説明

養生シート

【課題】強度と引裂強力に優れ、また、実用に供されている間の難燃性能劣化が極めて小さい養生シートの提供。
【解決手段】単糸繊度が1.5〜100dtex、強度が4.6〜10cN/dtexであって、トリアジン系化合物を0.1〜10重量%含有するポリアミドマルチフィラメントを用いてなることを特徴とする養生シートであり、トリアジン系化合物の含有量が0.1〜1.9重量%、トリアジン系化合物の最大粒径が10μm以下、平均粒径が0.1〜5μmであることが好ましく、またこのポリアミドマルチフィラメントに銅化合物を含有させることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有する養生シートに関するものである。さらに詳しくは、強度と引裂強力に優れ、また、実用に供されている間の難燃性能劣化が極めて小さい養生シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場において、建設物をカバーすることにより建設物からの飛散物が外に飛び出すのを防ぐとともに、外からの雨や風などの侵入を防止して作業環境を良くする役割を果たす養生シートとしては、主として力学特性とコストのバランスに優れたポリアミドやポリエステルに代表される合成繊維が用いられている。
【0003】
これらの養生シートに対する要求性能としては、飛散物の衝突や落下、風雨による建設物との擦過等によるシートの破断を防ぐために、耐衝撃吸収性や耐摩耗性等の物理特性、また、施行場所によっては耐薬品性が求められており、これらの特性に優れたポリアミド繊維の使用が好ましいと考えられている。
【0004】
また、養生シートは、建設工事現場での火気を伴う場所での使用が中心であることから、特に難燃性が強く求められている。
【0005】
以上の理由により、養生シートの素材として、難燃性を付与したポリアミド繊維の使用が提案されている。ここで、難燃性の付与方法としては、製織後のシートにポリ塩化ビニルや尿素系樹脂等を付与する方法が最も一般的に適用されている。しかしながら、このような後加工による難燃化では、シートの重量が増加して施行時の作業者負担が大きくなるばかりか、経時的に難燃効果が減少するという問題を有していることから、後加工による難燃化ではなく、原糸の難燃化が切望されていた。
【0006】
原糸の難燃化手段としては、例えば、相対粘度2〜4のポリアミド樹脂98〜80重量部及び平均粒経が5μm未満のトリアジン系難燃剤2〜20重量部を配合したポリアミド樹脂組成物を用いて難燃性ポリアミドフィラメントを得る方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。当該技術によれば、ボリアミドに対しメラミンシアヌレートを5〜8重量部添加することにより、最高強度4.3cN/dtexの難燃性に優れたボリアミドモノフィラメントを得ることが可能であり、このモノフィラメントはワイヤーハーネス保護ネットとして好適に使用が可能であることが開示されている。しかしながら、当該技術を用いてなるモノフィラメントは、4.3cN/dtexの強度が最高であり、さらなる高強度が要求される養生シート用途には適さないという問題点があった。また、当該技術は、実質的に単糸繊度の太いモノフィラメント、或いはこれを複数本束ねたマルチフィラメントを対象とするものであり、養生シートに要求される引裂強力や柔軟性(施工性)を満足する単糸細繊度マルチフィラメントの難燃化には適用できるものではなかった。
【0007】
以上のように、強度や引裂強力、柔軟性(施工性)に優れ、なおかつ実用に供されている間の難燃性能劣化が極めて小さい養生シートの実現が切望されているにもかかわらず、未だに開発されていないのが実状であった。
【特許文献1】特開2002−173829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、強度や引裂強力、柔軟性(施工性)に優れ、なおかつ実用に供されている間の難燃性能劣化が極めて小さい養生シートの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明によれば、単糸繊度が1.5〜100dtex、強度が4.6〜10cN/dtexであって、トリアジン系化合物を0.1〜10重量%含有するポリアミドマルチフィラメントを用いてなることを特徴とする養生シートが提供される。
【0010】
なお、本発明の養生シートにおいては、
前記ポリアミドマルチフィラメント中のトリアジン系化合物の含有量が0.1〜1.9重量%であり、このトリアジン系化合物の最大粒径が10μm以下、平均粒径が0.1〜5μmであること、
前記ポリアミドマルチフィラメントがさらに銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有すること、
前記ポリアミドマルチフィラメントがさらに有機または無機顔料を0.1〜1重量%含有すること、
