説明

駆動ユニットおよびそれを含む車両

【課題】チェーンテンショナおよび本体部の破損が防止された駆動ユニットおよびそれを含む車両を提供する。
【解決手段】自転車10は、後輪40、駆動ユニット48およびチェーン50を含む。駆動ユニット48は、本体部68、クランク軸70、駆動スプロケット72、駆動力発生部74、補助スプロケット76およびチェーンテンショナ78を含む。チェーンテンショナ78は、張力付与部T、アーム部A、支持ボルト122、支持ボルト128および引張ばね130を含む。アーム部Aは、支持ボルト122を介して張力付与部Tを回転可能に支持し、かつ支持ボルト128を介して本体部68に回動可能に支持される。駆動スプロケット72と従動スプロケット44とを連結するチェーン50は、駆動スプロケット72の下端部から支持ボルト128の下方を通って後輪40へと延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動ユニットおよび車両に関し、より特定的には、チェーンの張力を自動的に調整するチェーンテンショナを備えた駆動ユニットおよびそれを含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搭乗者のペダル踏力によって走行する自転車において、駆動ユニットによって発生される補助駆動力をペダル踏力に加えることによって自転車の走行を補助する技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ペダル踏力(人力駆動力)によって回転されるチェーンスプロケット、チェーンスプロケットの回転力を後輪に伝達するチェーン、および補助駆動力を発生するモータ駆動ユニットを備えた自転車が開示されている。この自転車では、モータ駆動ユニットにおいて発生される補助駆動力が人力駆動力とともにチェーンを介して後輪に伝達される。これにより、搭乗者は、坂道等においても自転車を楽に走行させることができる。
【0004】
上述のようなチェーンを備えた自転車においては、一般に、チェーンの緩みを吸収するためのチェーンテンショナ(テンショナ装置)が設けられる。特許文献1に開示されている自転車では、モータ駆動ユニットのユニットケースの後端部にテンショナ装置が設けられている。このテンショナ装置は、支持軸を介してモータ駆動ユニットのユニットケースに揺動可能に支持される支持アームと、支持アームの先端部に回転自在に取り付けられるテンションプーリと、チェーンのテンションが増加する方向に支持アームを揺動させる付勢ばねとによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−276603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているモータ駆動ユニットにおいては、テンションプーリによってチェーンを下方に引っ張ることができるように、支持アームはチェーンの下方においてユニットケースに支持されている。この場合、支持アームにおいてユニットケースに揺動可能に支持される部分(以下、ピボット部と称する。)と地面との間に十分な距離を確保することができなくなる。それにより、自転車の走行中に地面上の障害物が支持アームのピボット部に衝突しやすくなり、テンション装置が破損しやすくなる。また、ピボット部に障害物が衝突した場合、衝突による強い衝撃が支持軸を介して直接的にユニットケースに伝達され、ユニットケースが破損するおそれがある。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、チェーンテンショナおよび本体部の破損が防止された駆動ユニットおよびそれを含む車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の駆動ユニットは、搭乗者のペダル踏力を無端状のチェーンを介して後輪に伝達する車両において当該車両の走行を補助するために設けられる駆動ユニットであって、本体部と、本体部に回転可能に設けられ、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に搭乗者のペダル踏力によって回転されるべきクランク軸と、クランク軸と同軸状に設けられかつクランク軸から伝達される回転力に基づいて回転し、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合にチェーンが巻き掛けられるべき駆動スプロケットと、本体部に設けられ、出力軸を有しかつ車両の走行を補助するための補助駆動力を発生する駆動力発生部と、出力軸と同軸状に設けられかつ出力軸から伝達される補助駆動力に基づいて回転し、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合にチェーンが巻き掛けられるべき補助スプロケットと、本体部に設けられ、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合にチェーンの張力を調整するべきチェーンテンショナとを備え、チェーンテンショナは、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合にチェーンが巻き掛けられかつチェーンに張力を与えるべき張力付与部と、張力付与部を支持する第1支持部と、張力付与部が第1支持部を中心として回転できるように第1支持部を介して張力付与部を回転可能に支持するアーム部と、本体部とアーム部とを連結しかつアーム部を揺動可能に支持する第2支持部と、張力付与部からチェーンに張力が与えられる方向にアーム部を付勢する付勢部材とを含み、出力軸は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合にクランク軸よりも後方に位置するように配置され、第1支持部は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に出力軸よりも後方に位置するように配置され、駆動スプロケット、補助スプロケットおよび張力付与部は、車両においてチェーンが巻き掛けられた場合にチェーンが駆動スプロケットの下端部、補助スプロケットの上端部、および張力付与部の下端部を順に通るように配置され、チェーンテンショナの第2支持部は