3cm程度となるように形成される。
【0084】
各細菌生息層204には、このような多孔質の担体225が設けられる。すべての細菌生息層204に、図9に示す担体225が設けられてもよいし、すべての細菌生息層204に、図10に示す担体225が設けられてもよいし、図9に示す担体225と図10に示す担体225とを組合わせて用いてもよい。本実施の形態では、第1、第2および第4細菌生息層204a,204b,204dには、図9に示す担体225が設けられ、第3細菌生息層204cには、図10に示す担体225が設けられる。
【0085】
このような脱窒装置20によれば、容器221内に生息させる脱窒細菌の働きによって、水202中の硝酸が窒素ガスに変化され、窒素ガスは、液体から放出される。このようにして脱窒装置20では、水202中に硝酸として存在する窒素を、脱窒細菌の働きによって除去することができる。具体的には、脱窒装置20では、水202は、供給管路207を介して供給され、容器221内に一時的に収容される状態で容器221内を流下し、排出管路208を介して排出される。脱窒装置20は、容器221内に水202が一時的に収容されているときに、その水202中の硝酸を脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる。窒素ガスは、たとえば水202が大気に開放される状態となる場所で、水202から放出される。
【0086】
脱窒細菌を利用して窒素を除去するにあたっては、脱窒細菌に有機炭素を与えることが必要であり、キチン、セルロースの多糖類から成る有機炭素源が用いられる。本実施の形態では、水202中にキチンが設けられる。キチンは、容器221内に生息させるキチン分解細菌の働きによって、脱窒細菌が利用可能な糖類、具体的にはグルコースに分解され、分解された糖類は、脱窒細菌に利用される。このようにしてキチンを設けることによって、脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。さらにキチンは、短期間で分解されてしまわずに、長期間かけて、たとえば数年かけて徐々に分解されるので、たとえばアルコール類およびブドウ糖を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、1回の有機炭素源の供給作業によって、脱窒細菌に、長期間にわたって有機炭素を与え続けることができる。したがって脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0087】
また容器221内に、複数の有機炭素源供給層203と、複数の細菌生息層204とが、交互に積層されている。各細菌生息層204に設けられる担体225は、連続空隙の多孔質材料から成り、内部まで液体が浸透可能であるとともに、大きな表面積を有している。これによって大きな表面積を有する担体225に、脱窒細菌が付着しやすくして、脱窒細菌を生息しやすくすることができる。また硝酸を含む水202と脱窒細菌との接触面積を大きくすることができる。このような細菌生息層204と、有機炭素源供給層203とを、交互に積層することによって、細菌生息層204と有機炭素源供給層203との接触面積を大きくすることができるとともに、細菌生息層204内のすべての位置における有機炭素源供給層203からの距離を小さくすることができる。これによって有機炭素源供給層203のキチンによって、細菌生息層204の脱窒細菌に有機炭素を与えやすくすることができ、かつ脱窒細菌に可及的に均一に有機炭素を与えることができる。したがって脱窒細菌の繁殖を促進し、脱窒細菌を利用した窒素の除去効率を高くすることができる。
【0088】
またキチンは、粉末の状態で設けられており、キチンと水202との接触面積を大きくすることができる。これによってキチンを、キチン分解細菌によって分解されやすくし、脱窒細菌に有機炭素を不足しないように与えることができる。
【0089】
また有機炭素源供給層203には、キチンの粉末に加えて、炭酸塩鉱物の粉末が設けられる。炭酸塩鉱物は、たとえばカルシウムなどのミネラル成分を含んでおり、液体にカルシウムなどのミネラル成分を溶解させることができる。したがって液体から窒素を除去することに加えて、ミネラル成分を与えることができる。このように液体から窒素を除去しながら、ミネラル成分を与えて、水202を改質することに役立つ。
【0090】
また有機炭素源供給層203には、キチンの粉末に加えて、細砂が設けられる。細砂には、キチンを分解するキチン分解細菌が付着しており、細砂に付着しているキチン分解細菌によってキチンを分解させることができる。このように細砂を一緒に設けるという簡単な構成で、容器221内にキチン分解細菌を生息させ、液体中でのキチンを分解して脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0091】
混合粉粒体228は、不織布から成る袋体227に収容されて、有機炭素源供給層203に設けられる。これによって混合粉粒体228が、水202の流下に伴う流体力および重力などによって、有機炭素源供給層203から流出すること、さらには脱窒装置20から流出することを防ぐことができる。また混合粉粒体228を有機炭素源供給層203に設ける場合、また逆に有機炭素源供給層203から除去する場合に、袋体227に収納されていない状態に比べて、搬送を容易にすることができる。また排水管路208が詰まる、排出管路208から排出された水202の供給先などにおいて、混合粉粒体228を除去しなければならないなどの問題が生じることがない。したがって混合粉粒体228の取扱いを容易にすることができるとともに、メンテナンス性を良好にすることができる。
【0092】
また脱窒装置20では、第1、第2および第4細菌生息層204a,204b,204dには、図9に示す担体225が設けられ、第3細菌生息層204cには、図10に示す担体225が設けられる。図9に示す担体225は、図10に示す担体225に比べて、空隙率が高く、かつ空隙の寸法が大きいので、通水性に優れている。このような通水性に優れた担体225を、供給管路207および排水管路208が開口する第1細菌生息層204aおよび第4細菌生息層204dに設けることによって、脱窒細菌の生息(繁殖)が可能な状態で、水202の流下を容易にし、容器221全体にわたって、水202の淀みを無くし、水202を流下させることができる。
【0093】
図10に示す担体225は、図9に示す担体225に比べて、表面積が大きいので、脱窒細菌を繁殖させやくすることができる。このような図10に示す担体225を、供給管路207および排水管路208が開口する第1細菌生息層204aおよび第4細菌生息層204eの間に配置される第3細菌生息層204cに設けることによって、水202の容器221内における流下経路の如何に拘わらず、脱窒細菌の繁殖度が高い第3細菌生息層204cを流体202が通過するので、水202中の硝酸を窒素ガスに確実に変化させることができる。
【0094】
このように、水温制御システムAが脱窒装置20を備えることで、魚介類が養殖される養殖用水槽1の水202は、脱窒装置20を経て気−液熱交換器5の供給され、温水となって養殖用水槽1に戻される。これによって水202中のアンモニアを除去することができる。養殖用水槽1で魚介類を養殖すると、魚介類の排泄物などによって、必然的に水202にアンモニアが発生し、水202が汚損されて養殖用水槽1における魚介類の養殖環境が悪化するが、前述のようにしてアンモニアを除去することによって、養殖用水槽1に良好な養殖環境を確保し、維持することができる。
