説明

香味の発現性及び持続性が改善された調味食品

【課題】香料の発現の早さと香味放出の持続性のいずれをも向上させることができ、香味の発現が早く、かつ、その香味が持続され、更には好ましくない香味がマスキングされた調味食品を提供する。
【解決手段】粉末スープ又はスナック菓子などの調味食品に、微生物の菌体内に香料を内包した香料を添加する。更に水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香味の発現性及び持続性が改善された調味食品に関する。詳細には、香味の発現性及び持続性が改善され、更には好ましくない香味がマスキングされた調味食品、当該調味に使用する香料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所望成分の放出時期や速度を制御して該成分の持続性を高める方法として、天然または合成高分子からなる直径およそ数〜数百μmの微粒子容器(マイクロカプセル)に該成分を封入する、いわゆるマイクロカプセル化法が知られている。マイクロカプセルの製造方法としては、ゼラチンによるコアセルベーション(例えば、特許文献1、特許文献2)、外相(水相)より皮膜を形成するin situ法(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)、及び内相と外相間の皮膜形成反応を利用した界面重合法等が有名であるが、近年では酵母などの微生物の細胞壁をカプセル皮膜として利用した微生物マイクロカプセルも広く知られるに至っている。
【0003】
微生物を用いたマイクロカプセルの製造方法としては、例えば、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、及び特許文献13等の公報に記載されるように、酵母菌体の内容成分を除去せずにそのまま香料などの所望の外因性物質を内包させる方法、並びに例えば特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、及び特許文献18等の公報に記載されるように、酵母菌体中の内因性成分を除去した後に該菌体内に所望の外因性物質を内包させる方法がある。後者の方法は、酵母菌体中の内因性成分を除去した分ほど、より多くの所望の外因性物質を内包させることができ、その結果、該外因性物質の効果をより多く得ることができるという点で有用である。
【0004】
更には、酵母を使用したマイクロカプセルに乳化技術を付加する方法としては、高分子の乳化剤を含む水溶性液体中に疎水性液体を添加し、微小滴状に乳化した後、酵母菌分散液中に添加することにより酵母菌体中に疎水性液体を包含せしめるマイクロカプセルの製造方法(特許文献19)、レシチン等のリン脂質を溶解した疎水性液体と水との2層液中で酵母を分散混合することによる、外部添加したリン脂質を内包した酵母の製造法(特許文献20)などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記微生物の菌体内に調味料等の油溶性香料を内包させた香料についての、粉末スープやスナック菓子などの調味食品への応用は未だ検討されていない。また、香味を有する成分を、微生物の菌体内に封入した場合の発現の速さ、強さまたはそれらの持続性については、未だ十分ではなく、更なる改良が必要である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2800457号公報
【特許文献2】米国特許第2800458号公報
【特許文献3】特公昭36−9168号公報
【特許文献4】特公昭47−23165号公報
【特許文献5】特開昭48−57892号公報
【特許文献6】特開昭51−9079号公報
【特許文献7】特開昭54−25277号公報
【特許文献8】特開昭61−88871号公報
【特許文献9】特開昭63−88033号公報
【特許文献10】WO94/22572の国際公開パンフレット
【0007】
【特許文献11】WO96/36433の国際公開パンフレット
【特許文献12】特開昭58−107189号公報
【特許文献13】欧州特許第0242135号B1公報
【特許文献14】特開平4−4033号公報
【特許文献15】特開平4−63127号公報
【特許文献16】特開平4−117245号公報
【特許文献17】特開平5−15770号公報
【特許文献18】特開平8−243378号公報
【特許文献19】特公平5−68298号公報
【特許文献20】特開平7−289885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、香味の発現性及び持続性が改善され、更には好ましくない香味がマスキングされた調味食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、粉末スープやスナック菓子などの調味食品に対して香料を内包した微生物菌体を添加することより、香味の持続性が改善されることを見いだした。更に好ましくは、香料を内包した微生物菌体に加えて、更に水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上を添加することにより、香味の持続性に加えて、香味の発現性にも優れ、更には好ましくない香味がマスキングされた調味食品を調製できることを見い出した。
【0010】
また、香料組成物の製造方法として、微生物の菌体内に油溶性香料を内包させた後、乳化処理を行うことにより、簡便で所望の目的に合った香料組成物が製造できることを見いだした。
【0011】
即ち、本発明は、以下に掲げる調味食品、香料組成物及びその製造方法に関する;
項1.香料を内包した微生物菌体を添加することを特徴とする調味食品。
項1には以下の態様が含まれる;
項1-1.水溶性香料を内包した微生物菌体を添加する項1に記載の調味食品。
項1-2.油溶性香料を内包した微生物菌体を添加する項1に記載の調味食品。
【0012】
項2.香料を内包した微生物菌体に加えて、更に水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上を添加する、項1に記載の調味食品。
【0013】
項2には、例えば以下の態様が含まれる;
項2-1.水溶性香料を内包した微生物菌体及び水溶性香料を添加した項2に記載の調味食品。
項2-2.水溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を添加した項2に記載の調味食品。
