説明

首振式回転装置

【課題】 例えば人間が入り込めないような細長い管路に進入し、この管路内の加工面に対する垂線周りの回転動作によって穿孔作業などの各種の加工作業を行うことができる首振式回転装置を提供する。
【解決手段】 フレキシブルシャフト6に固定され、前端部に凹状球面21を有する基部本体2と、この基部本体2の凹状球面21に沿って摺動可能な凸状球面31を後端部に有する首振本体3と、フレキシブルシャフト6の先端部にユニバーサルジョイント8を介して接続され、首振本体3の前端部に保持される回転作業体4と、首振本体3の外周に設けられ、回転作業体4の回転軸方向に沿ってスライド可能なスライドカバー5とを有し、凹状球面21および凸状球面31の曲率中心と、ユニバーサルジョイント8の回動中心とが一致されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が入り込めないような細長い管路に進入し、この管路内の加工面に対して所定の加工作業を行う首振式回転装置に関し、特に、下水道管を補修した際に、更正材によって塞がれた本管と枝管との合流口に、枝管側から穿孔するのに好適な首振式回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した下水管等の管路施設を補修する場合、本管を地中から掘り出していたが、地上での交通規制が必要となる上、品質の確保が難しく、コストが高いという問題があった。このため、本管を地中から掘り出すことなく、熱硬化性樹脂等の更正材を本管の内周面に圧着し、補修する更正技術が実用化されている。しかし、この更正技術によって補修した場合、各家庭などから本管に連結されている枝管との合流口が更正材によって塞がれてしまうため、この塞がれた合流口を穿孔する作業が必要になる。この枝管合流口を穿孔する場合、主に本管内に作業員が入って本管側から前記枝管合流口を穿孔しているが、作業効率が悪く、危険も伴うため効果的な穿孔作業とはいえない。
【0003】
このような問題を解決するものとして、本願発明者らは、特許第3568947号において、本管と枝管との合流口を塞いでいる更正材を穿孔するための枝管合流口の穿孔装置を提案している。この穿孔装置は、狭い枝管内を移動手段により合流口まで移動し、回転切削手段を半径方向へ拡開させて回転させるとともに、合流口を塞いでいる更正材に反力対抗手段を連結させ、前記回転切削手段による切削の際に受ける前記枝管の軸線方向の反力および軸線回りの反力に対抗させることにより、前記合流口の内周面に沿って更正材を切削するようになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3568947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した更正材は、その種類によって完全に硬化するまでに相当の時間を要する上、補修作業時の外気温や施工距離によっては、硬化に伴って大きく伸縮する。このため、更正材を施工した後、直ちに合流口と略同径の本穴を穿孔してしまうと、更正材の硬化による伸縮によって、本穴が合流口からズレてしまうという問題がある。そして、この位置ズレの度合いによっては、更正作業を再びやり直さなければならないケースもある。
【0006】
このような問題に対しては、合流口よりも小径の仮穴を穿孔しておき、更正材の硬化が完了した後、別途、本穴を穿孔する工法が有効である。そこで、本願発明者らは鋭意研究し、仮穴を穿孔するための穿孔具として、図12に示すように、ホールソーをスライドカバーに対してスライド可能に構成し、フレキシブルシャフトによって回転駆動力および押し込み力を伝達する穿孔具を発明した。
【0007】
しかしながら、枝管は直線状のものばかりではなく、地中の埋設物を避けて敷設されるため、前記枝管が合流口の直前で急角度に曲げられている現場が存在する。この場合、図12に示すように、ホールソーの回転軸が、更正材に対して斜めに当接するため、略垂直に当接する場合と比較して穿孔時間が長くなるという問題がある。しかも切削刃の一部分の刃によって更正材を切削してしまうため負荷バランスが悪く、刃欠けの原因にもなる。