説明

養毛化粧料

【課題】頭部に塗布されることによって、頭皮からの吸収により育毛効果を発揮すると共に、毛髪への付着により毛髪の「ハリコシ感」や「ツヤ感」を向上させ、必要によって毛髪のキシミ感、パサツキ感を抑制する効果をも発揮する養毛化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の養毛化粧料は、少なくともスサビノリまたは加水分解スサビノリを配合したものであり、頭部へ塗布して使用することにより、優れた育毛効果を発揮すると共に、毛髪へ「ハリコシ感」と「ツヤ感」を付与することができ、必要により更に、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を配合することにより、毛髪のキシミ感、パサツキ感を抑制し、毛髪のコンディションを良好にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に塗布されることによって、頭皮からの吸収により育毛効果を発揮すると共に、毛髪への付着により毛髪の「ハリコシ感」や「ツヤ感」を向上させ、必要によって毛髪のキシミ感、パサツキ感を抑制する効果をも発揮する養毛化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会の高齢化や社会環境の変化に伴い、薄毛、脱毛で悩む人が増えている。薄毛、脱毛は一般的に遺伝的要因が大きいと言われているが、それ以外にも「男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの不均衡」、「日常の頭皮ケア不足」、「過度のストレス」、「急激なダイエット」、「偏った食生活」等も原因として挙げられている。また、男女を問わず加齢による毛髪のハリコシ感やツヤ感の低下で悩む人も増えている。
【0003】
毛髪は毛母細胞が分裂を繰り返し、角化することにより成長する。毛母細胞が正常に分裂を繰り返すためには、周囲の毛細血管から栄養分を吸収する必要がある。しかしながら、上記のような加齢や社会環境の変化等が一因となり、頭皮の毛細血管が細くなり、血流量が低下すると、毛母細胞に十分な栄養分が届かず、その結果、「薄毛」、毛髪の「ハリコシ感」や「ツヤ感」の低下といった現象が起こる。従って、一般的に育毛剤、養毛剤、発毛剤(以下、これらを総称して「養毛化粧料」と呼ぶことがある)は、「細胞賦活効果」のある成分や「血行促進効果」のある成分を含有し、毛母細胞の分裂を促進する作用を有するものとなる。
【0004】
また、毛髪が健やかに成長するためには、頭皮(毛穴)環境を清潔に保つ必要があるため、養毛化粧料には、「殺菌、静菌効果」のある成分や「抗炎症効果」のある成分も配合される。このように、養毛化粧料とは、「細胞賦活」、「血行促進」、「殺菌、静菌」、「抗炎症」等の効果のある成分を有効成分として含有するものが一般的である。
【0005】
「薄毛」、「脱毛」、毛髪の「ハリコシ感」や「ツヤ感」の低下で悩む人は、毛髪の量を増やし、「ハリコシ感」や「ツヤ感」を付与することを強く望んでおり、それらの要望に対応するため、これまでにも様々な育毛剤、養毛剤、発毛剤が開発されている(例えば、非特許文献1〜4)。
【0006】
ところで、スサビノリやその分解物(加水分解物)は、主に食品に使用されており、経口投与することで、血圧降下作用等をもたらすことは知られている。例えば特許文献1には、紅藻類アマノリ属に属する海藻に、ビブリオ属に属する微生物の産生する多糖類分解酵素を作用させて、スサビノリが海藻の分解物として得られること、およびこの分解物を添加した食用組成物について開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、スサビノリの分解方法についても提案されている。この方法では、スサビノリを50℃前後で12時間以上ペプシン分解することが提案されており、得られた分解物(ペプチド混合物)はアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有し、且つ特定のアミノ酸配列を持つことが示されている。このようにして得られたスサビノリ分解物についても、経口投与することにより、血圧降下作用や血漿コレステロール低下作用等を有することが確認されている。しかしながら、スサビノリやその分解物を育毛剤や発毛剤、養毛化粧料に使用した例はなく、その効果も知られていない。
【0008】
これまでにも、育毛剤、養毛剤、発毛剤等に使用された例がなかった成分であるイソステアロイル加水分解コラーゲンまたはその塩が、優れた育毛効果を有することが発見され、この成分と、n−ペンタデシルニコチネート、セファランチンおよびニコチン酸ベンジルから選ばれる成分とを有効成分として含有する育毛剤についても提案されている(例えば、特許文献3)。