メッシュシートであること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、強度や引裂強力、柔軟性(施工性)に優れ、なおかつ実用に供されている間の難燃性能劣化が極めて小さい養生シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の養生シートを構成する繊維としては、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、高タフネスを有するポリアミドマルチフィラメントであることが必須である。ポリアミドマルチフィラメントを養生シートに用いることにより、アルカリ環境下や摩擦環境下においても劣化し難く、長期にわたって使用が可能な養生シートを得ることができる。
【0013】
本発明においては、ポリアミドとして、アミノカルボン酸やそのラクタムから重縮合されるナイロン4、ナイロン6、ナイロン11や、ジカルボン酸とジアミドの重縮合で得られるポリナイロン4−6、ナイロン6−6、ナイロン6−10等の公知のポリアミド類を用いることができる。また、ポリアミド繊維は、発明の効果を阻害しない範囲であれば、共重合化合物や異種ポリマ等を含有しても良いし、各種の耐光剤、防炎剤、顔料、難燃剤、艶消剤、滑剤等の添加剤を用いても良い。
【0014】
本発明の養生シートに用いるポリアミドマルチフィラメントの単糸断面は、丸断面以外にも、異型断面であっても良く、異形断面形状としては扁平型、三角型、C型、Y型、団子型、中空型、あるいはそれらの組合せ等を例示することができるがこれに限られるものではない。
【0015】
本発明の養生シートを構成するポリアミドマルチフィラメントの強度は、4.6〜10cN/dtexであることが必要であり、好ましくは5〜10cN/dtexである。強度が4.6cN/dtex未満の場合には、養生シートとして要求される強力を有する基布を得ようとした際に必要となる繊維量が増加し、得られる養生シートが硬く、重いものとなって、施工性に劣る製品となるため好ましくない。また、強度が10cN/dtexを越える繊維を安価に得ることは現在の技術では困難である。
【0016】
本発明の養生シートに用いるポリアミドマルチフィラメントは、トリアジン系化合物を0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜4.5重量%、さらに好ましくは0.1〜1.9重量%含有することが、優れた難燃特性を発現するポリアミドマルチフィラメントを製糸性良く得るために必要である。
【0017】
本発明で用いるトリアジン系化合物としては、メラミン類やシアヌル酸類、またメラミン類とシアヌル酸類の付加物等が挙げられる。シアヌル酸類としては、シアヌル酸やイソシアヌル酸は勿論のこと、エノール形、ケト形を問わずトリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリノルマルプロピルシアヌレート等のシアヌル酸誘導体を用いることができる。また、シアヌル酸類は水和物であっても無水物であってもよい。メラミン類としては、メラミンは勿論のこと、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリルグアナミン、メラム、メレム、リン酸メラミン等を例示することができる。メラミン類とシアヌル酸類との付加物としては、メラミンとイソシアヌル酸の付加物であるメラミンシアヌレートを例示することができるが、前記メラミン類とシアヌル酸類の付加物、好ましくは等モル付加物であれば種類を限定されるものではない。また、例えばメラミン類とシアヌル酸類の水溶液を混合して両者の塩を形成させた後、濾過して得られるメラミン類とシアヌル酸類の塩には未反応のメラミン類やシアヌル酸類が含まれていても良い。
【0018】
これらトリアジン系化合物難燃剤のうちでも、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミン、メラミシアヌレートが好ましく用いられ、特にメラミンシアヌレートが難燃性発現および加工性の面から最も好ましい。
【0019】
ポリアミドマルチフィラメントに含まれるトリアジン系化合物の含有量が0.1重量%未満では、必要とされる難燃性が得られず、逆に10重量%を越える場合には、難燃性効果が飽和し、過剰の難燃剤が繊維中において異物として働くため強度が低下するばかりか、糸切れや毛羽の発生による製糸性の低下や製品としての品位の低下に繋がるため好ましくない。
【0020】
本発明の難燃性ポリアミドマルチフィラメントに添加するトリアジン系化合物は、その平均粒径が0.1〜5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜4μm、最も好ましくは0.1〜2.4μmである。平均粒径が5μmを越えると、難燃剤が繊維中において異物として働くため強度が低下するばかりか、糸切れや毛羽の発生による製糸性の低下や製品としての品位の低下に繋がるため好ましくない。また、粒子径が0.1μm未満のトリアジン系化合物をポリアミドポリマに添加しても、ポリアミドマルチフィラメント中では二次凝集によって0.1μm以上、かえって5μmを越える凝集粒子となるため、高強度の難燃性ポリアミドマルチフィラメントを収率よく製造することが難しくなる。
【0021】
