説明

駅及び車両基地構内入換計画作成装置

【課題】既存の計画を考慮することで、ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ作業内容の計画を立案できる駅及び車両基地構内入換計画作成装置を提供する。
【解決手段】ネットワーク作成手段1にて、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車・作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データを、運用情報として入力し、これら初期解及び列車変更データからなる運用情報に基づき、初期段階の入換計画ネットワークを作成する。また、ネットワーク作成手段に対して、ダイヤ改正前の車両入換作業に従った作業開始時刻に相当する重みを持った作業開始時刻制約アークを設定する。これによって可能な限り従前と同じ作業内容の計画を立案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅構内及び車両基地構内に配線された線路における車両の入換作業のスケジュール(以下「駅構内入換計画」という)作成に適用される入換計画作成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の入換計画作成に関する技術としては、特開2000−177590号公報(特許文献1)に示される装置が知られている。この駅構内入換計画作成装置では、まず、駅構内入換計画を列車ダイヤ等から初期設定し、それをネットワーク作成手段がある種のPERT(program evaluation and review technique)ネットワークで表現して入換計画ネットワークを作成する。その入換計画ネットワークにおける列車の着発に対応した各ノードの実行可能時刻を時刻計算手段が計算し、それらが列車ダイヤを満たすかどうかを評価手段が評価する。そして、ネットワーク変形手段が列車ダイヤを満たしていないノードへ達するまでのパスを変形して複数の入換計画ネットワークの作成を繰り返すことで、条件を満たす入換計画を得るようにしている。
【特許文献1】特開2000−177590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に示される駅構内入換計画作成装置では、(1)PERTにより計算で求めた最も早い作業開始時刻を用いて、構内の各作業の開始及び終了時刻を定めているために、全体的に早くなる「前倒し」の作業計画(可能な限り早く作業に着手し、早く完了する計画)となる傾向となり、現実に即した計画とならない。すなわち、余裕を持たせた計画を作成することができず、特定の時間帯に入換作業が集中する一方、全く作業の無い時間帯が生じるという問題が発生していた。
【0004】
(2)既存の計画を全く考慮しない白紙からの計画作成を指向しているために、実作業のニーズに合った計画が作成できない。実作業のニーズとしては、ダイヤ改正時において、運転時刻が大きく変わらない列車については、計画変更に伴う不慣れな作業を実施することによる事故発生を防止するために、入換作業を行う時刻、入換先の番線については、極力、改正前の計画に一致させたい。しかし、実際にPERTにより計算される計画では、必ずしも改正前の時刻/番線に一致するとは限らず、また、詳細な条件データを入力することで、実作業のニーズに近い計画が作成される可能性もあるが、膨大なデータを全て抽出し、システムに入力することは現実的ではなく、また、それだけのことができる担当者に対して、自動計画作成システムを提供する必要性もない。
【0005】
(3)車両の入換、検査、清掃などの各作業を担当するのは、各駅に配属されている作業員であるが、従来手法による計画作成では、このような作業員の作業スケジュールを一切考慮していないために、現実には実施できない計画が作成されることがある。すなわち、実際にPERTにより計算される計画では、作業員の勤務時間から外れた時刻に作業が設定されることもあり、また、複数の作業を連続して行うときには、作業員の移動時間を見込んでいないために、現実には計画通りに実施できない(例えば、作業員が次の作業箇所に開始時間通りに到着することができない、など)。また、作業員の勤務上必要な休憩時間を確保した計画となっていない場合もある。
【0006】
(4)作業時間に余裕を持たせるために、なるべく一箇所に留めておきたいというニーズがあり、このようなニーズに答えられないという問題がある。例えば、車両検査をする場合、異常の有無により検査時間が大きく変動するために、計画作成においては、ある番線での在線時間を極力長く取りたいというニーズがある。このようなニーズに応えるためには、在線の開始時刻を早くする、及び/又は在線の終了時刻を遅くするという2つの方法が考えられるが、現実には前者の方法で、在線の開始時間を可能な限り早くする計画しかできず、このために十分な在線時間を確保できないという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、従来の有していた問題を解決しようとするものであって、(1)特定の時間に作業が集中することがない、現実に即した余裕を持った計画を立案できる、(2)既存の計画を考慮することで、ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ作業内容の計画を立案できる、(3)作業員の作業スケジュールを考慮することで、作業員の移動及び休憩に配慮した現実的な計画を立案できる、(4)在線時間を極力長くとる計画を立案して入換作業の時間に余裕を持たせることができる、駅及び車両基地構内入換計画作成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、上記目的を達成するために本発明の課題解決手段では、予め定められた各車両の着発すべき駅構内又は車両基地構内の運用情報に基づき、各車両毎に各番線