項2-3.水溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を乳化した香料を添加した項2に記載の調味食品。
項2-4.油溶性香料を内包した微生物菌体及び水溶性香料を添加した項2に記載の調味食品。
項2-5.油溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を添加した項2に記載の調味食品。
項2-6.油溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を乳化した香料を添加した項2に記載の調味食品。
【0014】
項3.調味食品が粉末スープ又はスナック菓子である、項1又は2に記載の調味食品。
【0015】
項4.香料を内包した微生物菌体と、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを含有する香料組成物。
項4には、例えば以下の態様が含まれる;
項4-1.水溶性香料を内包した微生物菌体及び水溶性香料を含む香料組成物。
項4-2.水溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を含む香料組成物。
項4-3.水溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を乳化した香料を含む香料組成物。
項4-4.油溶性香料を内包した微生物菌体及び水溶性香料を含む香料組成物。
項4-5.油溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を含む香料組成物。
項4-6.油溶性香料を内包した微生物菌体及び油溶性香料を乳化した香料を含む香料組成物。
【0016】
項5.微生物の菌体内に香料を内包させた後、乳化処理を行うことを特徴とする香料組成物の製造方法。
項6.調味食品に、香料を内包した微生物菌体と、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを含むことを特徴とする、調味食品の香味の発現性及び持続性を高め、更に好ましくない香味をマスキングする方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、香料の発現の早さと香味放出の持続性のいずれをも向上させることができ、香味の発現が早く、かつ、その香味が持続され、更には好ましくない香味がマスキングされた調味食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る香味の発現性及び持続性が改善された調味食品は、香料を内包した微生物菌体を添加することを特徴とする。
【0019】
本発明において香料を菌体内に内包させるために使用される微生物としては、細胞壁を有するものであって人体への安全性が確保されるものである限り、藻類、酵母、菌類、またはバクテリアなどの別を問わず、いずれの微生物をも使用できる。好ましくは酵母である。ここで酵母としては、麦酒酵母菌、パン酵母菌、及びトルラ酵母菌等のように人体への摂取に適したものを任意に使用することができる。具体的には、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii)、及びサッカロマイセス・カールスバーゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)などのサッカロマイセス属に属する酵母菌;キャンディダ・ウチリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、及びキャンディダ・フラベリ(Candida flaveri)などのキャンディダ属に属する酵母菌を例示することができる。これらの微生物は単独で、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。なお、これらの微生物は特に制限されないが、1μm〜20μmの範囲の粒径を有していることが好ましい。
【0020】
これらの微生物は、香料を内包させるにあたり、生菌及び死菌の別、また湿潤及び乾燥状態の別、及び内因性の菌体内成分の溶出除去の有無の別などを問うことなく、いずれの状態のものをも使用することができる。好適には、予め内因性の菌体内成分を菌体外に溶出させた微生物を使用することが望ましい。なお、ここで内因性の菌体内成分としてはアミノ酸、ペプチド、タンパク質(酵素を含む)、糖質、核酸、並びに脂質などを挙げることができる。こうすることで、より多くの外因性物質を微生物の菌体内に入れることができ、さらに内因性の菌体内成分に由来する望ましくない味や臭いの発生や、内因性の菌体内成分によって生じ得る、内包させる外因性物質の分解や変質などを有意に防止することが可能となる。
【0021】
内因性の菌体内成分(内因性成分)を菌体外に溶出させる方法としては、特に制限されず、公知の方法または将来開発される方法を任意に使用することができる。例えば、公知の方法としては、加温処理、pH処理及び細胞壁破砕処理などの物理的処理法;溶出促進剤添加法などの化学的処理法;菌体内成分溶出酵素や細胞壁溶解酵素などの酵素を用いた酵素処理法;またはこれらの組み合わせを挙げることができる(特開平4−4033号等参照)。
【0022】
ここで加温処理は、対象とする微生物の懸濁液を通常30〜100℃、好ましくは30〜60℃に加温し、数分から数時間かけて攪拌することによって実施することができる。この際、菌体内成分の溶出をより効果的に効率よく行うためには溶出促進剤添加法を併用することもできる。ここで用いられる溶出促進剤としては、例えばエタノールやプロパノールなどの低級アルコール、酢酸エチル及びアセトンなどの極性有機溶剤:無機塩類、糖類、4級アンモニウム塩、各種防菌・抗菌・殺菌剤、および水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基類等を挙げることができる。具体的には、微生物の水分散液にアセトン等の溶媒を添加し,温度40℃程度の条件で24時間程度振盪する方法を例示することができる。
【0023】
細胞壁破砕処理は、ソニケーターやミル等を用いて細胞壁を破壊することによって実施できる。具体的には、微生物の水分散液をビーズミルで10分間処理する方法を例示することができる。
【0024】