【0095】
図11は、脱窒装置20の他の例を示す断面図である。図11では、図6に示した脱窒装置20と同様の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。本例の脱窒装置20では、脱窒細菌に与える有機炭素源である多糖類としてセルロースを用いる。
【0096】
本例の脱窒装置20は、容器221内に、水202が収容されるとともに、有機炭素源としてセルロースが設けられる有機炭素源供給層241と、その有機炭素源供給層241の下流で、炭酸塩鉱物および細砂が含まれる複数のミネラル供給層240と、連続空隙の多孔質材料からなる担体225が設けられる複数の細菌生息層204とが設けられる。
【0097】
ここで、1つの有機炭素源供給層241と、5つのミネラル供給層(以下、特定のミネラル供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を付した符号を用い、不特定のミネラル供給層を指す場合、「第1」〜「第5」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「e」を付さない符号を用いる)240と、4つの細菌生息層(以下、特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付した名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付した符号を用い、不特定の細菌生息層を指す場合、「第1」〜「第4」を付さない名称を用いるとともに、添え字「a」〜「d」を付さない符号を用いる)204とが設けられる。
【0098】
各ミネラル供給層240と各細菌生息層204とは、容器221の底部206から開放端部222に向かう方向へ、したがって上下方向へ交互に積層されている。具体的には、各ミネラル供給層240と各細菌生息層4とは、上方へ向かって、第1ミネラル供給層240a、第1細菌生息層204a、第2ミネラル供給層240b、第2細菌生息層204b、第3ミネラル供給層240c、第3細菌生息層204c、第4ミネラル供給層240d、第4細菌生息層204dの順に積層されている。また第4細菌生息層204dの上方に有機炭素源供給層241が積層され、さらに有機炭素源供給層241の上方に第5ミネラル供給層240eが積層されている。
【0099】
各ミネラル供給層240には、炭酸塩鉱物と、細砂とが設けられる。細砂には、セルロースを分解するセルロース分解細菌が付着されている。セルロース分解細菌は、好気性セルロース分解細菌としてPseudomonas属、Cellvibrio属およびCytopghaga属など、ならび
に嫌気性セルロース分解細菌としてClostridium属などに属するセルラーゼ生産菌などを
含み、これらの細菌を用いることができる。このセルロース分解細菌は、セルラーゼを生成してセルロースを加水分解することができる。セルラーゼ生産菌としては、
Pseudomonas属、Cellvibrio属、Cytopghaga属およびClostridium属などに属し、セルロース資化能を有する微生物であれば、どのようなものでもよく、特に制限はない。また好気性セルロース分解細菌および嫌気性セルロース分解細菌のどちらの細菌が用いられてもよい。細砂としては、セルロース分解細菌が自然に付着している砂を用いてもよいし、セルロース分解細菌を人工的に付着させた砂を用いてもよい。本実施の形態では、細砂として、たとえば海底から採取した砂、いわゆる海砂が用いられる。海底から採取した砂には、セルロース分解細菌が自然に付着している。
【0100】
有機炭素源供給層241のセルロースは、このように細砂に付着された状態でミネラル供給層240に生息させられるセルロース分解細菌を利用して、グルコースに分解される。このようにセルロースを分解してグルコースを生成することによって、このグルコースから、細菌生息層4に生息する脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0101】
また容器221の開放端部222には、独立空隙の発泡スチロールから成る蓋体220を装着することができる。蓋体220を開放端部222に装着する場合、開放端部222を介して外気が出入することが防がれ、嫌気性である脱窒細菌および嫌気性セルロース分解細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。また蓋体220を開放端部222に装着しない場合、開放端部222を介して外気が出入りすることができ、好気性環境下を好むセルロース分解細菌の繁殖しやすい環境を、容器221内に確保することができる。したがって蓋体220を装着しない場合において、有機炭素源供給層241を外気が出入りしやすい場所、具体的には第4細菌生息層204dの上方に配置することによって、好気性セルロース分解細菌によって、セルロースを脱窒細菌が利用可能な糖類、具体的にはグルコースに分解することができる。また分解された糖類は、脱窒細菌に利用される。このようにしてセルロースを設けることによって、脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0102】
周壁205の一部である容器221の一側部には、この一側部を挿通して供給管路207が接続されている。供給管路207は、容器221内において、第4細菌生息層204d、有機炭素源供給層241および第5ミネラル供給層240eで開口している。また供給管路207が接続される一側部と反対側の他側部には、この他側部を挿通して排出管路208が接続されている。排出管路208は、容器221内において、第1細菌生息層204aで開口している。
【0103】
このような脱窒装置20によれば、容器221内に生息させる脱窒細菌の働きによって、水202中の硝酸が窒素ガスに変化され、窒素ガスは、液体から放出される。
【0104】
脱窒細菌を利用して窒素を除去するにあたっては、脱窒細菌に有機炭素を与えることが必要であり、水202中にセルロースが設けられる。セルロースは、容器221内に生息させるセルロース分解細菌の働きによって、脱窒細菌が利用可能な糖類、具体的にはグルコースに分解され、分解された糖類は、脱窒細菌に利用される。このようにしてセルロースを設けることによって、脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。さらにセルロースは、短期間で分解されてしまわずに、長期間かけて、たとえば数年かけて徐々に分解されるので、たとえばアルコール類およびブドウ糖を添加する、また氷砂糖を投入する構成に比べて、1回の有機炭素源の供給作業によって、脱窒細菌に、長期間にわたって有機炭素を与え続けることができる。したがって脱窒細菌に有機炭素を与えるために必要な有機炭素源の供給作業の作業量を少なくし、かつその作業の繰返し周期を長周期化することができる。したがって液体から窒素を除去するための作業の効率を向上することができる。
【0105】