トリアジン系化合物の最大粒径としては10μm以下が好ましく、さらに好ましくは8μm以下である。本発明の養生シートに用いるようなマルチフィラメントにトリアジン系化合物を使用する場合に、トリアジン系化合物の最大粒径が10μmを越えると、養生シート用に好適な高強度繊維を得ることが困難となる。
【0022】
上記したような平均粒径や最大粒径を有するトリアジン系化合物は、トリアジン系化合物をボールミル等で粉砕した後、篩で分級するなどの方法で得ることができる。
【0023】
また、本発明の養生シートに引裂強力や柔軟性を持たせるために、ポリアミドマルチフィラメントは、単糸繊度が1.5〜100dtexであることが必要であり、好ましくは1.5〜80dtex、さらに好ましくは3〜60dtexであれば良い。
【0024】
本発明で特筆すべき技術的特徴は、平均粒径及び最大粒径が上記範囲内にあるトリアジン系化合物を用いることにより、単糸繊度が本発明の範囲を満足するマルチフィラメントであっても、製糸性良く高強度なポリアミドマルチフィラメントを得ることが可能となることである。また、平均粒径及び最大粒径が上記範囲内にあるトリアジン系化合物を用いること、及び単糸繊度を1.5〜100dtexの細繊度とすることにより、シートの燃焼時に難燃剤であるトリアジン系化合物と炎との接触面積が増加し、トリアジン系化合物が比較的少ない含有量でも優れた難燃効果を発現することにある。
【0025】
単糸繊度が1.5dtex未満の場合には、トリアジン系化合物の大きさと比較して単糸太さが細く、繊維製造工程で毛羽や糸切れが発生する可能性がある。また単糸繊度が100dtexを越える場合には、得られる養生シートは、必然的にフィラメント同士の交点における接触面積が小さくなり、引裂時にかかる応力が前記接触部分に集中するために、引裂強力が不十分となり、加えて、シートの柔軟性がなくなり、逆にコシが強くなり過ぎて施工性や収納性に劣るものとなる。
【0026】
また、本発明の養生シートに用いるポリアミドマルチフィラメントに添加するトリアジン系化合物は、各種の難燃剤を併用することによって、更に難燃性を向上させることができる。併用する好ましい難燃剤としては、次亜リン酸アルカリ金属又は次亜リン酸土類金属塩、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸バリウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウム等が挙げられ、添加量としては、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0027】
ポリアミドマルチフィラメントの総繊度は100〜5000dtexであることが好ましく、さらに好ましい総繊度の範囲としては200〜3000dtexの範囲を例示することができる。総繊度が100dtex未満の場合には、原糸の生産性が低下するために高コスト化するばかりか、養生シートとした際に部分的に強力が不足する恐れがある。総繊度が5000dtexを越える場合には、嵩高く施工性や収納性に劣る可能性がある。
【0028】
さらに、本発明の養生シートの耐候劣化及び耐熱強力劣化を防ぐためには、銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有することが好ましい。銅金属量10ppm未満の場合には、銅化合物による耐候・耐熱性向上効果が低く、銅金属量が500ppmを越える場合には、銅化合物が異物となり製糸性が悪化することがある。含有する銅金属量としては20〜300ppmが好ましく、30〜250ppmがより好ましい。銅化合物としては、沃化銅、塩化銅、臭化銅等を例示することができるが、これに限られるものではなく、従来公知の無機及び有機銅塩や銅金属単体を用いることができる。
【0029】
また、ポリアミドマルチフィラメントは、銅化合物に加えて他の耐熱剤を含有してもよい。耐熱剤としては、アミン化合物、メルカプト化合物、リン系化合物、ヒンダードフェノール化合物、ハロゲン化合物、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属等が挙げられるが、これに限られるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせたものでも良い。アミン系化合物としては、NN−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミン、ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン等を例示することができ、メルカプト化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトチアゾールが例示でき、リン系化合物としては、ステアリルフォスフェート、亜リン酸またはその塩等の有機・無機リン酸等を例示できるが、これらに限られるものではなく、銅化合物と前記耐熱剤は別々に添加しても良いし、錯体を形成させて添加しても良い。銅化合物とともに加える耐熱剤としては、メルカプト化合物が好ましく、特に2−メルカプトベンゾイミダゾールを組み合わせることが好ましい。その時のメルカプト化合物添加量としては、300〜3000ppmであることが、熱酸化劣化防止性および製糸性の観点から好ましい。