また、合流口の中心から離れた周縁部に穿孔してしまうため、結局、仮穴であっても更正材の伸縮により穿孔位置がズレてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、例えば人間が入り込めないような細長い管路に進入し、この管路内の加工面に対する垂線周りの回転動作によって穿孔作業などの各種の加工作業を行うことができる首振式回転装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る首振式回転装置は、フレキシブルシャフトに固定され、前端部に凹状球面を有する基部本体と、この基部本体の凹状球面に沿って摺動可能な凸状球面を後端部に有する首振本体と、前記フレキシブルシャフトの先端部にユニバーサルジョイントを介して接続され、前記首振本体の前端部に保持される回転作業体と、前記首振本体の外周に設けられ、前記回転作業体の回転軸方向に沿ってスライド可能なスライドカバーとを有し、前記凹状球面および前記凸状球面の曲率中心と、前記ユニバーサルジョイントの回動中心とが一致されている。
【0010】
また、本発明において、前記首振本体の略中心部には、軸線方向後方にかけて拡径され、前記首振本体の首振角度を規定する規定部を備えた首振角度規定孔が形成されており、前記基部本体は、前記首振角度と略同一角度で軸線方向後方にかけて徐々に縮径されたテーパ面を備えるとともに、このテーパ面で前記スライドカバーを摺動させるテーパ状胴部を有していてもよい。
【0011】
さらに、本発明において、前記基部本体の前記テーパ状胴部の後方には、外周面が球面状に形成され、曲折した管路の内壁面に引っ掛かるのを防止する脱出用球面部が設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明において、前記フレキシブルシャフトには、前記脱出用球面部の後方に、別途、略球面状または略円錐台形状に形成された複数の脱出用補助具が設けられており、各脱出用補助具は、前方に隣り合う前記脱出用球面部または前方に隣り合う他の脱出用補助具よりも小径に形成されていてもよい。
【0013】
さらに、本発明において、前記首振式回転装置は、本管と枝管との合流口を塞いでいる更正材を穿孔する穿孔装置であって、前記回転作業体は、前記更正材に穿孔可能な切削刃を備えた切削用回転作業体として構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば人間が入り込めないような細長い管路に進入し、この管路内の加工面に対する垂線周りの回転動作によって穿孔作業などの各種の加工作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る首振式回転装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の首振式回転装置を示す正面図である。
【図3】図2における3A−3A線断面図である。
【図4】図2における4A−4A線断面図である。
【図5】本実施形態の首振式回転装置を穿孔装置に適用した場合の使用状態図である。
【図6】本実施形態におけるユニバーサルジョイントを示す斜視図である。
【図7】本実施形態において、切削用回転作業体が突出した状態を示す斜視図である。
【図8】切削用回転作業体が突出した状態における図2の4A−4A線断面図である。
【図9A】本実施形態において、首振式回転装置が更正材に当接した状態を示す図である。
【図9B】本実施形態において、首振式回転装置が首振動作を行った後の状態を示す一部断面図である。
【図9C】本実施形態において、首振式回転装置が更正材に仮穴を穿孔した状態を示す一部断面図である。
【図10】脱出用補助具を適用した実施形態を示す図である。
【図11】脱出用補助具を適用した首振式回転装置を脱出させる際の様子を示す図である。
【図12】穿孔具が更正材に対して斜めに当接した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る首振式回転装置1の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の首振式回転装置1を示す斜視図であり、図2はその正面図である。また、図3および図4は、図2における3A−3A線および4A−4A線断面図である。
【0017】
本実施形態の首振式回転装置1は、図5に示すように、本管Hと枝管Eとの合流口Gを塞ぐ更正材Lに枝管E側から穿孔するための穿孔装置1に適用したものであり、図1から図4に示すように、主として、フレキシブルシャフト6に固定される基部本体2と、この基部本体2の前方に設けられる首振本体3と、この首振本体3の前端部に保持される切削用回転作業体4と、この切削用回転作業体4の外周を被覆するスライドカバー5とを有している。以下、これらの各構成部について説明する。
【0018】