また菌体内成分溶出酵素処理法には、微生物が有する自己消化酵素を利用する方法(Babayan,T.L.and Bezrukov,M.G.,1 Acta Biotechnol.O,5,129−136(1985))、並びに、プロテアーゼ単独、またはヌクレアーゼ,β−グルカナーゼ,エステラーゼまたはリパーゼのいずれか少なくとも1種とプロテアーゼとを組み合わせて酵母を処理する酵素処理法が含まれる。具体的には、自己消化酵素を有する微生物の水分散液あるいは上記酵素を添加した微生物の水分散液を30〜60℃の温度範囲で1〜48時間インキュベーションすることによって実施することができる。
【0025】
細胞壁溶解酵素処理法には、微生物の細胞壁を構成する成分(グルカンやマンナン等の多糖類、これらの多糖類とタンパク質との複合体、キチンなど)を分解する酵素、例えばグルカナーゼ(β−1,3グルカナーゼ)、マンナナーゼまたはキチナーゼのいずれか少なくとも1種の酵素を用いて酵母を処理する方法が含まれる。細胞壁溶解酵素処理は、具体的には上記酵素を添加した微生物の水分散液を通常pH4〜9の条件下、30〜60℃の温度範囲で数分〜10時間程度インキュベーションすることによって実施することができる。
【0026】
斯くして得られる処理物はさらに遠心分離により上清を除去し、得られた残渣(菌体)について、さらに必要に応じて洗浄、加熱、pH調整処理を行うことによって、菌体内成分が除去された微生物菌体を得ることができる。
【0027】
なお、本発明において用いられる内因性の菌体内成分を溶出させた微生物には、上記に例示した溶出方法や溶出程度に拘束されることなく、菌体内成分を溶出させて除去したものが広く包含される。好ましくは、未処理微生物の絶対乾燥重量100重量%に対する溶出成分の絶対乾燥重量の割合(溶出率)が10〜80重量%、好ましくは30〜70重量%となるように、内因性の菌体内成分を溶出させた微生物を挙げることができる。
【0028】
なお、かかる内因性の菌体内成分(内因性成分)を除去してなる微生物菌体として、簡便には商業的に入手可能なものを使用することができる。かかるものとしては制限されないが、オリエンタル酵母工業株式会社、田辺製薬株式会社、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社及びキリンビール株式会社(いずれも日本)などから販売されている酵母細胞壁を挙げることができる。
【0029】
当該内因性の菌体内成分が除去された微生物(菌体残渣)は、その菌体内部にできるだけ多くの油溶性香料を封入させるなどの目的のために、上記処理に加えて、さらに酸性処理(特開平8−243378号公報)、アルカリ性処理(特公平7−32871号公報)、アルコール処理(特公平8−29246号公報)などの任意の処理を施してもよい。なお、上記記載の方法はいずれも公知の方法であるが、調製される微生物の細胞壁がマイクロカプセルの皮膜として許容される化学的及び物理的性質を有していることを限度として、これらの方法に限定されるものではない。
【0030】
具体的に、酸性処理としては、酵素処理法等の上記処理法によって得られた菌体残渣を塩酸、リン酸若しくは硫酸等の無機酸、または乳酸、クエン酸、酢酸若しくはアスコルビン酸等の有機酸などの酸性水溶液(好ましくはpH2以下)に懸濁し、所定時間かけて攪拌しながら加熱(好ましくは50〜100℃)する方法を挙げることができる。
【0031】
またアルカリ処理は、酵素処理法などの上記処理法によって得られた菌体残渣をアルカリ性水溶液、好ましくはpH9〜13、より好ましくはpH10〜12を有する水溶液中で数分から数時間かけて攪拌することによって実施することができる。当該水溶液の温度は特に制限されず、通常20〜100℃の範囲を用いることができるが、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃の加温状態である。なお、アルカリ性水溶液の調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム若しくはケイ酸ナトリウムなどの無機塩;またはアンモニア、モノエタノールジアミン、エチレンジアミン、若しくはジエチレントリアミン水溶液などの有機窒素系化合物を用いることができる。
【0032】
アルコール処理としては、酵素処理法等の上記処理法によって得られた菌体残渣に、例えば一価アルコール等のアルコールまたは含水アルコールを添加し、数分から数時間かけて攪拌することによって実施することができる。当該処理溶液の温度はアルコールが揮発しない温度であれば良く、特に制限されないが、通常20〜80℃の範囲を用いることができる。好ましくは30〜60℃である。より好ましくは40〜50℃の加温状態で攪拌する方法を挙げることができる。ここで一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール等の炭素数1〜6の低級アルコールを挙げることができる。好ましくはエタノールである。
【0033】
本発明でいう香料は、水溶性及び油溶性の香味成分を含む成分であれば、特に限定されない。微生物菌体に内包させる香料としては、好ましくは油溶性の香味成分を使用する。これら香味成分を有するものとして、特に香料、甘味料、酸味料、調味料、苦味料及び香辛料を含む成分を挙げることができる。その例としては、動物性・植物性の天然原料から、不揮発性溶剤による抽出、揮発性溶剤による抽出、超臨界抽出などにより得られる抽出物、水蒸気蒸留や圧搾法などにより得られる精油や回収フレーバー等の天然香料、化学的手法で合成された合成香料、これらの香料を油脂や溶媒に配合・溶解した香料ベースが例示できる。天然香料の例として、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン等の抽出物、コールドプレス等の精油、チンキと呼ばれるアルコール抽出物などが挙げられる。
【0034】
精油の例としては、アニス、オールスパイス、オニオン、オレンジ、ガーリック、カッシアバーク、カルダモン、キャラウェイ、キャロット、キュベブ、クミン、クラリセージ、クローブバッド、クローブリーフ、コニャックオイル、コリアンダー、ショウノウハクユ、シンナモン、スィートベイ、セージ、セロリシード、タイム、ディル、ナツメグ、フェンネル、ベイリーフ、ライム、レモン、ローレル、ペパーミント、スペアミント、バジル、カルダモン、セロリ、ジンジャー、マスタード、パプリカ、パセリ、ブラックペパー等の精油等の精油類マンダリン、ラベンダー等の花精油などを挙げることができる。
【0035】
また、アブソリュート類;又はオレオレジン類;リモネン、リナロール、ゲラニオール、メントール、オイゲノール、バニリン等の合成香料類;コーヒー、カカオ、バニラ、ローストピーナッツ等の豆由来の抽出油;紅茶、緑茶、ウーロン茶等のエキストラクト類;その他合成香料化合物、調合香料組成物及びこれらの1種以上を任意で組み合わせて利用することもできる。