【0030】
ポリアミドマルチフィラメントの硫酸相対粘度は、3〜4.5の範囲であることが好ましい。硫酸相対粘度が4.5を越える高重合度のポリカプラミド繊維を生産性良く安価に得ることは現在の技術では難しい。また、硫酸相対粘度が3未満の場合には、所望の強度の繊維が得難いばかりか、長時間の保管時に物性の低下を引き起こす可能性がある。
【0031】
上記した本発明の条件を満足していれば、ポリアミドマルチフィラメントのその他の糸物性、即ち伸度、沸水収縮率、交絡数等は特に限定されるものではない。
【0032】
また、本発明の養生シートに用いるポリアミドマルチフィラメントは、有機または無機顔料を0.1〜1重量%含有することが好ましく、さらに好ましい範囲は0.2〜0.8重量%である。ポリアミドマルチフィラメントを原着化することで、染色の必要が無く、低コストで染色廃液が発生しない等、環境に与える負荷の小さい養生シートを得ることが可能となる。添加する顔料の種類には特に限定はなく、カーボンブラック等の公知の無機および有機顔料を添加することが可能である。また、顔料を添加したポリアミドマルチフィラメントを用いた養生シートは、耐候性が向上するという利点をも有している。顔料添加量が0.1重量%未満の場合には、求める色調を有する繊維を得られない可能性がある。また、添加量が1重量%を越える場合には、顔料が異物として働き、繊維製造工程で製糸性が低下することがある。
【0033】
本発明の養生シートに用いるポリアミドマルチフィラメントの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法にて製造することができるが、一例としては、次のような方法が挙げられる。
【0034】
ポリアミドチップと難燃剤、銅化合物および原着用顔料等との混合は、ポリアミドの重縮合完了直後からポリアミド繊維が紡糸口金から紡出されるまでの任意の段階で混合すれば良い。例えば、重縮合完了直後の溶融ポリアミドに難燃剤等を添加・混練してチップ化した後固相重合し、次いでエクストル−ダー式紡糸機で溶融紡糸・延伸する方法、あるいは乾燥したポリアミドチップに難燃剤等を混練して溶融紡糸・延伸する方法、あるいは、溶融混練により難燃剤等を高濃度含有させたマスタ−チップを製造し、このマスタ−チップとポリアミドチップを計量混合しながら溶融紡糸・延伸する方法等がある。マスターチップ化した際には、紡糸時に2軸エクストルーダー型押し出し機やスタティックミキサー等を用いることが、難燃剤等を微分散させるためには好ましい。
【0035】
口金より紡出した糸条には、冷風等の冷却装置にて冷却固化したのち油剤を付与し、300〜2000m/分で回転する引き取りローラに捲回して一旦巻き取った後、もしくは連続して好ましくは2段以上の多段で熱延伸を施し、巻取り機にて巻取る。熱延伸温度はポリアミド繊維のガラス転移点〜融点−10℃で、延伸倍率は、2.5〜7倍の範囲でそれぞれ行い、上記した難燃性ポリアミドマルチフィラメントの物性となるよう製造する。
【0036】
かくして、本発明の養生シートに用いるポリアミドマルチフィラメントが得られる。
【0037】
本発明における養生シートは、工事現場の足場に垂直に取り付けて、飛散物が外に飛び出すのを防ぐとともに、外からの雨や風を防止して作業環境を良くする役目を果たせるシートであれば、その形態は特に限定されないが、例えば、完全防風シート(ターポリンシート)や空隙を有するメッシュシート等が例示できる。本発明においては、シートの燃焼時に難燃剤であるトリアジン系化合物と炎との接触面積が増加し、トリアジン系化合物が比較的少ない含有量でも優れた難燃効果を発揮できるという観点から、難燃性ポリアミドマルチフィラメントが表面に露出し、且つ表面積が大きいメッシュシートがより好ましい形態である。
【0038】
本発明の養生シートは、特に限定されず従来公知の方法にて製造できるが、例えばメッシュシートの場合には、次のような製造方法が例示できる。
【0039】
まず、総繊度100〜5000dtexのポリアミドマルチフィラメントを使用し、模紗織り、平織り、からみ織り等の粗目織物を織り密度2〜20本/cm、空隙率10〜40%、目付量50〜1000g/mとなるように作製する。その後、必要に応じて、樹脂加工や熱セット等の後加工を施す。
【0040】
かくして、本発明の養生シートを得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明の態様を更に詳しく説明する。明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
【0042】
[硫酸相対粘度]
ポリマ試料を98%硫酸に1重量%の濃度で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、次式に従い求めた。硫酸相対粘度(ηr)=(試料溶液の滴下秒数)/(硫酸溶液滴下秒数)。各サンプルにつき2回の測定をおこない、その平均値を採用した。
【0043】
[トリアジン系化合物最大粒径および平均粒径]