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に駆動スプロケットの下端部から後輪に向かって延びるチェーンが第2支持部の下方を通るように配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の駆動ユニットは、請求項1に記載の駆動ユニットにおいて、第2支持部は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合にチェーンの回転軌道の内側に位置するように設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の駆動ユニットは、請求項1または2に記載の駆動ユニットにおいて、付勢部材は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に張力付与部からチェーンに前方向の力が与えられるようにアーム部を付勢することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の駆動ユニットは、請求項1から3のいずれかに記載の駆動ユニットにおいて、付勢部材は引張ばねを含み、引張ばねの一端はアーム部に連結され、引張ばねの他端は本体部に連結されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の駆動ユニットは、請求項4に記載の駆動ユニットにおいて、引張ばねは、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に引張ばねの他端が張力付与部よりも前方において本体部に連結されるように配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の駆動ユニットは、請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニットにおいて、第1支持部は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に出力軸よりも下方に位置するように配置され、第2支持部は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に出力軸よりも上方に位置するように配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の駆動ユニットは、請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニットにおいて、第1支持部および第2支持部を通る直線をアーム部の基準線とした場合に、チェーンテンショナは、当該駆動ユニットが車両に取り付けられた状態において張力付与部の下端部から後輪に向かって延びるチェーンに対する基準線の傾斜角度が90度を超える角度から90度未満の角度に変化できるように設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の車両は、請求項1から7のいずれかに記載の駆動ユニットを含む。
【0016】
請求項1に記載の駆動ユニットでは、チェーンテンショナのアーム部を揺動可能に支持する第2支持部は、当該駆動ユニットを車両に設けた場合に駆動スプロケットの下端部から後輪に向かって延びるチェーンが第2支持部の下方を通るように配置される。言い換えると、この駆動ユニットを車両に設けた場合には、第2支持部は、駆動スプロケットの下端部から後輪に向かって延びるチェーンの上方に配置される。この場合、地面と第2支持部との間に十分な距離を確保することができるので、車両の走行中に地面上の障害物が第2支持部に衝突することおよびアーム部のうち第2支持部の近傍の部分(以下、ピボット部と称する。)に衝突することを防止できる。これにより、チェーンテンショナの第2支持部およびピボット部が破損することを防止できる。また、第2支持部およびピボット部に障害物が衝突することを防止できるので、第2支持部から本体部に強い衝撃が伝達されることを防止できる。それにより、本体部の破損を防止できる。さらに、地面上の障害物が張力付与部またはアーム部の下端部に衝突した場合には、アーム部が第2支持部を中心として揺動することによって衝突による衝撃を緩和できる。それにより、チェーンテンショナの張力付与部およびアーム部が破損することを防止できる。また、衝突による強い衝撃が本体部に直接的に伝達されることを防止できるので、本体部の破損を防止できる。
【0017】
請求項2に記載の駆動ユニットでは、第2支持部がチェーンの回転軌道の内側に位置するので、駆動ユニットを小型に構成できる。
【0018】
請求項3に記載の駆動ユニットでは、付勢部材は、当該駆動ユニットが車両に設けられた場合に張力付与部からチェーンに前方向の力が与えられるようにアーム部を付勢する。言い換えると、付勢部材は、アーム部が第2支持部を中心として前方に回動するようにアーム部を付勢する。このような構成において、車両の走行中に前方からアーム部または張力付与部に障害物が衝突した場合には、アーム部を第2支持部を中心として後方に回動させようとする力が障害物からアーム部に与えられる。ここで、付勢部材はアーム部を前方に付勢しているので、アーム部を後方に回動させようとする力は付勢部材によって吸収される。それにより、衝突によってアーム部に発生した衝撃を緩和できる。その結果、張力付与部およびアーム部が破損することを確実に防止できる。
【0019】
請求項4に記載の駆動ユニットでは、付勢部材が引張ばねを含むので、付勢部材としてねじりばねを用いる場合よりも、大きな張力をチェーンに与えることができる。
【0020】
請求項5に記載の駆動ユニットでは、引張ばねが張力付与部よりも前方において本体部に連結される。この場合、引張ばねは、アーム部を介して十分な力で張力付与部を前方に引っ張ることができる。それにより、十分な張力をチェーンに与えることができる。
【0021】
請求項6に記載の駆動ユニットでは、第1支持部が出力軸よりも下方に位置し、第2支持部が出力軸よりも上方に位置するので、第1支持部と第2支持部とが十分に離間して設けられる。言い換えると、第1支持部と第2支持部とを連結するアーム部の長さが十分に長くなる。この場合、障害物が張力付与部またはアーム部の下端部に衝突したとしても、アーム部が変形する(折れ曲がる)ことによって衝撃を吸収することができる。それにより、アーム部から第2支持部を介して本体部に強い衝撃が伝達されることを十分に防止できるので、本体部が破損することを確実に防止できる。