基部本体2は、首振式回転装置1の基部となる部分である。本実施形態において、基部本体2は、高強度の合成樹脂等から形成されており、図3および図4に示すように、前端部に形成された凹状球面21と、この凹状球面21から後方に向けて縮径されたテーパ状胴部22と、このテーパ状胴部22の後方に設けられた脱出用球面部23とを有している。また、基部本体2には、図3および図4に示すように、軸線に沿ってフレキシブルシャフト6を挿通させる挿通孔24が形成されており、この挿通孔24に挿通させたフレキシブルシャフト6をボルトや抜け止め具25によって固定している。
【0019】
なお、本発明において、フレキシブルシャフト6とは、可撓自在に構成されており、回転力を任意の方向に伝達できるあらゆる回転軸を含む概念である。本実施形態では、動力伝達軸としてのインナーシャフト(図示せず)と、このインナーシャフトを被覆するアウターチューブとから構成され、所定の駆動装置Dに接続されている。また、フレキシブルシャフト6は、首振式回転装置1に回転駆動力を伝達する役割の他、首振式回転装置1を管路内に出し入れする役割を果たすものである。よって、首振式回転装置1を所望の作業位置まで押し込める長さを有している。
【0020】
また、抜け止め具25は、図3および図4に示すように、フレキシブルシャフト6の拡径部61に係止するように構成されている。これにより、抜け止め具25は、フレキシブルシャフト6を引っ張って首振式回転装置1を管路内から脱出させる際に、基部本体2から抜けてしまうのを防止するようになっている。
【0021】
一方、首振本体3は、基部本体2に対して首振動作を行わせるためのものである。本実施形態において、首振本体3は、アルミニウム等の素材から形成されており、図3および図4に示すように、凹状球面21に沿って摺動する凸状球面31と、首振本体3の首振り角度を規定する首振角度規定孔32と、切削用回転作業体4の後端面に接触して転動するカムフォロア33と、後述する圧縮バネ53の端部を収容する収容凹部34とを有している。また、首振本体3は、首振角度規定孔32にフレキシブルシャフト6を挿通させた状態で、基部本体2の凹状球面21と切削用回転作業体4の後端面との間に狭持されている。
【0022】
以上の構成において、凹状球面21および凸状球面31は、基部本体2に対する首振本体3の首振動作を制御し、フレキシブルシャフト6からの押し込み力を切削用回転作業体4へ伝達する役割を果たすものである。具体的には、凹状球面21は、基部本体2の前端部が凹状の球面となるように形成されている。一方、凸状球面31は、首振本体3の後端面が、凸状の球面となるように形成されている。そして、凹状球面21および凸状球面31は、互いの球面に沿って摺接するように曲率半径を同じくし、かつ、曲率中心も略同一位置となるように構成されている。これにより、首振本体3はユニバーサルジョイント8を中心として、いずれの方向にも首振り動作を行うことが可能とされている。
【0023】
なお、本実施形態において、基部本体2と首振本体3との間には、図3および図4に示すように、異物侵入防止プレート7が狭持されている。この異物侵入防止プレート7は、合成樹脂等の素材によって、首振角度規定孔32の後方側の開口を被覆するように形成されている。このため、首振本体3が最大の首振角度位置にまで移動したときでも、首振角度規定孔32内に外部から異物が侵入してしまうのを防止するようになっている。
【0024】
また、首振角度規定孔32は、首振本体3の首振り方向を自由に定めつつその首振角度の範囲を規定するためのものである。本実施形態において、首振角度規定孔32は、図3および図4に示すように、首振本体3の略中心部に設けられ、軸線方向後方にかけて徐々に拡径されたテーパ面状の規定部32aを有している。首振本体3が最大の首振角度まで傾斜したときに、前記テーパ面状の規定部32aがフレキシブルシャフト6に当接することで、それ以上傾斜しないように最大の首振り位置を制限している。なお、この規定部32aは、本実施形態のように、テーパ面状のものに限定されるものではなく、フレキシブルシャフト6に当接して首振本体3の首振角度を規定しうるものであればフランジ状や湾曲面状であってもよい。
【0025】
一方、基部本体2のテーパ状胴部22は、首振本体3が首振角度の規定範囲内においていかなる首振角度に傾斜しても、スライドカバー5に沿って切削用回転作業体4および首振本体3をスライドさせて出入可能にするためのものである。本実施形態において、テーパ状胴部22は、図3および図4に示すように、軸線方向後方にかけて徐々に縮径されたテーパ面22aを有している。このテーパ面22aは、首振角度規定孔32の規定部32aによって規定される首振角度と略同一角度に形成されており、スライドカバー5を摺動させるようになっている。本実施形態では、規定部32aがテーパ面状に形成されているので、この規定部32aのテーパ角度と前記テーパ状胴部22のテーパ角度とは同一に構成されている。