粒度分布測定機(SK Laser Micron Sizer:セイシン企業製)を用いて測定し、最大粒径および平均粒径を求めた。
【0044】
[ポリアミドマルチフィラメントの繊度、強度]
JIS L1017(2002)に従い測定した。
【0045】
[製糸性]
1000kgの製糸試験における糸切れ回数から、次の基準で評価した。
◎:0〜1回
○:2〜3回
△:4〜7回
×:8回以上
【0046】
[引裂強力(N)]
JIS A8952(1995)建築工事用シートの規格における引裂強さ試験(トラペゾイド法)によって測定した。
【0047】
[限界酸素指数(LOI)]
JIS L1091(2002)繊維製品の燃焼性試験方法E法(酸素指数法試験)によって、養生シートのLOIを測定した。LOIが25以上であれば必要とされる難燃性を満足する。
【0048】
[耐候試験後のLOI測定]
屋外にて800日放置した養生シートを前記限界酸素指数測定法にて測定した。
【0049】
[実施例1]
平均粒径0.8μmで最大粒径2.5μmのメラミンシアヌレート粉末(MC)10重量%を、溶融ナイロン6ポリマと溶融混練して硫酸相対粘度3.7のマスターチップを得た。
【0050】
沃化銅を銅金属量として100ppm添加した硫酸相対粘度3.8のナイロン6チップと、沃化銅を銅金属量として100ppm添加した前記マスターチップを計量器で連続的に計量しながら、9対1の割合で285℃の2軸エクストルーダー式押出機に連続的に供給し連続的に溶融した(MC含有量1重量%)。
【0051】
溶融ポリマを285℃の配管を通じて8段のスタティックミキサーで混練し、ギヤポンプにて総繊度が1840dtexとなるように計量した後、285℃の紡糸パックに導き、パック内では30ミクロンカットのフィルターを通過させ、孔径0.5mm、孔長1.1mmの単孔が144個開けられた口金より押し出した(単糸繊度12.8dtex)。
【0052】
紡出糸条を、口金下に設けた長さ20cm、雰囲気温度310℃の加熱筒を通過させ、ユニフロー型チムニーを用いて30℃の冷風を40m/分の速度で吹き付け固化させた後、油剤ローラにて油剤を付与した。油剤を付与した糸条を475m/分の表面速度を有する第1ローラ(非加熱)で巻き取った後、連続して延伸工程に供した。
【0053】
第1ローラを通過した糸条を速度500m/分の第2ローラ(55℃)、速度1375m/分の第3ローラ(90℃)、速度1800m/分の第4ローラ(155℃)、速度2250m/分の第5ローラ(195℃)、速度2150m/分の第6ローラ(130℃)に連続して供することで延伸を行い、総繊度1840dtexのナイロン6マルチフィラメントを得た。
【0054】
得られたナイロン6マルチフィラメントを織機にてからみ織り(3本呂)した後、テンターにて190℃の熱セット行い、織り密度が経:10本/cm、緯:8本/cmの養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
ナイロン6チップとマスターチップを2.3対1で混合(MC含有量3重量%)した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
ナイロン6チップとマスターチップを0.25対1で混合(MC含有量8重量%)した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
平均粒径3.1μm、最大粒径8.8μmのMCを使用した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0058】
[実施例5]
平均粒径6.5μm、最大粒径15.2μmのMCを使用した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0059】
[実施例6]
マスターチップ作製時にナイロン6繊維中での最終濃度が0.4重量%となるようにカーボンブラックを添加した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0060】
[実施例7]
孔数26個の口金を使用した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメント(単糸繊度70.8dtex)と養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0061】
[実施例8]
総繊度が470dtexとなるように吐出し、孔数48個の口金を使用したこと、また、織り密度が経:7本/cm、緯:7本/cmの平織りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメント(単糸繊度9.8dtex)と養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
マスターチップを使用しない(MC含有量0重量%)以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られた養生シートには、次の後加工により難燃性を付与した。
【0063】