への発着を表すノードを、各ノード間遷移の所要時間で重み付けしたアークにより遷移順序に従って結んだ入換計画ネットワークを作成するネットワーク作成手段と、それぞれの前記ノードにおける着発の実行可能な時刻範囲を前記アークの重み付に基づいて計算する時刻計算手段と、前記時刻計算手段により計算された時刻範囲が列車ダイヤを満たすかどうか評価する評価手段と、前記評価手段による評価に基づき、入換計画ネットワークが列車ダイヤを満たすか否かを検討する選択手段と、前記選択手段により選択された入換計画ネットワークについて、ネットワーク経路を変更して当該入換計画ネットワークを変形するネットワーク変形手段と、を有し、前記評価手段にてネットワーク作成手段により作成された入換計画ネットワークが列車ダイヤを満たしていないと評価されたときに、前記ネットワーク変形手段により変形ネットワーク複数作成した後、前記時刻計算手段、評価手段及び選択手段による処理を行うことを繰り返し、すべてのノードにおける前記時刻範囲が列車ダイヤを満たす入換計画ネットワークが得られたとき、当該入換計画ネットワークで表現された車両の着発を前記駅構内における車両の入換計画とする駅及び車両基地構内入換計画作成装置において、前記ネットワーク作成手段にて、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車、作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データが、運用情報として入力され、これら初期解及び列車変更データからなる運用情報に基づき、初期段階の入換計画ネットワークを作成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の課題解決手段では、前記ネットワーク作成手段に、ダイヤ改正前の車両入換作業に従った作業開始時刻に相当する重みを持った作業開始時刻制約アークが設定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の課題解決手段では、前記ネットワーク作成手段には、作業員の挙動を示す作業員挙動ノード及びアークが新たに設定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の課題解決手段では、前記時刻計算手段において、車両入換作業の開始時間を遅くするために、前記ネットワーク作成手段で作成された入換計画ネットワーク上の最遅作業開始時刻に基づき、作業開始時刻制約アークの重みを変更する。
【0012】
また、本発明の課題解決手段では、前記ネットワーク変形手段において、列車ダイヤや転線時間等の条件を満足しない下で、クリティカルパスが存在し、かつそのパスの中に、前記作業開始時刻制約アークが含まれている場合に、当該作業開始時刻制約アークの重みを、事前に定めたステップ幅だけ減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、ネットワーク作成手段において、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車・作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データが、運用情報として入力され、これら運用情報に基づき、初期段階の入換計画ネットワークを作成するようにしたので、ここで作成された入換計画ネットワークを基にして、ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ内容の入換作業計画を立案することができ、不慣れにより生じる入換作業のトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0014】
また、上記のように構成された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、ダイヤ改正前の入換作業に従った作業開始時刻(連結作業を含む入換作業の開始時刻など)に相当する重みを持った「作業開始時刻制約アーク」が新たに設定されたことで、ダイヤ改正前の入換作業計画に近似した入換計画ネットワークを作成し、この入換計画ネットワークから、ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ内容の入換作業計画を立案することができ、不慣れにより生じる入換作業のトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0015】
また、上記のように構成された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、作業員の挙動を示す作業員挙動ノード及びアークを新たに用いることで、作業員のスケジュール(作業開始/終了時間、休憩時間)を含めた構内作業計画を、一つのモデルの中で表現することができ、列車及び該列車を入換作業する作業員の計画を総合的に作成することが可能となる。
【0016】
また、上記のように構成された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、時刻計算手段において、前記ネットワーク作成手段で作成された入換計画ネットワーク上の最遅作業開始時刻に基づき、作業開始時刻制約アークの重みを変更することによって、車両入換作業の開始時間を遅くようにしたので、従来のような、全体的に早くなる「前倒し」の作業計画(可能な限り早く作業に着手し、早く完了する計画)となる作業計画ではなく、余裕を持たせた計画を作成することができ、特定の時間帯に入換作業が集中することを防止することが可能となる。
【0017】