【0009】
また、哺乳動物の乳汁や唾液、涙液、粘膜分泌物等の体液中に含有されるラクトフェリンやその誘導体、その加水分解物が発毛促進効果を有することも示されている(例えば、特許文献4、5)。
【0010】
ところで、養毛化粧料は、有効成分を溶解させるためにアルコールを含有しているのが一般的である。しかしながら、毛髪にアルコールが付着すると感触が悪化し、キシミ感やパサツキ感が発生し、毛髪のコンディションが悪くなる。こうした現象は、しばしば問題となり、養毛化粧料においては、キシミ感やパサツキ感の抑制効果を備えることも一つの重要な要件となる。
【0011】
キシミ感やパサツキ感を抑制する効果を発揮する養毛化粧料として、これまでにも各種のものが提案されている。例えば、特許文献6には、茶葉の抽出物とゲンチアナの抽出物の混合液は、毛髪のキシミ感を低減させることが開示されている。また特許文献7には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液とゲンチアナエキスを配合することで、キシミ感やパサツキ感を抑制する効果を有した養毛化粧料が提案されている。
【非特許文献1】「毛髪ドクター」Irwin I Lubowe著、白揚社発刊、『上手な髪の手入れとハゲの退治法』、1962年発行、第185〜218頁
【非特許文献2】「ハゲは治る」稲葉益巳著、毎日新聞社発刊、『ハゲの実際と治療法』、1977年発行、第97〜123頁
【非特許文献3】「発毛・育毛に何が効くか」武田克之著、青春出版社発刊、『育毛剤・養毛剤・発毛促進剤・・・優劣チェック』、1988年発行、第75〜115頁
【非特許文献4】「TOMOTOMO 10月号」鷲家真吾著、新美容出版社発刊、『抜け毛に悩んでいるお客様・・・。どんなアドバイスをしてあげたらいい?』、2005年発刊、第75〜77頁
【特許文献1】特開平06−225724号公報 特許請求の範囲等
【特許文献2】特許第3272621号公報 特許請求の範囲等
【特許文献3】特許第3247764号公報 特許請求の範囲等
【特許文献4】特開2007−031418号公報 特許請求の範囲等
【特許文献5】特開平07−196529号公報 特許請求の範囲等
【特許文献6】特開平09−077639号公報 特許請求の範囲等
【特許文献7】特開2008−031129号公報 特許請求の範囲等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、これまでにも様々な養毛化粧料が開発されているものの、それらの育毛効果は未だ十分とは言えず、また「ハリコシ感」や「ツヤ感」の向上効果についても、満足できるものではなかった。こうしたことから、優れた育毛効果を持ち、なお且つ毛髪にハリコシ感やツヤ感を付与することのできる養毛化粧料が必要とされていた。また、養毛化粧料に含有されるアルコール由来の毛髪のキシミ感、パサツキ感についても、これを抑制することが望まれているのが実情である。
【0013】
本発明は上記の様な実情に着目してなされたものであって、その目的は、頭部に塗布されることによって、頭皮からの吸収により育毛効果を発揮すると共に、毛髪への付着により毛髪の「ハリコシ感」や「ツヤ感」を向上させ、必要によって毛髪のキシミ感、パサツキ感を抑制する効果をも発揮する養毛化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成することのできた本発明の養毛化粧料とは、少なくともスサビノリまたは加水分解スサビノリを配合したものである点に要旨を有するものである。本発明の養毛化粧料においては、前記加水分解スサビノリの配合量は、養毛化粧料全体に占める割合で0.001〜0.3質量%であることが好ましい。
【0015】
本発明の養毛化粧料においては、必要によって、更に、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を、養毛化粧料全体に占める割合で0.0005〜1.0質量%の割合で配合することも好ましく、これによって毛髪のキシミ感、パサツキ感を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スサビノリまたは加水分解スサビノリを配合することによって、優れた育毛効果が発揮されると共に、毛髪にハリコシ感やツヤ感を付与することができる養毛化粧料が実現でき、必要によって2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体をも配合することによって、毛髪のキシミ感やパサツキ感を抑制することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明者らは、上記の課題を解決するために、様々な角度から検討した。その結果、主に食品に使用されているスサビノリまたはその加水分解物を含有する養毛化粧料を頭部へ塗布して使用することにより、優れた育毛効果を発揮すると共に、毛髪へ「ハリコシ感」と「ツヤ感」を付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