セルロースは、ろ紙および和紙などのセルロース繊維から成るシートを複数枚重ねて設けられる。またシートに代えて脱脂綿などのセルロース繊維塊として設けるようにしてもよい。したがってセルロース繊維から成るシートまたはセルロース繊維塊の状態で第4細菌生息層204dの上方に設けられるので、セルロースと水202との接触面積を大きくすることができる。これによってセルロースを、水202中のセルロース分解細菌によって分解されやすくし、脱窒細菌に有機炭素を不足しないように与えることができる。またセルロース繊維から成るシートおよび脱脂綿などのセルロース繊維塊で設けられたセルロースは、外観上、目で認識することができるので、セルロースが枯渇してしまう前に新たに供給することができ、効率的に脱窒細菌に有機炭素を与え続けることができる。
【0106】
またミネラル供給層241には、細砂が設けられる。細砂には、セルロースを分解するセルロース分解細菌が付着しており、細砂に付着しているセルロース分解細菌によってセルロースを分解させることができる。このように細砂を一緒に投入するという簡単な構成で、容器221内にセルロース分解細菌を生息させ、液体中でのセルロースを分解して脱窒細菌に有機炭素を与えることができる。
【0107】
以上のように脱窒装置20について説明したが、これは例示に過ぎず、構成を変更することができる。たとえば脱窒細菌の有機炭素源の材料である多糖類として、キチンとセルロースとの両方を一緒に用いてもよい。また多糖類としてセルロースを用いた場合、セルロースは、セルロース繊維から成るシートとして用けなくてもよく、粉末または脱脂綿のような繊維塊の状態で設けてもよい。この場合、袋体227に収納させて設けてもよい。さらに有機炭素源供給層241を、各細菌生息層204の上方に積層してもよい。
【0108】
以上のように、養殖用水槽1には、適正な温度とされ、かつ、浄化された熱交換温水が常時供給され、循環されるから、養殖用水槽1内の水は、常に適正な温度で、かつ、清浄に保たれ、しかも、マイクロバブルの作用によって溶存酸素量が多く、魚介類の生育に適した状態に維持される。そして、自動給餌装置12から適宜餌が養殖用水槽1内に撒餌され、極めて省エネルギー的、かつ、効率的に魚介類の養殖を行うことができる。養殖用水槽1には、気−液熱交換器5から、給気管路43を経て暖気が直接供給されるように成されており、給気管路43から供給される暖気によっても、養殖用水槽1内の水の温度の低下が抑えられる。また、暖気の直接的供給によって、養殖用水槽1内の水の溶存酸素量を増やすことができる。養殖用水槽1内の水中には温度センサ10が投入されており、前記コントローラ101は、この温度センサ10の検出温度に基づき、前記補助加熱手段8,9を制御し、養殖用水槽1内の水温を、夏場あるいは冬場等の環境変化に応じて適正に維持させることができる。
【0109】
なお、補助加熱手段8,9や、自動給餌装置12は、実施形態のものに限定されるものではない。また、養殖用水槽1内の水は、気−液熱交換器5内に設置されたマイクロバブル発生器6による暖気の噴出作用によって、給水管路52および還流管53を介して、気−液熱交換器5との間で循環するが、給水管路52および還流管53に循環を促進させるためのポンプを配置しても良い。さらに、養殖用水槽1には、図示を省略したが、水の補給手段が設けられるべきことは言うまでもない。
【0110】
図12は、本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態では、空気用熱交換器4だけでなく、養殖水用熱交換器4aを設け、太陽熱温水装置2の集熱パイプ21からの太陽熱によって昇温されたたとえば70〜80℃の高温の温水が、温水循環路3の管路3aから管路3dを経て養殖水用熱交換器4aの間接熱交換する蛇管41aに供給され、さらに管路3eを経て温水循環路3から貯温タンク33に導かれ、循環ポンプ31によって温水が循環される。管路3aからの温水はまた、前述の実施の形態と同様に管路3bから空気用熱交換器4の蛇管41に供給され、外気である空気が間接熱交換され、管路3cから温水が温水循環路3に合流して貯温タンク33に導かれる。管路3d,3bには、第1および第2の電磁開閉弁V1,V2がそれぞれ介在される。
【0111】
マイクロバブル発生手段6aは、気−液熱交換器5とマイクロバブル発生器6とを含む。マイクロバブル発生手段6aの気−液熱交換器5であるハウジング容器50からの養殖水は、管路53aからポンプ31aによって圧送され、養殖水用熱交換器4aに供給され、蛇管41a内を通る温水と向流間接熱交換される。この養殖水用熱交換器4aで加熱された養殖水は、管路53から養殖用水槽1に供給される。養殖水は、この水槽1から管路52を経て脱窒装置20、水浄化手段11,10をこの順序で経て、容器50に戻って循環される。管路52には、水槽1からの養殖水の温度を検出する温度検出手段401が設けられる。
【0112】
図13は、図12に示される実施の形態の電気的構成を示すブロック図である。温度検出手段401からの養殖水の検出温度Tを表わす信号は、マイクロコンピュータによって実現される処理回路402に与えられる。処理回路402には、メモリ403が接続される。処理回路402は、第1および第2開閉弁V1,V2をオンして開き、オフして閉じる。
【0113】
図14〜図16は、処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。処理回路402は、電源投入によって、図14のステップs1からステップs2に移り、温度検出手段401によって検出された養殖水の温度Tを表わす信号を受信する。
【0114】
図17は、図12〜図16に示される実施の形態を説明するための動作を示す図である。図17(1)は、温度検出手段401によって検出される養殖水の検出温度Tを示す。図17(2)は、たとえば冬などの環境が低温であるときにおける第1開閉弁V1の開閉動作を示す図であり、図17(3)はその図17(2)の第1動作モードにおける第2開閉弁V2の動作を説明するための図である。図17(4)は夏などの環境温度が高温であるときにおける第2動作モードにおける第1開閉弁V1の動作を説明するための図であり、図17(5)は図17(4)の第2動作モードにおける第2開閉弁V2の動作を説明するための図である。
【0115】
再び図14を参照して、ステップs3では、処理回路402は検出温度Tが予め定める温度T2未満であるかどうかを判断し、そうであればステップs4に移り、処理回路402に備えられるタイマの限定時間W1を計時動作を図17の時刻t1から開始する。このタイマが計時動作を開始する時刻t1における検出温度Tの値T(0)をステップs5で検出し、次のステップs6では、第1および第2開閉弁V1,V2を開く。これによって熱交換器4,4aでは空気と養殖水との加熱が行われる。限定時間W1は、たとえば30分であってもよい。
【0116】
ステップs7でタイマの限定時間W1が経過したことが判断されると、ステップs8では、その時刻t2の検出温度T(W1)が検出される。
【0117】
ステップs3で電源投入時の検出温度Tが設定温度T2以上であれば、ステップs9ではエラーと判断し、ステップs10で一連の動作を終了する。予め定める温度T2は、たとえば25℃であってもよく、それよりも低い温度T1は、たとえば23℃であってもよい(T1<T2)。電源投入時では、水槽1内の養殖水は、たとえば冬または夏の環境に依存し、温度Tsを有する。この温度Tsは、たとえば3℃〜8℃であってもよいが18〜20℃であってもよい。
【0118】
図15を参照して、前述の図14のステップs8からステップs11に移り、検出温度Tの温度上昇の時間変化率αを演算する。
α = {T(W1)−T(0)}/W1 …(1)