【0026】
基部本体2の脱出用球面部23は、枝管E等に進入させた首振式回転装置1を手繰り寄せる際に、曲折した管路の内壁面に引っ掛かるのを防止し、脱出し易くするためのものである。本実施形態において、脱出用球面部23は、図1、図3および図4に示すように、外周面が球面状に形成されている。なお、脱出用球面部23の形状は、引っ掛かりを防ぐ球面を備えるものであれば、本実施形態の形状に限定されるものではない。
【0027】
首振本体3のカムフォロア33は、首振本体3の前面に保持した切削用回転作業体4を円滑に回転させるためのものである。本実施形態において、カムフォロア33は、図3に示すように、切削用回転作業体4の後端面に接触して転動するように、首振本体3の前面において周方向に等角度間隔で3個設けられている。なお、カムフォロア33の配置や数はこれらに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0028】
つぎに、切削用回転作業体4は、更正材Lを切削して穿孔するためのものである。なお、本実施形態では、首振式回転装置1を穿孔装置1に適用しているため、ホールソー等の切削用回転作業体4を回転作業体4としているが、各種の用途に応じた回転作業体4を採用することができる。本実施形態において、切削用回転作業体4は、図1に示すように、略円筒状に形成されており、その前方周縁部に沿って更正材Lに穿孔可能な切削刃41が備えられている。一方、後方周縁部には、図3および図4に示すように、カムフォロア33に当接する円盤部42が設けられ、この円盤部42の略中心部から前方へ向けて略円錐台形筒状の接続部43が突出形成されている。
【0029】
この接続部43は、フレキシブルシャフト6の先端部にユニバーサルジョイント8を介して切削用回転作業体4を接続するためのものである。具体的には、接続部43は、図3および図4に示すように、首振角度規定孔32の規定部32aのテーパ角度に合わせて前方に向けて縮径された略円錐台形の筒状に形成されている。そして、この接続部43の先端側には、フレキシブルシャフト6の先端に一端部が接続されたユニバーサルジョイント8の他端部が固定されている。
【0030】
本実施形態において、ユニバーサルジョイント8は、図6に示すように、フレキシブルシャフト6に固定される駆動側の第1部材81と、接続部43に固定される従動側の第2部材82と、これら第1部材81および第2部材82を互いに直交する回転軸周りに回動可能に接続するコマ部材83とを有している。そして、これら各回転軸の交点に相当するユニバーサルジョイント8の回動中心が、凹状球面21および凸状球面31の曲率中心と一致されている。これにより、凹状球面21と凸状球面31との摺動動作と、ユニバーサルジョイント8の回動動作とが同期され、首振式回転装置1の首振動作が実現されている。
【0031】
また、本実施形態では、図1に示すように、接続部43の先端にセンタドリル44が固定されている。このセンタドリル44は、切削用回転作業体4による切削時の回転中心を位置決めする役割と、切削によってくり抜いた切削くずを回収する役割を果たすものである。なお、本実施形態では、枝管Eの内壁面が損傷するのを防止する観点から、センタドリル44の先端位置が切削用回転作業体4から突出しないように取り付けられているが、この構成に限られるものではなく、位置決め機能を優先する場合、センタドリル44の先端を突出させてもよい。
【0032】
スライドカバー5は、切削用回転作業体4の外周をカバーするためのものである。本実施形態において、スライドカバー5は、図1、図3および図4に示すように、合成樹脂等の素材によって略円筒状に形成されている。また、スライドカバー5の外周面は略球面状に形成され、前方周縁部には首振本体3を係止する係止部51が設けられている。なお、本実施形態では、図1に示すように、首振本体3の外周面に抜け止めピン35が設けられており、この抜け止めピン35を軸線方向に沿って摺動させる摺動溝52がスライドカバー5に形成されている。
【0033】