また、上記のように構成された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、列車ダイヤや転線時間等の条件を満足しない下で、クリティカルパスが存在し、かつそのパスの中に、「作業開始時刻制約アーク」が含まれている場合に、ネットワーク変形手段にて、当該作業開始時刻制約アークの重みを、事前に定めたステップ幅(例えば、1分毎)だけ減少させ、新たな候補解としたので、在線時間を極力長くとる計画を立案して、入換作業の時間に余裕を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は、本発明に係わる駅及び車両基地構内入換計画の作成対象とされる駅の一例を示す配線図であって、この図において、ホームP1、P2は、それぞれ乗客が列車に乗降するプラットホームである。ホームP1には上り線R1の番線L1(1番線)、ホームP2には下り線R2の番線L2(2番線)があり、それぞれ列車が駅外から直接到着することができる。上り線R1と下り線R2には、到着した列車が折り返しになる場合等に一時的に車両を留置するために使用される引上線Uが分岐器を介して接続される。また、これら上り線R1と下り線R2には、プラットホームがないために列車の着発線としては使用されず、車両の一時留置のために使用される留置線Kが設けられている。
【0019】
このような配線において、必要に応じて車両の入換作業を行う。すなわち、入換とは、図示のような番線L1、L2と引上線Uとの間、あるいは、引上線Uと留置線Kとの間で、番線変更のため又は連結のために車両を移動させる作業のことであり、入換が必要となる場合としては、到着列車の着番線と、その列車が発車するときの発番線とが異なる場合や、着番線と発番線とが同じであっても着時刻と発時刻との間にその番線を他の列車が使用する場合等がある。又、一旦引上線Uに移動させた車両であっても、他に空いている引上線がない等の理由によりその引上線Uを他の車両が使用せざるを得ない場合には、更に別の引上線(図示略)への入換を行う。なお、以下の説明において、「入換」とは、番線L1、L2、引上線U、留置線K間の車両の移動とともに、当該車両の連結を含む作業を意味するものとする。
【0020】
そして、図1に示される配線を有する駅構内において、入換が必要である車両に対して引上線U、留置線Kへの入換を行ない、その際、入換の実行時刻(番線L1、L2から引上線Uへの発時刻及び着時刻等)を、列車ダイヤで定められた時刻や番線等の条件から決定し、これによって駅構内の入換作業計画を立案する(具体的な工程については後述する)。その際、立案される入換作業計画の実行可能時刻が、入換作業に課せられる制約を満たすか否かを評価する必要があるが、そのような入換作業に課される制約として考慮すべきものには、次のようなものがある。
【0021】
(1) 列車ダイヤに関する制約
列車ダイヤでは、列車の駅への到着時刻と到着番線、駅からの発車時刻と発車番線が定められている。従って、入換作業に当たっては、これらの時刻及び番線を守らなければならない。
【0022】
(2)設備に起因する制約
「進路の有無」:移動前の地点と移動後の地点との間に物理的な経路(線路)が存在しなければならない。
「引上線U/留置線Kの有効長」:引上線Uの長さは有限であるため、収容できる車両の両数には限りがある。その両数以下の列車は収容できるが、それ以上の列車は収容できない。
「引上線U/留置線Kでの競合」:引上線U/留置線Kに同時に収容できる列車の数は決まっているが、通常、1つの引上線U、留置線Kには1編成の列車しか収容しない。このため、2以上の列車が競合する場合は他の引上線U、留置線Kを使うか既に留置されている列車を移動させなければならない。
【0023】
(3)時間に関する制約
「番線L1、L2及び引上線U/留置線Kでの停車時間」:番線L1、L2や引上線U/留置線Kでは、乗客の乗降や車内点検のために、ある定められた時間以上の停車時間(最小停車時間)を確保しなければならない。
「転線時間」:番線L1、L2と引上線Uとの間の移動時間(入換時間)等、車両が線路間を移動する際の転線時間は、移動の経路毎に予め定められている一定の時間(駅や移動場所等によって異なるが、おおむね2分程度)でなければならない。これは、この時間が短すぎると物理的に車両が到着不可能であり、長すぎるとその進路を支障する時間が長くなるためである。
「進路支障時間」:鉄道の駅においては複数の進路が交差する場合がある。例えば、図1では番線L1から上り方向に出発する進路と、引上線Uから番線L2への進路とが互いに交差している。このような場合、番線L1からの上り列車の進行と、引上線Uから番線L2への入換を同時に実行することはできない。これらの進路上での入換は、分岐器が転換する時間(以下、これを「進路支障時間」という。)だけの間隔をおいて実施しなければならない。これは、保安上絶対に守らなければならない制約であり、入換時刻の決定に際しては進路支障時間の考慮は極めて重要である。駅外へ出発する列車や駅に到着する列車に対して、入換による進路支障が発生すると、それらの列車は列車ダイヤで定められた着発時刻を守れなくなるからである。
【0024】
(4)上記制約のうち、列車ダイヤに関する制約と、時間に関する制約の転線時間以外の制約は、物理的な条件に起因するため緩和不可能である。列車ダイヤについては極力守ることが要求され、転線時間については長くなる方に限り緩和可能ではある(短くすることはできない)が、当然あまり長くなることは好ましくない。又、不要な入換はエネルギーの無駄であるので、入換回数はできるだけ少ない方がよい。
【0025】
以上をまとめると、実行可能時刻を計算した解候補についての評価基準は、「列車ダイヤで定められた着発時刻を極力守っていること」、「予め定められた転線時間を極力守っていること」、「入換回数が少ないこと」である。
【0026】
そして、これら評価基準による評価の結果、制約を満たす解候補を得るが、もし、制約を満たす解候補が得られなかったときは、変形した複数の入換計画ネットワークを作成する。そして、このような解候補の生成、実行可能時刻の計算及び評価並びに解候補の選択を、制約を満たす解候補が得られるまで繰り返して駅構内入換計画を生成する(以下、図3のフローチャートにより後述する)。