【0119】
ステップs12では、前述の式1で得られた時間変化率αが、予め定める値α1未満であるかどうかを判断し、そうであれば、冬などの図17(1)の実線のとおりであり、ステップs13において第1の場合の条件であるものと判断して、メモリ403にストアし、第1条件、すなわちα<α1に対応する第1動作モードを、ステップs14で実行する。第1動作モードは、第1および第2開閉弁V1,V2がいずれもオン/オフして開閉する動作である。
【0120】
ステップs12において、演算して求められた時間変化率αが、予め定める値α1以上であれば(α1≦α)、夏などの図17(1)の仮想線のとおりであり、ステップs15で第2の場合の条件であるものと判断して、メモリ403にストアする。この第2条件では、第2動作モードとして、第1開閉弁V1をオフして閉じ、第2開閉弁V2をオン/オフして開閉する。これらの図14〜図15におけるステップs2〜s15の動作は、図17の時刻t1〜t2の直後で行われる。
【0121】
図16を参照して、前述の図15のステップs14からステップs17に移り、第1および第2開閉弁V1,V2が開いていることによって、温度検出手段401によって検出される温度Tが、予め定める温度T2以上に上昇したかどうか(T2≦T)が判断され、そうであればステップs18に移り、第1および第2開閉弁V1,V2をいずれも閉じる。これによって水槽1の水の温度が、熱放散によって低下し始める。
【0122】
ステップs19において、検出温度Tが下降して予め定める温度T1未満であるかどうかが判断され、そうであればステップs20では、メモリ403に第1または第2条件が前述のステップs13またはs15でストアされているかどうかが判断される。第1条件が設定されていれば、ステップs21において第1動作モードである第1および第2開閉弁V1,V2がいずれも開かれて、冬の環境温度が低い条件下で、養殖水の加熱昇温が行われる。このように第1動作モードにおいて養殖水の温度が予め定める温度T2に到達すると、図17の時刻t3ではステップs18が実行され、その後、予め定める温度T1に低下すると、時刻t4でステップs21が実行されることになる。
【0123】
ステップs20において、メモリ403に第1条件がストアされておらず、次のステップs22では、第2条件がストアされているものと判断されれば、次のステップs23において第2動作モードが実行されることになり、第1開閉弁V1が閉じられたままとなり、第2開閉弁V2が開かれ、こうして夏の環境温度が高い条件下でマイクロバブルによる温度の上昇が行われることになる。このように第2動作モードで養殖水の検出温度Tがステップs17で予め定める温度T2に到達する時刻t11では、ステップs18の動作が行われ、その後、温度が低下して予め定める温度T1に下降する時刻t2では、ステップs23の動作が行われることになる。
【0124】
ステップs21,s23の実行の後、再びステップs17に戻り、このような動作が繰返される。ステップs22において、第1および第2条件下ではないとき、前述の図14のステップs9に移り、エラー処理となる。
【0125】
図12〜図17の実施の形態では、2つの熱交換器4,4aによって太陽熱温水装置2からの温水の熱が、マイクロバブルのための空気も用いて養殖水を昇温することになり、太陽熱を効率よく利用することができるとともに、冬などでは第1動作モードによってこれら2つの熱交換器4,4aによって養殖水を短時間で加熱し、養殖水の温度を予め定める温度T1,T2でほぼ一定に安定に保つことが容易である。また夏の環境温度が高い条件下では第2動作モードとし、養殖水を熱交換器4aを休止しておき、空気を熱交換器4のみを運転し、養殖水1の温度を、前述のように予め定める温度T1,T2でほぼ一定に安定に保つことができ、この場合、太陽熱温水装置2からの温水の熱は、他の用途にも利用することができる。
【0126】
第1および第2開閉弁V1,V2が閉じているとき、ポンプ31は休止されていてもよいが、運転され続けて、温水を他の用途に利用することができるようにしてもよい。
【0127】
図18は、本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。この実施の形態は前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態では、前述の図12における空気用熱交換器4と第2開閉弁V2とが省略され、吸入ファン71からの空気は、管路42,43に供給される。この実施の形態でもまた、養殖水用熱交換器4aでは、温水と養殖水との水総合管で向流間接熱交換が行われ、熱効率が図1〜図11の実施の形態に比べて向上される。
【0128】
図18に示される実施の形態における電気的構成は、前述の図13に示される実施の形態と同様であり、第2開閉弁V2は用いられない。図12〜図18では、空気は第3開閉弁V3によって選択的に管路43に供給される。
【0129】
図19は図18の実施の形態における処理回路402の動作を説明するためのフローチャートであり、図20は図18および図19に示される実施の形態における動作を説明するための図である。
【0130】
処理回路402の電源が投入され、ステップr1からステップr2に移ると、温度検出手段401は、養殖水の温度Tを検出し、その検出温度Tが予め定める温度T2未満であれば、次のステップr4に移り開閉弁V1を開く。これによって常時動作しているポンプ31aによる養殖水が養殖水用熱交換器4aで昇温され、水槽1の養殖水の温度Tが上昇する。
【0131】
図20(1)は温度検出手段401によって検出される養殖水の温度を示す図であり、図20は開閉弁V1の動作を説明するための図である。時刻t21において前述のステップr4で開閉弁V1が開かれ、これによって養殖水の温度Tが上昇していく。
【0132】
ステップr5で検出温度Tが予め定める温度T2にまで上昇すると(T2≦T)、次のステップr6では、時刻t22において開閉弁V1を閉じる。これによって養殖水の温度Tが、熱放散によって下降していく。ステップr7において、予め定める温度T1にまで下降すると(T<T1)、時刻t23においてステップr8では開閉弁V1をオンにし、養殖水の温度が再び上昇し、ステップr5に戻り、時刻t24でT2に達する。こうしてステップr5〜ステップr8の動作が繰返される。
【0133】
ステップr3で、検出温度Tが予め定める温度T2以上であれば、ステップr10でエラー処理とし、ステップr10で一連の動作を終了する。
【0134】
図21は、本発明の実施のさらに他の形態の一部の系統図である。この実施の形態は、図1〜図20に示される前述のマイクロバブル発生手段6aに代えて、本発明の他の考え方によるマイクロバブル発生手段6b付近の構成を示す。水槽1の養殖水には、養殖水を吸引して上昇するサクションポンプ411が設けられる。このポンプ411からの養殖水は、管路412から空気混入部413に圧送される。空気混入部413には、空気用熱交換器4で昇温された空気が管路42から圧送される。空気混入部413は、養殖水に空気が混入された状態で、気液混合流体となって管路414からマイクロバブル発生手段6bのマイクロバブル発生器6cに圧送される。マイクロバブル発生器6cは、養殖水が貯留されている容器50内に浸漬される。空気混入部413は、たとえばケーシング内に管路42のノズルから噴射される空気によって、ポンプ411からの養殖水が負圧吸引されるエジェクタまたはインジェクタなどの構成によって実現されてもよい。