【0036】
ここで香料としては、食品や医薬品分野、並びに香粧品分野において一般に使用される香料を広く挙げることができるが、食品などの可食性製品に適用可能なものが好ましい。かかるものとしては具体的には、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、及びタンジェリンなどのシトラス系フレーバー;アップル、バナナ、チェリー、グレープ、メロン、ピーチ、パイナップル、プラム、ラズベリー、及びストロベリーなどのフルーツ系フレーバー;バニラ、コーヒー、ココア、及びチョコレートなどのビンズ系フレーバー;ペパーミント、及びスペアミントなどのミント系フレーバー;オールスパイス、シナモン、及びナツメグなどのスパイス系フレーバー;アーモンド、ピーナッツ、及びウォルナッツなどのナッツ系フレーバー;カニ、エビ、並びにその他の魚介類などの水産物系フレーバー;その他野菜、穀物、海草などの各種フレーバーを例示することができる。また、香料成分としてはメントール、dl−メントール、メントン、バニリン、エチルバニリン、桂皮酸、ピペロナール、d−ボルネオール、マルトール、エチルマルトール、カンフル、アントラニル酸メチル、桂皮酸メチル、シンナミックアルコール、N−メチルアントラニル酸メチル、メチルβ−ナフチルケトン、リモネン、リナロール、及びイソチオシアン酸アリル等が挙げられる。なお、これらは1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0037】
甘味料(糖類を含む)の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、高甘味度甘味料を挙げることができる。具体的には、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、ソルボース、フルクトース、ラムノース、リボース、異性化液糖、N−アセチルグルコサミン等の単糖類;イソトレハロース、スクロース、トレハルロース、トレハロース、ネオトレハロース、パラチノース、マルトース、メリビオース、ラクチュロース、ラクトース等の二糖類;α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル(β1−3)ガラクトピラノシル(β1−4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−3)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−6)ガラクトピラノシル(β1−4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル(β1−6)グルコピラノース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、スタキオース、テアンデオリゴ、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フコース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトフラノシルニストース、ポリデキストロース、マルトシルβ−サイクロデキストリン、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、ラフィノース、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴等のオリゴ糖類;イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、パラチニット、マルチトール、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マンニトール、ラクチトール、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール;α−グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクラロース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、タウマチン(ソーマチン)、テンリョウチャ抽出物、ナイゼリアベリー抽出物、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、ブラジルカンゾウ抽出物、ミラクルフルーツ抽出物、ラカンカ抽出物、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ等の高甘味度甘味料;その他蜂蜜、果汁、果汁濃縮物等を例示することができる。
【0038】
香辛料としても、食品や医薬品分野、並びに香粧品分野において一般に使用されるものを広く挙げることができる。好ましくは食品や経口用医薬品などのような可食性製品に適用可能なものである。制限されないが、一例としては、ガーリック、オニオン、レモングラス、チャービル、タラゴン、ローレル、ローズマリー、バジル、トウガラシ、タイム、シナモン、カッシャー、オレガノ、ウコン、クローブ、コショウ、アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アンゼリカ、ウイキョウ、ウコン、オレガノ、オールスパイス、オレンジノピール、カショウ、カッシア、カモミール、カラシナ、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェー、クチナシ、クミン、クレソン、ケシノミ、ケーパー、ゴマ、コリアンダー、サッサフラス、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シャロット、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、スペアミント、セイヨウワサビ、セロリー、ソーレル、タイム、タマネギ、タマリンド、タラゴン、チャイブ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニンジン、ニンニク、バジル、パセリ、ハッカ、バニラ、パプリカ、ヒソップ、フェネグリーク、ペパーミント、ホースミント、ホースラディッシュ、マジョラム、ミョウガ、ラベンダー、リンデン、レモンバーム、ローズ、ワサビなどから得られる香辛料抽出物、ワイン、シードル、マラスキーノ、シェリー、ビール、清酒、みりん、ショウコウシュ、コウリャンシュ、バニュウシュ、パイカル、ラム、ウィスキー、ジン、ブランデー、チェリーブランデー、アップルブランデー、アプリコットブランデー、アワモリ、ショウチュウ、フーゼル油、ベルモット、コアントロー、アブサン、パスティス、スロージン、キュラソーなどの酒類抽出物、牛乳、羊乳、山羊乳、ヨーグルト、ケフィール、アシドフィルスミルク、ビフィズスミルク、乳酸菌飲料抽出物などが挙げられる。