スサビノリやその加水分解物は、これまでにも主に食品に使用されており、経口投与することで、血圧降下作用や血漿コレステロール低下作用等を有することが知られている。しかしながら、スサビノリやその加水分解物(加水分解スサビノリ)を育毛剤や発毛剤、養毛化粧料に使用した例はなく、その効果は知られていなかった。そこで、本発明者らが検討したところによれば、このようなスサビノリまたは加水分解スサビノリを配合した養毛化粧料を頭部へ塗布して使用することにより、優れた育毛効果を発揮すると共に、毛髪へ「ハリコシ感」と「ツヤ感」を付与できることが判明したのである。
【0019】
上記のような効果を有効に発揮させるためには、加水分解スサビノリを使用する場合で、0.001質量%以上(養毛化粧料全体に占める割合)配合させることが好ましい。しかしながら、加水分解スサビノリの配合量が過剰になると、毛髪に塗布したときにベタ付き感が生じてしまい、「ハリコシ感」が却って低下するので、0.3質量%以下(養毛化粧料全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0020】
一方、スサビノリは、有効成分の含有量が不明であり(育毛に関係する有効成分の特定には至っていない)、加水分解スサビノリ中にも完全に分解できていないスサビノリを含むことから、スサビノリを使用するときの適切な配合量も不明であるため、上記基準に即して適宜、適切な量を配合すれば良い。
【0021】
本発明の養毛化粧料には、必要によって、更に2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含有させることも有用である。この2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体は、毛髪のキシミ感やパサツキ感を抑制する効果を発揮するものである。こうした効果を発揮させるためには、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の配合割合は、養毛化粧料全体に占める割合で0.0005質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の配合割合が過剰になると、毛髪に塗布したときにベタ付き感が生じてしまい、毛髪のコンディションが却って低下するので、1.0質量%以下(養毛化粧料全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0022】
本発明の養毛化粧料は、スサビノリまたは加水分解スサビノリが必須成分であるが、その他、養毛化粧料に含まれる通常の有効成分や添加剤を含むものであっても良い。こうした有効成分としては、細胞賦活剤、血行促進剤、抗炎症剤、殺菌剤、静菌剤等を挙げることができる。
【0023】
上記有効成分としての細胞賦活剤としては、パントテン酸およびその誘導体(パントテニルエチルエーテル)、N−アセチル−L−メチオニン、タマサキツヅラフジアルカロイド、セファランチン、アデノシン三リン酸ジナトリウム、アスパラギン酸カリウム、感光素301号、ニンジンエキス、ビオチン、モノニトログアヤコール、アラントン、ペンタデカングリセリド、酵母エキス、ニンニク成分、真珠蛋白抽出液、タイソウエキス、プラセンタエキス、ローヤルゼリー等が挙げられる。
【0024】
血行促進剤としては、塩化カルプロニウム、センブリエキス、トウガラシチンキ、セファランチン、ニコチン酸ベンジル、ニンニクエキス、トウキエキス、γ−オリザノール、カンゾウ、ミノキシジル、センキュウ、チクセツニンジン、オタネニンジン、ショウガ、ジオウ、アロエ、スピロノラクトン、ビタミンB6塩酸塩(塩酸ピリドキシン)、D−カンフル、DL−カンフル、DL−α−トコフェロール、ヨウ化ニンニクエキス、DL−α−トコフェロールリノレイン酸エステル、イノシトールヘキサニコチン酸エステル、ビタミンE、デキストラン硫酸ナトリウム、ニコチン酸、DL−α−トコフェロールニコチン酸エステル、ニコチン酸ブトキシエチル、ニコチン酸メチル、ノナン酸バニリルアミド、コハク酸DL−α−トコフェロール、酢酸DL−α−トコフェロール、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ等が挙げられる。