【0135】
図22は、マイクロバブル発生器6cの構造を示す断面図である。このマイクロバブル発生器6cは、回転対称に形成された回転対称軸416の図22における左右双方に向かって縮径した左右対称な形状を有する中空部417を有するケーシング418を有する。このケーシング418の周壁部に接線方向に開口された気液混合流体の導入孔419が、回転対称軸416の図22における左右中央に設けられ、中空部417の回転対称軸416の方向にはマイクロバブル噴出孔421,422が開口し、中空部417の縮径部分に形成されている。導入孔419からケーシング418内に流入した気液混合流体の旋回流423,424による負圧軸416の位置に合わせて一致してマイクロバブル噴出孔421,422が形成される。導入孔419からの気液混合流体の液体には遠心力が働き、気体には向心力が働き、中心軸416に負圧軸が形成され、マイクロバブル噴出孔421,422付近の液体には、外部の液体がこれらのマイクロバブル噴出孔421,422内に進入しようとする力が働き、負圧軸416に集まった気体は、旋回している気液混合流体と負圧液とによって形成された圧縮気体となって通過し、多量のマイクロバブルを含む液体となってマイクロバブル噴出孔421,422から容器50内の液体内に噴出され、マイクロバブルが多量に発生された液体となる。
【0136】
図23は、図21および図22に示される前述の実施の形態の全体の構成を示す系統図である。この図21〜図23の実施の形態は、前述の図12〜図17の実施の形態に類似し、空気用熱交換器4と養殖水用熱交換器4aとが設けられ、マイクロバブル発生手段6dのマイクロバブル発生器6cのために、前述の空気混入部413とそれに関連するサクションポンプ411などが設けられる。その他の構成と動作は、前述の図12〜図17の実施の形態と同様である。
【0137】
本発明においてマイクロバブルは、直径が50μm以下の微細気泡であってもよいが、さらに小さいナノバブルであってもよく、このナノバブルは、直径100〜200nmである。本発明の実施の他の形態では、マイクロバブルよりも径が大きい気泡を含む流体がマイクロバブル発生手段6,6a,6b,6c,6dから発生されるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の一形態の養殖用水槽1の水温制御システムAを示す概念的構成図である。
【図2】外気の導入管72における外気取入口73付近を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。
【図3】給水管路52における第2の水浄化手段11が設置された部分を拡大して概念的に示す部分破断正面図である。
【図4】図3における切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】自動給餌装置12を拡大して概念的に示す縦断正面図である。
【図6】水温制御システムAの備えられる脱窒装置20を示す断面図である。
【図7】脱窒装置20を示す斜視図である。
【図8】有機炭素源供給層203に設けられる有機炭素源供給体226を示す斜視図である。
【図9】細菌生息層204に設けられる担体225の一例を示す斜視図である。
【図10】細菌生息層204に設けられる担体225の他の例を示す断面図である。
【図11】脱窒装置20の他の例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。
【図13】図12に示される実施の形態の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】図12〜図16に示される実施の形態を説明するための動作を示す図である。
【図18】本発明の実施のさらに他の形態の全体の系統図である。
【図19】図18の実施の形態における処理回路402の動作を説明するためのフローチャートである。
【図20】図18および図19に示される実施の形態における動作を説明するための図である。
【0139】
【図21】本発明の実施のさらに他の形態の一部の系統図である。
【図22】マイクロバブル発生器6cの構造を示す断面図である。
【図23】図21および図22に示される実施の形態の全体の構成を示す系統図である。
【符号の説明】
【0140】
1 養殖用水槽
2 太陽熱温水装置
3 温水循環路
4 液−気熱交換器
4a 養殖水用熱交換器
5 気−液熱交換器
6 マイクロバブル発生器
6a,6b マイクロバブル発生手段
7 外気の導入部
8 補助加熱手段
9 補助加熱手段
10 水浄化手段
11 水浄化手段
12 自動給餌装置
13 風力発電手段
14 太陽光発電手段
20 脱窒装置
43 給気管路
51 オーバーフロー排出口
52 給水管路
73 外気の取入口
A 養殖用水槽の水温制御システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類等の養殖用水槽における水温の制御システムであって、
太陽熱温水装置と、
前記太陽熱温水装置で生成される温水を循環させる温水循環路と、
前記温水循環路の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器と、
前記液−気熱交換器により生成された暖気を導入して前記養殖用水槽から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を前記養殖用水槽へ還流する気−液熱交換器とを含み、
前記気−液熱交換器内には、マイクロバブル発生器が設置され、前記暖気は、前記マイクロバブル発生器によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽から供給される水と接触するよう構成されていることを特徴とする養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項2】
前記気−液熱交換器の上部には、オーバーフロー排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項3】
前記液−気熱交換器から、前記養殖用水槽に直接暖気を供給する給気管路を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項4】
前記養殖用水槽から前記気−液熱交換器への給水管路には、水浄化手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項5】
前記水浄化手段が、フィルターからなることを特徴とする請求項4に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項6】
前記水浄化手段が、紫外線殺菌灯からなることを特徴とする請求項4に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項7】
前記水浄化手段が、光触媒を担持させた担持体と、前記担持体に向け紫外線を照射するよう設置された紫外線灯とからなることを特徴とする請求項4に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項8】
前記液−気熱交換器への外気の導入部には、補助加熱手段により加熱された外気を導入するための導入管が接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項9】