【0027】
以下、図2を参照して本発明に係わる駅及び車両基地構内入換計画作成装置10について説明する。この駅及び車両基地構内入換計画作成装置は、駅及び車両基地構内入換計画をPERTネットワークで表現した入換計画ネットワークを作成するネットワーク作成手段1と、入換計画ネットワークの各ノードにおける着発の実行可能な時刻範囲(各アークの重み付けに基づいて計算される各ノードの最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻)を計算する時刻計算手段2と、上述した制約(1)〜(4)と比較しながら、時刻計算手段2により計算された時刻範囲が列車ダイヤや転線時間を満たすかどうか等を評価する評価手段3と、評価手段3による評価に基づいて確率的に入換計画ネットワークを1つ選択する選択手段4と、選択手段4により選択された入換計画ネットワークについて列車ダイヤや転線時間等を満たしていない時刻範囲のノードへ達するまでのネットワーク経路(以下、このような経路を「クリティカルパス」という)を変更し、変形した入換計画ネットワークを複数作成するネットワーク変形手段5と、から構成されるものであり、このような手段1〜5を経た演算処理を繰り返して行うことで、最終的な解を得る。なお、この図2に示される駅及び車両基地構内入換計画作成装置において、各手段1〜5の基本的な部分の処理内容は、先の特許文献1と同じである。
【0028】
また、上述したネットワーク作成手段1には、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車・作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データが、運用情報として入力され、これら運用情報に基づき、初期段階の入換計画ネットワークを作成する。また、このネットワーク作成手段1によって作成される入換計画ネットワークは、列車入換計画(連結作業を含む入換作業計画)の開始及び終了に対応する仮想的なノード(作業開始ノード及び作業終了ノード)と、車両の着及び発の事象に対応するノード(着ノード及び発ノード)と、作業員の動きに対応した時刻を示す作業員挙動ノード、及びそれら事象の発生順序を表現した複数種のアークと、2つの事象の発生の間に最小限必要な時間を表すアークの重みと、によって構成される。
【0029】
ここで、入換計画ネットワークを形成するアークとしては次のものがある。
「運用アーク」:着ノードと発ノードの間(列車の着発間)に存在し、その列車の最小停車時間が重みとなる。
「入換アーク」:異なる番線L1、L2及び引上線Uの間の発ノードと着ノードの間(入換時の発着間)に存在し、その番線L1、L2及び引上線U間の転線時間が重みとなる。
「番線アーク」:同一の番線及び引上線Uの間の発ノードと着ノードの間(同一線路で列車が発車してから次の列車が到着するまでの間)に存在し、その番線L1、L2及び引上線Uが空きになってから次に使用可能となるまでの時間が重みとなる。
「進路支障アーク」:互いに支障する進路を使用するノードの間に存在し、進路支障時間が重みとなる。
【0030】
「作業開始時刻制約アーク」:ダイヤ改正前の入換作業に従った作業開始時刻(連結作業を含む入換作業開始時刻)に相当する重みを持ったアークであって、入換作業に係わる各ノードに対して設定される。そして、従来から存在する、列車の発着事象に対応する着ノードと発ノードに設定される「運用アーク」及び、この「作業開始時刻制約アーク」によって、列車発着時刻を守りつつ、特に、列車の入換作業計画が早まることなく入換作業、連結作業などの作業計画を実施することができる。
【0031】
「計画時刻アーク」:開始ダミーノードから列車ダイヤで実行時刻が定められたノードを結ぶアークであり、その定められた実行時刻を重みとして設定する。
【0032】
「作業員挙動アーク」:作業員挙動ノードに設定されるアークであって、作業員のスケジュールを含めた構内作業計画を、一つのモデル中で表現することが可能となる。そして、作業員の動きを表わすアークの重みには、各作業箇所の移動に要する時間を設定することで、作業員の動きを考慮した計画を作成することができる。また、作業員挙動ノードには、作業員の勤務開始時刻/勤務終了時刻を示すノードと、作業員の休憩時間帯の開始時刻/終了時刻を示すノードとがあり、作業員の勤務開始時刻/勤務終了時刻を示すノード間のアークに対して、作業員の勤務開始時刻/勤務終了に相当する重みが与えられ、また、作業員の休憩時間帯の開始時刻/終了時刻を示すノード間のアークに対して、作業員の休憩時間に相当する重みが与えられる。また、作業員の休憩時間帯の開始時刻/終了時刻を示すノードには、開始ダミーノードからの計画時刻アーク(図4に符号Mに示す)を設定することで、休憩時間帯などの特定の時間帯を固定することも可能となり、又は、開始ダミーノードからのアークを設定しないのであれば、これら特定の時間帯を可変とすることも可能となる。
【0033】
「終了アーク」:それぞれの番線L1、L2及び引上線Uの最後のノードから終了ノードを結ぶアークであり、重みは0とする。
【0034】
また、入換計画ネットワークの各ノードにおける着発の実行可能な時刻範囲を計算する時刻計算手段2では、実行可能な時刻範囲を、各アークの重み付に基づいて各ノードの最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻とを求めることによって計算する(計算の方法は通常のPERTの計算とほぼ同様である)。具体的には、最初にネットワーク作成手段1によって入換計画ネットワークが作成された後で、評価手段3、選択手段4及びネットワーク変形手段5の処理によって複数の入換計画ネットワークが得られた場合には、時刻計算手段2はそれらの入換計画ネットワークそれぞれの各ノードにおける実行可能な時刻範囲(最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻との間の範囲)を計算する。