【0025】
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸およびその誘導体、グリチルレチン酸およびその誘導体、脂溶性グリチルレチン酸類、甘草エキス、アズレン、グアイアズレン、ジフェンヒドラミン等の抗ヒスタミン剤、シコンエキス、エイジツエキス、オウゴンエキス、カミツレエキス、クマザサエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、桃葉エキス、セイヨウノコギリソウエキス、キキョウエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン等が挙げられる。
【0026】
殺菌剤、静菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、レゾルシン、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、イオウ、感光素201号、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジンクピリチオン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、サリチル酸、ピロクトンオラミン、ヒノキチオール、ソルビン酸カリウム、フェノール等が挙げられる。
【0027】
養毛化粧料の添加剤としては、保湿剤、色素、香料、防腐剤、角質溶解剤、抗酸化剤、pH調整剤・酸・アルカリ剤等を適宜配合することができる。
【0028】
上記保湿剤としては、1,3−ブチレングリコ−ル、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、コラーゲン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、シルク蛋白分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド等の蛋白質・ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス等の植物抽出成分類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、コンドロイチン硫酸、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
防腐剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸塩類、フェノキシエタノール、四級アンモニウム塩類等が挙げられる。
【0030】
pH調整剤・酸・アルカリ剤としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、アンモニア水、アミノメチルプロパノール若しくはそれらの塩類等が挙げられる。
【0031】
本発明の養毛化粧料を溶解する溶剤類としては、水、エタノールやデカメチルシクロペンタシロキサンが一般的であるが、これらの他にも、2−プロパノール等の低級アルコール類等を使用することができる。また、本発明の養毛化粧料の剤型は、液状が有用である。
【実施例】
【0032】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0033】
[実施例1]
(育毛効果の評価方法)
試験動物として、6週令のC3H/He雄性マウス(1群10〜15匹)を1週間予備飼育し、試験実施の前日、エーテル麻酔下で動物の背部約8cm2の皮膚表面を、動物用電気バリカン(夏目製作所株式会社製)で皮膚を傷つけないように剪毛した。除毛した動物の各背部皮膚に、下記表1に示す試料(処方例1〜5)を1日1回、土、日曜日を除く連日塗布した。1回の塗布量は150μL/回とし、マイクロピペットにて滴下後、テフロン製の棒にて部位全体に塗り広げた。毛再生の評価は、除毛部に対する毛再生部の面積比(発毛面積(%))の経日変化より行った。
【0034】
発毛面積(%)は以下の手順で求めた。発毛が確認された時点から、連日デジタルカメラを用い、塗布部位の写真を撮影した。その後、画像処理ソフト「Image J」で画像を読み込み、ペンタブレットを用いて塗布部位全体と発毛部位とを選択し、各部位の面積をピクセル数にて測定した。発毛部位のピクセル数(s)と塗布部位全体のピクセル数(S)より、下記(1)式を用いて発毛面積(%)を算出した。その結果を、表1に併記する。また表1の結果に基づき、発毛面積の経日変化(経過日数と発毛面積の関係)を図1に示す。