【0039】
酸味料としては、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、クエン酸(結晶)(無水)、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム(結晶)(無水)、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、二酸化炭素、酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸、イタコン酸、α−ケトグルタル酸、フィチン酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、酸性メタリン酸ナトリウムの他、食酢や果汁などを例示することができる。
【0040】
調味料としては、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、DL−アラニン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アルギニン−L−グルタミン酸塩、L−イソロイシン、グリシン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸カリウム、L−グルタミン酸カルシウム、L−グルタミン酸ナトリウム、L−グルタミン酸マグネシウム、L−シスチン、L−セリン、タウリン(抽出物)、L−チロシン、L−テアニン、DL−トリプトファン、L−トリプトファン、DL−トレオニン、L−トレオニン、L−バリン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−ヒドロキシプロリン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、ベタイン、DL−メチオニン、L−メチオニン、L−リシン、L−リシン−L−アスパラギン酸塩、L−リシン塩酸塩、L−リシン−L−グルタミン酸塩、L−ロイシン、5'−イノシン酸二ナトリウム、5'−ウリジル酸二ナトリウム、5'−グアニル酸二ナトリウム、5'−シチジル酸二ナトリウム、5'−リボヌクレオチドカルシウム、5'−リボヌクレオチド二ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム(結晶)、酢酸ナトリウム(無水)、DL−酒石酸水素ナトリウム、L−酒石酸水素ナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、塩化カリウム、塩水湖水低塩化ナトリウム液、粗製海水塩化カリウム、ホエイソルト、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム(結晶)、リン酸水素二ナトリウム(無水)、リン酸二水素ナトリウム(結晶)、リン酸二水素ナトリウム(無水)、リン酸三ナトリウム(結晶)、リン酸三ナトリウム(無水)、クロレラ抽出物を例示することができる。
【0041】
苦味料としては、イソアルファー苦味酸、カフェイン(抽出物)、カワラタケ抽出物、キナ抽出物、キハダ抽出物、ゲンチアナ抽出物、香辛料抽出物、酵素処理ナリンジン、ジャマイカカッシア抽出物、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、ヒキオコシ抽出物、ヒメマツタケ抽出物、ボラペット、メチルチオアデノシン、レイシ抽出物、オリーブ茶、ダイダイ抽出物、ホップ抽出物、ヨモギ抽出物を例示することができる。
【0042】
その他、例えば「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第2部、食品用香料」や、「日本香料工業会刊、平成15年度厚生科学研究報告書、日本における食品香料化合物の使用実態調査」に記載の香料化合物を使用することが出来る。
【0043】
前述の微生物菌体に前述の香料を内包させる方法であるが、香料と微生物菌体とを混合することにより内包させる方法を挙げることができる。具体的には、前記微生物菌体(菌体残渣)の分散液に香料を添加し、所望によりpHや温度を調整して、所定時間、必要に応じて攪拌することによって、香料を菌体内に内包させることができる。pHは、特に制限されないが、通常pH5〜9、好ましくはpH6〜8の範囲から適宜選択することができる。また、温度は特に制限されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃の範囲から適宜選択することができる。
【0044】
また、攪拌の要否も特に制限されない。攪拌する場合は、攪拌翼を有するブレンダー、乳化機、分散機、またはホモジナイザー等の各種の攪拌装置を使用することによってより効率的に、油溶性香料を微生物菌体内に内包化させることができる。この際、攪拌速度や攪拌回転数等も特に制限されないが、通常1,000〜10,000rpmの範囲から適宜選択調整することができる。
【0045】
なお、香料と前記微生物菌体(菌体残渣)との混合に際して、香料と微生物菌体を混合した系に硬膜剤、酸化防止剤、安定剤、分散剤、乳化剤、pH調整剤、防腐剤、または劣化防止剤などを配合してもよい。
【0046】
更に本発明では、前記香料を内包した微生物菌体に加えて、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを併用しても添加しても良い。併用することにより、更に、調味食品の香味の発現性及び持続性を高めることができ、更に好ましくない香味をマスキングすることができる。水溶性香料及び油溶性香料はそのまま調味食品に添加することができるが、油溶性香料については乳化処理を行った乳化香料として添加することもできる。好ましくは、前記香料を内包した微生物菌体に乳化香料を併用して用いる。
【0047】
油溶性香料を乳化した乳化香料の調製方法としては、各種乳化剤を使用して乳化処理を行う方法を挙げることができるが、好ましくは、アラビアガム、ガティガム、加工澱粉、界面活性剤、カゼインナトリウム、ゼラチン、レシチンからなる群から選択される少なくとも1種を使用して乳化を行う方法を挙げることができる。好ましくは、アラビアガムを使用するのが好ましい。