【0022】
請求項7に記載の駆動ユニットでは、張力付与部から後輪に向かって延びるチェーンの水平方向に対する傾斜角度が大きくなり過ぎることを防止できる。それにより、たとえば、チェーンを後輪側の従動スプロケットに巻き掛けた場合に、チェーンと従動スプロケットとの接触部の面積が小さくなり過ぎることを防止できる。その結果、後輪側の従動スプロケットの摩耗を防止できる。
【0023】
駆動ユニットによって搭乗者のペダル踏力を補助することができる車両においては、車両の走行中に、地面上の障害物がチェーンテンショナに接触し、チェーンテンショナおよび駆動ユニットの本体部自体が破損する場合がある。したがって、チェーンテンショナおよび本体部の破損を防止できる請求項1から7に記載の駆動ユニットは、請求項8に記載するように、車両に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、チェーンテンショナおよび本体部の破損が防止された駆動ユニットおよびそれを含む車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる駆動ユニットを備えた車両を示す右側面図である。
【図2】フレーム、駆動ユニットおよび従動スプロケットの関係を示す左側面図である。
【図3】駆動ユニットを示す断面図である。
【図4】チェーンテンショナを示す図である。(a)はチェーンテンショナを示す右側面図、(b)は(a)のチェーンテンショナを矢印B方向に見た図、(c)は(a)のチェーンテンショナを矢印C方向に見た図である。
【図5】従動スプロケット、チェーンおよびチェーンテンショナの関係を示す図である。(a)はチェーンに対するアーム部の基準線の傾斜角度が90度よりも大きい状態を示す図であり、(b)はチェーンに対する基準線の傾斜角度が90度よりも小さい状態を示す図である。
【図6】従動スプロケットとチェーンとの関係を示す図である。(a)は水平方向に対するチェーンの傾斜角度が大きい状態を示す図であり、(b)は水平方向に対するチェーンの傾斜角度が小さい状態を示す図である。
【図7】サブカバーとチェーンテンショナとの関係を示す図である。(a)はチェーンの伸びが小さいときの状態を示す図であり、(b)はチェーンの伸びが大きいときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、以下においては、この発明に係る駆動ユニットを車両の一例である自転車に搭載した実施形態について説明する。この発明の実施形態の左右、前後、上下とは、自転車10のシート38に搭乗者がそのハンドル28に向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
【0027】
図1を参照して、自転車10は、前後方向に延びる車体フレーム12を有する。図1および図2を参照して、車体フレーム12は、ヘッドパイプ14(図1参照)、ダウンチューブ16、シートチューブ18、ブラケット20(図2参照)、一対のチェーンステイ22(図1および図2においては右側のチェーンステイ22のみ図示)および一対のシートステイ24(図1および図2においては右側のシートステイ24のみ図示)を含む。
【0028】
図1を参照して、ヘッドパイプ14は、車体フレーム12の前端部に設けられる。ダウンチューブ16は、ヘッドパイプ14から後方斜め下方に向かって延びるように設けられる。図1および図2を参照して、シートチューブ18は、ダウンチューブ16の後端部から上方斜め後方に向かって延びるように設けられる。
【0029】
図2を参照して、ブラケット20は、ダウンチューブ16の後端部から後方に向かって延びるように設けられる。一対のチェーンステイ22は、ブラケット20の後端部から後方に向かって延びるように設けられる。
【0030】
図1を参照して、一対のシートステイ24は、シートチューブ18の上端部から後方斜め下方に向かって延びるように設けられる。一対のシートステイ24の下端部は、一対のチェーンステイ22の後端部にそれぞれ接続される。
【0031】
ヘッドパイプ14には、ハンドルステム26が回転自在に挿通される。ハンドルステム26の上端部には、ハンドル28が固定される。ハンドルステム26の下端部には、フロントフォーク30が固定される。フロントフォーク30の下端部には、前輪32が車軸34を介して回転可能に支持される。シートチューブ18には、シートパイプ36が挿入される。シートパイプ36の上端部には、シート38が設けられる。一対のチェーンステイ22の後端部には、後輪40が車軸42を介して回転可能に支持される。後輪40の右側において車軸42と同軸状に従動スプロケット44が設けられる。従動スプロケット44は、一方向クラッチ(図示せず)を介して後輪40に連結される。後輪40、車軸42、従動スプロケット44および一方向クラッチの関係については、一般に広く普及している自転車と同様であるので説明は省略する。
【0032】
図2を参照して、複数(この実施形態では3つ)の締結具46(たとえば、ボルトおよびナット等)によってブラケット20に駆動ユニット48が固定される。駆動ユニット48の詳細は後述する。図1および図2を参照して、駆動ユニット48の後述する駆動スプロケット72と従動スプロケット44とを連結するように、駆動スプロケット72および従動スプロケット44に無端状のチェーン50が巻き掛けられる。なお、図1および図2においては、図面が煩雑になることを避けるためにチェーン50を簡略化して示している。
【0033】
図1を参照して、シートチューブ18の後方には、駆動ユニット48に供給される電力を蓄えるためのバッテリ52が設けられる。駆動ユニット48およびチェーン50を覆うように、車体フレーム12にチェーンカバー54が取り付けられる。チェーンカバー54は、駆動スプロケット72の右方を覆いかつ前後方向に延びるメインカバー56および駆動ユニット48の後部の右方を覆うサブカバー58を含む。駆動ユニット48の後述するクランク軸70の両端部にクランクアーム60,62が設けられる。クランクアーム60,62の先端部にペダル64、66がそれぞれ設けられる。