【0035】
また、評価手段3は、入換計画ネットワークを上記評価基準によって評価する手段であり、時刻計算手段2により計算された時刻範囲(最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻との間の範囲)が列車ダイヤや転線時間を満たすかどうか等を評価する。すなわち、評価手段3は、列車ダイヤによって実行時刻が定められているノードについて、その実行時刻が当該ノードの最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻の間にあるかどうかを判断する。例えば“あるノードの最早実行可能時刻”>“列車ダイヤで定められている実行時刻”であれば、そのノードの事象はいくら早くしても列車ダイヤで定められている時刻に発生させることはできないので列車ダイヤを満たさないノードと判断する。又、転線時間は入換アークの重みとなっているので、それを満たすかどうかは当該入換アーク前後のノード間遷移時間(それらノードの実行可能時刻範囲から求まる。)が当該転線時間よりも短いかどうか(或いはこれに加えて長すぎないかどうか等)によって判断する。例えば、あるノードの最遅実行可能時刻が、その前の入換アークで結ばれた他のノードとの間に予め定められた入換時間以上の遷移時間を確保できないときは、当該ノードを、転線時間を満たさないノードと判断する。
【0036】
そして、すべてのノードにおける時刻範囲が列車ダイヤや転線時間等を満たす入換計画ネットワークがあったときは、評価手段3にてそれを最終的な解として出力する。これ以外のときは、それぞれの入換計画ネットワークについて列車ダイヤや転線時間等を満たさないノードの数を評価値として選択手段4へ供給する。選択手段4は、評価手段3による評価に基づいて確率的に入換計画ネットワークを1つ選択する。具体的には、各入換計画ネットワーク(各解候補)がそれぞれの評価値に応じた確率で選択されるようにする。
【0037】
ネットワーク変形手段5は、前述したように、選択手段4により選択された入換計画ネットワークにおいて列車ダイヤや転線時間等を満たしていない時刻範囲のノードへ達するまでのネットワーク経路(クリティカルパス)を変更し、変形した入換計画ネットワークを複数作成するものであるが、このネットワーク変形手段5では、列車ダイヤや転線時間等の条件を満たすとき、すなわち、クリティカルパスが存在しないときは、そのときの入換計画ネットワークに対応する作業計画を可能解として出力する。一方、クリティカルパスが存在するが、その中に、前述したような、ダイヤ改正前の入換作業に従った作業開始時刻(連結作業を含む入換作業開始時刻)に相当する重みを持った作業開始時刻制約アークが含まれていないときは、従来手法と同様に、選択手段4及びネットワーク変形手段5によって新たな候補解を生成するようにする。また、クリティカルパスが存在し、かつそのパスの中に、「作業開始時刻制約アーク」が含まれているときには、その作業開始時刻制約アークに係わるノードの時刻を早めなければ、実行可能な作業計画を得られないことを意味するので、その作業開始時刻制約アークの重みを、事前に定めたステップ幅(例えば、1分毎だが任意に設定可)だけ減少させ、新たな候補解とする。
【0038】
なお、上記の時刻計算手段2では、入換作業に係わるノードの最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻とを求めるようにしているが、その際、在線の終了時刻を遅くする(特定の番線L1、L2/引込線U/留置線Kでの在線時間を長くする)ために、この最遅実行可能時刻を用いて、開始ダミーノードと、入換作業に係わるノードとの間の計画時刻アーク(図4に符号Mで示す)の重みを、算出した最遅実行可能時刻に相当する重みで置き換えると良い。具体的には、PERT計算による最早作業開始時刻は、列車の到着時刻を基準にして各ノードが何時から実行可能となるかという点で求められるものであり、また、最遅実行可能時刻は、列車の出発時刻を基準にして各ノードを何時までに終わらせる必要があるかという点で求められるものであり、このような最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻の範囲内で、入換作業の開始時間が決定される。そして、上述した入換作業に係わるノードに対するワーク(符号Mで示す)への重み付けは、最遅実行可能時刻で作業計画の条件を満たさない場合には、条件を満たすために、例えば1分単位で最遅実行可能時刻を早めるようにすると良い。
【0039】
そして、以上ように設定されたノード及びアークを用いた駅及び車両基地構内入換計画作成装置10の作業ステップについて、図3を参照して説明する。この駅及び車両基地構内入換計画作成装置10では、与えられた初期解候補をネットワーク作成手段1により入換計画ネットワークで表現し、その各ノードにおける実行可能時刻範囲を時刻計算手段2により計算する。上述した制約(1)〜(4)と比較することによりその初期解候補を評価手段3において評価し、評価結果に基づいてネットワーク変形手段5で複数の解候補を生成する。そして、それらの解候補それぞれについて、各ノードにおける実行可能時刻範囲を時刻計算手段2で計算して評価手段3での評価を行い、その結果の評価値によって選択手段4で確率的に一つの解候補を選択するものである。
【0040】
まず、ステップS1にて、ネットワーク作成手段1に対して、ダイヤ改正前のデータ(到着時刻、発車時刻、番線などの運用情報)からなる初期解、及び新設列車、作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データ(到着時刻、発車時刻、番線などの運用情報)を、運用情報としてネットワーク作成手段1に対して入力する。なお、新設列車等に対する入換作業を実施するためのノードについては、作業員の作業開始を示す作業開始時刻制約アークに対して時刻に相当する重みを与えず、事前にタイムテーブルで定めた標準作業時間を用いて仮設定した時刻、もしくはユーザーが適宜入力した作業時刻を用いて、開始ダミーノードからのアーク(図4に符号Mで示す)に重みを設定しても良い。