一方、首振本体3の前面には、図4に示すように、圧縮バネ53の端部を収容可能な収容凹部34が複数形成されており、これら収容凹部34と係止部51との間に圧縮バネ53が保持されている。これにより、スライドカバー5が常に前方へ付勢され、切削用回転作業体4を保護するようになっている。また、後述するように、スライドカバー5を押さえながらフレキシブルシャフト6を押し込むと、図7および図8に示すように、圧縮バネ53が圧縮し、切削用回転作業体4がスライドカバー5から前方へスライドして突出するようになっている。
【0034】
なお、本実施形態では、周方向に等角度間隔で4つの圧縮バネ53を配置しているが、この構成に限定されるものではなく、切削用回転作業体4の切削性能とフレキシブルシャフト6からの押し込み力との関係に応じて適宜増減してもよい。例えば、切削性能が低い場合や、強い押し込み力を伝達できない場合、圧縮バネ53の数を減らせばよい。また、圧縮バネ53の弾性力の大きさを適宜調節してもよい。
【0035】
つぎに、前述した穿孔装置1として構成された首振式回転装置1の作用について、図9を参照しつつ説明する。本実施形態では、図5に示すように、本管Hと枝管Eとの合流口Gを塞ぐ更正材Lに枝管E側から仮穴Kを穿孔する場合の作用について説明する。
【0036】
まず、作業者は、図5に示すように、地上側の汚水桝等を介して枝管Eに首振式回転装置1を進入させた後、フレキシブルシャフト6を順次、前へ送り出す。これにより、首振式回転装置1は、フレキシブルシャフト6によって押されながら枝管E内を前進する。このとき、略球面状のスライドカバー5が切削用回転作業体4を被覆しているため、この切削用回転作業体4を保護するとともに、枝管Eとの摩擦抵抗を小さくしてスムーズに移動させられる。
【0037】
そして、首振式回転装置1が合流口Gまで到達すると、スライドカバー5の前面が合流口Gを塞いでいる更正材Lに当接する。このとき、枝管Eが合流口Gの直前で急角度に曲折している場合、図9Aに示すように、切削用回転作業体4の回転軸が更正材Lに対して傾斜した状態で当接する。したがって、この状態で切削しようとすると、穿孔位置が中心から大きくズレてしまい適切に穿孔作業ができず、穿孔時間も長くかかってしまうし、切削刃の当たりが悪く、破損の原因にもなってしまう。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、フレキシブルシャフト6をさらに押し込むことにより、スライドカバー5に被覆された切削用回転作業体4および首振本体3が、基部本体2に対して首振動作を行う。このとき、本実施形態では、凹状球面21と凸状球面31とが摺動可能に接触しているため、フレキシブルシャフト6からの押し込み力を首振本体3へ伝達しながら、首振動作を行わせる。また、ユニバーサルジョイント8の回動中心と、凹状球面21および凸状球面31の曲率中心とが一致しているため、ユニバーサルジョイント8の回動動作と、凹状球面21および凸状球面31の摺動動作とを同期させられる。
【0039】
これにより、図9Bに示すように、切削用回転作業体4の回転軸が、更正材Lに対して略直交状態に配置され、切削刃41の全周が更正材Lに当接する。また、切削用回転作業体4の回転軸が、合流口Gの中心ないしその近傍に配置される。
【0040】
また、本実施形態では、図9Bに示すように、首振角度規定孔32の規定部32aが、フレキシブルシャフト6と当接し首振角度を規定する。このため、ユニバーサルジョイント8の回動可能範囲を超えてしまうのを防止する。また、本実施形態では、異物侵入防止プレート7が、首振角度規定孔32の後方側の開口を被覆している。このため、首振本体3が最大の首振角度の位置まで傾斜されたときでも、首振角度規定孔32に異物が侵入するのを防止する。
【0041】
つづいて、首振式回転装置1に首振動作をさせた後、作業者は、地上側の駆動装置Dを操作しフレキシブルシャフト6を駆動する。このとき、フレキシブルシャフト6は、枝管Eの管路によって複雑に曲折されていても、駆動装置Dからの回転駆動力をユニバーサルジョイント8の第1部材81へ伝達する。そして、ユニバーサルジョイント8は、いかなる首振角度であっても第1部材81から第2部材82へ回転駆動力を伝達し、切削用回転作業体4およびセンタドリル44を回転させる。このとき、切削用回転作業体4は、首振本体3の前面に設けたカムフォロア33によって円滑に回転する。
【0042】