発毛面積(%)=s/S×100 …(1)
【0035】
【表1】

【0036】
この結果から明らかなように、加水分解スサビノリを配合した処方例1、3〜5において、明らかな育毛効果が認められ(表1中「○」で示す)、加水分解スサビノリを配合していない処方例2においては、育毛効果が低下していることが分かる(表1中「×」で示す)。即ち、ラクトフェリン液や加水分解シルクエチル液よりも、加水分解スサビノリは、高い育毛効果を有している。
【0037】
[実施例2]
(毛髪の弾力感測定方法:ハリコシ感の確認試験1)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理)を受けていない毛髪を10cm(重さ:0.125g)の長さに揃え、温度:20℃、湿度:60%で12時間放置した。続いて、温度:20℃、湿度:60%の室内にて以下の試験を実施した。下記表2、3に示す各試料(処方例6〜22)0.125gを毛髪へ塗布した。毛髪と試料の総量が0.1375gとなるように、タオルで試料を拭き取った後、地面と並行に毛髪を固定し、垂直面から地面と水平に定規を当てて、重力により毛髪が垂れてくる度合い(弾力感測定値)を毛先の中央部で測定し、下記の基準で評価した。このときの測定状況を図2(図面代用写真)に示す。このような弾力性は、通常ハリコシ感との整合性が図れる為、今回の評価基準とした。結果を下記表2、3に併記する。
【0038】
[毛髪へのハリコシ感付与効果の評価基準1]
◎:弾力感測定値が7.4cm以上
○:弾力感測定値が7.2cm以上、7.4cm未満
△:弾力感測定値が7.0cm以上、7.2cm未満
×:弾力感測定値が7.0cm未満
【0039】
(毛髪の曲げ剛性測定方法:ハリコシ感の確認試験2)
(A)対象毛髪
化学的処理を受けていない毛髪を用い、「毛髪直径計測システム」(カトーテック株式会社製)により毛髪の直径[長径(mm)および短径(mm)]を計測し、毛髪の横断面(mm2)を下記(2)式より求めた。
横断面(mm2)=(π/4)×長径(mm)×短径(mm)…(2)
このとき、同程度の横断面積の毛髪を8本選抜し、それらの毛髪を幅12mmの塩化ビニル板上に貼り付け、曲げ剛性測定用毛束(測定用毛束)を作製した。また測定は、毛髪1本当りの曲げ剛性を算出した。
(B)初期値測定(初期値の測定は同特性の毛束を選択するために行った)
(1)毛髪の処理:処方例6〜22を浴比1:1で測定用毛束に塗布した。
(2)毛髪の調湿:測定用毛束を(20℃、湿度60%)で24時間以上調湿した。
(3)測定機器と条件:測定には、シングルヘアーベンディングテスター「KES−SH」(カトーテック株式会社製)を用いた。
(4)測定は、最大曲率2cm-1、トルク感度1.0(1.00gf・cm)、最大変位速度レンジ5(0.42cm-1/sec)の条件にて行った。このときの評価基準は下記の通りである。結果を下記表2、3に併記する。
【0040】
[毛髪へのハリコシ感付与効果の評価基準2]
◎:毛髪1本当りの曲げ剛性が190mgf・cm2以上
○:毛髪1本当りの曲げ剛性が185mgf・cm2以上、190mgf・cm2未満
△:毛髪1本当りの曲げ剛性が180mgf・cm2以上、185mgf・cm2未満
×:毛髪1本当りの曲げ剛性が180mgf・cm2未満
【0041】
(ハリコシ感付与効果の官能評価方法:ハリコシ感の確認試験3)
化学的処理を受けていない毛髪に、下記表3に示す各試料(処方例15〜22)を浴比1:1になるよう塗布した。毛髪を自然乾燥させた後、毛髪のハリコシ感を専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を表3に併記した。このとき、前記表2に示した処方例6、9、10を用いて、同様の処理をした結果についても示した。
【0042】
3点…処理前と比較し、明らかにハリコシ感が出た。
2点…処理前と比較し、少しハリコシ感が出た。
1点…処理前と比較し、ハリコシ感が出なかった。
【0043】
[毛髪へのハリコシ感付与効果の評価基準3]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0044】
(ツヤ感付与効果の官能評価方法)
化学的処理を受けていない毛髪に、下記表3に示した各試料(処方例15〜22)を浴比1:1になるよう塗布した。毛髪を自然乾燥させた後、毛髪表面のツヤ感を専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を表3に併記した。このとき、前記表2に示した処方例6、9、10を用いて、同様の処理をした結果についても示した。