【0041】
次のステップS2では、ステップS1で入力された旧列車ダイヤデータ及び列車変更データからなる運用情報を初期解として、図4に示すような、PERTネットワークで表現した初期段階の入換計画ネットワークを作成する。なお、このような入換計画ネットワークの作成は、ネットワーク作成手段1にて行われる。
【0042】
ここで作成された入換計画ネットワークの例を図4に示す。この図において、番線L1の「(11)→(13)」、「(21)→(23)」は、この番線に入線した列車の挙動を示すノードと、運用アークであり、番線L2の「(43)→(45)」は、この番線に入線した列車の挙動を示すノードと、運用アークである。また、留置線Kの「(16)→(36)」及び「(31)→(36)」は、この線に入線した列車の挙動を示すノードと、運用アークであり、引上線Uの「(14)→(15)」、「(24)→(25)」、「(41)→(42)」は、この線に入線した列車の挙動を示すノードと、運用アークである。
【0043】
また、「(13)→(14)」、「(15)→(16)」、「(23)→(24)」、「(25)→(31)」、「(36)→(41)」、「(42)→(43)」は、進路を支障するノードと、その進路支障アークである。
【0044】
また、「(13)→(14)」、「(23)→(24)」は、入換作業に係わるノードと作業開始時刻制約アークであり、「(15)→(16)」、「(25)→(31)」は、入換時の連結作業に係わるノードと作業開始時刻制約アークである。また、上述の「(13)→(14)」、「(23)→(24)」、「(15)→(16)」、「(25)→(31)」及び「(36)→(41)」、「(42)→(43)」は、他のアークと重複する場合があるが、この場合、前述した制約条件よりアークの優先順位が決定される。また、他のアークについてもアークが重複する場合には、同様に制約条件により優先順位を決定する。
【0045】
また、番線L1、引上線U内に存在する「(13)→(21)」、「(15)→(24)」、「(25)→(41)」は、発ノードと着ノードの間の番線アークである。
【0046】
また、ノード(1)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(51)、(52)、(101)は、作業員A(操車Aと表示)に係わる挙動を示すノードであり、その間のアークが、作業員Aの「作業員挙動アーク」となる。(2)、(22)、(23)、(24)、(25)、(31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)、(41)、(42)、(43)、(44)、(101)は、作業員B(操車Bと表示)に係わる挙動を示すノードであり、その間のアークが、作業員Bの「作業員挙動アーク」となる。そして、本例では、作業員Aの勤務開始時刻を示すノードを(1)、勤務終了時刻を示すノードを(101)とし、また、作業員Bの勤務開始時刻を示すノードを(2)、勤務終了時刻を示すノードを(102)とすることで、作業員A・Bの勤務時間が特定される。また、作業員Aの休憩開始時刻を示すノードを(51)、休憩終了時刻を示すノードを(52)に設定することで、作業員Aの休憩時間を示すアークに重みが付加される。
【0047】
そして、このような入換計画ネットワークを作成した後、図3のステップS3へ進み、時刻計算手段2により各ノードの実行可能時刻(最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻)を計算する。この計算の方法は、通常のPERTの計算方法とほぼ同様であるが、通常の計算方法そのままでは転線時間が守られない場合があるため、入換アーク(例えば、図4中のノード(13)〜(14)間や、ノード(42)〜(43)間等)に対してはバックトラックを行って転線時間を守るようにする。これにより、物理的な条件に起因する緩和不可能な制約(上記設備に関する制約と時間に関する制約の転線時間以外の制約)をすべて守った実行可能時刻が計算結果として得られるようにする。また、上述した時刻計算手段2では、在線の終了時刻を遅くするために(特定の番線/引込線U/留置線Kでの在線時間を長くするために)、開始ダミーノードと、入換作業に係わるノードとの間の計画時刻アーク(図4に符号Mで示す)の重みを、算出した最遅実行可能時刻に相当する重みで置き換えるとともに、最遅実行可能時刻で作業計画の条件を満たさない場合には、例えば1分単位で最遅実行可能時刻を早めることで、入換作業に係わるノードに対するワークMへの重み付けを変更する。
【0048】
続いて、解候補の評価、すなわち、各ノードの実行可能時刻が計算された入換計画ネットワークの評価を行う(図3のステップS4)。これは、上述した制約条件により、計画実行時刻が定められたノードの最早実行可能時刻と最遅実行可能時刻の間に当該計画実行時刻があるかどうかや、入換アーク前後のノード間遷移時間がその転線時間よりも短いかどうか等を評価手段3が判断することによって行う。
【0049】
そして、評価手段3は、すべてのノードが計画実行時刻と転線時間を守っているかどうかにより、条件を満たす解候補が得られたかどうか判断し(ステップS5)、YESの場合にステップS8に進み、NOの場合にステップS6に進む。
【0050】