【0034】
図3は、駆動ユニット48を示す断面図である。なお、図3においては、図2のX−X線における駆動ユニット48の断面を示している。
【0035】
図2および図3を参照して、駆動ユニット48は、本体部68、クランク軸70、駆動スプロケット72、駆動力発生部74(図3参照)、補助スプロケット76およびチェーンテンショナ78を含む。なお、図3においては、図面が煩雑になることを避けるために、チェーンテンショナ78を簡略化して示している。
【0036】
本体部68は、左右から互いに組み合わされる第1ケース部80および第2ケース部82を含む。第1ケース部80と第2ケース部82とは、複数の締結具84(たとえば、ボルトおよびナット等:図3においては1本のボルトのみ図示)によって互いに固定される。本体部68は、上述の複数の締結具46によってブラケット20に取り付けられる。図2を参照して、第1ケース部80の右側面において後端部には、右方向に突出する円柱状の係止部80aが設けられる。係止部80aは、チェーンテンショナ78の後述するアーム部Aの回転を規制するストッパーとして機能する。
【0037】
図3を参照して、クランク軸70は、本体部68の前端部に回転可能に支持されかつ本体部68を左右方向に貫通する。具体的には、クランク軸70の一方側(この実施形態では右側)は、円筒形状の複数(この実施形態では2つ)の滑り軸受86、一方向クラッチ88の略円筒形状のインナー部材88aおよび転がり軸受90を介して第1ケース部80に回転可能に支持され、クランク軸70の他方側(この実施形態では左側)は、転がり軸受92を介して第2ケース部82に回転可能に支持される。上述のように、クランク軸70の両端部には、クランクアーム60,62(図1参照)が接続される。したがって、搭乗者がペダル64、66(図1参照)を踏み込むことによってクランク軸70が回転する。
【0038】
駆動スプロケット72は、インナー部材88aの外周面の右端部に取り付けられる。クランク軸70、インナー部材88aおよび駆動スプロケット72は、同軸状に設けられる。駆動スプロケット72とインナー部材88aとは、たとえばスプライン構造によって互いに接続される。これにより、駆動スプロケット72はインナー部材88aと一体的に回転する。なお、インナー部材88aとクランク軸70との間には滑り軸受86が設けられているので、クランク軸70の回転は直接的にはインナー部材88aおよび駆動スプロケット72に伝達されない。クランク軸70からインナー部材88aへの回転の伝達経路については後述する。
【0039】
インナー部材88aと転がり軸受92との間において、クランク軸70と同軸状に略円筒形状の回転部材94が設けられる。回転部材94の右端部は、円筒形状の滑り軸受96を介してクランク軸70に支持され、回転部材94の左端部は、たとえばスプライン構造によってクランク軸70に接続される。これにより、回転部材94はクランク軸70と一体的に回転する。
【0040】
回転部材94と同軸状にトルク検出部98が設けられる。トルク検出部98は、たとえば、磁歪式のトルクセンサを含む。トルク検出部98は、クランク軸70(回転部材94)のトルクを検出し、検出したトルクに応じた信号を自転車10の図示しない制御装置に与える。制御装置は、トルク検出部98から与えられる信号に基づいて後述の電動モータ100を制御する。これにより、搭乗者のペダル踏力に応じた補助駆動力が電動モータ100において発生される。
【0041】
回転部材94とインナー部材88aとを連結するように、一方向クラッチ88の略円筒形状のアウター部88bがクランク軸70と同軸状に設けられる。アウター部88bの左端部と回転部材94の右端部とは、たとえばスプライン構造によって接続される。これにより、アウター部88bは回転部材94と一体的に回転する。アウター部88bの右端部とインナー部材88aの左端部とは、アウター部88bからインナー部材88aに前転方向(右側から見て時計回りの方向)の回転力が伝達されるが後転方向(右側から見て反時計回りの方向)の回転力が伝達されないように、たとえばラチェット構造によって接続される。したがって、搭乗者が自転車10を前進させるためにペダル64、66を踏み込んでクランク軸70を前転させた場合には、搭乗者のペダル踏力がクランク軸70から回転部材94およびアウター部88bを介してインナー部材88aに伝達される。それにより、インナー部材88aおよび駆動スプロケット72が前転する。一方、搭乗者がクランク軸70を後転させても、その回転はインナー部材88aに伝達されない。したがって、インナー部材88aおよびクランク軸70は後転しない。
【0042】
駆動力発生部74は、クランク軸70よりも後方において第1ケース部80と第2ケース部82とによって収容される。駆動力発生部74は、電動モータ100、出力軸102およびギア104を含む。
【0043】
電動モータ100は、ステータ100a、ロータ100bおよび回転軸100cを含み、自転車10の走行を補助するための補助駆動力を発生する。電動モータ100の左側を覆うように、第2ケース部82にモータカバー106が取り付けられる。ステータ100aは、第2ケース部82に固定される。回転軸100cは、ロータ100bを左右方向に貫通しかつロータ100bに固定される。回転軸100cは、転がり軸受108を介して第2ケース部82に回転可能に支持されるとともに転がり軸受110を介してモータカバー106に回転可能に支持される。回転軸100cの右端部には、ギア溝100dが形成される。
【0044】
出力軸102は、クランク軸70よりも後方において本体部68に回転可能に支持される。具体的には、出力軸102は、転がり軸受112を介して第1ケース部80に回転可能に支持されるとともに転がり軸受114を介して第2ケース部82に回転可能に支持される。出力軸102の右端部は、第1ケース部80から右方向に突出している。
【0045】
ギア104は、転がり軸受112と転がり軸受114との間において出力軸102と同軸状に設けられる。ギア104は、回転軸100cのギア溝100dと噛み合っている。これにより、電動モータ100において発生された補助駆動力が回転軸100cからギア104に伝達され、ギア104が回転する。この実施形態では、回転軸100cが前転(右側から見て時計回りの方向の回転)するように電動モータ100が設けられる。したがって、ギア104は回転軸100cから伝達される補助駆動力によって後転(右側から見て反時計回りの方向の回転)する。