【0045】
3点…処理前と比較し、明らかにツヤ感が出た。
2点…処理前と比較し、少しツヤ感が出た。
1点…処理前と比較し、ツヤ感が出なかった。
【0046】
[毛髪へのツヤ感付与効果の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
この結果から明らかなように、加水分解スサビノリを0.033〜10.0質量%(純分換算:0.001〜0.3%)配合した場合(処方例6、16〜20)には、ハリコシ感付与効果およびツヤ感付与効果も高いことが分かる。しかしながら、加水分解スサビノリの配合割合が過剰になると(処方例21、22)、ベタ付き感が生じることが分かる。これに対して、加水分解ダイズタンパクや加水分解ケラチンを配合した場合(処方例9、10)では、ハリコシ感付与効果は高いものの、ツヤ感付与効果は低いことが分かる。
【0050】
[実施例3]
(摩擦係数測定方法)
(A)対象毛髪
化学的処理を受けていない毛髪を用いて、摩擦感測定用固定ヘアピース(以下、「測定用毛束」と呼ぶ)を作製した。
(B)測定および評価
(1)毛髪の処理:処方例17、23〜28を浴比1:1で測定用毛束に塗布した。
(2)毛髪の調湿:測定用毛束を(20°C、湿度60%)で24時間以上調湿した。
(3)測定機器と条件:測定には、摩擦感テスター「KES−SE」(カトーテック株式会社製)を用いた。
(4)測定は、測定感度:H、摩擦静荷重:50gf、センサー:シリコンタイプの条件にて行った。走査は、順方向(根元からの毛先)にて行った。MIU値(算出数値)に係数0.1を掛け、摩擦係数μを求めた。その結果を下記表4に併記する。
【0051】
[すべり感(摩擦係数μ)の評価基準]
◎:摩擦係数μが0.60未満
○:摩擦係数μが0.60以上、0.70未満
△:摩擦係数μが0.70以上、0.80未満
×:摩擦係数μが0.80以上
【0052】
(コンディションの官能評価方法)
化学的処理を受けていない毛髪に各試料(処方例17、23〜28)を実施例2と同様にして塗布した。その際、毛髪表面のコンディションを、専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を下記表4に併記する。
【0053】
3点…処理前と比較し、明らかにコンディションが良くなった。
2点…処理前と比較し、少しコンディションが良くなった。
1点…処理前と比較し、コンディションが良くならなかった。
【0054】
[毛髪表面のコンディションの評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0055】
【表4】

【0056】
この結果から明らかなように、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を0.01〜20.0質量%(純分換算:0.0005〜1.0%)配合した場合(処方例17、24〜27)には、毛髪のコンディションが良好であることが分かる。しかしながら、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の配合割合が過剰になると(処方例28)、ベタ付き感が生じることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1における発毛面積の経日変化(経過日数と発毛面積の関係)を示すグラフである。
【図2】毛髪の弾力感測定方法の状況を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスサビノリまたは加水分解スサビノリを配合したものであることを特徴とする養毛化粧料。
【請求項2】
前記加水分解スサビノリの配合量が、養毛化粧料全体に占める割合で0.001〜0.3質量%である請求項1に記載の養毛化粧料。
【請求項3】
更に、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を、養毛化粧料全体に占める割合で0.0005〜1.0質量%の割合で配合したものである請求項1または2に記載の養毛化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−6782(P2010−6782A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170872(P2008−170872)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】