【0048】
アラビアガムとしては、通常入手できるマメ科植物アカシア属(Acacia Senegal L,willdenow)または同属植物の幹から得る分泌物をそのまま、若しくは溶解し噴霧乾燥により粉末化したもの、若しくは特許第3600833号に記載の変性アラビアガム、特開2003−321502号公報に記載の方法、即ちアラビアガムを水分3〜30重量%に調整する工程と、30℃以上で加温する工程を行うことにより得られる改質アラビアガム、国際公開公報WO2004/089991号に記載の特定の加熱により重量平均分子量90万以上である改質アラビアガム等が例示でき、さらにはオーブンなどの恒温器を用いて加熱して調製し、重量平均分子量が100万以上としたアラビアガムを使用することも可能である。
【0049】
具体的な乳化処理方法としては、前述のアラビアガム等の乳化剤を含む溶液中に、油溶性香料を添加し、分散又は乳化を行うことにより行うことができる。分散又は乳化の方法としては、具体的にはホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、衝突式超高圧ホモジナイザー等を用いて油相成分と乳化剤溶液を攪拌・混合する方法が例示できる。ホモジナイズの条件としては、例えば、200kg/cmを1回行う方法などを挙げることができるがこの方法に限定されない。この攪拌・混合の際に任意で加温・加熱してもよい。
【0050】
アラビアガム等の乳化剤を溶解する溶媒は、通常利用される溶媒が制限無く利用でき、水、グリセリン、プロピレングリコール、D-ソルビトール、果糖ブドウ糖液糖等が例示でき、これらの1種以上を組み合わせて乳化剤溶液を調製すればよい。溶媒に対する前記乳化剤の配合量としては、5〜80質量%、好ましくは、20〜50質量%を挙げることができる。
【0051】
このようにして得られた油溶性香料を乳化した香料は、その形状を特に問うものではない。例えば、溶液状態であってもよいし、適当な担体等を添加して噴霧乾燥もしくは凍結乾燥等の常法に従って製造される粉末等の固体状態としたものであってもよい。
【0052】
本発明で言う調味食品は、前述の香料を内包した微生物菌体を添加した調味食品か、好ましくは、香料を内包した微生物菌体に、更に水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを併用して添加した調味食品であれば特に制限されない。例えば、飲食物、アルコール含有飲食物などが含まれるが、医薬品、医薬部外品の調味(矯味)などの目的で前述の香料を内包した微生物菌体を添加することもできる。
【0053】
具体的には飲食物の例として、好ましくは、粉末スープ又はスナック菓子を挙げることができる。粉末スープとしては、野菜スープ、クリームスープ、ポトフ、豆スープ、コンソメスープ、ポタージュスープ、チキンスープ、トムヤムクンスープ、ラーメンスープが例示される。スナック菓子としては、煎餅、あられ等の米菓類、ダイレクトパフスナック、ポテトチップ、コーンチップ、ナッツ類、プレッツェル、ポップコーンなどがある。
【0054】
粉末スープ又はスナック菓子の他にも、各種飲食物を挙げることができる。例えば、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類等を挙げることができる。
【0055】
なお、これら食品に対する前述の香料を内包した微生物菌体の配合量であるが、適用食品によって適宜調整をすることができるが、例えば、配合量として0.01〜2質量%を挙げることができる。
【0056】
また、本発明は、香料を内包した微生物菌体と、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを含むことを特徴とする、香料の発現の早さを高め、香味放出の持続性を高め、更に好ましくない香味をマスキングする方法に関する。本発明で使用する香料は、前述の記載にならって調製することができる。香料を内包した微生物菌体を使用することにより、微生物の菌体内部に含まれる香料の放出の速さ、強さまたは持続性を制御することができる。
【0057】
また、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上は、香味の発現性が良好であるので、香料を内包した微生物菌体と当該香料とを組みあわせて調味することにより、その香味の発現の速さ、強さまたは持続性を制御することができ、香味の発現性及び持続性を高めることができ、更に好ましくない香味をマスキングすことができるものである。好ましくは、香料を内包した微生物菌体と油溶性香料を乳化した香料を併用して用いる。
【0058】
香料を内包した微生物菌体及び乳化香料を含む香料組成物の製造方法として、「香料を内包した微生物菌体」と「乳化香料」を前述の通り別々に調製することができるが、微生物の菌体内に水溶性、油溶性香料を内包させた後、乳化処理を行うことにより、同時に調製することが可能である。具体的には、前述の微生物の菌体内に香料を内包させた混合物を添加した後、乳化処理を行うことにより行うことができる。乳化処理を行う方法としては、好ましくは、アラビアガム、ガティガム、加工澱粉、界面活性剤、カゼインナトリウム、ゼラチン、レシチンからなる群から選択される少なくとも1種を使用して乳化を行う方法を挙げることができる。好ましくは、アラビアガムを使用するのが好ましい。
【0059】
具体的にはホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、衝突式超高圧ホモジナイザー等を用いて、菌体内に香料を内包した微生物及び香料とアラビアガム等の乳化剤溶液を攪拌・混合する方法が例示できる。ホモジナイズの条件としては、例えば、100kg/cmを1回行う方法などを挙げることができるがこの方法に限定されない。この攪拌・混合の際に任意で加温・加熱してもよい。
【0060】
乳化剤を溶解する溶媒は、通常利用される溶媒が制限無く利用でき、水、グリセリン、プロピレングリコール、D-ソルビトール、果糖ブドウ糖液糖等が例示でき、これらの1種以上を組み合わせて乳化剤溶液を調製すればよい。溶媒に対する前記乳化剤の配合量としては、5〜80質量%、好ましくは、20〜50質量%を挙げることができる。
【0061】