前記補助加熱手段は、前記導入管の外気取入口に設置される太陽熱の集熱および放熱手段からなることを特徴とする請求項8に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項10】
前記補助加熱手段は、前記導入管内に設置され、少なくとも前記導入管の外気取入口に設置される風力発電手段または太陽光発電手段によって得た電力を電源として発光する赤外線灯からなることを特徴とする請求項8または9に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項11】
前記養殖用水槽の上には、風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を駆動源として作動する自動給餌装置が設置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項12】
前記養殖用水槽から前記気−液熱交換器への給水管路には、前記養殖用水槽から供給される水中に含まれる硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる脱窒装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項13】
前記脱窒装置は、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれる複数の有機炭素源供給層と、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する複数の細菌生息層とが、交互に積層され、
各有機炭素源供給層は、
多糖類が、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられることを特徴とする請求項12記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項14】
前記脱窒装置は、
(a)上方に開放した直方体形状の容器221と、
(b)積層体であって、
容器221の底部206から上方に向かって、交互に積層される複数の有機炭素源供給層203a〜203eと、複数の細菌生息層204a〜204dとを有し、
これらの積層された有機炭素源供給層203a〜203eと細菌生息層204a〜204dとのうち、最下層と最上層とは、有機炭素源供給層203a,203eであり、
各有機炭素源供給層203a〜203eは、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれ、この多糖類は、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させる炭素塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられ、
各細菌生息層204a〜204dは、
連続空隙の多孔質材料から成る担体225の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有し、
前記最下層である有機炭素源供給層203aの上に設けられた最下の細菌生息層204aと、前記最上層である有機炭素源供給層203eの下に設けられた最上の細菌生息層204dとの第1の前記担体(225、図9)の空隙率は、残余の細菌生息層204cの第2の前記担体(225、図10)の空隙率よりも高く、かつ、
第1の前記担体(225、図9)に比べて、第2の前記担体(225、図10)のほうが表面積が大きい積層体と、
(c)容器221の一側部に設けられ、前記最上層である有機炭素源供給層203eと、前記最上の細菌生息層204dとに開口し、脱窒されるべき硝酸を含む液体を供給する供給管路207と、
(d)容器221の前記一側部と反対側の他側部に設けられ、前記最下の細菌生息層204aに開口し、積層体を収容した容器221内を流下した液体を排出する排出管路208とを含むことを特徴とする請求項12記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項15】
有機炭素源供給層における体積混合比は、
キチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂
=1〜2:4:4〜5
であることを特徴とする請求項13または14に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項16】
前記脱窒装置は、
硝酸を含む液体中の前記硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる脱窒装置において、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源であるセルロースが含まれる有機炭素源供給層を備え、
有機炭素源供給層の下流に、複数のミネラル供給層と複数の細菌生息層とが、交互に積層されて配置され、
各ミネラル供給層は、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、セルロースをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とを有し、
各細菌生息層は、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有することを特徴とする請求項12記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項17】
魚介類等の養殖用水槽1における水温の制御システムであって、
太陽熱によって水を加熱する太陽熱温水装置2と、
太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3,3a,3d,3eと、
温水循環路3,3a,3d,3eの途中に配設され、前記温水と養殖用水槽1のための水とを間接熱交換する養殖水用熱交換器4aと、
空気と養殖用水槽1からの水とによってマイクロバブルを発生するマイクロバブル発生手段6aと、
マイクロバブル発生手段6aからのマイクロバブルが発生された水を養殖水用熱交換器4aに導き、この養殖水用熱交換器4aからの前記温水によって加熱された水を養殖用水槽1に供給し、養殖用水槽1からの水をマイクロバブル発生手段6aに導いて、養殖用水槽1の水を循環する給水管路52,53a,53とを含むことを特徴とする養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項18】
温水循環路3,3a〜3eの途中に配設され、前記温水によって外気である空気を加熱して熱交換する空気用熱交換器4をさらに含み、
マイクロバブル発生手段6aは、空気用熱交換器4から供給される加熱された空気によってマイクロバブルを発生することを特徴とする請求項17記載の養殖用水槽の水温システム。
【請求項19】
養殖用水槽1の水の温度を検出する手段401と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から養殖水用熱交換器4aに流れる温水の流路を開閉する第1開閉弁V1と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から空気用熱交換器4に流れる温水の流路を開閉する第2開閉弁V2と、