難燃剤(大京化学製 ビゴールNA−7)40%、水58.8%、硬仕上げ剤(住友化学製 Sumitex Resin M-3)1%、触媒(住友化学製 Sumitex Accelerator ACX)0.2%の溶液で、ピックアップ70%となるようにディップし、140℃で2分間乾燥。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
孔数5個の口金を使用した以外は、実施例3と同様にして、ナイロン6マルチフィラメント(単糸繊度368dtex)と養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0065】
[比較例3]
最大粒径11.2μmのMCを使用した以外は、比較例2と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0066】
[比較例4]
孔数144個の口金を使用した以外は、比較例3と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0067】
[比較例5]
孔数1個の口金を使用した以外は、実施例8と同様にして、ナイロン6モノフィラメント(単糸繊度470dtex)と養生シートを得た。得られたナイロン6モノフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0068】
[比較例6]
MC15重量%のマスターチップを作製し、これのみを使用した以外は、実施例1と同様にして、ナイロン6マルチフィラメントと養生シートを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントと養生シートの特性を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1より明らかなように、本発明の規定範囲である実施例1〜8の養生シートは、後加工を施さなくても難燃性に優れた養生シートであり、また、その難燃性能は耐候試験後も殆ど変化しなかった。
【0071】
しかしながら、比較例1に示すような、後加工によって難燃性を付与した養生シートは、後加工直後のLOIは高く難燃性に優れるものの、屋外に長時間曝露された場合には難燃性が著しく低下した。
【0072】
また、比較例2、5のように単糸繊度が本発明の規定範囲を上回る場合には、それぞれの比較対象である実施例3、8の養生シートに比べて引裂強力が低く、また柔軟性(施工性)が低いために、養生シートとしての特性を満足するものではなかった。
【0073】
比較例3は、上述した特許文献1における実施例2の記載を参考にした水準であるが、強度が不十分であり、また、引裂強力も本発明の実施例3の養生シートに比べて劣位であった。
【0074】
比較例4は、比較例3を細繊度化したものであるが、製糸性が極めて悪く、強度と引裂強力は、実施例3の養生シートに比べて劣位であった。
【0075】
さらに、比較例6のように、トリアジン系化合物の含有量が本発明の規定範囲を越える場合には、ポリアミドマルチフィラメントの採取は可能であったものの、製糸工程において毛羽や糸切れが多発し、安定的に製造することが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の養生シートは、強度と引裂強力に優れ、また、実用に供されている間の難燃性能劣化が極めて小さいという特性を有していることから、JIS A8952(1995)で規定された養生シートや、その他の各種建設工事現場用養生シートとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が1.5〜100dtex、強度が4.6〜10cN/dtexであって、トリアジン系化合物を0.1〜10重量%含有するポリアミドマルチフィラメントを用いてなることを特徴とする養生シート。
【請求項2】
前記ポリアミドマルチフィラメント中のトリアジン系化合物の含有量が0.1〜1.9重量%であり、このトリアジン系化合物の最大粒径が10μm以下、平均粒径が0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の養生シート。
【請求項3】
前記ポリアミドマルチフィラメントがさらに銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有することを特徴とする請求項1または2に記載の養生シート。
【請求項4】
前記ポリアミドマルチフィラメントがさらに有機または無機顔料を0.1〜1重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の養生シート。
【請求項5】
メッシュシートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の養生シート。

【公開番号】特開2007−46319(P2007−46319A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231496(P2005−231496)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】