切削用回転作業体4およびセンタドリル44の回転を開始させた後、さらにフレキシブルシャフト6を押し込む。これにより、図9Cに示すように、フレキシブルシャフト6に固定された基部本体2が、圧縮バネ53を圧縮しながら首振本体3および切削用回転作業体4をスライドカバー5に沿って前方に押し出す。このとき、テーパ状胴部22のテーパ面22aが、規定部32aにより規定された首振角度と一致されているため、いかなる首振角度の位置であっても、基部本体2がスライドカバー5に突き当たることがなく、スライド動作を可能にする。
【0043】
さらに、フレキシブルシャフト6を押し込むと、切削用回転作業体4が回転しながら更正材Lを切削し、略円形状に穿孔する。これにより、合流口Gを塞いでいた更正材Lの略中心近傍に仮穴Kが穿孔される。このとき、センタドリル44の先端が更正材Lに突き刺さることにより、切削用回転作業体4の回転中心を位置決めするため、切削時の回転動作を安定させる。また、本実施形態では、切削用回転作業体4が切削くずをくり抜くのと同時に、センタドリル44が当該切削くずの略中心を円形状にくり抜く。このため、切削くずは、図9Cに示すように、センタドリル44に貫通されて引っ掛かるため、管路内に落としてしまうことがない。
【0044】
仮穴Kの穿孔が完了した後、作業者は、駆動装置Dを操作して切削用回転作業体4の回転を停止する。そして、フレキシブルシャフト6を引っ張ることにより首振式回転装置1を管路内から回収する。このとき、スライドカバー5が、圧縮バネ53によって自動的に前方へスライドし、切削用回転作業体4を被覆する。これにより、首振式回転装置1は、スライドカバー5と脱出用球面部23とによって、大小2つのボールを組み合わせたイメージの外観を呈する。したがって、首振式回転装置1は、常に、略円弧状の外周面によって枝管Eの内壁面と接触するため、枝管Eの曲折部等にも引っ掛かりにくく、脱出性がよい。
【0045】
また、本実施形態では、抜け止め具25によって基部本体2をフレキシブルシャフト6に強固に固定しているため、仮に、作業者が強い力で引っ張っても、フレキシブルシャフト6がすっぽ抜けて、首振式回転装置1を管路内に置いてきてしまうトラブルを回避できる。
【0046】
首振式回転装置1を地上に引き上げた後は、センタドリル44に引っ掛かっている切削くずを取り出せばよい。このとき、本実施形態では、図7に示すように、切削用回転作業体4の外周面に沿って4つの掻き出し穴45が形成されている。このため、この掻き出し穴45から所定の治具を挿入することで、切削くずを容易に掻き出せるようになっている。
【0047】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.人間が入り込めない枝管E内に進入し、本管Hと枝管Eとの合流口Gを塞ぐ更正材Lに仮穴Kを穿孔することができる。
2.切削用回転作業体4の回転軸を更正材Lに対して略垂直方向に向けられるため、切削刃の損傷を防ぐとともに、穿孔時間を短縮することができる。
3.合流口G付近が曲折した管路であっても当該合流口Gの略中心位置に仮穴Kを穿孔できるため、更正材Lの伸縮によって合流口Gからズレてしまうのを抑制できる。
4.曲折した管路から引っ張り出す際の脱出性能を向上することができる。
【0048】
なお、本発明に係る首振式回転装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0049】
例えば、上述した本実施形態では、穿孔装置1に適用した場合の首振式回転装置1について説明したが、この構成に限定されるものではなく、人間が入り込めない管路内の加工面に対し、回転動作を伴う作業を行うあらゆる装置に適用できる。
【0050】
具体的には、上述した本実施形態において、切削用回転作業体4の代わりに、前端面に清掃具を備えた清掃用回転作業体を設ければ、管路内の内壁面を清掃する清掃装置として構成できる。この清掃装置によれば、管路の内壁面に対して清掃面をほぼ密着させた状態で回転清掃できるため、清掃性能を向上することができる。その他、各種用途に応じた回転作業体を適用することにより、さまざまな用途に使用することができる。
【0051】
また、上述した本実施形態では、基部本体2の後方に脱出用球面部23を設けることにより、管路内からの脱出性能を向上させている。しかしながら、図10に示すように、脱出用球面部23から後方にかけて、別途、複数の脱出用補助具9をフレキシブルシャフト6に設けてもよい。本実施形態において、最後尾の脱出用補助具9は、後方に先細りの略円錐台形状に形成されている。一方、その他の脱出用補助具9は、略球面状に形成されている。そして、各脱出用補助具9は、前方に隣り合う脱出用球面部23または前方に隣り合う他の脱出用補助具9よりも小径に形成されている。つまり、首振式回転装置1から後方にかけて、徐々に小径の脱出用補助具9が設けられている。