制御手段402であって、
水温検出手段401からの出力に応答し、
第1および第2温度T1,T2が予め設定され(ただしT1<T2)、
検出された温度Tが第2温度T2未満であるとき、第1および第2開閉弁V1,V2を開き、
こうして第1および第2開閉弁V1,V2を開くことによって、検出された温度Tの温度上昇の時間変化率αを演算し、
その演算された温度上昇の時間変化率αが、予め定める値α1未満(α<α1)である第1の場合、第1および第2開閉弁V1,V2を開く第1動作モードとし、
前記演算された温度上昇の時間変化率αが予め定める値α1以上(α1≦α)である第2の場合、第1開閉弁V1を閉じ、第2開閉弁V2を開く第2動作モードとし、
その後、検出された温度Tが第2温度T2以上に上昇したとき、第1および第2開閉弁V1,V2を閉じ、
検出された温度Tが第1温度T1未満にまで下降したとき、前記第1の場合には第1動作モードとし、第2の場合には第2動作モードとする制御手段402とを含むことを特徴とする請求項18記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項20】
養殖用水槽1からの水を供給するサクションポンプ411と、
サクションポンプ411からの水と、空気用熱交換器4からの加熱された空気とを混合して気液混合流体を導出する空気混入部413とをさらに含み、
空気混入部413からの気液混合流体を、マイクロバブル発生手段6bへ導いてマイクロバブルを発生させることを特徴とする請求項18記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項21】
マイクロバブル発生手段6bは、ハウジング418を有し、
このハウジング418は、
回転対称に形成され、回転対称軸416の軸線方向の双方に向かって縮径した中空部417を有し、
このハウジング418の周壁部に、気液導入孔419が接線方向に開口され、
ハウジング418の中空部の縮径部分に回転対称軸416の双方向にマイクロバブル噴出孔421,422が開口し、
マイクロバブル噴出孔421,422が、ハウジング418内に流入した気液混合流体の旋回流によって形成される負圧軸の位置に一致して形成されることを特徴とする請求項20記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項1】
魚介類等の養殖用水槽における水温の制御システムであって、
太陽熱温水装置と、
前記太陽熱温水装置で生成される温水を循環させる温水循環路と、
前記温水循環路の途中に配設され、導入される外気に熱交換して暖気を生成する液−気熱交換器と、
前記液−気熱交換器により生成された暖気を導入して前記養殖用水槽から供給される水に熱交換して温水とし、この熱交換温水を前記養殖用水槽へ還流する気−液熱交換器とを含み、
前記気−液熱交換器内には、マイクロバブル発生器が設置され、前記暖気は、前記マイクロバブル発生器によってマイクロバブル化されて、前記養殖用水槽から供給される水と接触するよう構成されていることを特徴とする養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項2】
前記気−液熱交換器の上部には、オーバーフロー排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項3】
前記液−気熱交換器から、前記養殖用水槽に直接暖気を供給する給気管路を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項4】
前記養殖用水槽から前記気−液熱交換器への給水管路には、水浄化手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項5】
前記水浄化手段が、フィルターからなることを特徴とする請求項4に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項6】
前記水浄化手段が、紫外線殺菌灯からなることを特徴とする請求項4に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項7】
前記水浄化手段が、光触媒を担持させた担持体と、前記担持体に向け紫外線を照射するよう設置された紫外線灯とからなることを特徴とする請求項4に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項8】
前記液−気熱交換器への外気の導入部には、補助加熱手段により加熱された外気を導入するための導入管が接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項9】
前記補助加熱手段は、前記導入管の外気取入口に設置される太陽熱の集熱および放熱手段からなることを特徴とする請求項8に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項10】
前記補助加熱手段は、前記導入管内に設置され、少なくとも前記導入管の外気取入口に設置される風力発電手段または太陽光発電手段によって得た電力を電源として発光する赤外線灯からなることを特徴とする請求項8または9に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項11】
前記養殖用水槽の上には、風力発電手段および太陽光発電手段によって得た電力を駆動源として作動する自動給餌装置が設置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項12】
前記養殖用水槽から前記気−液熱交換器への給水管路には、前記養殖用水槽から供給される水中に含まれる硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる脱窒装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項13】
前記脱窒装置は、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれる複数の有機炭素源供給層と、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する複数の細菌生息層とが、交互に積層され、
各有機炭素源供給層は、
多糖類が、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられることを特徴とする請求項12記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項14】
前記脱窒装置は、
(a)上方に開放した直方体形状の容器221と、
(b)積層体であって、
容器221の底部206から上方に向かって、交互に積層される複数の有機炭素源供給層203a〜203eと、複数の細菌生息層204a〜204dとを有し、
これらの積層された有機炭素源供給層203a〜203eと細菌生息層204a〜204dとのうち、最下層と最上層とは、有機炭素源供給層203a,203eであり、
各有機炭素源供給層203a〜203eは、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源である多糖類が含まれ、この多糖類は、キチンであり、