次のステップS6では1つの解候補を選択する。今、解候補は初期段階の解候補だけであるのでこれを選択してステップS7へと進み、ステップS7にて、ネットワーク変形手段5が入換計画ネットワークを変形して複数の解候補を生成した後、ステップS3に戻る。すなわち、この駅構内入換計画作成装置では、初期入換計画から作成した入換計画ネットワークについて各ノードの実行可能時刻を計算し(ステップS1〜S3)、それらを評価して複数の解候補を生成した(ステップS4〜S7)後は、それら複数解候補を評価し(ステップS3〜S5)、1つの解候補を選択し(ステップS6)、再び複数解候補を生成する(ステップS7)、という処理を繰り返す。そして、すべてのノードが計画実行時刻と転線時間を守っている入換計画ネットワークが得られたとき、ステップS5における判断結果が“YES”となってステップS8へ進み、ステップS8にて、最終的な駅構内入換計画を決定する。最終的な駅構内入換計画は、すべてのノードが計画実行時刻等を守っている入換計画ネットワークによって表現された入換計画(図5参照)とし、これを評価手段3が出力する。そして、図5の入換計画では、上述した入換計画ネットワークに基づき、操車A(作業員A)/操車B(作業員B)の勤務時間・休憩、及び列車ダイヤに応じた駅構内の入換作業計画が作成される。具体的には、図5に示されるような、番線L1に到着した列車101の引上線Uへの入換作業/その後、番線L1に到着した列車103の引上線Uへの入換作業/引上線Uから留置線Kへの列車101及び103それぞれの入換作業/留置線Kにおける列車101及び103の連結作業/連結後の列車101・103が引上線U、番線L2へと送られて、列車122となって出発する入換作業計画、及びこのような入換作業を実施する作業員A・Bの入換作業計画を、同時にかつ1つのタイムテーブル上に作成することができる。
【0051】
なお、ステップS5にておいて、列車ダイヤや転線時間等の条件を満たすとき、すなわち、クリティカルパスが存在しないときは、ステップS5の「YES」からステップ8に進み、そのときの入換計画ネットワークに対応する作業計画を可能解として出力する。一方、クリティカルパスは存在するが、その中に、前述したような、ダイヤ改正前の入換作業に従った作業開始時刻(連結作業を含む入換作業開始時刻)に相当する重みを持った作業開始時刻制約アークが含まれていないときは、従来手法と同様に、ステップS5の「NO」からステップS6・S7に進み、新たな候補解を生成するようにする。また、クリティカルパスは存在し、かつそのパスの中に、「作業開始時刻制約アーク」が含まれているときには、その作業開始時刻制約アークに係わるノードの時刻を早めなければ、実行可能な作業計画を得られないことを意味するので、先と同様に、ステップS5の「NO」からステップS6・S7に進み、その作業開始時刻制約アークの重みを、事前に定めたステップ幅(例えば、1分毎)だけ減少させ、新たな候補解とする。
【0052】
また、図3のフローチャートに示されるステップS1及びステップS2の処理は「ネットワーク作成手段1」にて行われ、ステップS3の処理は「時刻計算手段2」にて行われ、ステップS4・S5・S8の処理は「評価手段3」にて行われ、ステップS6の処理は「選択手段4」にて行われ、ステップS7の処理は「ネットワーク変形手段5」によって行われる。
【0053】
以上詳細に説明したように本実施形態に示される駅構内入換計画作成装置10では、上記のようなステップS1〜S8を経ることによって最終的に評価手段3から、図5で示される駅構内入換計画が出力される。また、ネットワーク作成手段1において、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車、作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データが、運用情報として入力され、これら初期解及び列車変更データからなる運用情報に基づき初期段階の入換計画ネットワーク(図4)を作成するようにしたので、ここで作成された入換計画ネットワークを基にして、ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ内容の入換作業計画を立案することができ、不慣れにより生じる入換作業のトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0054】
また、上記のように構成された駅及び車両基地構内入換計画作成装置10では、ダイヤ改正前の入換作業に従った作業開始時刻(連結作業を含む入換作業開始時刻)に相当する重みを持った「作業開始時刻制約アーク」が新たに設定されたことで、ダイヤ改正前の入換作業計画に近似した入換計画ネットワーク(図4)を作成し、この入換計画ネットワークから、ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ内容の入換作業計画(図5)を立案することができ、不慣れにより生じる入換作業のトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0055】
また、従来の入換計画ネットワークでは、列車の動きを示すノードとアークを用いていたが、本実施形態に示される駅構内入換計画作成装置10では、作業員の挙動を示す作業員挙動ノード及びアークを用いることで、作業員のスケジュール(作業開始/終了時間、休憩時間)を含めた構内作業計画を、一つのモデルの中で表現することができ、列車及び該列車を入換作業する作業員の計画を総合的に作成することが可能となる。
【0056】
また、上記の時刻計算手段2では、在線の終了時刻を遅くするために(特定の番線/引込線U/留置線Kでの在線時間を長くするために)、開始ダミーノードと、入換作業に係わるノードとの間のアーク(符号Mで示す)の重みを、算出した最遅実行可能時刻に相当する重みで置き換えるとともに、最遅実行可能時刻で入換作業計画の条件を満たさない場合には、例えば1分単位で最遅実行可能時刻を早めることで、入換作業に係わるノードに対するワーク(符号Mで示す)への重み付けを変更するようにしたので、作業員のスケジュールを考慮せずに、不必要に作業が前倒して行われることが防止され、適正な入換作業計画を作成することが可能となる。
【0057】