【0052】
上記の脱出用補助具9を設けた首振式回転装置1を引き上げる場合、図11に示すように、まず、最後尾に設けられた脱出用補助具9が曲管の角部に当接する。この状態でフレキシブルシャフト6を引っ張れば、当該脱出用補助具9が、その最小径のテーパ面によってスムーズに角部を乗り越える。その後も、他の脱出用補助具9が、次々に管路の内壁面に当接し、フレキシブルシャフト6を管路の内壁面から徐々に離れるように浮かせる。これにより、フレキシブルシャフト6の向きが引張方向に対して緩やかに傾斜するため、より大きな引張力が伝達され、脱出性能が向上する。また、本実施形態では、各脱出用補助具9が管路の内壁面に当接するため、管路に挿入する際の挿入性も向上する。
【0053】
なお、上記の例では、最後尾の脱出用補助具9を略円錐台形状とし、その他の脱出用補助具9を略球面状に形成しているが、この構成に限定されるものではなく、各脱出用補助具9は、略球面状または略円錐台形状に形成されていればよい。
【符号の説明】
【0054】
1 首振式回転装置(穿孔装置)
2 基部本体
3 首振本体
4 回転作業体(切削用回転作業体)
5 スライドカバー
6 フレキシブルシャフト
7 異物侵入防止プレート
8 ユニバーサルジョイント
9 脱出用補助具
21 凹状球面
22 テーパ状胴部
22a テーパ面
23 脱出用球面部
24 挿通孔
25 抜け止め具
31 凸状球面
32 首振角度規定孔
32a 規定部
33 カムフォロア
34 収容凹部
35 抜け止めピン
41 切削刃
42 円盤部
43 接続部
44 センタドリル
45 掻き出し穴
51 係止部
52 摺動溝
53 圧縮バネ
61 拡径部
81 第1部材
82 第2部材
83 コマ部材
D 駆動装置
H 本管
E 枝管
G 合流口
K 仮穴
L 更正材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルシャフトに固定され、前端部に凹状球面を有する基部本体と、
この基部本体の凹状球面に沿って摺動可能な凸状球面を後端部に有する首振本体と、
前記フレキシブルシャフトの先端部にユニバーサルジョイントを介して接続され、前記首振本体の前端部に保持される回転作業体と、
前記首振本体の外周に設けられ、前記回転作業体の回転軸方向に沿ってスライド可能なスライドカバーとを有し、
前記凹状球面および前記凸状球面の曲率中心と、前記ユニバーサルジョイントの回動中心とが一致されている首振式回転装置。
【請求項2】
請求項1において、前記首振本体の略中心部には、軸線方向後方にかけて拡径され、前記首振本体の首振角度を規定する規定部を備えた首振角度規定孔が形成されており、前記基部本体は、前記首振角度と略同一角度で軸線方向後方にかけて徐々に縮径されたテーパ面を備えるとともに、このテーパ面で前記スライドカバーを摺動させるテーパ状胴部を有している首振式回転装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記基部本体の前記テーパ状胴部の後方には、外周面が球面状に形成され、曲折した管路の内壁面に引っ掛かるのを防止する脱出用球面部が設けられている首振式回転装置。
【請求項4】
請求項3において、前記フレキシブルシャフトには、前記脱出用球面部の後方に、別途、略球面状または略円錐台形状に形成された複数の脱出用補助具が設けられており、各脱出用補助具は、前方に隣り合う前記脱出用球面部または前方に隣り合う他の脱出用補助具よりも小径に形成されている首振式回転装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかにおいて、前記首振式回転装置は、本管と枝管との合流口を塞いでいる更正材を穿孔する穿孔装置であって、前記回転作業体は、前記更正材に穿孔可能な切削刃を備えた切削用回転作業体として構成されている首振式回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−247300(P2010−247300A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101304(P2009−101304)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(504073126)草野作工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】