粉末の状態のキチンと、液体にミネラル成分を溶解させる炭素塩鉱物の粉末と、キチンをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とが、不織布から成る袋体に収納されて設けられ、
各細菌生息層204a〜204dは、
連続空隙の多孔質材料から成る担体225の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有し、
前記最下層である有機炭素源供給層203aの上に設けられた最下の細菌生息層204aと、前記最上層である有機炭素源供給層203eの下に設けられた最上の細菌生息層204dとの第1の前記担体(225、図9)の空隙率は、残余の細菌生息層204cの第2の前記担体(225、図10)の空隙率よりも高く、かつ、
第1の前記担体(225、図9)に比べて、第2の前記担体(225、図10)のほうが表面積が大きい積層体と、
(c)容器221の一側部に設けられ、前記最上層である有機炭素源供給層203eと、前記最上の細菌生息層204dとに開口し、脱窒されるべき硝酸を含む液体を供給する供給管路207と、
(d)容器221の前記一側部と反対側の他側部に設けられ、前記最下の細菌生息層204aに開口し、積層体を収容した容器221内を流下した液体を排出する排出管路208とを含むことを特徴とする請求項12記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項15】
有機炭素源供給層における体積混合比は、
キチンの粉末:炭酸塩鉱物の粉末:細砂
=1〜2:4:4〜5
であることを特徴とする請求項13または14に記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項16】
前記脱窒装置は、
硝酸を含む液体中の前記硝酸を、脱窒細菌を利用して窒素ガスに変化させる脱窒装置において、
脱窒細菌に有機炭素を与えるために液体中に有機炭素源であるセルロースが含まれる有機炭素源供給層を備え、
有機炭素源供給層の下流に、複数のミネラル供給層と複数の細菌生息層とが、交互に積層されて配置され、
各ミネラル供給層は、液体にミネラル成分を溶解させて与える炭酸塩鉱物の粉末と、セルロースをグルコースに分解する細菌が付着している細砂とを有し、
各細菌生息層は、連続空隙の多孔質材料から成る担体の前記空隙に脱窒細菌が生息する構成を有することを特徴とする請求項12記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項17】
魚介類等の養殖用水槽1における水温の制御システムであって、
太陽熱によって水を加熱する太陽熱温水装置2と、
太陽熱温水装置2で生成される温水を循環させる温水循環路3,3a,3d,3eと、
温水循環路3,3a,3d,3eの途中に配設され、前記温水と養殖用水槽1のための水とを間接熱交換する養殖水用熱交換器4aと、
空気と養殖用水槽1からの水とによってマイクロバブルを発生するマイクロバブル発生手段6aと、
マイクロバブル発生手段6aからのマイクロバブルが発生された水を養殖水用熱交換器4aに導き、この養殖水用熱交換器4aからの前記温水によって加熱された水を養殖用水槽1に供給し、養殖用水槽1からの水をマイクロバブル発生手段6aに導いて、養殖用水槽1の水を循環する給水管路52,53a,53とを含むことを特徴とする養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項18】
温水循環路3,3a〜3eの途中に配設され、前記温水によって外気である空気を加熱して熱交換する空気用熱交換器4をさらに含み、
マイクロバブル発生手段6aは、空気用熱交換器4から供給される加熱された空気によってマイクロバブルを発生することを特徴とする請求項17記載の養殖用水槽の水温システム。
【請求項19】
養殖用水槽1の水の温度を検出する手段401と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から養殖水用熱交換器4aに流れる温水の流路を開閉する第1開閉弁V1と、
温水循環路3,3a〜3eにおける太陽熱温水装置2から空気用熱交換器4に流れる温水の流路を開閉する第2開閉弁V2と、
制御手段402であって、
水温検出手段401からの出力に応答し、
第1および第2温度T1,T2が予め設定され(ただしT1<T2)、
検出された温度Tが第2温度T2未満であるとき、第1および第2開閉弁V1,V2を開き、
こうして第1および第2開閉弁V1,V2を開くことによって、検出された温度Tの温度上昇の時間変化率αを演算し、
その演算された温度上昇の時間変化率αが、予め定める値α1未満(α<α1)である第1の場合、第1および第2開閉弁V1,V2を開く第1動作モードとし、
前記演算された温度上昇の時間変化率αが予め定める値α1以上(α1≦α)である第2の場合、第1開閉弁V1を閉じ、第2開閉弁V2を開く第2動作モードとし、
その後、検出された温度Tが第2温度T2以上に上昇したとき、第1および第2開閉弁V1,V2を閉じ、
検出された温度Tが第1温度T1未満にまで下降したとき、前記第1の場合には第1動作モードとし、第2の場合には第2動作モードとする制御手段402とを含むことを特徴とする請求項18記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項20】
養殖用水槽1からの水を供給するサクションポンプ411と、
サクションポンプ411からの水と、空気用熱交換器4からの加熱された空気とを混合して気液混合流体を導出する空気混入部413とをさらに含み、
空気混入部413からの気液混合流体を、マイクロバブル発生手段6bへ導いてマイクロバブルを発生させることを特徴とする請求項18記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【請求項21】
マイクロバブル発生手段6bは、ハウジング418を有し、
このハウジング418は、
回転対称に形成され、回転対称軸416の軸線方向の双方に向かって縮径した中空部417を有し、
このハウジング418の周壁部に、気液導入孔419が接線方向に開口され、
ハウジング418の中空部の縮径部分に回転対称軸416の双方向にマイクロバブル噴出孔421,422が開口し、
マイクロバブル噴出孔421,422が、ハウジング418内に流入した気液混合流体の旋回流によって形成される負圧軸の位置に一致して形成されることを特徴とする請求項20記載の養殖用水槽の水温制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図7】
【図2】
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【図7】
【公開番号】特開2010−57366(P2010−57366A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208545(P2008−208545)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(592002950)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(592002950)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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