また、上記の時刻計算手段2では、在線の終了時刻を遅くするために(すなわち、特定の番線/引込線U/留置線Kでの在線時間を長くするために、開始ダミーノードと、入換作業に係わるノードとの間のアーク(符号Mで示す)の重みを、算出した最遅実行可能時刻に相当する重みで置き換えるとともに、最遅実行可能時刻で入換作業計画の条件を満たさない場合には、例えば1分単位で最遅実行可能時刻を早めることで、入換作業に係わるノードに対するワークMへの重み付けを変更するようにしたので、従来のような、全体的に早くなる「前倒し」の入換作業計画(可能な限り早く作業に着手し、早く完了する計画)となる入換作業計画ではなく、余裕を持たせた計画を作成することができ、特定の時間帯に入換作業が集中することを防止することが可能となる。
【0058】
また、列車ダイヤや転線時間等の条件を満足しない下で、クリティカルパスが存在し、かつそのパスの中に、「作業開始時刻制約アーク」が含まれている場合に、上記ネットワーク変形手段5では、当該作業開始時刻制約アークの重みを、事前に定めたステップ幅(例えば、1分毎)だけ減少させ、新たな候補解としたので、在線時間を極力長くとる計画を立案して、入換作業等の時間に余裕を持たせることが可能となる。
【0059】
上記実施形態では、駅構内の入換計画について説明しているが、車両基地の入換計画についても同様の構成、処理内容である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】駅構内入換計画の作成対象とする駅の構成の一具体例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による駅構内入換計画作成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】駅構内入換計画作成装置による駅構内入換計画作成の具体的な手順を示すフローチャートである。
【図4】車両入換計画を表現した入換計画ネットワークを示す図である。
【図5】図4の入換計画ネットワークから作成された駅構内入換計画の最終解の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ネットワーク作成手段
2 時刻計算手段
3 評価手段
4 選択手段
5 ネットワーク変形手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた各車両の着発すべき駅構内又は車両基地構内の運用情報に基づき、各車両毎に各番線への発着を表すノードを、各ノード間遷移の所要時間で重み付けしたアークにより遷移順序に従って結んだ入換計画ネットワークを作成するネットワーク作成手段と、
それぞれの前記ノードにおける着発の実行可能な時刻範囲を前記アークの重み付に基づいて計算する時刻計算手段と、
前記時刻計算手段により計算された時刻範囲が列車ダイヤを満たすかどうか評価する評価手段と、
前記評価手段による評価に基づき、入換計画ネットワークが列車ダイヤを満たすか否かを検討する選択手段と、
前記選択手段により選択された入換計画ネットワークについて、ネットワーク経路を変更して当該入換計画ネットワークを変形するネットワーク変形手段と、を有し、
前記評価手段にてネットワーク作成手段により作成された入換計画ネットワークが列車ダイヤを満たしていないと評価されたときに、前記ネットワーク変形手段により変形ネットワーク複数作成した後、前記時刻計算手段、評価手段及び選択手段による処理を行うことを繰り返し、すべてのノードにおける前記時刻範囲が列車ダイヤを満たす入換計画ネットワークが得られたとき、当該入換計画ネットワークで表現された車両の着発を前記駅構内における車両の入換計画とする駅及び車両基地構内入換計画作成装置において、
前記ネットワーク作成手段では、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車、作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データが、運用情報として入力され、これら初期解及び列車変更データからなる運用情報に基づき初期段階の入換計画ネットワークを作成することを特徴とする駅及び車両基地構内入換計画作成装置。
【請求項2】
前記ネットワーク作成手段には、ダイヤ改正前の車両入換作業に従った作業開始時刻に相当する重みを持った作業開始時刻制約アークが設定されることを特徴とする請求項1記載の駅及び車両基地構内入換計画作成装置。
【請求項3】
前記ネットワーク作成手段には、作業員の挙動を示す作業員挙動ノード及びアークが新たに設定されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の駅及び車両基地構内入換計画作成装置。
【請求項4】
前記時刻計算手段は、車両入換作業の開始時間を遅くするために、前記ネットワーク作成手段で作成された入換計画ネットワーク上の最遅作業開始時刻に基づき、作業開始時刻制約アークの重みを変更することを特徴とする請求項2に記載の駅及び車両基地構内入換計画作成装置。
【請求項5】
前記ネットワーク変形手段では、列車ダイヤや転線時間等の条件を満足しない下で、クリティカルパスが存在し、かつそのパスの中に、前記作業開始時刻制約アークが含まれている場合に、当該作業開始時刻制約アークの重みを、事前に定めたステップ幅だけ減少させることを特徴とする請求項2に記載の駅及び車両基地構内入換計画作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−78714(P2009−78714A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249821(P2007−249821)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(500519987)株式会社ジェイアール総研情報システム (14)
【Fターム(参考)】