【0046】
ギア104と出力軸102との間には、一方向クラッチ116が設けられる。一方向クラッチ116は、ギア104から出力軸102に後転方向の回転力を伝達するが前転方向の回転力を伝達しないように構成される。
【0047】
補助スプロケット76は、出力軸102の右端部において出力軸102と同軸状に設けられる。補助スプロケット76と出力軸102とは、たとえばスプライン構造によって互いに接続される。これにより、駆動力発生部74(電動モータ100)において発生された補助駆動力が出力軸102から補助スプロケット76に伝達され、補助スプロケット76が回転(後転)する。
【0048】
図2および図3を参照して、チェーンテンショナ78は、第1ケース部80の右側面の後端部に設けられる。図4は、チェーンテンショナ78を示す図であり、(a)はチェーンテンショナ78を示す右側面図であり、(b)は(a)のチェーンテンショナ78を矢印B方向に見た図であり、(c)は(a)のチェーンテンショナ78を矢印C方向に見た図である。なお、図4(b)においては、チェーンテンショナ78の構造を理解し易くするために、チェーンテンショナ78の一部を断面で示している。
【0049】
図4を参照して、チェーンテンショナ78は、テンションスプロケット118、転がり軸受120、支持ボルト122、第1アーム124、第2アーム126、支持ボルト128および引張ばね130を含む。この実施形態では、テンションスプロケット118および転がり軸受120が張力付与部Tとして機能し、支持ボルト122が第1支持部として機能し、第1アーム124および第2アーム126がアーム部Aとして機能し、支持ボルト128が第2支持部として機能し、引張ばね130が付勢部材として機能する。
【0050】
第1アーム124および第2アーム126は、左右方向において互いに対向するように設けられる。図4(a)を参照して、第1アーム124は側面視略L字形状を有し、上下方向に延びる長手部124aおよび長手部124aの下端部から長手部124aの幅方向に突出する突出部124bを含む。同様に、第2アーム126は側面視略L字形状を有し、上下方向に延びる長手部126aおよび長手部126aの下端部から長手部126aの幅方向に延びる突出部126b(図4(c)参照)を含む。長手部126aは長手部124aよりもやや長く形成される。突出部124bと突出部126bとは、略同一の形状を有する。
【0051】
テンションスプロケット118は略円環形状を有する。図4(b)を参照して、テンションスプロケット118の内周面に転がり軸受120が設けられる。テンションスプロケット118および転がり軸受120は、第1アーム124の長手部124aの下端部と第2アーム126の長手部126aの下端部との間に設けられる。転がり軸受120と長手部124aとの間に円筒形状のカラー132が設けられ、転がり軸受120と長手部126aとの間に円筒形状のカラー134が設けられる。長手部124aの下端部、カラー132、転がり軸受120、カラー134および長手部126aの下端部を貫通するように支持ボルト122が設けられる。支持ボルト122の先端部には、ナット136が取り付けられる。これにより、支持ボルト122がアーム部A(第1アーム124および第2アーム126)の下端部に支持されるとともに、張力付与部T(テンションスプロケット118および転がり軸受120)が支持ボルト122に回転可能に支持される。すなわち、張力付与部Tが支持ボルト122を介してアーム部Aに回転可能に支持される。図2を参照して、この実施形態では、支持ボルト122は、出力軸102よりも後方かつ下方に位置する。
【0052】
図4(b)を参照して、長手部124aの上端部と長手部126aの上端部とによって支持されるように、円筒形状のカラー138が設けられる。長手部124aの上端部、カラー138および長手部126aの上端部を貫通するように円筒形状のカラー140が設けられる。カラー140は、長手部124a、カラー138および長手部126aに対して回転可能である。カラー140を貫通するように、支持ボルト128が設けられる。支持ボルト128は、カラー140に対して回転可能である。図2および図3を参照して、支持ボルト128の先端部は、出力軸102よりも後方において第1ケース部80の上端部に固定される。これにより、支持ボルト128によってアーム部Aの上端部と第1ケース部80(本体部68)とが連結されかつアーム部Aが支持ボルト128によって揺動可能に支持される。図2を参照して、この実施形態では、支持ボルト128は、自転車10を右側から見た場合に、チェーン50の回転軌道の内側に位置する。また、駆動スプロケット72の下端部から後輪40(図1参照)に向かって延びるチェーン50は、支持ボルト128の下方を通る。さらに、支持ボルト128は、出力軸102よりも上方に位置する。
【0053】
図4(c)を参照して、第1アーム124の突出部124bと第2アーム126の突出部126bとによって支持されるように、円筒形状のカラー142が設けられる。突出部124b、カラー142および突出部126bを貫通するように支持ボルト144が設けられる。支持ボルト144の先端部には、ナット146が取り付けられる。これにより、カラー142が第1アーム124の突出部124bおよび第2アーム126の突出部126bに支持される。引張ばね130の一端は、カラー142に引っ掛けられる。これにより、引張ばね130の一端がカラー142および支持ボルト144を介してアーム部Aに連結される。図2を参照して、引張ばね130の他端は、第1ケース部80の右側面に固定されたボルト148に引っ掛けられる。これにより、引張ばね130の他端がボルト148を介して第1ケース部80(本体部68)に連結される。ボルト148は、張力付与部Tおよびアーム部Aよりも前方において第1ケース部80に固定される。これにより、張力付与部Tおよびアーム部Aが引張ばね130によって前方に引っ張られる。
【0054】