このようにした調製した乳化剤溶液に対して、前述の菌体内に香料を内包した微生物及び香料混合物を10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%配合して乳化処理を行うことができる。更には、香料の配合量として、微生物の菌体内に香料を菌体内に配合可能な量より多い量を内包させた後、乳化処理を行うのが好ましい。具体的には、香料の配合量として、微生物の菌体内に配合できる量の2〜10倍量、好ましくは2〜5倍量の香料を配合する方法を挙げることができる。
【0062】
なお、香料組成物は、その形状を特に問うものではない。例えば、溶液状態であってもよいし、適当な担体等を添加して噴霧乾燥もしくは凍結乾燥等の常法に従って製造される粉末等の固体状態としたものであってもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。特に記載のない限り「部」とは、「重量部」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0064】
(1)ブラックペパーを使用した香料組成物
実施例1:香料組成物(微生物の菌体内に水溶性香料を内包した香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)60gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、デキストリン40gを水に溶解して調製した溶液を加え、30分攪拌混合後、この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0065】
実施例2:香料組成物(微生物の菌体内に水溶性香料を内包した香料と水溶性香料との混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)60gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)10gとデキストリン40gを水に溶解して調製した溶液を加え、30分攪拌混合後、この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0066】
実施例3:香料組成物(微生物の菌体内に水溶性香料を内包した香料と油溶性香料との混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)50gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)5gとデキストリン40gを水に溶解して調製した溶液を加え、30分攪拌混合後、この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0067】
実施例4:香料組成物(微生物の菌体内に水溶性香料を内包した香料と乳化香料との混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)50gを添加して1,000rpmで24時間攪拌する。この混合物に、別途、アラビアガム40gを水に溶解後、油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)5gを加え、30分攪拌混合後、ホモジナイザー(200kg/cmを1回処理)にて乳化した溶液を加えた。30分攪拌混合後、この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0068】
実施例5:香料組成物(微生物の菌体内に水溶性香料を内包した香料と油溶性香料とを同時に乳化した混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)50gを添加して1,000rpmで24時間攪拌する。この混合物に油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)5gを加え、アラビアガム40gを水に溶解した溶液を加え、30分攪拌混合後、ホモジナイザー(200kg/cmを1回処理)にて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0069】
実施例6:香料組成物(微生物の菌体内に油溶性香料を内包した香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)10gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、デキストリン50gを水に溶解して調製した溶液を加え、30分間攪拌混合した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0070】
実施例7:香料組成物(微生物の菌体内に油溶性香料を内包した香料と水溶性香料との混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)10gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、水溶性セイボリー香料(ブラックペパーエッセンス)30gとデキストリン45gを水に溶解して調製した溶液を加え、30分攪拌混合後、この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0071】
実施例8:香料組成物(微生物の菌体内に油溶性香料を内包した香料と乳化香料との混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)25gを添加して1,000rpmで24時間攪拌した。この混合物に、別途アラビアガム25gを水に溶解後、油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)5gを加え、30分攪拌混合後、ホモジナイザー(200kg/cmを1回処理)にて乳化した溶液を加えた。30分攪拌混合後、この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0072】
実施例9:香料組成物(微生物の菌体内に油溶性香料を内包した香料と油溶性香料とを同時に乳化した混合香料)の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)40gを含む水分散液(乾燥固形分5%)800gに油溶性セイボリー香料(ブラックペパーオイル)30gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、アラビアガム30gを水に溶解して調製した溶液を加え、ホモジナイザー(100kg/cmを1回処理)にて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、混合香料組成物粉末90g得た。