図2を参照して、駆動スプロケット72と従動スプロケット44とを連結する無端状のチェーン50は、駆動スプロケット72の下端部から補助スプロケット76の上端部を通った後、張力付与部Tのテンションスプロケット118の下端部を通って従動スプロケット44へ向かうように巻き掛けられる。上述のように、張力付与部Tは、引張ばね130によって前方に引っ張られているので、張力付与部Tからチェーン50に前方向の力が与えられる。すなわち、張力付与部Tからチェーン50に張力が与えられる。これにより、チェーン50自体が伸びてしまった場合でも、チェーン50の張力を一定に保つことができる。
【0055】
なお、図5(a)を参照して、この実施形態では、支持ボルト122の中心軸および支持ボルト128の中心軸を通る直線をアーム部Aの基準線L1とした場合、張力付与部Tの下端部から従動スプロケット44(後輪40:図1参照)に向かって延びるチェーン50に対する基準線L1の傾斜角度D1は、自転車10の組み立て時(チェーン50に伸びが生じていないとき)には、90度よりも大きく設定される。この状態からチェーン50に伸びが生じることによって、アーム部Aおよび張力付与部Tは支持ボルト128を中心として前方に向かって回動する。この実施形態では、図5(b)に示すように、アーム部Aおよび張力付与部Tは、傾斜角度D1が90度よりも小さくなる位置まで回動することができる。
【0056】
ここで、図6を参照して、張力付与部T(図5参照)から従動スプロケット44に向かって延びるチェーン50の水平方向に対する傾斜角度D2が大きい場合(図6(a)参照)には、傾斜角度D2が小さい場合(図6(b)参照)に比べて、チェーン50と従動スプロケット44との接触部の面積が小さくなる。この場合、チェーン50と従動スプロケット44との接触部における単位面積当たりの負荷が大きくなり、従動スプロケット44が摩耗し易くなる。従来の自転車では、チェーン50に伸びが生じた場合には、チェーンテンショナの張力付与部が下方に移動することによってチェーン50に張力を与えていた。そのため、従来の自転車では、チェーン50の伸びとともに張力付与部が下方に移動し、傾斜角度D2が大きくなってしまう。これにより、従来の自転車では、従動スプロケット44が摩耗し易かった。
【0057】
ここで、図5を参照して、自転車10においては、チェーンテンショナ78の張力付与部Tは、支持ボルト128を中心とする円軌道上を通るように移動する。したがって、傾斜角度D2(図6参照)は、傾斜角度D1が90度のときに最大になる。また、上述のように、自転車10では、傾斜角度D1が90度を超える角度から90度未満の角度に変化できるようにチェーンテンショナ78が設けられる。これらの構成によって、自転車10では、傾斜角度D1が90度よりも大きい場合には、チェーン50の伸びとともに傾斜角度D2(図6参照)が大きくなるが、傾斜角度D1が90度よりも小さい場合には、チェーン50の伸びとともに傾斜角度D2(図6参照)が小さくなる。これにより、傾斜角度D2が大きくなり過ぎることを防止でき、従動スプロケット44の摩耗を防止できる。
【0058】
図7を参照して、サブカバー58は、その下端部から下方に向かって突起する突起部58aおよび突起部58bを有する。突起部58bは、突起部58aから離間するように突起部58aよりも前方に設けられる。サブカバー58およびチェーンテンショナ78は、自転車10の右側から見た場合にアーム部Aの下端部がサブカバー58の下端から下方に突出するように配置される。より具体的には、自転車10の右側から見た場合にチェーンテンショナ78の支持ボルト144がサブカバー58から露出し、かつ支持ボルト144と突起部58a,58bとが略同一の高さになるようにサブカバー58およびチェーンテンショナ78が配置される。
【0059】
この実施形態では、突起部58aは、アーム部Aの初期位置を示すマークとして用いられ、突起部58bは、利用者またはメンテナンス作業者にチェーン50の張力調整(たとえば、車軸42(図1参照)の後方への移動)を促すためのマークとして用いられる。したがって、たとえば、自転車10の組み立て時には、図7(a)に示すように、自転車10の右側から見た場合に支持ボルト144と突起部58aとが重なるように、チェーン50の張力が調整される。また、たとえば、図7(b)に示すように、アーム部Aが前方に回動し、支持ボルト144が突起部58bよりも後方まで移動した場合には、利用者またはメンテナンス作業者は、チェーン50の伸びが大きくなったことを容易に認識することができる。これにより、利用者またはメンテナンス作業者は、チェーン50の調整の必要性を容易に認識することができる。
【0060】
また、自転車10では、アーム部Aがサブカバー58から露出しているので、メンテナンス作業者は、チェーン50の張力調整時に、サブカバー58を取り外すことなくアーム部Aの移動量(後方への回動量)を確認することができる。さらに、アーム部Aの初期位置を示すマークとして突起部58aが設けられているので、メンテナンス作業者は、チェーン50の張力調整に必要十分な作業量を容易に認識できる。具体的には、メンテナンス作業者は、たとえば、図7(a)に示す状態になるように、車軸42(図1参照)を後方に移動させて、アーム部Aを後方に回動させればよい。このようにして、メンテナンス作業者は、サブカバー58を取り外すことなくチェーン50の張力調整を容易かつ適切に行うことができ、作業効率が向上する。
【0061】
以下、自転車10の作用効果を説明する。
自転車10では、搭乗者のペダル踏力は、クランクアーム60,62、クランク軸70、駆動スプロケット72、チェーン50および従動スプロケット44を介して後輪40に伝達される。それにより、自転車10が走行する。また、駆動ユニット48の駆動力発生部74において発生された補助駆動力が、出力軸102、補助スプロケット76、チェーン50および従動スプロケット44を介して後輪40に伝達される。それにより、自転車10の走行が補助される。
【0062】