【0073】
比較例1: 乳化香料の調製(アラビアガム使用)
アラビアガム40g及びデキストリン30gを水に溶解して調製した溶液(乾燥固形分23%)300gにセイボリー香料(ブラックペパーオイル)30gを添加して30分間攪拌混合後、ホモジナイザー(200kg/cmを2回処理)にて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、実施例1と同条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90gを得た。
【0074】
比較例2:乳化香料の調製(加工澱粉使用)
比較例1のアラビアガムを加工澱粉40gに置き換えた以外、比較例1と同様に調製し、香料組成物粉末90gを得た。
【0075】
比較例3:練り込み香料の調製
セイボリー香料(ブラックペパーオイル)30gをデキストリン70gに添加して練り込み、香料組成物粉末90gを得た。
【0076】
(2)ブラックペパー及びブラックペパーオレオレジンの混合オイルを使用した香料組成物の調製
実施例10:香料組成物の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)20gを含む水分散液(乾燥固形分2.9%)700gに油溶性セイボリー香料(ブラックペパー及びブラックペパーオレオレジンの混合オイル)10gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、デキストリン70gを水に溶解して調製した溶液を加え、30分間攪拌混合した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0077】
実施例11:香料組成物の調製
酵母(Saccharomyces cerevisiae)20gを含む水分散液(乾燥固形分2.9%)700gに油溶性セイボリー香料(ブラックペパー及びブラックペパーオレオレジンの混合オイル)10gを添加して1,000rpmで24時間攪拌し、次に、この混合物に、アラビアガム20g及びデキストリン50gを水に溶解して調製した溶液を加え、ホモジナイザー(100kg/cmを1回処理)にて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、インレット温度160℃、アウトレット温度90℃の条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90g得た。
【0078】
比較例4:乳化香料の調製(アラビアガム使用)
アラビアガム40g及びデキストリン50gを水に溶解して調製した溶液(乾燥固形分30%)300gにセイボリー香料(ブラックペパー及びブラックペパーオレオレジンの混合オイル)10gを添加して30分間攪拌混合後、ホモジナイザー(200kg/cmを2回処理)にて乳化した。この溶液をスプレードライヤーにて、実施例2と同じ条件で噴霧乾燥して、香料組成物粉末90gを得た。
【0079】
比較例5:乳化香料の調製(加工澱粉使用)
比較例4のアラビアガムを加工でんぷんに置き換えた以外、比較例4と同様に調製し、香料組成物粉末90gを得た。
【0080】
比較例6:香料組成物の調製(練り込み香料)
セイボリー香料(ブラックペパー及びブラックペパーオレオレジンの混合オイル)10gをデキストリン90gに添加して練り込み、香料組成物粉末90gを得た。
【0081】
実験例1:ラーメンスープへの応用評価
市販のラーメンスープ8gに実施例1〜11及び比較例1〜6の香料組成物0.1gを混ぜ込んだものを60℃の湯500gに溶解し、香味を官能評価した。結果を表1及び2に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
表1より実施例1〜9の香料を使用した場合、トップに感じられるペパー香は、比較例1〜2の従来の乳化香料や比較例3の練り込み香料ほど強くないが、比較例1〜3の香料に無い特徴であるペパー香が持続する効果がみられ、ペパーの香味の放出がトップから持続されていることが判った。
【0085】
表2より実施例10〜11の香料を使用した場合、トップに感じられるペパー香は、比較例4〜5の従来の乳化香料や比較例6の練り込み香料ほど強くないが、比較例4〜6の香料に無い特徴であるペパー香が持続する効果がみられ、ペパーの香味の放出がトップから持続されていることが判った。
【0086】
実験例2:スナック菓子への応用
市販のポテトチップ100gに、実施例1〜11及び比較例1〜6の香料組成物粉末1gをまぶして、ポテトチップの香味を官能評価した。結果を表3及び4に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
表3及び4より実施例1〜11の香料を使用した場合、トップに感じられるペパー香は、比較例1〜6の従来の乳化香料や練り込み香料ほど強くないが、比較例1〜6の香料に無い特徴であるペパー香が持続する効果がみられ、ペパーの香味の放出がトップから持続されており、またボディ感が付与されていることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明により、香料の発現の早さと香味放出の持続性のいずれをも向上させることができ、香味の発現が早く、かつ、その香味が持続された調味食品を提供できる。更に、持続性の効果から、更には好ましくない香味のマスキング効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を内包した微生物菌体を添加することを特徴とする調味食品。
【請求項2】
香料を内包した微生物菌体に加えて、更に水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上を添加する、請求項1に記載の調味食品。
【請求項3】
調味食品が粉末スープ又はスナック菓子である、請求項1又は2に記載の調味食品。
【請求項4】
香料を内包した微生物菌体と、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを含有する香料組成物。
【請求項5】
微生物の菌体内に香料を内包させた後、乳化処理を行うことを特徴とする香料組成物の製造方法。
【請求項6】
調味食品に、香料を内包した微生物菌体と、水溶性香料、油溶性香料及び油溶性香料を乳化した香料から選ばれる1種以上とを含むことを特徴とする、調味食品の香味の発現性及び持続性を高め、更に好ましくない香味をマスキングする方法。