駆動ユニット48には、チェーン50の張力を自動的に調整するためのチェーンテンショナ78が設けられる。チェーンテンショナ78のアーム部Aを揺動可能に支持する支持ボルト128は、駆動スプロケット72の下端部から後輪40に向かって延びるチェーン50が支持ボルト128の下方を通るように配置される。言い換えると、支持ボルト128は、駆動スプロケット72の下端部から後輪40に向かって延びるチェーン50の上方に配置される。この場合、地面と支持ボルト128との間に十分な距離を確保することができるので、自転車10の走行中に地面上の障害物が支持ボルト128に衝突することおよびアーム部Aのうち支持ボルト128の近傍の部分P(図4(a)参照:以下、ピボット部Pと称する)に衝突することを防止できる。これにより、支持ボルト128およびピボット部Pが破損することを防止できる。また、支持ボルト128およびピボット部Pに障害物が衝突することを防止できるので、支持ボルト128から本体部68に強い衝撃が伝達されることを防止できる。それにより、本体部68の破損を防止できる。さらに、地面上の障害物が張力付与部Tまたはアーム部Aの下端部に衝突した場合には、アーム部Aが支持ボルト128を中心として揺動することによって衝突による衝撃を緩和できる。それにより、張力付与部Tおよびアーム部Aが破損することを防止できる。また、衝突による強い衝撃が本体部68に直接的に伝達されることを防止できるので、本体部68の破損を防止できる。
【0063】
また、自転車10では、支持ボルト128がチェーンの回転軌道の内側に位置する。それにより、駆動ユニット48を小型に構成できる。
【0064】
また、駆動ユニット48においては、引張ばね130は、張力付与部Tからチェーン50に前方向の力が与えられるようにアーム部Aを付勢する。言い換えると、引張ばね130は、アーム部Aが支持ボルト128を中心として前方に回動するようにアーム部Aを付勢する。このような構成において、自転車10の走行中に前方からアーム部Aまたは張力付与部Tに障害物が衝突した場合には、アーム部Aを支持ボルト128を中心として後方に回動させようとする力が障害物からアーム部Aに与えられる。ここで、引張ばね130はアーム部Aを前方に付勢しているので、アーム部Aを後方に回動させようとする力は引張ばね130によって吸収される。それにより、衝突によってアーム部Aに発生した衝撃を緩和できる。その結果、張力付与部Tおよびアーム部Aが破損することを確実に防止できる。
【0065】
また、駆動ユニット48では、付勢部材として引張ばね130を用いているので、付勢部材としてねじりばねを用いる場合よりも、大きな張力をチェーン50に与えることができる。
【0066】
また、駆動ユニット48では、引張ばね130が張力付与部Tよりも前方において本体部68に連結される。この場合、引張ばね130は、アーム部Aを介して十分な力で張力付与部Tを前方に引っ張ることができる。それにより、十分な張力をチェーン50に与えることができる。
【0067】
また、駆動ユニット48では、支持ボルト122が出力軸102よりも下方に位置し、支持ボルト128が出力軸102よりも上方に位置するので、支持ボルト122と支持ボルト128とが十分に離間して設けられる。言い換えると、支持ボルト122と支持ボルト128とを連結するアーム部Aの長さが十分に長くなる。この場合、障害物が張力付与部Tまたはアーム部Aの下端部に衝突したとしても、アーム部Aが変形する(折れ曲がる)ことによって衝撃を吸収することができる。それにより、アーム部Aから支持ボルト128を介して本体部68に強い衝撃が伝達されることを十分に防止できるので、本体部68が破損することを確実に防止できる。
【0068】
また、駆動ユニット48では、張力付与部Tの下端部から後輪40に向かって延びるチェーン50に対するアーム部Aの基準線L1の傾斜角度D1が90度を超える角度から90度未満の角度に変化できるようにチェーンテンショナ78が設けられる。この場合、張力付与部Tから後輪40に向かって延びるチェーン50の水平方向に対する傾斜角度D2が大きくなり過ぎることを防止できる。それにより、チェーン50と従動スプロケット44との接触部の面積が小さくなり過ぎることを防止できる。その結果、従動スプロケット44の摩耗を防止できる。
【0069】
また、駆動ユニット48では、チェーンテンショナ78のアーム部Aを揺動可能に支持する支持ボルト128が出力軸102および補助スプロケット76よりも後方に配置されている。それにより、出力軸102および補助スプロケット76の後方にアーム部Aを配置することができる。ここで、アーム部を揺動可能に支持する支持部を出力軸102の下方に配置する従来のチェーンテンショナでは、補助スプロケット76および出力軸102の下方にアーム部を配置する必要がある。そのため、補助スプロケット76がチェーン50を巻き込んだ場合には、アーム部にチェーン50が噛み込み、アーム部およびアーム部を支持する支持部が破損することがある。しかし、この駆動ユニット48では、上述のようにアーム部Aを補助スプロケット76および出力軸102の後方に配置できるので、補助スプロケット76がチェーン50を巻き込んだ場合でも、アーム部Aにチェーン50が噛み込むことを防止できる。それにより、アーム部Aおよび支持ボルト128が損傷することを防止できる。
【0070】
なお、上述の実施形態では、張力付与部Tからチェーン50に張力が与えられる方向(前方)にアーム部Aを付勢する付勢部材として引張ばね130を用いているが、付勢部材としてねじりばね等の他のばねを用いてもよい。付勢部材としてねじりばねを用いる場合には、たとえば、支持ボルト128と同軸状にねじりばねを設け、アーム部Aを前方に向かって付勢してもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、出力軸102を電動モータ100の回転軸100cとは別個に設けているが、電動モータの回転軸を出力軸として用いてもよい。この場合、電動モータの回転軸の先端部を本体部から突出させるとともに、回転軸の先端部に補助スプロケット76を設ければよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、この発明に係る駆動ユニット48を二輪の自転車10に適用した場合について説明したが、この発明に係る駆動ユニットは三輪以上の車輪を有する自転車等の車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
10 自転車
12 車体フレーム
14 ヘッドパイプ
16 ダウンチューブ
18 シートチューブ
20 ブラケット
22 チェーンステイ
42 車軸
44 従動プロケット
48 駆動ユニット
68 本体部
70 クランク軸
72 駆動スプロケット
74 駆動力発生部
76 補助スプロケット
78 チェーンテンショナ
80 第1ケース部
82 第2ケース部
100 電動モータ
100c 回転軸
102 出力軸
118 テンションスプロケット
120 転がり軸受
122,128 支持ボルト
124 第1アーム
126 第2アーム
130 引張ばね
A アーム部
T 張力付与部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者のペダル踏力を無端状のチェーンを介して後輪に伝達する車両において当該車両の走行を補助するために設けられる駆動ユニットであって、
本体部と、
前記本体部に回転可能に設けられ、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記搭乗者のペダル踏力によって回転されるべきクランク軸と、
前記クランク軸と同軸状に設けられかつ前記クランク軸から伝達される回転力に基づいて回転し、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記チェーンが巻き掛けられるべき駆動スプロケットと、
前記本体部に設けられ、出力軸を有しかつ前記車両の走行を補助するための補助駆動力を発生する駆動力発生部と、
前記出力軸と同軸状に設けられかつ前記出力軸から伝達される前記補助駆動力に基づいて回転し、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記チェーンが巻き掛けられるべき補助スプロケットと、
前記本体部に設けられ、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記チェーンの張力を調整するべきチェーンテンショナとを備え、
前記チェーンテンショナは、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記チェーンが巻き掛けられかつ前記チェーンに張力を与えるべき張力付与部と、前記張力付与部を支持する第1支持部と、前記張力付与部が前記第1支持部を中心として回転できるように前記第1支持部を介して前記張力付与部を回転可能に支持するアーム部と、前記本体部と前記アーム部とを連結しかつ前記アーム部を揺動可能に支持する第2支持部と、前記張力付与部から前記チェーンに張力が与えられる方向に前記アーム部を付勢する付勢部材とを含み、
前記出力軸は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記クランク軸よりも後方に位置するように配置され、
前記第1支持部は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記出力軸よりも後方に位置するように配置され、
前記駆動スプロケット、前記補助スプロケットおよび前記張力付与部は、前記車両において前記チェーンが巻き掛けられた場合に前記チェーンが前記駆動スプロケットの下端部、前記補助スプロケットの上端部、および前記張力付与部の下端部を順に通るように配置され、
前記チェーンテンショナの前記第2支持部は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記駆動スプロケットの前記下端部から前記後輪に向かって延びる前記チェーンが前記第2支持部の下方を通るように配置される、駆動ユニット。
【請求項2】
前記第2支持部は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記チェーンの回転軌道の内側に位置するように設けられる、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記付勢部材は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記張力付与部から前記チェーンに前方向の力が与えられるように前記アーム部を付勢する、請求項1または2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記付勢部材は引張ばねを含み、前記引張ばねの一端は前記アーム部に連結され、前記引張ばねの他端は前記本体部に連結される、請求項1から3のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記引張ばねは、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記引張ばねの前記他端が前記張力付与部よりも前方において前記本体部に連結されるように配置される、請求項4に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記第1支持部は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記出力軸よりも下方に位置するように配置され、
前記第2支持部は、当該駆動ユニットが前記車両に設けられた場合に前記出力軸よりも上方に位置するように配置される、請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記第1支持部および前記第2支持部を通る直線を前記アーム部の基準線とした場合に、前記チェーンテンショナは、当該駆動ユニットが前記車両に取り付けられた状態において前記張力付与部の前記下端部から前記後輪に向かって延びる前記チェーンに対する前記基準線の傾斜角度が90度を超える角度から90度未満の角度に変化できるように設けられる、請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の駆動ユニットを含む、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166589(P2012−166589A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26816(P2011−26816)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)